(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光学フィルターおよびその用途
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240618BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240618BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240618BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240618BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240618BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20240618BHJP
C09B 47/04 20060101ALI20240618BHJP
C09B 23/08 20060101ALI20240618BHJP
C09B 23/01 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G03B11/00
H01L27/146 D
C09B57/00 X
C09B47/04
C09B23/08
C09B23/01
(21)【出願番号】P 2020087390
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019095065
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020019764
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川部 泰典
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】重岡 大介
(72)【発明者】
【氏名】長屋 勝也
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】岸田 寛之
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/26
G02B 5/28
G03B 11/00
H01L 27/146
C09B 57/00
C09B 47/04
C09B 23/08
C09B 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)~(d)を満たすことを特徴とする光学フィルター:
(a)波長700nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光に対する光学濃度(OD値)の最小値(OD
a-0)が2.0以上である;
(b)波長430nm~580nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光の透過率の平均値(T
a-0)が40%以上である;
(c)波長420nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向に対して5度の角度から入射する光に対する反射率の平均値(Rf
a-5)が20%以下である;
(d)波長650nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物(A)を少なくとも3種含有する層を含み、前記化合物(A)の少なくとも1種は、下記式(VII-4)
または(VII-
9)で表されるシアニン系化合物である。
【化1】
【化2】
[式(VII-4)
または(VII-
9)中、X
a
-は1価の陰イオンを表し、
複数あるXは
、酸素原
子を表し、
複数あ
るR
b、R
c、R
d、R
e、R
fおよびR
gはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
3、-SO
2-L
3、-N=N-L
4、または、R
bとR
c、R
dとR
e、R
eとR
fおよびR
fとR
gのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)~(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、置換基Lを有してもよく、
Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
L
1は、L
a、L
b、L
c、L
d、L
e、L
f、L
gまたはL
hを表し、
L
aは、置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基を表し、
L
bは、置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基を表し、
L
cは、置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基を表し、
L
dは、置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、
L
eは、置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基を表し、
L
fは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基を表し、
L
gは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基を表し、
L
hは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表し、
L
2は、水素原子または前記L
a~L
eのいずれかを表し、
L
3は、水素原子または前記L
a~L
eのいずれかを表し、
L
4は、前記L
a~L
eのいずれかを表し、
Z
a~Z
cおよびY
a~Y
dはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
2、-SO
2-L
3、-N=N-L
4(L
1~L
4は、前記R
b
~R
gにおけるL
1~L
4と同義である。)、または、これらのうち隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基;窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基;もしくは、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含む、炭素数3~14の複素芳香族炭化水素基を表し、これらの芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基および複素芳香族炭化水素基は、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよい。]
【化3】
[式(A)~(H)中、R
xおよびR
yは炭素原子を表し、複数あるR
A~R
Lはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
2、-SO
2-L
3、-N=N-L
4を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記置換基Lを有してもよく、L
1~L
4は前記式(VII-4)
または(VII-
9)において定義したL
1~L
4と同義である。]
【請求項2】
前記要件(a)における光学濃度(OD値)の最小値(OD
a-0)が2.1以上であり、かつ、前記要件(b)における透過率の平均値(T
a-0)が55%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項3】
さらに下記要件(e)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルター:
(e)前記要件(d)に記載の層を含む基材と、前記基材の少なくとも片面に誘電体多層膜とを有し、前記誘電体多層膜を構成する層の中で厚みが0.5μm以下である層の層数(N)と、厚みが0.5μm以下である各層の厚みの和(TN)(μm)との積(N×TN)が150以下である。
【請求項4】
厚みが160μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項5】
前記化合物(A)の少なくとも1種が、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性として、下記要件(f)および(g)を満たすことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルター:
(f)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸収波長λmaxが波長850nm以上935nm以下である;
(g)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸光係数ελ
maxを1で規格化したとき、
(g-1)波長(λmax-10)nmにおける吸光係数ελ
max-10が0.80以上であり、
(g-2)波長(λmax+10)nmにおける吸光係数ελ
max+10が0.80以上であり、
(g-3)波長430nm以上580nm以下の領域における吸光係数の平均値ε
430-580aveが0.03以下である。
【請求項6】
前記化合物(A)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物(前記式(VII-4)
および(VII-
9)で表されるシアニン系化合物を除く。)、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項7】
前記化合物(A)を含有する層が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、マレイミド系樹脂、脂環エポキシ熱硬化型樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂、およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項8】
前記基材が、銅成分を含有するフッ素リン酸塩系ガラス層もしくはリン酸塩系ガラス層からなる基板を含むことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターおよびその用途に関する。詳しくは、特定の波長域に吸収を有する化合物を含み、かつ、特定の光学特性を有する光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)、ならびに該光学フィルターを用いた撮像装置およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、基材としてリン酸ガラスに酸化銅を分散させた吸収ガラスを用いた吸収ガラス型光学フィルター(例えば特許文献1参照)が知られている。
【0004】
近年、固体撮像装置の薄型化が求められており、用いる光学フィルターにも薄型化が求められる。上記吸収ガラス型光学フィルターの吸収原理は、銅イオンのd軌道に由来した吸収を用いることが多いが、吸収強度が弱いことから、薄型化すると十分な近赤外線カット性能が得られない場合がある。
【0005】
このような薄型の吸収ガラス型光学フィルターでは、近赤外線カット性能を補うために基材表面に近赤外線反射能を有する誘電体多層膜を設けることが多い(例えば特許文献2参照)。基材表面に近赤外線反射能を有する誘電体多層膜を設けることで、薄型化と近赤外線遮蔽性の両立が可能である。
【0006】
このような近赤外線反射能を有する誘電体多層膜を有する光学フィルターとしては、吸収ガラス型のみならず、例えば、基材として透明樹脂を用い、該透明樹脂中に650~800nmの領域に吸収極大を有する色素を含有させるとともに、基材両面に近赤外線反射能を有する誘電体多層膜を用いた樹脂型光学フィルター(特許文献3)、ガラス基板にリン酸銅塩や酸化セシウムタングステン粒子を塗布したフィルター(特許文献4)、700~750nm付近に吸収を有する色素を含有した樹脂層を塗布したガラス基板塗布型光学フィルター(特許文献5)など、各種知られている。
【0007】
しかしながら、上述した吸収ガラス型、樹脂型、ガラス基板塗布型光学フィルターのように、基材表面に近赤外線反射能を有する光学フィルターは、該光学フィルターの表面で反射した光が再度センサーに入射される現象、すなわちゴーストが発生し、得られる固体撮像装置の画像不良を起こす場合があった。
【0008】
また、これらの光学フィルターでは、誘電体多層膜の各層の厚みが薄いが、近赤外線反射能を発現させるためには積層数を多くする必要がある。そのため、誘電体多層膜を製造するにあたり長い時間を要することになるため、製造スループットが悪く、製造コストも上昇する傾向にあった。
【0009】
ところで、光学フィルターに反射防止層を設けることで、ゴーストが抑制されることは以前から知られている(特許文献6)。しかしながら、従来の光学フィルターにおける反射防止層は、420nm~780nm(可視光領域)の波長の反射防止層であるため、781nm~900nmの波長の光による反射は防止できずゴーストが発生していた。また、薄い基材に近赤外線反射能を付与しない場合、700nm以上900nm以下の波長における光学濃度(OpticalDensity、OD)が十分ではなく、薄型化と近赤外線遮蔽性能を両立することができなかった。すなわち、薄く、かつ、近赤外線遮蔽性に優れるとともに、可視光領域から近赤外線領域の波長に渡り反射率が低い光学フィルターは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2011/071157号パンフレット
【文献】国際公開第2011/158635号パンフレット
【文献】特開平6-200113号公報
【文献】特開2014-052482号公報
【文献】特開2014-063144号公報
【文献】国際公開第2016/174954号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、厚みが薄くても近赤外線遮蔽性に優れる光学フィルター、ならびに該光学フィルターを用いた撮像装置およびカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様の例を以下に示す。
[1] 下記要件(a)~(d)を満たすことを特徴とする光学フィルター:(a)波長700nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光に対する光学濃度(OD値)の最小値(ODa-0)が2.0以上である;(b)波長430nm~580nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光の透過率の平均値(Ta-0)が40%以上である;(c)波長420nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向に対して5度の角度から入射する光に対する反射率の平均値(Rfa-5)が20%以下である;(d)波長650nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物(A)を少なくとも3種含有する層を含む。
[2] さらに下記要件(e)を満たすことを特徴とする項[1]に記載の光学フィルター:(e)前記要件(d)に記載の層を含む基材と、前記基材の少なくとも片面に誘電体多層膜とを有し、前記誘電体多層膜を構成する層の中で厚みが0.5μm以下である層の層数(N)と、厚みが0.5μm以下である各層の厚みの和(TN)(μm)との積(N×TN)が150以下である。
[3] 厚みが160μm以下であることを特徴とする項[1]または[2]に記載の光学フィルター。
[4] 前記化合物(A)の少なくとも1種が、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性として、下記要件(f)および(g)を満たすことを特徴とする項[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学フィルター:(f)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸収波長λmaxが波長850nm以上935nm以下である;(g)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸光係数ελmaxを1で規格化したとき、
(g-1)波長(λmax-10)nmにおける吸光係数ελmax-10が0.80以上であり、
(g-2)波長(λmax+10)nmにおける吸光係数ελmax+10が0.80以上であり、
(g-3)波長430nm以上580nm以下の領域における吸光係数の平均値ε430-580aveが0.03以下である。
[5] 前記化合物(A)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする項[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[6] 前記化合物(A)を含有する層が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、マレイミド系樹脂、脂環エポキシ熱硬化型樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂、およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする項[1]~[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[7] 前記基材が、銅成分を含有するフッ素リン酸塩系ガラス層もしくはリン酸塩系ガラス層からなる基板を含むことを特徴とする項[2]に記載の光学フィルター。
[8] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備することを特徴とする撮像装置。
[9] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厚みが薄くても近赤外線遮蔽性に優れるとともに、製造スループットが良好な光学フィルター、ならびに該光学フィルターを用いた撮像装置およびカメラモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】透過スペクトルを光学フィルターの面に対して垂直方向、斜め30度の方向および斜め60度の方向から測定する構成を示した図である。
【
図2】光学フィルターの面に対して垂直方向に対して5度の角度から入射した光の反射率を測定する方法の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[光学フィルター]
本発明の光学フィルターは、下記要件(a)~(d)を満たすことを特徴とする。本発明の光学フィルターは、後述する基材のみから構成されていてもよい。すなわち、本発明の光学フィルターは、誘電体多層膜を有していてもよく、また、有していなくてもよい。
(a)波長700nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光に対する光学濃度(OD値)の最小値(ODa-0)が2.0以上である。
(b)波長430nm~580nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光の透過率の平均値(Ta-0)が40%以上である。
(c)波長420nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向に対して5度の角度から入射する光に対する反射率の平均値(Rfa-5)が20%以下である。
(d)波長650nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物(A)を少なくとも3種含有する層を含む。
【0016】
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(e)を満たしてもよい。
(e)前記要件(d)に記載の層を含む基材(以下「基材(i)」ともいう。)と、前記基材(i)の少なくとも片面に誘電体多層膜とを有し、前記誘電体多層膜を構成する層の中で厚みが0.5μm以下である層の層数(N)と、厚みが0.5μm以下である各層の厚みの和(TN)(μm)との積(N×TN)が150以下である。
前記要件(a)~(e)の詳細については後述する。
【0017】
なお、本発明の光学フィルターは下記要件(X)を満たしていてもよい。
要件(X):波長300nm以上1200nm以下の領域において、光学フィルターの一方の面における垂直方向に対して5度斜め方向から入射する光の反射率の最大値Rfalla-5と、他方の面における垂直方向に対して5度斜め方向から入射する光の反射率の最大値Rfallb-5とが、いずれも50%以下、より好ましくは45%以下である。
【0018】
要件(X)を満たすことにより、シリコンフォトダイオードが感度を持つ300nm以上1200nm以下の波長の光の反射率を、光学フィルターのどちらの面においても低減することができ、本発明の光学フィルターを固体撮像装置用途またはカメラモジュールとして使用した場合、光学フィルターとレンズ間の多重反射、光学フィルターとセンサー間の多重反射が小さくなるため、ゴーストの少ない良好な画像を得ることができる。
【0019】
要件(X)を満たす方法、すなわち反射率の調整方法としては、例えば、光の波長未満の大きさの多数の錐状構造を設け、入射媒体から基板へ連続的に屈折率を変化させる層を形成する方法、多層からなる誘電体多層膜による反射防止層を形成する方法が挙げられる。
【0020】
要件(X)を満たす方法、すなわち反射率の低い光学フィルターの設計方法としては、例えば、波長580~800nmの領域において、前記基材の垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる最も短い波長の値(Xa)と、波長700~1200nm以上の領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる最も長い波長の値(Xb)との差の絶対値|Xa-Xb|が300nm以上である基材を用いる方法が挙げられる。
【0021】
<要件(a)>
要件(a):波長700nm以上900nm以下の領域における最小値ODa-0は、2.0以上、好ましくは2.1以上8.0以下である。
ここで、OD値は透過率の常用対数値であり、下記式にて算出できる。
ある波長域における光学濃度(OD値)の最小値=-Log10(ある波長域における波長別透過率の最大値(%)/100)
【0022】
指定の波長範囲の波長別OD値の最小値が高いと、光学フィルターはその波長領域の光のカット特性が高いことを表す。
【0023】
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(aX)を満たすことが好ましい。
要件(aX):波長700nm以上900nm以下の領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光に対する光学濃度の最小値ODa-0と、垂直方向に対して30度斜め方向から入射する光に対する光学濃度の最小値ODa-30と、垂直方向に対して60度斜め方向から入射する光に対する光学濃度の最小値ODa-60とが、いずれも2.0以上、好ましくは2.0以上8.0以下、より好ましくは2.1以上8.0以下である。
【0024】
要件(a)、好ましくは要件(aX)を満たす方法、すなわち各光学濃度の最小値の調整方法としては、例えば、基材に含有させる化合物の濃度を調整し、波長700nm以上900nm以下の領域における光学濃度の最小値を2.0以上とする方法が挙げられる。
要件(a)、好ましくは要件(aX)を満たすことにより、光学フィルターは、垂直方向で透過する近赤外線のみでなく、高入射角で透過する近赤外線も十分にカットすることができる。
【0025】
<要件(b)>
要件(b):波長430nm以上580nm以下の領域における透過率の平均値Ta-0は、40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは55%以上である。
【0026】
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(bX)を満たすことが好ましい。
要件(bX):波長430nm以上580nm以下の領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から入射する光の透過率の平均値Ta-0と、垂直方向に対して30度斜め方向から入射する無偏光光線の光の透過率の平均値Ta-30と、垂直方向に対して60度斜め方向から入射する無偏光光線の光の透過率の平均値Ta-60とが、いずれも40%以上、好ましくは43~99%、より好ましくは46~98%、特に好ましくは48~97%である。
【0027】
要件(b)、好ましくは要件(bX)を満たす方法、すなわち各透過率の平均値の調整方法としては、例えば、基材に添加する化合物の濃度を調整し、波長430nm以上580nm以下の領域における平均吸光度を好ましくは0.35以下、より好ましくは0.26以下とする方法が挙げられる。
【0028】
要件(b)、好ましくは要件(bX)を満たすことにより、本発明の光学フィルターを固体撮像装置用途として使用した場合、良好な画像を得ることができる。
【0029】
要件(a)および(b)、好ましくは要件(aX)および(bX)を共に満たす方法としては、例えば、前記基材(i)に、波長650nm以上950nm未満の領域に極大吸収を有する化合物(A)を含有させる方法が挙げられる。より好ましくは、前記基材(i)は前記要件(d)を満たすことが好ましい。なお、前記化合物(A)は、波長430nm以上580nm以下の領域に吸収が少ないことが好ましい。
【0030】
<要件(c)>
要件(c):波長420nm~900nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向に対して5度の角度から入射する光における反射率の平均値(Rfa-5)は、20%以下、好ましくは15%以下であり、より好ましくは6%以下、さらにより好ましくは0.1~4%、特に好ましくは0.1~3%である
【0031】
要件(c)を満たすことにより、シリコンフォトダイオードが強く感度を持つ420nm以上900nm以下の波長の光の反射率を、光学フィルターのどちらの面においても低減することができ、本発明の光学フィルターを固体撮像装置用途またはカメラモジュールとして使用した場合、良好な画像を得ることができる。
【0032】
要件(c)を満たす方法、すなわち各反射率の平均値の調整方法としては、例えば、光の波長未満の大きさの多数の錐状構造を設け、入射媒体から基板へ連続的に屈折率を変化させる層を形成する方法、多層からなる誘電体多層膜による反射防止層を形成する方法が挙げられる。
【0033】
要件(c)を満たす方法、すなわち反射率の低い光学フィルターの設計方法としては、例えば、波長580~800nmの領域において、前記基材の垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる最も短い波長の値(Xa)と、波長700~1200nm以上の領域において、基材の垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる最も長い波長の値(Xb)との差の絶対値|Xa-Xb|が300nm以上である基材を用いる方法が挙げられる。
【0034】
<要件(d)>
要件(d):波長650nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物(A)を少なくとも3種含有する層を含む。
【0035】
前記層に含まれる化合物(A)が3種以上になることにより、溶解性を向上させることが可能となる。前記層に含まれる化合物(A)が2種類以下の場合、ODa-0を2.0以上とするために化合物(A)の含有量を多くする必要が生じ、前記層から化合物(A)が析出してしまう場合がある。
【0036】
また、前記層に含まれる化合物(A)が3種以上になることで、近赤外線領域を幅広く吸収することが可能になる。近赤外線領域を幅広く吸収することで、幅広い近赤外領域において反射率を低減させたフィルターを得ることができる。このような幅広い近赤外線領域において反射率を低減させたフィルターを用いることによって、ゴーストが低減された良好な画像を得ることができる。
【0037】
<要件(e)>
要件(e):前記基材(i)の少なくとも片面に誘電体多層膜を有し、前記誘電体多層膜を構成する層の中で厚みが0.5μm以下である層の層数(N)と、厚みが0.5μm以下である各層の厚みの和(TN)(μm)との積(N×TN)が150以下である。前記積(N×TN)は、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下である。
【0038】
詳細は後述するが、前記積(N×TN)がこの範囲であると、誘電体多層膜の製造に要する時間を短縮することができ、製造コストを削減することができるため好ましい。
【0039】
本発明の光学フィルターでは、撮像装置やカメラモジュールで得られる画像における色味再現性の観点から、光学フィルターの垂直方向から入射した場合のR透過率、G透過率、およびB透過率がいずれも、好ましくは30%以上、より好ましくは34%以上、さらにより好ましくは38%以上である。R透過率は波長580~650nmにおける平均透過率、G透過率は波長500~580nmにおける平均透過率、B透過率は波長420~500nmにおける平均透過率である。このような光学フィルターを撮像装置やカメラモジュールに用いると、画像の輝度や色味の補正がしやすくなるため、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正が容易となる。
【0040】
本発明の光学フィルターは、前記基材(i)のみからなる態様でもよく、また、基材(i)の両面に反射防止層を有していてもよい。基材(i)の両面に反射防止層を有することにより、撮像装置やカメラモジュールに組み込まれた、カバーガラス、レンズ、マイクロレンズ、センサー、筐体等の種々の構成部品で反射した迷光が、光学フィルターを反射しセンサーに入射される現象を低減することができ、ゴーストの発生を低減することができる。
【0041】
本発明の光学フィルターの厚みは、特に制限されないが、好ましくは160μm以下、より好ましくは10~130μm、さらに好ましくは10~120μmである。光学フィルターの厚みが前記範囲にあると、光学フィルターを薄型化、小型化および軽量化することができる。厚み10μm以上であれば反りの制御が容易となり好ましい。
【0042】
<基材(i)>
前記基材(i)は、前記要件(d)を満たしていれば特に限定されず、単層であっても多層であってもよい。また、前記基材(i)は、波長950nm以上1800nm以下の領域に吸収極大を有する化合物(B)を含有していてもよく、化合物(B)は化合物(A)と同一の層に含まれていても異なる層に含まれていてもよい。以下、化合物(A)を少なくとも1種と樹脂とを含有する層を「透明樹脂層」ともいい、それ以外の樹脂層を単に「樹脂層」ともいう。
【0043】
化合物(A)を含む層と化合物(B)を含む層とが同一である場合の基材(i)としては、例えば、化合物(A)および化合物(B)を含む樹脂製基板からなる基材、化合物(A)および化合物(B)を含む樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)および化合物(B)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材を挙げることができる。
【0044】
化合物(A)を含む層と化合物(B)を含む層とが異なる場合の基材(i)としては、例えば、化合物(B)を含む樹脂製基板上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材、化合物(A)を含む樹脂製基板上に化合物(B)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層と化合物(B)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層とが積層された基材、化合物(B)を含むガラス基板上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材などを挙げることができる。
【0045】
<化合物(A)>
前記化合物(A)は、波長650nm以上950nm未満の領域に吸収極大があれば特に限定されないが、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物から選ばれる少なくとも3種を含むことが特に好ましい。波長649nm以下に吸収極大を有する化合物は、極大吸収波長のピークに起因した吸収により420nm~580nmにおける質量吸光係数が高い傾向にある。
【0046】
化合物(A)の吸収極大波長は、好ましくは670nm以上950nm未満、より好ましくは690nm以上950nm未満、さらに好ましくは700nm以上950nm未満である。
【0047】
前記基材(i)は、化合物(A)として、波長650nm以上800nm未満の領域、より好ましくは700nm以上800nm未満の領域に吸収極大を有する化合物を1種以上含有することが好ましい。これにより得られる光学フィルターを撮像装置またはカメラモジュールに用いた場合、赤色の視感度補正が良好となる。
【0048】
また、前記基材(i)は、化合物(A)として、波長800nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物を1種以上含有することが好ましい。これにより得られる光学フィルターを撮像装置あるいはカメラモジュールに用いた場合、シリコンフォトダイオードの感度が高く、人間の目の感度が低い800nm以上900nm以下の領域の光を効率的に遮蔽することができ、近赤外線を強く発する炎や、ハロゲンランプ、黒体放射光源の視感度補正が良好となる。
【0049】
さらに、前記基材(i)は、化合物(A)として、波長650nm以上800nm未満の領域に吸収極大を有する化合物と、波長800nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物とを、それぞれ1種以上含有することが好ましく、それぞれ2種以上含有することがより好ましい。これにより得られる光学フィルターを撮像装置またはカメラモジュールに用いた場合、赤色の視感度補正と、700nm以上900nm以下の領域の光の遮蔽性能が両立され、得られる画像が良好となる。
【0050】
また、前記基材(i)は、化合物(A)として、波長650nm以上800nm未満の領域に吸収極大を有する化合物2種以上と、波長800nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物1種以上とを含有することがより好ましい。これにより赤色領域から近赤外領域まで幅広く吸収した光学フィルターを得ることができる。このような光学フィルターを撮像装置またはカメラモジュールに用いた場合、赤色の視感度補正とゴースト低減を両立した、より良好な画像を得ることができる。
【0051】
波長650nm以上800nm未満の領域に吸収極大を有する化合物としては、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物およびピロロピロール系化合物が好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物がより好ましい。これらの化合物を含有することによって、高い可視光透過率と良好な耐久性を両立した光学フィルターを得ることができる。
【0052】
波長800nm以上950nm未満の領域に吸収極大を有する化合物としては、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物およびピロロピロール系化合物が好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物がより好ましい。これらの化合物を含有することによって、高い可視光透過率と良好な耐久性を両立した光学フィルターを得ることができる。
【0053】
さらに、前記基材(i)において、化合物(A)の少なくとも1つが、ジクロロメタンに溶解して測定される吸収特性として、下記要件(f)および(g)を満たすことが好ましい。(f)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸収波長λmaxが波長850nm以上935nm以下である。(g)波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸光係数ελmaxを1で規格化したとき、
(g-1)波長(λmax-10)nmにおける吸光係数ελmax-10が0.80以上であり、
(g-2)波長(λmax+10)nmにおける吸光係数ελmax+10が0.80以上であり、
(g-3)波長430nm以上580nm以下の領域における吸光係数の平均値ε430-580aveが0.03以下である。ελmax-10は、より好ましくは0.85以上であり、さらにより好ましくは0.90以上である。また、ελmax+10は、より好ましくは0.85以上であり、さらにより好ましくは0.90以上である。さらにまた、ε430-580aveは、より好ましくは0.025以下であり、さらにより好ましくは0.020以下である。
【0054】
これにより得られる光学フィルターを撮像装置またはカメラモジュールに用いた場合、高い可視光透過率と、700nm以上900nm以下の領域の光の遮蔽性能が両立され、得られる画像が良好となる。
【0055】
化合物(A)の使用量は、所望の特性に応じて適宜選択される。前記基材(i)として、例えば、化合物(A)を含有する樹脂製基板からなる基材や、化合物(A)を含有する樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合、化合物(A)の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.03~1.5質量部、さらに好ましくは0.05~1.0質量部である。また、前記基材(i)として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)を含有する透明樹脂層が積層された基材を用いる場合、化合物(A)の含有量は、透明樹脂層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.4~20.0質量部、より好ましくは0.6~15.0質量部、さらに好ましくは0.8~12.5質量部である。
【0056】
≪スクアリリウム系化合物≫
前記スクアリリウム系化合物としては、特に限定されるものではないが、下記式(I)で表されるスクアリリウム系化合物(以下「化合物(I)」ともいう。)、下記式(II)で表されるスクアリリウム系化合物(以下「化合物(II)」ともいう。)、ならびに、下記式(III-J)、(III-K)および(III-L)で表わされるスクアリリウム系化合物(以下、それぞれ「化合物(III-J)」、「化合物(III-K)」および(化合物(III-L))ともいい、これらを総称して「化合物(III)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0057】
【0058】
式(I)中、Ra、RbおよびYaは、下記条件(α)または(β)を満たす。
条件(α):
複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し;
複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し;
複数あるYaはそれぞれ独立に、-NRjRk基を表し; L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhを表し;
ReおよびRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表し;
RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表し;
RjおよびRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表し;
Laは、置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基を表し;
Lbは、置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基を表し;
Lcは、置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基を表し;
Ldは、置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し;
Leは、置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基を表し;
Lfは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基を表し;
Lgは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基を表し;
Lhは、置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表し;
Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を表す。
【0059】
条件(β):
1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成する;
前記複素環は置換基を有していてもよく、Rbおよび前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記条件(α)のRbおよびRaと同義である。
【0060】
前記La~Lhは、置換基を含めた炭素数の合計が、それぞれ50以下であることが好ましく、炭素数40以下であることがさらに好ましく、炭素数30以下であることが特に好ましい。炭素数がこの範囲よりも多いと、化合物の合成が困難となる場合があるとともに、単位質量あたりの光の吸収強度が小さくなる傾向がある。
【0061】
前記条件(α)におけるRaとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基である。
【0062】
前記条件(α)におけるRbとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキサノイルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t-ブタノイルアミノ基、シクロヘキサノイルアミノ基である。
【0063】
前記Yaとしては、好ましくはアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ基であり、より好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基である。
【0064】
前記式(I)の条件(β)における、1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して形成される、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環としては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジン等を挙げることができる。これらの複素環のうち、当該複素環を構成し、かつ、前記ベンゼン環を構成する炭素原子の隣の1つの原子が窒素原子である複素環が好ましく、ピロリジンがさらに好ましい。
【0065】
【0066】
式(II)中、Xは独立に、O、S、Se、N-RcまたはC(RdRd)を表し;複数あるRcはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lb、Lc、LdまたはLeを表し;複数あるRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく;La~Le、L1、ReおよびRfは、前記式(I)において定義したLa~Le、L1、ReおよびRfと同義である。
【0067】
前記式(II)中のRcとしては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である。
【0068】
前記式(II)中のRdとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、4-アミノシクロヘキシル基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0069】
前記Xとしては、好ましくはO、S、Se、N-Me、N-Et、CH2、C-Me2、C-Et2であり、より好ましくはS、C-Me2、C-Et2である。
【0070】
前記式(II)において、隣り合うRd同士は連結して環を形成してもよい。このような環としては、例えば、ベンゾインドレニン環、α-ナフトイミダゾール環、β-ナフトイミダゾール環、α-ナフトオキサゾール環、β-ナフトオキサゾール環、α-ナフトチアゾール環、β-ナフトチアゾール環、α-ナフトセレナゾール環、β-ナフトセレナゾール環を挙げることができる。
【0071】
・式(III-J)~(III-L)
【化3】
式(III-J)~(III-L)中、Xは、独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR
8-を表し、
R
1~R
8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NR
gR
h基、-SO
2R
i基、-OSO
2R
i基または下記L
a~L
hのいずれかを表し、R
gおよびR
hは、それぞれ独立に水素原子、-C(O)R
i基または下記L
a~L
eのいずれかを表し、R
iは下記L
a~L
eのいずれかを表す。
(L
a)炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(L
b)炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(L
c)炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(L
d)炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(L
e)炭素数3~14の複素環基
(L
f)炭素数1~12のアルコキシ基
(L
g)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基、
(L
h)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアルコキシカルボニル基 置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基および炭素数3~14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0072】
化合物(I)、化合物(II)および化合物(III-J)は、下記式(I-1)、下記式(II-1)、下記式(III-J-1)のような記載方法に加え、下記式(I-2)および下記式(II-2)、下記式(III-J-2)のように共鳴構造を取るような記載方法でも構造を表すことができる(化合物(III-K)および(III-L)についても同様である)。つまり、下記式(I-1)と下記式(I-2)との違い、下記式(II-1)と下記式(II-2)との違い、および、下記式(III-J-1)と(III-J-2)との違いは構造の記載方法のみであり、どちらも同一の化合物を表す。本発明中では特に断りのない限り、下記式(I-1)、下記式(II-1)および下記式(III-J-1)のような記載方法にてスクアリリウム系化合物の構造を表すものとする。
【0073】
【化4】
さらに、例えば、下記式(I-3)で表される化合物と下記式(I-4)で表される化合物とは、同一の化合物であると見なすことができる。
【0074】
【化5】
前記化合物(I)、(II)および(III)は、それぞれ前記各式の要件を満たせば特に構造は限定されない。例えば前記式(I-1)、(II-1)および(III-J-1)のように構造を表した場合、中央の四員環に結合している左右の置換基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であった方が合成上容易であるため好ましい。
【0075】
前記化合物(I)、(II)および(III)の具体例としては、下記式(I-A)~(I-F)、下記式(II-G)~(II~H)、および下記式(III~J)~(III-L)で表される基本骨格を有する、下記表1~7に記載の化合物(a-1)~(a-94)を挙げることができる。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
前記化合物(I)、(II)および(III)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1-228960号公報、特開2001-40234号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
【0087】
≪フタロシアニン系化合物≫
前記フタロシアニン系化合物は、特に限定されるものではないが、下記式(IV)で表される化合物(以下「化合物(IV)」ともいう。)であることが好ましい。
【0088】
【化9】
式(IV)中、Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、または3価もしくは4価の金属原子を含む置換金属原子を表し、複数あるR
a、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
2、-SO
2-L
3、-N=N-L
4、または、R
aとR
b、R
bとR
cおよびR
cとR
dのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)~(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。但し、同じ芳香環に結合したR
a、R
b、R
cおよびR
dのうち少なくとも1つが水素原子ではない。
【0089】
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記式(I)において定義した置換基Lを有してもよく、
L1は、前記式(I)において定義したL1と同義であり、
L2は、水素原子または前記式(I)において定義したLa~Leのいずれかを表し、
L3は、水酸基または前記La~Leのいずれかを表し、
L4は、前記La~Leのいずれかを表す。
【0090】
【化10】
式(A)~(H)中、R
xおよびR
yは炭素原子を表し、複数あるR
A~R
Lはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
2、-SO
2-L
3、-N=N-L
4を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記式(I)において定義した置換基Lを有してもよく、L
1~L
4は前記式(IV)において定義したL
1~L
4と同義である。
【0091】
前記フタロシアニン系化合物は、下記式(V)のようなフタロニトリル誘導体の環化反応により合成する方法が一般的に知られているが、得られるフタロシアニン系化合物は下記式(VI-1)~(VI-4)のような4種の異性体の混合物となっている。本発明では、特に断りのない限り、1種のフタロシアニン系化合物につき1種の異性体のみを例示しているが、他の3種の異性体についても同様に用いることができる。なお、これらの異性体は必要に応じて分離して用いることも可能であるが、本発明では異性体混合物を一括して取り扱っている。
【0092】
【0093】
【化12】
前記化合物(IV)の具体例としては、下記式(IV-A)~(IV-J)で表わされる基本骨格を有する、下記表8~11に記載の(b-1)~(b-61)などを挙げることができる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【表11】
化合物(IV)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、たとえば、特許第4081149号公報や「フタロシアニン -化学と機能―」(アイピーシー、1997年)に記載されている方法を参照して合成することができる。
【0099】
≪シアニン系化合物≫
前記シアニン系化合物は、特に限定されるものではないが、下記式(VII-1)~(VII-13)のいずれかで表される化合物(以下「化合物(VII-1)~(VII-13)」ともいう。)であることが好ましい。高い可視光透過率を達成できることから(VII-4)~(VII-6)および(VII-9)~(VII-11)が好ましく、(VII-4)および(VII-9)が特に好ましい。
【0100】
【0101】
【0102】
【化16】
式(VII-1)~(VII-13)中、X
a
-は1価の陰イオンを表し、複数あるDは独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、複数あるXは、独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR
a-を表し、複数あるR
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
g、R
hおよびR
iはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
3、-SO
2-L
3、-N=N-L
4、または、R
bとR
c、R
dとR
e、R
eとR
f、R
fとR
g、R
gとR
hおよびR
hとR
iのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、前記式(A)~(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記式(I)において定義した置換基Lを有してもよく、
L
1は、前記式(I)において定義したL
1と同義であり、
L
2は、水素原子または前記式(I)において定義したL
a~L
eのいずれかを表し、
L
3は、水素原子または前記L
a~L
eのいずれかを表し、
L
4は、前記L
a~L
eのいずれかを表し、
Z
a~Z
cおよびY
a~Y
dはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-L
1、-S-L
2、-SS-L
2、-SO
2-L
3、-N=N-L
4(L
1~L
4は、前記R
a~R
iにおけるL
1~L
4と同義である。)、または、これらのうち隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基;窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基;もしくは、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含む、炭素数3~14の複素芳香族炭化水素基を表し、これらの芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基および複素芳香族炭化水素基は、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよい。
【0103】
高い可視光透過率と700~900nmの領域の高いOD値との両立が達成できることから、複数あるXは酸素原子もしくは硫黄原子が好ましく、酸素原子が特に好ましい。 複数あるRa、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、RhおよびRiはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lc、Ld、Lfが好ましい。
【0104】
前記Za~ZcおよびYa~Ydにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける芳香族炭化水素基で例示した化合物が挙げられる。
【0105】
前記Za~ZcおよびYa~Ydにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける脂環式炭化水素基および複素環で例示した化合物(複素芳香族炭化水素基を除く。)が挙げられる。
【0106】
化合物の化学的安定性と高い可視光透過率を両立できることからZa~ZcおよびYa~Ydはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基Lを有するアミノ基、または、これらのうち隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、5乃至6員環の脂環式炭化水素基が特に好ましい。
【0107】
前記Za~ZcおよびYa~Ydにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数3~14の複素芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける複素環基として例示した化合物(窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含む脂環式炭化水素基を除く。)が挙げられる。
【0108】
前記式(VII-1)~(VII-13)において、-S-L2、-SS-L2、-SO2-L3、-N=N-L4、置換基Lを有してもよいアミノ基、アミド基、イミド基、シリル基としては、前記式(IV)で例示した基と同様の基などが挙げられる。
【0109】
Xa
-は1価の陰イオンであれば特に限定されないが、Cl-、I-、Br-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、B(C6F5)4
-、ニッケルジチオラート系錯体、銅ジチオラート系錯体などが挙げられる。化合物の化学的安定性の観点からB(C6F5)4
-が好ましい。
【0110】
前記化合物(VII-1)~(VII-13)の具体例としては、下記表12-1~表12-5に記載の(c-1)~(c-116)などを挙げることができる。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【表12-5】
前記化合物(VII-1)~(VII-6)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、たとえば特開2009-108267号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0116】
<化合物(B)>
前記化合物(B)としては、波長950nm以上1800nm以下の領域に吸収極大を有すれば特に限定されないが、近赤外線吸収微粒子、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なお、化合物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような化合物(B)を用いることにより、幅広い近赤外線波長領域における吸収特性と優れた可視光透過率を達成することができる。
【0117】
前記化合物(B)の吸収極大波長は、好ましくは1020nm以上1750nm以下、より好ましくは1020nm以上1720nm以下である。前記化合物(B)の吸収極大波長がこのような範囲にあると、不要な近赤外線を効率よくカットすることができるとともに、入射光の入射角依存性を低くすることができる。
【0118】
化合物(B)の吸収極大波長における質量吸光係数は、好ましくは8×10L・cm-1・g-1以上、より好ましくは9.5×10L・cm-1・g-1以上である。8×10L・cm-1・g-1以上であれば、反射防止層を設けた薄い光学フィルターにおいても効率的に近赤外線を遮蔽することが可能となり、薄型化と高い近赤外線の遮蔽性と低い反射特性を両立することが可能となる。
【0119】
前記化合物(B)(ただし、近赤外線吸収微粒子を除く。)の使用量は、所望の特性に応じて適宜選択される。前記基材(i)として、例えば、化合物(A)および化合物(B)を含有する樹脂製基板からなる基材を用いる場合、前記化合物(B)の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.02~3.0質量部、特に好ましくは0.03~2.0質量部である。また、前記基材(i)として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)および化合物(B)を含有する樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する樹脂製基板上に化合物(B)を含有する樹脂層が積層された基材を用いる場合、前記化合物(B)の含有量は、化合物(A)を含む樹脂層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~40.0質量部、より好ましくは0.2~30.0質量部、特に好ましくは0.3~25.0質量部である。化合物(B)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性と高い可視光透過率とを両立した光学フィルターを得ることができる。なお、前記化合物(B)として近赤外線吸収微粒子を用いた場合の該微粒子の使用量については後述する。
【0120】
前記化合物(B)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特許第4168031号公報、特許第4252961号公報、特表2010-516823号公報、特開昭63-165392号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
【0121】
≪ジイモニウム系化合物≫
前記ジイモニウム系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(s1)で表わされる化合物が好ましい。
【0122】
【化17】
式(s1)中、R
1は、独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、リン酸基、-SR
i基、-SO
2R
i基、-OSO
2R
i基または下記L
a~L
hのいずれかを表し、R
2は、独立にハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NR
gR
h基、-SR
i基、-SO
2R
i基、-OSO
2R
i基または下記L
a~L
hのいずれかを表し、R
gおよびR
hは、それぞれ独立に水素原子、-C(O)R
i基または下記L
a~L
eのいずれかを表し、R
iは下記L
a~L
eのいずれかを表し、
(L
a)炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(L
b)炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(L
c)炭素数3~14の脂環式炭化水素基(L
d)炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(L
e)炭素数3~14の複素環基
(L
f)炭素数1~12のアルコキシ基
(L
g)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基、
(L
h)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアルコキシカルボニル基
置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基および炭素数3~14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、nは0~4の整数、Xは電荷を中和させるのに必要なアニオンを表す。
【0123】
前記Xは電荷を中和するのに必要なアニオンであり、アニオンが2価である場合には1分子、アニオンが1価の場合には2分子が必要となる。後者の場合は2つのアニオンが同一であっても異なっていてもよいが、合成上の観点から同一である方が好ましい。Xはこのようなアニオンであれば特に制限されないが、一例として、下記の表13に記載のものを挙げることができる。
【0124】
【表13】
Xは、酸とした際の酸性度が高いものであればジイモニウム系化合物のアニオンとした際にジイモニウム系化合物の耐熱性を向上できる傾向にあり、上記表10中の(X-10)、(X-16)、(X-17)、(X-21)、(X-22)、(X-24)、(X-28)が特に好ましい。
【0125】
≪金属ジチオラート系化合物≫
前記金属ジチオラート系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(s2)で表わされる化合物が好ましい。
【0126】
【化18】
式(s2)中、R
3は、上記式(s1)中のR
1およびR
2と同義であり、隣り合うR
3同士は置換基Lを有してもよい環を形成してもよい。ZはD(R
i)
4を表し、Dは窒素原子、リン原子またはビスマス原子を表し、yは0もしくは1を表す。
【0127】
前記R3としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、フェニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ基であり、隣り合うR3同士が環を形成する場合は、環の中に少なくとも一つ以上の硫黄原子もしくは窒素原子が含まれる複素環で有ることが好ましい。
【0128】
前記Mとしては、好ましくは遷移金属であり、さらに好ましくはNi,Pd,Ptである。
前記Dは、好ましくは窒素原子、リン原子であり、前記Riは、好ましくはエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、フェニル基である。
【0129】
≪近赤外線吸収微粒子≫
前記近赤外線吸収微粒子としては、波長950nm以上1800nm以下の領域に吸収を有するものであれば特に限定されないが、例えば、国際公開2017/018419号の段落[0047]~[0075]に記載されている近赤外線吸収微粒子を挙げることができる。
【0130】
≪化合物(A)および(B)の市販品≫
前記化合物(A)の市販品としては、T090821、T091021、T089021,T090721、T090122(トスコ製)、B4360、D4773、D5013(東京化成工業製)、S4253、S1426(スペクトラムインフォ製)、ExcolorIR12、ExcolorIR14、ExcolorIR10A、ExcolorIR28、ExcolorTX-EX720、ExcolorTX-EX820、ExcolorTX-EX906(日本触媒製)などを挙げることができる。
【0131】
前記化合物(B)(ただし、近赤外線吸収微粒子を除く。)の市販品としては、CIR-108x、CIR-96x、CIR-RL、CIR-1080(日本カーリット製)、S1445(スペクトラムインフォ製)、ExcolorIR915、ExcolorIR906(日本触媒製)、S2058、S2007(FEWChemicals製)などを挙げることができる。
【0132】
<樹脂>
前記基材を構成する(透明)樹脂層、樹脂製基板または樹脂製支持体に用いられる樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、さらに好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のガラス転移温度が150℃以上であると、樹脂に化合物を高濃度に添加しガラス転移温度が低下した場合においても、誘電体多層膜を高温で蒸着形成しえるガラス転移温度を持つフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0133】
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.05mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0134】
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
【0135】
前記樹脂としては、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、マレイミド系樹脂、脂環エポキシ熱硬化型樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂を挙げることができる。これらの内、環状ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリエーテル樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂を用いることが、透明性(光学特性)、耐熱性、耐リフロー性等のバランスに優れた光学フィルターを得られる点で好ましい。
【0136】
≪環状ポリオレフィン系樹脂≫
環状ポリオレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
【0137】
【化19】
式(X
0)中、R
x1~R
x4はそれぞれ独立に、下記(i')~(ix')より選ばれる原子または基を表し、k
x、m
xおよびp
xはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(vi')極性基(但し、(ii')および(iv')を除く。)
(vii')R
x1とR
x2またはR
x3とR
x4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないR
x1~R
x4は、それぞれ独立に前記(i')~(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(viii')R
x1とR
x2またはR
x3とR
x4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないR
x1~R
x4は、それぞれ独立に前記(i')~(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(ix')R
x2とR
x3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないR
x1とR
x4は、それぞれ独立に前記(i')~(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
【0138】
【化20】
式(Y
0)中、R
y1およびR
y2はそれぞれ独立に、前記(i')~(vi')より選ばれる原子または基を表すか、R
y1とR
y2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、k
yおよびp
yはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【0139】
≪芳香族ポリエーテル系樹脂≫
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0140】
【化21】
式(1)中、R
1~R
4はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、a~dはそれぞれ独立に、0~4の整数を示す。
【0141】
【化22】
式(2)中、R
1~R
4およびa~dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR
1~R
4およびa~dと同義であり、Yは、単結合、-SO
2-または-CO-を示し、R
7およびR
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R
7はシアノ基ではない。
【0142】
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0143】
【化23】
式(3)中、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、-O-、-S-、-SO
2-、-CO-、-CONH-、-COO-または炭素数1~12の2価の有機基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、nは0または1を示す。
【0144】
【化24】
式(4)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0145】
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006-199945号公報や特開2008-163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0146】
≪フルオレンポリカーボネート系樹脂≫
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば、特開2008-163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0147】
≪フルオレンポリエステル系樹脂≫
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば、特開2010-285505号公報や特開2011-197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0148】
≪フッ素化芳香族ポリマー系樹脂≫
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008-181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0149】
≪アクリル系紫外線硬化型樹脂≫
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては、特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。アクリル系紫外線硬化型樹脂は、前記基材(i)として、ガラス支持体上やベースとなる樹脂製支持体上に化合物(A)および硬化性樹脂を含む透明樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合、該硬化性樹脂として特に好適に使用することができる。
【0150】
≪ゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂≫
ゾルゲル法によるシリカを主成分とする樹脂としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのフェニルアルコキシシラン等から選ばれる1種以上のシラン類の加水分解によるゾルゲル反応により得られる化合物を樹脂として使用することができる。
【0151】
≪市販品≫
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP-5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、(株)日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、新日鐵化学(株)製シルプラスなどを挙げることができる。
【0152】
<その他成分>
前記基材(i)は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに酸化防止剤、近紫外線吸収剤および蛍光消光剤等の添加剤を含有してもよい。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0153】
≪近紫外線吸収剤≫
前記近紫外線吸収剤としては、波長250~420nmの領域に少なくとも一つの吸収極大を有する化合物であれば特に限定されないが、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アントラセン系化合物などが挙げられる。
【0154】
(U-A)アゾメチン系化合物
前記アゾメチン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(U-1)で表すことができる。
【0155】
【化25】
式(U-1)中、R
a1~R
a5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基または炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表す。
【0156】
(U-B)インドール系化合物
前記インドール系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(U-2)で表すことができる。
【0157】
【化26】
式(U-2)中、R
b1~R
b5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、アラルキル基、炭素数1~9のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基または炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表す。
【0158】
(U-C)ベンゾトリアゾール系化合物
前記ベンゾトリアゾール系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(U-3)で表すことができる。
【0159】
【化27】
式(U-3)中、R
c1~R
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アラルキル基、炭素数1~9のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基、または置換基として炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を有する炭素数1~9のアルキル基を表す。
【0160】
(U-D)トリアジン系化合物
前記トリアジン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(U-4)、(U-5)または(U-6)で表すことができる。
【0161】
【0162】
【0163】
【化30】
式(U-4)~(U-6)中、R
d1は、独立に水素原子、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数3~8のシクロアルキル基、炭素原子数3~8のアルケニル基、炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子数7~18のアルキルアリール基またはアリールアルキル基を表す。ただし、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されてもよい。また、前記置換及び中断は組み合わされてもよい。R
d2~R
d9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数3~8のシクロアルキル基、炭素原子数3~8のアルケニル基、炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子数7~18のアルキルアリール基またはアリールアルキル基を表す。
【0164】
≪酸化防止剤≫
前記酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0165】
前記添加剤は、前記透明樹脂を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、前記透明樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
【0166】
<支持体>
≪樹脂製支持体≫
前記樹脂基板または樹脂製支持体に用いられる樹脂は、前述したとおりである。
【0167】
≪ガラス支持体≫
前記ガラス支持体としては、特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、ケイ酸塩系ガラス、ソーダ石灰ガラス、および近赤外線吸収ガラスなどが挙げられる。前記近赤外線吸収ガラスは、近赤外線カット特性を向上できる点と入射角依存性を低減できる点で好ましく、その具体例としては、銅成分を含有するフッ素リン酸塩系ガラスおよびリン酸塩系ガラスなどが挙げられる。
【0168】
<基材(i)の製造方法>
前記基材(i)が、前記化合物(A)を含有する樹脂製基板を含む基材である場合、該樹脂製基板は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングすることで、オーバーコート層が積層された基材を製造することができる。
【0169】
前記基材(i)が、ガラス支持体またはベースとなる樹脂製支持体上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合、例えば、ガラス支持体またはベースとなる樹脂製支持体に化合物(A)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、ガラス支持体またはベースとなる樹脂製支持体上に透明樹脂層が形成された基材を製造することができる。
【0170】
≪溶融成形≫
前記溶融成形としては、具体的には、樹脂と化合物(A)とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と化合物(A)とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、化合物(A)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0171】
≪キャスト成形≫
前記キャスト成形としては、化合物(A)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;または化合物(A)と、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
【0172】
前記基材(i)が、化合物(A)を含有する樹脂製基板からなる基材である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材(i)が、ガラス支持体またはベースとなる樹脂製支持体等の支持体などの上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
【0173】
前記支持体としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび透明樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)製支持体が挙げられる。
【0174】
さらに、ガラス板、石英または透明プラスチック製等の光学部品に、前記樹脂組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、前記硬化性組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に透明樹脂層を形成することもできる。
【0175】
前記方法で得られた透明樹脂層(樹脂製基板)中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶剤量は、透明樹脂層(樹脂製基板)の重さに対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる透明樹脂層(樹脂製基板)が得られる。
【0176】
<反射防止層>
本発明の光学フィルターは、前記基材(i)の少なくとも一方の面に反射防止層を有していてもよい。本発明における反射防止層とは、波長420nm以上1000nm以下の領域において、前記基材(i)の少なくとも一方の面に反射防止層を形成後の平均反射率が、前記基材(i)のみの平均反射率と同等あるいはより小さくなる効果を有する層である。
【0177】
前記反射防止層は、好ましくは波長420~1050nm、より好ましくは波長420~1100nm、さらに好ましくは420~1150nmの範囲全体にわたって反射防止特性を有することが望ましい。
【0178】
反射防止層としては、光の波長未満の大きさの多数の錐状構造を設け、入射媒体から基材へ連続的に屈折率を変化させた構造を有する層、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜、低屈折率材料層からなる薄膜が挙げられる。
【0179】
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、通常、屈折率が1.8~3.6である材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウム、チタン酸バリウム、ケイ素等を主成分とし、水素、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたもの;環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、マレイミド系樹脂、脂環エポキシ熱硬化型樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂等の透明樹脂に上記主成分を分散させたものが挙げられる。
【0180】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以下の材料を用いることができ、通常、屈折率が1.2~1.7である材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウム;環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、マレイミド系樹脂、脂環エポキシ熱硬化型樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂等の透明樹脂;あるいはシリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムまたは六フッ化アルミニウムナトリウムを前記透明樹脂に分散させたものが挙げられる。
【0181】
前記誘電体多層膜は、1~100nm程度の金属層および/または半導体層を有してもよい。金属層を構成する材料としては、屈折率が0.1以上~5.0以下の材料を用いることができる。このような材料としては、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、タングステン、チタン、マグネシウム、ニッケル、シリコン、ゲルマニウムが挙げられる。これら金属層および半導体層は、可視光領域の波長の消衰係数が高い傾向にあり、1~20nm程度の薄い層であることが好ましい。
【0182】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材(i)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。透明樹脂を含む層を積層する場合、上述の基材(i)の成形方法と同様に溶融成形またはキャスト成形、塗布形成することで、好ましくはスピンコート、ディップコート、スリットコート、グラビアコートなどで形成することができる。
【0183】
本発明の光学フィルターは、上述したように、要件(e)を満たすことが好ましい。すなわち、前記基材(i)の片面に誘電体多層膜を有し、前記誘電体多層膜を構成する層の中で厚みが0.5μm以下である層の層数(N)と、厚みが0.5μm以下である各層の厚みの和(TN)(μm)との積(N×TN)が150以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。前記積(N×TN)が前記範囲にあると、多層膜形成にかかる時間、各層の構成材料切り替えに関わる手間や時間ロスを小さくすることができるため、誘電体多層膜の製造に要する時間を短縮することができ、製造コストを削減することができる。
【0184】
前記誘電体多層膜(反射防止層)における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として2層~30層であることが好ましく、2~22層であることがより好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
【0185】
<その他の機能膜>
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材(i)と反射防止層(誘電体多層膜)との間、基材(i)の反射防止層が設けられた面と反対側の面、または反射防止層の基材(i)が設けられた面と反対側の面に、基材(i)や反射防止層の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
【0186】
本発明の光学フィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0187】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材(i)または反射防止層に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0188】
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材(i)または反射防止層上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0189】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0190】
また、前記硬化性組成物は重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0191】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止層ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0192】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。
【0193】
これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記機能膜の厚さは、好ましくは0.9~30μm、さらに好ましくは0.9~20μm、特に好ましくは0.9~5μmである。0.9μm以下の場合、前記同様、光学干渉の影響が強くなり、反射防止層の効果を阻害する傾向にある。
【0194】
また、基材(i)と機能膜および/または反射防止層との密着性や、機能膜と反射防止層との密着性を上げる目的で、基材(i)、機能膜または反射防止層の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0195】
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、赤色の感度が高く、ゴーストを改善した特性を有する。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、スマートフォン用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、携帯ゲーム機、指紋認証システム、環境光センサー、距離測定センサー、虹彩認証システム、顔認証システム、距離測定カメラ、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。
【0196】
<固体撮像装置>
本発明の固体撮像装置は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とはCCDやCMOSなどといった固体撮像素子を備えたイメージセンサーである。固体撮像素子を構成する部材としては、シリコンフォトダイオードや有機半導体などの特定の波長の光を電荷に変換する光電変換素子が使用される。
【0197】
<カメラモジュール>
本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、カメラモジュールとは、イメージセンサーや焦点調整機構、あるいは位相検出機構、距離測定機構等を備え、画像や距離情報を電気信号として出力する装置である。
【実施例】
【0198】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「質量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
【0199】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0200】
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0201】
<分光透過率>
光学フィルターの各波長域における透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。
ここで、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率では、
図1(A)のように光学フィルター2に対して垂直に透過した光1を分光光度計3で測定し、光学フィルターの垂直方向に対して30度の角度から測定した場合の透過率では、
図1(B)のように光学フィルター2の垂直方向に対して30度の角度で透過した光1'を分光光度計3で測定し、光学フィルターの垂直方向に対して60度の角度から測定した場合の透過率では、
図1(C)のように光学フィルター2の垂直方向に対して60度の角度で透過した光1''を分光光度計3で測定した。
【0202】
<分光反射率>
光学フィルターの各波長域における反射率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。 ここで、光学フィルターの垂直方向に対して5度の角度から測定した場合の反射率では、
図2のように光学フィルター2の垂直方向に対して5度の角度で反射した光11を分光光度計3で測定した。
【0203】
下記実施例で用いた近赤外線吸収色素は、一般的に知られている方法で合成した。一般的合成方法としては、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63-124054号公報、「フタロシアニン-化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007-169315号公報、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報等などに記載されている方法を挙げることができる。
【0204】
<化合物(A)の評価>
ジクロロメタン中における色素の吸収特性 波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸収波長λmaxが波長850nm以上935nm以下である化合物(c-35)、(a-63)、(a-74)および(c-27)をジクロロメタンに溶解し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、UV-3100)を用いて波長別透過率を測定し、波長850nm以上935nm未満の領域における最大吸収波長λmax、波長650nm以上950nm未満の領域における最大吸光係数ελmax(=1で規格化)、最大吸光係数ελmaxを1で規格化したときの波長(λmax-10nm)における吸光係数ελmax-10nm、最大吸光係数ελmaxを1で規格化したときの波長(λmax+10nm)における吸光係数ελmax+10nm、最大吸光係数ελmaxを1で規格化したときの波長430nm以上580nm以下の領域における波長別吸光係数の平均値ε430-580aveを算出した。これらの結果を表20に示す。
【0205】
<樹脂合成例1>
3Lの4つ口フラスコに2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂A」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が75,000、質量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0206】
<樹脂合成例2>
下記式(8)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0207】
【化31】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C
6H
5)
3]
3を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm
2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂B」ともいう。)を得た。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が32,000、質量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0208】
[実施例A1]
実施例A1では、樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0209】
<樹脂製基板(光学フィルター)の作製>
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、近紫外線吸収剤としてオリエント化学工業社製の光吸収剤「UA-3912」(以下「化合物(u-1)」という。)0.07部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.03部、上記化合物(b-39)0.07部、上記化合物(a-47)0.04部、上記化合物(a-89)0.15部、上記化合物(a-63)0.05部、上記化合物(a-74)0.05部および上記化合物(c-27)0.03部、ならびにN,N-ジメチルアセトアミドを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間乾燥した後、60℃で8時間乾燥、さらに減圧下140℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.100mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板からなる光学フィルターを得た。
【0210】
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30度および60度の角度からの分光透過率と、光学フィルターの垂直方向に対して5度の角度からの分光反射率と、もう一方の面における垂直方向に対して5度の角度からの分光反射率とを測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターについて基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の層数(N)は0、基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の各膜厚の和(TN)(μm)は0.0、(N)と(TN)(μm)の積は0であった。これらの結果を表14に示す。
【0211】
[実施例A2]
実施例A2では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0212】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、近紫外線吸収剤として川崎化成社製の光吸収剤「UVS-581」(以下「化合物(u-2)」という。)0.2部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.03部、上記化合物(c-93)0.10部、上記化合物(a-89)0.10部および上記化合物(c-35)0.30部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.100mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板を得た。
【0213】
<基材および光学フィルターの作製>
得られた樹脂製基板の片面に、下記組成の樹脂組成物(3)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが4μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、樹脂組成物(3)を硬化させ、樹脂製基板上に樹脂層を形成した。同様に、樹脂製基板のもう一方の面にも樹脂組成物(3)からなる樹脂層を形成し、化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0214】
樹脂組成物(3):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度(TSC):30%)
【0215】
[実施例A3]
実施例A3では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0216】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、近紫外線吸収剤として上記化合物(u-2)0.30部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.04部、上記化合物(b-39)0.04部、上記化合物(c-93)0.14部、上記化合物(c-35)0.27部および上記化合物(c-27)0.11部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を用いたこと以外は実施例A1と同様にして、厚さ0.100mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板を得た。
【0217】
<基材および光学フィルターの作製>
得られた樹脂製基板の片面に、前記樹脂組成物(3)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整したこと以外は実施例A2と同様にして、化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0218】
[実施例A4]
実施例A4では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0219】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B100質量部、近紫外線吸収剤として上記化合物(u-2)0.30部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.06部および上記化合物(b-39)0.07部、上記化合物(c-93)0.20部および上記化合物(c-35)0.20部、化合物(B)として上記化合物(B-1)0.33部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を用いたこと以外は実施例A1と同様にして、厚さ0.100mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板を得た。
【0220】
<基材および光学フィルターの作製>
得られた樹脂製基板の片面に、前記樹脂組成物(3)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整したこと以外は実施例A2と同様にして、化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0221】
[実施例A5]
実施例A5では、ガラス基板を含む基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0222】
<樹脂溶液(D-1)の調製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、近紫外線吸収剤として上記化合物(u-1)5.00部、化合物(A)として、上記化合物(b-39)2.50部、上記化合物(a-20)2.50部および上記化合物(a-47)2.50部、上記化合物(c-35)5.00部、上記化合物(a-63)5.00部、上記化合物(c-27)2.50部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が10質量%の溶液を調製した。その後、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して樹脂溶液(D-1)を得た。
【0223】
<樹脂組成物(2)の調製>
イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM-315、東亜合成化学(株)製)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20質量部、メタクリル酸20質量部、メタクリル酸グリシジル30質量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)5質量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1質量部を混合し、固形分濃度が50wt%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、孔径0.2μmのミリポアフィルタでろ過し、樹脂組成物(2)を調製した。
【0224】
<基材および光学フィルターの作製>
縦200mm、横200mmの大きさにカットした、松波硝子工業(株)製近赤外線吸収ガラス基板「BS-11」(厚み80μm)の片面に、前記樹脂組成物(2)をスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去し、後述する透明樹脂層との接着層として機能する樹脂層を形成した。この際、該樹脂層の膜厚が0.8μm程度となるようにスピンコーターの塗布条件を調整した。
【0225】
次に、該樹脂層上に、スピンコーターを用いて樹脂溶液(D-1)を乾燥後の厚みが2μmとなるような条件で塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱し、溶剤を揮発除去して透明樹脂層を形成した。次いで、ガラス面側からコンベア式露光機を用いて露光(露光量1J/cm2、照度200mW)した後、オーブン中230℃で20分間焼成して縦200mm、横200mmの基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0226】
[実施例A6]
実施例A6では、ガラス基板を含む基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0227】
<樹脂溶液(D-2)の調製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、近紫外線吸収剤として上記化合物(u-2)7.50部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)1.00部、上記化合物(b-39)0.88部、上記化合物(c-93)3.50部、上記化合物(c-35)6.75部および上記化合物(c-27)2.75部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が10質量%の溶液を調製した。その後、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して樹脂溶液(D-2)を得た。
【0228】
<基材および光学フィルターの作製>
縦200mm、横200mmの大きさにカットした、日本電気硝子株式会社製の極薄ガラスフィルム「OA-10G」(商品名、厚さ100μm)の片面に前記樹脂組成物(2)をスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去し、後述する透明樹脂層との接着層として機能する樹脂層を形成した。この際、該樹脂層の膜厚が0.8μm程度となるようにスピンコーターの塗布条件を調整した。次に、樹脂層上に、スピンコーターを用いて樹脂溶液(D-2)を乾燥後の膜厚が4μmとなるような条件で塗布したこと以外は実施例A5と同様にして、縦200mm、横200mmの基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0229】
[実施例A7]
実施例A7では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0230】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.05部、上記化合物(b-39)0.05部、上記化合物(a-89)0.10部、上記化合物(a-63)0.10部、上記化合物(a-74)0.05部および化合物(B)として、上記化合物(B-1)0.30部ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。それ以外は実施例A2と同様の手順で化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0231】
[実施例A8]
実施例A8では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0232】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、化合物(A)として、上記化合物(a-47)0.21部、上記化合物(a-89)0.05部、上記化合物(a-63)0.05部、および上記化合物(a-74)0.06部ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。それ以外は実施例A2と同様の手順で化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0233】
[実施例A9]
実施例A9では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0234】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.06部、上記化合物(b-39)0.08部、上記化合物(a-63)0.22部、および上記化合物(a-74)0.10部ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。それ以外は実施例A2と同様の手順で化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0235】
[比較例A1]
比較例A1では、ガラス基板を含む基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0236】
<光学フィルターの作製>
特許6267823号公報の[0075]~[0079]および[0102]の実施例手順に従い、特許6267823号公報の実施例22に相当する、ガラス基板を含む光学フィルター(厚み380μm)を作成した。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0237】
[比較例A2]
比較例A2では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0238】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例2で得られた樹脂B 100質量部、近紫外線吸収剤として上記化合物(u-1)0.07部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.03部、上記化合物(b-39)0.07部および上記化合物(a-47)0.04部、上記化合物(a-89)0.10部および上記化合物(a-63)0.05部、ならびにジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を用いたこと以外は実施例A1と同様にして、厚さ0.100mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板を得た。
【0239】
<基材および光学フィルターの作製>
得られた樹脂製基板の片面に、前記樹脂組成物(3)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整したこと以外は実施例A2と同様にして、化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例A1と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0240】
[比較例A3]
比較例A3では、樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0241】
<樹脂製基板(光学フィルター)の作製>
実施例A1と同様の方法で樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間乾燥した後、60℃で8時間乾燥、さらに減圧下140℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.200mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板からなる光学フィルターを得た。得られた光学フィルターは残留溶媒が多いため白化しており、分光透過率の評価はできなかった。
【0242】
【0243】
[実施例B1]
実施例B1では、樹脂製基板からなる基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0244】
<光学フィルターの作製>
実施例A1と同様の手順で樹脂製基板からなる基材を得た。得られた基材の両面に下記表15に示す設計(III)の反射防止層を以下の手順で形成した。まず、前記基材の片面に、樹脂組成物(4)(荒川化学社製「オプスター TU2360」;590nmの屈折率:1.39)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが106.3nmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、樹脂組成物(4)を硬化させ、樹脂製基板上に反射防止層を形成した。同様に、樹脂製基板のもう一方の面にも樹脂組成物(4)からなる反射防止層を形成することにより光学フィルターを得た。
【0245】
【0246】
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30度および60度の角度からの分光透過率と、光学フィルターの垂直方向に対して5度の角度からの分光反射率と、もう一方の面における垂直方向に対して5度の角度からの分光反射率とを測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターについて基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の層数(N)は2、基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の各膜厚の和(TN)(μm)は0.2、(N)と(TN)(μm)の積は0.4であった。これらの結果を表19に示す。
【0247】
[実施例B2]
実施例B2では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0248】
<光学フィルターの作製>
実施例A2と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、下記表16に示す設計(IV)の反射防止層[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜]を蒸着温度120℃で形成することにより光学フィルターを得た。
【0249】
【0250】
得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。また、得られた光学フィルターについて基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の層数(N)は12、基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の各膜厚の和(TN)(μm)は0.5、(N)と(TN)(μm)の積は6.0であった。これらの結果を表19に示す。
【0251】
[実施例B3]
実施例B3では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0252】
<光学フィルターの作製>
実施例A3と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、前記設計(IV)の反射防止層[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜]を蒸着温度120℃で形成することにより光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0253】
[実施例B4]
実施例B4では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0254】
<光学フィルターの作製>
実施例A4と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に前記設計(III)の反射防止層を実施例B1と同様にして形成することにより光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0255】
[実施例B5]
実施例B5では、ガラス基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0256】
<光学フィルターの作製>
実施例A5と同様の手順でガラス基板の片面に透明樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、下記表17に示す設計(V)の反射防止層[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜]を蒸着温度120℃で形成することにより光学フィルターを得た。
【0257】
【0258】
得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。また、得られた光学フィルターについて基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の層数(N)は8、基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の各膜厚の和(TN)(μm)は0.5、(N)と(TN)(μm)の積は4.0であった。これらの結果を表19に示す。
【0259】
[実施例B6]
実施例B6では、ガラス基板を含む基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0260】
<光学フィルターの作製>
実施例A6と同様の手順でガラス基板の片面に透明樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、前記設計(V)の反射防止層[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜]を蒸着温度120℃で形成することにより光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0261】
[実施例B7]
実施例B7では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0262】
<光学フィルターの作製>
実施例A7と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、実施例B5と同様の手順で光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0263】
[実施例B8]
実施例B8では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0264】
<光学フィルターの作製>
実施例A8と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、実施例B5と同様の手順で光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0265】
[実施例B9]
実施例B9では、樹脂製基板を含む基材の両面に反射防止層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0266】
<光学フィルターの作製>
実施例A9と同様の手順で樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。得られた基材の両面に、実施例B5と同様の手順で光学フィルターを得た。得られた光学フィルターについて、実施例B1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0267】
[比較例B1]
比較例B1では、基材の両面に近赤外線反射層を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作製した。
【0268】
<樹脂製基板の作製>
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、化合物(A)として、上記化合物(a-17)0.08部および上記化合物(b-39)0.11部、ならびにN,N-ジメチルアセトアミドを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を用いたこと以外は実施例A1と同様にして、厚さ0.070mm、縦200mm、横200mmの樹脂製基板を得た。
【0269】
<基材および光学フィルターの作製>
得られた樹脂製基板の片面に、前記樹脂組成物(3)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整したこと以外は実施例A2と同様にして、化合物(A)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。
【0270】
得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、下記表18に示す設計(I)と設計(II)の近赤外線カット層[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜]を蒸着温度120℃で形成し、厚さ0.079mmの光学フィルターを得た。
【0271】
【0272】
得られた光学フィルターについて実施例B1と同様の評価を行った。また、得られた光学フィルターについて基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の層数(N)は46、基材に積層された膜厚0.5μm以下の層の各膜厚の和(TN)(μm)は5.3、(N)と(TN)(μm)の積は243.8であった。これらの結果を表19に示す。
【0273】
【0274】
上記表14および表19中の基材の構成、各種化合物などの記号は下記の通りである。
<ガラス基板>
ガラス基板(1):近赤外線吸収ガラス基板「BS-11」(松浪硝子工業(株)製)
ガラス基板(4):極薄ガラスフィルム「OA-10G」(日本電気硝子株式会社製)
ガラス基板(X):透明ガラス基板(特許6267823号公報[0075]~[0078]参照)
【0275】
<樹脂組成物>
樹脂組成物(2):イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM-315、東亜合成化学(株)製)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20質量部、メタクリル酸20質量部、メタクリル酸グリシジル30質量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)5質量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、固形分濃度(TSC)50%)
樹脂組成物(3):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度(TSC):30%)
樹脂組成物(4):オプスター TU2360(荒川化学社製)
樹脂組成物(X):リン酸銅含有樹脂組成物(特許6267823号公報[0075]~[0078]参照)
【0276】
<光吸収剤>
≪近紫外線吸収剤≫
化合物(u-1):オリエント化学工業社製の光吸収剤「UA-3912」(ジクロロメタン中での極大吸収波長389nm)化合物(u-2):川崎化成社製の光吸収剤「UVS-581」(ジクロロメタン中での極大吸収波長367nm)
【0277】
≪化合物(A)≫
化合物(a-17):(ジクロロメタン中での極大吸収波長713nm)
化合物(b-39):(ジクロロメタン中での極大吸収波長736nm)
化合物(a-20):(ジクロロメタン中での極大吸収波長704nm)
化合物(a-47):(ジクロロメタン中での極大吸収波長776nm)
化合物(c-93):(ジクロロメタン中での極大吸収波長770nm)
化合物(a-63):(ジクロロメタン中での極大吸収波長868nm)
化合物(a-89):(ジクロロメタン中での極大吸収波長822nm)
化合物(c-35):(ジクロロメタン中での極大吸収波長870nm)
化合物(a-74):(ジクロロメタン中での極大吸収波長933nm)
化合物(c-27):(ジクロロメタン中での極大吸収波長933nm)
【0278】
【0279】
≪化合物(B)≫
化合物(B-1):日本カーリット社製の光吸収剤「CIR-RL」(ジクロロメタン中での吸収極大波長1095nm)
【符号の説明】
【0280】
1',1''・・・光
2・・・光学フィルター
3・・・分光光度計
11・・・反射光