(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 451
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020102018
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直井 慎哉
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255573(JP,A)
【文献】特開2000-203000(JP,A)
【文献】特開2008-246879(JP,A)
【文献】特開2006-193332(JP,A)
【文献】特開昭59-223644(JP,A)
【文献】特開2018-151470(JP,A)
【文献】特開2008-50145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に対して加湿を行う加湿部と、
前記加湿部を制御する制御部と、
を備え、
前記加湿部は、少なくとも片面印刷工程の上流の搬送経路上に設けられ、
前記用紙のカールを検知するカール検知部を前記加湿部の近傍に備え、
前記制御部は、
前記加湿部において加湿が行われる際、用紙の状態に応じて、加湿量を調整し、
前記カール検知部によって検知された前記用紙のカール量に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙の浮きを検知する浮き検知部を印刷工程の上流の搬送経路上に備え、
前記浮き検知部は、前記カール検知部としての機能を兼ね備える、
ことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、同一の用紙に対して複数回印刷が行われる場合、各印刷工程の前に前記加湿部において当該用紙に対して加湿を行わせる、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙の各面の画像濃度に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
印刷工程で印刷された前記用紙を乾燥させる乾燥部を備え、
前記制御部は、前記画像濃度に加え、前記乾燥部での水分排出量又は前記乾燥部で排出された空気の温湿度に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加湿部は、印刷工程において各印刷が行われる際に共用する搬送経路上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、水系インクの乾燥工程やトナーの定着工程のように用紙を加熱する工程の下流に加湿装置を配置することで、乾燥等による用紙の変形を除去する方法が知られている。ところで、上記の方法は、排紙積載性の向上等、後処理時の用紙状態を安定させることを目的として用いられることが大半だが、印字前の用紙状態を安定させることを目的として、例えば、複数回印字時の2回目以降の印字前に用紙の加湿を行うことで、乾燥や定着による変形を除去し、2回目以降の印字時の用紙姿勢を安定させる画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている画像形成装置では、1回目の印刷時には加湿が行われないため、通紙経路の温湿度と給紙装置内の温湿度とに乖離がある場合、用紙反りなどによる用紙搬送不良が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、用紙を安定した状態で搬送することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像形成装置は、
用紙に対して加湿を行う加湿部と、
前記加湿部を制御する制御部と、
を備え、
前記加湿部は、少なくとも片面印刷工程の上流の搬送経路上に設けられ、
前記用紙のカールを検知するカール検知部を前記加湿部の近傍に備え、
前記制御部は、
前記加湿部において加湿が行われる際、用紙の状態に応じて、加湿量を調整し、
前記カール検知部によって検知された前記用紙のカール量に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記用紙の浮きを検知する浮き検知部を印刷工程の上流の搬送経路上に備え、
前記浮き検知部は、前記カール検知部としての機能を兼ね備える、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、同一の用紙に対して複数回印刷が行われる場合、各印刷工程の前に前記加湿部において当該用紙に対して加湿を行わせる、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記用紙の各面の画像濃度に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、
印刷工程で印刷された前記用紙を乾燥させる乾燥部を備え、
前記制御部は、前記画像濃度に加え、前記乾燥部での水分排出量又は前記乾燥部で排出された空気の温湿度に応じて、加湿量を調整する、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記加湿部は、印刷工程において各印刷が行われる際に共用する搬送経路上に設けられている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、用紙を安定した状態で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図2】インクジェット記録装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】(a)は各加湿モジュールの構造の一例を示す図であり、(b)は各加湿モジュールの構造のその他の例を示す図である。
【
図5】(a)はカール検知部の概略構成を示す図であり、(b)は用紙のカールが検知されたときのカール検知部を示す図である。
【
図6】(a)は他のカール検知部の概略構成を示す図であり、(b)は用紙のカールが検知されたときの当該他のカール検知部を示す図である。
【
図7】温湿度状態判別グラフの一例を示す図である。
【
図8】加湿レベル設定テーブルの一例を示す図である。
【
図9】(a)~(e)は各加湿レベル1~5に設定されたときの加湿部を示す図である。
【
図10】加湿量制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
<1.構成の説明>
先ず、本実施形態の画像形成装置であるインクジェット記録装置1の構成について説明する。
【0019】
図1は、インクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、例えば、給紙部10、加湿部20、カール検知部30、ヘッドユニット(印字部)40、乾燥部50、排紙部60、搬送部70、及び、制御部81(
図2参照)等を備えている。
【0020】
給紙部10は、例えば、給紙カセット11、温湿度センサー12等を備えている。
給紙カセット11は、一枚又は重ねられた複数枚の用紙Pを収容可能な箱体であり、収容された用紙Pの量に応じて上下動する。温湿度センサー12は、給紙カセット11の近傍に設けられ、当該給紙カセット11の温湿度の状態を検知する。
【0021】
加湿部20は、給紙部10の下流側に設けられ、用紙Pの両面に水を付与することで、当該用紙Pを加湿する。加湿部20は、制御部81による制御下で、用紙Pに付与する水分量(加湿量)を調整可能となっている。
【0022】
図3は、加湿部20の概略構成を示す図である。
図3に示すように、加湿部20は、当該加湿部20を通過する用紙Pに水を付与する複数(例えば、10個)の加湿モジュール21を備えている。具体的には、用紙Pの上面に水を付与する用として、5個の加湿モジュール21が用紙Pの搬送経路Rの上方に当該用紙Pの搬送方向に所定の間隔で並ぶように配列されている。また、用紙Pの下面に水を付与する用として、残りの5個の加湿モジュール21が用紙Pの搬送経路Rの下方に当該用紙Pの搬送方向に所定の間隔で並ぶように配列されている。各加湿モジュール21は、制御部81による制御下で、ON(水の付与が可能な状態)/OFF(水の付与が不可の状態)の切り替えが可能となっている。つまり、加湿部20は、各加湿モジュール21のON/OFFの切り替えによって、用紙Pに付与する水分量(加湿量)を調整可能となっている。
【0023】
図4(a)は、各加湿モジュール21の構造を示す図である。
図4(a)に示すように、各加湿モジュール21は、加湿用の水を溜めておく貯留部211、用紙Pに水を塗布する塗布ローラー212、貯留部211の水を塗布ローラー312に供給する供給ローラー213、これらのローラーを駆動させる駆動ローラー214などを備えている。
なお、各加湿モジュール21は、
図4(b)に示すように、霧状の水を噴射するスプレーノズル等によって構成してもよい。
【0024】
カール検知部30は、加湿部20の下流側に設けられ、ヘッドユニット40によって画像が形成される直前の用紙Pのカールを検知する。
【0025】
図5(a)は、カール検知部30の概略構成を示す図である。
図5(a)に示すように、カール検知部30は、いわゆるアクチュエータ方式を採用し、支点33を軸として回動自在に設けられたアクチュエータ31、当該アクチュエータ31の回動を検出するセンサー32などを備えている。通常、カール検知部30は、アクチュエータ31の一端部31aと搬送ベルトBとの距離が予め規定されたカール量に相当する閾値となるように調整された状態で当該アクチュエータ31を支持している。
【0026】
図5(b)は、用紙Pのカールが検知されたときのカール検知部30を示す図である。
図5(b)に示すように、予め規定されたカール量を超える用紙Pが搬送されてきた場合、用紙Pのカールしている部分がアクチュエータ31に衝突する。これにより、アクチュエータ31が支点33を軸として回動することとなり、この回動がセンサー32で検出されることで、カール検知部30は用紙Pのカールを検知できるようになっている。
【0027】
なお、カール検知部30は、上述したアクチュエータ方式のものに限らず、例えば、レーザー測定器34を用いることで、用紙Pのカールを検知するようにしてもよい。
【0028】
図6(a)は、レーザー測定器34を用いたカール検知部30を示す図である。
図6(a)に示すように、カール検知部30は、搬送ベルトBの上方に当該搬送ベルトBに対してレーザー光が照射されるようにレーザー測定器34を設ける。このカール検知部30では、予め規定されたカール量を有する用紙Pまでの距離(高さ)に相当する閾値が設定されており、レーザー測定器34によって測定された距離が当該閾値以下となった場合、用紙Pのカールを検知できるようになっている。
【0029】
図6(b)は、用紙Pのカールが検知されたときのカール検知部30を示す図である。
図6(b)に示すように、予め規定されたカール量を超える用紙Pが搬送されてきた場合、レーザー測定器34によって測定される距離(高さ)が上述の閾値以下となるため、このとき、カール検知部30によって、用紙Pのカールが検知されることとなる。
【0030】
ヘッドユニット40は、用紙Pの上面に対して、画像データに基づいてノズルからインクを吐出して、用紙P上に画像を形成するための機構である。ヘッドユニット40は、カール検知部30の下流側に設けられている。
ヘッドユニット40は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニットが、用紙Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
なお、ヘッドユニット40の数及びヘッドユニット40から吐出されるインクの色はこれに限定されるものではない。
【0031】
各ヘッドユニット40は、複数の記録素子が用紙Pの搬送方向と交差する用紙Pの幅方向に各々配列された複数の記録ヘッド41(
図2参照)と、記録ヘッド41によるインク吐出動作を制御するヘッド制御部42(
図2参照)と、を備えている。
【0032】
各記録ヘッド41は、ノズルの開口部が設けられたインク吐出面を有し、当該インク吐出面が搬送ベルトの搬送面と対向する位置に配置される。
【0033】
ヘッド制御部42は、制御部81からの制御信号等に応じた適切なタイミングで、記録ヘッド41のヘッド駆動部に対して各種制御信号や画像データを出力する。
記録ヘッド41のヘッド駆動部は、ヘッド制御部42から入力された制御信号及び画像データに応じて、記録ヘッド41の記録素子に対して圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給し、各ノズルの開口部からインクを吐出させる。
【0034】
乾燥部50は、ヘッドユニット40の下流側に設けられ、用紙P上のインクを乾燥固着させる。乾燥部50は、乾燥動作部(図示省略)や温湿度センサー51(
図2参照)などを備えている。この乾燥動作部は、用紙P上のインクを乾燥固着させるための動作を行う。ここでは、乾燥動作部は、水系インクの水分を蒸発させるための加熱及び/又は送風を行う。
【0035】
また、乾燥部50は、筐体を有し、上記の乾燥動作部は、この筐体内部に設けられ、乾燥動作部が生じさせた熱が維持されやすい構造を有する。水蒸気を含む内部の空気は、筐体の隙間から自然排出されてもよいし、排気ファンなどにより強制排出されてもよい。乾燥部50は、上記の温湿度センサー61を用いて、筐体内から排出された空気の温湿度の状態を検知する。
【0036】
排紙部60は、画像が形成されて排出された用紙Pを積載するトレイ(図示省略)、当該トレイを駆動するための駆動部(図示省略)などを備えている。
【0037】
搬送部70(
図2参照)は、給紙部10から排紙部60までの搬送経路Rに設置された複数の搬送ローラー(図示省略)、当該搬送ローラーを駆動するための駆動部(図示省略)などを備えている。この駆動部は、例えば、ステッピングモーターから構成され、制御部81から供給される駆動信号に基づいて駆動する。搬送経路Rには、反転経路R1が設けられており、用紙Pの両面に印字(画像を形成)する場合、搬送部70は、制御部81による制御下で、反転経路R1に用紙Pを搬送して用紙面を反転させた後、加湿部20の位置へ再度用紙Pを搬送する。したがって、本実施の形態のインクジェット記録装置1では、ヘッドユニット40によって用紙P上に画像が形成される際は必ず加湿部20を通過するようになっている。つまり、加湿部20は、ヘッドユニット40において各画像形成が行われる際に共用する搬送経路上に設けられていることとなる。
【0038】
図2は、インクジェット記録装置1の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、制御部81は、例えば、記憶部82、通信部83、操作表示部84、給紙部10、加湿部20、カール検知部30、ヘッドユニット40、乾燥部50、排紙部60及び搬送部70に接続されている。
【0039】
制御部81は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。制御部81のCPUは、記憶部82に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、インクジェット記録装置1各部の動作を集中制御する。
例えば、制御部81は、外部装置や操作表示部84から画像形成ジョブの実行指令が入力されると、当該ジョブを実行し、搬送部70により用紙Pを搬送させながら、画像データに基づいてヘッドユニット40により用紙P上に画像を形成させる。
また、制御部81は、上記の用紙Pに対する画像の形成に先立って、加湿部20により用紙Pが所定の加湿量となるように加湿する。
【0040】
記憶部82は、不揮発性の半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等により構成され、制御部81で実行される各種プログラムの他、各部で必要なパラメータやデータ等を記憶している。例えば、記憶部82には、後述する温湿度状態判別グラフG、加湿レベル設定テーブルT等が記憶されている。
【0041】
通信部83は、外部装置(図示省略)との間で、画像形成ジョブ及び画像データ等のデータの送受信を行う手段であり、例えば、各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0042】
操作表示部84は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部84は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部81に出力する。
ユーザーは、この操作表示部84を通じて、用紙Pの種類、画像の濃度、倍率などの画像形成条件を設定することができる。また、ユーザーは、操作表示部84を通じて、画像形成ジョブの実行指令や各種モードでの動作指示を入力することができる。
【0043】
次に、記憶部82に記憶されている温湿度状態判別グラフGについて説明する。
図7は、温湿度状態判別グラフGの一例を示す図である。
図7に示すように、温湿度状態判別グラフGは、温湿度状態(水分レベル)A~Eを判別するためのグラフとなっている。具体的には、給紙部10に設けられている温湿度センサー12や乾燥部50に設けられている温湿度センサー51によって検知された温度と湿度を温湿度状態判別グラフGにプロットすることで、対応する温湿度状態(水分レベル)が判別可能となっている。
【0044】
次に、記憶部82に記憶されている加湿レベル設定テーブルTについて説明する。
図8は、加湿レベル設定テーブルTの一例を示す図である。ここで、加湿レベル設定テーブルTとは、加湿部20によって用紙Pを加湿する際の加湿レベル1~5を設定するためのテーブルである。
図8に示すように、加湿レベル設定テーブルTは、上述した温湿度状態(水分レベル)A~Eと、カバレッジの度合と、が対応付けられており、該当する温湿度状態とカバレッジの度合とから加湿レベル1~5を設定可能となっている。ここで、カバレッジの度合は、1色全ベタで印刷が行われたときのカバレッジの度合を「100」としている。
例えば、温湿度状態が「A」であり、カバレッジの度合が「30」である場合、加湿レベルは“レベル3”に設定されることとなる。
【0045】
次に、各加湿レベルについて、
図9(a)~図(e)を用いて説明する。
図9(a)は、加湿レベル1に設定されたときの加湿部20を示す図である。
図9(a)に示すように、加湿レベル1では、加湿部20は、上側下側ともに5個の加湿モジュール21のうちの真ん中の加湿モジュール21だけがON(水の付与が可能な状態)に切り替えられている。なお、図中では、網掛けが施されている加湿モジュール21がONの状態であり、網掛けが施されていない加湿モジュール21がOFFの状態であることを表している。
【0046】
図9(b)は、加湿レベル2に設定されたときの加湿部20を示す図である。
図9(b)に示すように、加湿レベル2では、加湿部20は、上側下側ともに5個の加湿モジュール21のうちの左から2番目及び4番目の加湿モジュール21がON(水の付与が可能な状態)に切り替えられている。
【0047】
図9(c)は、加湿レベル3に設定されたときの加湿部20を示す図である。
図9(c)に示すように、加湿レベル3では、加湿部20は、上側下側ともに5個の加湿モジュール21のうちの左から1番目、3番目及び5番目の加湿モジュール21がON(水の付与が可能な状態)に切り替えられている。
【0048】
図9(d)は、加湿レベル4に設定されたときの加湿部20を示す図である。
図9(d)に示すように、加湿レベル4では、加湿部20は、上側下側ともに5個の加湿モジュール21のうちの左から1~3番目及び5番目の加湿モジュール21がON(水の付与が可能な状態)に切り替えられている。
【0049】
図9(e)は、加湿レベル5に設定されたときの加湿部20を示す図である。
図9(e)に示すように、加湿レベル5では、加湿部20は、上側下側ともに5個の加湿モジュール21すべてがON(水の付与が可能な状態)に切り替えられている。
【0050】
<2.動作の説明>
次に、インクジェット記録装置1の動作について説明する。
図10は、インクジェット記録装置1により実行される加湿量制御処理を示すフローチャートである。ここで、加湿量制御処理は、例えば、操作表示部84を通じて、画像形成ジョブの実行指令がなされたことを契機として開始される処理である。
【0051】
図10に示すように、加湿量制御処理が開始されると、先ず、制御部81は、給紙部10に設けられている温湿度センサー12から給紙カセット11の温湿度情報を取得する(ステップS1)。ここで、給紙カセット11の温湿度情報を取得しているのは、給紙カセット11から給紙して印刷を行う際、給紙カセット11内の温湿度状態によっては用紙Pのカールやうねりが発生、延いては記録ヘッド(プリントヘッド)41と用紙Pとの距離がばらつき、画像不良が発生するおそれがあるためである。
【0052】
次いで、制御部81は、ステップS1で取得した温湿度情報に基づいて、温湿度状態判別グラフG(
図7参照)から温湿度状態(水分レベル)A~Eを判別する(ステップS2)。
【0053】
次いで、制御部81は、カバレッジの度合を特定する(ステップS3)。なお、この段階では、印刷が行われる前の段階であるため、カバレッジの度合は“0(50未満)”として特定される。
【0054】
次いで、制御部81は、ステップS2で判別された温湿度状態(水分レベル)と、ステップS3で特定されたカバレッジの度合と、に基づいて、加湿レベル設定テーブルT(
図8参照)から加湿レベル1~5を設定する(ステップS4)。
【0055】
次いで、制御部81は、加湿部20を、ステップS4で設定された加湿レベルに調整する(ステップS5)。これにより、給紙部10から給紙された用紙Pは、加湿部20において、ステップS5で調整された加湿レベルに応じた加湿が行われることとなる。
【0056】
次いで、制御部81は、実行指令がなされた画像形成ジョブは両面印刷であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0057】
ステップS6において、実行指令がなされた画像形成ジョブが両面印刷ではない、すなわち片面印刷であると判定された場合(ステップS6;NO)、制御部81は、加湿量制御処理を終了する。
一方、ステップS6において、実行指令がなされた画像形成ジョブが両面印刷であると判定された場合(ステップS6;YES)、制御部81は、乾燥部50において用紙P上のインクを乾燥固着させている際に当該乾燥部50から排出される空気の温湿度情報を、当該乾燥部50に設けられている温湿度センサー51から取得する(ステップS7)。
【0058】
次いで、制御部81は、ステップS7で取得した温湿度情報に基づいて、温湿度状態判別グラフG(
図7参照)から温湿度状態(水分レベル)A~Eを判別する(ステップS8)。
【0059】
次いで、制御部81は、印刷対象の画像データに基づいてカバレッジの度合を特定する(ステップS9)。
【0060】
次いで、制御部81は、ステップS8で判別された温湿度状態(水分レベル)と、ステップS9で特定されたカバレッジの度合と、に基づいて、加湿レベル設定テーブルT(
図8参照)から加湿レベル1~5を設定する(ステップS10)。
【0061】
次いで、制御部81は、加湿部20を、ステップS10で設定された加湿レベルに調整する(ステップS11)。これにより、反転経路R1で反転された後、加湿部20の位置へ再度搬送された用紙Pは、当該加湿部20において、ステップS11で調整された加湿レベルに応じた加湿が行われることとなる。
【0062】
ここで、乾燥部50から排出される空気(蒸気)には、加熱によって用紙Pから蒸発した水分と、インクから蒸発した水分と、の2種類が含まれている。よって、インクから蒸発した水分量を、当該インクが付与された用紙P全体で発生する水分量から差し引くことで、用紙Pから奪われた水分量を導出することができる。したがって、この導出された値に基づいて加湿部20での加湿量を調整することで、印字前と同じ用紙状態を再現可能となり、安定して繰り返し印字が行えるようになる。しかし、全体で発生する水分量、及び、インクから蒸発した水分量を測定することは困難であるため、乾燥部50から排出される空気の温湿度状態と、用紙Pに印字された画像の画像濃度情報(例えば、画像データ上のカバレッジ、印字ドットカウント値等)と、に基づいて、用紙Pから奪われた水分量を予測し、この予測結果から加湿部20での加湿量を調整している。また、本実施形態のインクジェット記録装置1にあっては、加湿部20での加湿量を調整する際、用紙Pに印字された画像が加湿によってにじむことがないよう配慮されており、当該用紙Pに印字された当該画像の画像濃度情報に基づいて、加湿部20での加湿量を調整している。
【0063】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Pに対して加湿を行う加湿部20と、加湿部20を制御する制御部81と、を備え、加湿部20は、少なくとも片面印刷工程の上流の搬送経路R上に設けられ、制御部81は、加湿部20において加湿が行われる際、用紙Pの状態に応じて、加湿量を調整する。
したがって、画像形成装置1によれば、加湿部20によって、1枚目の印刷、すなわち片面印刷の場合でも用紙Pを調湿することができるので、用紙Pを安定して搬送することがことできる。
【0064】
また、本実施の形態の画像形成装置1は、同一の用紙Pに対して複数回印刷が行われる場合、各印刷工程の前に加湿部20において当該用紙Pに対して加湿を行わせる。
したがって、画像形成装置1によれば、同一の用紙Pに対して印刷が行われる毎に各印刷工程の前に加湿部20において当該用紙Pに対して加湿を行わせるので、同一の用紙Pに対して複数回印刷が行われる場合であっても用紙Pを安定して搬送することがことできる。
【0065】
また、本実施の形態の画像形成装置1によれば、加湿部20は、用紙Pの表面に対する加湿と当該用紙Pの裏面に対する加湿とを同時に行うことが可能であり、用紙Pの表面と裏面とのそれぞれに対する加湿量を調整するので、用紙Pに対する加湿を適切に行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Pの各面の画像濃度に応じて、加湿量を調整する。
したがって、画像形成装置1によれば、用紙Pの各面の画像濃度に応じて適切な量の加湿を行うことができるので、画像のにじみを抑制することができる。
【0067】
また、本実施の形態の画像形成装置1は、印刷工程で印刷された用紙Pを乾燥させる乾燥部50を備え、上記画像濃度に加え、乾燥部50で排出された空気の温湿度に応じて、加湿量を調整する。
したがって、画像形成装置1によれば、画像濃度及び乾燥部50で排出された空気の温湿度に基づいて、乾燥部50で用紙Pから排出された水分量を推測することができるので、当該排出された水分量を補う適切な量の加湿を行うことができる。この結果、各印刷工程での用紙Pの姿勢が安定するので、当該各印刷工程で印刷が行われる際の画質を安定させることができる。
【0068】
また、本実施の形態の画像形成装置1によれば、加湿部20は、印刷工程において各印刷が行われる際に共用する搬送経路R上に設けられているので、各印刷が行われる際に加湿部20を兼用することができ、コストダウンを図るとともに装置のコンパクト化を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態の画像形成装置1によれば、加湿部20は、複数の加湿モジュール21を備え、加湿モジュール21の組み合わせによって、加湿量を調整するので、当該加湿量の調整を簡便に行うことができる。
【0070】
<3.その他>
以上、本発明を適用した好ましい実施形態について説明したが、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0071】
例えば、上記実施の形態では、画像形成装置であるインクジェット記録装置を例に挙げて説明を行ったが、当該画像形成装置は、電子写真方式のものであってもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、カール検知部30によって、印字直前の用紙Pのカール量を直に測定可能な構成とし、測定されたカール量に応じて、加湿部20で加湿を行う際の加湿量を決定するようにしてもよい。また、カール検知部30としては、上述のようにアクチュエータ方式のもの(
図5参照)とレーザー測定器を用いたもの(
図6参照)を例に挙げて説明を行ったが、一般的なベルト搬送の印刷機で使用される浮き検知部と同じ機能となるため、当該浮き検知部を備える画像形成装置にあっては、当該浮き検知部をカール検知部30に代用してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、加湿レベル設定テーブルTを参照して、用紙Pの温湿度状態(水分レベル)A~Eと、カバレッジの度合と、から加湿レベルを設定するようにしたが、例えば、カバレッジの度合の代わりとして、画像データ上の印字ドットカウント値を用いてもよいし、画像調整用に搬送される用紙上の画像を読み取るカメラを備えている場合、読み込んだ画像データから算出される各色の占める面積を用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 画像形成装置
10 給紙部
11 給紙カセット
12 温湿度センサー
20 加湿部
21 加湿モジュール
30 カール検知部
40 ヘッドユニット
50 乾燥部
51 温湿度センサー
60 排紙部
70 搬送部
81 制御部