(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/18 20060101AFI20240618BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20240618BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A45D29/18
B41J3/407
B41J2/01 109
(21)【出願番号】P 2020120282
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知幸
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232039(JP,A)
【文献】特開2018-001674(JP,A)
【文献】特開2018-111211(JP,A)
【文献】特開2015-214133(JP,A)
【文献】特開2017-056190(JP,A)
【文献】特開2013-022113(JP,A)
【文献】特開2013-022114(JP,A)
【文献】特開2012-179320(JP,A)
【文献】特開2013-192805(JP,A)
【文献】特開2016-174730(JP,A)
【文献】特開2014-023729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/18
B41J 3/407
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御手段と、
を備え
、
前記複数の印刷手段は、同一のキャリッジに搭載されるとともに、当該キャリッジの走査方向に並設されており、
前記複数の指置き部は、前記複数の印刷手段の並設方向に並設されており、
前記複数の印刷手段は、下地を印刷する下地用ヘッドと、下地の上にデザインを印刷するデザイン用ヘッドとを含み、
前記下地用ヘッドは、前記キャリッジのうち、前記デザイン用ヘッドよりも前記並設方向の一方側に配置され、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部のうち、他方側の1つを除く残りの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部の全てを含む範囲であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記指置き部は2つ設けられ、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、2つの指置き部のうち、一方側の1つの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、2つの指置き部を含む範囲である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御手段は、
一方側の指置き部に配置された第1の指の爪に、前記下地用ヘッドにより下地印刷を行い、
他方側の指置き部に配置された前記第1の指の爪に対する前記デザイン用ヘッドによるデザイン印刷と、一方側の指置き部に配置された第2の指の爪に対する前記下地用ヘッドによる下地印刷とを、並行して行い、
一方側の指置き部に配置された前記第2の指の爪に、前記デザイン用ヘッドによるデザイン印刷を行う、
ことを特徴とする請求項
2に記載の印刷装置。
【請求項4】
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
を備える印刷装置の制御手段が、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御工程を実行する、
ことを特徴とする印刷方法
であって、
前記複数の印刷手段は、同一のキャリッジに搭載されるとともに、当該キャリッジの走査方向に並設されており、
前記複数の指置き部は、前記複数の印刷手段の並設方向に並設されており、
前記複数の印刷手段は、下地を印刷する下地用ヘッドと、下地の上にデザインを印刷するデザイン用ヘッドとを含み、
前記下地用ヘッドは、前記キャリッジのうち、前記デザイン用ヘッドよりも前記並設方向の一方側に配置され、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部のうち、他方側の1つを除く残りの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部の全てを含む範囲であることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
を備える印刷装置のコンピュータを、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御手段として機能させる、
ことを特徴とするプログラム
であって、
前記複数の印刷手段は、同一のキャリッジに搭載されるとともに、当該キャリッジの走査方向に並設されており、
前記複数の指置き部は、前記複数の印刷手段の並設方向に並設されており、
前記複数の印刷手段は、下地を印刷する下地用ヘッドと、下地の上にデザインを印刷するデザイン用ヘッドとを含み、
前記下地用ヘッドは、前記キャリッジのうち、前記デザイン用ヘッドよりも前記並設方向の一方側に配置され、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部のうち、他方側の1つを除く残りの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部の全てを含む範囲であることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)として、ベース層を爪表面に形成し、その上にアートデザイン層を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような多層の塗布(印刷)を行う場合、単層の印刷時と比べて処理時間は当然に長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、多層の印刷を効率的に行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御手段と、
を備え、
前記複数の印刷手段は、同一のキャリッジに搭載されるとともに、当該キャリッジの走査方向に並設されており、
前記複数の指置き部は、前記複数の印刷手段の並設方向に並設されており、
前記複数の印刷手段は、下地を印刷する下地用ヘッドと、下地の上にデザインを印刷するデザイン用ヘッドとを含み、
前記下地用ヘッドは、前記キャリッジのうち、前記デザイン用ヘッドよりも前記並設方向の一方側に配置され、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部のうち、他方側の1つを除く残りの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部の全てを含む範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多層の印刷を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態における印刷装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態における印刷装置及びこれと連携する端末装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図3】本実施形態における2つの印刷ヘッド及びその周辺の概略構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る印刷処理を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る印刷処理を説明するための図である。
【
図7】本実施形態の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から
図6を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0009】
図1は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリント装置)の外観を示す斜視図である。また本実施形態では、印刷装置が端末装置と連携して爪に印刷を行う場合を例示する。
図2は、印刷装置及びこれと連携する端末装置の要部制御構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態において、印刷装置1は、
図1に示すように、ほぼ箱形に形成された筐体11を有している。
筐体11の上面(天板)には操作部12が設置されている。
操作部12は、ユーザが各種入力を行う操作部である。
操作部12は、例えば、印刷装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦で構成されている。
操作部12が操作されると操作に応じた操作信号が制御装置30(
図2参照)に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。
なお、操作部12に代えて、後述する端末装置7の操作部71から入力された操作信号に従って印刷装置1の各部が動作するようにしてもよい。
【0011】
また、筐体11の上面(天板)には、表示部13が設けられている。
表示部13は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のフラットディスプレイ等で構成されている。表示部13は、ユーザが操作部12等から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等を適宜表示させる。
なお、表示部13の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部12として機能する。
【0012】
また、印刷装置1は通信部14(
図2参照)を備えている。通信部14は、端末装置7との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と端末装置7との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。通信部14は端末装置7の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
通信部14は、後述する制御装置30の通信制御部311(
図2参照)に接続され、該通信制御部311によって制御される。
【0013】
印刷装置1の筐体11の前面側(
図1においてY方向の手前側)には、印刷装置1による印刷時に印刷指Uを個別に載置・保持する2つの指保持部2が、装置の左右方向(
図1におけるX方向)に並設されている。ここで印刷指Uとは、印刷部40による印刷対象となる爪Tに対応する指である(
図3参照)。
2つの指保持部2は、装置の前後方向(
図1におけるY方向)の手前側であって装置の左右方向(
図1におけるX方向)のほぼ中央部に配置されている。
各指保持部2は、筐体11の前面に形成された指挿入口15の内部に設けられている。筐体11の内部は、仕切り板16によって上下に仕切られており、各指保持部2は、仕切り板16の上側であって指挿入口15に対応する位置に設けられている。
【0014】
各指保持部2の下側、すなわち、仕切り板16の上には、印刷指Uが配置される指置き部21が設けられている。
指置き部21は、印刷指Uを下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。なお、指置き部21は、印刷指Uを下側から支持し得るものであればよく、その構成は特に限定されない。例えば、ばね等の弾性部材によって下方から付勢されていてもよい。また、例えば、指置き部21は、内圧を変化させることにより膨縮可能に構成されており、膨張状態において印刷指Uを押し上げ、その位置を固定する構成としてもよい。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の印刷装置1は、印刷指Uの爪T(爪Tの表面)に印刷を施す印刷部40と、爪Tを含む印刷指Uの画像を取得する撮影部50と、制御装置30等とを備える。
【0016】
撮影部50は、撮影装置51と、照明装置52とを備えている。
撮影装置51は、例えば200万画素程度以上の画素を有する固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部50は、2つの指保持部2(指置き部21)に載置された印刷指Uの爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮影装置51によってその印刷指Uを撮影して、印刷指Uの爪Tの画像である爪画像(爪画像を含む指の画像)を得る。
なお、撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部32に記憶されてもよい。また、撮影部50によって取得された爪画像は、通信部14を介して端末装置7に送られてもよい。また、撮影部50は、2つの指保持部2の爪Tを同時に撮影及び照明可能な1組の撮影装置51及び照明を備えていてもよいし、2つの指保持部2に対応した2組の撮影装置51及び照明装置52を備えていてもよい。
【0017】
撮影部50は、指保持部2(指置き部21)に保持された印刷指Uを撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置は特に限定されない。本実施形態では、撮影装置51及び照明装置52は、筐体11の天面内側であって指保持部2に保持された印刷指Uの爪Tと対向可能な位置に固定配置されている。
なお、撮影部50は、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構49によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0018】
印刷部40は、爪Tの上(すなわち、爪表面の上方)を移動しながら爪表面に印刷を行う2つの印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41をX方向及びY方向に移動させるためのヘッド移動機構49等を備えている。
2つの印刷ヘッド41は、共通のキャリッジ42に搭載された状態で、当該キャリッジ42をX方向及びY方向に移動(走査)させるためのX方向移動ステージ及びY方向移動ステージに支持されている。ヘッド移動機構49は、2つの印刷ヘッド41(キャリッジ42)をX方向及びY方向に適宜移動させるための駆動部としてのX方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等を備えて構成されている。キャリッジ42に搭載された2つの印刷ヘッド41は、X方向移動ステージ及びY方向移動ステージに設けられたX方向ガイド461(
図3参照)及びY方向ガイド(図示省略)に沿って、X方向及びY方向に移動する。
2つの印刷ヘッド41の構成の詳細については後述する。
【0019】
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部31(
図2参照)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0020】
記憶部32には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的に、記憶部32には、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されるプログラム記憶領域321、爪Tに関する各種情報が格納される爪情報記憶領域322等が設けられている。
プログラム記憶領域321に記憶されているプログラムが制御装置30によって実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0021】
制御部31は、機能的に見た場合、通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315、表示制御部316等を備えている。これら通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315、表示制御部316等としての機能は、制御部31のCPUと記憶部32のプログラム記憶領域321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0022】
通信制御部311は、通信部14の動作を制御するものである。本実施形態では、端末装置7との間での通信を制御し、端末装置7からネイルデザインのデータ等が送信された場合にこれを受信する。
また、撮影部50によって爪画像が取得されたときは、爪画像データを端末装置7に送信してもよい。
【0023】
撮影制御部312は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指保持部2(指置き部21)に保持された印刷指Uの爪Tの画像を含む指の画像(以下「爪画像」という。)を撮影させるものである。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、通信部14を介して端末装置7に送信される。なお、画像データは記憶部32に記憶されてもよい。
【0024】
爪情報検出部313は、撮影装置51によって撮影された印刷指Uの爪Tの画像に基づいて、印刷指Uの爪Tについての爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、例えば、爪Tの輪郭(爪形状、爪Tの水平位置のXY座標等)、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等である。なお、撮影装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、以下「爪Tの垂直位置」又は単に「爪Tの位置」ともいう。)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれる。
【0025】
印刷データ生成部314は、爪情報検出部313による検出結果から印刷部40による印刷領域を設定し、印刷用データを生成するものである。
本実施形態では、撮影部50において、印刷対象である爪Tが撮影され、当該爪画像について爪情報検出部313によって爪Tの輪郭等の爪情報が検出される。印刷データ生成部314は、この検出結果に基づいて印刷部40による印刷領域(爪領域)を設定し、印刷用データを生成する。
具体的には、印刷データ生成部314は、この爪領域の形状(爪Tの輪郭形状)に合わせて印刷対象であるユーザによって選択されたネイルデザインの画像データを切り抜き、適宜拡大縮小等を行い、印刷用データを生成する。
なお、爪情報検出部313において爪Tの曲率等が検出された場合には、印刷データ生成部314は、この爪Tの曲率等に基づいて、印刷用データに曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷用データを生成することができる。
【0026】
印刷制御部315は、印刷データ生成部314において生成された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、2つの印刷ヘッド41等を制御する。
【0027】
表示制御部316は、表示部13を制御して表示部13に各種の表示画面を表示させるものである。
本実施形態では、表示制御部316は、例えば爪Tに印刷するデザイン等を表示させる。その他、表示制御部316は、ユーザに対するメッセージや各種指示等を表示部13に表示させてもよい。
【0028】
前述のように、本実施形態では印刷装置1が端末装置7と連携して動作するようになっている。
端末装置7は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置7はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
図2に示すように、端末装置7は、操作部71、表示部72、通信部73及び制御装置80等を備えている。
【0029】
操作部71は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば表示部72の表面に一体的に設けられたタッチパネルである。操作部71が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御装置80に送信される。
表示部72に構成されるタッチパネルには、後述する表示制御部812の制御にしたがって各種の操作画面が表示され、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができる。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部71はタッチパネルである場合に限定されず、例えば各種の操作ボタンやキーボード等が操作部71として設けられていてもよい。
【0030】
本実施形態では、ユーザが操作部71を操作することで、端末装置7から印刷装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置7は印刷装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部71を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザイン(デザイン)を選択すること等ができるようになっている。
【0031】
表示部72は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELD、その他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、前述のように、表示部72の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部71として機能する。
本実施形態では、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部72に表示可能となっている。
【0032】
通信部73は、印刷装置1の通信部14との間で通信可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、前述のように、無線接続方式、有線接続方式のどちらでもよく、具体的な方式は限定されない。通信部73は印刷装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置1の通信部14の通信規格と合致するものが適用される。
【0033】
制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0034】
記憶部82には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置7の各部を統括制御するための動作プログラム821aの他、印刷装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム821b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されており、制御部81がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部81において実行されることによって、端末装置7の各部が統括制御されるようになっている。
【0035】
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納するデザイン記憶領域822等が設けられている。
なお、デザイン記憶領域822に格納されるネイルデザイン(デザイン)は、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。また、端末装置7が各種ネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能な図示しないサーバ装置等に記憶されているネイルデザイン(デザイン)を取り込むことが可能となっていてもよい。
【0036】
端末装置7の制御部81は、機能的に見た場合、通信制御部811、表示制御部812等を備えている。これら通信制御部811、表示制御部812等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。なお、端末装置7の制御部81が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能部を備えていてもよい。
通信制御部811は、通信部73の動作を制御するものである。本実施形態では、印刷装置1との間での通信を制御し、印刷装置1に対してネイルデザインのデータ等を送信する。
また、表示制御部812は、表示部72を制御して表示部72に各種の表示画面を表示させる。
【0037】
図3は、2つの印刷ヘッド41及びその周辺の概略構成を示す図である。
この図に示すように、本実施形態のキャリッジ42には、2つの印刷ヘッド41として、下地を印刷する下地用ヘッド41aと、デザインを印刷するデザイン用ヘッド41bとが搭載されている。
【0038】
下地用ヘッド41aは、デザインを印刷する前に下地となる液剤(以下「下地用インク」という。)を印刷するものである。下地用ヘッド41aによって印刷される下地用インクは、デザインの印刷を行ったときにインクの発色がよくなるように、白色若しくはこれに近い色であることが好ましい。白色等で下地を形成することにより、爪T周辺の皮膚の色(肌色等)との区別もつきやすくなり、爪画像から爪Tの領域を認識しやすくなる。
デザイン用ヘッド41bは、下地用ヘッド41aによる下地印刷後に、デザインを印刷するものであり、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(以下「色インク」という。)を吐出可能となっている。なお、デザイン用ヘッド41bが吐出可能な色インクの種類はこれに限定されず、この他の色のインクを吐出可能となっていてもよい。
【0039】
本実施形態において、下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41bは、いずれも爪表面に対向する下面がインクを吐出させる複数のノズル口(図示せず)を備えたインク吐出面411となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象(爪T)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。
なお、印刷ヘッド41から吐出されるインクは微細な液滴であるため、印刷ヘッド41と爪Tの表面との距離が離れ過ぎているとインクが正しい位置に着弾できず、高精細な印刷を行うことができない。このため、印刷ヘッド41による印刷は、爪表面に対向するインク吐出面が爪表面の上方数mm程度に位置した状態で行われることが好ましい。
【0040】
また、2つの印刷ヘッド41は、2つの指保持部2と同様に、キャリッジ42の走査方向であるX方向に並設されている。本実施形態では、下地用ヘッド41aがキャリッジ42のうちX方向の一方側(以下、「左側」という。)に配置され、デザイン用ヘッド41bがキャリッジ42のうち下地用ヘッド41aよりもX方向の他方側(以下、「右側」という。)に配置されている。
【0041】
また、2つの印刷ヘッド41は、キャリッジ42の可動範囲やキャリッジ42における各々の配置により、各々が印刷を実行可能なX方向の印刷範囲が制限されている。
このうち、X方向における下地用ヘッド41aの印刷範囲Raは、2つの指保持部2の間の位置から、当該2つの指保持部2のうちX方向一端側(左側)の左側指保持部2Lを含んで、それよりも左側の所定位置までとなっている。
一方、X方向におけるデザイン用ヘッド41bの印刷範囲Rbは、左側指保持部2Lの左端から、当該2つの指保持部2を含んで、それよりも右側の所定位置までとなっている。
ただし、これらの印刷範囲Ra、Rbは上述のものに限定されず、下地用ヘッド41aの印刷範囲Raが少なくとも左側指保持部2Lの指置き部21を含み、デザイン用ヘッド41bの印刷範囲Rbが少なくとも2つの指置き部21を含んでいればよい。
【0042】
続いて、本実施形態の印刷装置1による印刷方法(印刷処理)について説明する。
図4は、本実施形態の印刷処理の流れを示すフローチャートである。
本実施形態の印刷装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、印刷装置1の操作部12等を操作して電源を入れ起動させる。
また、端末装置7についても電源を入れて端末装置7の操作部71からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP821bが起動する。
ネイルプリントAP821bが起動すると、端末装置7の表示制御部812は表示部72にネイルデザインの一覧と所望のデザインを選択するよう指示するメッセージ等を表示させる。次にユーザは、タッチパネル、その他の操作部71を操作することで爪Tに印刷するネイルデザインを選択する。これにより、操作信号が制御装置80に送られ、所望のネイルデザインが爪Tに印刷するデザインとして選択される。なお、選択されたネイルデザインの情報は、端末装置7から印刷装置1の制御装置30にも送信される。
【0043】
次に、
図4に示すように、ユーザにより、最初に印刷したい印刷指Uが、印刷装置1の2つの指保持部2のうちの左側指保持部2Lに挿入(載置)されてその指置き部21に配置される(ステップS1)。
【0044】
次に、制御部31の印刷制御部315は、左側指保持部2Lに配置された印刷指Uに対し、下地用ヘッド41aにより下地印刷を行う(ステップS2)。
ここでは、まず、指保持部2(左側指保持部2L)に載置された印刷指Uが撮影部50によって撮影され、爪画像が取得される。そして、爪情報検出部313が、この爪画像について画像処理を行うことにより爪Tの輪郭等の爪情報を検出する。爪情報検出部313によって爪情報が検出されると、印刷データ生成部314はこの爪情報に基づいてネイルデザインのデータを印刷範囲である爪領域に合せ込み、適宜補正等を行って印刷用データを生成する。それから、印刷制御部315は、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48によりキャリッジ42の移動を制御して下地用ヘッド41aを印刷開始位置に移動させた後、印刷用データに基づいて、下地用ヘッド41aから白色等の下地用インクを吐出させながら、爪領域のうちデザインを印刷する領域に下地を形成する。
【0045】
次に、制御部31は、ユーザ操作に基づいて、印刷する指が他に(ステップS2で下地印刷したもの以外に)あるか否かを判定する(ステップS3)。ここでの判定は、例えば、ユーザによる操作部12、71の操作入力に基づいてもよいし、ユーザによる後述のステップS4、S7での指の移動・配置をもって判断してもよい。
【0046】
そして、印刷する指が他にもあると判定した場合(ステップS3;Yes)、ユーザにより、下地印刷された前の印刷指Uが左側指保持部2Lから抜かれる(ステップS4)。なおこのとき、その前に下地処理された印刷指Uが右側指保持部2Rに挿入されていた場合には、当該印刷指Uも右側指保持部2Rから抜かれる。
【0047】
次に、ユーザにより、下地処理された前の印刷指Uが右側指保持部2Rに挿入されて指置き部21に配置され、続いて印刷する次の印刷指Uが左側指保持部2Lに挿入されて指置き部21に配置される(ステップS5)。
その後、制御部31の印刷制御部315が、右側指保持部2Rの印刷指Uに対してデザイン用ヘッド41bによりデザイン印刷を行うと同時に、左側指保持部2Lの印刷指Uに対して下地用ヘッド41aにより下地印刷を行う(ステップS6)。ここで、デザイン用ヘッド41bによるデザイン印刷と、下地用ヘッド41aによる下地印刷とが「並行して」行われるとは、2つの指保持部2上を跨いで移動するキャリッジ42の一連の走査のなかで、これらの印刷が時間的(順序的)に区別されることなく一体的に実行されることを意味する。
【0048】
このステップS6では、まず、上述のステップS2と同様にして、各指保持部2の印刷指Uの爪画像が取得されてその爪情報が検出され、この爪情報に基づいて印刷用データが生成される。それから、印刷制御部315は、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48によりキャリッジ42の移動を制御して下地用ヘッド41aを印刷開始位置に移動させる。
そして、印刷制御部315は、右側指保持部2Rの印刷指Uに対し、その印刷用データに基づいて、デザイン用ヘッド41bからCMY等の各色の色インクを吐出させながら、下地の上にデザインを印刷する。また並行して、印刷制御部315は、左側指保持部2Lの印刷指Uに対し、その印刷用データに基づいて、下地用ヘッド41aから白色等の下地用インクを吐出させながら、爪領域のうちデザインを印刷する領域に下地を形成する。
その後、制御部31は、上述のステップS3に処理を移行する。
【0049】
また、上述のステップS3において、印刷する指が他にはないと判定した場合(ステップS3;No)、制御部31の印刷制御部315が、左側指保持部2Lに配置された印刷指Uに対してデザイン用ヘッド41bによりデザイン印刷を行う(ステップS7)。
ここでは、直前のステップS2又はS6で生成された左側指保持部2Lの印刷指Uの印刷用データに基づいて、当該印刷指Uに対し、デザイン用ヘッド41bからCMY等の各色の色インクを吐出させて、下地の上にデザインが印刷される。こうして、直前のステップS2又はS6において左側指保持部2Lで下地印刷された印刷指Uに対し、その抜き差しが行われることなく、左側指保持部2Lでデザイン印刷が行われる。
そして、ユーザにより、デザイン印刷が完了した印刷指Uが左側指保持部2Lから抜かれたら(ステップS8)、制御部31は印刷処理を終了する。
【0050】
続いて、本実施形態の印刷処理について、具体例を挙げてさらに説明する。
図5及び
図6は、本実施形態の印刷処理例を説明するための図である。
ここでは、右手の中指と人差し指に印刷する場合について説明する。
【0051】
まず、ユーザにより、最初の印刷指U1として右手の中指が左側指保持部2Lに挿入されると(ステップS1)、
図5(a)に示すように、当該印刷指U1に下地用ヘッド41aによる白色の下地印刷が行われる(ステップS2)。
【0052】
次に、ユーザにより、下地印刷された前の印刷指U1が左側指保持部2Lから抜かれて(ステップS3;Yes、S4)、当該印刷指U1が右側指保持部2Rに挿入されるとともに、次の印刷指U2として右手の人差し指が左側指保持部2Lに挿入される(ステップS5)。
すると、
図5(b)に示すように、右側指保持部2Rの前の印刷指U1に対してデザイン用ヘッド41bによりデザイン印刷が行われるのと並行して、左側指保持部2Lの次の印刷指U2に対して下地用ヘッド41aにより下地印刷が行われる(ステップS6)。
【0053】
そして、印刷する指が他にないため(ステップS3;No)、
図6に示すように、下地印刷された左側指保持部2Lの次の印刷指U2に対してデザイン用ヘッド41bによりデザイン印刷が行われる(ステップS7)。
その後、デザイン印刷が完了した印刷指U1、U2が指保持部2から抜かれて(ステップS8)、印刷処理が終了する。
【0054】
このように、2つの指保持部2(指置き部21)に配置された2本の印刷指Uに対して、下地印刷とデザイン印刷を並行して行うことにより、効率的に印刷を行うことができる。2本の印刷指Uに下地印刷とデザイン印刷を順次個別に行う場合、通常であれば合計4回の印刷が必要となるところ、本例では、下地印刷とデザイン印刷を並行して行うことで、合計3回の印刷で足りる。指の本数が増えるほど省略できる印刷回数は増え、例えば両手10本の指に印刷する場合、通常であれば20回の印刷が行われるところ、本実施形態の印刷処理によれば、これを12回に減らすことができる。
【0055】
なお、本実施形態の印刷装置1では、2つの印刷ヘッド41の配置の関係から、右手の指(親指以外)に印刷する場合には「小指、薬指、中指、人差指」の順番、左手の指の場合はその逆の順番で、右側の指から印刷するのが好ましい。この場合、各爪Tで奥行方向(Y方向)の載置位置が異なるが、これはキャリッジ42の移動制御で対応できる。つまり、Y方向での各爪Tの載置位置は、Y方向におけるキャリッジ42の移動範囲(印刷ヘッド41の印刷範囲)に含まれていればよい。
また、右手の親指以外の4本指のいずれかと、左手の親指とを並行して印刷してもよい。同様に、右手の親指と、左手の親指以外の4本指のいずれかとを、あるいは、右手の親指と左手の親指とを、並行して印刷してもよい。これらの場合、右手の指は右側指保持部2Rに、左手の指は左側指保持部2Lに配置するのは勿論である。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、2つの指置き部21に配置された2本の印刷指Uに、2つの印刷ヘッド41による互いに異なる印刷が並行して行われるので、印刷回数を減らし、印刷時間を短縮できる。
したがって、多層の印刷を効率的に行うことができる。ひいては、拘束時間の短縮によりユーザの負担を軽減できる。
【0057】
また本実施形態では、2つの印刷ヘッド41が同一のキャリッジ42に搭載されるとともに、当該2つの印刷ヘッド41と2つの指保持部2(指置き部21)とが、キャリッジ42の走査方向(X方向)であって互いに同じ方向に並設されている。
これにより、キャリッジ42の動作制御によって、2つの指置き部21に配置された2本の印刷指Uに対し、2つの印刷ヘッド41による印刷を好適に並行して行うことができる。
【0058】
また本実施形態では、X方向における下地用ヘッド41aの印刷範囲Raが、2つの指保持部2のうちの左側指保持部2Lの指置き部21を含む範囲であり、X方向におけるデザイン用ヘッド41bの印刷範囲Rbが、2つの指置き部21を含む範囲である。つまり、左側指保持部2Lの指置き部21は下地印刷とデザイン印刷の両方が行える範囲に配置され、右側指保持部2Rの指置き部21はデザイン印刷のみが行える範囲に配置されている。
これにより、下地用ヘッド41aによる左側指保持部2Lの印刷指Uへの下地印刷と、下地用ヘッド41aよりも右側のデザイン用ヘッド41bによる右側指保持部2Rの印刷指Uへのデザイン印刷とを、レイアウト的に無理なく並行して行うことができる。したがって、大型化を招来することなく、好適に多層の印刷を行うことができる。
【0059】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0060】
例えば、本実施形態では、キャリッジ42のうち左側に下地用ヘッド41aが配置され、右側にデザイン用ヘッド41bが配置されることとしたが、この2つの印刷ヘッド41の並びは左右反転させてもよい。ただし、この場合には、2つの印刷ヘッド41の印刷範囲Ra、Rbを、2つの指保持部2の間を中心に左右反転させ、2つの指保持部2に印刷指が挿入される順番も、右側指保持部2Rと左側指保持部2Lとで左右反転させる必要がある。
【0061】
また、本実施形態では、指保持部2(指置き部21)が2つの場合について説明したが、指保持部2(指置き部21)は3つ以上あってもよい。
この場合、X方向における下地用ヘッド41aの印刷範囲Raは、複数の指置き部21のうち、右側の1つの除く残りの指置き部21を含む範囲である。また、X方向におけるデザイン用ヘッド41bの印刷範囲Rbは、複数の指置き部21の全てを含む範囲である。つまり、右側の1つの指置き部21だけがデザイン印刷のみが行える範囲に配置され、残りの指置き部21は下地印刷とデザイン印刷の両方が行える範囲に配置される。
【0062】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41が2つの場合について説明したが、印刷ヘッド41は3つ以上あってもよい。例えば、下地の下に塗布される受容体や、デザイン印刷上に塗布される保護コートを印刷する印刷ヘッド41をさらに含んでもよい。この場合、これらの印刷ヘッド41は、印刷を行う順番(重ねられる順番)通りにキャリッジ42上に並設される。
【0063】
また、2つの指保持部2(指置き部21)は、2本の印刷指Uを配置可能であれば別体でなくともよく、一体的であってもよい。
さらに言えば、本発明は、複数の指が配置される複数の指置き部を備えていればよい。すなわち、本実施形態のように、単一の印刷指Uが配置される指置き部21及びそれを有する指保持部2が複数あってもよいし、例えば
図7に示すように、複数の印刷指Uが配置される複数の指置き部21Aを有する単一の印刷台2Aが設けられていてもよい。なお、この場合の指置き部21Aとは、単に印刷台2Aの一部というだけでよい。また、図示は省略するが、複数の印刷指が配置される複数の指置き部を有する複数の印刷台が設けられていてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、2つの印刷ヘッド41(下地用ヘッド41a、デザイン用ヘッド41b)がともに同一のキャリッジ42に搭載され、同じヘッド移動機構49によって移動する場合を例示したが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
例えば、下地用ヘッド41a、デザイン用ヘッド41bがそれぞれ別個に移動しながら印刷動作を行うように構成されていてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、2つの印刷ヘッド41(下地用ヘッド41a、デザイン用ヘッド41b)がインクジェット方式のものであることとしたが、印刷ヘッド41の構成(印刷方式)はこれに限定されない。
下地用ヘッド41a、デザイン用ヘッド41bの両方又はいずれか一方が、例えばペンプロッタ方式等、インクジェット方式以外の構成であってもよい。
【0066】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記複数の印刷手段は、同一のキャリッジに搭載されるとともに、当該キャリッジの走査方向に並設され、
前記複数の指置き部は、前記複数の印刷手段の並設方向に並設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記複数の印刷手段は、下地を印刷する下地用ヘッドと、下地の上にデザインを印刷するデザイン用ヘッドとを含み、
前記下地用ヘッドは、前記キャリッジのうち、前記デザイン用ヘッドよりも前記並設方向の一方側に配置され、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部のうち、他方側の1つの除く残りの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、前記複数の指置き部の全てを含む範囲である、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記指置き部は2つ設けられ、
前記並設方向における前記下地用ヘッドの印刷範囲は、2つの指置き部のうち、一方側の1つの指置き部を含む範囲であり、
前記並設方向における前記デザイン用ヘッドの印刷範囲は、2つの指置き部を含む範囲である、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記印刷制御手段は、
一方側の指置き部に配置された第1の指の爪に、前記下地用ヘッドにより下地印刷を行い、
他方側の指置き部に配置された前記第1の指の爪に対する前記デザイン用ヘッドによるデザイン印刷と、一方側の指置き部に配置された第2の指の爪に対する前記下地用ヘッドによる下地印刷とを、並行して行い、
一方側の指置き部に配置された前記第2の指の爪に、前記デザイン用ヘッドによるデザイン印刷を行う、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
<請求項6>
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
を備える印刷装置の制御手段が、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御工程を実行する、
ことを特徴とする印刷方法。
<請求項7>
互いに異なる複数種類の印刷を、指の爪に個別に行う複数の印刷手段と、
複数の指が配置される複数の指置き部と、
を備える印刷装置のコンピュータを、
前記複数の指置き部に配置された複数の指の爪に、前記複数の印刷手段による印刷を並行して行わせる印刷制御手段として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
2 指保持部
2A 印刷台
2L 左側指保持部
2R 右側指保持部
21、21A 指置き部
30 制御装置
31 制御部
40 印刷部
41 印刷ヘッド(印刷手段)
41a 下地用ヘッド
41b デザイン用ヘッド
42 キャリッジ
49 ヘッド移動機構
315 印刷制御部
411 インク吐出面
821a 動作プログラム
821b ネイルプリントアプリケーションプログラム
Ra 下地用ヘッドの印刷範囲
Rb デザイン用ヘッドの印刷範囲
T 爪
U 印刷指
U1 印刷指
U2 印刷指