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特許75053202波長光検出器、及びこれを用いたイメージセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】2波長光検出器、及びこれを用いたイメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20240618BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20240618BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L31/08 L
H01L31/10 D
H01L27/146 F
H01L27/144 K
G01J3/02 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020136808
(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公開番号】P2022032720
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 僚
(72)【発明者】
【氏名】西野 弘師
(72)【発明者】
【氏名】角田 浩司
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0146998(US,A1)
【文献】特開2019-057639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019269(US,A1)
【文献】特開2020-107648(JP,A)
【文献】特開2020-017659(JP,A)
【文献】国際公開第2005/027228(WO,A1)
【文献】MYERS, Stephen et al.,“Comparison of superlattice based dual color nBn and pBp infrared detectors”,Proc. SPIE 8155, Infrared Sensors, Devices, and Applications; and Single Photon Imaging II,2011年09月16日,Article number: 815507,pp. 1-9,DOI: 10.1117/12.894986
【文献】HOANG, Anh Minh et al.,“High performance bias-selectable three-color Short-wave/Mid-wave/Long-wave Infrared Photodetectors based on Type-II InAs/GaSb/AlSb superlattices”,Scientific Reports,2016年04月07日,Vol. 6, No. 1, Article number: 24144,pp. 1-7,DOI: 10.1038/srep24144
【文献】HOANG, A. M. et al.,“Demonstration of high performance bias-selectable dual-band short-/mid-wavelength infrared photodetectors based on type-II InAs/GaSb/AlSb superlattices”,Applied Physics Letters,2013年01月07日,Vol. 102, No. 1, Article number: 011108,pp. 1-4,DOI: 10.1063/1.4773593
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長に感度を有する第1受光層と、
前記第1の波長よりも長い第2の波長に感度を有する第2受光層と、
前記第1受光層と前記第2受光層の間に配置され、正孔に対するポテンシャル障壁となる障壁層と、
を有し、
前記第1受光層は、InAs、GaSb、およびAlSbを含む第1の超格子で形成され、
前記第2受光層は、InAsとGaSbの第2の超格子で形成されており、
前記第1の超格子に含まれる前記InAsの膜厚は、前記第2の超格子に含まれる前記InAsの膜厚よりも大きい
2波長光検出器。
【請求項2】
第1の波長に感度を有する第1受光層と、
前記第1の波長よりも長い第2の波長に感度を有する第2受光層と、
前記第1受光層と前記第2受光層の間に配置され、正孔に対するポテンシャル障壁となる障壁層と、
を有し、
前記第1受光層は、InAs、GaSb、およびAlSbを含む第1の超格子で形成され、
前記第2受光層は、InAsとGaSbの第2の超格子で形成されており、
前記第1の超格子に含まれる前記InAsと、前記第2の超格子に含まれる前記InAsの膜厚は4nm以上である、
2波長光検出器
【請求項3】
前記第1の超格子と前記第2の超格子の伝導帯下端のエネルギー差は20meV以下である、
請求項1または2に記載の2波長光検出器。
【請求項4】
前記第1の超格子は、InAs、GaSb、AlSb、GaSbがこの順序で積層された単位構造を有する超格子である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の2波長光検出器。
【請求項5】
前記障壁層は、InAsとAlSbの超格子で形成されており、
前記障壁層のバンドギャップは、前記第1受光層と前記第2受光層のバンドギャップよりも大きい、
請求項1~のいずれか1項に記載の2波長光検出器。
【請求項6】
前記第1受光層と前記第2受光層に、不純物元素としてBe、Zn、またはMgが添加されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の2波長光検出器。
【請求項7】
前記障壁層の導電型は、前記第1受光層、及び前記第2受光層と同じ導電型である、
請求項1~のいずれか1項に記載の2波長光検出器。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の2波長光検出器が複数配列された光検出器アレイと、
前記光検出器アレイに電気的に接続される読出回路と、
を有するイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2波長光検出器、及びこれを用いたイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
タイプII超格子(Type II Superlattice:T2SL)は、水銀カドミウムテルル(Mercury Cadmium Telluride:MCT)に代わる次世代の赤外線検出器の材料として期待されている。タイプII超格子を用いた赤外線検出器の多くは、GaSb基板上に、基板と格子整合しやすく、かつ吸収係数の大きいInAs/GaSbの超格子を受光層として有する。
【0003】
多重量子井戸で形成された感光波長の異なる2つの感光層を中間層で分離し、印加電圧の極性を切替えることによって感度波長を制御する2波長の赤外線検知素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。III-V族化合物半導体からなるAlGa1-xSb/InAs(x>0.3)超格子を用い、超格子端面に電極を取り付けた赤外線検出器が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-295146号公報
【文献】特開平6-196745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイプII超格子を用いた2波長光検出器で受光感度を高めるには、移動度の高い電子を信号として検出することが望ましい。一方、タイプII超格子の受光層で異なる波長の光に感度を持たせるには、超格子を形成する薄膜の厚さを制御して、超格子のバンドギャップの大きさを制御する。InAs/GaSb超格子では、InAsの膜厚を制御することで赤外線検出波長が制御される。しかし、InAsの膜厚を変えると、超格子の伝導帯下端のエネルギー位置が変わり、長波長側の受光層の超格子の伝導帯下端のエネルギーが、短波長側の受光層の超格子の伝導帯下端のエネルギーよりも低くなる。電子を信号として検出する場合、長波長側の受光層の電子にとって短波長型の受光層がポテンシャル障壁となり、長波長側の信号が低下する。
【0006】
本開示は、2波長光検出器において、長波長側の信号電流の低下を抑制し受光感度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、2波長光検出器は、
第1の波長に感度を有する第1受光層と、
前記第1の波長よりも長い第2の波長に感度を有する第2受光層と、
前記第1受光層と前記第2受光層の間に配置され、正孔に対するポテンシャル障壁となる障壁層と、
を有し、前記第1受光層は、InAs、GaSb、およびAlSbを含む第1の超格子で形成され、前記第2受光層は、InAsとGaSbの第2の超格子で形成されている。
【発明の効果】
【0008】
2波長光検出器において、長波長側の信号電流の低下が抑制され受光感度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の2波長光検出器の断面模式図である。
図2A】第1実施形態の2波長光検出器の動作原理を説明する図である。
図2B】第1実施形態の2波長光検出器の動作原理を説明する図である。
図3】第1実施形態の2波長光検出器の効果を説明する図である。
図4A】第1実施形態の2波長光検出器の作製工程図である。
図4B】第1実施形態の2波長光検出器の作製工程図である。
図4C】第1実施形態の2波長光検出器の作製工程図である。
図4D】第1実施形態の2波長光検出器の作製工程図である。
図4E】第1実施形態の2波長光検出器の作製工程図である。
図5】第2実施形態の2波長光検出器の断面模式図である。
図6】第2実施形態の2波長光検出器の効果を説明する図である。
図7】実施形態のイメージセンサの模式図である。
図8】イメージセンサで用いられる光検出器アレイの一部を示す断面模式図である。
図9】イメージセンサを組み込んだ撮像システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態では、異なる波長の赤外線に感度を有する2波長光検出器の受光層をタイプII超格子で形成し、2つの受光層の間に正孔に対するポテンシャル障壁を設ける。長波長側の受光層の伝導帯下端に対して、障壁層の伝導帯下端と、短波長側の受光層の伝導帯下端のエネルギー位置が電子の移動の妨げとならないように、各層のバンドギャップを制御する。具体的には、2つの受光層の間に障壁層が配置された構成で、隣接する層の間で、伝導体下端のエネルギー差の大きさ(絶対値)を20meV以下、より好ましくは、10meV以下にする。これにより、長波長側の信号電流の低下が抑制され、受光感度が向上する。
【0011】
以下で、図面を参照して具体的な構成を説明する。この明細書と添付図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の2波長光検出器10の断面模式図である。図示の便宜上、2波長光検出器10はひとつの画素101として描かれているが、実際の使用態様では、複数の2波長光検出器10が一次元または二次元方向に配列された光検出器アレイとして用いられ得る。
【0013】
2波長光検出器10は、基板11の上に、第1電極層14、第1受光層15、障壁層16、第2受光層17、及び第2電極層18がこの順でエピタキシャル成長された積層構造を有する。基板11と第1電極層14の間に、バッファ層12とエッチングストッパ層13の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0014】
第1電極層14は、光検出器アレイに含まれる複数の画素101に共通に用いられる。第1電極層14に接続されるメサ35、すなわち、第1受光層15、障壁層16、第2受光層17、及び第2電極層18を含むメサ35が、ひとつの画素101を形成する。メサ35と第1電極層14は、所定の箇所に設けられた電極21、及び22を除いて、全体が絶縁膜19で覆われている。
【0015】
基板11として、たとえば、GaSb(100)基板を用いる。バッファ層12とエッチングストッパ層13を設ける場合は、バッファ層12として、基板11と格子整合するGaSb層を用い、エッチングストッパ層13として、InAsSb層を用いてもよい。InAsSb層の組成は、GaSbと格子整合するように設定されるのが望ましく、たとえばInAs0.91Sb0.09層が用いられる。
【0016】
第1電極層14は、たとえば、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で形成されている。第1受光層15は、第1の波長帯(たとえば3~5μm)に感度を有し、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で形成されている。障壁層16は、たとえば、InAsとAlSbの超格子で形成されている。第2受光層17は、第2の波長帯(たとえば8~12μm)に感度を有し、InAsとGaSbの超格子で形成されている。第2電極層18は、たとえば、InGaとGaSbの超格子で形成されている。
【0017】
実施形態では、電子を少数キャリア、すなわち信号として検出するので、第1受光層15と第2受光層17は、p型の導電型を有する。第1受光層15と第2受光層17は、積層方向で障壁層16によって分離されている。第1受光層15の超格子の伝導帯下端のエネルギー位置と、第2受光層17の超格子の伝導帯下端のエネルギー位置との差は、20meV以下、より好ましくは10meV以下である。
【0018】
障壁層16は、暗電流を抑制して、第1受光層15と第2受光層17から別々に信号を取り出すために、正孔に対するポテンシャル障壁として機能する。第1受光層15、障壁層16、及び第2受光層17のエネルギーバンド構造については、図3を参照して後述する。
【0019】
図2A図2Bは、2波長光検出器10の動作原理を説明する図である。第1受光層15は、第1の波長(λ1)に感度を有し、第2受光層17は、第2の波長(λ2)に感度を有する。λ2はλ1よりも長波長である。2波長光検出器10は、電極21と電極22に印加する電圧の極性を変えることで、検出される赤外線の波長が切り替えられる。
【0020】
図2Aで、第2電極層18に接続される電極21に正の電圧を印加し、第1電極層14に接続される電極22に負の電圧を印加すると、p型の第1受光層15にとって逆バイアスの状態となり、第1受光層15が受光部として機能する。第1受光層15で光吸収により生じた少数キャリアとしての電子は、電界に沿って、第2電極層18に向かって流れ、信号として検出される。一方、p型の第2受光層17は順バイアスの状態になっており、光吸収により生じたキャリア(電子-正孔対)は再結合して消滅するか、無視し得る程度に少ない。
【0021】
図2Bで、電極21に負の電圧を印加し、電極22に正の電圧を印加すると、p型の第2受光層17は逆バイアスの状態となり、第2受光層17が受光部として機能する。第2受光層17で光吸収により生じた少数キャリアとしての電子は、電界に沿って、第1電極層14に向かって流れ、信号として検出される。一方、p型の第1受光層15は順バイアスの状態になっており、光吸収により生じたキャリア(電子-正孔対)は再結合して消滅するか、無視し得る程度に少ない。
【0022】
電極21と電極22に印加する電圧の極性を変えることで、異なる波長の赤外線を検出することができる。図2A、及び図2Bに示した動作で、一方の受光層で光吸収により生成された電子は、障壁層16と他方の受光層とを横切って、対応する電極から引き出される。図2Aでは、第1受光層15で生成された電子-正孔対のうち、電子は障壁層16と第2受光層17を通過して引き出される。図2Bでは、第2受光層17で生成された電子-正孔対のうち、電子は障壁層16と第1受光層15を通過して引き出される。
【0023】
電子が引き出される過程で、電子に対するポテンシャル障壁が存在する場合、ポテンシャル障壁が高いほど、電子は障壁を乗り越えることができず、信号低下の要因となる。従来の一般的な構成で、第1受光層15と第2受光層17をInAs/GaSbの超格子で形成し、検出対象の赤外線波長を変えるためにInAsの膜厚を変更すると、超格子の伝導帯下端のエネルギー位置が変化し、電子に対する障壁が高くなる。
【0024】
たとえば、中波長帯と長波長帯の赤外線に感度を有する2波長光検出器をInAs/GaSb超格子で構成する場合、第1受光層15と第2受光層17のバンドギャップ差にほぼ等しいエネルギー差(0.1eV以上)が、第1受光層15と第2受光層17の伝導帯下端で生じる。
【0025】
長波長帯に感度を持つInAs/GaSb超格子の伝導帯下端のエネルギー位置は、中波長帯に感度を持つInAs/GaSb超格子の伝導帯下端のエネルギー位置よりも低くなる。長波長側のInAs/GaSb超格子で生成された電子は、電極に引き出される過程で、中波長帯に感度を持つInAs/GaSb超格子の伝導帯下端とのエネルギー差に相当するポテンシャル障壁を乗り越えられず、長波長側の信号を十分に引き出すことができない。
【0026】
実施形態では、長波長側の信号の低下を抑制するために、第1受光層15の伝導帯下端の下端のエネルギーと第2受光層17の伝導帯下端のエネルギーとの差を、電子の移動を妨げない程度に小さくする。また、障壁層16を正孔ブロック層として機能させて暗電流を抑制する一方で、電子にとってはポテンシャル障壁とならないようにバンドギャップを設計する。
【0027】
図3は、第1実施形態の2波長光検出器10の効果を説明する図である。第1実施形態では、短波長側の第1受光層15を、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で形成し、第2受光層17を、InAsとGaSbの超格子で形成している。超格子のバンドギャップエネルギーEgは、超格子の伝導体下端と、価電子帯上端のエネルギー差によって決まる。
【0028】
一般的なInAs/GaSb超格子の2波長検出器と異なり、第1実施形態の2波長光検出器10では、長波長側の第2受光層17の伝導帯下端のエネルギー位置は、第1受光層15の伝導帯下端のエネルギー位置よりも高く設定されている。また、第1受光層15の伝導帯下端のエネルギー位置と障壁層16の伝導帯下端のエネルギー位置との差、及び第2受光層17の伝導帯下端のエネルギー位置と障壁層16の伝導帯下端のエネルギー位置との差が、20meV以下、より好ましくは10meV以下になるように設定されている。
【0029】
第1受光層15のバンドギャップエネルギーEg1は約256meV、障壁層16のバンドギャップエネルギーEg(bar)は約484meV、第2受光層17のバンドギャップエネルギーEg2は約127meVである。障壁層16のバンドギャップは、第1受光層15と第2受光層17のいずれのバンドギャップよりも大きい。
【0030】
伝導帯下端のエネルギー差を見ると、第1受光層15の伝導帯下端と障壁層16の伝導帯下端のエネルギー差ΔEc1は約9meV、第2受光層17の伝導帯下端と障壁層16の伝導帯下端のエネルギー差ΔEc2は約3meVと小さい。
【0031】
図2Bのように第2受光層17を動作させるときに、第2受光層17と障壁層16の間にエネルギー差はほとんどない。第2受光層17で生成された電子が電極22に引き出される過程で、電子は、第2受光層17と障壁層16の間の伝導帯下端のわずかなエネルギー差を容易に乗り越えて、第1受光層15の伝導帯下端に沿って電極に引き出される。長波長側の信号の低下は抑制され、受光感度が向上する。図2Aのように、第1受光層15を動作させるときも、第1受光層15と障壁層16の伝導帯下端におけるエネルギー差ΔEc1もわずか9meVであり、電子が乗り越えられる程度に十分に小さい。
【0032】
価電子帯上端のエネルギーを見ると、第1受光層15の価電子帯上端と障壁層16の価電子帯上端のエネルギー差ΔEv1は約219meV、第2受光層17の価電子帯上端と障壁層16の価電子帯上端のエネルギー差ΔEv2は約354meVと大きい。障壁層16は正孔に対するポテンシャル障壁となり、暗電流を抑制することができる。
【0033】
第1受光層15において、GaSbおよびAlSbを障壁層、InAsを井戸層とする量子構造では、超格子の伝導体下端のエネルギー位置は、InAs層中の電子の量子準位の基底準位によって決まる。InAsおよびAlSbを障壁層、GaSbを井戸層とする量子構造では、超格子の価電子帯上端のエネルギー位置は、GaSb層中に形成される正孔の量子準位の基底準位によって決まる。この構成により、第1受光層15の伝導帯下端と、第2受光層17の伝導帯下端のエネルギー差を十分小さく維持したまま、価電子帯上端のエネルギーを下げることができる。
【0034】
従来のようにGaSbを障壁層、InAsを井戸層とする量子構造の超格子では、超格子の伝導帯下端のエネルギー位置は、InAs層中に形成される電子の量子準位の基底準位で決まる。価電子帯上端のエネルギー位置は、GaSb層中に形成される正孔の量子準位の基底準位で決まる。InAsの膜厚を薄くすると、電子の基底準位のエネルギー位置が高くなるため、超格子の伝導帯下端のエネルギー位置が高くなって、価電子帯上端とのエネルギー差が大きくなる。その結果、超格子のバンドギャップが大きくなり、検出可能な赤外線波長が短くなる。
【0035】
一方、GaSbの膜厚を変えた場合は、正孔の有効質量が重いため、正孔の基底準位のエネルギー位置、すなわち、価電子帯上端のエネルギー位置はそれほど変化しない。GaSbの膜厚制御では超格子のバンドギャップを変えることができないので、InAsの膜厚を制御することでバンドギャップ、すなわち検出波長が調整される。InAsの膜厚の変化により、伝導体下端のエネルギー位置が変化して長波長側の信号が低下することは、上述したとおりである。
【0036】
第1実施形態の2波長光検出器10は、図3のようにエネルギーバンドギャップを設計することで、長波長側の信号の低下が抑制され、長波長側の受光感度が向上するという効果が得られる。
【0037】
図4A図4Dは、2波長光検出器10の作製工程図である。図4Aで、基板11の上に、バッファ層12、エッチングストッパ層13、第1電極層14、第1受光層15、障壁層16、第2受光層17、及び第2電極層18をこの順でエピタキシャル成長する。
【0038】
たとえば、n型のGaSb(100)基板を、分子線エピタキシ(MBE:Molecular Beam Epitaxy)装置の基板導入室に導入する。GaSbの基板11は、準備室において脱ガス処理され、その後、超高真空に保持された成長室へ搬送される。成長室へ搬送された基板11はSb雰囲気下で加熱されて、表面の酸化膜が除去される。酸化膜を除去した後に、基板11の表面の平坦性を良くするために、たとえば、GaSbのバッファ層12を基板温度500℃にて100nm成長する。次いで、たとえばInAsSbのエッチングストッパ層13を300nm成長する。このとき、InAsSbの混晶組成を、GaSbに格子整合するように設定することが好ましく、一例としてInAs0.91Sb0.09のエッチングストッパ層13を形成する。
【0039】
次いで、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で第1電極層14を形成する。たとえば4.6nmのInAs、0.9nmのGaSb、1.5nmのAlSb、及び0.9nmのGaSbをこの順序で積層した構造を1周期(単位構造)とする超格子で、第1電極層14を形成する。InAs/GaSb/AlSb/GaSbの超格子を、たとえば40周期繰り返して、360nmの厚さに成長する。この超格子のバンドギャップは、約0.256eVである。第1電極層14には、たとえばBeが不純物として添加されており、正孔濃度が1×1018cm-3のp型の導電型を有する。
【0040】
次いで、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で第1受光層15を形成する。第1受光層15は、たとえば4.6nmのInAs、0.9nmのGaSb、1.5nmのAlSb、及び0.9nmのGaSbをこの順序で積層した構造を1周期(単位構造)とする超格子で形成される。InAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子を、たとえば160周期繰り返して、1300nm程度の厚さに成長する。この超格子のバンドギャップは約0.256eVであり、第1受光層15は、中波長帯(3~5μm)の赤外光に感度を有する。第1受光層15は、たとえば正孔濃度が1×1016cm-3のp型の導電型を有する。
【0041】
次いで、たとえば、InAsとAlSbの超格子で障壁層16を形成する。障壁層16は、たとえば、4.6nmのInAsと、1.2nmのAlSbを、この順序で積層した構造を1周期(単位構造)とする超格子で形成される。InAs/AlSb超格子を、たとえば20周期繰り返して、100nm程度の厚さに成長する。この超格子のバンドギャップは、約0.484eVである。障壁層16は、主として正孔のみをブロックする障壁層として機能し、たとえば、正孔濃度が1×1016cm-3のp型の導電型を有する。
【0042】
次いで、InAsとGaSbの超格子で第2受光層17を形成する。第2受光層17は、たとえば、4.2nmのInAsと、2.1nmのGaSbを、この順序で積層した構造を1周期(単位構造)とする超格子で形成される。InAs/GaSb超格子を、たとえば200周期繰り返して、1300nm程度の厚さに成長する。第2受光層17のInAs/GaSb超格子のバンドギャップは約0.127eVであり、第2受光層17は長波長帯(8~12μm)の赤外線に感度を有する。
【0043】
第2受光層17のInAs/GaSb超格子のInAsの膜厚は、第1受光層15のInAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子のInAsの膜厚よりも薄い。InAsの膜厚を第1受光層15の超格子のInAs膜厚よりも薄くすることで、電子の基底準位のエネルギー位置が高くなり、超格子の伝導体下端のエネルギー位置が上がる。第2受光層は、たとえば正孔濃度が1×1016cm-3のp型の導電型を有する。
【0044】
次いで、例えば、InAsとGaSbの超格子で第2電極層18を形成する。第2電極層18は、たとえば4.2nmのInAsと、2.1nmのGaSbをこの順序で積層した構造を1周期(単位構造)とする超格子で形成される。InAs/GaSb超格子を、たとえば60周期繰り返して、360nm程度の厚さに成長する。この超格子のバンドギャップは、約0.127eVである。第2電極層18は、たとえば正孔濃度が1×1018cm-3のp型の導電型を有する。以上の工程により、図4Aの積層構造が得られる。
【0045】
図4Bで、図4Aの積層構造をエッチング加工して、メサ35を形成する。第1電極層14の一部の表面が露出するように、第2電極層18、第2受光層17、障壁層16、および第1受光層15を選択的にエッチングする。図4Bでは1つのメサ35のみが描かれているが、このエッチング工程で、アレイ状に配置される複数のメサ35が形成される。隣接するメサ35の間の空間は、画素分離溝36となる。
【0046】
図4Cで、メサ35の全体と、第1電極層14の表面を覆う絶縁膜19を形成する。絶縁膜は、たとえば厚さ500nmのシリコン酸化膜であるが、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの、その他の絶縁膜を形成してもよい。シリコン酸化膜を形成する場合は、反応ガスとしてシラン、及び一酸化二窒素を用いて、化学気相堆積法で形成することができる。
【0047】
図4Dで、エッチングマスクを用いた選択的エッチングで、絶縁膜19の所定の箇所に開口26を形成して、第1電極層14の一部と、第2電極層18の一部を露出する。
【0048】
図4Eで、開口26内に、第1電極層14と接続される電極22と、第2電極層18と接続される電極21を形成する。電極21、及び22は、たとえばTi/Pt/Auで形成される。Tiは下層の電極層との密着膜として機能し得る。電極21、及び22は、金属膜のスパッタリングとミリングにより形成されてもよいし、蒸着とリフトオフ法により形成されてもよい。この後、後述するように、光検出器アレイの最外周画素で電極22に接続される配線と、各有効画素で電極21に接続される電極バッドを形成し、各画素に突起電極を設けることで、2波長光検出器10が作製される。必要に応じて、基板11、バッファ層12、及びエッチングストッパ層13を除去してもよい。
【0049】
第1実施形態では、第1受光層15、障壁層16、及び第2受光層17の積層で、隣接する層の伝導帯下端のエネルギー差を20meV以下、より好ましくは10meV以下とすることで、長波長側から信号である電子を効率的に引き出して、受光感度を向上する。具体的には、第1受光層15のInAs、GaSb、及びAlSbの超格子に含まれるInAsの膜厚と、第2受光層17のInAsとGaSbの超格子に含まれるInAsの膜厚を4nm以上の厚さで互いに近接させて、伝導体下端のエネルギー位置を互いに近づける。また、障壁層16を正孔ブロック層として機能させることで、暗電流が抑制され、受光感度が向上する。
【0050】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の2波長光検出器20の断面模式図である。2波長光検出器20は、基板11の上に、第1電極層24、第1受光層25、障壁層16、第2受光層17、及び第2電極層18がこの順でエピタキシャル成長された積層構造を有する。基板11と第1電極層24の間に、バッファ層12とエッチングストッパ層13の少なくとも一方を配置してもよい。
【0051】
2波長光検出器20は、第1電極層24と第1受光層25の構成を除いて、第1実施形態の2波長光検出器10と同様の構成を有するので、異なる部分のみを説明する。基板11の上に、第1電極層24と第1受光層25を連続してエピタキシャル成長する。基板11と第1電極層24の間に、バッファ層12とエッチングストッパ層13が挿入されていてもよい。
【0052】
第1電極層24は、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で形成される。たとえば、4.6nmのInAs、0.3nmのGaSb、0.9nmのAlSb、0.3nmのGaSbをこの順序で積層した構造を1周期とする超格子で、第1電極層24を形成する。この超格子のバンドギャップは、約0.392eVである。第1電極層24は、例えばBeが不純物として添加されており、正孔濃度が1×1018cm-3のp型の導電型を有する。このInAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子を、たとえば60周期繰り返して、360nmの厚さに成長する。
【0053】
第1受光層25は、InAs、GaSb、及びAlSbの超格子で形成される。たとえば、4.6nmのInAs、0.3nmのGaSb、0.9nmのAlSb、0.3nmのGaSbをこの順序で積層した構造を1周期とする超格子で、第1受光層25を形成する。この超格子のバンドギャップは、約0.392eVである。第1受光層25は、例えばBeが不純物として添加されており、正孔濃度が1×1018cm-3のp型の導電型を有する。このInAs/GaSb/AlSb/GaSb超格子を、たとえば210周期繰り返して、1300nmの厚さに成長する。
【0054】
図6は、第2実施形態の2波長光検出器20の効果を説明する図である。第2実施形態では、第1受光層25を形成するInAs、GaSb、及びAlSbの超格子の1周期の膜厚を第1実施形態よりも薄く形成して伝導帯下端のエネルギー位置を上げて、さらには価電子帯上端のエネルギー位置を下げて、バンドギャップエネルギーEg1を、約392meVに設計している。すなわち、第1実施形態の第1受光層15よりも検出可能な赤外線の波長が短くなる。障壁層16と第2受光層17のバンドギャップエネルギーは、第1実施形態と同様に、それぞれ約484meVと、約127meVである。
【0055】
第1受光層25と第2受光層17の間で、伝導帯下端のエネルギー差は第1実施形態よりもさらに小さく、ほとんど同じエネルギー位置である。第1受光層25、障壁層16、及び第2受光層17の間の伝導帯下端のエネルギー位置を見ると、電子に対するポテンシャル障壁はほとんどない。長波長側の第2受光層17で生成された電子は、電極22に引き出される過程で、障壁層16、及び第1受光層25との間の伝導帯下端におけるエネルギー差を容易に乗り越えられる。長波長側の信号の低下が抑制され、受光感度を向上することができる。第1受光層25で生成された電子にとってもポテンシャル障壁はほとんど存在せず、短波長側の受光感度も向上する。
【0056】
<2波長光検出器を用いたイメージセンサ>
図7は、2波長光検出器10を用いたイメージセンサ100の模式図である。イメージセンサ100は、複数の画素101の配列を含む光検出器アレイ50と、読出回路60を有する。光検出器アレイ50は、突起電極31によって読出回路60にフリップチップ接合されている。光検出器アレイ50と読出回路60の間にアンダーフィルが充填され硬化されていてもよい。図7では、光検出器アレイ50は第1実施形態の2波長光検出器10を用いているが、第2実施形態の2波長光検出器20を用いてもよい。
【0057】
光検出器アレイ50の突起電極31と反対側の面が光入射面であり、第1受光層15(または25)の側から光が入射する。タイプII超格子の場合は、受光層のバンドギャップと波長応答特性の関係から、応答波長が短い第1受光層15が光入射面に近い側に配置される。
【0058】
読出回路60には、光検出器アレイ50の各画素101に対応する駆動セルを有し、各画素101に、正電位を与えるバイアスと負電位を与えるバイアスを交互に印加して、第1受光層15と第2受光層17から電子を信号として読み出す。各駆動セルで、第1の波長と第2の波長に対応する電荷のそれぞれを積分して、各波長の入射強度に対応した電圧信号を出力する。読出回路60は、各画素101からの応答出力を順次に走査して、観測対象からの温度分布やガス分布の情報を含む信号を、時系列信号として出力してもよい。この場合、第1波長(たとえば中赤外波長)の時系列信号と、第2波長(遠赤外波長)の時系列信号が交互に出力されてもよい。
【0059】
図8は、イメージセンサ100で用いられる光検出器アレイ50の一部を示す断面模式図である。たとえば、第1実施形態の2波長光検出器10を1つの画素101として、複数の画素101が2次元状に配置されている。各画素101は、画素分離溝36によって互いに分離され、In等で形成された個別の突起電極31pを介して、読出回路60の対応する駆動セルのトランジスタ61と電気的に接続されている。
【0060】
個別の突起電極31pは、各画素101のメサの上部に設けられた電極21に接続される表面配線用の金属膜32の上に配置されている。対応する駆動セルのトランジスタ61のゲート印加されるゲート電圧VIGに応じたバイアス電圧が、突起電極31pを介して、画素101に選択的に印加される。
【0061】
光検出器アレイ50の最外周の画素は、ダミー画素として、共通電極31dにより共通の電位Vに接続されている。共通電極31dは、配線33を介して、第1電極層14とオーミック接触する電極22に接続されており、第1電極層14を介して、各画素101に共通の電位Vが供給される。
【0062】
金属膜32と配線33は、図4Eの工程の後に同一の工程で形成される。金属膜32と配線33上に、個別の突起電極31pと共通電極31dが同一の工程で形成される。光検出器アレイ50が、突起電極31pと共通電極31dを介して読出回路60にフリップチップ接合されたあとに、必要に応じて、基板11、バッファ層12、及びエッチングストッパ層13が除去されてもよい。これにより、図7のイメージセンサ100が得られる。
【0063】
図9は、イメージセンサ100を組み込んだ撮像システム1の概略ブロック図である。撮像システム1は、イメージセンサ100と、イメージセンサ100に接続される制御演算部2と、制御演算部2に接続される表示部3を有する。イメージセンサ100の光入射側に光学系110を配置してもよい。
【0064】
光学系110は、イメージセンサ100の光検出器アレイ50の光入射面に、入射赤外線の光像を結像させる。画素101ごとに2波長で検出される赤外線の強度情報は、交互に読出回路60に読み出される。光検出器アレイ50から得られる赤外線強度情報は、観測対象からの赤外線放射、すなわち温度分布やガス濃度分布を表わしている。
【0065】
イメージセンサ100の読出回路60から出力される電圧信号は、制御演算部2の入力に接続されている。電圧信号が制御演算部2に入力される前に、デジタル信号に変換されてもよい。制御演算部2は、読出回路60~の出力信号に補正処理、画像処理等を施して観測対象の温度分布やガス分布に応じた画像を生成する。補正処理には、画素101ごとの感度や非線形性のばらつきの補正が含まれていてもよい。
【0066】
実施形態の2波長光検出器10または20を用いた光検出器アレイ50は、各画素101または201で長波長側の信号低下が抑制され、かつ、暗電流が抑制されているので、高画質の2赤外線画像が得られる。制御演算部2により生成された画像は、表示部3に表示され、温度分布やガス分布が視覚的に認識可能になる。
【0067】
実施形態のイメージセンサ100と撮像システム1は、セキュリティ、インフラ点検の分野等への応用が可能である。イメージセンサ100で用いられる2波長光検出器10または20は、高い移動度をもつ電子を信号として検出し、長波長側での信号低下と暗電流が抑制されており、感度、すなわち、観察対象物に対する識別精度が高い。
【0068】
以上、発明の実施形態を特定の構成例に基づいて説明してきたが、本発明は上述した構成例に限定されない。第1受光層と第2受光層に用いられる超格子の各層の膜厚は、第1受光と第2受光層の伝導帯下端のエネルギー差が20meV以下、より好ましくは10meV以下である限り、適宜変更可能である。また、短波長側の第1受光層の超格子で用いられるInAsの膜厚が、長波長側の第2受光層の超格子で用いられるInAsの膜厚よりも大きいならば、それぞれを4nm以上の適切な厚さに設定されてもよい。障壁層16を形成する超格子は、第2受光層で生成された電子にとってポテンシャル障壁とならず、正孔に対するブロック層として機能するならば、適切な材料と膜厚で形成されてもよい。
【0069】
第1受光層と第2受光層の導電型をp型にする不純物(アクセプタ)として、Beに替えて、またはBeとともに、Zn、Mgなどを用いてもよい。2波長光検出器の積層の形成はMBE法に限定されず、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、または積層の形成が可能なその他の方法を採用してもよい。メサ35を覆う絶縁膜は、原子層堆積法、スパッタ法などで形成されてもよい。いずれの場合も、第1受光層、障壁層、第2受光層のエネルギーバンド構造を適切に設計することで、長波長側の電子に対するポテンシャル障壁を小さくして、受光感度を向上することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 撮像システム
10、20 2波長光検出器
11 基板
14、24 第1電極層
15、25 第1受光層
16 障壁層
17 第2受光層
18 第2電極層
21、22 電極
31、31p 突起電極
31d 共通電極
32 金属膜
33 配線
50 光検出器アレイ
60 読出回路
100 イメージセンサ
101、201 画素
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9