(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】海洋生分解促進剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240618BHJP
C08G 65/338 20060101ALI20240618BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240618BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240618BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20240618BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240618BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240618BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
C08L101/00 ZBP
C08G65/338
C08L1/00
C08L3/00
C08L5/00
C08L71/02
C09K3/00 R
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020098335
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】橋場 俊文
(72)【発明者】
【氏名】松坂 恵里奈
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-281805(JP,A)
【文献】特開2004-018680(JP,A)
【文献】特表2013-503921(JP,A)
【文献】特表2009-541502(JP,A)
【文献】特開2020-125256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08G
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを含む1種以上のアニオン
並びにカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン及びバリウムイオンから選ばれる少なくとも1種の2価以上の金属カチオンを含み、前記アニオンとカチオンとがイオン結合により結合している化合物からなる海洋生分解促進剤であって、
当該化合物からなる粒子群に水滴を落とし、30秒経過後の接触角が30°以上であ
り、
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンが、アルギン酸1価塩、カルボキシメチルセルロース1価塩、加工デンプンの1価塩、ヒアルロン酸1価塩、コンドロイチン硫酸1価塩、並びにグリコサミノグリカン誘導体の1価塩、セルロース誘導体の1価塩、デンプン誘導体の1価塩、キトサン誘導体の1価塩及びキチン誘導体の1価塩から選ばれる少なくとも1種の多糖類の1価塩から選ばれる水溶性アニオン性ポリマーに由来するものであり、
前記水溶性アニオン性ポリマーと2価以上の金属カチオンとからなる架橋ポリマーを、1価カルボン酸塩、1価アミノ酸誘導体塩、1価硫酸エステル塩、1価スルホン酸塩、1価リン酸エステル塩及び1価乳酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種の炭素数6~30のアニオンを有する塩化合物である疎水化剤を用いて疎水化処理してなるものである海洋生分解促進剤。
【請求項2】
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンが、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムから選ばれるものである請求項1記載の海洋生分解促進剤。
【請求項3】
前記疎水化剤が、炭素数6~30の1価カルボン酸塩又は炭素数6~30の1価アミノ酸誘導体塩である請求項1又は2記載の海洋生分解促進剤。
【請求項4】
炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを含む1種以上のアニオン並びにカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン及びバリウムイオンから選ばれる少なくとも1種の2価以上の金属カチオンを含み、前記アニオンとカチオンとがイオン結合により結合している化合物からなる海洋生分解促進剤であって、
当該化合物からなる粒子群に水滴を落とし、30秒経過後の接触角が30°以上であり、
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンが、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオン、又は炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有し、1価アニオン性置換基を2つ有するアニオンであり、
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオンが、炭素数6~30の1価アルコール、炭素数6~30の1価アミノ化合物若しくはHLB値が16以下の(ポリ)アルキレングリコールエーテルにカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アニオン及びリン酸アニオンから選ばれる1価アニオン性官能基を1つ導入したもの、又は炭素数6~30のアミノ酸誘導体塩若しくは炭素数6~30のスルホン酸塩に由来するものであり、
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有し、1価アニオン性置換基を2つ有するアニオンが、炭素数6~30の2価アルコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)テトラメチレンエーテルグリコール、(ポリ)ヘキサメチレンエーテルグリコール及び(ポリ)オクタメチレンエーテルグリコールから選ばれる(ポリ)アルキレングリコール若しくはこれらの共重合体にカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アニオン及びリン酸アニオンから選ばれる1価アニオン性官能基を2つ導入したもの、又は炭素数6~30のジカルボン酸塩若しくは炭素数6~30のジスルホン酸塩に由来するものである海洋生分解促進剤。
【請求項5】
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオンが、HLB値が16以下の(ポリ)アルキレングリコールエーテルにカルボン酸アニオン及びスルホン酸アニオンから選ばれる1価アニオン性官能基を1つ導入したもの、炭素数6~30のアミノ酸誘導体塩又は炭素数6~30のスルホン酸塩に由来するものであり、
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有し、1価アニオン性置換基を2つ有するアニオンが、(ポリ)プロピレングリコール若しくは(ポリ)ブチレングリコールにカルボン酸アニオン及びスルホン酸アニオンから選ばれる1価アニオン性官能基を2つ導入したもの、又は炭素数6~30のジカルボン酸塩若しくは炭素数6~30のジスルホン酸塩に由来するものである請求項4記載の海洋生分解促進剤。
【請求項6】
100gあたりの吸水量が100gあたりの吸油量よりも小さいものである請求項1
~5のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤。
【請求項7】
25℃において、水に不溶であり、3質量%塩化ナトリウム水溶液に可溶である請求項1
~6のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤。
【請求項8】
海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、168時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1(%)とし、海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように水に分散させ、室温で24時間経過後の経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1(%)とするとき、WD1/SD1が0.9以下である請求項1~
7のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤。
【請求項9】
粒子状である請求項1~
8のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤及び樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂が、生分解性樹脂である請求項1
0記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1
0又は1
1記載の樹脂組成物から得られる成形体。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか1項記載の海洋生分解促進剤を含む表層改質剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生分解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックによる環境汚染(海洋汚染)及び生態系への悪影響が問題となっており、環境負荷を低減するための様々な取り組みが始まっている。その中で、生分解性樹脂の開発及び普及に注目が集まっている。
【0003】
一方で、一般的な生分解性樹脂は、土壌や汚泥等、分解を担う微生物が多く存在する環境下では高い生分解性を示すものの、海洋中のように、微生物濃度が極端に低い環境では分解し難いという欠点がある(非特許文献1)。また、ポリカプロラクトン(PCL)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)等のように、海洋中での生分解性が報告されている樹脂についても、その分解速度は、海水の種類により大きく異なることが分かってきており、これには、海水中の分解菌の有無や菌数、塩濃度、pH、水温、溶存酸素濃度、溶存有機炭素量等の様々な要因が影響していると報告されている(非特許文献2)。
【0004】
そこで、どのような種類の海水でも確実に分解が進む材料や、海水中で生分解が進み難い樹脂の分解促進剤となるような材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】高田秀重、「マイクロプラスチック汚染の現状、国際動向および対策」、廃棄物資源循環学会誌、Vol. 29, No. 4, pp. 261-269, 2018
【文献】戎井章 他4名、「海水中における生分解性プラスチックの分解」、水産工学、Vol. 40 No. 2, pp. 143~149, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、特に海洋中での樹脂等の生分解を促進するための生分解促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを含む1種以上のアニオン及び2価以上の金属カチオンを含み、前記アニオンとカチオンとがイオン結合により結合している所定の疎水性化合物からなる材料が、淡水には溶解せず、疎水性であるにもかかわらず、海水には徐々に溶解することを見出した。一般的な生分解性樹脂と異なり、海水中での一次分解(低分子化)を担うのは加水分解、酵素、微生物による主分解ではなく、ナトリウム等の金属イオンによる分子切断であるため、本材料は海水の種類によらず、安定した一次分解を起こし、海水に溶解又は馴染む構造へ低分子化されることで、加水分解、酵素、微生物による分解を大きく助長することができる。さらに、本材料を樹脂、特に生分解性樹脂と組み合わせるに至って使用することで、本材料が先行して海水中で一次分解し、(1)樹脂材料中に空孔が形成され、樹脂の比表面積が増加し、分解を担う微生物の増殖を促す効果や、(2)一次分解することで、二次分解、すなわち微生物による生分解を促進する効果が得られ、結果的に樹脂材料の海洋中での生分解を促進できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記海洋生分解促進剤を提供する。
1.炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを含む1種以上のアニオン及び2価以上の金属カチオンを含み、前記アニオンとカチオンとがイオン結合により結合している化合物からなる海洋生分解促進剤であって、
当該化合物からなる粒子群に水滴を落とし、30秒経過後の接触角が30°以上である海洋生分解促進剤。
2.100gあたりの吸水量が100gあたりの吸油量よりも小さいものである1の海洋生分解促進剤。
3.25℃において、水に不溶であり、3質量%塩化ナトリウム水溶液に可溶である1又は2の海洋生分解促進剤。
4.海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、168時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1(%)とし、海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように水に分散させ、室温で24時間経過後の経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1(%)とするとき、WD1/SD1が0.9以下である1~3のいずれかの海洋生分解促進剤。
5.粒子状である1~4のいずれかの海洋生分解促進剤。
6.前記金属カチオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン及びバリウムイオンから選ばれる少なくとも1種である1~5のいずれかの海洋生分解促進剤。
7.前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンが、水溶性アニオン性ポリマーに由来するものである1~6のいずれかの海洋生分解促進剤。
8.前記水溶性アニオン性ポリマーと2価以上の金属カチオンとからなる架橋ポリマーを疎水化処理してなるものである7の海洋生分解促進剤。
9.前記水溶性アニオン性ポリマーが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸エステル基、又はこれらの官能基の水素原子を1価の金属で置換した構造のアニオン系官能基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有するものである7又は8の海洋生分解促進剤。
10.前記疎水化処理が、1価カルボン酸塩、1価アミノ酸誘導体塩、1価硫酸エステル塩、1価スルホン酸塩、1価リン酸エステル塩及び1価乳酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種の疎水化剤を用いてなされるものである9の海洋生分解促進剤。
11.炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンが、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオン、又は炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有し、1価アニオン性置換基を2つ有するアニオンである1~6のいずれかの海洋生分解促進剤。
12.1~11のいずれかの海洋生分解促進剤及び樹脂を含む樹脂組成物。
13.前記樹脂が、生分解性樹脂である12の樹脂組成物。
14.12又は13の樹脂組成物から得られる成形体。
15.1~11のいずれかの海洋生分解促進剤を含む表層改質剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の海洋生分解促進剤は海水に溶解するため、これを含む組成物や成形体は、海洋中での生分解が促進され、海洋汚染対策に有用である。本発明の海洋生分解促進剤を用いることで、環境にやさしい組成物や成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1-1で得られた疎水性アルギン酸粒子群A1のSEM写真(2,000倍)である。
【
図2】実施例1-2で得られた疎水性アルギン酸粒子群A2のSEM写真(1,000倍)である。
【
図3】実施例4-2のフィルムを水に浸漬して30日後及び3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して30日後のSEM写真(1,000倍)である。
【
図4】実施例5-4のフィルムを水に浸漬して7日後及び3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して7日後のSEM写真(300倍)である。
【
図5】実施例6、比較例6の生分解性試験の結果を示す図である。
【
図6】実施例8-1のフィルムを3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して21日後の表層部のSEM写真(150倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[海洋生分解促進剤]
本発明の海洋生分解促進剤は、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを含む1種以上のアニオン及び2価以上の金属カチオンを含み、前記アニオンとカチオンとがイオン結合により結合している化合物からなる生分解促進剤であって、当該化合物からなる粒子群に水滴を落とし、30秒経過後の接触角が30°以上であるものである。
【0012】
この場合、疎水化の効果や、環境下における溶解性、分解性が十分に発揮される。前記効果を得やすいことから、接触角は、40°以上、50°以上、60°以上、70°以上、80°以上の順で好ましい。接触角の上限は、特に限定されないが、現実的な値としては170°以下であり、160°以下、150℃以下、140°以下である。なお、実用的な疎水効果と、海水への溶解、生分解に要する時間等を考慮すると、前記接触角は、40°~160°を満たすことが好ましく、50°~150°を満たすことがより好ましく、60°~140°を満たすことが更に好ましく、70°~130°を満たすことが最も好ましい。なお、本発明において接触角は、前記海洋生分解促進剤の粒子群を1mg/cm2になるように平板に均一に塗布し、そこへ水滴を一滴落とした後30秒後の接触角である。接触角は、接触角計(例えば、協和界面科学(株)製Drop Master 300)を用いて測定することができる。
【0013】
前記海洋生分解促進剤は、100gあたりの吸水量(Aw(mL/100g))が100gあたりの吸油量(Aо(mL/100g))よりも小さい((Aw/Aо)<1)ことが好ましい。(Aw/Aо)<1を満たすことによって、使用時は疎水性の効果を発揮しつつ、水には溶けない状態を維持し、海水(塩水)中においては徐々に溶解し、微生物によって分解しやすくなる。前記効果を得やすいことから、Aw及びAоは、(Aw/Aо)≦0.75を満たすことがより好ましく、(Aw/Aо)≦0.65を満たすことが更に好ましく、(Aw/Aо)≦0.5を満たすことが最も好ましい。
【0014】
前記海洋生分解促進剤の吸水量は、100mL/100g以下であることが好ましく、80mL/100g以下であることがより好ましく、60mL/100g以下であることが更に好ましく、50mL/100g以下が最も好ましい。吸水量が100mL/100g以下であれば、アクリルやナイロン等の既存の汎用ポリマー粒子の用途と同様に遜色なく、使用可能となる。なお、吸水量の下限は、前記効果を得やすいことから、1mL/100g以上が好ましく、5mL/100g以上がより好ましく、10mL/100g以上が更に好ましい。
【0015】
一方、前記海洋生分解促進剤は、その吸油量が、35mL/100g以上であることが好ましく、50mL/100g以上であることがより好ましく、70mL/100g以上であることが更に好ましい。吸油量が35mL/100g以上であれば、化粧品用途の場合、油剤との馴染みが良くなることで分散性が上がり、また、エマルションやクリームの安定性が上がる。吸油量の上限は、前記効果を得やすいことから、200mL/100g以下が好ましく、150mL/100g以下がより好ましく、130mL/100g以下が更に好ましい。
【0016】
吸水量及び吸油量は、後述する疎水化処理剤の種類、付着量等を調整することで、調整が可能である。なお、本発明において、吸油量は、JIS K 5101に記される煮あまに油法に準拠して測定される値である。吸水量は、以下の方法により得られる値である。500mLのビーカーに各前記海洋生分解促進剤を1g入れ、次にイオン交換水を200mL加え、30分間攪拌し、その後500mLの遠心管に移し、遠心分離機を用いて遠心分離を行う。遠心分離後、上清を静かに捨て遠心管より試料を取り出し、重量(Ww)を測定し、その後105℃の乾燥器で恒量になるまで乾燥し、乾燥重量(Dw)を測定し、下記式により吸水量を算出する。
吸水量(mL/100g)=[(Ww-Dw)/Dw]×100
【0017】
また、前記海洋生分解促進剤は、該海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、168時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をSD1(%)とし、該海洋生分解促進剤を0.1質量%となるように水に分散させ、24時間経過後の波長560nmの光の透過率をWD1(%)としたとき、WD1/SD1が、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。0.9以下であれば、当該海洋生分解促進剤粒子の形状が変化し、溶解を伴い、透明化していく現象が確認できる。なお、WD1/SD1下限は、特に限定されないが、通常0.1程度である。
【0018】
168時間程度で溶解化現象が確認できない場合は、海洋生分解促進剤としての役割が果たせない。例えば、海洋中において、環境汚染(海洋汚染)、化学物質の吸着及び生態系への悪影響が懸念されることから、これらを超過し過ぎた長期間の粒子形状維持は好ましくない場合がある。よって、環境影響への配慮と生分解促進効果の観点からは、168時間程度ではWD1/SD1≦0.9を少なくとも満たしていることが好ましい。
【0019】
本発明の海洋生分解促進剤は、粒子状であることが好ましい。前記海洋生分解促進剤からなる粒子群の場合は、その平均粒子径が5mm以下であることが好ましく、1mm以下、500μm以下、100μm以下、60μm以下、30μm以下、15μm以下、10μmの順で好ましい。また、その下限は、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1.0μmが更に好ましい。なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回析・散乱法による体積平均粒子径(MV)である。
【0020】
海洋生分解促進剤が粒子状である場合、その形状は、球状、略球状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものや物理的に粉砕したもの等、特に限定されないが、風合い、滑り性、粒径分布を制御の観点から、球状、略球状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものが好ましい。なお、前記海洋生分解促進剤からなる粒子群を圧縮成形や溶融成型し、ペレット状にしてもよい。
【0021】
前記金属カチオンとしては、特に限定されないが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、バリウムイオン、白金イオン、金イオン、ストロンチウムイオン、ラジウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン等が挙げられる。これらのうち、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、バリウムイオンが好ましく、溶解性や環境面を考慮するとカルシウムイオン、マグネシウムイオンがより好ましい。
【0022】
本発明の海洋生分解促進剤は、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンとして水溶性アニオン性ポリマーと、2価以上の金属カチオンとを含む架橋ポリマーを疎水化処理して得られるもの(以下、疎水化ポリマーともいう。)、及び炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンを、2価以上の金属カチオンで結合して得られるもの(以下、疎水化化合物ともいう。)に分類される。以下、これらの具体的な態様について説明する。
【0023】
[疎水化ポリマー]
本発明の海洋生分解促進剤の第1の態様は、水溶性アニオン性ポリマーと2価以上の金属カチオンとを含む架橋ポリマーを疎水化処理して得られる疎水化ポリマーからなるものである。前記水溶性アニオン性ポリマーとしては、原料がバイオマス由来であり、生分解性の構造を有していることから、特に天然ポリマー由来のものが最適である。
【0024】
前記水溶性アニオン性ポリマーとして好ましくは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸1価塩;カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、CMCカリウム、CMCアンモニウム等のCMC1価塩;オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の加工デンプンの1価塩;ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸1価塩;コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸1価塩;並びにグリコサミノグリカン誘導体の1価塩、セルロース誘導体の1価塩、デンプン誘導体の1価塩、キトサン誘導体の1価塩及びキチン誘導体の1価塩から選ばれる少なくとも1種の多糖類の1価塩等が挙げられる。2価以上の金属カチオンとしては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0025】
前記架橋ポリマーとしては、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ストロンチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸バリウム、アルギン酸ラジウム、アルギン酸鉛、アルギン酸亜鉛、アルギン酸ニッケル、アルギン酸鉄、アルギン酸銅、アルギン酸カドミウム、アルギン酸コバルト、アルギン酸マンガン等のアルギン酸多価金属塩;CMCカルシウム等のCMC多価金属塩;オクテニルコハク酸デンプンカルシウム、デンプングリコール酸カルシウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム等の加工デンプンの多価金属塩;コンドロイチン硫酸カルシウム等のコンドロイチン硫酸多価金属塩等が挙げられる。
【0026】
前記疎水化処理に用いる化合物(以下、疎水化剤ともいう。)としては、炭素数が6以上のアニオンを有する塩化合物が好ましい。前記アニオンの炭素数は、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましい。前記アニオンの炭素数の上限は、特に限定されないが、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。また、前記塩化合物は、1価カチオンを有する塩化合物が好ましく、1価金属カチオンを有する塩化合物がより好ましい。また、前記塩化合物は、室温又は80℃以下で水に溶解するものが好ましい。このようなものであれば、海水中によく馴染み、良好な生分解速度が得られる。また、親水性基として、カルボキシ基、エステル結合、スルホン基、エーテル結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0027】
前記疎水化剤の具体例としては、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、乳酸エステル塩等が挙げられる。前記疎水化剤は、環境的配慮から水や塩水に対する溶解性と環境中の微生物分解性とを十分満たすよう設計すると、分子量が5,000以下のものが好ましく、分子量が50~1,000のものがより好ましく、分子量が100~600のものが更に好ましく、200~500のものが最も好ましい。なお、本発明において分子量は、ポリマーについては数平均分子量(Mn)を意味し、Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算測定値である。ポリマー以外のものについては、化学式量を意味する。
【0028】
前記カルボン酸塩としては、炭素数6~30のカルボン酸の塩が好ましく、炭素数10~25のカルボン酸の塩がより好ましく、炭素数12~20のカルボン酸の塩が更に好ましい。前記カルボン酸塩は、1価カルボン酸の塩でもよく、多価カルボン酸の塩でもよい。
【0029】
前記1価カルボン酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、オキシステアリン酸、リシノール酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよい。
【0030】
前記多価カルボン酸としては、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等のジカルボン酸が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸でもよい。
【0031】
前記1価カルボン酸塩は、1価の金属塩が好ましく、その具体例としては、カプリル酸カリウム、カプリル酸ナトリウム等のカプリル酸塩;オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム等のオクチル酸塩;ペラルゴン酸カリウム、ペラルゴン酸ナトリウム等のペラルゴン酸塩;カプリン酸カリウム、カプリン酸プリン酸ナトリウム等のカプリン酸塩;ウンデシレン酸カリウム、ウンデシレン酸ナトリウム等のウンデシレン酸塩;ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム等のラウリン酸塩;ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム等のミリスチン酸塩;ペンタデシル酸カリウム、ペンタデシル酸ナトリウム等のペンタデシル酸塩;パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム等のパルミチン酸塩;マルガリン酸カリウム、マルガリン酸ナトリウム等のマルガリン酸塩;ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸塩;イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸ナトリウム等のイソステアリン酸塩;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等のオレイン酸塩;リノール酸カリウム、リノール酸ナトリウム等のリノール酸塩;リノレン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等のリノレン酸塩;アラキドン酸カリウム、アラキドン酸ナトリウム等のアラキドン酸塩;ベヘン酸カリウム、ベヘン酸ナトリウム等のベヘン酸塩;ドコサヘキサエン酸ナトリウム等のドコサヘキサエン酸塩;ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム等のヤシ油脂肪酸塩等が挙げられる。これらのうち、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキドン酸塩等の炭素数10~20のカルボン酸塩等が好ましい。
【0032】
前記多価カルボン酸塩としては、1価の金属塩が好ましく、その具体例としては、オクタン二酸二ナトリウム、オクタン二酸二カリウム等のオクタン二酸塩;ノナン二酸二ナトリウム、ノナン二酸二カリウム等のノナン二酸塩;デカン二酸二ナトリウム、デカン二酸二カリウム等のデカン二酸塩;ウンデカン二酸二ナトリウム、ウンデカン二酸二カリウム等のウンデカン二酸塩;ドデカン二酸二ナトリウム、ドデカン二酸二カリウム等のドデカン二酸塩;トリデカン二酸二ナトリウム、トリデカン二酸二カリウム等のトリデカン二酸塩;テトラデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二カリウム等のテトラデカン二酸塩;ペンタデカン二酸二ナトリウム、ペンタデカン二酸二カリウムのテトラデカン二酸塩;ヘキサデカン二酸二ナトリウム、ヘキサデカン二酸二カリウム等のヘキサデカン二酸塩;ヘプタデカン二酸二ナトリウム、ヘプタデカン二酸二カリウム等のヘプタデカン二酸塩;オクタデカン二酸二ナトリウム、オクタデカン二酸二カリウム等のオクタデカン二酸塩;ノナデカン二酸二ナトリウム、ノナデカン二酸二カリウム等のノナデカン二酸塩;エイコサン二酸二ナトリウム、エイコサン二酸二カリウム等のエイコサン二酸塩等が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸の塩を用いてもよい。これらのうち、デカン二酸塩、ドデカン二酸塩、テトラデカン二酸塩、ヘキサデカン二酸塩、オクタデカン二酸塩、エイコサン二酸塩等の炭素数10~20のジカルボン酸塩が好ましい。
【0033】
前記アミノ酸誘導体塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記アミノ酸誘導体の塩は、1価の塩が好ましく、1価の金属塩がより好ましい。
【0034】
前記アミノ酸誘導体としては、カプリロイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、パルミトイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等のサルコシン誘導体;カプリロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、パルミトイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、アシルグルタミン酸、ジラウロイルグルタミン酸等のグルタミン酸誘導体;ラウロイルグリシン、ミリストイルグリシン、パルミトイルグリシン、パルミトイルメチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ココイルグリシン等のグリシン誘導体;ラウリルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ココイルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン等のアラニン誘導体;ラウロイルリジン、ミリストイルリジン、パルミトイルリジン、ステアロイルリジン、オレイルリジン、アシル化リジン等のリジン誘導体;ラウロイルアスパラギン酸、ミリストイルアスパラギン酸、パルミトイルアスパラギン酸、ステアロイルアスパラギン酸等のアスパラギン酸誘導体;ラウロイルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルタウリン、ステアロイルメチルタウリン等のタウリン誘導体;ラウロイルプロリン、ミリストイルプロリン、パルミトイルプロリン等のプロリン誘導体等の炭化水素基を有するアミノ酸の誘導体が挙げられる。特に、アミノ酸のN-アシル誘導体が好ましい。
【0035】
前記アミノ酸誘導体塩としては、カプリロイルサルコシンカリウム、カプリロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンカリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンカリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンカリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のサルコシン誘導体塩;カプリロイルグルタミン酸カリウム、カプリロイルグルタミン酸ナトリウム、ララウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アシルグルタミン酸カリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム等のグルタミン酸誘導体塩;ラウロイルグリシンカリウム、ラウロイルグリシンナトリウム、ミリストイルグリシンカリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、パルミトイルグリシンナトリウム、パルミトイルメチルグリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、ココイルグリシンカリウム、ココイルグリシンナトリウム等のグリシン誘導体塩;ラウロイルメチルアラニンカリウム、ラウリルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のアラニン誘導体塩;ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、パルミトイルアスパラギン酸カリウム、パルミトイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイルアスパラギン酸カリウム、ステアロイルアスパラギン酸ナトリウム等のアスパラギン酸誘導体塩;ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルタウリンカリウム、ミリストイルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルタウリンカリウム、パルミトイルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンカリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルタウリンカリウム、ステアロイルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のタウリン誘導体塩;ラウロイルプロリンナトリウム、ミリストイルプロリンナトリウム、パルミトイルプロリンナトリウム等のプロリン誘導体塩等の炭化水素基を有するアミノ酸誘導体塩が挙げられる。特に、アミノ酸のN-アシル誘導体塩が好ましい。
【0036】
前記硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。また、前記硫酸エステル塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。
【0037】
具体的には、前記アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0038】
前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルケニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル及びその塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステルアンモニウム等が挙げられる。
【0041】
前記スルホン酸塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記スルホン酸塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。その具体例としては、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウム等のアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸塩;アルキレンジスルホン酸ナトリウム等のアルキレンジスルホン酸塩;ジアルキルサクシネートスルホン酸ナトリウム等のジアルキルサクシネートスルホン酸塩;モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩等のモノアルキルサクシネートスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;オレフィンスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸アンモニウム等のオレフィンスルホン酸塩;ラウロイルイセチオン酸カリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、パルミトイルイセチオン酸ナトリウム、ステアロイルイセチオン酸ナトリウム等のイセチオン酸塩;ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸アンモニウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらの内、炭素数12~20のアルキル基を有するスルホン酸塩が特に好ましい。
【0042】
前記リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0043】
前記アルキルリン酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、例えば、オクチルリン酸カリウム等のオクチルリン酸塩;ノニルリン酸カリウム等のノニルリン酸塩;デシルリン酸カリウム等のデシルリン酸塩;ウンデシルリン酸カリウム等のウンデシルリン酸塩;ラウリルリン酸カリウム等のラウリルリン酸塩;ミリスチルリン酸カリウム等のミリスチルリン酸塩;セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ナトリウム等のセチルリン酸塩;ステアリルリン酸カリウム等のステアリルリン酸塩等が挙げられる。
【0044】
前記乳酸エステル塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。その具体例としては、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、疎水化剤としては、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、硫酸エステル塩及びスルホン酸塩が好ましい。中でも、カチオンとして有機イオンを有する塩又は金属イオンを有する塩が環境的観点から好ましい。前記有機イオンとしては、アンモニウムイオン等の1価有機イオンが好ましい。また、前記金属イオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、銀イオン等の1価金属イオンが好ましい。中でも、環境、生体安全性、汎用性、コスト等の観点からナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。このような疎水化剤を用いることで、該疎水化剤のアニオンが前記架橋ポリマーに含まれる2価金属イオンの一部とイオン結合により結合し、前記架橋ポリマーが疎水性を示すようになる。
【0046】
前記疎水化剤には、本願発明の効果を損なわない限り、カルボン酸、アミノ酸誘導体、有機ケイ素化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物、硫酸エステル、リン酸エステル、乳酸エステル、油剤、アクリル化合物、アクリル樹脂、チタンカップリング剤、無機化合物、金属酸化物、固形潤滑剤、界面活性剤等の添加剤を、添加してもよい。
【0047】
前記カルボン酸は、1価でも多価でもよく、その具体例としては前述したものが挙げられる。前記アミノ酸誘導体の具体例としては、前述したものが挙げられる。
【0048】
前記有機ケイ素化合物としては、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラン、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラザン、炭素数6~30のアルコキシ基を少なくとも1つ有するトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、トリエトキシカプリリルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
前記シリコーン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、環状シリコーン、架橋型シリコーン、アクリル-シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、フッ素化シリコーン、シリコーンガム、アクリルシリコーン、シリコーンレジン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、フッ素化シリコーン等が挙げられる。
【0050】
前記フッ素化合物としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル、フルオロシリコーン、フッ素化シリコーン樹脂、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
前記硫酸エステルとしては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル等が挙げられる。具体的には、前記アルキル硫酸エステルとしては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましい。その具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、セチル硫酸、ステアリル硫酸、オレイル硫酸等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。
【0052】
前記スルホン酸としては、炭素数6~30のものが好ましい。その具体例としては、ラウリルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、オレイルスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸;アルキレンジスルホン酸;ジアルキルサクシネートスルホン酸;モノアルキルサクシネートスルホン酸;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;オレフィンスルホン酸;ラウロイルイセチオン酸、ミリストイルイセチオン酸、パルミトイルイセチオン酸、ステアロイルイセチオン酸等のイセチオン酸;スルホコハク酸等が挙げられる。
【0053】
前記リン酸エステルとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0054】
前記アルキルリン酸エステルとしては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましい。その具体例としては、例えば、オクチルリン酸、ノニルリン酸、デシルリン酸、ウンデシルリン酸、ラウリルリン酸、ミリスチルリン酸、セチルリン酸、ステアリルリン酸等が挙げられる。
【0055】
前記乳酸エステルとしては、炭素数6~30のものが好ましい。その具体例としては、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オレイル、乳酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0056】
前記油剤としては、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、パラフィンワックス、アマニ油、綿実油、ヤシ油、ヒマシ油、卵黄油、ラノリン脂肪酸、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、牛脂、ミツロウ、鯨ロウ、木ロウ、ラノリン、カルナバロウ、カンデリラワックス等が挙げられる。
【0057】
前記アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸とスチレン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とビニルエステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とオレフィン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と共役ジエン系化合物との共重合体及びその塩等が挙げられる。
【0058】
前記チタンカップリング剤としては、アルキルチタネート、ピロリン酸型のチタネート、亜リン酸型のチタネート、アミノ酸型のチタネート等が挙げられる。
【0059】
前記無機化合物としては、アルミナ等が挙げられる。前記金属酸化物としては酸化チタン等が挙げられる。
【0060】
前記固形潤滑剤としては、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス等)、パラフィンワックス(例えば、合成パラフィン、天然パラフィン等)、フッ素樹脂系ワックス(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩等が挙げられる。
【0061】
前記疎水化ポリマー粒子群の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)水溶性アニオン性ポリマーの多価金属塩である架橋ポリマー粒子群を疎水化処理する工程を含む方法(方法1)。
(2)水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法(方法2)。
(3)水滴中に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を含むW/Oエマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法(方法3)。
(4)水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が溶解する媒体に、多価金属塩の溶液を滴下し、架橋処理を行いながら同時に疎水化処理する工程を含む方法、又は多価金属塩が溶解する媒体に、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が溶解した液体を滴下し、架橋処理を行いながら同時に疎水化処理する工程を含む方法(方法4)。
【0062】
方法1は、水溶性アニオン性ポリマーの多価金属塩である架橋ポリマー粒子群を疎水化処理する工程を含むものである。前記架橋ポリマー粒子群は、公知の方法で製造することができる。例えば、特開平5-222208号公報に記載されているように、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩が溶解している溶液を噴霧乾燥させ、粒子化した後、多価金属塩を用いて架橋処理を行うことで製造することができる。前記水溶性アニオン性ポリマーの1価塩や多価金属塩については後述する。
【0063】
また、疎水化ポリマーは、水中に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩を含む油中水滴型(W/O)エマルションを形成し、多価金属塩を用いて架橋処理することで製造することもできる。W/Oエマルションの形成方法としては、例えば、まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩を溶解させた溶液Aを調製する。このとき、必要に応じて加熱してもよい。次に、溶液Aと疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを疎水性有機溶媒に加えてもよく、疎水性有機溶媒を溶液Aに加えてもよい。
【0064】
このとき、疎水性有機溶媒のかわりに、W/Oエマルション中の水滴の粒径を制御するため界面活性剤や高分子安定剤を疎水性有機溶媒に溶解させた溶液Bを用いてもよい。この場合、溶液A及び溶液Bを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを溶液Bに加えてもよく、溶液Bを溶液Aに加えてもよい。
【0065】
また、W/Oエマルションの形成方法の他の例として、容器に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩、水、界面活性剤、疎水性有機溶媒、その他必要な成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させてもよい。
【0066】
架橋処理は、前記W/Oエマルションに多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液に前記W/Oエマルションを添加し、攪拌することで行うことができる。多価金属塩を含む溶液については、方法2の説明において述べるものと同様のものを使用することができる。
【0067】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、15~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。
【0068】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、架橋ポリマー粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、架橋処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0069】
前記架橋ポリマー粒子群としては、市販品を使用することもでき、例えば、日清紡ケミカル(株)製フラビカファイン(登録商標)、(株)キミカ製アルギン酸カルシウムCAシリーズ等のアルギン酸粒子等が挙げられる。
【0070】
前記架橋ポリマー粒子群を疎水化処理する方法としては、疎水化剤を溶媒に溶解し、そこに前記架橋ポリマー粒子群を入れ、分散させ、前記粒子表面又は表面と内部双方に疎水化剤を付着させる方法が挙げられる。このとき、必要に応じて加熱や濃縮を行うと、効率よく付着させることができる。加熱する場合、その温度は、10~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。濃縮は、例えば、反応系を加熱し、蒸発した溶媒を除去することで行うことができる。疎水化処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間がより好ましい。
【0071】
前記溶媒は、前記架橋ポリマー粒子群が分散可能であって、使用する疎水化剤を溶解できるものを適宜選択すればよい。例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン等の直鎖状、分岐状又は環状のシリコーンオイル類及びその共重合体;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類;イオン液体等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
前記疎水化剤としては、前述したものを使用することができる。疎水化剤として、特に前記カルボン酸塩やアミノ酸誘導体塩を用いると、イオン架橋されている多価の金属イオンの少なくとも一部とイオン交換を起こし、疎水化剤と化学的結合を伴う。そのため、処理後は疎水性が強化された単分散架橋粒子が得られるため好ましい。
【0073】
疎水化処理は、溶媒中の前記架橋ポリマー粒子群と疎水化剤との質量比が、前記架橋ポリマー粒子群:疎水化剤=99.9:0.1~70:30となるように行うことが好ましく、99.5:0.5~80:20となるように行うことがより好ましく、99:1~85:15となるように行うことがより一層好ましく、98:2~90:10となるように行うことが更に好ましい。
【0074】
疎水化処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化ポリマー粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、疎水化処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0075】
方法2は、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法である。
【0076】
前記水溶性アニオン性ポリマーの1価塩は、無機塩でも有機塩でもよく、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸1価塩;カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、CMCカリウム、CMCアンモニウム等のCMC1価塩;オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等の加工デンプンの1価塩;ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸1価塩;コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸の1価塩等が挙げられる。
【0077】
前記水溶性アニオン性ポリマーの1価塩は、その1質量%又は10質量%水溶液の粘度が、0.01~2,000mPa・sであるものが好ましく、0.1~1,000mPa・sであるものがより好ましく、1.0~500mPa・sであるものが最も好ましい。生産性を考えると、その10質量%水溶液の粘度が前記範囲を満たすものがより好ましい。なお、前記粘度は、B型粘度計BL形による20℃における測定値である。
【0078】
前記水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を含む溶液に用いる溶媒としては、水、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセルソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらのうち、水、又は水と炭素数1~3の低級アルコールとの混合溶媒が好ましい。
【0079】
前記溶媒には、必要に応じて更に疎水性有機溶媒を加えてもよい。疎水性有機溶媒としては、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン等の環状、直鎖状又は分岐状のシリコーンオイル類及びその共重合体;ニトロプロペン、ニトロベンゼン等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。
【0080】
なお、本発明において親水性有機溶媒とは、水との同容量混合液が均一な外観を維持するものを意味し、疎水性有機溶媒とは、1気圧(1.013×105Pa)において、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜ、流動がおさまった後に当該混合液体が均一な外観を維持できないものを意味する。
【0081】
方法2において、疎水化剤としては前述したものを使用できるが、前記溶媒に溶解するものを適宜選択する必要がある。例えば、前記溶媒として水を使用する場合は、水に溶解するカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸エステル基を有する1価の塩化合物が好ましく、カルボン酸塩又はアミノ酸誘導体塩を使用することがより好ましい。なお、加熱することによって溶媒に溶解するものであっても、疎水化剤として使用することができる。
【0082】
前記溶液中、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩と疎水化剤との混合比は、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩:疎水化剤=99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15がより一層好ましく、98:2~90:10が更に好ましい。混合比が前記範囲であれば、十分な疎水性が得られ、架橋度が低下するおそれもない。
【0083】
前記溶液中、固形分(水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤)の濃度は、1~80質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0084】
噴霧乾燥は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記溶液を熱風中へ噴霧することによって行われ、例えば通常のディスク型や二流体ノズル型、ジェット気流型等の噴霧乾燥機を用いることができる。ディスクの回転数は、1,000~40,000rpm程度で行うことができる。熱風の温度は、水分を蒸発するために必要な温度で60~250℃が好ましい。また、前記溶液を加熱しながら、熱風中へ噴霧してもよい。
【0085】
次に、噴霧乾燥によって得られた粒子(以下、架橋前粒子ともいう。)を、多価金属塩を用いて架橋する。架橋処理は、例えば、前記架橋前粒子を媒体に分散させ、該分散液に多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液に前記分散液を添加し、攪拌してもよい。
【0086】
前記架橋前粒子は、その濃度が好ましくは1~80質量%、好ましくは30~60質量%となるように媒体に分散させる。前記粒子を分散させる媒体としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の親水性有機溶媒が好ましい。特に、低級アルコールの単一溶媒又は低級アルコールを含む混合溶媒が好ましい。
【0087】
前記多価金属塩は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、鉛塩、亜鉛塩、ニッケル塩、鉄塩、銅塩、カドミウム塩、コバルト塩、マンガン塩等が挙げられるが、海水中に含まれる金属であることや、環境面、安全性、汎用性の点から、カルシウム塩、マグネシウム塩が好ましい。前記多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられるが、水への溶解性、取扱性、コスト等から塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0088】
多価金属塩を含む溶液中の多価金属塩の濃度は、1~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。前記溶液の溶媒は、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール系溶媒、及びこれらの混合溶媒が好ましいが、粒子を溶解させない範囲で目的の濃度になるよう塩を溶解できれば、他の有機溶剤との混合溶媒でも構わない。
【0089】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。このときの温度は、10~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができ、また媒体の粘性が低下するため、粒子の内部にまで疎水化剤が含浸しやすくなる。
【0090】
前記架橋前粒子には水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が含まれているため、架橋処理を行うことで、同時に疎水化処理も行われる。
【0091】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化ポリマー粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、疎水化処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0092】
方法3は、水滴中に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を含むW/Oエマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法である。前記水溶性アニオン性ポリマーの1価塩としては、方法2の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。また、疎水化剤はW/Oエマルションとしたときに水相に存在するものである必要があり、前述したカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸エステル基を有する1価の塩化合物が好ましく、カルボン酸塩又はアミノ酸誘導体塩を使用することがより好ましい。
【0093】
W/Oエマルションの形成方法の一例を説明する。まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を溶解させた溶液Cを調製する。このとき、疎水化剤を溶解させるため、必要に応じて加熱してもよい。次に、溶液Cと疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Cを疎水性有機溶媒に加えてもよく、疎水性有機溶媒を溶液Cに加えてもよい。
【0094】
このとき、疎水性有機溶媒のかわりに、W/Oエマルション中の水滴の粒径を制御するため界面活性剤や高分子安定剤を疎水性有機溶媒に溶解させた溶液Dを用いてもよい。この場合、溶液C及び溶液Dを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Cを溶液Dに加えてもよく、溶液Dを溶液Cに加えてもよい。
【0095】
また、W/Oエマルションの形成方法の他の例として、容器に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩、疎水化剤、水、界面活性剤、疎水性有機溶媒、その他必要な成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させてもよい。
【0096】
水溶性アニオン性ポリマーの1価塩と疎水化剤との混合比は、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩:疎水化剤=99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15がより一層好ましく、98:2~90:10が更に好ましい。混合比が前記範囲であれば、十分な疎水性が得られ、架橋度が低下するおそれもない。
【0097】
W/Oエマルションを形成する際に、加熱を行ってもよい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができるため水溶性アニオン性ポリマーの1価塩と均一化させることができ、W/Oエマルションを安定させることができる。加熱温度は、15~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。
【0098】
W/Oエマルションを形成した後、架橋処理を行う。架橋処理はW/Oエマルションに多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液にW/Oエマルションを添加し、攪拌してもよい。多価金属塩を含む溶液については、方法2の説明において述べたものと同様のものを使用することができる。
【0099】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができ、また媒体の粘性が低下するため、粒子の内部にまで疎水化剤が含浸しやすくなる。
【0100】
前記W/Oエマルションの水相には水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が含まれているため、架橋処理を行うことで、同時に疎水化処理も行われる。
【0101】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化ポリマー粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、架橋処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0102】
方法2又は方法3によれば、疎水化剤を表面だけでなく内部にも含浸させることができるため、より疎水性が大きな粒子が得られる。
【0103】
方法4は水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が溶解する媒体に、多価金属塩の溶液を滴下し、架橋処理を行いながら同時に疎水化処理する工程を含む方法、又は多価金属塩が溶解する媒体に、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤が溶解した液体を滴下し、架橋処理を行いながら同時に疎水化処理する工程を含む方法である。
【0104】
前記疎水化剤としては、前述したカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、硫酸基又はリン酸エステル基を有する1価の塩化合物が好ましく、カルボン酸塩又はアミノ酸誘導体塩を使用することがより好ましい。
【0105】
方法4の一例を説明する。まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に水溶性アニオン性ポリマーの1価塩及び疎水化剤を溶解させた溶液Eを調製する。このとき、疎水化剤を溶解させるため、必要に応じて加熱してもよい。
【0106】
次に、多価金属塩を含む溶液Fを添加して攪拌する。または、多価金属塩を含む溶液Fに溶液Eを添加して攪拌してもよい。多価金属塩を含む溶液については、方法2の説明において述べたものと同様のものを使用することができる。
【0107】
こうすることで、架橋処理と疎水化処理とを同時に行うことができ、徐々に溶解できなくなった目的とする疎水化ポリマーが、析出又は沈殿する。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。
【0108】
このとき、析出又は沈殿物の粒径を制御する目的で、界面活性剤や高分子安定剤を溶液E又は溶液Fの少なくとも一方に溶解させてもよい。この場合、溶液E及び溶液Fを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Eを溶液Fに加えてもよく、溶液Fを溶液Eに加えてもよい。
【0109】
目的とする疎水化ポリマーを析出又は沈殿させる際に、加熱を行ってもよい。加熱は、溶液Eと溶液Fとを混合する際に行ってもよく、混合後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができるため水溶性アニオン性ポリマーの1価塩と均一化させることができ、結合を安定させることができる。加熱温度は、15~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。
【0110】
水溶性アニオン性ポリマーの1価塩と疎水化剤との混合比は、水溶性アニオン性ポリマーの1価塩:疎水化剤=99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15がより一層好ましく、98:2~90:10が更に好ましい。混合比が前記範囲であれば、十分な疎水性が得られ、架橋度が低下するおそれもない。
【0111】
処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化ポリマー粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、架橋処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0112】
なお、得られた疎水化ポリマー粒子群は、必要に応じて公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行って粒径を調整したりしてもよい。
【0113】
[疎水化化合物]
本発明の海洋生分解促進剤の第2の態様は、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオン及び1価カチオンからなる塩化合物を、2価以上の金属カチオンを含む多価金属塩と反応させ、前記アニオンを前記2価以上の金属カチオンで結合して得られる疎水化化合物からなるものである。
【0114】
前記炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有するアニオンとしては、炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオン(以下、単に1価アニオンともいう。)、及び炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有し、1価アニオン性置換基を2つ有するアニオン(以下、単に2価アニオンともいう。)が挙げられる。なお、長鎖の直鎖状高分子を得るため、前記2価アニオンは、1価アニオン性置換基が離れているほど好ましく、1価アニオン性置換基はその両末端に位置していることが更に好ましい。
【0115】
前記アニオンが有する1価アニオン性官能基としては、カルボン酸アニオン(-COO-)、スルホン酸アニオン(-SO3
-)、硫酸アニオン(-O-SO3
-)、リン酸アニオン(-P(=O)(OH)-O-)等が挙げられる。これらのうち、-COO-、-SO3
-、-O-SO3
-が好ましく、-COO-、-SO3
-がより好ましく、-COO-が更に好ましい。
【0116】
前記1価アニオン及び2価アニオンは、その炭素数が6~500であるものが好ましく、10~300であるものがより好ましく、12~150であるものが更に好ましい。
【0117】
前記1価カチオンとしては、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銀イオン等の1価金属イオン;アンモニウムカチオン等の1価有機イオンが挙げられる。これらのうち、金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。
【0118】
以下、前記1価アニオンを2価以上の金属カチオンで結合して得られる疎水化化合物を疎水化化合物Aと称し、前記2価アニオンを2価以上の金属カチオンで結合して得られる疎水化化合物を疎水化化合物Bと称する。
【0119】
[疎水化化合物A]
疎水化化合物Aは、前記1価アニオンを2価以上の金属カチオンで結合して得られるものである。疎水化化合物Aの原料である1価アニオン及び1価カチオンからなる塩化合物(以下、塩化合物Aともいう。)の一例としては、活性官能基を有する化合物に連結基を介して前述した1価アニオン性置換基を導入した構造の塩化合物(以下、1価アニオン性置換基導入塩化合物Aともいう。)が挙げられる。なお、本発明において活性官能基とは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基等の縮合反応を起こし得る官能基を意味する。
【0120】
塩化合物Aの原料となる前記活性官能基を有する化合物としては、1価アルコール、1価アミノ化合物、(ポリ)アルキレングリコールエーテル、(ポリ)アルキレングリコールエステルの等のヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。また、前記活性官能基を有する化合物に導入される1価アニオン性置換基としては、導入が容易であることから、-COO-が好ましい。
【0121】
前記1価アルコールは、1つのヒドロキシ基を有するアルコールであって、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記1価アルコールは、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状のものが好ましい。前記1価アルコールの具体例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等が挙げられる。
【0122】
1価アミノ化合物は、1つのアミノ基を有する化合物であって、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記1価アミノ化合物は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状のものがより好ましい。その具体例としては、アミノヘキサン、アミノヘプタン、アミノオクタン、アミノノナン、アミノデカン、アミノウンデカン、アミノドデカン、アミノトリデカン、アミノテトラデカン、アミノペンタデカン、アミノヘキサデカン、アミノヘプタデカン、アミノオクタデカン、アミノノナデカン、アミノイコサン等が挙げられる。
【0123】
前記(ポリ)アルキレングリコールエーテルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましく、8以下であるものが更に好ましい。その具体例としては、(ポリ)エチレングリコールモノドデシルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノミリスチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノセチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノステアリルエーテル、 (ポリ)エチレングリコールモノオレイルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノベヘニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノドデシルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノミリスチルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノセチルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノステアリルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノオレイルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノベヘニルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;(ポリ)エチレングリコールモノフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアリールエーテル等が挙げられる。
【0124】
前記(ポリ)アルキレングリコールエステルとしては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましく、8以下であるものが更に好ましい。その具体例としては、(ポリ)エチレングリコールモノラウリン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノミリスチン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノパルミチン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノステアリン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノオレイン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノイソステアリン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノアラキジン酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノベヘン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノオレイン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノイソステアリン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノアラキジン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノベヘン酸エステル等のポリアルキレングリコールモノ脂肪酸エステル;(ポリ)エチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノミリスチン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノイソステアリン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノアラキジン酸エステル、(ポリ)エチレンソルビタンモノベヘン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノラウリン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノミリスチン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノステアリン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノオレイン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノイソステアリン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノアラキジン酸エステル、(ポリ)プロピレンソルビタンモノベヘン酸エステル等のポリアルキレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0125】
前記ポリアルキレングリコールエーテル及び(ポリ)アルキレングリコールエステルの数平均分子量(Mn)は、その下限値が、100以上、300以上、400以上、500以上の順に好ましく、その上限値が、10,000以下、6,000以下、4,000以下、3,000以下、2,000以下の順に好ましい。
【0126】
前記活性官能基を有する化合物に1価アニオン性置換基を導入する方法としては、例えば-COO-を導入する場合は、前記活性官能基を有する化合物と2価カルボン酸無水物とを1価金属塩存在下でエステル化反応させる方法や、これらと1価金属を反応させて金属アルコキシドとし、その後2価カルボン酸無水物を用いてエステル化する方法が挙げられる。前記2価カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が好ましく、生分解性を考慮すると無水コハク酸、無水マレイン酸がより好ましい。また、例えば-SO3
-を導入する場合は、前記活性官能基としてヒドロキシ基又はアミノ基を有する化合物とSO3又はSO3・ルイス塩基錯体とを非プロトン性極性溶媒中で反応させる方法が挙げられる。前記ルイス塩基としては、3級アミン、ピリジン、DMF等を用いることができる。また、前記非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル等が好ましい。これらの反応は、公知の方法で行うことができる。
【0127】
また、塩化合物Aの他の例として、アミノ酸誘導体塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、乳酸エステル塩等が挙げられる。
【0128】
前記アミノ酸誘導体塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記アミノ酸誘導体塩は、1価の塩が好ましく、1価の金属塩がより好ましい。
【0129】
前記アミノ酸誘導体塩としては、カプリロイルサルコシンカリウム、カプリロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンカリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンカリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンカリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のサルコシン誘導体塩;ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アシルグルタミン酸カリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム等のグルタミン酸誘導体塩;ラウロイルグリシンカリウム、ラウロイルグリシンナトリウム、ミリストイルグリシンカリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、パルミトイルグリシンナトリウム、パルミトイルメチルグリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、ココイルグリシンカリウム、ココイルグリシンナトリウム等のグリシン誘導体塩;ラウロイルメチルアラニンカリウム、ラウリルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のアラニン誘導体塩;ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、パルミトイルアスパラギン酸カリウム、パルミトイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイルアスパラギン酸カリウム、ステアロイルアスパラギン酸ナトリウム等のアスパラギン酸誘導体塩;ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルタウリンカリウム、ミリストイルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルタウリンカリウム、パルミトイルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンカリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルタウリンカリウム、ステアロイルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のタウリン誘導体塩;ラウロイルプロリンナトリウム、ミリストイルプロリンナトリウム、パルミトイルプロリンナトリウム等のプロリン誘導体塩等の炭化水素基を有するアミノ酸誘導体塩が挙げられる。特に、アミノ酸のN-アシル誘導体塩が好ましい。
【0130】
前記硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。また、前記硫酸エステル塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。
【0131】
具体的には、前記アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0132】
前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0133】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0134】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルケニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル及びその塩としては、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましい。その具体例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステルアンモニウム等が挙げられる。
【0135】
前記スルホン酸塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記スルホン酸塩は、1価の塩が好ましく、アンモニウム塩又は1価の金属塩がより好ましい。その具体例としては、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウム等のアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸塩;アルキレンジスルホン酸ナトリウム等のアルキレンジスルホン酸塩;ジアルキルサクシネートスルホン酸ナトリウム等のジアルキルサクシネートスルホン酸塩;モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩等のモノアルキルサクシネートスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;オレフィンスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸アンモニウム等のオレフィンスルホン酸塩;ラウロイルイセチオン酸カリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、パルミトイルイセチオン酸ナトリウム、ステアロイルイセチオン酸ナトリウム等のイセチオン酸塩;ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸アンモニウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらの内、炭素数12~20のアルキル基を有するスルホン酸塩が特に好ましい。
【0136】
前記リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0137】
前記アルキルリン酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数10~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数12~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。その具体例としては、例えば、オクチルリン酸カリウム等のオクチルリン酸塩;ノニルリン酸カリウム等のノニルリン酸塩;デシルリン酸カリウム等のデシルリン酸塩;ウンデシルリン酸カリウム等のウンデシルリン酸塩;ラウリルリン酸カリウム等のラウリルリン酸塩;ミリスチルリン酸カリウム等のミリスチルリン酸塩;セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ナトリウム等のセチルリン酸塩;ステアリルリン酸カリウム等のステアリルリン酸塩等が挙げられる。
【0138】
前記乳酸エステル塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。その具体例としては、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0139】
これらのうち、塩化合物Aとしては、1価アニオン性置換基導入塩化合物A、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩及び硫酸塩が好ましい。
【0140】
[疎水化化合物B]
疎水化化合物Bは、前記2価アニオンを2価以上の金属カチオンで結合して得られるものであって、前記2価アニオンが2価以上の金属カチオンを介して分子間結合した構造のものである。
【0141】
疎水化化合物Bの原料である2価アニオン及び1価カチオンからなる塩化合物(以下、塩化合物Bともいう。)の一例としては、活性官能基を2つ有する化合物に連結基を介して前述した1価アニオン性置換基を2つ導入した構造の塩化合物(1価アニオン性置換基導入塩化合物B)が挙げられる。
【0142】
塩化合物Bの原料となる前記活性官能基を2つ有する化合物としては、2価アルコール、(ポリ)アルキレングリコール等のヒドロキシ基を2つ有する化合物;2価アミノ化合物、(ポリ)アルキレングリコールビスアミノアルキルエーテル等のアミノ基を2つ有する化合物が好ましい。
【0143】
前記2価アルコールは、2つのヒドロキシ基を有するアルコールであって、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記2価アルコールは、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、ヒドロキシ基が離れているほど好ましく、直鎖状のもが更に好ましい。前記2価アルコールの具体例としては、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、ペンタコサンジオール、ヘキサコサンジオール、ヘプタコサンジオール、オクタコサンジオール、ノナコサンジオール、トリアコンタンジオール等が挙げられる。
【0144】
前記(ポリ)アルキレングリコール、HLB値が16以下のものが好ましく、12以下であるものがより好ましく、8以下であるものが更に好ましい。その具体例としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)テトラメチレンエーテルグリコール、(ポリ)ヘキサメチレンエーテルグリコール、(ポリ)オクタメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレングリコールや、これらの共重合体が挙げられる。前記ポリアルキレングリコールの数平均分子量(Mn)は、その下限値が、100以上、300以上、400以上、500以上の順に好ましく、その上限値が、10,000以下、6,000以下、4,000以下、3,000以下、2,000以下の順に好ましい。
【0145】
2価アミノ化合物は、2つのアミノ基を有する化合物であって、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数10~25のものがより好ましく、炭素数12~20のものが更に好ましい。また、前記2価アミノ化合物は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、ヒアミノ基が離れているほど好ましく、直鎖状のものが更に好ましい。その具体例としては、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、イコサンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ビス(アミノジフェニル)メタン、2,2-ビス(アミノジフェニル)プロパン、ナフタレンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(アミノジシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
【0146】
前記2価アルコールや2価アミノ化合物、(ポリ)アルキレングリコールビスアミノアルキルエーテル等のアミノ基を2つ有する化合物、(ポリ)アルキレングリコールに1価アニオン性置換基を導入する方法としては、例えば、これらと2価カルボン酸無水物とを、1価金属塩存在下でエステル化反応させる方法が挙げられる。
【0147】
前記活性官能基を2つ有する化合物に1価アニオン性置換基を導入する方法としては、例えば、-COO-を導入する場合は、これらと2価カルボン酸無水物とを1価金属塩存在下でエステル化反応させる方法や、これらと1価金属を反応させて金属アルコキシドとし、その後2価カルボン酸無水物を用いてエステル化する方法が挙げられる。前記2価カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が好ましく、生分解性を考慮すると無水コハク酸、無水マレイン酸がより好ましい。また、例えば-SO3
-を導入する場合は、前記活性官能基としてヒドロキシ基又はアミノ基を有する化合物とSO3又はSO3・ルイス塩基錯体とを非プロトン性極性溶媒中で反応させる方法が挙げられる。前記ルイス塩基としては、3級アミン、ピリジン、DMF等を用いることができる。また、前記非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル等が好ましい。これらの反応は、公知の方法で行うことができる。
【0148】
また、塩化合物Bとして、ジカルボン酸塩、ジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0149】
前記ジカルボン酸塩は、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、10~20のものが最も好ましい。また、前記ジカルボン酸塩は、1価の金属カチオンを有するものが好ましい。前記ジカルボン酸塩の具体例としては、ヘキサン二酸二ナトリウム、ヘキサン二酸二カリウム等のヘキサン二酸塩;ヘプタン二酸二ナトリウム、ヘプタン二酸二カリウム等のヘプタン二酸塩;オクタン二酸二ナトリウム、オクタン二酸二カリウム等のオクタン二酸塩;ノナン二酸二ナトリウム、ノナン二酸二カリウム等のノナン二酸塩;デカン二酸二ナトリウム、デカン二酸二カリウム等のデカン二酸塩;ウンデカン二酸二ナトリウム、ウンデカン二酸二カリウム等のウンデカン二酸塩;ドデカン二酸二ナトリウム、ドデカン二酸二カリウム等のドデカン二酸塩;トリデカン二酸二ナトリウム、トリデカン二酸二カリウム等のトリデカン二酸塩;テトラデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二カリウム等のテトラデカン二酸塩;ペンタデカン二酸二ナトリウム、ペンタデカン二酸二カリウムのテトラデカン二酸塩;ヘキサデカン二酸二ナトリウム、ヘキサデカン二酸二カリウム等のヘキサデカン二酸塩;ヘプタデカン二酸二ナトリウム、ヘプタデカン二酸二カリウム等のヘプタデカン二酸塩;オクタデカン二酸二ナトリウム、オクタデカン二酸二カリウム等のオクタデカン二酸塩;ノナデカン二酸二ナトリウム、ノナデカン二酸二カリウム等のノナデカン二酸塩;エイコサン二酸二ナトリウム、エイコサン二酸二カリウム等のエイコサン二酸塩等;これらの分岐構造を有する異性体等の脂肪族ジカルボン酸塩;フタル酸二ナトリウム、フタル酸二カリウム等のフタル酸塩;イソフタル酸二ナトリウム、イソフタル酸二カリウム等のイソフタル酸塩;テレフタル酸二ナトリウム、テレフタル酸二カリウム等のテレフタル酸塩等の芳香族ジカルボン酸塩が挙げられる。これらのうち、デカン二酸塩、ドデカン二酸塩、テトラヘキサデカン二酸塩、オクタデカン二酸塩、エイコサン二酸塩等の炭素数10~20の脂肪族ジカルボン酸塩が好ましい。
【0150】
ジスルホン酸塩は、2つのスルホン酸基を有するスルホン酸であって、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、10~20のものが最も好ましい。また、前記2価スルホン酸塩は、1価の金属カチオンを有するものが好ましい。前記ジスルホン酸塩の具体例としては、ヘキサンジスルホン酸塩、ヘプタンジスルホン酸塩、オクタンジスルホン酸塩、ノナンジスルホン酸塩、デカンジスルホン酸塩、ベンゼンジスルホン酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレントリスルホン酸塩、ナフタレンテトラスルホン酸塩、アントラセンジスルホン酸塩、アントラキノンジスルホン酸塩、フェナントレンジスルホン酸塩、フルオレノンジスルホン酸塩、カルバゾールジスルホン酸塩、ジフエニルメタンジスルホン酸塩、ビフエニルジスルホン酸塩、ターフェニルジスルホン酸塩、ターフェニルトリスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸塩-ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸塩-ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸塩-ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸塩-ホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0151】
これらのうち、塩化合物Bとしては、1価アニオン性置換基導入塩化合物B及びジカルボン酸塩が好ましい。
【0152】
[疎水化化合物の製造方法]
前記疎水化化合物A又はBの製造方法としては、下記(1)及び(2)の方法が挙げられる。
(1)水滴中に前記塩化合物A又はBを含むW/Oエマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて結合処理する工程とを含む方法(方法1)。
(2)前記塩化合物A又はBが溶解する媒体に、多価金属塩の溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法、又は多価金属塩が溶解する媒体に、前記塩化合物A又はBが溶解する溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法(方法2)。
【0153】
方法1は、水滴中に前記塩化合物A又はBを含む工程と、多価金属塩を用いてイオン結合処理する工程とを含む方法である。
【0154】
W/Oエマルションの形成方法の一例を説明する。まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に前記塩化合物A又はBを1種以上溶解させた溶液を調製する。このとき、必要に応じて加熱してもよい。次に、溶液と疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液を疎水性有機溶媒に加えてもよく、疎水性有機溶媒を溶液に加えてもよい。このとき、W/Oエマルション中の水滴の粒径を制御するため界面活性剤や高分子安定剤を疎水性有機溶媒に溶解させて用いてもよい。
【0155】
また、W/Oエマルションの形成方法の他の例として、容器に塩化合物A又はBを1種以上、疎水化剤、水、界面活性剤、疎水性有機溶媒、その他必要な成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させてもよい。
【0156】
W/Oエマルションを形成する際に、加熱を行ってもよい。加熱することによって、溶解度を上昇させることができるため前記塩化合物A又はBを均一化させることができ、W/Oエマルションを安定させることができる。加熱温度は、15~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。
【0157】
W/Oエマルションを形成した後、イオン結合処理を行う。結合処理はW/Oエマルションに多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液にW/Oエマルションを添加し、攪拌してもよい。
【0158】
前記多価金属塩は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、鉛塩、亜鉛塩、ニッケル塩、鉄塩、銅塩、カドミウム塩、コバルト塩、マンガン塩等が挙げられるが、海水中に含まれる金属であることや、環境面、安全性、汎用性の点から、カルシウム塩、マグネシウム塩が好ましい。前記多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられるが、水への溶解性、取扱性、コスト等から塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0159】
多価金属塩を含む溶液中の多価金属塩の濃度は、1~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。前記溶液の溶媒は、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール系溶媒、及びこれらの混合溶媒が好ましいが、粒子を溶解させない範囲で目的の濃度になるよう塩を溶解できれば、他の有機溶剤との混合溶媒でも構わない。
【0160】
結合処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができる。
【0161】
前記W/Oエマルションの水相には炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオンの1価塩を1種以上及び疎水化剤が含まれているため、結合処理を行うことで、同時に疎水化処理も行われる。
【0162】
結合処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化化合物からなる粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、結合処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。なお、得られた疎水化化合物粒子群は、必要に応じて公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行って粒径を調整したりしてもよい。
【0163】
方法2は、前記塩化合物A又はBが溶解する媒体に、多価金属塩の溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法、又は多価金属塩が溶解する媒体に、前記塩化合物A又はBが溶解する溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法である。
【0164】
方法2の一例を説明する。まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に前記塩化合物A又はBを1種以上溶解させた溶液Gを調製する。このとき、溶解度を向上させるため、必要に応じて加熱してもよい。次に、多価金属塩を含む溶液Hを添加して攪拌する。または、多価金属塩を含む溶液に塩化合物A又はBを1種以上溶解させた溶液を添加して攪拌してもよい。多価金属塩を含む溶液については、方法1の説明において述べたものと同様のものを使用することができる
【0165】
こうすることで、結合処理を行うことができ、徐々に溶解できなくなった目的とする疎水化化合物A又はBが、析出又は沈殿する。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。
【0166】
このとき、析出又は沈殿物の粒径を制御する目的で、界面活性剤や高分子安定剤を溶液G及びHの少なくとも一方に溶解させてもよい。
【0167】
目的とする疎水化化合物A又はBを析出又は沈殿させる際に、加熱を行ってもよい。加熱は、溶液Gと溶液Hとを混合する際に行ってもよく、混合後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱することによって塩化合物A又はBの溶解度を上昇させることができるため、結合による高分子化及び分子量分布を均一化させることができ、結合を安定させることができる。加熱温度は、15~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。
【0168】
処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、疎水化化合物粒子を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、結合処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。なお、得られた疎水化化合物粒子群は、必要に応じて公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行って粒径を調整したりしてもよい。
【0169】
なお、疎水化化合物Bを製造する場合、物性調整の目的で、塩化合物Bとともに1価アニオン性置換基を3個以上有するアニオン及び1価カチオンからなる塩を使用することで、部分的に橋掛け構造等を付与することもできる。このような塩としては、アコニット酸塩等の3価以上の多価脂肪族カルボン酸塩や、メリト酸等の多価芳香族カルボン酸塩を使用してもよい。
【0170】
また、疎水化化合物Bは、その両末端に1価の金属カチオンを残さないように封止してもよい。このとき、末端封止処理に用いる化合物(末端封止剤)としては、前述した疎水化ポリマーの製造に用いる疎水化剤(1価金属塩)を用いることができるが、物性を損なわない範囲で炭素数が5以下の1価アニオンを含む1価金属塩を用いてもよい。前記末端封止剤として好ましくは、炭素原子を6個以上有する1価アニオンを含む1価金属塩であり、更に好ましくは炭素原子を6個以上かつ酸素原子を3個以上有する1価アニオンを含む1価金属塩である。末端封止は、塩化合物Bを含む溶液に前記末端封止剤を加え、その後多価金属イオンで結合処理することで行うことができる。
【0171】
[樹脂組成物]
本発明の海洋生分解促進剤を樹脂、特に生分解性樹脂と組み合わせて使用することで、海洋中での生分解が促進される樹脂組成物を得ることができる。また、樹脂組成物の物性やハンドリング性を調整する目的で、複数種の樹脂を組み合わせて使用することもできる。ここで、生分解性樹脂とは、自然界の微生物の働きによって分解し、最終的に水や二酸化炭素等の無機物にまで分解される樹脂を意味する。
【0172】
本発明の海洋生分解促進剤と組み合わせ得る樹脂としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、バイオPET、バイオポリアミド、バイオポリカーボネート、バイオポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸ブレンド、スターチブレンド ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられるが、環境への負荷低減を考慮すると、特に生分解性の高い樹脂が好ましい。
【0173】
また、前記生分解性樹脂としては、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、グリコール酸/カプロラクトンコポリマー等の原料が石油由来の樹脂;(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系)ブロックコポリマー、(ポリ乳酸/ポリカプロラクトン)コポリマー、(ポリ乳酸/ポリエーテル)コポリマー、ポリ乳酸ブレンドPBAT、乳酸/グリコール酸コポリマー、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、スターチブレンド ポリエステル樹脂、ポリ(ブチレンテレフタレートサクシネート)等の原料が一部バイオマス由来の樹脂;ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシカプリル酸、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)などのポリヒドロキシアルカン酸、ポリ乳酸等の原料が100%バイオマス由来の樹脂;セルロース、酢酸セルロース、セルロースエステル樹脂、デンプン、エステル化デンプン、キトサン等の天然高分子由来の樹脂が挙げられる。また、環境負荷の低減を考慮すると、組み合わせる樹脂の原料としては、バイオマス由来であることが好ましく、100%バイオマス由来原料であることが、最も好ましい。
【0174】
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、前記海洋生分解促進剤を溶解せず粒子として残しつつ、マトリクスとなる前記樹脂を溶解するものでもよく、前記樹脂及び海洋生分解促進剤の両方を溶解するものでもよい。これらを適宜調整することで、キャスティング等によるフィルム化による成型体や、塗料、インク、表面処理剤等としても活用可能となる。好ましい溶媒としては、例えば、水、ヘキサン、ヘプタン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、メチルグリコール、メチルトリグリコール、ヘキシルグリコール、フェニルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0175】
溶媒を使用する場合、前記樹脂組成物中の樹脂及び海洋生分解促進剤の合計の濃度は、0.5~90質量%が好ましく、1~80質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましく、最良は10~50質量%が最も好ましい。また、前記樹脂に対する海洋生分解促進剤の割合は、質量比で、99:1~10:90が好ましく、97:3~40:60がより好ましく、95:5~50:50が更に好ましく、90:10~60:40が最も好ましい。
【0176】
また、本発明の樹脂組成物は、溶媒を含まなくてもよい。この場合は、前記樹脂を熱溶融し、そこへ溶融しない海洋生分解促進剤を加えて混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解促進剤を共に熱溶融させて混合してもよい。なお、前記海洋生分解促進剤を、樹脂と共に熱溶融させて混合する場合は、前記海洋生分解促進剤は樹脂の溶融温度に適した軟化点又は融点を有することが好ましい。前記軟化点又は融点の下限値としては、60℃以上、80℃以上、100℃以上、120℃以上の順に好ましく、上限値としては、300℃以下、250℃以下、200℃以下、180℃以下の順に好ましい。
【0177】
本発明の樹脂組成物中、海洋生分解促進剤の含有量は、充分な分解促進効果が得られ、かつ、樹脂組成物の物性に影響のない範囲とすることが望ましい点から、樹脂100質量部に対し、下限値は、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上の順で好ましい。また、生分解性促進剤の含有量の上限値は、100質量部以下、80質量部以下、50質量部以下、30質量部以下の順で好ましい。特に、海洋生分解促進剤が粒子状で存在する場合、その含有量の下限値は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、その含有量の上限値は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0178】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、離型剤、剥離剤、表面改質剤、疎水化剤、撥水化剤、親水化剤、染顔料、着色剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、硬質化剤、軟質化剤、相溶化剤、難燃剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、フィラー、金属不活性化剤等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部程度が好ましい。
【0179】
前記樹脂組成物が溶媒を含むものである場合は、例えば、樹脂、海洋生分解促進剤及び必要に応じて前記添加剤を、同時に又は任意の順で溶媒に添加し、混合することによって調製することができる。また、前記樹脂組成物が溶媒を含まないものである場合は、例えば、前記樹脂を溶融させ、そこへ海洋生分解促進剤及び必要に応じて前記添加剤を同時に又は任意の順で添加し、混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解促進剤を加熱してともに溶融させて混合し、必要に応じて前記添加剤を添加して混合してもよい。
【0180】
[成形体]
前記樹脂組成物を用いて成形することで、前記樹脂に海洋生分解促進剤が分散又は溶解した成形体を得ることができる。前記樹脂組成物が溶媒を含む場合は、該樹脂組成物をそのまま用いて成形を行えばよく、前記樹脂組成物が溶媒を含まない場合は、該樹脂組成物中の樹脂又は樹脂及び海洋生分解促進剤を熱で溶融した後、成形を行えばよい。
【0181】
前記成形体の形状としては、例えば、フィルム状、繊維状、板状、発泡成形体状、その他の用途に応じた形状等が挙げられる。成形方法としては、特に限定されず、従来公知の各種成形方法を用いることができる。その具体例としては、ブロー成形、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶融押出成形法、溶液キャスティング成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0182】
[表面改質剤]
本発明の海洋生分解促進剤は、塩水で溶解するという性質を利用して、多孔質体を製造するための孔形成剤や表面改質剤として使用することもできる。例えば、前記海洋生分解促進剤を含む樹脂組成物から得られた成形体を、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の1価金属塩の水溶液に浸漬することで、表層部のみ表面改質が可能であり、更に含侵を続けることで海洋生分解促進剤が溶解し、多孔質体を製造することができる。これらの特徴を応用して表面処理剤、塗料、インクなどへ展開可能である。
【実施例】
【0183】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、下記実施例及び比較例において粒度分布及び体積平均粒子径(MV)は、MICROTRACK MT3000(日機装(株)製)を用いて測定した。
【0184】
[1]化合物の合成
[合成例1]エチレングリコールモノドデシルエーテル誘導体Aの合成
エチレングリコールモノドデシルエーテル103.0gをアセトニトリル417.4gに溶解させ、そこへ炭酸ナトリウム118.7g及び無水マレイン酸109.8gを入れ、室温で攪拌した。その後、70℃で2時間攪拌した。攪拌終了後、室温まで冷却し、メンブレンフィルターを用いて不純物を除去し、ろ液を濃縮した。濃縮したろ液にテトラヒドロフランを1,043.6g加えて溶解させた後、再度メンブレンフィルターを用いてろ過を行って不純物を除去した。得られたろ液を濃縮し、減圧下で溶媒を揮発させることで、片末端を-COONaで置換したポリエチレングリコールモノドデシルエーテル誘導体Aを作製した。
【0185】
[合成例2]ポリプロピレングリコール誘導体Bの合成
ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Mn2,000)129.7gをアセトニトリル240.0gに溶解させ、炭酸ナトリウム15.2g及び無水コハク酸14.4gを入れ、室温で30分間攪拌した。次に、85℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、蒸留水を240.0g入れ、pH試験紙を用いてアルカリ性を示すことを確認した。エバポレーターを用いて得られた溶液を濃縮し、そこへテトラヒドロフラン1,200.0gを加えて溶解させ、メンブレンフィルターを用いてろ過を行って不純物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、両末端を-COONaで置換したポリプロピレングリコール誘導体Bを作製した。
【0186】
[合成例3]ポリプロピレングリコール誘導体Cの合成
60質量%の水素化ナトリウム分散液(分散媒:流動パラフィン)5.9gにテトラヒドロフラン152.8gを加え、水浴で攪拌しながら、そこへポリプロピレングリコール(Mn2,000)150.0gをテトラヒドロフラン152.8gに溶解させた溶液を滴下した。全量を滴下した後、更に無水マレイン酸14.3gをテトラヒドロフラン76.4gに溶解させた溶液を滴下した後、室温で一晩攪拌した。その後、50℃で4時間攪拌し、室温まで冷却した後、テトラヒドロフランを用いてデカンテーション洗浄を2回実施し、沈殿物を除去した。次に、沈殿物を除去した上澄み液をエバポレーターを用いて濃縮し、濃縮した上澄み液をテトラヒドロフラン230.0gに溶解させ、ヘキサン770.0gを加え、メンブレンフィルターを用いてろ過を行って不純物を除去し、ろ液を濃縮した。濃縮したろ液にトルエン252.2gを加えて溶解させた後、ヘキサン535.0gを加え、再度メンブレンフィルターを用いて濾過を行って不純物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、両末端を-COONaで置換したポリプロピレングリコール誘導体Cを作製した。
【0187】
[合成例4]ポリプロピレングリコール誘導体Dの合成
ポリプロピレングリコール(Mn2,000)をポリプロピレングリコール(Mn1,000)に変更したこと以外は、合成例3と同様の方法で両末端を-COONaで置換したポリプロピレングリコール誘導体Dを合成した。
【0188】
[合成例5]ポリブチレングリコール誘導体Eの合成
ポリプロピレングリコール(Mn1,000)をポリブチレングリコール(Mn700)に変更した以外は、合成例2と同様の方法で両末端を-COONaで置換したポリブチレングリコール誘導体Eを作製した。
【0189】
[2]海洋生分解促進剤の製造
[実施例1-1]疎水性アルギン酸粒子群(粒子群A1)の製造
2,000mLフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて1時間攪拌し、分散させた。
アルギン酸カルシウム球状ビーズ 194.0g
(日清紡ケミカル(株)製:商品名フラビカファイン、MV=20μm)
イオン交換水 735.0g
エタノール 315.0g
ラウリン酸ナトリウム 6.0g
【0190】
次に、オイルバスにより徐々に加熱し、95℃で2時間加熱した後、蒸留により溶媒を除去して反応溶液を濃縮しながら表面処理を施すことで疎水化処理を行った。冷却後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度220℃)させ、目的の粒子群A1を得た。粒子群A1を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4800、以下、SEMという。)で観察し、形状を確認したところ、疎水化処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、疎水化処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。疎水性アルギン酸粒子群A1のSEM写真(2,000倍)を
図1に示す。
【0191】
[実施例1-2]疎水性アルギン酸粒子群(粒子群A2)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 313.6g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3(40 mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 4260.0g
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 6.4g
【0192】
その後、60℃に加熱し、2時間かけて溶解させ、7.0質量%水溶液を調製した。次に、前記水溶液を噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群を得た。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する扁平状の粒子であった。粒度分布測定を行ったところ、MVが7μmの単分散した粒子群であった。
得られた粒子群300.0gをエタノール300.0gに入れ、攪拌し、50.0質量%のエタノール分散液とした後、予め作製しておいた20.0質量%塩化カルシウム水溶液に攪拌しながら滴下し、架橋処理を行い、滴下終了後、更に2時間攪拌した。
攪拌終了後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させ、目的の粒子群A2を得た。粒子群A2をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。粒子群A2のSEM写真(1,000倍)を
図2に示す。
【0193】
[実施例1-3]ステアロイルグルタミン酸カルシウム粒子群(粒子群A3)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 100g
イオン交換水 1,900g
【0194】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1,350gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A3を得た。粒子群A3をSEMで観察し、形状を確認したところ、非球形の粒子群であった。粒子群A3のMVは、15μmであった。
【0195】
[実施例1-4]ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム粒子群(粒子群A4)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、室温で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 200g
イオン交換水 1,800g
【0196】
その後、20.0質量%塩化マグネシウム水溶液2,000gを攪拌しながら滴下し、マグネシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A4を得た。粒子群A4をSEMで観察し、形状を確認したところ、鱗片状の粒子群であった。粒子群A4のMVは、12μmであった。
【0197】
[実施例1-5]N-ラウロイルサルコシン酸カルシウム粒子群(粒子群A5)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、室温で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 200g
イオン交換水 2,300g
【0198】
その後、10.0質量%塩化カルシウム水溶液2000gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A5を得た。粒子群A5をSEMで観察し、形状を確認したところ、鱗状状の粒子群であった。粒子群A5のMVは、28μmであった。
【0199】
[実施例1-6]エチレングリコールモノドデシルエーテル誘導体カルシウム粒子群(粒子群A6)の製造
2,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
エチレングリコールモノドデシルエーテル誘導体A 120g
イオン交換水 1,080g
【0200】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液600gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水/エタノールの混合溶液を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A6を得た。粒子群A6をSEMで観察し、形状を確認したところしたところ、非球形の粒子群であった。粒子群A6のMVは、35μmであった。
【0201】
[実施例1-7]セバシン酸二ナトリウム粒子群(粒子群A7)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
セバシン酸二ナトリウム 250g
イオン交換水 2,250g
【0202】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1,250gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水/エタノールの混合溶液を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A7を得た。粒子群A7をSEMで観察し、形状を確認したところ、鱗片状の粒子群であった。粒子群A7のMVは、14μmであった。
【0203】
[実施例1-8]複合化誘導体カルシウム塩粒子群(粒子群A8)の製造
2,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
エチレングリコールモノドデシルエーテル誘導体A 80g
ポリプロピレングリコール誘導体B 80g
エタノール 120g
イオン交換水 240g
【0204】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1,200gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕することで、目的の粒子群A8を得た。粒子群A8のMVは、281μmであった。
【0205】
[実施例1-9]複合化誘導体カルシウム塩粒子群(粒子群A9)の製造
3,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
ポリブチレングリコール誘導体E 60g
N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 240g
エタノール 240g
イオン交換水 360g
【0206】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1,500gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕することで、目的の粒子群A9を得た。粒子群A9のMVは、165μmであった。
【0207】
[実施例1-10]複合化誘導体カルシウム塩粒子群(粒子群A10)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、60℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
N-ミリストイルサルコシン酸ナトリウム 270g
ポリプロピレングリコール誘導体B 30g
エタノール 120g
イオン交換水 1,380g
【0208】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1500gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。
攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(フリッチュ社製遊星型微粒粉砕機P-7)を用いて粉砕することで、目的の粒子群A10を得た。粒子群A10のMVは、58μmであった。
【0209】
[実施例1-11]複合化誘導体カルシウム塩粒子群(粒子群A11)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、50℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
セバシン酸二ナトリウム 160g
ポリプロピレングリコール誘導体D 40g
イオン交換水 1,800g
【0210】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1,750gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(フリッチュ社製遊星型微粒粉砕機P-7)を用いて粉砕することで、目的の粒子群A11を得た。粒子群A11のMVは、25μmであった。
【0211】
[実施例1-12]疎水性CMC粒子群(粒子群A12)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて完全に溶解させた。
カルボキシメチルセルロースナトリウム 120g
ポリプロピレングリコール誘導体C 90g
ラウリン酸ナトリウム 90g
イオン交換水 2,400g
【0212】
そこへ、ソルビタントリオレアート12.0gをヘキサン1,550.0gに溶解した溶液を投入し、温度を維持した状態でホモジナイザー(IKA社製T25)を用いて5分間攪拌し、乳化させた。
その後、65℃までゆっくりと昇温した後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液を滴下した。滴下終了後、温度を維持しながら更に2時間攪拌を行った。攪拌終了後、室温まで冷却し、エタノール及びイオン交換水を用いて遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、目的の粒子群A12を得た。粒子群A12をSEMで観察し、形状を確認したところ、略球状の粒子群であった。また、粒子群A12のMVは、8μmであった。
【0213】
[実施例1-13]疎水性オクテニルコハク酸デンプン粒子群(粒子群A13)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、50℃で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム 70g
アルギン酸ナトリウム 10g
ポリブチレングリコール誘導体E 20g
イオン交換水 1,150g
【0214】
その後、25.0質量%塩化カルシウム水溶液400gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させた。得られた粒子を粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕することで、目的の粒子群A13を得た。粒子群A13のMVは、241μmであった。
【0215】
[比較例1-1]
実施例1-1で使用したアルギン酸カルシウム球状ビーズ(日清紡ケミカル(株)製:商品名フラビカファイン、MV=20μm)を、粒子群B1とした。
【0216】
[比較例1-2]ポリメタクリル酸メチル粒子群(粒子群B2)の製造
2,000mLフラスコに、以下に示す各成分を一括で仕込み、国際公開第2016/181877号の比較例1-3と同じ方法で、MVが5μmのポリメタクリル酸メチル単一の球状ポリマー粒子群B2を作製した。
水 1,386.5g
メタクリル酸メチル 173.4g
ラウリルパーオキサイド 8.6g
ポリビニルピロリドン(K-30) 17.3g
【0217】
[比較例1-3]ポリスチレン酸粒子群(粒子群B3)の製造
2,000mLフラスコに、以下に示す化合物を一括して仕込み、ディスパー分散翼で1,000rpmで懸濁液を作製した。得られた懸濁液を、窒素気流下でオイルバスを用いて80℃で8時間攪拌し、ポリスチレン粒子分散液を得た。
水 1,280.0g
スチレン 288.0g
ラウリルパーオキサイド 14.2g
ポリビニルピロリドン(K-30) 21.6g
【0218】
得られた粒子分散液を、目開き200μmのふるいを通して3,000mLのフラスコに移した。次に、ふるいを通過した粒子分散液を遠心分離にかけ、これを5回繰り返し、分級・洗浄操作を行い、MVが10μmのポリスチレン単一の球状ポリマー粒子群B3を得た。
【0219】
[比較例1-4]架橋ポリメタクリル酸メチル粒子群(粒子群B4)の製造
2,000mLフラスコに、以下に示す各成分を一括で仕込み、比較例1-2と同様の方法で、MVが5μmの架橋ポリメタクリル酸メチル単一の球状ポリマー粒子群B4を作製した。
水 1,386.5g
メタクリル酸メチル 168.4g
エチレングリコールジメタクリレート 5.0g
ラウリルパーオキサイド 8.6g
ポリビニルピロリドン(K-30) 17.3g
【0220】
[比較例1-5]架橋ポリスチレン酸粒子群(粒子群B5)の製造
2,000mLフラスコに、以下に示す化合物を一括して仕込み、比較例1-3と同様の方法で、MVが10μmのポリスチレン単一の球状ポリマー粒子群B5を得た。
水 1,280.0g
スチレン 280.0g
ジビニルベンゼン 8.0g
ラウリルパーオキサイド 14.2g
ポリビニルピロリドン(K-30) 21.6g
【0221】
[比較例1-6]ラウリン酸カルシウム粒子群(粒子群A3)の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、室温で攪拌機を用いて分散、溶解させた。
ラウリン酸ナトリウム 200g
イオン交換水 1,800g
【0222】
その後、20.0質量%塩化カルシウム水溶液1200gを攪拌しながら滴下し、カルシウム置換反応を行い、粒子を析出させた。攪拌終了後、イオン交換水を用いてろ過洗浄を繰り返し、粒子を乾燥させることで、目的の粒子群A3を得た。粒子群A3をSEMで観察し、形状を確認したところしたところ、鱗片状の粒子群であった。粒子群A3のMVは、21μmであった。
【0223】
[3]基本物性の測定
[実施例2-1~2-13、比較例2-1~2-6]
各海洋生分解促進剤について、下記方法によって、吸水量、吸油量及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0224】
[吸油量の測定]
吸油量(Aо)はJIS K 5101に記される煮あまに油法に準拠して測定した。
【0225】
[吸水量の測定]
500mLのビーカーに各海洋生分解促進剤1gを入れ、次にイオン交換水200mLを加え、30分間懸濁攪拌(150rpm、25℃)を行い、その後500mLの遠心管に移し、遠心分離機(himac CR20GII、工機ホールディングス(株)製)を用いて2,000G、30分間遠心分離を行った。遠心分離後、上清を静かに捨て遠心管より試料を取り出し重量(Ww)を測定し、その後105℃の乾燥器で恒量になるまで乾燥し乾燥重量(Dw)を測定し、下記式により吸水量(Aw)(mL/100g)を算出した。
Aw=[(Ww-Dw)/Dw]×100
【0226】
[接触角の測定]
両面テープをアクリル板に貼り付け、該両面テープ上に各粒子群を1mg/cm2になるように量り取り、化粧用パフで均一に塗布した。そこへ水滴を落とし、30秒後の接触角を接触角計(協和界面科学(株)製Drop Master 300)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0227】
【0228】
[4]溶解性試験
[実施例3-1~3-13、比較例3-1~3-6]
各粒子群を、それぞれ0.1質量%となるように、水又は塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム濃度3質量%)に分散させ、溶解性試験を行った。結果を表2に示す。
(1)外観:分散後、168時間経過したときの状態を目視にて確認した。
(2)形状:塩化ナトリウム水溶液に分散後、168時間経過したときの試験前の形状と比べての変化を粒度分布測定にて確認した。
(3)透過率:各粒子群を塩化ナトリウム水溶液に分散させ、168時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1(%)とし、各粒子群を水に分散させ、24時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1(%)とし、WD1/SD1を求めた。透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製UV-2450)を用いて測定した。
【0229】
【0230】
[5]樹脂成形品における溶解性試験1
[実施例4-1~4-8、比較例4-1~4-5]
生分解性樹脂(ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)三菱ケミカル(株)製FD-92)に、各粒子群(粒子群A1~A4、A7、A11~A13、粒子群B1、B4~B6)を濃度が20質量になるように140℃で混練し、150℃でプレス成型を行い、膜厚150μmのフィルムを作製した(実施例4-1~4-8、比較例4-1~4-4)。なお、各粒子群は、フィルム内でその形状を維持していたまた、PBSAそのもの(粒子群を含まない)を150℃でプレス成型し、膜厚150μmのフィルムを作製した(比較例4-5)。
得られたフィルムを10mm角に加工したものを、それぞれイオン交換水50mL及び3質量%塩化ナトリウム水溶液50mLに入れ、25℃で30日、90日静置した後、フィルムを取り出し、走査型電子顕微鏡でフィルムの表面を観察した。
結果を表3に示す。また、実施例4-2のフィルムを、水に浸漬して30日後及び3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して30日後のSEM写真を
図3に示す。
【0231】
【0232】
[6]樹脂成形品における溶解性試験2
[実施例5-1~5-5、比較例5-1~5-3]
生分解性樹脂(PBS、三菱ケミカル(株)製FZ-91)に、各粒子群(粒子群A5、A6、A8、A9、A10、粒子群B2、B3)を濃度が30質量になるように140℃で混練し、加熱温度150℃でプレス成型を行い、膜厚150μmのフィルムを作製した(実施例5-1~5-5、比較例5-1~5-2)。なお、各粒子は溶融し、PBSと混合し、その形状を留めていなかった。また、比較として粒子を含まない単一樹脂も作製した(比較例5-3)。
得られたフィルムを10mm角に加工したものを、それぞれイオン交換水50mL及び3質量%塩化ナトリウム水溶液50mLに入れ、25℃で7日、60日静置した後、フィルムを取り出し、走査型電子顕微鏡でフィルムの表面を観察した。
結果を表4に示す。また、実施例5-4のフィルムを、水に浸漬して7日後及び3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して7日後のSEM写真を
図4に示す。
【0233】
【0234】
[7]生分解性試験
[実施例6、比較例6]
疎水性アルギン酸粒子群A2(実施例6)及び微結晶セルロース(Sigma-Aldrich製 Avicel PH-101)(比較例6)について、以下の方法で海水生分解試験を実施した。
<試験方法、条件>
生分解度測定方法:閉鎖呼吸計による酸素消費量の測定(ASTM D6691参考)
培養温度 30±1℃、暗所
生分解度(%)=BOD
O-(BOD
B/ThOD)×100
BOD
O:試験又は植種源活性確認の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BOD
B:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試験材料又は対照材料が完全に酸化された場合に必要とされる
理論的酸素要求量(計算値:mg)
結果を
図5に示す。
【0235】
図5に示した結果より、疎水化処理を行った粒子でも培養期間30日までで生分解度が90%を超える良好な生分解性の結果が得られた。
【0236】
[8]海水での確認試験
[実施例7-1~7-6、比較例7-1~7-3]
15Lの水槽に海水(東京湾[千葉県:千葉港]より採取)]を入れ、[5]、[6]で作製し、実施例、比較例で使用した下記同一組成フィルム15mm角をステンレスネットに挟み込み、海水に浸して経過を観察した。720時間後、SEMにて表面層の状態を確認した。結果を表5に示す。
<使用組成フィルム>
実施例4-2、4-5、4-7、5-1、5-3
比較例4-2、5-2、5-3
【0237】
【0238】
表5に示した結果より、海水中の微生物の存在により、生分解性が促進されているものと考え得られる。
【0239】
[9]汎用樹脂内での表層改質試験
[実施例8-1~8-4、比較例8-1~8-3]
アクリルエマルション(BASF製ジョンクリルPDX7511)に、各粒子群を濃度が10質量になるように混合して樹脂組成物を調製し、厚み100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製E-5000)の片面に市販のバーコーターを使用して前記樹脂組成物をコーティングした。コーティング後、乾燥機を50℃に設定して20分間熱風乾燥を行い、膜厚100μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムを10mm角に加工したものを、それぞれ3質量%塩化ナトリウム水溶液50mLに入れ、25℃で502時間静置した後、フィルムを取り出し、走査型電子顕微鏡でフィルムの表面を観察した。
結果を表6に示す。また、実施例8-1のフィルムを3質量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬して21日後の表層部のSEM写真(150倍)を
図6に示す。
【0240】
【0241】
表6に示した結果より、本発明の海洋生分解促進剤は、汎用的な樹脂において、溶解性を利用して表面及び表層部の改質剤や多孔質体製造用孔形成剤として使用できることが示された。また、
図6に示した結果より、内部へ浸透、浸食し、多孔質、穴化、凹凸化しているのが確認できた。
【0242】
以上の結果より、本発明の海洋生分解促進剤は、淡水中では疎水性を維持する一方、海水中では、生分解性樹脂に先行して生分解によって低分子化されたり、塩置換されたりすることで溶解しやすくなる。そのため、本発明の海洋生分解促進剤を含む樹脂組成物は、海水中で多孔質化し、微生物の付着を助け、生分解の促進を助長する働きが可能となり、結果的に環境負荷を低減させることが可能となる。