(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】回路装置、電気光学素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240618BHJP
G09G 3/3258 20160101ALI20240618BHJP
G09G 3/3266 20160101ALI20240618BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
G09G3/20 641E
G09G3/20 611A
G09G3/20 611G
G09G3/20 621M
G09G3/20 622K
G09G3/20 622P
G09G3/20 623U
G09G3/20 624B
G09G3/20 680G
G09G3/3258
G09G3/3266
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2020111369
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 洋一
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 光敏
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-343609(JP,A)
【文献】特開2008-058921(JP,A)
【文献】特開2005-099621(JP,A)
【文献】特開2011-100141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0243207(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0124790(KR,A)
【文献】特開2002-049361(JP,A)
【文献】特開2002-175039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0230583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G3/00-5/42
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線、複数の画素及び複数の画素回路を有する電気光学素子の前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路を含み、
1枚の画像を構成するフィールドは、
表示データの第1~第nビット(nは2以上の整数)が、前記複数の画素回路に含まれる画素回路に書き込まれる第1~第n走査線選択期間と、前記画素回路に書き込まれた第1~第nビットにより、前記複数の画素のうち前記画素回路に接続された画素がオン又はオフとなる第1~第n表示期間と、を含み、
前記フィールドは、複数のサブフィールドを含み、
前記走査線駆動回路は、
前記複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドにおいて、前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択し、
前記走査線群は、
前記サブフィールドにおいて前記表示データの前記第1~第nビットのうちの第iビット(iは1以上n以下の整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、前記サブフィールドにおいて前記表示データの前記第1~第nビットのうちの第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、を含
み、
前記電気光学素子の走査線数をkとし、ダミー走査線数をpとし、J=k+pとしたとき、
Jは、kより大きく、且つnとの最小公倍数がJ×nとなる数であり、
前記走査線駆動回路は、
前記フィールドにおいてJ×n回の走査線選択を行い、前記J×n回の走査線選択のうちk×n回の走査線選択において前記電気光学素子のk本の走査線を選択し、p×n回の走査線選択においてp本のダミー走査線を内部処理として選択することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記フィールドにおいて、前記走査線駆動回路が前記複数の走査線の各走査線をn回ずつ選択することで、前記複数の画素回路の各画素回路に前記表示データの前記第1~第nビットが書き込まれることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路装置において、
前記複数のサブフィールドの各サブフィールドは、
同じ長さの期間であることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記走査線群は、
前記サブフィールドにおいて前記第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、前記サブフィールドにおいて前記第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n本の走査線を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記走査線群は、
前記サブフィールドにおいて前記第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、前記サブフィールドにおいて前記表示データの前記第1~第nビットのうちの第n-1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n-1本の走査線と、前記サブフィールドにおいて前記表示データの上位ビットである前記第nビットが書き込まれる2以上の画素回路に接続された2以上の走査線と、を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回路装置において、
前記第nビットに対応する前記第n表示期間は、第1の第n表示期間と第2の第n表示期間とを含み、
前記第1の第n表示期間と前記第2の第n表示期間との間に、前記第1~第n-1表示期間のうち少なくとも1つの表示期間が設けられることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記画素は発光素子であり、
前記画素回路は記憶回路を含み、
前記第1~第n走査線選択期間において、前記第1~第nビットが前記記憶回路に書き込まれ、
前記第1~第n表示期間において、前記記憶回路に書き込まれた前記第1~第nビットにより前記発光素子が発光又は非発光となることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
複数の走査線、複数の画素及び複数の画素回路を有する電気光学素子の前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路を含み、
1枚の画像を構成するフィールドは、
表示データの第1~第nビット(nは2以上の整数)が、前記複数の画素回路に含まれる画素回路に書き込まれる第1~第n走査線選択期間と、前記画素回路に書き込まれた第1~第nビットにより、前記複数の画素のうち前記画素回路に接続された画素がオン又はオフとなる第1~第n表示期間と、を含み、
前記フィールドは、複数のサブフィールドを含み、
前記複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドは、q個の走査線選択期間(qはn以上の整数)であり、
前記サブフィールドにおいて前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群は、q本の走査線であると共に、前記表示データの第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線、前記表示データの第2ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線、・・・、及び前記表示データの第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線を含み、
前記走査線駆動回路は、
前記サブフィールド
である前記q個の走査線選択期間の各走査線選択期間において、
前記走査線群
である前記q本の走査線の各走査線を1回
ずつ選択
することを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記複数の走査線、前記複数の画素及び前記複数の画素回路と、
を含むことを特徴とする電気光学素子。
【請求項10】
複数の走査線と、
信号線と、
前記複数の走査線と前記信号線との各交差に対応して配置された複数の画素部と、
前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、
を含み、
前記複数の画素部の各画素部は、
第1~第nビット(nは2以上の整数)からなる表示データを1ビットずつ所定の順番に保持する画素回路と、
前記保持した表示データに基づいてオンまたはオフとなる画素とを含み、
前記走査線駆動回路は、
複数のサブフィールドに含まれ
るサブフィールドにおいて、前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択し、
前記走査線群は、前記サブフィールドにおいて、
第iビット(iは1以上n以下の整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線と、
第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線と、
を含
み、
前記複数の走査線の走査線数をkとし、ダミー走査線数をpとし、J=k+pとしたとき、
Jは、kより大きく、且つnとの最小公倍数がJ×nとなる数であり、
前記走査線駆動回路は、
前記複数のサブフィールドにおいてJ×n回の走査線選択を行い、前記J×n回の走査線選択のうちk×n回の走査線選択においてk本の走査線を選択し、p×n回の走査線選択においてp本のダミー走査線を内部処理として選択することを特徴とする電気光学素子。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学素子において、
前記複数のサブフィールドにおいて、前記走査線駆動回路が前記複数の走査線の各走査線をn回ずつ選択することで、前記画素回路に前記表示データの前記第1~第nビットの各ビットに対応する表示データが保持されることを特徴とする電気光学素子。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の電気光学素子において、
前記複数のサブフィールドの各サブフィールドは、
同じ長さの期間であることを特徴とする電気光学素子。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の電気光学素子において、
前記画素回路は、記憶回路を含み、
前記画素は、前記記憶回路に保持された前記表示データにより発光又は非発光となる発光素子を含むことを特徴とする電気光学素子。
【請求項14】
複数の走査線と、
信号線と、
前記複数の走査線と前記信号線との各交差に対応して配置された複数の画素部と、
前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、
を含み、
前記複数の画素部の各画素部は、
第1~第nビット(nは2以上の整数)からなる表示データを1ビットずつ所定の順番に保持する画素回路と、
前記保持した表示データに基づいてオンまたはオフとなる画素とを含み、
複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドは、q個の走査線選択期間(qはn以上の整数)であり、
前記サブフィールドにおいて前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群は、q本の走査線であると共に、前記表示データの第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線、前記表示データの第2ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線、・・・、及び前記表示データの第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線を含み、
前記走査線駆動回路は、
前記サブフィールド
である前記q個の走査線選択期間の各走査線選択期間において、
前記走査線群
である前記q本の走査線の各走査線を1回
ずつ選択
することを特徴とする電気光学素子。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記電気光学素子と、
を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項
9乃至
14のいずれか一項に記載の電気光学素子を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電気光学素子及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、画素に発光素子を用いた表示装置において、表示データの各ビットに対応して重み付けされた時間だけ画素を発光させることで、時間平均として階調表示を行う手法が開示されている。また特許文献1、2には、複数の走査線を上から順に1本ずつ選択していきながら、各走査線に接続された画素に第1ビットを書き込み、次に、同様に複数の走査線を上から順に1本ずつ選択していきながら、各走査線に接続された画素に第2ビットを書き込み、それをMSBまで続ける手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132941号公報
【文献】特開2008-281827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1、2では、複数の走査線を上から順に1本ずつ選択していきながら、各走査線に接続された画素に、あるビットを書き込んだ後、次のビットの書き込みを開始するまでの間に走査線を選択しない期間が発生する。1フレームの長さはフレームレートによって決まっているので、走査線を選択しない期間があることで走査線駆動周波数が高くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数の走査線、複数の画素及び複数の画素回路を有する電気光学素子の前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路を含み、1枚の画像を構成するフィールドは、表示データの第1~第nビット(nは2以上の整数)が、前記複数の画素回路に含まれる画素回路に書き込まれる第1~第n走査線選択期間と、前記画素回路に書き込まれた第1~第nビットにより、前記複数の画素のうち前記画素回路に接続された画素がオン又はオフとなる第1~第n表示期間と、を含み、前記フィールドは、複数のサブフィールドを含み、前記走査線駆動回路は、前記複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドにおいて、前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択し、前記走査線群は、前記サブフィールドにおいて前記第iビット(iは1以上n以下の整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、前記サブフィールドにおいて前記第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、を含む回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置と、前記複数の走査線、前記複数の画素及び前記複数の画素回路と、を含む電気光学素子に関係する。
【0007】
また本開示の更に他の態様は、複数の走査線と、信号線と、前記複数の走査線と前記信号線との各交差に対応して配置された複数の画素部と、前記複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、を含み、前記複数の画素部の各画素部は、第1~第nビット(nは2以上の整数)からなる表示データを1ビットずつ所定の順番に保持する画素回路と、前記保持した表示データに基づいてオンまたはオフとなる画素とを含み、前記走査線駆動回路は、複数のサブフィールドに含まれる各サブフィールドにおいて、前記複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択し、前記走査線群は、前記サブフィールドにおいて、第iビット(iは1以上n以下の整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線と、第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線とを含む電気光学素子に関係する。
【0008】
また本開示の更に他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置と、前記電気光学素子と、を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本実施形態の回路装置と、回路装置を含む表示システムの構成例。
【
図5】画素部の動作を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.従来手法における非表示期間について
図1は、表示制御の従来手法を説明する図である。ここでは、4ビットの表示データで16階調の表示を行い、走査線が10本であるとする。表示データのLSB側から第1~第4ビットとする。
図1において表の横軸は選択順であり、選択順の1回は1本の走査線の選択に対応している。表の縦軸は走査線の番号を示しており、垂直走査方向に順に1~10となっている。表の各マスに記載された数字は、表示データの各ビットの階調値を示している。即ち、1、2、4、8は、第1ビット、第2ビット、第3ビット、第4ビットを意味している。また、点線で囲まれた数字は、選択された走査線に接続された画素回路に、その数字に対応したビットが書き込まれることを意味している。
【0012】
まず、1本の走査線に着目したときの動作について、第1走査線を例に説明する。選択順1において第1走査線が選択され、第1走査線に接続された画素回路に第1ビットが書き込まれる。続く選択順2~10において、画素回路に保持される第1ビットに基づいて画素の発光素子が発光又は非発光となる。第1ビットが「1」のとき発光素子が発光し、「0」のとき発光素子が発光しない。同様に、選択順11、30、67において第1走査線が選択され、第1走査線に接続された画素回路に第2ビット、第3ビット、第4ビットが書き込まれる。続く選択順12~29、31~66、68~139において、画素回路に保持される第2ビット、第3ビット、第4ビットに基づいて画素の発光素子が発光又は非発光となる。
【0013】
画素の発光素子が発光又は非発光となる期間を表示期間と呼ぶこととする。第1~第4ビットに対応して第1~第4表示期間がある。選択順1回分の期間は、1本の走査線を選択する期間である。以下、この期間を走査線選択期間と呼ぶこととし、その期間の長さをhとする。第1~第4表示期間は9h、18h、36h、72hとなっており、ビットの階調値に応じて重み付けされている。第iビットの階調値は2i-1なので、表示期間は2i-1で重み付けされている。これにより、時間平均として見たときに、階調値に対応した明るさで画素が発光することになる。なお、表示データをnビットとしたとき、iは1以上n以下であり、ここではn=4である。
【0014】
次に、10本の走査線を走査するときの動作について説明する。FRBはフィールドであり、1フィールドで1フレームが構成されるものとする。即ち、フィールドFRBは、1つの画像を表示させる期間であり、1つの画像に対応した表示データを全画素に書き込むために必要な期間である。フィールドFRBは、表示データの第1~第4ビットに対応したサブフィールドSFB1~SFB4を含む。
【0015】
サブフィールドSFB1の選択順1~10において、第1~第10走査線が順次に選択され、各走査線に接続された画素回路に第1ビットが書き込まれる。次にサブフィールドSFB2の選択順11~20において、第1~第10走査線が順次に選択され、各走査線に接続された画素回路に第2ビットが書き込まれる。サブフィールドSFB2の選択順21~29においては、走査線は選択されない。次にサブフィールドSFB3の選択順30~39において、第1~第10走査線が順次に選択され、各走査線に接続された画素回路に第3ビットが書き込まれる。サブフィールドSFB3の選択順40~66においては、走査線は選択されない。次にサブフィールドSFB4の選択順67~76において、第1~第10走査線が順次に選択され、各走査線に接続された画素回路に第4ビットが書き込まれる。サブフィールドSFB4の選択順77~139においては、走査線は選択されない。
【0016】
図2は、
図1の動作を模式化した図である。サブフィールドSFB1は、1画面分の走査線を走査する走査期間TW1と同じである。サブフィールドSFB2は、走査期間TW2と、走査線を走査しない非走査期間NW2と、を含む。サブフィールドSFB3は、走査期間TW3と非走査期間NW3とを含み、サブフィールドSFB4は、走査期間TW4と非走査期間NW4とを含む。
【0017】
1画面の走査線の総数をk本とすると、走査期間TW1~TW4の各々の長さはkhである。kがビット数4より十分大きい数であれば、サブフィールドSFB2、SFW3、SFB4の長さは2kh、4kh、8khと近似でき、フィールドFRBの長さは、(1+2+4+8)×kh=15khと近似できる。このとき、走査期間の合計は4khであり、非走査期間の合計は11khなので、フィールドに占める割合は、それぞれ4/15、11/15である。
【0018】
上記では表示データを4ビットとしたが、例えば表示データを6ビットとした場合、走査期間がフィールドに占める割合は6/63であり、非走査期間がフィールドに占める割合は57/63である。フィールドの長さは表示のフレーム周波数によって決まっているため、表示データのビット数が多いほど走査線の走査期間が短くなり、1本の走査線を選択する走査線選択期間の長さhが短くなる。また、走査線を増加させようとすると、走査期間が短くなると共に、その走査期間内に、より多くの走査線を選択する必要があるため、1本の走査線を選択する走査線選択期間の長さhが短くなる。
【0019】
以上のように、従来手法ではフィールドFRBにおいて非走査期間NW2~NW4が存在するため、走査線選択期間の長さhが短くなり、走査線の駆動周波数が高くなるという課題がある。走査線の駆動周波数が高いと走査線駆動の消費電力が大きくなる、或いは、走査線数又は階調数を増やすことが困難になるといった課題がある。
【0020】
なお、正確には、非走査期間NW2、NW3、NW4の長さは、(k-1)h、3(k-1)h、7(k-1)hであり、フィールドFRBの長さは4kh+11(k-1)h=(15(k-1)+4)hである。表示データをnビットとした場合には、フィールドFRBの長さは、((2n-1)×(k-1)+n)hとなる。一例として、フルハイビジョンにおいてフレーム周波数60Hzで256階調表示を行う場合、k=1080、n=8である。従って、走査線選択期間の長さはh=1/((28-1)×(1080-1)+8)/60sec=0.06μsecとなる。
【0021】
2.回路装置及び表示システム
図3は、本実施形態の回路装置100と、回路装置100を含む表示システム10の構成例である。表示システム10は、表示コントローラー60と回路装置100と画素アレイ20とを含む。
【0022】
表示コントローラー60は、回路装置100に対して表示データの出力及び表示タイミング制御を行う。表示コントローラー60は、表示用信号供給回路61とVRAM回路62とを含む。
【0023】
VRAM回路62は、画素アレイ20に表示される表示データを記憶する。例えばVRAM回路62が画像1枚分の画像データを記憶する場合、画素アレイ20の各画素に対応して1つずつ表示データを記憶している。
【0024】
表示用信号供給回路61は、表示タイミングを制御するための制御信号を生成する。制御信号は、例えば垂直同期信号、水平同期信号、及びクロック信号等である。表示用信号供給回路61は、表示タイミングに従ってVRAM回路62から表示データを読み出し、その表示データと制御信号を回路装置100に出力する。
【0025】
回路装置100は、表示コントローラー60からの表示データと制御信号に基づいて画素アレイ20を駆動し、画素アレイ20に画像を表示させる。回路装置100は、走査線駆動回路110と信号線駆動回路120と制御線駆動回路130とを含む。
【0026】
画素アレイ20は、電気光学素子の画素アレイであり、k行m列のマトリックス状に配置された複数の画素部30を含む。k、mは2以上の整数である。画素部30は、後述のように画素回路と画素を含んでいる。また画素アレイ20は、走査線LSC1~LSCkと反転走査線LXSC1~LXSCkとイネーブル信号線LEN1~LENkと画像信号線LDT1~LDTmと電源線LVD1、LVD2とグランド線LVSとを含む。
【0027】
走査線LSC1、反転走査線LXSC1及びイネーブル信号線LEN1は、第1行の画素部30に接続される。走査線駆動回路110は、選択信号SC1を走査線LSC1に出力し、選択信号SC1の論理反転信号である反転選択信号XSC1を反転走査線LXSC1に出力する。制御線駆動回路130は、イネーブル信号EN1をイネーブル信号線LEN1に出力する。同様に、走査線LSC2~LSCk、反転走査線LXSC2~LXSCk及びイネーブル信号線LEN2~LENkは、第2~第k行の画素部30に接続される。走査線駆動回路110は、選択信号SC2~SCkを走査線LSC2~LSCkに出力し、選択信号SC2~SCkの論理反転信号である反転選択信号XSC2~XSCkを反転走査線LXSC2~LXSCkに出力する。制御線駆動回路130は、イネーブル信号EN2~ENkをイネーブル信号線LEN2~LENkに出力する。
【0028】
画像信号線LDT1は、第1列の画素部30に接続される。信号線駆動回路120は、画像信号DT1を画像信号線LDT1に出力する。画像信号DT1は、表示データのnビットのうち、いずれか1ビットの信号である。同様に、画像信号線LDT2~LDTmは、第2~第m列の画素部30に接続される。信号線駆動回路120は、画像信号DT2~DTmを画像信号線LDT2~LDTmに出力する。
【0029】
電源線LVD1、LVD2及びグランド線LVSは、全ての画素部30に接続される。電源線LVD1には、不図示の電源回路から第1電源電圧VDD1が供給される。電源線LVD2には、不図示の電源回路から第2電源電圧VDD2が供給される。グランド線LVSには、不図示の電源回路からグランド電圧VSSが供給される。なお、電源線LDV1、LVD2は共通の1本の電源線であってもよく、その電源線に共通の電源電圧が供給されてもよい。
【0030】
図4は、画素部30の構成例である。画素部30は、画素31と画素回路32とを含む。なお
図4において、SC1~SCk、DT1~DTm等における1~k、1~mを省略している。例えば、SCは、SC1~SCkのうち任意の1つである。
【0031】
画素31は発光素子である。発光素子は、例えばOLED又はマイクロLED等である。OLEDは、Organic Light Emitting Diodeの略であり、LEDは、Light Emitting Diodeの略である。マイクロLEDは、基板上に集積された無機LEDである。発光素子のアノードは電源線LVD2に接続され、カソードは画素回路32の画素制御ノードNIDに接続される。画素31は画素回路32によってオン又はオフに制御される。ここでは、オンは、発光素子に電流IDが流れることで発光素子が発光状態であることを意味し、オフは、発光素子に電流IDが流れないことで発光素子が非発光状態であることを意味する。
【0032】
画素回路32は、画像信号DTである表示データのビットを保持し、その画像信号DTとイネーブル信号ENに基づいて画素31をオン又はオフに制御する。画素回路32は、記憶回路33とN型トランジスターTA、TB1、TB2とを含む。
【0033】
N型トランジスターTAのソース又はドレインの一方は画像信号線LDTに接続され、ソース又はドレインの他方は記憶回路33の入力ノードNIに接続され、ゲートは走査線LSCに接続される。
【0034】
N型トランジスターTB1のソースはグランド線LVSに接続され、ドレインはN型トランジスターTB2のソースに接続され、ゲートは記憶回路33の出力ノードNQに接続される。
【0035】
N型トランジスターTB2のドレインは画素回路32の画素制御ノードNIDに接続され、ゲートはイネーブル信号線LENに接続される。
【0036】
記憶回路33は、1ビットのデータを記憶するメモリーセルである。記憶回路33は、N型トランジスターTAがオンのときに画像信号線LDTから入力ノードNIに入力される画像信号DTを記憶し、その記憶した信号を出力信号MCQとして出力ノードNQに出力する。記憶回路33は、P型トランジスターTC1、TC3とN型トランジスターTC2、TC4、TC5とを含む。なお、N型トランジスターTC5は、P型トランジスターで構成することもできる。この場合、走査線LSCに接続することが可能になり、反転走査線LXSCを省略することができる。
【0037】
P型トランジスターTC1とN型トランジスターTC2は第1インバーターを構成し、P型トランジスターTC3とN型トランジスターTC4は第2インバーターを構成する。第1インバーターと第2インバーターの電源電圧はVDD1である。第1インバーターの入力ノードは記憶回路33の入力ノードNIに接続され、第1インバーターの出力ノードNCは第2インバーターの入力ノードに接続され、第2インバーターの出力ノードは記憶回路33の出力ノードNQに接続される。N型トランジスターTC5のソース又はドレインの一方は入力ノードNIに接続され、ソース又はドレインの他方は出力ノードNQに接続される。
【0038】
記憶回路33に「1」が書き込まれたとき出力信号MCQはハイレベルであり、「0」が書き込まれたとき出力信号MCQはローレベルである。記憶回路33の出力信号MCQ及びイネーブル信号ENがハイレベルであるとき、N型トランジスターTB1、TB2がオンであり、画素31に電流IDが流れ、画素31が発光する。記憶回路33の出力信号MCQ又はイネーブル信号ENの少なくとも一方がローレベルであるとき、N型トランジスターTB1又はTB2の少なくとも一方がオフであり、画素31に電流IDが流れず、画素31が非発光となる。
【0039】
なお
図4の構成は画素部の一例であり、本実施形態の手法は種々の構成の画素回路及び画素に適用できる。例えば、記憶回路33に変えてキャパシターを設け、そのキャパシターが画像信号DTを保持してもよい。或いは、記憶回路33のN型トランジスターTC5を省略し、第1インバーターの入力ノードNIと第2インバーターの出力ノードNQとが直接に接続されてもよい。或いは、電源電圧VDD1、VDD2を共通の電源電圧とし、その共通の電源電圧を1本の電源線で画素31及び記憶回路33に供給してもよい。或いは、画素は発光素子に限らず、光をオンオフできる素子であればよい。例えば画素はDMDのマイクロミラーであってもよい。DMDはDigital Micromirror Deviceの略である。この場合、画素回路はマイクロミラーの可動部を駆動する回路である。或いは画素は反射型液晶方式の表示素子における画素であってもよい。この場合、駆動回路は液晶の画素を駆動する回路である。
【0040】
図5は、画素部30の動作を説明するタイミングチャートである。
図5では、表示データの第1ビットがDT[0]=1であり、第2ビットがDT[1]=0である場合を例に説明する。
【0041】
走査線選択期間TS1において、選択信号SCはハイレベルであり、反転選択信号XSCはローレベルである。N型トランジスターTAはオンであり、N型トランジスターTC5はオフである。これにより、記憶回路33に画像信号DTとして第1ビットDT[0]=1が入力され、記憶回路33はハイレベルの出力信号MCQを出力する。イネーブル信号ENはローレベルであり、走査線選択期間TS1において画素31はオフである。
【0042】
表示期間TD1において、選択信号SCはローレベルであり、反転選択信号XSCはハイレベルである。N型トランジスターTAはオフであり、N型トランジスターTC5はオンである。これにより、記憶回路33は第1ビットDT[0]=1を保持し、出力信号MCQをハイレベルに保持する。イネーブル信号ENはハイレベルであり、表示期間TD1において画素31はオンである。
【0043】
走査線選択期間TS2と表示期間TD2においても、上記と同様に画素部30が動作するが、第2ビットがDT[1]=0であるため、表示期間TD2において画素31はオフである。表示期間TD2の長さは、表示期間TD1の長さの2倍になっており、表示期間TD1、TD2が第1ビット、第2ビットの階調値1、2に比例した長さとなっている。
【0044】
3.走査線選択順の第1例
図6は、本実施形態における走査線選択順の第1例である。ここでは、画素アレイ20に含まれる走査線の総数がk=16であり、表示データのビット数がn=4である場合を例に説明する。表示データのLSB側から第1~第4ビットとする。表の見方は
図1と同様である。なお以下では、「走査線に接続された画素回路にビットが書き込まれる」ことを、適宜、「走査線にビットが書き込まれる」とも略す。
【0045】
まず、1本の走査線に着目したときの動作について、第1走査線を例に説明する。選択順1において第1走査線が選択され、第1走査線に第1ビットが書き込まれる。続く選択順2~5において、画素回路に保持される第1ビットに基づいて画素がオン又はオフとなる。同様に、選択順6、15、32において第1走査線が選択され、第1走査線に第2ビット、第3ビット、第4ビットが書き込まれる。続く選択順7~14、16~31、33~64において、画素回路に保持される第2ビット、第3ビット、第4ビットに基づいて画素がオン又はオフとなる。
【0046】
上記では、1フィールド内において第1~第4ビットに対応して第1~第4走査線選択期間と第1~第4表示期間が設けられている。第1走査線においては、第1~第4走査線選択期間は、選択順1、6、15、32に対応した期間であり、第1~第4表示期間は、選択順2~5、7~14、16~31、33~64に対応した期間である。第1~第4表示期間の長さは、4h、8h、16h、32hである。いずれの選択順が走査線選択期間と表示期間に対応するのかは各走査線で異なるが、各走査線に対して第1~第4走査線選択期間と第1~第4表示期間が設けられることは、同様である。
【0047】
次に、16本の走査線を走査するときの動作について説明する。FRはフィールドであり、1フィールドで1フレームが構成されるものとする。即ち、フィールドFRは、1つの画像を構成する期間であり、1つの画像に対応した表示データを全画素に書き込むために必要な期間である。なお、いずれか1本の走査線における選択順を基準に、全ての走査線について同じフィールドFRを定義する。例えば
図6では、第1走査線における選択順を基準にフィールドFRを定義している。このため、フィールドFRにおいて画素アレイ20に書き込まれる画像データは、ちょうど1画像の区切りの良い画像データにはならないが、画像データの量としては画像1枚分に相当する。このような意味で、フィールドFRは、1つの画像を構成する期間である。
【0048】
フィールドFRは、表示データの階調数16に対応したサブフィールドSF1~SF16を含む。走査線選択期間の長さをhとしたとき、各サブフィールドの長さは、表示データのビット数4に対応した4hである。
【0049】
走査線駆動回路110は、各サブフィールドにおいて、第1~第16走査線のうち選択対象となる走査線群を選択する。
図6において、走査線群は、表示データのビット数4と同じ4本の走査線である。その4本の走査線のうち1本の走査線に接続される画素回路には第1ビットが書き込まれ、もう1本の走査線に接続される画素回路には第2ビットが書き込まれ、更にもう1本の走査線に接続される画素回路には第3ビットが書き込まれ、更にもう1本の走査線に接続される画素回路には第4ビットが書き込まれる。例えば、サブフィールドSF1において、第1走査線、第2走査線、第4走査線及び第8走査線が走査線群であり、それらに接続される画素回路には、それぞれ第1ビット、第2ビット、第3ビット及び第4ビットが書き込まれる。
【0050】
走査線群に属する4本の走査線は、それぞれ異なる選択順において選択される。
図6のサブフィールドSF1において、走査線群に属する第1走査線、第2走査線、第4走査線及び第8走査線は、それぞれ選択順1、2、3、4において選択される。
【0051】
サブフィールドが1つ進むと、走査線群に属する走査線の番号が1つ小さくなる。即ち、サブフィールドにおける選択順パターンが、画面上方向に走査線1本分だけ移動する。このパターンの移動は巡回的に行われる。即ち、あるサブフィールドにおける第1走査線の選択順パターンは、次のサブフィールドにおいて第16走査線の選択パターンとなる。例えば、サブフィールドSF2において、第16走査線、第1走査線、第3走査線及び第7走査線が走査線群であり、それらに接続される画素回路には、それぞれ第1ビット、第2ビット、第3ビット及び第4ビットが書き込まれる。これは、サブフィールドSF1における選択順パターンが巡回的に走査線1本分上に移動したものである。
【0052】
サブフィールドSF1において、第1~第4ビットは、各ビットの階調値に対応した番号の走査線に書き込まれる。即ち、第1~第4ビットの階調値は、1、2、4、8なので、第1~第4ビットは第1走査線、第2走査線、第4走査線、第8走査線に書き込まれる。走査線の間隔で考えれば、第2走査線は、第1走査線の1本後、第4走査線は、第2走査線の2本後、第8走査線は、第4走査線の4本後である。次のサブフィールドSF2では第16走査線に第1ビットが書き込まれるが、これは第8走査線の8本後である。これにより、階調値に比例した長さの第1~第4表示期間となる。具体的には、第1走査線における表示期間に着目して説明する。まず選択順2において第2走査線に第2ビットが書き込まれるが、この選択順パターンは1サブフィールド後に第1走査線に移動する。サブフィールドの長さは4hであり、第1走査線の第1表示期間は選択順2から始まっているので、第1表示期間の長さは1×4hとなる。次に選択順7において第3走査線に第3ビットが書き込まれるが、この選択順パターンは2サブフィールド後に第1走査線に移動する。第1走査線の第2表示期間は選択順7から始まっているので、第2表示期間の長さは2×4h=8hとなる。同様に、第3表示期間の長さは4×4hとなり、第4表示期間の長さは8×4hとなる。
【0053】
走査線の総数は階調数と同じ16本であり、1本の走査線につき4ビットの書き込みが必要なので、1フィールドにおける総走査線選択回数は、16×4=64となる。
図6では、選択順1~64で1フィールドが構成されており、その選択順パターンと同じ選択順パターンが次のフィールドの選択順65~128において繰り返される。選択順129以降においても、各フィールドにおいて同様の選択順パターンが繰り返される。なお、表示データをnビットとすれば、総走査線選択回数は2
n×nと表される。
【0054】
以上のような選択順パターンで走査線駆動回路110が走査線を選択することで、走査線を選択しない選択順を無くすことができる。即ち、
図2で説明した従来手法における非走査期間NW2~NW4が無くなるので、走査線駆動周波数を下げることが可能となる。
【0055】
一例として、フルハイビジョンにおいてフレーム周波数60Hzで256階調表示を行う場合、n=8である。走査線数は、ここでは5×2
8=1280としておく。走査線数を2
nから増やす方法については後述するが、走査線選択順の基本的な考え方は本第1例と同じである。走査線選択期間の長さはh=1/(1280×8)/60sec=1.63μsecとなる。
図1と
図2で説明した従来手法ではh=0.06μsecだったので、本実施形態によれば走査線駆動周波数を大幅に下げることが可能である。
【0056】
以上の本実施形態によれば、走査線駆動回路110は、複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドにおいて、複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択する。走査線群は、サブフィールドにおいて第iビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線と、サブフィールドにおいて第jビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線と、を含む。iは1以上n以下の整数であり、jは1以上n以下でiと異なる整数である。
【0057】
図1で説明した従来手法では、1サブフィールドにおいて第1~第nビットのうち同じビットを全ての走査線に書き込んでいる。このため、
図2で説明したように非走査期間NW2~NW4が発生している。一方、本実施形態によれば、1サブフィールドにおいて1つの走査線に第iビットを書き込み、それとは別の走査線に第jビットを書き込む。これにより、走査線を選択しない非走査期間を減らすことが可能となり、従来手法に比べて走査線駆動周波数を下げることができる。走査線駆動周波数が下がることで、走査線駆動における消費電力の低減、或いは画素回路への確実なデータの書き込みが可能となる。或いは、従来手法と同じ走査線駆動周波数で考えれば、1フレームにおいて、より多くの走査線を選択できる。即ち、従来手法に比べて走査線駆動周波数を上げることなく、より高精細な電気光学素子を駆動できる。
【0058】
ここで、複数のサブフィールドは、フィールドFRに含まれたサブフィールドであり、具体的には、フィールドFRを複数の期間に分割したものが複数のサブフィールドである。
図6ではSF1~SF16が複数のサブフィールドに対応する。また、複数の走査線は、走査線選択順パターンを構成するための走査線であり、実際に電気光学素子に存在する走査線数に限定されない。
図6では第1~第16走査線が複数の走査線に対応する。このとき、実際に電気光学素子に存在する走査線は16本より少なくてもよい。例えば、実際に電気光学素子に存在する走査線が14本である場合、回路装置100の内部処理として第1~第16走査線の選択順パターンが存在しているが、第15走査線と第16走査線については実際には駆動されない。また、サブフィールドにおいて走査線群を1回選択する、とはサブフィールドにおいて、走査線群に属する走査線を1本につき1回ずつ選択する、ということである。このとき、同じ選択順では1本の走査線を選択し、2本以上の走査線を同時に選択しない。また、サブフィールドにおいて第iビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線と、サブフィールドにおいて第jビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線とは、異なる走査線である。あるサブフィールドにおいて1本の走査線に接続された複数の画素回路には、第1~第nビットのうち同じビットが書き込まれる。
【0059】
また本実施形態では、フィールドFRにおいて、走査線駆動回路110が各走査線をn回ずつ選択することで、各画素回路に表示データの第1~第nビットが書き込まれる。具体的には、走査線駆動回路110が走査線をn回選択したとき、その各回の選択において信号線駆動回路120が第1~第nビットのうち1ビットを、選択された走査線に接続される画素回路に書き込む。このとき、信号線駆動回路120は、n回の選択において、第1~第nビットが重複しないように書き込む。
図6において、例えば第1走査線は、選択順1、6、15、32の4回選択され、それぞれ第1、第2、第3、第4ビットが書き込まれる。
【0060】
上述したように、1本の走査線に着目すると1フィールドにおいて第1~第n走査線選択期間と第1~第n表示期間が必要である。本実施形態によれば、各走査線がn回ずつ選択され、その走査線に第1~第nビットが書き込まれることで、1フィールドにおいて全ての走査線に対して第1~第n走査線選択期間と第1~第n表示期間が実現されている。
【0061】
また本実施形態では、複数のサブフィールドの各サブフィールドは、同じ長さの期間である。また本実施形態では、走査線群は、サブフィールドにおいて第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、そのサブフィールドにおいて第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n本の走査線を含む。
【0062】
各サブフィールドが同じ長さの期間であるということは、各サブフィールドにおいて選択される走査線群の走査線本数が同じということである。そして、表示データのビット数と同数の走査線がサブフィールド毎にずれて選択されていき、1巡することによって、全ての走査線に第1~第nビットが書き込まれる。
図6では、各サブフィールドにおいて4本の走査線が選択され、そのパターンがサブフィールド毎に走査線1本ずつずれていき、16サブフィールドで1巡することで、16本の走査線に第1~第4ビットが書き込まれる。
【0063】
なお、
図6ではサブフィールドの長さは(表示データのビット数)×h=4hであるが、サブフィールドの長さはこれに限定されず、選択順パターンの組み方によって変化する。サブフィールドの長さが表示データのビット数にならない例については後述する。
【0064】
また
図4で説明したように、画素31は発光素子である。画素回路32は記憶回路33を含む。第1~第n走査線選択期間において、第1~第nビットが記憶回路33に書き込まれる。その記憶回路33に書き込まれた第1~第nビットにより、第1~第n表示期間において発光素子が発光又は非発光となる。
【0065】
このようにすれば、画素31として発光素子を用い、表示データの第1~第nビットに応じて発光素子の発光又は非発光を制御することで、階調表示が可能となる。また表示データの第1~第nビットを記憶回路33に記憶させることで、キャパシターで画像信号DTを保持する場合に比べて書き込み時の消費電力を下げることができる。
【0066】
4.走査線選択順の第2例、第3例
第1例では、nビットの表示データに対して走査線数は2n本となっているが、第2例と第3例では、nビットの表示データに対して走査線数は2×2n本である。なお、ここでは走査線数を2倍にする例を説明するが、同様の考え方で3倍以上にできる。
【0067】
図7は、走査線選択順の第2例であり、
図8は、走査線選択順の第3例である。第1例と同様に、フィールドFRはサブフィールドSF1~SF16を含む。第2例と第3例では、1サブフィールドの長さは8hであり、第1例における1サブフィールドの長さ4hの2倍となっている。また、1サブフィールドにおいて、表示データの各ビットが2本の走査線に書き込まれる。
【0068】
図7の第2例では、奇数走査線と偶数走査線が、それぞれ
図6の第1例と同様な選択順パターンとなっており、奇数走査線は奇数選択順において選択され、偶数走査線は偶数選択順において選択される。サブフィールドSF1を例にとると、第1走査線、第3走査線、第7走査線、第15走査線は、選択順1、3、5、7において選択され、第2走査線、第4走査線、第8走査線、第16走査線は、選択順2、4、6、8において選択される。第1走査線と第2走査線には第1ビットが書き込まれ、第3走査線と第4走査線には第2ビットが書き込まれ、第7走査線と第8走査線には第3ビットが書き込まれ、第15走査線と第16走査線には第4ビットが書き込まれる。この選択順パターンは、フィールド毎に走査線2本ずつ上にずれていき、サブフィールドSF1~SF16で1巡する。
【0069】
図8の第3例では、第1~第16走査線と第17~第32走査線が、それぞれ
図6の第1例と同様な選択順パターンとなっており、第1~第16走査線は奇数選択順において選択され、第17~第32走査線は偶数選択順において選択される。サブフィールドSF1を例にとると、第1走査線、第2走査線、第4走査線、第8走査線は、選択順1、3、5、7において選択され、第17走査線、第18走査線、第20走査線、第24走査線は、選択順2、4、6、8において選択される。第1走査線と第17走査線には第1ビットが書き込まれ、第2走査線と第18走査線には第2ビットが書き込まれ、第4走査線と第20走査線には第3ビットが書き込まれ、第8走査線と第24走査線には第4ビットが書き込まれる。この選択順パターンは、フィールド毎に走査線1本ずつ上にずれていき、サブフィールドSF1~SF16で1巡する。
【0070】
第2例と第3例において、1フィールドにおける総走査線選択回数は、nビットの表示データに対して、2×2n×nとなる。即ち、第1例における総走査線選択回数の2倍である。
【0071】
5.走査線選択順の第4例
図9は、走査線選択順の第4例である。第1~第3例では、nビットの表示データに対して2
n本又はその整数倍の走査線を駆動するが、第4例では、J本≠2
n本の走査線を駆動する。なお第4例を第2例又は第3例と組み合わせることで、J本の整数倍の走査線を駆動することもできる。
【0072】
図9では、J=2
4+1=17本の走査線を選択する例を説明する。なお、Jは、表示データのビット数nとJとの最大公約数が1であるような整数であればよい。即ち、Jと表示データのビット数nとの最小公倍数がJ×nであればよい。
【0073】
第4においても第1例と同様に、1サブフィールドの長さは4hであり、1サブフィールドにおいて4本の走査線を選択し、その4本の走査線に第1~第4ビットを1ビットずつ書き込む。但し、第4例では、走査線に書き込むビットが第1例とは異なっている。またフィールドFRにはJ=17個のサブフィールドSF1~SF17が含まれる。
【0074】
サブフィールドSF1を例にとると、第1走査線、第2走査線、第4走査線、第8走査線に第4ビット、第1ビット、第2ビット、第3ビットが書き込まれる。この選択順パターンは、サブフィールド毎に走査線2本ずつ上にずれていく。そして、サブフィールドSF1~SF17で一巡することで、各走査線がn回選択され、各走査線に第1~第nビットが書き込まれる。従って、1フィールドにおける総走査線選択回数は、J×nである。
【0075】
J=2
n+αと表すと、選択順パターンは、サブフィールド毎に走査線α+1本ずつ上にずれる。
図9ではα=1なので2本ずつずれている。例えば、サブフィールドSF1において第1ビットが書き込まれる第2走査線と、第2ビットが書き込まれる第4走査線は、2本離れている。これがサブフィールドSF2では走査線2本上にずれるので、第2走査線の第1表示期間が1×4h=4hとなる。同様に、第2ビットが書き込まれる第4走査線と、第3ビットが書き込まれる第8走査線は、4本離れているので、第2表示期間が2×4h=8hとなる。このようにして、表示データのビットの階調値に比例した表示期間が得られる。どの走査線にどのビットを書き込めばよいのかは、αの値に応じて変化するが、上記のような考え方によって決めることが可能である。
【0076】
本実施形態では、電気光学素子の走査線数をkとし、ダミー走査線数をpとし、J=k+pとしたとき、Jは、kより大きく、且つnとの最小公倍数がJ×nとなる数である。走査線駆動回路110は、フィールドFRにおいてJ×n回の走査線選択を行い、そのJ×n回の走査線選択のうちk×n回の走査線選択において電気光学素子のk本の走査線LSC1~SCkを選択し、p×n回の走査線選択においてp本のダミー走査線を内部処理として選択する。
【0077】
ここで、ダミー走査線数とは、走査線駆動回路110の内部処理としての選択順パターンには存在するが、電気光学素子の走査線としては存在せず、実際の駆動対象ではない走査線のことである。
【0078】
例えば表示データが4ビットであり、電気光学素子の走査線数が20本であるとき、第1例の16本では足りないので第2例又は第3例で2倍に増やして32本にする。このとき、12本のダミー走査線が発生するため、総走査線選択回数32×4=128のうち、12×4=48回はダミー走査線を選択することになる。即ち、48選択分の非走査期間が発生する。一方、第4例では、k=20、p=1としてJ=21本の走査線で選択順パターンを構成できる。この場合、総走査線選択回数は21×4=84となり、そのうちダミー走査線の選択回数は1×4=4回である。
【0079】
このように、第1~第3例に比べて第4例では、電気光学素子の走査線数に合わせて、駆動順パターンにおける走査線数Jを最小限に設定できる。これにより、ダミー走査線の選択回数を減らし、その結果として1フレームの総走査線選択回数を減らすことができる。これにより、第1~第3例に比べて走査線駆動周波数を下げることができ、更なる低消費電力化又は画素回路への確実なデータの書き込みが可能となる。
【0080】
6.走査線選択順の第5例、第6例
第1~第4例では、1本の走査線に着目すると第1~第nビットが順に書き込まれる、即ち第1~第n走査線選択期間が順に並んでいる。第5例と第6例では、階調値が大きなビットに対応した長い表示期間が連続しないように、第1~第nビットの書き込み順が設定される。
【0081】
図10は、走査線選択順の第5例である。1本の走査線に着目すると第1ビット、第3ビット、第2ビット、第4ビットの順に書き込まれる。これにより、第1表示期間、第3表示期間、第2表示期間、第4表示期間の順に並び、その長さの並びが4h、16h、8h、32hとなる。長い表示期間である16hと32hの間に4h、8hが挿入されるので、長い表示期間が隣り合わない。
【0082】
長い表示期間である16hと32hが隣り合っていると、共に画素がオンである場合、又は共に画素がオフである場合に、フレーム内において長時間、画素がオン又はオフの状態が続く場合がある。そのような場合、画面に映る映像を見た時にちらつきとして見える可能性がある。本実施形態によれば、長い表示期間である16hと32hが隣り合わないので、映像のちらつきを減らすことができる。
【0083】
なお、ビットの書き込み順は表示データのビット数等に応じて適宜に変更されてよい。例えば、表示データが6ビットである場合、例えば書き込み順を第1ビット、第4ビット、第2ビット、第5ビット、第3ビット、第6ビットとすればよい。
【0084】
図11は、走査線選択順の第6例である。第6例では、上位ビットに対応した長い表示期間を複数の表示期間に分割し、その間に他のビットに対応した表示期間を挿入する。
図11では、第1~第4ビットのうち第4ビットに対応した第4表示期間を2つに分割し、第1の第4表示期間と第2の第4表示期間とする例を説明する。
【0085】
図11において、表のマス内の8aと8bは第4ビットを意味しており、第1の第4表示期間に対応して8aを記載し、第2の第4表示期間に対応して8bを記載する。第4表示期間の長さは合計で40hであり、第1の第4表示期間と第2の第4表示期間の長さは各々20hである。
【0086】
1本の走査線に着目すると第1ビット、第4ビット、第3ビット、第4ビット、第2ビットの順に書き込まれる。第1の第4表示期間と第2の第4表示期間の間には、第3表示期間が挿入されている。表示期間の長さの並びは、5h、20h、20h、20h、10hとなる。
【0087】
図11では、1走査線に対して第4ビットが2回書き込まれるので、1サブフィールドに5回の走査線選択が必要である。例えばサブフィールドSF1では、選択順1、2、3、4、5において第1走査線、第2走査線、第6走査線、第10走査線、第14走査線が選択され、第1ビット、第4ビット、第3ビット、第4ビット、第2ビットが書き込まれる。4ビットの表示データに対して走査線の本数は2
4=16本であり、第1例と同じである。またサブフィールド毎に選択順パターンが走査線1本ずつ上がることも第1例と同じである。1フィールドにおける総走査線選択回数は、2
4×5=80回となる。
【0088】
本実施形態によれば、サブフィールドにおいて選択される走査線群は、n-1本の走査線と、2以上の走査線と、を含む。n-1本の走査線とは、サブフィールドにおいて第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、サブフィールドにおいて第n-1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までのn-1本の走査線である。2以上の走査線とは、サブフィールドにおいて表示データの上位ビットである第nビットが書き込まれる2以上の画素回路に接続された2以上の走査線である。
図11のサブフィールドSF1では、n-1本の走査線は、第1走査線、第6走査線及び第14走査線であり、2以上の走査線は、第2走査線及び第10走査線である。
【0089】
このように、サブフィールドにおいて、表示データの上位ビットである第nビットが2以上の走査線に書き込まれることで、下位ビットに対応した表示期間に比べて長い第n表示期間を2以上に分割することが可能となる。
【0090】
また本実施形態では、第nビットに対応する第n表示期間は、第1の第n表示期間と第2の第n表示期間とを含む。第1の第n表示期間と第2の第n表示期間との間に、第1~第n-1表示期間のうち少なくとも1つの表示期間が設けられる。
【0091】
このようにすれば、第n表示期間に比べて短い第1~第n-1表示期間のうち少なくとも1つの表示期間を、第1の第n表示期間と第2の第n表示期間との間に挿入できる。これにより、画素のオン又はオフが長時間続く可能性が低くなり、画面に表示された映像のちらつきを減らすことができる。
【0092】
7.電気光学素子、電子機器
図12は、回路装置100を含む電気光学素子15の構成例である。電気光学素子15は、表示素子、電気光学パネル、表示パネル、電気光学デバイス、又は表示デバイスとも呼ばれる。ここでは電気光学素子が有機EL表示素子である場合を例に説明するが、これに限定されず、電気光学素子は例えばマイクロLED表示素子、量子ドット表示素子、又はDMD表示素子等であってもよい。
【0093】
電気光学素子15は、素子基板11と保護基板12と端子13と画素アレイ20と回路装置100とを含む。
【0094】
素子基板11は、例えばシリコン基板等の半導体基板である。画素アレイ20は、マトリックス状に配置された画素部30b、30g、30rを含み、その画素部30b、30g、30rは素子基板11上に形成されている。画素部30bの発光素子には青色のカラーフィルターが設けられ、画素部30gの発光素子には緑色のカラーフィルターが設けられ、画素部30rの発光素子には赤色のカラーフィルターが設けられる。
【0095】
回路装置100は、素子基板11上に形成された集積回路によって構成される。回路装置100は、走査線駆動回路110と信号線駆動回路120と制御線駆動回路130とを含む。回路装置100と端子13は、素子基板11上に形成された不図示の配線によって接続される。端子13は
図3の表示コントローラー60に接続されており、表示コントローラー60からの表示データと制御信号は端子13を介して回路装置100に入力される。
【0096】
保護基板12は、端子13の配置部を除いて素子基板11を覆うように配置される。保護基板12は、素子基板11上に形成された画素アレイ20と回路装置100を保護するために設けられる。保護基板12は、例えばガラス基板等の光透過性の基板である。
【0097】
図13は、電気光学素子15a、15bを含む電子機器300の構成例である。ここでは電子機器がヘッドマウントディスプレイである場合を例に説明するが、これに限定されず、電子機器として、電気光学素子を用いて映像を表示する様々な機器を想定できる。例えば、電子機器は、電子ビューファインダー、プロジェクター、ヘッドアップディスプレイ、携帯情報端末、テレビジョン装置、又は車載ディスプレイ等であってもよい。
【0098】
ヘッドマウントディスプレイは眼鏡のような外観を有し、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザーに対して映像光を外界光に重ねて視認させる。ヘッドマウントディスプレイである電子機器300は、透視部材303a、303bとフレーム302と投影装置305a、305bとを含む。
【0099】
フレーム302は、透視部材303a、303b及び投影装置305a、305bを支持する。フレーム302がユーザーの頭部に装着されることで、ヘッドマウントディスプレイがユーザーの頭部に装着される。フレーム302の右眼部分には透視部材303aが設けられ、フレーム302の左目部分には透視部材303bが設けられる。透視部材303a、303bが外界光を透過することで、ユーザーに外界光が視認される。フレーム302の右テンプル部から右眼部分にかけて投影装置305aが設けられ、フレーム302の左テンプル部から左目部分にかけて投影装置305bが設けられる。投影装置305a、305bがユーザーの目に映像光を入射することで、外界光に重なる映像光がユーザーに視認される。
【0100】
投影装置305aは電気光学素子15aを含む。
図12で説明したように、電気光学素子15aは回路装置100と画素アレイ20とを含む。投影装置305aは、画素アレイ20に表示される映像をユーザーの目に入射させる不図示の光学系を含む。光学系は、例えば、レンズと、内面で映像光を反射する導光部材と、を含む。レンズによる屈折と、導光部材の反射面の湾曲によって、映像光が結像されるように構成されている。同様に、投影装置305bは、電気光学素子15bと、不図示の光学系とを含む。
【0101】
以上に説明した本実施形態の回路装置は、走査線駆動回路を含む。走査線駆動回路は、電気光学素子の複数の走査線を駆動する。電気光学素子は、複数の走査線、複数の画素及び複数の画素回路を有する。1枚の画像を構成するフィールドは、第1~第n走査線選択期間と第1~第n表示期間とを含む。第1~第n走査線選択期間において、表示データの第1~第nビット(nは2以上の整数)が、複数の画素回路に含まれる画素回路に書き込まれる。第1~第n表示期間において、画素回路に書き込まれた第1~第nビットにより、複数の画素のうち画素回路に接続された画素がオン又はオフとなる。フィールドは、複数のサブフィールドを含む。走査線駆動回路は、複数のサブフィールドに含まれるサブフィールドにおいて、複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択する。走査線群は、サブフィールドにおいて表示データの第1~第nビットのうちの第iビット(iは1以上n以下の整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、サブフィールドにおいて表示データの第1~第nビットのうちの第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)が書き込まれる画素回路に接続された走査線と、を含む。
【0102】
本実施形態によれば、1サブフィールドにおいて1つの走査線に第iビットを書き込み、それとは別の走査線に第jビットを書き込む。これにより、走査線を選択しない非走査期間を減らすことが可能となり、従来手法に比べて走査線駆動周波数を下げることができる。
【0103】
また本実施形態では、フィールドにおいて、走査線駆動回路が複数の走査線の各走査線をn回ずつ選択することで、複数の画素回路の各画素回路に表示データの第1~第nビットが書き込まれてもよい。
【0104】
1本の走査線に着目すると1フィールドにおいて第1~第n走査線選択期間と第1~第n表示期間が必要である。本実施形態によれば、各走査線がn回ずつ選択され、その走査線に第1~第nビットが書き込まれることで、1フィールドにおいて全ての走査線に対して第1~第n走査線選択期間と第1~第n表示期間が実現されている。
【0105】
また本実施形態では、複数のサブフィールドの各サブフィールドは、同じ長さの期間であってもよい。
【0106】
また本実施形態では、走査線群は、サブフィールドにおいて第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、サブフィールドにおいて第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n本の走査線を含んでもよい。
【0107】
各サブフィールドが同じ長さの期間であるということは、各サブフィールドにおいて選択される走査線群の走査線本数が同じということである。そして、その走査線群が、第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、第nビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n本の走査線を含むように、選択順パターンが構成されている。このような選択順パターンを構成することで、1フィールドにおいて各走査線に接続された画素に第1~第nビットを書き込むと共に、走査が選択されない期間を減らすことが可能となっている。
【0108】
また本実施形態では、走査線群は、サブフィールドにおいて第1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線から、サブフィールドにおいて表示データの第1~第nビットのうちの第n-1ビットが書き込まれる画素回路に接続された走査線までの、n-1本の走査線と、サブフィールドにおいて表示データの上位ビットである第nビットが書き込まれる2以上の画素回路に接続された2以上の走査線と、を含んでもよい。
【0109】
本実施形態によれば、サブフィールドにおいて、表示データの上位ビットである第nビットが、2以上の走査線に書き込まれることで、下位ビットに対応した表示期間に比べて長い第n表示期間を2以上に分割することが可能となる。
【0110】
また本実施形態では、第nビットに対応する第n表示期間は、第1の第n表示期間と第2の第n表示期間とを含んでもよい。第1の第n表示期間と第2の第n表示期間との間に、第1~第n-1表示期間のうち少なくとも1つの表示期間が設けられてもよい。
【0111】
本実施形態によれば、第n表示期間に比べて短い第1~第n-1表示期間のうち少なくとも1つの表示期間を、第1の第n表示期間と第2の第n表示期間との間に挿入できる。これにより、画素のオン又はオフが長時間続く可能性が低くなり、画面に表示された映像のちらつきを減らすことができる。
【0112】
また本実施形態では、電気光学素子の走査線数をkとし、ダミー走査線数をpとし、J=k+pとしたとき、Jは、kより大きく、且つnとの最小公倍数がJ×nとなる数であってもよい。走査線駆動回路は、フィールドにおいてJ×n回の走査線選択を行い、J×n回の走査線選択のうちk×n回の走査線選択において電気光学素子のk本の走査線を選択し、p×n回の走査線選択においてp本のダミー走査線を内部処理として選択してもよい。
【0113】
本実施形態によれば、駆動順パターンに含まれる走査線数Jを、2nの整数倍でない数に設定できる。これにより、電気光学素子の走査線数に合わせて、駆動順パターンにおける走査線数Jを最小限に設定できる。これにより、ダミー走査線の選択回数を減らし、その結果として1フレームの総走査線選択回数を減らすことができる。
【0114】
また本実施形態では、画素は発光素子であってもよい。画素回路は記憶回路を含んでもよい。第1~第n走査線選択期間において、第1~第nビットが記憶回路に書き込まれてもよい。第1~第n表示期間において、記憶回路に書き込まれた第1~第nビットにより発光素子が発光又は非発光となってもよい。
【0115】
本実施形態によれば、画素として発光素子を用い、表示データの第1~第nビットに応じて発光素子の発光又は非発光を制御することで、階調表示が可能となる。また表示データの第1~第nビットを記憶回路に記憶させることで、キャパシターで画像信号を保持する場合に比べて書き込み時の消費電力を下げることができる。
【0116】
また本実施形態の電気光学素子は、上記のいずれかに記載の回路装置と、複数の走査線、複数の画素及び複数の画素回路と、を含む。
【0117】
また本実施形態の電気光学素子は、複数の走査線と、信号線と、複数の走査線と信号線との各交差に対応して配置された複数の画素部と、複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、を含む。複数の画素部の各画素部は、第1~第nビット(nは2以上の整数)からなる表示データを1ビットずつ所定の順番に保持する画素回路と、保持した表示データに基づいてオンまたはオフとなる画素と、を含む。走査線駆動回路は、複数のサブフィールドに含まれる各サブフィールドにおいて、複数の走査線のうち選択対象となる走査線群を1回選択する。走査線群は、サブフィールドにおいて、第iビット(iは1以上n以下の整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線と、第jビット(jは1以上n以下でiと異なる整数)の表示データが供給される画素回路に対応する走査線と、を含む。
【0118】
また本実施形態の電気光学素子では、複数のサブフィールドにおいて、走査線駆動回路が複数の走査線の各走査線をn回ずつ選択することで、画素回路に表示データの第1~第nビットの各ビットに対応する表示データが保持されてもよい。
【0119】
また本実施形態の電気光学素子では、複数のサブフィールドの各サブフィールドは、同じ長さの期間であってもよい。
【0120】
また本実施形態の電気光学素子では、画素回路は、記憶回路を含んでもよい。画素は、記憶回路に保持された表示データにより発光又は非発光となる発光素子を含んでもよい。
【0121】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の回路装置と、電気光学素子と、を含む。
【0122】
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の電気光学素子を含む。
【0123】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、画素回路、画素、電気光学素子、及び電子機器の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0124】
10…表示システム、11…素子基板、12…保護基板、13…端子、15,15a,15b…電気光学素子、20…画素アレイ、30,30b,30g,30r…画素部、31…画素、32…画素回路、33…記憶回路、60…表示コントローラー、61…表示用信号供給回路、62…VRAM回路、100…回路装置、110…走査線駆動回路、120…信号線駆動回路、130…制御線駆動回路、300…電子機器、302…フレーム、303a,303b…透視部材、305a,305b…投影装置、DT,DT1~DTm…画像信号、EN,EN1~ENk…イネーブル信号、FR…フィールド、LDT,LDT1~LDTm…画像信号線、LSC,LSC1~LSCk…走査線、SC,SC1~SCk…選択信号、SF1~SF17…サブフィールド、TD1,TD2…表示期間、TS1,TS2…走査線選択期間