(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両の吸気冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240618BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240618BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F01P7/16 504A
F01P5/06 509
B60K11/04 J
B60K11/04 Z
(21)【出願番号】P 2020113837
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英成
(72)【発明者】
【氏名】吉川 高史
(72)【発明者】
【氏名】小園 智哉
(72)【発明者】
【氏名】冨喜 加奈恵
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙太
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132004(JP,A)
【文献】特開2016-037916(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169501(WO,A1)
【文献】特開2005-299472(JP,A)
【文献】特開2017-115828(JP,A)
【文献】特開2020-020324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131016(US,A1)
【文献】特開2017-190096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/14 - 7/16
B60K 11/00
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントグリルと、前記フロントグリルの後方に配設されたエンジン本体と、冷却水を冷却するために前記フロントグリルと前記エンジン本体との間に配設されたラジエータとを備えた車両に適用される吸気冷却装置において、
前記ラジエータから供給される前記冷却水によって前記エンジン本体に導入される吸気を冷却するインタークーラと、
前記フロントグリルと前記ラジエータとの間に設けられたグリルシャッターと、
前記ラジエータから前記インタークーラに供給される前記冷却水の流量である冷却水供給流量を調整可能な冷却水量調整手段と、
前記グリルシャッターおよび前記冷却水量調整手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記インタークーラから導出される前記吸気の温度を所定の目標吸気温度にするために必要な前記冷却水供給流量である第1冷却水流量を算出する第1算出部と、
前記インタークーラ内の前記冷却水の温度を所定の冷却水上限温度未満にするために必要な前記冷却水供給流量の最小値である第2冷却水流量を算出する第2算出部とを備え、
算出された前記第1冷却水流量と前記第2冷却水流量とを比較して、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量以上の場合は、前記第1冷却水流量に基づいて前記冷却水量調整手段を制御し、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量未満の場合は、前記第2冷却水流量に基づいて前記冷却水量調整手段を制御するとともに、
前記ラジエータから導出される前記冷却水の温度が所定の判定水温未満
で、且つ、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量未満のときに、前記グリルシャッターを閉じる、ことを特徴とする車両の吸気冷却装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両の吸気冷却装置において、
前記制御手段は、前記インタークーラに供給される前記冷却水の温度、前記インタークーラに導入される前記吸気の温度、および、前記インタークーラを通過する前記吸気の流量に基づいて、前記第1冷却水流量および前記第2冷却水流量を算出する、ことを特徴とする車両の吸気冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体およびラジエータが搭載された車両の吸気冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン本体に導入される吸気を冷却するためのインタークーラが、車両に設けられる場合がある。インタークーラは、外部から供給される冷却水と吸気とを熱交換させることによって吸気を冷却する。
【0003】
ここで、インタークーラによって吸気が過度に冷却されると吸気中に凝縮水が発生する。凝縮水がエンジン本体に導入されると失火等を招き好ましくない。吸気の過度な冷却を抑制するためには、インタークーラに導入される冷却水の量を少なくすればよい。しかし、インタークーラに導入される冷却水の量を過度に低減すると、今度は、少流量の冷却水が高温の吸気に晒されることでインタークーラ内で冷却水が沸騰し、インタークーラが損傷するおそれがある。具体的には、インタークーラ内で冷却水が沸騰して気泡が生じると、気泡が生じた部分のインタークーラコアが非常に高い温度になり、これにより熱劣化が生じたり、その後に低温の冷却水が流入することに伴う温度差に伴って前記部分が損傷するおそれがある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、冷媒が沸騰すると予想されるときに、インタークーラに導入される冷媒の量を多くしつつ、EGR率つまり吸気に含まれるEGRガス(吸気に還流された排気ガス)の割合を低くするようにしたエンジンシステムが開示されている。このエンジンシステムによれば、インタークーラ内の冷媒の量が多くされることで冷媒の沸騰が抑制されるとともに、EGR率が少なくされることで、排気ガス中の水の吸気への還流量が少なくなり吸気内での凝縮水の発生が抑制されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムでは、吸気内での凝縮水の発生を抑制するためにEGR率を少なくしているため、エンジン本体に十分な量のEGRガスつまり不活性ガスが導入されずエンジン本体から排出されるNOxの量が増大する等して排気ガスの性能が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、排ガス性能の悪化を抑制しながら、冷却水の沸騰と吸気中での凝縮水の発生とを抑制できる車両の吸気冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、フロントグリルと、前記フロントグリルの後方に配設されたエンジン本体と、冷却水を冷却するために前記フロントグリルと前記エンジン本体との間に配設されたラジエータとを備えた車両に適用される吸気冷却装置において、前記ラジエータから供給される前記冷却水によって前記エンジン本体に導入される吸気を冷却するインタークーラと、前記フロントグリルと前記ラジエータとの間に設けられたグ
リルシャッターと、前記ラジエータから前記インタークーラに供給される前記冷却水の流量である冷却水供給流量を調整可能な冷却水量調整手段と、前記グリルシャッターおよび前記冷却水量調整手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記インタークーラから導出される前記吸気の温度を所定の目標吸気温度にするために必要な前記冷却水供給流量である第1冷却水流量を算出する第1算出部と、前記インタークーラ内の前記冷却水の温度を所定の冷却水上限温度未満にするために必要な前記冷却水供給流量の最小値である第2冷却水流量を算出する第2算出部とを備え、算出された前記第1冷却水流量と前記第2冷却水流量とを比較して、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量以上の場合は、前記第1冷却水流量に基づいて前記冷却水量調整手段を制御し、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量未満の場合は、前記第2冷却水流量に基づいて前記冷却水量調整手段を制御するとともに、前記ラジエータから導出される前記冷却水の温度が所定の判定水温未満で、且つ、前記第1冷却水流量が前記第2冷却水流量未満のときに、前記グリルシャッターを閉じる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上である場合、つまり、インタークーラに導入される冷却水の流量を第1冷却水流量としても、インタークーラ内の冷却水の温度が冷却水上限温度未満になると考えられる場合は、第1冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段が制御される。そのため、冷却水の温度を冷却水上限温度未満にしてインタークーラ内での冷却水の沸騰を抑制しつつ、インタークーラから導出される吸気の温度を目標吸気温度に制御できる。また、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満であって、インタークーラに導入される冷却水の流量を第1冷却水流量にするとインタークーラ内の冷却水の温度が冷却水上限温度以上になると考えられる場合には、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段が制御される。そのため、この場合においても、インタークーラ内の温度が冷却水上限温度を超えるのを抑制してインタークーラ内での冷却水の沸騰を抑制できる。これより、インタークーラ内での冷却水の沸騰を確実に抑制でき、インタークーラの損傷を防止できる。
【0010】
ここで、単に、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段を制御しただけでは、インタークーラから導出される吸気の温度が目標吸気温度よりも低くなり、吸気内に凝縮水が発生するおそれがある。これに対して、本発明では、ラジエータから導出される冷却水の温度が所定の判定水温未満であって低温の冷却水によって吸気が過度に冷却されて凝縮水が生成される可能性の高いときに、グリルシャッターが閉じられる。グリルシャッターが閉じられると、走行風によるラジエータの冷却が抑制されることでインタークーラに導入される冷却水の温度は高くなる。これより、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段を制御した場合であっても、冷却水による吸気の過度な冷却および凝縮水の発生を抑制できる。
【0011】
このように、本発明では、インタークーラに導入される冷却水の流量の調整によってインタークーラ内での冷却水の沸騰を抑制し、グリルシャッターを閉じることによって凝縮水の発生を抑制している。従って、吸気に導入されるEGRガスの割合を低減することなく、あるいは、この低減量を少なくして排ガス性能の悪化を抑制しながら、インタークーラ内での冷却水の沸騰と吸気中での凝縮水の発生とを抑制できる。
【0013】
しかも、ラジエータから導出される前記冷却水の温度が判定水温未満で、且つ、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段が制御されるときという吸気内に凝縮水が発生する可能性がより高いときに、グリルシャッターが閉じられる。そのため、吸気中に凝縮水が発生するのをより確実に抑制できるとともに、グリルシャッターの閉弁機会を少なく抑えてグリルシャッターが長期間にわたって閉弁されることに伴う冷却水の過度な昇温を抑制できる。
【0020】
前記制御手段による前記第1冷却水流量および前記第2冷却水流量の算出構成としては、前記インタークーラに供給される前記冷却水の温度、前記インタークーラに導入される前記吸気の温度、および、前記インタークーラを通過する前記吸気の流量に基づいて、前記第1冷却水流量および前記第2冷却水流量を算出する、構成が挙げられる(請求項2)。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、排ガス性能の悪化を抑制しながら、冷却水の沸騰と吸気中での凝縮水の発生とを抑制できる車両の吸気冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両の吸気冷却装置を示したシステム図である。
【
図4】第1実施形態に係る吸気冷却装置の制御ブロックである。
【
図5】第1実施形態に係る冷却水流量の制御手順を示したフローチャートである。
【
図6】(a)は入ガス温度と第1冷却水流量との関係を、(b)は冷却水温と第1冷却水流量との関係を、(c)吸気量と第1冷却水流量との関係を示したグラフである。
【
図7】(a)は入ガス温度と第2冷却水流量との関係を、(b)は冷却水温と第2冷却水流量との関係を、(c)吸気量と第2冷却水流量との関係を示したグラフである。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る冷却水流量の制御手順を示したフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る車両の吸気冷却装置を示したシステム図である。
【
図10】第2実施形態に係る吸気冷却装置の制御ブロックである。
【
図11】第2実施形態に係る冷却水流量の制御手順を示したフローチャートである。
【
図12】第2実施形態の変形例に係る冷却水流量の制御手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る車両の吸気冷却装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両の吸気冷却装置が搭載された車両における吸気冷却システムA1およびエンジンシステムA2を示した概略構成図である。
【0025】
図1に示すように、エンジンシステムA2は、気筒が形成されたエンジン本体1と、エンジン本体1に吸気を導入する吸気通路2と、エンジン本体1から排気ガスが導出される排気通路3と、EGR装置4とを有する。本実施形態では、吸気冷却システムA1およびエンジンシステムA2が搭載される車両Vは、ハイブリッド車両であって、車両Vの駆動源としてエンジン本体1に加えて電動モータ(不図示)を有する。
【0026】
吸気通路2には、吸気を過給する過給機5のコンプレッサ5aと、吸気通路2のうちコンプレッサ5aよりも下流側に設けられて吸気を冷却するためのインタークーラ10とが設けられている。また、吸気通路2には、吸気の流量を検出するためのエアフローセンサSN1と、吸気の温度を検出するための吸気温センサSN2とが設けられている。エアフローセンサSN1は、吸気通路2のうちのコンプレッサ5aおよび後述するEGR通路4aの接続部分よりも上流側の部分に設けられている。吸気温センサSN2は、吸気通路2のうちのコンプレッサ5aとインタークーラ10との間に設けられており、インタークーラ10に導入される前の吸気の温度を検出する。
【0027】
排気通路3には、過給機5のタービン5bが設けられている。過給機5は、排気のエネルギーを受けてタービン5bが回転し、これによってコンプレッサ5aが回転駆動されることで、吸気を過給する。排気通路3には、タービン5bよりも下流側の部分に排気ガスを浄化するための浄化装置6が設けられている。
【0028】
EGR装置4は、排気通路3と吸気通路2とを連通して排気ガスを吸気通路2に還流させるEGR通路4aと、EGR通路4aを流通する排気ガスであるEGRガスを冷却するEGRクーラー4bと、EGR通路4aを開閉可能なEGRバルブ4cとを有する。EGR通路4aは、排気通路3のうちのタービン5bよりも下流側の部分と、吸気通路2のうちのコンプレッサ5aよりも上流側の部分とを連通している。
【0029】
吸気冷却システムA1は、内側を冷却水が流通(循環)する冷却水回路20と、グリルシャッター50と、冷却水回路20上に設けられたラジエータ31、ウォーターポンプ32、流量調整バルブ33、HEV機器40およびATFクーラ(ATF/C)41を有する。冷却水回路20上には前記のインタークーラ10も設けられており、インタークーラ10は吸気冷却システムA1の構成要素でもある。つまり、インタークーラ10には冷却水回路20を流通する冷却水が供給されるようになっており、インタークーラ10はこの冷却水と吸気との熱交換によって吸気を冷却する。また、冷却水回路20には、これを流通する冷却水の温度を検出する水温センサSN3が設けられている。水温センサSN3は、冷却水回路20のうちのラジエータ31とウォーターポンプ32との間に設けられており、ラジエータ31から導出された直後の冷却水の温度を検出する。
【0030】
ラジエータ31は冷却水回路20を流通する冷却水を冷却するための装置である。
図2に示すように、ラジエータ31は車両Vの前部でエンジン本体1よりも前方に設けられており、走行風を受けて冷却水を冷却する。ウォーターポンプ32は、冷却水を圧送するためのポンプである。ウォーターポンプ32は、冷却水回路20のうちのラジエータ31よりも下流側の部分に設けられている。HEV機器40は、ハイブリッド車両であることに伴って車両Vに搭載される電気機器であり、電動モータやコンバータ等を含む。ATFクーラ41は、車両に設けられた変速機に供給されるATオイルを冷却するための装置である。
【0031】
冷却水回路20は、ウォーターポンプ32よりも下流側の分岐部20aで第1冷却水通路21と第2冷却水通路22とに分岐している。第1冷却水通路21には、インタークーラ10が配設されている。第2冷却水通路22には、HEV機器40とATFクーラ41とが、この順で上流側から順に設けられている。第1冷却水通路21の下流端と第2冷却水通路22の下流端とは、冷却水回路20のうちのラジエータ31よりも上流側の合流部20bで合流している。これより、冷却水回路20での冷却水の基本的な流れは次のようになる。ラジエータ31から導出された冷却水は、まず、分岐部20aにおいて第1冷却水通路21と第2冷却水通路22とに分岐する。第1冷却水通路21に流入した冷却水はインタークーラ10において吸気を冷却する。一方、第2冷却水通路22に流入した冷却水はATFクーラ41においてATオイルを冷却した後、HEV機器40を冷却する。インタークーラ10を通過した後の冷却水と、ATFクーラ41およびHEV機器40を通過した後の冷却水とは、合流部20bにて合流し、再びラジエータ31に導入されてラジエータ31により冷却される。
【0032】
第1冷却水通路21には、第1冷却水通路21を開閉する流量調整バルブ33が設けられている。流量調整バルブ33が閉弁されると、第1冷却水通路21およびインタークーラ10への冷却水の流入は停止される。
【0033】
図3は、インタークーラ10の概略断面図である。インタークーラ10は、吸気が導入される吸気導入部11と、吸気が導出される吸気導出部12と、冷却水が導入される冷却水導入部15と、冷却水が導出される冷却水導出部16とを備える。
図2に示すように、本実施形態では、インタークーラ10は対流式であり、吸気の流れ方向(
図2の矢印Y1の方向)について上流側の部分に冷却水導出部16が設けられ、下流側の部分に冷却水導入部15が設けられている。矢印Y2に示すように、インタークーラ10内で、冷却水は、吸気の流れ方向について下流側から上流側に流れている。インタークーラ10に供給される冷却水の流量である冷却水供給流量は、ウォーターポンプ32の回転数および流量調整バルブ33の開度によって変更される。このように、本実施形態では、ウォーターポンプ32の回転数および流量調整バルブ33の開度によって、ラジエータ31からインタークーラ10に供給される冷却水の流量である冷却水供給流量が変更されるようになっており、ウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とが、請求項の「冷却水量調整手段」に相当する。
【0034】
図2に示すように、グリルシャッター50は、車両Vの前部に設けられたフロントグリル301とラジエータ31との間に設けられている。グリルシャッター50は、上下方向に並設された複数のフラップ51と、これを回動させる駆動装置(不図示)とを有する。グリルシャッター50は、駆動装置によってフラップ51が回動されることで、
図2の実線に示すように開いた状態と、
図2の鎖線に示すように閉じた状態とに切り替えられる。グリルシャッター50が閉じられると、前方からラジエータ31に向かう風の流れが遮断され、走行風によるラジエータ31の冷却力ひいてはラジエータ31による冷却水の冷却力が弱められる。
【0035】
ここで、本発明の車両の吸気冷却装置60は、少なくとも前記の吸気冷却システムA1とグリルシャッター50と後述するECU90とを含む。
【0036】
(制御構成)
図4は、吸気冷却システムA1およびエンジンシステムA2の制御構成を示したブロック図である。車両Vには、車両Vの各部を制御するための制御手段であるECU(エンジン・コントロール・モジュール)90が搭載されている。ECU90は、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
【0037】
ECU90には、前記のエアフローセンサSN1、吸気温センサSN2、水温センサSN3等の車両Vに搭載された各種センサからの検出信号が入力される。ECU90はこれらのセンサSN1~SN3等からの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ、車両100の各部を制御する。ECU90は、ウォーターポンプ32、流量調整バルブ33、グリルシャッター50、EGRバルブ4c等と電気的に接続されており、前記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。例えば、ECU90は、エンジン本体1の全運転領域において、EGRガスを吸気通路2に還流するべくEGRバルブ4cを開弁させる。
【0038】
ECU90には、機能的に、後述する第1冷却水流量を算出する第1算出部91と、後述する第2冷却水流量を算出する第2算出部92とが設けられている。
【0039】
(冷却水の流量制御)
ECU90により実施される冷却水の流量制御について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、ステップS1にて、ECU90は、各センサの検出値等を読み込む。ECU90は、エアフローセンサSN1、吸気温センサSN2および水温センサSN3の検出値を少なくとも読み込む。以下では、エアフローセンサSN1により検出された吸気の流量を吸気量といい、吸気温センサSN2により検出された吸気の温度であってインタークーラ10に導入される前の吸気の温度を入ガス温度といい、水温センサSN3により検出された冷却水の温度であってラジエータ31から導出された直後の冷却水の温度を冷却水温という。
【0041】
次に、ステップS2にて、ECU90は、第1冷却水流量を算出する。第1冷却水流量は、インタークーラ10の吸気導出部12における吸気の温度であってインタークーラ10で冷却された後の吸気の温度(以下、適宜、出ガス温度という)を、これの目標値である目標吸気温度にするために必要な冷却水供給流量である。つまり、第1冷却水流量は、コンプレッサ5aによって過給されて高温となった吸気の温度を、インタークーラ10によって目標吸気温度まで下げるためにインタークーラ10に供給するべく冷却水の流量である。目標吸気温度は予め設定されてECU90に記憶されている。本実施形態では、目標吸気温度が50℃と比較的高い値に設定されている。
【0042】
ECU90は、ステップS1で読み込んだ入ガス温度、冷却水温および吸気量に基づいて第1冷却水流量を算出する。出ガス温度を目標吸気温度まで下げるためには、入ガス温度が高いほどインタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図6(a)に示すように、入ガス温度が高いほど第1冷却水流量を大きい値に算出する。また、出ガス温度を目標吸気温度まで下げるためには、冷却水温が高いほどインタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図6(b)に示すように、冷却水温が高いほど第1冷却水流量を大きい値に算出する。また、出ガス温度を目標吸気温度まで下げるためには、吸気量が多いほど、インタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図6(c)に示すように、吸気量が多いほど第1冷却水流量を大きい値に算出する。
【0043】
次に、ステップS3にて、ECU90は、第2冷却水流量を算出する。第2冷却水流量は、インタークーラ10内の冷却水の温度(以下、適宜、インタークーラ内水温という)を所定の冷却水上限温度未満にするために必要な冷却水供給流量(インタークーラ10導入するべき冷却水の流量)の最小値である。詳細には、インタークーラ10内において、吸気の温度は上流側(吸気の流れ方向について)ほど高い。これより、インタークーラ10内の冷却水の温度は、インタークーラ10の吸気の流れ方向についての上流端つまり冷却水導出部16において最も高くなる。第2冷却水流量は、この冷却水導出部16における冷却水の温度であってインタークーラ10内の冷却水の温度を冷却水上限温度未満にするために必要な冷却水供給流量の最小値である。なお、インタークーラ10を流通する冷却水の流量が多いほど、吸気からの受熱による冷却水の温度上昇は小さくなる。
【0044】
冷却水上限温度は予め設定されてECU90に記憶されている。冷却水上限温度は、冷却水の沸点とほぼ同じ温度(100℃等)に設定されており、第2冷却水流量は、インタークーラ10内の冷却水の温度を沸点以下に抑えるために必要な冷却水供給流量の最小値である。
【0045】
ECU90は、ステップS1で読み込んだ入ガス温度、冷却水温および吸気量に基づいて第2冷却水流量を算出する。入ガス温度が高いほどインタークーラ10内の冷却水の温度は高温になりやすいことから、インタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にするためには、入ガス温度が高いほどインタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図7(a)に示すように、入ガス温度が高いほど第2冷却水流量を大きい値に算出する。また、インタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にするためには、冷却水温が高いほどインタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図7(b)に示すように、冷却水温が高いほど第2冷却水流量を大きい値に算出する。また、インタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にするためには、吸気量が多く吸気から冷却水への放熱量が多いほど、インタークーラ10に導入する冷却水の流量を多くする必要がある。これに対応して、ECU90は、
図7(c)に示すように、吸気量が多いほど第2冷却水流量を大きい値に算出する。
【0046】
ステップS3の後は、ECU90は、ステップS4にて、第2目標冷却水量を算出する。第2目標冷却水量は、第2冷却水通路22を流通させてHEV機器40およびATFクーラ41に供給する冷却水の流量の目標値である。ECU90は、ATオイルの温度やHEV機器40の温度等に基づいて第2目標冷却水量を算出する。
【0047】
ステップS4の後はステップS5にて、ECU90は、ステップS2で算出した第1冷却水流量がステップS3で算出した第2冷却水流量以上であるか否かを判定する。この判定がYESであって第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合、ECU90はステップS6の処理を行う。ステップS6にて、ECU90は、第1目標冷却水量を第1冷却水流量に設定する。第1目標冷却水量は、第1冷却水通路21を流通させる冷却水の流量の目標値である。
【0048】
すなわち、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上であって、出ガス温度を目標吸気温度にするのに必要な冷却水供給流量が、インタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にするのに必要な冷却水供給流量以上であり、冷却水供給流量を第1冷却水流量としてもインタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にできる場合は、第1冷却水流量が第1目標冷却水量に設定される。
【0049】
一方、ステップS5の判定がNOであって第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合、ステップS7にて、ECU90は、第2冷却水流量を第1目標冷却水量に設定する。すなわち、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満であって、出ガス温度を目標吸気温度にするのに必要な冷却水供給流量がインタークーラ内水温を冷却水上限温度以下にするのに必要な冷却水供給流量未満であり、冷却水供給流量を第1冷却水流量としてもインタークーラ内水温を冷却水上限温度未満にできない場合は、第2冷却水流量が第1目標冷却水量に設定される。
【0050】
ステップS6あるいはステップS7の後はステップS8に進む。ECU90は、ステップS8にて、設定した第1目標冷却水量および第2目標冷却水量に基づいて、ウォーターポンプ32の回転数と流量調整バルブ33の開度を決定する。すなわち、ECU90は、第1冷却水通路21を流通する冷却水の流量が第1目標冷却水量になり、且つ、第2冷却水通路22を流通してインタークーラ10に供給される冷却水の流量が第2目標冷却水量になるように、ウォーターポンプ32の回転数と流量調整バルブ33の開度を決定する。そして、これらの回転数および開度が実現されるようにECU90はウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とを制御する。
【0051】
このように、本実施形態では、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合は、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第1冷却水流量とされ、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合は、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第2冷却水流量とされる。ただし、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合に、インタークーラ10に供給される冷却水の流量を単に第2冷却水流量としただけでは、出ガス温度が目標吸気温度よりも低くなって吸気中に凝縮水が生成されやすくなる。具体的には、吸気中には、空気中あるいはEGRガス中の水蒸気が含まれており、これらが凝縮するおそれがある。
【0052】
ここで、吸気中に凝縮水が生じやすいのは、主としてインタークーラ10に供給される冷却水の温度が低いときである。これより、ECU90は、冷却水温が低い場合には、ECU90は、インタークーラ10に供給される冷却水を昇温するべくグリルシャッター50を閉じる。前記のように、グリルシャッター50が閉じられると、ラジエータ31の冷却力が弱くなることで冷却水の温度が昇温される。
【0053】
具体的には、ステップS8の後に進むステップS9において、ECU90は、冷却水温が所定の判定水温以上であるか否かを判定する。判定水温は、吸気中に凝縮水が生じやすい冷却水温であり予め設定されてECU90に記憶されている。判定水温は、例えば、40℃程度に設定されている。
【0054】
ステップS9の判定がYESであって、冷却水温が判定水温以上の場合は、ECU90は、ステップS10にてグリルシャッター50を開く(既に開いている場合は継続してグリルシャッター50を開く)。一方、ステップS9の判定がNOであって、冷却水温が判定水温未満の場合は、ECU90は、ステップS11にてグリルシャッター50を閉じる(既に開いている場合は継続してグリルシャッター50を開く)。ステップS10あるいはステップS11の後はステップS1に戻る。
【0055】
(作用等)
以上のように、本第1実施形態では、インタークーラ10から導出される吸気の温度を目標吸気温度にするために必要な冷却水供給流量である第1冷却水流量と、インタークーラ10内の冷却水の温度を所定の冷却水上限温度以下にするために必要な前記冷却水供給流量の最小値である第2冷却水流量とが算出される。そして、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上であって、インタークーラ10に導入される冷却水の流量を第2冷却水流量としても、インタークーラ10内の冷却水の温度が冷却水上限温度未満に抑えられると考えられる場合には、第1冷却水流量が第1目標冷却水量に設定される。また、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第1冷却水流量になるように、ウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とが制御される。そのため、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合に、インタークーラ内水温(インタークーラ10内の冷却水の温度)を冷却水上限温度未満にしてインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制しつつ、インタークーラ10から導出される吸気の温度を目標吸気温度に制御できる。
【0056】
また、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満であって、インタークーラ10に導入される冷却水の流量を第1冷却水流量にするとインタークーラ内水温が冷却水上限温度以上になると考えられる場合には、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第2冷却水流量になるように、ウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とが制御される。そのため、この場合においても、インタークーラ内水温が冷却水上限温度を超えるのを抑制してインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制できる。これより、インタークーラ10内での冷却水の沸騰を確実に抑制でき、インタークーラ10の損傷を防止できる。
【0057】
しかも、冷却水温が判定水温未満であってインタークーラ10内で冷却水によって吸気が過度に冷却されて吸気中に凝縮水が発生する可能性の高いときに、グリルシャッター50が閉じられて、冷却水が昇温される。従って、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段を制御した場合であっても、冷却水による吸気の過度な冷却および凝縮水の発生を抑制できる。
【0058】
特に、第1実施形態では、インタークーラ10に導入される冷却水の流量の調整によってインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制しつつ、この冷却水の沸騰抑制に伴う吸気内での凝縮水の発生をグリルシャッター50の閉弁によって抑制している。これより、冷却水の沸騰を抑制しながら吸気内での凝縮水の発生を抑制するために吸気に導入されるEGRガスの割合を低減する必要がなく、あるいは、この低減量を少なくできる。従って、第1実施形態によれば、排ガス性能の悪化を抑制しながら、インタークーラ10内での冷却水の沸騰と吸気内での凝縮水の発生とを抑止できる。
【0059】
(変形例)
前記実施形態では、冷却水温が判定水温以上であるか否かに応じてグリルシャッター50を開閉するか否かを決定した場合を説明したが、この判定に加えて第1冷却水流量が第2冷却水流量未満であるか否かに基づいてグリルシャッター50の開閉を行ってもよい。
【0060】
具体的には、
図5のフローチャートに変えて
図6のフローチャートに示す制御を実施し、前記実施形態におけるステップS9の判定を、冷却水温が判定水温以上である、または、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上であるか否かの判定(
図6のステップS19)に変えてもよい。そして、ステップS19の判定がYESであって、冷却水温が判定水温以上である、または、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合に、グリルシャッター50を開き(ステップS10を実施し)、ステップS19の判定がNOであって冷却水温が判定水温未満であり、且つ、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合に、グリルシャッター50を開く(ステップS11を実施する)ようにしてもよい。なお、
図6のフローチャートにおいてステップS19を除く他のステップS1~8、S10およびS11は、
図5のフローチャートと同様のステップである。
【0061】
このようにすれば、冷却水温が判定水温未満で、且つ、出ガスの温度が目標吸気温度未満であって、吸気中に凝縮水が発生する可能性がより高いときにのみグリルシャッター50が閉じられることになる。そのため、吸気中に凝縮水が発生するのを確実に抑制しつつ、グリルシャッター50が閉じられることに伴って冷却水が過度に昇温されるのを防止できる。
【0062】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る車両の吸気冷却装置が搭載された車両における吸気冷却システムA1およびエンジンシステムA2を示した概略構成図である。第2実施形態は、第1実施形態と異なり、冷却水回路20に、ラジエータ31をバイパスするバイパス通路23と、バイパス通路23を開閉するバイパスバルブ24が設けられている。また、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、グリルシャッター50の開閉制御が実施されないようになっている。この相違点を除く他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
図9の例では、バイパス通路23は、第2冷却水通路22のうちATFクーラ41よりも下流側且つ合流部20bよりも上流側の部分と、冷却水回路20のうちラジエータ31よりも下流側且つウォーターポンプ32よりも上流側の部分とをつないでおり、第2冷却水通路22内の冷却水がバイパス通路23に流入するようになっている。
【0064】
第1冷却水通路21を通過した冷却水は第1実施形態と同様にラジエータ31を通り冷却される。一方、バイパスバルブ24が開弁しているとき、第2冷却水通路22内の冷却水であってHEV機器40およびATFクーラ41において昇温された冷却水は、バイパス通路23に流入し、ラジエータ31を迂回する。第1冷却水通路21を通過した冷却水と、バイパス通路23を通過した冷却水とは、冷却水回路20のうちのウォーターポンプ32よりも上流側の部分で合流する。前記のように、バイパス通路23を通過した冷却水はラジエータ31を迂回しており高温に維持される。これより、バイパスバルブ24が開弁したときは、バイパスバルブ24が閉弁してすべての冷却水がラジエータ31により冷却される場合よりも、冷却水回路20を流れる冷却水は高温になる。
【0065】
図10に示すように、バイパスバルブ24はECU90によって制御される。具体的には、ECU90は、バイパスバルブ24を全閉と全開とに切り替える。
【0066】
第2実施形態では、このようにバイパスバルブ24を開弁させることで冷却水の温度を高くし、これより、吸気中での凝縮水の生成を抑制する。
【0067】
具体的には、
図11のフローチャートに示すように、第2実施形態でも、第1実施形態と同じステップS1~ステップS9を実施する。すなわち、第2実施形態でも、ECU90は、入ガス温度、冷却水温および吸気量に基づいて第1冷却水流量および第2冷却水流量を算出するとともに第2目標冷却水流量を算出する。そして、ECU90は、第1冷却水量が第2冷却水量以上の場合は第1冷却水流量を第1目標冷却水量に設定し、第1冷却水量が第2冷却水量未満の場合は第2冷却水流量を第1目標冷却水量に設定する。
【0068】
一方、第2実施形態では、ステップS9の判定がYESであって冷却水温が判定水温以上の場合は、ECU90はステップS20にてバイパスバルブ24を閉弁させ、ステップS9の判定がNOであって冷却水温が判定水温未満の場合は、ステップS22にてバイパスバルブ24を開弁させる。ステップS20、S21の後は、ステップS1に戻る。
【0069】
(作用等)
以上のように、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合に、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第1冷却水流量になるようにウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とが制御される。そのため、インタークーラ内水温を冷却水上限温度未満にしてインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制しつつ、インタークーラ10から導出される吸気の温度を目標吸気温度に制御できる。また、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合には、インタークーラ10に供給される冷却水の流量が第2冷却水流量になるようにウォーターポンプ32と流量調整バルブ33とが制御される。そのため、この場合においても、インタークーラ内水温が冷却水上限温度以上になるのを抑制してインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制できる。これより、インタークーラ10内での冷却水の沸騰を確実に抑制でき、インタークーラ10の損傷を防止できる。
【0070】
また、冷却水温が判定水温未満であってインタークーラ10内で冷却水によって吸気が過度に冷却されて吸気中に凝縮水が発生する可能性の高いときに、バイパスバルブ24が開弁されて、冷却水回路20中の冷却水が昇温される。従って、第2冷却水流量に基づいて冷却水量調整手段を制御した場合であっても、冷却水による吸気の過度な冷却および凝縮水の発生を抑制できる。
【0071】
このように、第2実施形態では、インタークーラ10に導入される冷却水の流量の調整によってインタークーラ10内での冷却水の沸騰を抑制しつつ、この冷却水の沸騰抑制に伴う吸気内での凝縮水の発生をバイパスバルブ24の開弁よって抑制している。これより、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、吸気内での凝縮水の発生を抑制するために吸気に導入されるEGRガスの割合を低減する必要がなく、あるいは、この低減量を少なくでき、排ガス性能の悪化を抑制しながら、インタークーラ10内での冷却水の沸騰と吸気内での凝縮水の発生とを抑止できる。
【0072】
(変形例)
前記第2実施形態では、冷却水温が判定水温以上であるか否かに応じてバイパスバルブ24を開閉するか否かを決定した場合を説明したが、この判定に加えて第1冷却水流量が第2冷却水流量未満であるか否かに基づいてバイパスバルブ24の開閉を行ってもよい。
【0073】
具体的には、
図11のフローチャートに変えて
図12のフローチャートに示す制御を実施し、前記実施形態におけるステップS9の判定を、冷却水温が判定水温以上である、または、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上であるか否かの判定(
図12のステップS39)に変えてもよい。そして、ステップS39の判定がYESであって、冷却水温が判定水温以上である、または、第1冷却水流量が第2冷却水流量以上の場合に、バイパスバルブ24を閉じ(ステップS20を実施し)、ステップS39の判定がNOであって冷却水温が判定水温未満であり、且つ、第1冷却水流量が第2冷却水流量未満の場合に、バイパスバルブ24を閉じる(ステップS21を実施する)ようにしてもよい。なお、
図12のフローチャートにおいてステップS39を除く他のステップS1~8、S20およびS21は、
図11のフローチャートと同様のステップである。
【0074】
このようにすれば、冷却水温が判定水温未満で、且つ、出ガスの温度が目標吸気温度未満であって、吸気中に凝縮水が発生する可能性がより高いときにのみバイパスバルブ24が閉じられることになる。そのため、吸気中に凝縮水が発生するのを確実に抑制しつつ、バイパスバルブ24が閉じられることに伴って冷却水が過度に昇温されるのを防止できる。
【0075】
前記第2実施形態では、バイパス通路23が、第2冷却水通路22のATFクーラ41の下流側の部分と、冷却水回路20のラジエータ31とウォーターポンプ32の間の部分とを連通する場合を説明したが、バイパス通路23はラジエータ31をバイパスする通路であればよく、その配置は前記に限らない。例えば、冷却水回路20のうち前記の合流部20bとラジエータ31の間の部分と、ラジエータ31とウォーターポンプ32の間の部分とを連通するようにバイパス通路23を設けてもよい。
【0076】
(第1実施形態および第2実施形態の変形例)
前記各実施形態では、冷却水回路20にインタークーラ10に加えてHEV機器40とATFクーラ41とが設けられた場合を説明したが、冷却水回路20にインタークーラ10以外に設けられる機器はこれに限らない。例えば、排気通路3に尿素を噴射する尿素インジェクタが設けられるエンジンシステムにおいてこの尿素インジェクタを冷却水回路20上に設けて、冷却水によって尿素インジェクタが冷却されるように構成してもよい。また、HEV機器40とATFクーラ41とを省略してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン本体
2 吸気通路
10 インタークーラ
20 冷却水回路
23 バイパス通路(第2実施形態)
24 バイパスバルブ(第2実施形態)
31 ラジエータ
32 ウォーターポンプ(流量調整手段)
33 流量制御バルブ(流量調整手段)
50 グリルシャッター(第1実施形態)
90 ECU(制御手段)
91 第1算出部
92 第2算出部