(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
(21)【出願番号】P 2020115449
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 祥太
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-190604(JP,A)
【文献】特開2004-312816(JP,A)
【文献】特表2006-508847(JP,A)
【文献】特開2014-029141(JP,A)
【文献】特開2007-026696(JP,A)
【文献】特開2011-078313(JP,A)
【文献】特開2020-045783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための駆動力を発生するエンジンを予め設定されている停止条件が成立したときに停止させるアイドルストップを実行し、前記アイドルストップ後の前記エンジンを予め設定されている再始動条件が成立したときに再始動させるアイドルストップ制御部と、前記エンジンを停止後に再始動する際に当該エンジンを始動させるスタータに電力を供給するバッテリと、前記エンジンの動力を用いて発電し前記バッテリを充電する発電機とを有する車両の制御装置であって、
前記エンジンを始動したときの前記バッテリの最低電圧である始動時最低電圧がアイドルストップ禁止判定閾値を下回った場合に前記アイドルストップを禁止するアイドルストップ禁止部と、
前記アイドルストップ禁止部により前記アイドルストップが禁止された後で、前記バッテリが充電されて満充電になったと判定された場合に、前記アイドルストップの禁止を解除するアイドルストップ禁止解除部と、
前記バッテリの放電量を所定の目標放電量に近づくように制御する放電量制御部と、
前記始動時最低電圧が前記アイドルストップ禁止判定閾値よりも高い電圧の第1の放電量制限判定閾値を下回った場合に前記目標放電量を充電側に設定し、前記始動時最低電圧が前記第1の放電量制限判定閾値よりも高い電圧の第2の放電量制限判定閾値を上回った場合に前記目標放電量を放電側に設定する目標バッテリ放電量設定部と、を備え
、
前記目標バッテリ放電量設定部は、前記始動時最低電圧が前記第1の放電量制限判定閾値を下回った場合に前記目標放電量の前回値から第1の所定値を減算して前記目標放電量とし、前記始動時最低電圧が前記第2の放電量制限判定閾値を上回った場合に前記目標放電量の前回値に第2の所定値を加算して前記目標放電量とし、前記エンジンを再始動する度に前記目標放電量を計算し、
前記始動時最低電圧が前記第2の放電量制限判定閾値を上回り、前記目標放電量の前回値に前記第2の所定値を加算すると前記バッテリの放電上限量を超える場合に、前記目標放電量を満充電レベルと放電上限量との間の値である初期状態とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記アイドルストップ禁止部は、前記アイドルストップを禁止した場合に、前記バッテリが充電状態になるように制御する請求項
1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その運行の初回始動時にバッテリ電圧に基づいてバッテリ出力の低下を判定するバッテリ出力低下判定部と、バッテリ出力が低下していると判定したときにアイドルストップを禁止するアイドルストップ禁止部とを備えることが記載されている。さらに、バッテリ充電量が内燃機関の再始動に必要な出力を発生し得る充電量として予め設定した禁止解除用判定値以上となった場合にアイドルストップの禁止を解除する禁止解除部を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バッテリが劣化してバッテリの実容量が低下すると、満充電から少し放電しただけであってもエンジン始動性能が大きく低下してしまい、アイドルストップ状態からのエンジン再始動に失敗する可能性があるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリの始動性能低下によるエンジン再始動不良を抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、車両が走行するための駆動力を発生するエンジンを予め設定されている停止条件が成立したときに停止させるアイドルストップを実行し、前記アイドルストップ後の前記エンジンを予め設定されている再始動条件が成立したときに再始動させるアイドルストップ制御部と、前記エンジンを停止後に再始動する際に当該エンジンを始動させるスタータに電力を供給するバッテリと、前記エンジンの動力を用いて発電し前記バッテリを充電する発電機とを有する車両の制御装置であって、前記エンジンを始動したときの前記バッテリの最低電圧である始動時最低電圧がアイドルストップ禁止判定閾値を下回った場合に前記アイドルストップを禁止するアイドルストップ禁止部と、前記アイドルストップ禁止部により前記アイドルストップが禁止された後で、前記バッテリが充電されて満充電になったと判定された場合に、前記アイドルストップの禁止を解除するアイドルストップ禁止解除部と、前記バッテリの放電量を所定の目標放電量に近づくように制御する放電量制御部と、前記始動時最低電圧が前記アイドルストップ禁止判定閾値よりも高い電圧の第1の放電量制限判定閾値を下回った場合に前記目標放電量を充電側に設定し、前記始動時最低電圧が前記第1の放電量制限判定閾値よりも高い電圧の第2の放電量制限判定閾値を上回った場合に前記目標放電量を放電側に設定する目標バッテリ放電量設定部と、を備え、前記目標バッテリ放電量設定部は、前記始動時最低電圧が前記第1の放電量制限判定閾値を下回った場合に前記目標放電量の前回値から第1の所定値を減算して前記目標放電量とし、前記始動時最低電圧が前記第2の放電量制限判定閾値を上回った場合に前記目標放電量の前回値に第2の所定値を加算して前記目標放電量とし、前記エンジンを再始動する度に前記目標放電量を計算し、前記始動時最低電圧が前記第2の放電量制限判定閾値を上回り、前記目標放電量の前回値に前記第2の所定値を加算すると前記バッテリの放電上限量を超える場合に、前記目標放電量を満充電レベルと放電上限量との間の値である初期状態とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、バッテリの始動性能低下によるエンジン再始動不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置のエンジンの始動時における電圧挙動のイメージを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の第1の放電量制限判定閾値及び第2の放電量制限判定閾値のエンジンの冷却水温による変更例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の目標放電量設定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の目標放電量計算処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の目標放電量設定処理による目標放電量及びバッテリ放電量の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、車両が走行するための駆動力を発生するエンジンを予め設定されている停止条件が成立したときに停止させるアイドルストップを実行し、アイドルストップ後のエンジンを予め設定されている再始動条件が成立したときに再始動させるアイドルストップ制御部と、エンジンを停止後に再始動する際にエンジンを始動させるスタータに電力を供給するバッテリと、エンジンの動力を用いて発電しバッテリを充電する発電機とを有する車両の制御装置であって、エンジンを始動したときのバッテリの最低電圧である始動時最低電圧がアイドルストップ禁止判定閾値を下回った場合にアイドルストップを禁止するアイドルストップ禁止部と、アイドルストップ禁止部によりアイドルストップが禁止された後で、バッテリが充電されて満充電になったと判定された場合に、アイドルストップの禁止を解除するアイドルストップ禁止解除部と、バッテリの放電量を所定の目標放電量に近づくように制御する放電量制御部と、始動時最低電圧がアイドルストップ禁止判定閾値よりも高い電圧の第1の放電量制限判定閾値を下回った場合に目標放電量を充電側に設定し、始動時最低電圧が第1の放電量制限判定閾値よりも高い電圧の第2の放電量制限判定閾値を上回った場合に目標放電量を放電側に設定する目標バッテリ放電量設定部と、を備えるよう構成されている。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、バッテリの始動性能低下によるエンジン再始動不良を抑制することができる。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両の制御装置について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両1は、エンジン2と、スタータ3と、バッテリ4と、発電機5と、制御装置6とを含んで構成される。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0014】
エンジン2には、スタータ3が連結されている。スタータ3は、図示しないベルトを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。スタータ3は、電力が供給されることにより回転することでクランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与える。
【0015】
バッテリ4は、例えば鉛電池で構成されている。バッテリ4は、スタータ3や制御装置6などの車両1の電気負荷に電力を供給する。バッテリ4には、例えば、バッテリ4のマイナス側のコネクタ部に装着され、バッテリ4の電流を検出して、その検出値を制御装置6に出力するバッテリ電流センサ12が設けられている。
発電機5は、エンジン2の動力を用いて発電しバッテリ4を充電する。
【0016】
制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0017】
このコンピュータユニットのROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置6として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御装置6として機能する。
【0018】
制御装置6の入力ポートには、前述したバッテリ電流センサ12に加え、エンジン水温センサ11等の各種センサ類が接続されている。
エンジン水温センサ11は、エンジンの冷却水の温度を検出する。
【0019】
制御装置6は、図示しないエンジン制御装置と通信可能に構成されている。制御装置6は、エンジン制御装置から、スタータ3が駆動されたことを通知するスタータ駆動信号を受信する。制御装置6は、エンジン2の停止を要求するアイドルストップ要求やエンジン2の再始動を要求する再始動要求をエンジン制御装置に送信する。
【0020】
制御装置6は、予め設定された停止条件が成立したときにエンジン2を停止させ、その後、予め設定された再始動条件が成立したときにエンジン2を再始動させるアイドルストップを制御するアイドルストップ制御部61としての機能を有する。
【0021】
停止条件としては、例えば、車速が所定車速以下であること、ブレーキペダルが踏み込まれたこと、バッテリ4の充電量が所定値以上であること、などの全てが成立したことを条件とする。
【0022】
再始動条件としては、例えば、発進に適したシフト位置であること、ブレーキペダルの踏み込みがないこと、などのいずれか一つやいずれかの組み合わせの全てが成立したことを条件とする。
【0023】
制御装置6は、バッテリ4の電圧を検出するバッテリ電圧検出部62としての機能を有する。
【0024】
制御装置6は、エンジン2を始動したときのバッテリ4の電圧の最低電圧である始動時最低電圧Vminが、アイドルストップ禁止判定閾値V2を下回った場合にアイドルストップ制御部61によるエンジン2の停止(以下、「アイドルストップ」という)を禁止するアイドルストップ禁止部63としての機能を有する。制御装置6は、アイドルストップが禁止された場合には、バッテリ4が充電されるように制御する。
【0025】
制御装置6は、アイドルストップ禁止部63によりアイドルストップが禁止された後で、バッテリ4が充電されて満充電になったと判定された場合にアイドルストップの禁止を解除するアイドルストップ禁止解除部64としての機能を有する。
【0026】
制御装置6は、バッテリ4の状態に応じて目標放電量を設定する目標バッテリ放電量設定部65としての機能を有する。制御装置6は、バッテリ4の放電量を、目標放電量に近づくように制御する放電量制御部66としての機能を有する。
【0027】
制御装置6は、始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合に目標放電量を充電側に(放電が少なくなるように)設定する。制御装置6は、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合に目標放電量を放電側に(放電が多くなるように)設定する。
【0028】
第1の放電量制限判定閾値V1a及び第2の放電量制限判定閾値V1bは、アイドルストップ禁止判定閾値V2よりも高い電圧に設定される。第2の放電量制限判定閾値V1bは、第1の放電量制限判定閾値V1aよりも高い電圧に設定される。
【0029】
エンジン2始動時のバッテリ4の電圧は、
図2に示すように低下する。このときの最低電圧である始動時最低電圧Vminによって、アイドルストップが禁止されたり、バッテリ4の目標放電量が変更されたりする。
【0030】
第1の放電量制限判定閾値V1a及び第2の放電量制限判定閾値V1bは、エンジン2の冷却水の温度に応じて、値を変えてもよい。第1の放電量制限判定閾値V1a及び第2の放電量制限判定閾値V1bは、
図3に示すように、エンジン2の冷却水の温度が高いほど、高い電圧にするとよい。
【0031】
制御装置6は、例えば、始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合には、目標放電量の前回値から第1の所定値Aを減算する。
【0032】
制御装置6は、例えば、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合には、目標放電量の前回値に第2の所定値Bを加算する。
【0033】
目標放電量の前回値とは、前回の目標放電量の計算で算出された目標放電量であり、現在の目標放電量である。
【0034】
第1の所定値Aと第2の所定値Bは、同じ値でも良いし、別々の値でもよい。第1の所定値Aと第2の所定値Bは、バッテリ4の特性に応じて設定される。
【0035】
制御装置6は、例えば、バッテリ4の放電量が第3の所定値Cと等しくなった場合には、バッテリ4は満充電レベルとなったと判定する。
【0036】
制御装置6は、例えば、バッテリ4の放電量が第4の所定値Dよりも放電側にあるときに、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合には、目標放電量を初期状態とし、バッテリ4の放電量を満充電レベルから放電上限量の範囲とする。第4の所定値Dは、放電上限量近傍の値であり、例えば、放電上限量-B<D<放電上限量とする。放電上限量は、バッテリ4の放電量の上限量である。
【0037】
制御装置6は、例えば、目標放電量を初期状態とするとき、目標放電量を第5の所定値Eとする。第5の所定値Eは、満充電レベルと放電上限量との間の値であって、バッテリ4の状態により算出される。
【0038】
以上のように構成された本実施例に係る車両の制御装置による目標放電量設定処理について、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、以下に説明する目標放電量設定処理は、エンジン2が始動され完爆状態になったと判定されたときに開始される。
【0039】
ステップS1において、制御装置6は、始動時最低電圧Vminがアイドルストップ禁止判定閾値V2を下回ったか否かを判定する。
【0040】
始動時最低電圧Vminがアイドルストップ禁止判定閾値V2を下回ったと判定した場合には、制御装置6は、ステップS2の処理を実行する。始動時最低電圧Vminがアイドルストップ禁止判定閾値V2を下回っていないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS4の処理を実行する。
【0041】
ステップS2において、制御装置6は、IS禁止/満充電判定を成立とする。ステップS2の処理を実行した後、制御装置6は、ステップS3の処理を実行する。
【0042】
ステップS3において、制御装置6は、放電制限レベルUP判定を成立とする。ステップS3の処理を実行した後、制御装置6は、ステップS8の処理を実行する。
【0043】
ステップS4において、制御装置6は、始動時最低電圧Vminが第1の放電量制限判定閾値V1aを下回ったか否かを判定する。
【0044】
始動時最低電圧Vminが第1の放電量制限判定閾値V1aを下回ったと判定した場合には、制御装置6は、ステップS5の処理を実行する。始動時最低電圧Vminが第1の放電量制限判定閾値V1aを下回っていないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS6の処理を実行する。
【0045】
ステップS5において、制御装置6は、放電制限レベルUP判定を成立とする。ステップS5の処理を実行した後、制御装置6は、ステップS8の処理を実行する。
【0046】
ステップS6において、制御装置6は、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回ったか否かを判定する。
【0047】
始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回ったと判定した場合には、制御装置6は、ステップS7の処理を実行する。始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っていないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS8の処理を実行する。
【0048】
ステップS7において、制御装置6は、放電制限レベルDOWN判定を成立とする。ステップS7の処理を実行した後、制御装置6は、ステップS8の処理を実行する。
【0049】
ステップS8において、制御装置6は、
図5に示す目標放電量計算処理を実行する。ステップS8の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量設定処理を終了する。
【0050】
図4のステップS8における目標放電量計算処理について
図5を参照して説明する。
【0051】
ステップS21において、制御装置6は、バッテリ4が満充電レベルとなりバッテリ満充電完了となったか否かを判定する。
【0052】
バッテリ満充電完了となったと判定した場合には、制御装置6は、ステップS22の処理を実行する。バッテリ満充電完了となっていないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS24の処理を実行する。
【0053】
ステップS22において、制御装置6は、IS禁止/満充電判定を解除する。ステップS22の処理を実行した後、制御装置6は、ステップS23の処理を実行する。
【0054】
ステップS23において、制御装置6は、目標放電量を第3の所定値Cとする。ステップS23の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量設定処理を終了する。
【0055】
ステップS24において、制御装置6は、放電制限レベルUP判定が成立しているか否かを判定する。
【0056】
放電制限レベルUP判定が成立していると判定した場合には、制御装置6は、ステップS25の処理を実行する。放電制限レベルUP判定が成立していないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS26の処理を実行する。
【0057】
ステップS25において、制御装置6は、目標放電量を前回値-第1の所定値Aとする。ステップS25の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量計算処理を終了する。
【0058】
ステップS26において、制御装置6は、放電制限レベルDOWN判定が成立しているか否かを判定する。
【0059】
放電制限レベルDOWN判定が成立していると判定した場合には、制御装置6は、ステップS27の処理を実行する。放電制限レベルDOWN判定が成立していないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS30の処理を実行する。
【0060】
ステップS27において、制御装置6は、バッテリ4の放電量が第4の所定値Dより大きいか否かを判定する。
【0061】
バッテリ4の放電量が第4の所定値Dより大きいと判定した場合には、制御装置6は、ステップS29の処理を実行する。バッテリ4の放電量が第4の所定値Dより大きくないと判定した場合には、制御装置6は、ステップS28の処理を実行する。
【0062】
ステップS28において、制御装置6は、目標放電量を前回値+第2の所定値Bとする。ステップS28の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量計算処理を終了する。
【0063】
ステップS29において、制御装置6は、目標放電量を第5の所定値Eとする。ステップS29の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量計算処理を終了する。
【0064】
ステップS30において、制御装置6は、目標放電量を前回値とする。ステップS30の処理を実行した後、制御装置6は、目標放電量計算処理を終了する。
【0065】
このような目標放電量設定処理による動作について
図6を参照して説明する。
時刻t1においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っているため、放電制限レベルDOWN判定が成立し、目標放電量は前回値+第2の所定値Bとされる。
【0066】
時刻t2においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第1の放電量制限判定閾値V1aを下回っているため、放電制限レベルUP判定が成立し、目標放電量は前回値-第1の所定値Aとされる。
【0067】
時刻t3においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminがアイドルストップ禁止判定閾値V2を下回っているため、IS禁止/満充電判定が成立し、バッテリ4が充電される。また、放電制限レベルUP判定が成立し、目標放電量は前回値-第1の所定値Aとされる。
【0068】
時刻t4において、バッテリ4の放電量が第3の所定値Cと等しくなると、バッテリ4は満充電レベルとなったと判定され、バッテリ満充電完了が成立し、IS禁止/満充電判定が解除され、目標放電量は第3の所定値Cとされる。
【0069】
時刻t5においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っているため、放電制限レベルDOWN判定が成立し、目標放電量は前回値+第2の所定値Bとされる。
【0070】
時刻t6においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っているため、放電制限レベルDOWN判定が成立し、目標放電量は前回値+第2の所定値Bとされる。
【0071】
時刻t7においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っているため、放電制限レベルDOWN判定が成立し、目標放電量は前回値+第2の所定値Bとされる。
【0072】
このような処理が繰り返され、時刻t8において、目標放電量が第4の所定値Dよりも大きくなる。
【0073】
時刻t9においてエンジン2が始動され、始動時最低電圧Vminが第2の放電量制限判定閾値V1bを上回っており、バッテリ4の放電量が第4の所定値Dを上回っているため、目標放電量は初期状態とされ、第5の所定値Eとされる。
【0074】
このように、本実施例では、制御装置6は、エンジン2を始動したときのバッテリ4の電圧の最低電圧である始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合に目標放電量を充電側に設定し、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合に目標放電量を放電側に設定する。
【0075】
始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合に目標放電量を充電側に設定するため、バッテリ4の始動性能低下によるエンジン再始動不良を抑制することができる。
【0076】
始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合に目標放電量を充電側に設定するため、始動時最低電圧Vminがアイドルストップ禁止判定閾値V2を下回る回数を減らすことができる。このため、アイドルストップ実行頻度を確保することができる。
【0077】
始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合に目標放電量を放電側に設定するため、発電頻度を減らすことができる。このため、アイドルストップ実行頻度を確保することができる。
【0078】
また、制御装置6は、始動時最低電圧Vminが、第1の放電量制限判定閾値V1aを下回った場合には、目標放電量の前回値から第1の所定値Aを減算し、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合には、目標放電量の前回値に第2の所定値Bを加算し、エンジン2を再始動する度に目標放電量を計算する。
【0079】
これにより、目標放電量によりバッテリ4の放電量を適切に管理することができる。このため、エンジン再始動不良を抑制し、アイドルストップ実行頻度を確保することができる。
【0080】
また、制御装置6は、バッテリ4の放電量が放電上限量近傍の第4の所定値Dよりも放電側にあるときに、始動時最低電圧Vminが、第2の放電量制限判定閾値V1bを上回った場合には、目標放電量を初期状態とし、バッテリ4の放電量を満充電レベルから放電上限量の範囲とする。
【0081】
これにより、目標放電量の範囲を広く使うことができ、バッテリ4の放電量を広い範囲で管理することができる。
【0082】
また、制御装置6は、アイドルストップが禁止された場合には、バッテリ4が充電されるように制御する。
【0083】
これにより、バッテリ4を早期に満充電にして、アイドルストップ禁止を早期に解除させることができる。
【0084】
なお、本実施例においては、アイドルストップの再始動時に目標放電量設定処理を実行したが、エンジン2の初回始動時にも(エンジン2の始動時に毎回)目標放電量設定処理を実行するようにしてもよい。
【0085】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御装置6が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0086】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
2 エンジン
3 スタータ
4 バッテリ
5 発電機
6 制御装置
11 エンジン水温センサ
12 バッテリ電流センサ
61 アイドルストップ制御部
62 バッテリ電圧検出部
63 アイドルストップ禁止部
64 アイドルストップ禁止解除部
65 目標バッテリ放電量設定部
66 放電量制御部