(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B43L19/00 H
(21)【出願番号】P 2020104991
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】福井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】嶋 秀人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-254915(JP,A)
【文献】特開2005-271403(JP,A)
【文献】特開2005-178082(JP,A)
【文献】特開2006-281496(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008687(WO,A1)
【文献】特開2008-265066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、
前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、
前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであ
り、
前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁と、これら起立壁間を繋ぐ左右方向に延びた前記第一のテープガイドである横架部材とを備えたものであり、
前記湾曲変形部が、前記横架部材の下端縁に設けられたものである転写具。
【請求項2】
帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、
前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、
前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであ
り、
前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁を備えたものであり、
前記第二のテープガイドが、前記起立壁から内方に向かって突設された突起であり、
左右の前記突起は、前記転写テープの側縁部に対して点的に接触するように構成された曲面状をなしている転写具。
【請求項3】
帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、
前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、
前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであ
り、
前記第一のテープガイドが、前記湾曲変形部よりも外側に配設され、前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右一対の側端当接部を備えている転写具。
【請求項4】
帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、
前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、
前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであ
り、
前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁を有したフレーム体と、このフレーム体に対して支持された前後方向及び左右方向に延びてなる板状体とを備えたものであり、
前記先端押圧部が、前記板状体の先端部に設けられたものであり、
前記板状体に、上下方向に貫通した係合孔が形成されたものであり、
前記フレーム体に、前記係合孔に挿入される被挿入部を有した板状体係合部が設けられている転写具。
【請求項5】
前記第二のテープガイドが、前記起立壁から内方に向かって突設された突起である請求項1又は4記載の転写具。
【請求項6】
繰出用のリールから繰り出された前記転写テープを前記転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるように構成されたものであり、
前記繰出用のリール及び前記巻取用のリールの回転を連動させるリール連動機構を備えている請求項
1、2、3、4又は5記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由して巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
転写テープは、帯状をなす基材の外面に転写物である膜状の修正剤や糊が添着されたものである。転写テープに保持された転写物は、転写ヘッドによって用紙等の転写対象面に対して押し付けられることにより、当該転写対象面に対して転写され得るようになっている。
【0004】
ここで、特許文献1に開示された転写具は、転写ヘッドに起立壁状をなした一対の下側テープガイドが設けられている。この転写具では、起立壁状の下側テープガイドにより転写テープの位置が矯正され、転写テープが蛇行し難くなることが期待されている。
【0005】
しかしながら、上述した転写具であると、転写テープが蛇行してしまった場合の位置矯正は、専ら、転写テープの端縁を起立壁状の下側テープガイドに対して面的に接触させることにより行われることになる。このため、転写テープの端縁が、起立壁状をなす下側テープガイドと接触し易く、転写テープに添着された転写物が崩れるという不具合が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、転写テープの蛇行を好適に抑制し得る転写ヘッドを有した転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであり、前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁と、これら起立壁間を繋ぐ左右方向に延びた前記第一のテープガイドである横架部材とを備えたものであり、前記湾曲変形部が、前記横架部材の下端縁に設けられたものである転写具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであり、前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁を備えたものであり、前記第二のテープガイドが、前記起立壁から内方に向かって突設された突起であり、左右の前記突起は、前記転写テープの側縁部に対して点的に接触するように構成された曲面状をなしている転写具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであり、前記第一のテープガイドが、前記湾曲変形部よりも外側に配設され、前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右一対の側端当接部を備えている転写具である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、帯状をなす基材の一面側に転写物が添着されてなる転写テープを、転写ヘッドの先端部に設けられた先端押圧部によって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して前記基材から前記転写物を転写し得るようにした転写具であって、前記転写ヘッドが、前記先端押圧部よりも上流側に設けられ前記転写テープを左右方向中央部に設定された基本位置に案内し得る第一、第二のテープガイドを備えたものであり、前記第一のテープガイドが、前記基材の他面側に当接し前記転写テープを上側に凸をなすように湾曲させる湾曲変形部を有したものであり、前記第二のテープガイドが、前記第一のテープガイドよりも下流側に設けられ前記転写テープが前記基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであり、前記転写ヘッドが、左右に対をなして配設された起立壁を有したフレーム体と、このフレーム体に対して支持された前後方向及び左右方向に延びてなる板状体とを備えたものであり、前記先端押圧部が、前記板状体の先端部に設けられたものであり、前記板状体に、上下方向に貫通した係合孔が形成されたものであり、前記フレーム体に、前記係合孔に挿入される被挿入部を有した板状体係合部が設けられている転写具である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第二のテープガイドが、前記起立壁から内方に向かって突設された突起である請求項1又は4記載の転写具である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、繰出用のリールから繰り出された前記転写テープを前記転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるように構成されたものであり、前記繰出用のリール及び前記巻取用のリールの回転を連動させるリール連動機構を備えている請求項1、2、3、4又は5記載の転写具である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、転写テープの蛇行を好適に抑制し得る転写ヘッドを有した転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図9】同実施形態における転写ヘッドの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~11を参照して説明する。
【0019】
この実施形態は、本発明を、転写物である薄膜状の修正剤rを用紙等の転写対象面(図示せず)に対して転写するための転写具に適用したものである。転写具は、繰出用のリールCから繰り出された転写テープTを、転写ヘッドBを経由させて巻取用のリールDに巻き取らせるようにしたものである。
【0020】
転写具は、帯状をなす基材pの一面側p1に修正剤rが添着されてなる転写テープTを、転写ヘッドBの先端部に設けられた先端押圧部Uによって転写対象面に対して押し付けつつ転写テープTを上流側(繰出用のリールC側)から下流側(巻取用のリールD側)に向かって流動させることにより、当該転写対象面に対して基材pから修正剤rを転写し得るように構成したものである。
【0021】
以下、転写具について詳述する。
【0022】
転写具は、内部に転写テープTを収容し得るケースAと、ケースAの前端部に配された転写ヘッドBと、ケースA内に収容され修正剤rを保持した転写テープTが巻装された繰出用のリールCと、ケースA内に収容され繰出用のリールCから繰り出されるとともに転写ヘッドBの先端押圧部Uを経由した転写テープTを巻き取るための巻取用のリールDと、繰出用のリールCと巻取用のリールDの回転を連動させるリール連動機構Eを備えたものである。
【0023】
この実施形態の転写ヘッドBは、先端押圧部Uよりも上流側に設けられ転写テープTにおける幅方向中央部Tcを転写ヘッドBの左右方向中央部Bcに設定された基本位置(S)に案内し得る第一のテープガイドである第二の横架部材4、及び、第二のテープガイドである左右一対の突起5を備えたものとなっている。
【0024】
<ケースA>
ケースAは、内部に繰出用のリールC、巻取用のリールD、及び、リール連動機構Eを収容し得る収容空間spが形成された合成樹脂製のものである。ケースAは、左右の側壁a1と、左右の側壁a1の上端部間に配された上壁a2と、左右の側壁a1の後端部間に配された後壁a3と、左右の側壁a1の下端部間に配された下壁a4とを備えている。
【0025】
ケースAの前側には、転写テープTを転写ヘッドBの先端押圧部Uに導出するとともに転写ヘッドBの先端押圧部Uを経由した転写テープTをケースAの内部に導入するための開口部a5が形成されている。
【0026】
ケースAの内面には、繰出用のリールCやリール連動機構Eを構成する繰出ギアe1を回転可能に支持する第一の支軸a6が突設されている。ケースAの内面には、巻取用のリールD及びリール連動機構Eを構成する巻取ギアe3を回転可能に支持する第二の支軸a7が突設されている。ケースAの内面には、繰出ギアe1と巻取ギアe3との間に介設された繰出ギアe1を回転可能に支持する第三の支軸a8が突設されている。
【0027】
なお、ケースAには、転写ヘッドBを被覆し得る被覆位置(G)と転写ヘッドBから退避した退避位置(H)との間で回転可能に支持された保護カバーFが設けられている。
【0028】
<転写ヘッドB>
転写ヘッドBは、合成樹脂により一体的に形成されたフレーム体Jと、前端部に転写テープTを転写対象面に対して押し付ける先端押圧部Uが設けられフレーム体Jに対して支持された前後方向及び左右方向に延びてなる金属製の板状体Kとを備えたものである。転写ヘッドBには、転写テープTを基本位置(S)すなわち転写テープTの幅方向中央部Tcが転写ヘッドBにおける左右方向中央部Bcに位置し得るように案内し得る第一のテープガイドたる第二の横架部材4、及び、第二のテープガイドたる左右の突起5が設けられている。
【0029】
フレーム体Jは、前後方向及び上下方向に延びてなる壁状をなし左右に対をなして配設された左右の起立壁1、2と、板状体Kよりも上に設けられ左右の起立壁1、2間を繋ぐ左右方向に延びた第一の横架部材3と、板状体Kよりも下に設けられ左右の起立壁1、2間を繋ぐ左右方向に延びた第一のテープガイドである第二の横架部材4と、第二の横架部材4よりも前側すなわち転写テープTの流動方向の下流側に位置し左右の起立壁1、2から内方に向かって突設された第二のテープガイドである左右一対の突起5と、左右の起立壁1、2の後端部から後方に向かって連設されケースAの前端部と接続するケース接続部6と、ケース接続部6の後端部から後方に向かって連設され板状体Kの後部を保持し得る後保持部7とを備えたものである。
【0030】
左右の起立壁1、2は、側面視において略三角形状をなしている。左右の起立壁1、2は、ケースAの外側すなわちケースAの前側に配設されている。左の起立壁1と右の起立壁2とは左右方向に離間して配されている。すなわち、左の起立壁1と右の起立壁2との間には、転写テープTが流通するテープ流通路Wが形成されている。
【0031】
第一の横架部材3は、左右の起立壁1、2における前部における上下方向中間部間を繋ぐものである。第一の横架部材3における前後方向の幅寸法は上下方向の幅寸法よりも長く設定されている。第一の横架部材3の前端部下面は、板状体Kの上面に当接し得るものとなっており、板状体Kにおける前部の上方への移動を制限している。換言すれば、第一の横架部材3は、板状体Kの先端押圧部Uよりも後側に控えた位置に設けられている。そして、第一の横架部材3における先端部下面には、板状体Kにおける前部が上方に移動することを規制する上動規制部31が設けられている。
【0032】
第二の横架部材4は、左右の起立壁1、2における後部における下部間を繋ぐものである。第二の横架部材4における上下方向の幅寸法は前後方向の幅寸法よりも長く設定されている。第二の横架部材4は、板状体Kよりも下に配設されている。つまり、第二の横架部材4は、板状体Kの先端押圧部Uよりも上流側に位置している。
【0033】
第二の横架部材4は、左右方向中間部における下端縁に設けられ転写テープTを上向きに凸をなすように湾曲させる湾曲変形部41と、湾曲変形部41よりも左右の外側に設けられ転写テープTの側端縁に係合し得る左右一対の側端当接部42とを備えたものである。
【0034】
湾曲変形部41は、転写テープTにおける修正剤rが添着されていない側の面すなわち基材pの他面側p2に当接し得るようになっている。湾曲変形部41は、左右方向中央部が左右方向両側部よりも上に位置するように湾曲状に凹んだ形態をなしている。湾曲変形部41に対して転写テープTが当接すると、当該転写テープTは湾曲変形部41の形状に追従して変形が惹起されて上側に凸をなすように湾曲変形されるようになっている。
【0035】
側端当接部42は、左右に対をなしたものである。側端当接部42は、湾曲変形部41よりも外側に配設され、転写テープTが基本位置(S)よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープTの側端部に当接し得るものとなっている。この実施形態では、側端当接部42は、湾曲変形部41における左右の両側部から下方に延出した部分円柱状のものである。すなわち、転写テープTの側端部に当接し得る側端当接部42の内側縁部分は曲面状に形成されている。
【0036】
左右の突起5は、第一のテープガイドである第二の横架部材4よりも下流側に設けられている。左右の突起5は、転写テープTが基本位置(S)よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープTの側端部に当接し得るものである。左右の突起5は、左右の起立壁1、2の内面から内方に向かって突設されたリブ状のものである。左右の突起5は上下方向に延びた形状をなしている。転写テープTの側端部に当接し得る左右の突起5の内側縁部分は曲面状に形成されている。
【0037】
ケース接続部6は、側面視において左右方向に貫通した矩形状の貫通孔61が設けられている。この貫通孔61には、ケースAの内面から突設された柱状のヘッド支持部a9が挿入されるようになっている。
【0038】
後保持部7は、ケース接続部6の後端部から後方に向かって延びてなるものである。後保持部7は、上縁部がケースAに突設された第一の位置決め部z1と係合し得るとともに下縁部がケースAに突設された第二の位置決め部z2と当接し得るようになっている。後保持部7は、板状体Kの後部における左右両側縁に沿うように配された左右の側周壁部分71と、これら左右の側周壁部分71の後端部間を繋ぎ板状体Kの後端縁に沿うように配された後周壁部分72と、後周壁部分72から前方に片持ち的に延出し板状体Kの後部に係合し得る板状体係合部73とを備えたものである。板状体係合部73は、前方に向かって片持ち的に設けられており板状体Kと接続する際に先端部における上下方向の一時的な弾性変形が許容されている。板状体係合部73の先端部には上方に膨出し板状体Kの後端部に設けられた上下方向に貫通した係合孔k1に挿入される被挿入部73aが設けられている。
【0039】
板状体Kは、前後方向に延びてなる略水平板状の形状をなした金属製のものである。板状体Kの先端部には、転写テープTにおける基材pの他面側p2に接し転写テープTに添着された修正剤rを転写対象面に対して押し付ける左右方向に延びた先端押圧部Uが形成されている。先端押圧部Uは、側面視において斜め上方に沿った形状をなしている。板状体Kの前部における左右方向中間部には、板状体Kの撓みを調整するための前後方向に延びた長孔状の貫通孔k2が設けられている。板状体Kの後部における左右方向中間部には、上下方向に貫通した係合孔k1が形成されている。
【0040】
板状体Kは、フレーム体Jに形成された前後方向に延びてなり前方が開放された板状体挿入スリット8に挿入されることにより、フレーム体Jに支持されるものとなっている。板状体挿入スリット8は、左右の起立壁1、2の間、第一の横架部材3の下、第一のテープガイドである第二の横架部材4の上、第二のテープガイドである左右の突起5の上、ケース接続部6の下、及び、後保持部7における板状体係合部73の上に位置したものである。板状体Kが、前側から板状体挿入スリット8の内部に挿入されていくと、その後、板状体Kの後端部に形成された係合孔k1に対して、後保持部7の被挿入部73aが挿入されることになる。これにより、板状体Kはフレーム体Jに対する所定の位置に保持されるようになっている。
【0041】
<繰出用のリールC>
繰出用のリールCは、左右方向に延びてなり外周部に転写テープTが巻装された円筒状の繰出用リール本体部c1と、繰出用リール本体部c1の一側部に設けられた側板部c2を有してなるものである。繰出用のリールCは、繰出ギアe1を介してケースAに突設された第一の支軸a6に枢支されている。
【0042】
<巻取用のリールD>
巻取用のリールDは、繰出用のリールCから転写ヘッドBの先端押圧部Uを経由して送り出された転写テープTを巻き取るものである。巻取用のリールDは、左右方向に延びてなり外周部に転写テープTを巻き取り得る円筒状の巻取用リール本体部d1と、巻取用リール本体部d1の左右両端部に設けられた左右の鍔部d2とを備えたものである。巻取用のリールDは、ケースAに突設された第二の支軸a7に枢支されている。
【0043】
<リール連動機構E>
リール連動機構Eは、第一の支軸a6に回転可能に支持され繰出用のリールCとともに回転し得る繰出ギアe1と、第三の支軸a8に回転可能に支持され繰出ギアe1と噛合する中間ギアe2と、第二の支軸a7に回転可能に支持され中間ギアe2と噛合する巻取ギアe3とを備えたものである。巻取ギアe3は、巻取用のリールDにおける側部に一体に設けられている。
【0044】
繰出ギアe1は、外周縁に中間ギアe2と噛合する複数の歯が設けられた繰出ギア本体e11と、繰出ギア本体e11の中央部から立設され繰出用のリールCにおける中心孔に挿入される繰出用リール接続軸e12とを備えたものである。
【0045】
なお、繰出用のリールCにおける繰出用リール本体部c1と繰出ギアe1の繰出用リール接続軸e12との間には、一定以上のトルクが作用した場合に繰出用のリールCと繰出ギアe1との相対回転を許容するすべり機構Mが設けられている。すべり機構Mは既知の構成のものであるため説明を省略する。
【0046】
巻取ギアe3は、外周縁に中間ギアe2と噛合する複数の歯が設けられたものである。巻取ギアe3は、巻取用のリールDと軸心を一致させて当該巻取用のリールDに一体に設けられている。
【0047】
続いて、第一、第二のテープガイドの作動について概説する。
【0048】
転写具を操作する時は、転写テープTは、転写ヘッドBの左右方向中央部の基本位置(S)に位置した状態をなしている。転写テープTは、先端押圧部Uよりも上流に設けられた第二の横架部材4の湾曲変形部41に常時接しており、当該湾曲変形部41による中央部への案内作用(センター寄せ作用)により、転写テープTを基本位置(S)に位置するように誘導し得るものとなっている。
【0049】
一方で、使用者による誤操作等により、転写テープTが転写ヘッドBに対して横ずれしてしまう場合がある。換言すれば、使用者による誤操作等により、転写ヘッドBを流通する転写テープTが左右方向中央部の基本位置(S)よりも外側に大きくずれ動いてしまう場合がある。このとき、第二の横架部材4よりも下流側に設けられた左右の突起5の何れか一方の内側端縁に対して転写テープTの側縁部teが触れるようになっている。
【0050】
左右の突起5は、転写テープTの側縁部teに対して点的に接触するように構成された曲面状をなしており、且つ、転写テープTは左右の突起5の上流側に位置する湾曲変形部41によって常時基本位置(S)に位置するように案内されている。このため、左右の突起5に対して転写テープTが触れた場合であっても、基材pに添着された修正剤rが崩れにくいものとなっている。
【0051】
なお、第二の横架部材4は、湾曲変形部41よりも左右の外側に一対の側端当接部42を有しているので、転写テープTの状態によっては、第二のテープガイドである左右の突起5に当接する前に、第一のテープガイドを構成する一対の側端当接部42に当接する場合がある。この場合であっても、一対の側端当接部42は、転写テープTの側縁部teに対して点的に接触するように構成された曲面状をなしており、且つ、湾曲変形部41によって常時基本位置(S)に位置するように案内されているため、一対の側端当接部42に対して転写テープTの側縁部teが触れた場合であっても、基材pに添着された修正剤rが崩れにくいものとなっている。
【0052】
以上に詳述した通り、本実施形態に示す転写具は、帯状をなす基材pの一面側p1に転写物たる薄膜状の修正剤rが添着されてなる転写テープTを、転写ヘッドBの先端部に設けられた先端押圧部Uによって転写対象面に対して押し付けることにより、当該転写対象面に対して基材pから修正剤rを転写し得るようにしたものである。
【0053】
そして、転写ヘッドBは、先端押圧部Uよりも上流側に設けられ転写テープTを左右方向中央部に設定された基本位置(S)に案内し得る第一のテープガイドである第二の横架部材4、及び、第二のテープガイドである左右の突起5を備えたものである。
【0054】
第一のテープガイドである第二の横架部材4が、基材pの他面側p2に当接し転写テープTを上側に凸をなすように(幅方向中央部側が幅方向両端部側よりも上に位置するように)湾曲させる湾曲変形部41を有したものであり、第二のテープガイドである左右の突起5が、第二の横架部材4よりも下流側に設けられ転写テープTが基本位置(S)よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープTの側端部teに当接し得る左右に対をなしたものである。
【0055】
このため、本実施形態に示される転写具であれば、転写テープTの蛇行を好適に抑制し得る転写ヘッドBを有した転写具を提供することができるものとなる。
【0056】
つまり、転写テープTは、湾曲変形部41による中央部への案内作用(センター寄せ作用)により、常に、転写テープTを基本位置(S)に位置するように誘導し得るものとなっている。
【0057】
しかも、転写テープTが転写ヘッドBに対して大きく横ずれしてしまった場合には、第二の横架部材4よりも下流側に設けられた左右の突起5の何れか一方に対して転写テープTの側縁部teが点的に触れ得るものとなっている。
【0058】
したがって、本実施形態におけるヘッドの構造によれば、転写テープTの蛇行が好適に抑制されるだけでなく、使用者の誤操作等によって転写テープTが基本位置(S)から大きく横ずれした場合であっても、当該転写テープTは左右の突起5に対して点的に触れるだけで軌道が矯正され得るものとなるため、基材pに添着された修正剤rが崩れにくいものとなっている。
【0059】
転写ヘッドBが、左右に対をなして配設された起立壁1、2と、これら起立壁1、2間を繋ぐ左右方向に延びた第一のテープガイドたる横架部材すなわち第二の横架部材4を備えたものである。そして、湾曲変形部41は、第二の横架部材4における下端縁に設けられたものである。
【0060】
このため、先端押圧部Uの上流側における適切な位置に湾曲変形部41を設けることができるものとなっている。
【0061】
第二のテープガイドである左右の突起5が、左右の起立壁1、2から内方に向かって突設されたものである。
【0062】
このため、転写テープTの側端部teに当接して当該転写テープTの軌道を好適に修正し得るだけでなく、転写テープTの側端部teに触れた場合であっても点的に触れるだけの構造であるため転写テープTに添着された修正剤rが崩れにくいものとなっている。
【0063】
第一のテープガイドである第二の横架部材4が、湾曲変形部41よりも外側に配設され、転写テープTが基本位置(S)よりも左右方向にずれ動いた場合にのみ当該転写テープTの側端部teに当接し得る左右一対の側端当接部42を備えている。
【0064】
このため、転写テープTが基本位置(S)から大きく横ずれした場合であっても、当該転写テープTの側端部teに当接して当該転写テープTの軌道を好適に修正し得るものとなっている。しかも、左右の側端当接部42が、当該左右の側端当接部42よりも下流側に設けられた左右の突起5と協働することにより、基本位置(S)から大きく横ずれした転写テープTを好適に基本位置(S)方向に誘導し得るものとなっている。
【0065】
転写ヘッドBが、左右に対をなして配設された起立壁1、2を有したフレーム体Jと、このフレーム体Jに対して支持された前後方向及び左右方向に延びてなる板状体Kとを備えたものである。そして、先端押圧部Uが、板状体Kの先端部に設けられたものである。
【0066】
このため、先端押圧部Uは、基材pに添着された修正剤rを転写対象面に対して好適に転写させ得るものとなっている。つまり、板状体Kの先端部に先端押圧部Uが設けられているため、転写対象面に対して平行をなす好適な形態を採りやすいだけでなく先端縁を活用し易い(エッジを効かせ易い)ものとなり、修正剤rの転写を止める際に転写された修正剤rの終端を好適に切れさせることができるようになっている。
【0067】
板状体Kに、上下方向に貫通した係合孔k1が形成されたものである。そして、フレーム体Jに、係合孔k1に挿入される被挿入部73aを有した板状体係合部73が設けられている。
【0068】
このため、転写ヘッドBは、フレーム体Jに対して板状体Kを装着することにより、好適に組立することができるものとなっている。
【0069】
繰出用のリールCから繰り出された転写テープTを転写ヘッドBを経由させて巻取用のリールDに巻き取らせるように構成されたものであり、繰出用のリールC及び巻取用のリールDの回転を連動させるリール連動機構Eを備えている。
【0070】
このため、リール連動機構Eにより上流側である繰出用のリールCから下流側である巻取用のリールDに流動する転写テープTの軌道上に湾曲変形部41を設けることにより、転写テープTを好適に基本位置(S)に位置させることができるものとなっている。
【0071】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0072】
転写具は、転写物を転写対象物に転写するものであればどのようなものであってもよい。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された薄膜状の修正剤に限られるものではなく、例えば、糊や装飾用の装飾剤(装飾テープ)であってもよい。
【0073】
また、転写具は、転写テープが無くなった場合に以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものに限られるものではない。転写具は、転写テープを保持したリフィルをケースに対して付け替え可能に構成されたいわゆるリフィル交換タイプのものであってもよい。
【0074】
湾曲変形部は、転写テープを上側に凸をなすように湾曲させ得るものであればよく、上述した実施形態のような横架部材の下端縁を湾曲状に凹ませたものに限られるものではない。例えば、湾曲変形部を複数の突起を配設することにより、転写テープを上側に凸をなすように湾曲させ得るものであってもよい。
【0075】
第一のテープガイドは、左右の側端当接部を有していないものであってもよい。
【0076】
第二のテープガイドは、転写テープが基本位置よりも左右方向にずれ動いた場合に当該転写テープの側端部に当接し得る左右に対をなしたものであればよく、左右の起立壁から内方に向かって突設されたものでなくてもよい。
【0077】
転写ヘッドの先端押圧部は、板状をなしたものに限られず、ロール状をなしたものであってもよい。換言すれば、転写ヘッドが、先端部に先端押圧部である転写ロールを回転可能に支持したものであってもよい。
【0078】
板状体の先端部に設けられた先端押圧部の形状は適宜の形状を採用することができるものである。
【0079】
先端押圧部は、転写ヘッドの先端部に設けられ転写テープを転写対象面に対して押し付けることができるものであればよく、板状体の先端部に設けられたものに限られるものではない。
【0080】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0081】
F…ケース(支持部材)
G…転写ヘッド
H…繰出用のリール
I…巻取用のリール(リール)
K…ラチェット機構
k1、k2…第一、第二のラチェット爪
R…ラチェット歯
T…転写テープ