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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/02 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B60C9/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020105554
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021195104
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】石崖 雄一
(72)【発明者】
【氏名】森 光司
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-292402(JP,A)
【文献】特開2009-056944(JP,A)
【文献】特表2016-507424(JP,A)
【文献】特開2005-225399(JP,A)
【文献】特表2016-538190(JP,A)
【文献】特開昭62-205804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
タイヤ軸方向に離れた第1ビード部と第2ビード部との間を、トレッド部及び一対のサイドウォール部を通って延びるカーカスを備え、
前記カーカスは、少なくとも2枚のカーカスプライを有し、
前記カーカスプライは、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライと第2カーカスプライとを含み、
前記第1カーカスプライ及び前記第2カーカスプライは、それぞれ、タイヤ赤道に対して非対称に配されており、
前記カーカスプライは、カーカスコードと、前記カーカスコードを被覆するトッピングゴムとを含み、
前記トレッド部と前記サイドウォール部との境界位置において、前記カーカスプライは、前記カーカスコードのコード強力(N)と、前記カーカスコードの5cm当たりの打ち込み本数と、前記トッピングゴムの70℃における複素弾性率(MPa)との積が、200000以上である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1カーカスプライは、前記第1ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第1端部と、前記第2ビード部で前記第1端部よりもタイヤ半径方向の内側に位置する第2端部とを有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2端部は、前記第2ビード部で折り返されていない、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2端部は、前記第2ビード部で前記第1端部よりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2カーカスプライは、前記第2ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第3端部と、前記第1ビード部で前記第3端部よりもタイヤ半径方向の内側に位置する第4端部とを有する、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1端部と前記第4端部とのタイヤ半径方向の距離は、10mm以上である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記カーカスプライは、前記第1カーカスプライ及び前記第2カーカスプライよりもタイヤ半径方向の内側に配された第3カーカスプライを含む、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第3カーカスプライは、前記第1ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第5端部と、前記第2ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第6端部とを有する、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第5端部と前記第6端部とは、タイヤ半径方向の位置が同一である、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第5端部及び前記第6端部は、前記第1端部よりもタイヤ半径方向の外側に位置する、請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のカーカスプライを有するカーカスを備えた空気入りタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、第1カーカスプライと、その外側に重ねて設けられた第2カーカスプライとで構成され、第1カーカスプライの巻き上げ部が、第2カーカスプライの巻き上げ部より巻き上げ位置が高く形成された空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-112005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤは、巻き上げ部の高さの異なる2層のカーカスプライにより、耐カット性と耐久性とを向上させている。しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤは、2層のカーカスプライを形成するために、プライ長さの異なる2種類のカーカスプライ(第1カーカスプライ及び第2カーカスプライ)を準備する必要があり、その材料の管理コストを含む製造コストが増大する要因となっていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、良好な耐カット性及び耐久性を維持しつつ製造コストを抑制し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、タイヤ軸方向に離れた第1ビード部と第2ビード部との間を、トレッド部及び一対のサイドウォール部を通って延びるカーカスを備え、前記カーカスは、少なくとも2枚のカーカスプライを有し、前記カーカスプライは、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライと第2カーカスプライとを含み、前記第1カーカスプライ及び前記第2カーカスプライは、それぞれ、タイヤ赤道に対して非対称に配されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1カーカスプライは、前記第1ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第1端部と、前記第2ビード部で前記第1端部よりもタイヤ半径方向の内側に位置する第2端部とを有するのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2端部は、前記第2ビード部で折り返されていないのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2端部は、前記第2ビード部で前記第1端部よりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されているのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2カーカスプライは、前記第2ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第3端部と、前記第1ビード部で前記第3端部よりもタイヤ半径方向の内側に位置する第4端部とを有するのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1端部と前記第4端部とのタイヤ半径方向の距離は、10mm以上であるのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライは、前記第1カーカスプライ及び前記第2カーカスプライよりもタイヤ半径方向の内側に配された第3カーカスプライを含むのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第3カーカスプライは、前記第1ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第5端部と、前記第2ビード部でタイヤ半径方向の外側に折り返された第6端部とを有するのが望ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第5端部と前記第6端部とは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第5端部及び前記第6端部は、前記第1端部よりもタイヤ半径方向の外側に位置するのが望ましい。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライは、カーカスコードと、前記カーカスコードを被覆するトッピングゴムとを含み、前記トレッド部と前記サイドウォール部との境界位置において、前記カーカスプライは、前記カーカスコードのコード強力(N)と、前記カーカスコードの5cm当たりの打ち込み本数と、前記トッピングゴムの70℃における複素弾性率(MPa)との積の総和が、200000以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤにおいて、カーカスプライは、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライと第2カーカスプライとを含んでいる。このような空気入りタイヤは、少なくとも2枚のカーカスプライを有しているので、耐カット性に優れている。また、この空気入りタイヤは、2枚のカーカスプライのプライ長さが同じであるため、同一の材料から形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0018】
本発明の空気入りタイヤにおいて、第1カーカスプライ及び第2カーカスプライは、それぞれ、タイヤ赤道に対して非対称に配されている。このような空気入りタイヤは、第1カーカスプライのタイヤ軸方向の端部と、第2カーカスプライのタイヤ軸方向の端部とが重なるおそれがなく、歪みを分散することができ、耐久性を向上させることができる。このため、本発明の空気入りタイヤは、良好な耐カット性及び耐久性を維持しつつ製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面概略説明図である。
図2】第2の実施形態の空気入りタイヤを示す断面概略説明図である。
図3】第3の実施形態の空気入りタイヤを示す断面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」ということがある。)を示すタイヤ回転軸(図示省略)を含む断面概略説明図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、回転することで接地するトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ軸方向の両側に位置する一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向の内側に位置する一対のビード部4とを有している。ビード部4は、例えば、タイヤ軸方向に離れた第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとを含んでいる。
【0021】
本実施形態のタイヤ1は、第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとの間を、トレッド部2及び一対のサイドウォール部3を通って延びるカーカス6を備えている。タイヤ1のトレッド部2は、例えば、カーカス6のタイヤ半径方向の外側に配されたベルト層(図示省略)と、該ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層(図示省略)とを備えている。
【0022】
本実施形態のカーカス6は、少なくとも2枚のカーカスプライ7を有している。このようなタイヤ1は、サイドウォール部3にも少なくとも2枚のカーカスプライ7を有しているので、耐カット性に優れている。
【0023】
本実施形態のカーカスプライ7は、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライ7Aと第2カーカスプライ7Bとを含んでいる。第2カーカスプライ7Bは、例えば、第1カーカスプライ7Aのタイヤ半径方向の内側に配されている。このようなタイヤ1は、2枚のカーカスプライ7のプライ長さが同じであるため、同一の材料から形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0024】
本実施形態の第1カーカスプライ7A及び第2カーカスプライ7Bは、それぞれ、タイヤ赤道Cに対して非対称に配されている。このようなタイヤ1は、第1カーカスプライ7Aのタイヤ軸方向の端部と、第2カーカスプライ7Bのタイヤ軸方向の端部とが重なるおそれがなく、歪みを分散することができ、耐久性を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、良好な耐カット性及び耐久性を維持しつつ製造コストを抑制することができる。
【0025】
ここで、タイヤ赤道Cは、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの接地面のタイヤ軸方向の中央位置である。なお、「正規状態」とは、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。
【0026】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定めるリムである。
【0027】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0028】
「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める荷重である。
【0029】
より好ましい態様として、カーカスプライ7は、カーカスコード(図示省略)と、カーカスコードを被覆するトッピングゴム(図示省略)とを含んでいる。本実施形態のカーカスプライ7は、トレッド部2とサイドウォール部3との境界位置であるバットレス部8において、予め定められた強度を有している。
【0030】
カーカスプライ7は、カーカスコードのコード強力F(N)と、カーカスコードの5cm当たりの打ち込み本数Nと、トッピングゴムの70℃における複素弾性率E*(MPa)との積(F×N×E*)が、好ましくは、200000以上である。積(F×N×E*)が200000以上であることで、悪路走行時においても十分な耐カット性を維持することができる。このような観点から、積(F×N×E*)は、より好ましくは、250000以上であり、更に好ましくは、300000以上である。
【0031】
ここで、複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じ、下記の条件で動的粘弾性測定装置を用いて測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0032】
本実施形態の第1カーカスプライ7Aは、第1ビード部4Aでタイヤ半径方向の外側に折り返された第1端部7aと、第2ビード部4Bで第1端部7aよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第2端部7bとを有している。このような第1カーカスプライ7Aは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ1の低燃費性能を向上させることができる。
【0033】
本実施形態の第2端部7bは、第2ビード部4Bで折り返されていない。このような第1カーカスプライ7Aは、より軽量化することができるので、タイヤ1の低燃費性をより向上させることができる。なお、第2端部7bは、例えば、第2ビード部4Bで第1端部7aよりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されていてもよい。
【0034】
本実施形態の第2カーカスプライ7Bは、第2ビード部4Bでタイヤ半径方向の外側に折り返された第3端部7cと、第1ビード部4Aで第3端部7cよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第4端部7dとを有している。このような第2カーカスプライ7Bは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ1の低燃費性を向上させることができる。
【0035】
本実施形態の第4端部7dは、第1ビード部4Aで折り返されていない。このような第2カーカスプライ7Bは、より軽量化することができるので、タイヤ1の低燃費性をより向上させることができる。なお、第4端部7dは、例えば、第1ビード部4Aで第3端部7cよりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されていてもよい。
【0036】
第1端部7aと第3端部7cとは、例えば、タイヤ半径方向の位置が同一であってもよい。この場合、第2端部7bと第4端部7dとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。このようなカーカスプライ7は、全体としてタイヤ軸方向のバランスが良好であり、タイヤ1の操縦安定性を向上させることができる。
【0037】
第1端部7aと第4端部7dとのタイヤ半径方向の距離d1は、好ましくは、10mm以上である。距離d1が10mm以上であることで、第1端部7aにおける歪みと第4端部7dにおける歪みとを分散することができ、タイヤ1の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d1は、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0038】
第2端部7bと第3端部7cとのタイヤ半径方向の距離d2は、好ましくは、10mm以上である。距離d2が10mm以上であることで、第2端部7bにおける歪みと第3端部7cにおける歪みとを分散することができ、タイヤ1の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d2は、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0039】
図2は、第2の実施形態の空気入りタイヤ10(以下、単に「タイヤ10」ということがある。)を示すタイヤ回転軸(図示省略)を含む断面概略説明図である。上述の実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。図2に示されるように、第2の実施形態のタイヤ10は、上述のタイヤ1と同様に、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、タイヤ軸方向に離れた第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとを含む一対のビード部4とを有している。
【0040】
第2の実施形態のタイヤ10は、第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとの間を、トレッド部2及び一対のサイドウォール部3を通って延びるカーカス11を備えている。タイヤ10のトレッド部2は、上述のタイヤ1と同様に、例えば、カーカス11のタイヤ半径方向の外側に配されたベルト層(図示省略)と、該ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層(図示省略)とを備えている。
【0041】
第2の実施形態のカーカス11は、3枚のカーカスプライ12を有している。このようなタイヤ10は、サイドウォール部3にも少なくとも3枚のカーカスプライ7を有しているので、耐カット性に優れている。
【0042】
第2の実施形態のカーカスプライ12は、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライ12Aと第2カーカスプライ12Bとを含んでいる。第2カーカスプライ12Bは、例えば、第1カーカスプライ12Aのタイヤ半径方向の内側に配されている。このようなタイヤ10は、2枚のカーカスプライ12のプライ長さが同じであるため、同一の材料から形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0043】
第2の実施形態のカーカスプライ12は、第1カーカスプライ12A及び第2カーカスプライ12Bよりもタイヤ半径方向の内側に配された第3カーカスプライ12Cを更に含んでいる。このようなタイヤ10は、3枚のカーカスプライ12による耐カット性と、軽量化による低燃費性とを両立することができる。
【0044】
第2の実施形態の第1カーカスプライ12A及び第2カーカスプライ12Bは、それぞれ、タイヤ赤道Cに対して非対称に配されている。このようなタイヤ10は、第1カーカスプライ12Aのタイヤ軸方向の端部と、第2カーカスプライ12Bのタイヤ軸方向の端部とが重なるおそれがなく、歪みを分散することができ、耐久性を向上させることができる。このため、第2の実施形態のタイヤ10は、上述のタイヤ1と同様に、良好な耐カット性及び耐久性を維持しつつ製造コストを抑制することができる。
【0045】
第2の実施形態の第1カーカスプライ12Aは、第1ビード部4Aでタイヤ半径方向の外側に折り返された第1端部12aと、第2ビード部4Bで第1端部12aよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第2端部12bとを有している。このような第1カーカスプライ12Aは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ10の低燃費性を向上させることができる。
【0046】
第2の実施形態の第2端部12bは、第2ビード部4Bで第1端部12aよりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されている。このような第1カーカスプライ12Aは、軽量化による良好な低燃費性と、ビード部4の剛性向上による耐久性向上とを両立することができる。
【0047】
第2の実施形態の第2カーカスプライ12Bは、第2ビード部4Bでタイヤ半径方向の外側に折り返された第3端部12cと、第1ビード部4Aで第3端部12cよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第4端部12dとを有している。このような第2カーカスプライ12Bは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ10の低燃費性を向上させることができる。
【0048】
第2の実施形態の第4端部12dは、第1ビード部4Aで第3端部12cよりもタイヤ半径方向の内側の位置まで折り返されている。このような第2カーカスプライ12Bは、軽量化による良好な低燃費性と、ビード部4の剛性向上による耐久性向上とを両立することができる。
【0049】
第1端部12aと第3端部12cとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。また、第2端部12bと第4端部12dとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。このようなカーカスプライ12は、全体としてタイヤ軸方向のバランスが良好であり、タイヤ10の操縦安定性を向上させることができる。
【0050】
第2の実施形態の第3カーカスプライ12Cは、第1ビード部4Aでタイヤ半径方向の外側に折り返された第5端部12eと、第2ビード部4Bでタイヤ半径方向の外側に折り返された第6端部12fとを有している。このような第3カーカスプライ12Cは、ビード部4の剛性を向上させることができ、タイヤ10の耐久性を向上させることができる。
【0051】
第5端部12eと第6端部12fとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。このようなカーカスプライ12は、全体としてタイヤ軸方向のバランスが良好であり、タイヤ10の操縦安定性を向上させることができる。
【0052】
第2の実施形態の第5端部12e及び第6端部12fは、第1端部12a及び第3端部12cよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなカーカス11は、第1端部12a、第2端部12b、第3端部12c及び第4端部12dを第3カーカスプライ12Cが覆っているので、タイヤ10の耐久性をより向上させることができる。
【0053】
第1端部12aと第4端部12dとのタイヤ半径方向の距離d3は、好ましくは、10mm以上である。第1端部12aと第5端部12eとのタイヤ半径方向の距離d4は、好ましくは、10mm以上である。距離d3及び距離d4がそれぞれ10mm以上であることで、第1端部12aにおける歪みと第4端部12dにおける歪みと第5端部12eにおける歪みとを分散することができ、タイヤ10の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d3及び距離d4は、それぞれ、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0054】
第2端部12bと第3端部12cとのタイヤ半径方向の距離d5は、好ましくは、10mm以上である。第3端部12cと第6端部12fとのタイヤ半径方向の距離d6は、好ましくは、10mm以上である。距離d5及び距離d6がそれぞれ10mm以上であることで、第2端部12bにおける歪みと第3端部12cにおける歪みと第6端部12fにおける歪みとを分散することができ、タイヤ10の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d5及び距離d6は、それぞれ、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0055】
図3は、第3の実施形態の空気入りタイヤ20(以下、単に「タイヤ20」ということがある。)を示すタイヤ回転軸(図示省略)を含む断面概略説明図である。上述の実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。図3に示されるように、第3の実施形態のタイヤ20は、上述のタイヤ1と同様に、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、タイヤ軸方向に離れた第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとを含む一対のビード部4とを有している。
【0056】
第3の実施形態のタイヤ20は、第1ビード部4Aと第2ビード部4Bとの間を、トレッド部2及び一対のサイドウォール部3を通って延びるカーカス21を備えている。タイヤ20のトレッド部2は、上述のタイヤ1と同様に、例えば、カーカス21のタイヤ半径方向の外側に配されたベルト層(図示省略)と、該ベルト層のタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層(図示省略)とを備えている。
【0057】
第3の実施形態のカーカス21は、上述のカーカス11と同様に、3枚のカーカスプライ22を有している。このようなタイヤ20は、サイドウォール部3にも少なくとも3枚のカーカスプライ7を有しているので、耐カット性に優れている。
【0058】
第3の実施形態のカーカスプライ22は、プライ長さが互いに同じである第1カーカスプライ22Aと第2カーカスプライ22Bとを含んでいる。第2カーカスプライ22Bは、例えば、第1カーカスプライ22Aのタイヤ半径方向の内側に配されている。このようなタイヤ20は、2枚のカーカスプライ22のプライ長さが同じであるため、同一の材料から形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0059】
第3の実施形態のカーカスプライ22は、第1カーカスプライ22A及び第2カーカスプライ22Bよりもタイヤ半径方向の内側に配された第3カーカスプライ22Cを更に含んでいる。このようなタイヤ20は、3枚のカーカスプライ22による耐カット性と、軽量化による低燃費性とを両立することができる。
【0060】
第3の実施形態の第1カーカスプライ22A及び第2カーカスプライ22Bは、それぞれ、タイヤ赤道Cに対して非対称に配されている。このようなタイヤ20は、第1カーカスプライ22Aのタイヤ軸方向の端部と、第2カーカスプライ22Bのタイヤ軸方向の端部とが重なるおそれがなく、歪みを分散することができ、耐久性を向上させることができる。このため、第3の実施形態のタイヤ20は、上述のタイヤ1と同様に、良好な耐カット性及び耐久性を維持しつつ製造コストを抑制することができる。
【0061】
第3の実施形態の第1カーカスプライ22Aは、第1ビード部4Aでタイヤ半径方向の外側に折り返された第1端部22aと、第2ビード部4Bで第1端部22aよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第2端部22bとを有している。このような第1カーカスプライ22Aは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ20の低燃費性を向上させることができる。
【0062】
第3の実施形態の第2端部22bは、第2ビード部4Bで折り返されていない。このような第1カーカスプライ22Aは、より軽量化することができるので、タイヤ20の低燃費性をより向上させることができる。
【0063】
第3の実施形態の第2カーカスプライ22Bは、第2ビード部4Bでタイヤ半径方向の外側に折り返された第3端部22cと、第1ビード部4Aで第3端部22cよりもタイヤ半径方向の内側に位置する第4端部22dとを有している。このような第2カーカスプライ22Bは、プライ長さを小さくすることができ、軽量化することができるので、タイヤ20の低燃費性を向上させることができる。
【0064】
第3の実施形態の第4端部22dは、第1ビード部4Aで折り返されていない。このような第2カーカスプライ22Bは、より軽量化することができるので、タイヤ20の低燃費性をより向上させることができる。
【0065】
第1端部22aと第3端部22cとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。また、第2端部22bと第4端部22dとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。このようなカーカスプライ22は、全体としてタイヤ軸方向のバランスが良好であり、タイヤ20の操縦安定性を向上させることができる。
【0066】
第3の実施形態の第3カーカスプライ22Cは、第1ビード部4Aでタイヤ半径方向の外側に折り返された第5端部22eと、第2ビード部4Bでタイヤ半径方向の外側に折り返された第6端部22fとを有している。このような第3カーカスプライ22Cは、ビード部4の剛性を向上させることができ、タイヤ20の耐久性を向上させることができる。
【0067】
第5端部22eと第6端部22fとは、タイヤ半径方向の位置が同一であるのが望ましい。このようなカーカスプライ22は、全体としてタイヤ軸方向のバランスが良好であり、タイヤ20の操縦安定性を向上させることができる。
【0068】
第3の実施形態の第5端部22e及び第6端部22fは、第1端部22a及び第3端部22cよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなカーカス21は、第1端部22a、第2端部22b、第3端部22c及び第4端部22dを第3カーカスプライ22Cが覆っているので、タイヤ20の耐久性をより向上させることができる。
【0069】
第1端部22aと第4端部22dとのタイヤ半径方向の距離d7は、好ましくは、10mm以上である。第1端部22aと第5端部22eとのタイヤ半径方向の距離d8は、好ましくは、10mm以上である。距離d7及び距離d8がそれぞれ10mm以上であることで、第1端部22aにおける歪みと第4端部22dにおける歪みと第5端部22eにおける歪みとを分散することができ、タイヤ20の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d7及び距離d8は、それぞれ、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0070】
第2端部22bと第3端部22cとのタイヤ半径方向の距離d9は、好ましくは、10mm以上である。第3端部22cと第6端部22fとのタイヤ半径方向の距離d10は、好ましくは、10mm以上である。距離d9及び距離d10がそれぞれ10mm以上であることで、第2端部22bにおける歪みと第3端部22cにおける歪みと第6端部22fにおける歪みとを分散することができ、タイヤ20の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d9及び距離d10は、それぞれ、より好ましくは、15mm以上であり、更に好ましくは、20mm以上である。
【0071】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0072】
図1の基本構造を有する実施例1及び実施例2の空気入りタイヤが表1の仕様に基づき試作された。比較例として、プライ長さの異なる2種類のカーカスプライを有する比較例1の空気入りタイヤと、同じプライ長さの2枚のカーカスプライの端部を揃えて配した比較例2の空気入りタイヤとが試作された。これら試作タイヤの耐カット性、耐久性及び低燃費性がテストされた。各試作タイヤの共通仕様とテスト方法は、以下のとおりである。
【0073】
<共通仕様>
タイヤサイズ:LT285/75R17
リムサイズ:17×7.5J
空気圧:450kPa
【0074】
<耐カット性>
各試作タイヤを大型四輪駆動車の全輪に装着し、岩や瓦礫等を含む岩場路面を1000km走行したときの耐カット性が、バットレス部に生じたカット傷に基づき総合的に評価された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が大きいほど耐カット性に優れていることを示す。
【0075】
<耐久性>
各試作タイヤをドラム試験機に装着し、タイヤが破壊されるまでの走行距離が計測された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
【0076】
<低燃費性>
各試作タイヤの重量が計測された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が大きいほど重量が軽く、低燃費性に優れていることを示す。
【0077】
テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0078】
次に、図2及び図3の基本構造を有する実施例3及び実施例4の空気入りタイヤが表2の仕様に基づき試作された。比較例として、プライ長さの異なる3種類のカーカスプライを有する比較例3の空気入りタイヤが試作された。これら試作タイヤの耐カット性、耐久性及び低燃費性がテストされた。各試作タイヤの共通仕様と評価方法は、上述のとおりである。
【0079】
テストの結果が表2に示される。
【表2】
【0080】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、比較例の空気入りタイヤに対して、同等の耐カット性、耐久性及び低燃費性を維持しつつ、プライ種類を低減することで製造コストを抑制していることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4A 第1ビード部
4B 第2ビード部
6 カーカス
7 カーカスプライ
7A 第1カーカスプライ
7B 第2カーカスプライ
図1
図2
図3