(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2020139971
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019159995
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植野 晶文
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎祐
(72)【発明者】
【氏名】水野 文明
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033482(JP,A)
【文献】特開2016-031236(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146647(WO,A1)
【文献】特表2015-506459(JP,A)
【文献】特開2014-194380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0371066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光測距装置
(200
c)であって、
筐体(80)と、
レーザ光(DL)を射出する発光部(40)と、
前記筐体の内部に配置され、前記発光部から射出された前記レーザ光を反射させるミラー(51)と、
前記ミラーを回転させる回転部(52)と、
入射光を受光するための受光素子(68)を有する受光部(60)と、
前記筐体に備えられ、前記ミラーによって反射されるレーザ光を前記筐体の外部に出射するための窓部(82)と、
前記筐体に備えられ、前記ミラーの回転角度が予め定められた基準回転角度(AT,AT3)である場合に前記受光部により検出される基準角度マーカ
(70c1,70c
2)と
、
前記ミラーの回転角度を検出する回転角度センサ(54,54e)と、
前記ミラーの回転角度と、前記回転角度センサによって検出された前記ミラーの回転角度の検出角度とのずれ量を検出する位置ずれ検出装置(100)であって、
前記回転部を制御して、前記基準回転角度を含む角度範囲内において予め定められた単位検出角度(TD)ごとに前記ミラーを回転させ、
前記受光部により検出される前記予め定められた単位検出角度ごとの受光信号を取得して、前記受光信号の分布または前記受光信号を用いて取得される距離の分布(MP)の少なくともいずれかの分布を生成し、
生成した前記少なくともいずれかの分布のうち前記基準角度マーカに対応する前記受光信号または前記距離を用いて、前記基準回転角度の検出角度を取得し、
取得した前記基準回転角度の検出角度と、前記予め定められた基準回転角度とを比較して前記ずれ量を検出する位置ずれ検出装置と、を備え、
前記基準角度マーカは、
前記筐体または前記窓部を構成する材料の反射率と異なる反射率を有する第一基準角度マーカ(70c1)と、
前記筐体に設けられる開口部(71)と、前記開口部を通じて前記筐体の内部に照射光(IL)を射出する光源部(72)とによって構成される第二基準角度マーカ(70c2)と、の双方を含み、
前記位置ずれ検出装置は、
前記受光部により検出される受光信号が予め定められた信号強度以上である場合に、前記第一基準角度マーカを用いて前記基準回転角度の検出角度を検出し、
前記受光部により検出される受光信号が予め定められた信号強度よりも小さい場合に、前記第二基準角度マーカを用いて前記基準回転角度の検出角度を検出する、
光測距装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の光測距装置であって、
前記回転部は、前記ミラーを一方向に沿って走査し、
前記発光部は、前記一方向に交差する方向に予め定められた幅を有するレーザ光を出射し、
前記受光部は、前記受光素子を複数備え、複数の前記受光素子は、前記予め定められた幅に対応するように配列される、
光測距装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の光測距装置であって、
前記回転角度センサは、前記ミラーの絶対回転角度および前記絶対回転角度に対する相対回転角度を取得するエンコーダである、
光測距装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
前記基準角度マーカの形状は、平面視で幾何学模様状の図形であり、
前記位置ずれ検出装置は、前記受光部によって検出された前記幾何学模様状の図形の形状の変化を用いて、前記光測距装置の異常の有無を検出する、
光測距装置。
【請求項5】
請求項
1から請求項
4までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
前記位置ずれ検出装置による前記ずれ量の検出に用いられる前記受光素子の数は、前記筐体の外部の対象物の測距に用いられる前記受光素子の数よりも小さい、
光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測距用のレーザ光を反射するミラーの回転角度を検出する回転角度センサと、ミラーの基準回転角度を検出するためのクロック信号を発生させる回路とを備える光測距装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光測距装置において、部品点数の増加を抑制しつつ、簡易な方法によりミラーの基準回転角度を検出したいといった要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、光測距装置(200c)が提供される。この光測距装置は、筐体(80)と、レーザ光(DL)を射出する発光部(40)と、前記筐体の内部に配置され、前記発光部から射出された前記レーザ光を反射させるミラー(51)と、前記ミラーを回転させる回転部(52)と、入射光を受光するための受光素子(68)を有する受光部(60)と、前記筐体に備えられ、前記ミラーによって反射されるレーザ光を前記筐体の外部に出射するための窓部(82)と、前記筐体に備えられ、前記ミラーの回転角度が予め定められた基準回転角度(AT,AT3)である場合に前記受光部により検出される基準角度マーカ(70c1,70c2)と、を備え、前記ミラーの回転角度を検出する回転角度センサ(54,54e)と、前記ミラーの回転角度と、前記回転角度センサによって検出された前記ミラーの回転角度の検出角度とのずれ量を検出する位置ずれ検出装置(100)であって、前記回転部を制御して、前記基準回転角度を含む角度範囲内において予め定められた単位検出角度(TD)ごとに前記ミラーを回転させ、前記受光部により検出される前記予め定められた単位検出角度ごとの受光信号を取得して、前記受光信号の分布または前記受光信号を用いて取得される距離の分布(MP)の少なくともいずれかの分布を生成し、生成した前記少なくともいずれかの分布のうち前記基準角度マーカに対応する前記受光信号または前記距離を用いて、前記基準回転角度の検出角度を取得し、取得した前記基準回転角度の検出角度と、前記予め定められた基準回転角度とを比較して前記ずれ量を検出する位置ずれ検出装置と、を備え、前記基準角度マーカは、前記筐体または前記窓部を構成する材料の反射率と異なる反射率を有する第一基準角度マーカ(70c1)と、前記筐体に設けられる開口部(71)と、前記開口部を通じて前記筐体の内部に照射光(IL)を射出する光源部(72)とによって構成される第二基準角度マーカ(70c2)と、の双方を含み、前記位置ずれ検出装置は、前記受光部により検出される受光信号が予め定められた信号強度以上である場合に、前記第一基準角度マーカを用いて前記基準回転角度の検出角度を検出し、前記受光部により検出される受光信号が予め定められた信号強度よりも小さい場合に、前記第二基準角度マーカを用いて前記基準回転角度の検出角度を検出する。
【0007】
この形態の光測距装置によれば、筐体に備えられる基準角度マーカは、ミラーの回転角度が予め定められた基準回転角度である場合に受光部により検出される。したがって、光測距装置に基準回転角度を検出するためのセンサ等を別に備えることなく、部品点数の増加を抑制し、ミラーと受光部とを利用した簡易な方法により基準回転角度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の光測距装置の構成を表す説明図。
【
図4】位置ずれ検出装置による回転角度ずれ検出制御を表すフロー図。
【
図6】信号強度分布を用いて基準角度マーカを検出する方法を表す説明図。
【
図7】第2実施形態の光測距装置の構成を表す説明図。
【
図8】第2実施形態での基準角度マーカの検出方法を表す説明図。
【
図9】第3実施形態の光測距装置の構成を表す説明図。
【
図10】信号強度分布を用いて第一基準角度マーカを検出する方法を表す説明図。
【
図11】信号強度分布を用いて第二基準角度マーカを検出する方法を表す説明図。
【
図12】第4実施形態の光測距装置の構成を表す説明図。
【
図13】ミラーに遮蔽される基準角度マーカを表す説明図。
【
図14】第5実施形態の光測距装置の構成を表す説明図。
【
図15】外乱光の信号強度を用いて基準回転角度を検出する方法を表す説明図。
【
図16】測距と回転角度ずれ検出とに用いられる受光領域を表す説明図。
【
図17】基準角度マーカを検出した画像を表す説明図。
【
図18】他の実施形態での基準角度マーカの例を表す説明図。
【
図19】窓部に備えられる基準角度マーカの例を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、本開示における第1実施形態としての光測距装置200は、筐体80と、発光部40と、走査部50と、受光部60と、位置ずれ検出装置100と、を備える。発光部40と、走査部50と、受光部60とは、筐体80の内部に配置されている。筐体80は、窓部82と、基準角度マーカ70とを備える。光測距装置200は、例えば、車両に搭載され、障害物の検出や障害物までの距離を測定するために使用される。図示したXYZ方向は、
図1を含む各図において共通する。
【0010】
発光部40は、光源としての半導体レーザを出射するレーザダイオードを備え、測距用のレーザ光DLを射出する。本実施形態において、レーザ光DLは、鉛直方向に予め定められた出射幅を有している。走査範囲を効率良く拡大させるために、レーザ光DLの出射幅は、回転部52の走査方向と交差する方向で設定されることが好ましい。レーザ光DLの出射幅の大きさは、例えば、光源の数、光源の配列、複数の光源のそれぞれの角度、ならびに発光部40内に配置されるレーザ光DLの出射角度を調節するレンズを用いること等によって、任意に設定することができる。発光部40の光源はレーザダイオードのほか、固体レーザといった他の光源を用いてもよい。
【0011】
走査部50は、いわゆる一次元スキャナによって構成される。走査部50は、ミラー51と、回転部52と、回転角度センサ54とを備える。回転部52は、後述する制御部110からの制御信号を受けて、中心軸AXを回転軸として正転および逆転を行い、回転部52に固定されたミラー51を水平面に沿った一方向に走査させる。回転角度センサ54は、A相およびB相の信号を検出して相対回転角度を取得するインクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダである。回転角度センサ54は、回転部52の回転角度を予め定められた角度ごとに検出する。回転角度センサ54によって検出される回転部52の回転角度を、以下、検出角度とも呼ぶ。
【0012】
窓部82は、走査部50に対してY方向側となる筐体80の壁面に備えられる。窓部82は、例えばガラスなどのレーザ光DLを透過する矩形状の部材で構成される。発光部40から出射されたレーザ光DLは、ミラー51によって反射され、窓部82を透過して筐体80の外部に出射される。
【0013】
走査範囲RAは、光測距装置200が測距を行うためにレーザ光DLを走査する範囲である。走査範囲RA内の走査は、回転角度センサ54によって回転部52の回転角度を検出しながら、後述する制御部110によって回転部52を回転させることによって実現される。受光部60は、走査範囲RA内の対象物、例えば物体OBからの反射光RLを受光すると、入射光の受光状態に応じた信号を位置ずれ検出装置100に出力する。
【0014】
位置ずれ検出装置100は、周知のマイクロプロセッサやメモリを備え、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することで、制御部110と、加算部120と、信号強度分布生成部130と、ピーク検出部140と、測距部150と、位置ずれ算出部160と、補正部170との各部を制御する。本実施形態において、位置ずれ検出装置100は、受光部60が出力する信号を用いて、走査範囲RA内に存在する物体OBまでの距離の測定、すなわち測距と、ミラー51の回転角度のずれ量の検出とを実行する。位置ずれ検出装置100は、測距を実行するごとに複数回のずれ量の検出を実行してもよく、車両を停止する時や車両を起動する時、光測距装置200を起動する時等の特定のタイミングで行ってもよい。「ミラー51の回転角度のずれ量」とは、ミラー51の回転角度と、回転角度センサ54によって検出された回転部52の検出角度とのずれ量のことを表す。回転角度と検出角度とのずれは、例えば、光測距装置200の起動時において、回転部52の回転角度の絶対位置が変動することにより発生する。
【0015】
制御部110は、発光部40と、走査部50と、受光部60とを含む各部の制御を行う。より具体的には、制御部110は、発光部40に対してレーザダイオードを発光させる指令信号や、受光部60の受光素子68をアクティブにするアドレス信号の他、信号強度分布生成部130にヒストグラムを生成させる指示信号や、走査部50の回転部52に対する制御信号を出力する。
【0016】
加算部120は、後述する受光部60の画素66に含まれる受光素子68の出力を加算する回路である。入射光が一つの画素66に入射すると、画素66に含まれる各受光素子68が信号を出力する。加算部120は、各画素66に含まれる複数のSPADから略同時に出力される信号の数を計数することにより、画素66毎に加算値を求める。
【0017】
信号強度分布生成部130は、加算部120の加算結果を複数回足し合せてヒストグラムを生成し、ピーク検出部140に出力する。ピーク検出部140は、信号強度分布生成部130から入力された信号強度を解析して、反射光RLに対応する信号のピークの位置を検出する。ピーク検出部140は、距離の検出では時間に対するピークの位置を検出し、後述する回転角度ずれ検出では回転部52の回転角度に対するピークの位置を検出する。
【0018】
測距部150は、いわゆるTOF(time of flight)を利用して、走査範囲RA内に存在する物体OBまでの距離の測定を行う。より具体的には、測距部150は、発光部40がレーザ光DLを出射した時点から受光素子68が反射光RLを受け取るまでの時間から、物体OBまでの距離を演算する。ピーク検出部140によって反射光RLに対応する信号のピークが検出されると、測距部150は、照射光パルスが発光されてから、反射光パルスのピークまでの時間を検出することで、物体OBまでの距離を検出する。
【0019】
位置ずれ算出部160は、後述する回転角度ずれ検出制御を実行して、ミラー51の回転角度のずれ量の検出を実行する。補正部170は、回転角度センサ54による検出角度に対して、位置ずれ算出部160が検出したミラー51の回転角度のずれ量分を補正する。
【0020】
図2を用いて受光部60の構成について説明する。受光部60は、受光面に二次元配列される複数の画素66を有する。本実施形態において、画素66は、前述のレーザ光DLの出射幅に対応するように、鉛直方向に沿って長尺な略矩形状に配列されている。画素66は、物体OBからの反射光の入射強度に応じた信号を出力する複数の受光素子68で構成されている。本実施形態において、画素66は、水平方向および鉛直方向においてそれぞれ5個ずつで配列された複数の受光素子68で構成されるが、一つの受光素子68であってもよく、任意の数で構成されてもよい。本実施形態において、受光素子68には、シングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)が用いられる。受光素子68には、PINフォトダイオードが用いられてもよい。各SPADは、光(フォトン)を入力すると、光の入射を示すパルス状の出力信号を出力する。受光素子68が出力するパルス信号は、位置ずれ検出装置100に入力される。
【0021】
図3を用いて、筐体80に備えられる基準角度マーカ70の構成について説明する。基準角度マーカ70は、回転部52の基準回転角度を検出するための被検出体であり、受光部60によって検出され得る。基準回転角度とは、回転角度ずれを検出するための基準となるミラー51の回転角度である。本実施形態において、基準角度マーカ70は、
図3に示すように、長手方向がZ方向に平行な略長方形状を有する。本実施形態において、基準角度マーカ70は、筐体80の壁面よりも高い反射率を有する材料で形成され、貼付や組み付け等によって筐体80の内部側の壁面に固定されている。
【0022】
図4とともに適宜に
図5,
図6を用いて、基準角度マーカ70を用いた回転角度ずれ検出制御について説明する。
図4に示す回転角度ずれ検出制御は、例えば、光測距装置200がオンされることによって開始され、光測距装置200による測距を開始する前に実行される。本実施形態において、回転角度ずれ検出制御は、発光部40を停止させた状態で行われる。制御部110は、回転部52を回転させて、ミラー51を回転ずれ検出のための初期位置に移動させる(ステップS20)。
【0023】
図5を用いて、回転角度ずれ検出制御における回転部52の制御について説明する。
図5には、初期位置に移動された状態の回転部52とミラー51とが示されている。回転部52の初期位置は、任意に設定可能である。回転部52の初期位置は、例えば、ミラー51の反射面と基準角度マーカ70とが対向する位置など、基準角度マーカ70からの入射光を検出しやすい位置に設定することが好ましい。初期位置での回転部52の回転角度は、回転角度ASである。初期位置でのミラー51は、方向D1からの入射光を受光部60に向けて反射する。
【0024】
方向D2からの入射光は、基準角度マーカ70からの入射光を含む。本実施形態において、方向D2からの入射光を受光部60が受光し得る回転部52の回転角度が基準回転角度ATである。スキャン終了位置での回転部52の回転角度は、回転角度AEである。終了位置でのミラー51は、方向D3からの入射光を受光部60に向けて反射する。制御部110は、回転角度ずれ検出制御において、基準回転角度ATを含む、初期位置から終了位置までの予め定められた回転角度、すなわち回転角度ASから回転角度AEまでの範囲RBをスキャンして、入射光を受光部60に受光させる。
【0025】
方向D1からの入射光は、初期位置のミラー51によって反射されて、受光部60の受光素子68によって受光信号として取得され、パルス信号として位置ずれ検出装置100の加算部120に入力される(ステップS30)。加算部120は、画素66に含まれる受光素子68の出力信号を加算する。制御部110は、回転部52の回転角度が回転角度AEに到達したか否か、すなわち予め定められた回転角度である回転角度ASから回転角度AEまでの範囲RBのスキャンが完了したか否かを確認する(ステップS40)。
【0026】
制御部110は、予め定められた回転角度のスキャンが完了していない場合(S40:NO)、ステップS50に移行する。制御部110は、回転部52を制御して、予め定められた単位検出角度TDだけミラー51を回転させる(ステップS50)。予め定められた単位検出角度TDとは、制御部110の制御による回転部52の回転角度の送りピッチのことを表す。制御部110は、回転部52を制御して、予め定められた単位検出角度TDだけミラー51を回転させると、ステップS30に移行する。
【0027】
制御部110は、範囲RBのスキャンが完了している場合、すなわち回転角度AEでのスキャンを完了した場合には(S40:YES)、ステップS60に移行する。信号強度分布生成部130は、回転角度ASから回転角度AEまでの範囲RBで取得した加算部120の加算結果を複数回足し合せてヒストグラムを生成し、ピーク検出部140に出力する(ステップS60)。
【0028】
図6を用いて、位置ずれ算出部160による回転角度ずれの検出方法について説明する。位置ずれ算出部160は、ミラー51の回転角度と、回転角度センサ54によって検出されたミラー51の回転角度の検出角度とのずれ量を検出する。
図6には、信号強度分布生成部130によって生成される信号強度の分布の一例が示されている。
図6の横軸は、検出角度を表し、縦軸は信号強度の大きさを表す。
図6の信号強度分布は、予め定められた回転角度の範囲RB内、すなわち回転角度ASから回転角度AEまでの信号強度の分布である。
【0029】
上述したように、基準角度マーカ70は、筐体80の壁面よりも高い反射率を有する材料で形成される。そのため、基準角度マーカ70からの入射光は、範囲RBでの信号強度分布において、筐体80の壁面から取得される信号強度よりも大きい信号強度として取得される。
図6の例において、ピーク検出部140は、検出角度AUでの信号強度のピークをピーク信号PTとして検出する(ステップS70)。
【0030】
位置ずれ算出部160は、ピーク検出部140によって検出されたピーク信号PTの検出角度AUと、基準回転角度ATとの差分を算出することにより検出角度のずれ量を算出する(ステップS80)。
図6の例において、検出角度AUは、基準回転角度ATに対して+TD度である。位置ずれ算出部160は、ミラー51の回転角度のずれ量を+TD度として検出する。
【0031】
補正部170は、回転部52に対して、位置ずれ算出部160によって検出されたずれ量分の回転角度を補正する(ステップS90)。より具体的には、回転角度センサ54による検出角度に対して、回転部52をずれ量分である+TD度分を修正するオフセット補正を行う。オフセット補正により、回転角度センサ54による検出角度と、ミラー51の回転角度とが一致する状態となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の光測距装置200によれば、筐体80に備えられる基準角度マーカ70は、ミラー51の回転角度が予め定められた基準回転角度ATである場合に受光部60により検出される。すなわち、基準回転角度ATは、基準角度マーカ70を利用して検出される。したがって、光測距装置200に基準回転角度ATを検出するためのセンサ等を別に備えることなく、部品点数の増加を抑制し、光測距装置200の構成部品であるミラー51と受光部60とを利用した簡易な方法により基準回転角度ATを検出することができる。
【0033】
本実施形態の光測距装置200によれば、位置ずれ検出装置100は、単位検出角度TDごとに受光部60により検出される受光信号の信号強度分布を作成し、信号強度分布のうち基準角度マーカ70に対応する信号強度のピーク信号PTを用いて、基準回転角度ATの検出角度AUを取得する。位置ずれ検出装置100は、取得した検出角度AUと基準回転角度ATとの比較により、ミラー51の回転角度と検出角度とのずれ量を検出し、回転角度センサ54の検出角度を適正値に補正することができる。
【0034】
B.第2実施形態:
図7に示すように、第2実施形態の光測距装置200bは、基準角度マーカ70に代えて基準角度マーカ70bを備える点において、第1実施形態の光測距装置200と相違し、その他の構成は第1実施形態の光測距装置200と同様である。本実施形態において、発光部40からのレーザ光DLを反射し得る筐体80と、レーザ光DLを透過する窓部82との境界82e1,82e2が、基準角度マーカ70bとして機能する。筐体80と窓部82の一方側の端部との境界82e1には、基準回転角度ATb1が設定される。筐体80と窓部82の他方側の端部との境界82e2には、基準回転角度ATb2が設定される。基準角度マーカ70bを区別する場合、境界82e1を一方側の基準角度マーカ70b1とし、境界82e2を基準角度マーカ70b2とする。
【0035】
本実施形態では、位置ずれ検出装置100による回転角度ずれ検出制御は、発光部40からレーザ光DLを出射させた状態、すなわち測距処理によって実行される。制御部110は、発光部40からレーザ光DLを出射させながら、回転角度AS2から回転角度AE2までの範囲RB2において、回転部52を単位検出角度TDごとに回転させながらスキャンさせる。範囲RB2は、測距用の範囲RAよりも広い範囲であり、境界82e1,82e2を含む範囲である。本実施形態において、範囲RB2からの反射光を受光部60が検出することにより、加算部120と、信号強度分布生成部130と、ピーク検出部140と、測距部150とによって、範囲RB2での距離画像MPを生成する。
【0036】
図8に、位置ずれ検出装置100によって生成された距離画像MPの一例を示す。
図8に示すように、距離画像MPには、物体OBのほか、基準回転角度ATb1に位置する境界82e1と、基準回転角度ATb2に位置する境界82e2とが示されている。上述したように、窓部82は、矩形状であり、各境界82e1,82e2は、Z方向に平行な直線として検出される。本実施形態において、位置ずれ算出部160は、境界82e1を検出した検出角度と、基準回転角度ATb1との差分を算出することにより、ミラー51の回転角度のずれ量を算出する。位置ずれ算出部160は、検出角度と基準回転角度ATb1との差分の算出とともに、またはこれに代えて、境界82e2を検出した検出角度と、基準回転角度ATb2との差分の算出を行って、検出角度のずれ量を算出してもよい。位置ずれ算出部160は、距離画像MPのZ方向に平行な直線状の複数の画素として検出される境界82e1,82e2において、Z方向の1画素ごとに検出角度のずれ量を算出してもよい。ずれ量の検出に複数の画素を用いることによって、ずれ量の検出精度を高くすることができる。位置ずれ検出装置100は、距離画像MPを用いず、受光部60によって取得される各境界82e1,82e2からの反射光の信号強度や輝度のマッピング結果を用いて検出角度のずれ量を算出してもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の光測距装置200bによれば、検出角度と基準回転角度ATb1,ATb2とのずれ量は、光測距装置200bの測距用の構成部品である筐体80と窓部82との境界82e1,82e2を利用して検出される。したがって、光測距装置200に基準回転角度ATb1,ATb2を検出するためのセンサ等を備えず、部品点数の増加を抑制しつつ、簡易な方法により基準回転角度ATb1,ATb2を検出し、検出角度のずれを補正することができる。位置ずれ検出装置100は、測距による距離画像MPを利用するので、光測距装置200bによる測距とともに検出角度のずれ量を検出することができる。
【0038】
C.第3実施形態:
図9に示すように、第3実施形態の光測距装置200cは、基準角度マーカ70に代えて第一基準角度マーカ70c1と第二基準角度マーカ70c2とを備える点において、第1実施形態の光測距装置200と相違し、その他の構成は第1実施形態の光測距装置200と同様である。光測距装置200cは、後述するように、筐体80内の輝度に応じて利用するマーカを切り換えて回転角度ずれ検出制御を実行する。
【0039】
第一基準角度マーカ70c1は、筐体80の壁面よりも低い反射率を有する点で、第1実施形態の基準角度マーカ70と相違する。第一基準角度マーカ70c1は、例えば、筐体80の壁面よりも低い反射率を有する材料や、筐体80の壁面の表面粗さよりも大きい表面粗さに加工されることによって形成される。第一基準角度マーカ70c1が窓部82に備えられる場合には、第一基準角度マーカ70c1は、窓部82よりも低い反射率を有するように構成されてよい。第一基準角度マーカ70c1は、筐体80の壁面や窓部82よりも高い反射率を有するように構成されてもよい。
【0040】
第二基準角度マーカ70c2は、回転角度ASから回転角度AEまでの範囲RBに含まれる基準回転角度AT3に対応する位置に配置される。基準回転角度AT3は、第二基準角度マーカ70c2からの入射光を含む方向D4からの入射光を受光部60が受光し得る回転部52の回転角度である。
【0041】
第二基準角度マーカ70c2は、筐体80に設けられる開口部71と、筐体80の外部側の壁面に取り付けられた光源部72とによって構成される。開口部71は、筐体80の壁面に設けられる貫通孔であり、長手方向がZ方向に平行する略長方形状の貫通孔である。光源部72は、例えば発光ダイオード等の発光素子であり、開口部71を通じて筐体80の内部の方向D4に向けて照射光ILを射出する。
【0042】
図10および
図11を用いて、位置ずれ算出部160による第一基準角度マーカ70c1を利用した基準回転角度ATの検出方法と、第二基準角度マーカ70c2を利用した基準回転角度AT3の検出方法について説明する。本実施形態の光測距装置200cは、回転角度ずれ検出制御を開始すると、発光部40を停止させた状態で受光部60による入射光を受光させて、筐体80内が暗状態であるか明状態であるかを判定する。より具体的には、位置ずれ検出装置100は、受光部60で取得した入射光の信号強度の大きさが予め定められた閾値よりも小さい場合に暗状態であると判定し、信号強度の大きさが予め定められた閾値以上である場合に明状態であると判定する。
【0043】
位置ずれ検出装置100は、受光部60により検出される受光信号が予め定められた信号強度以上である場合、すなわち明状態と判定した場合、第一基準角度マーカ70c1を用いて回転角度ずれ検出制御を実行する。
図10に、範囲RBのスキャンにより取得した明状態での信号強度分布の一例を示す。第一基準角度マーカ70c1は、筐体80の壁面よりも低い反射率を有するので、位置ずれ検出装置100は、低い信号強度のピーク信号PT2を検出することで基準回転角度ATを検出できる。
【0044】
位置ずれ検出装置100は、受光部60により検出される受光信号が予め定められた信号強度よりも小さいと判定した場合、すなわち暗状態と判定した場合、第二基準角度マーカ70c2を用いて回転角度ずれ検出制御を実行する。制御部110は、暗状態での回転角度ずれ検出制御において、光源部72をオンにする。
図9に示すように、光源部72から出射される照射光ILは、方向D4に出射され、基準回転角度AT3のミラー51によって反射されて受光部60に受光され得る。
図11に、範囲RBのスキャンにより取得した暗状態での信号強度分布の一例を示す。位置ずれ検出装置100は、第二基準角度マーカ70c2から出射された照射光ILによるピーク信号PT3を検出することで基準回転角度AT3を検出できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の光測距装置200cによれば、筐体80の壁面よりも低い反射率を有する第一基準角度マーカ70c1と、光源部72から照射光ILを射出する第二基準角度マーカ70c2とを備える。第一基準角度マーカ70c1を利用することにより、筐体80内が明状態であっても基準回転角度ATを検出することができる。第二基準角度マーカ70c2を利用することにより、筐体80内が暗状態であっても基準回転角度ATを検出することができる。
【0046】
本実施形態の光測距装置200cによれば、受光部60により検出される受光信号と、予め定められた信号強度とを比較して明状態であるか暗状態であるかを判定し、筐体80内の明暗の状態に応じて利用するマーカを切り換えて回転角度ずれ検出制御を実行する。したがって、光測距装置200cが配置される環境の明るさにかかわらず、基準回転角度を検出して、回転角度ずれを検出することができる。
【0047】
D.第4実施形態:
図12に示すように、第4実施形態の光測距装置200dは、基準角度マーカ70に代えて基準角度マーカ70dを備える点において、第1実施形態の光測距装置200と相違し、その他の構成は第1実施形態の光測距装置200と同様である。基準角度マーカ70dは、筐体80の壁面よりも高い反射率を有する材料で形成され、発光部40や受光部60に対向する位置の筐体80の壁面に固定される。
【0048】
図12には、回転角度が初期位置である状態のミラー51が示されている。
図12に示すように、ミラー51が初期位置の回転角度に配置されている状態で、受光部60は、方向D5で表す基準角度マーカ70dからの入射光を受光し得る。初期位置の状態のミラー51は、発光部40からの出射光を反射せず、範囲RAからすなわち、本実施形態において、ミラー51が初期位置である回転角度が、基準回転角度である。
【0049】
初期位置の回転部52が回転されると、ミラー51は、
図13に示すように、発光部40から出射されるレーザ光DLを反射し得る状態となる。他方、回転部52によりミラー51が回転されると、受光部60は、
図13に示すように、基準角度マーカ70dをミラー51によって遮蔽され、基準角度マーカ70dからの入射光を受光しなくなる。すなわち、本実施形態の光測距装置200dでは、初期位置の状態の回転部52の回転角度が基準回転角度であり、初期位置の状態の回転部52の回転角度と、回転角度センサ54による検出角度とを比較することによってミラー51の回転角度のずれ量を検出する。
【0050】
本実施形態の光測距装置200dによれば、基準角度マーカ70dは、ミラー51が初期位置の回転角度に配置されている状態で、受光部60によって検出可能な位置に配置される。基準回転角度を検出し得る位置を、光測距装置200dによる測距の開始位置に近い位置に設定することにより、測距と基準回転角度の検出とにおいて回転部52を回転させる範囲を小さくすることができる。基準角度マーカ70dは、回転部52によりミラー51が回転されると、ミラー51によって遮蔽される。したがって、光測距装置200dによる測距時に、基準角度マーカ70dからの入射光が外乱光として受光される不具合を抑制することができる。
【0051】
E.第5実施形態:
図14および
図15を参照して第5実施形態の光測距装置200eの構成について説明する。
図14に示すように、第5実施形態の光測距装置200eは、回転角度センサ54に代えて回転角度センサ54eを備える点において、第2実施形態の光測距装置200bと相違し、その他の構成は第2実施形態の光測距装置200bと同様である。本実施形態では、第2実施形態と同様に、筐体80と窓部82との境界82e1,82e2が、基準角度マーカ70b1,70b2として機能する。本実施形態では、位置ずれ検出装置100による回転角度ずれ検出制御において、いわゆる外乱光を受光部60の受光素子68によって受光信号として取得することによって実行される。
【0052】
回転角度センサ54eは、A相、B相、ならびにZ相の信号の検出により、絶対回転角度および絶対回転角度に対する相対回転角度を取得するインクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダである。回転角度センサ54eは、絶対回転角度を取得可能なアブソリュート形のエンコーダを用いてもよい。
【0053】
図15には、範囲RB2の走査を完了した際に、信号強度分布生成部130によって生成された信号強度分布の例が模式的に示されている。
図15に示す結果は、Z方向の1つの画素66分の結果に相当する。
図15には、窓部82から入射する外乱光の信号強度BL1と、回転角度AS2から境界82e1の検出角度まで、および回転角度AE2から境界82e2の検出角度までの外乱光、すなわち筐体80の内部での外乱光の信号強度BL2とが示されている。一般に、信号強度BL1は、信号強度BL2よりも大きくなり、信号強度BL2から信号強度BL1への変化点K1での検出角度や、信号強度BL1から信号強度BL2への変化点K2での検出角度は、境界82e1,82e2の検出角度として考えることができる。
【0054】
制御部110は、発光部40を停止し、受光部60を駆動させた状態で回転部52を回転させて、
図8を用いて前述した基準回転角度ATb1,ATb2を含む回転角度AS2から回転角度AE2までの範囲RB2を走査する。ピーク検出部140は、信号強度分布生成部130から入力された
図15に示すヒストグラムを解析して、例えば、微分などによって、検出角度に対する信号強度の変化量を算出し、変化点K1に対応する変化量のピークを抽出する。ピーク検出部140は、変化点K1に対応するピークから検出角度AU1を検出し、位置ずれ算出部160に出力する。位置ずれ算出部160は、境界82e1の検出角度AU1と、境界82e1に設定される基準回転角度ATb1との差分を算出することにより、ミラー51の回転角度のずれ量を算出する。位置ずれ算出部160は、検出角度AU1と基準回転角度ATb1との差分の算出とともに、またはこれに代えて、変化点K2から導き出される境界82e2の検出角度AU2と、基準回転角度ATb2との差分の算出を行って、検出角度のずれ量を算出してもよい。
【0055】
本実施形態の光測距装置200eによれば、外乱光を利用して、窓部82の境界82e1の検出角度AU1を検出する。したがって、発光部40を駆動させることなく、簡易な構成で回転角度のずれ量を検出することができる。また、発光部40の停止期間中、すなわち測距処理の停止期間を利用して回転角度のずれ量を検出することができる。
【0056】
本実施形態の光測距装置200eによれば、回転角度センサ54eには、ミラー51の絶対回転角度および相対回転角度を取得するインクリメンタル形のエンコーダが用いられる。例えば、光測距装置200eの起動時などに、ミラー51の相対回転角度を検出することにより、ミラー51を、絶対回転角度に基づく相対回転角度に原点復帰させることができる。したがって、光測距装置200の停止期間中のミラー51の回転角度のずれを抑制または防止することができる。
【0057】
F.他の実施形態:
(F1)上記各実施形態では、走査範囲RAでの測距と、回転角度ずれ検出とで使用される受光素子68の範囲が同じである例を示した。これに対して、
図16に示すように、走査範囲RAでの測距と、回転角度ずれ検出とで使用される受光素子68の範囲を切り換えてもよい。
図16の例において、制御部110は、測距には、例えば3×9個の受光素子68からなる受光領域AR1をアクティブにするアドレス信号を出力し、回転角度ずれ検出には、例えば1×7個の受光素子68からなる受光領域AR2をアクティブにするアドレス信号を出力する。この形態の光測距装置によれば、回転角度ずれ検出にアクティブにする受光領域AR2を測距用の受光領域AR1よりも小さくすることで、測定誤差を小さくして高い分解能で回転角度ずれを検出することができる。
【0058】
(F2)上記各実施形態では、基準角度マーカによって基準回転角度を検出する例を示した。これに対して、位置ずれ検出装置100は、受光部60によって検出された幾何学模様の図形の形状の変化を用いて、光測距装置200の異常の有無を検出してもよい。
図17には、各受光素子68でそれぞれ取得した信号強度分布を二次元平面に表す画像MP2が示されている。適正に検出される状態の基準角度マーカ70の長手方向に沿った方向を方向DPとする。受光部60によって検出された基準角度マーカ70の検出画像を検出マーカ70Qとし、検出マーカ70Qの長手方向に沿った方向を方向DQとしたとき、方向DPと方向DQとの間の角度θ1を利用して、光測距装置200の発光部40やレンズ等の光学系といった各部の据え付け異常といった基準回転角度以外の異常を検出してもよい。検出マーカ70Qの形状の歪みから光測距装置200の光学系の異常を検出してもよく、検出マーカ70Qのぼやけを検出して光学系の焦点ずれ等の異常を検出してもよい。
【0059】
(F3)上記第1実施形態において、基準角度マーカ70が略長方形状である例を説明した。これに対して、基準角度マーカ70の形状は、長方形のほか、正方形や、円形、直線といった種々の幾何学模様の図形であってよい。
図18に基準角度マーカ70の一例としての基準角度マーカ70eを示す。基準角度マーカ70eは、長手方向がZ方向に平行し、短手方向を距離Dt2とする略長方形状のマーカ701eと、長手方向がZ方向に平行し、短手方向を距離Dt3とするマーカ702eとを含む。マーカ701eと、マーカ702eとは互いに距離Dt1だけ離間して筐体80の壁面に配置される。この形態の光測距装置によれば、マーカ701eとマーカ702eとからなる複数の基準角度マーカ70eによって検出数を増加できる。受光部60によって取得したマーカ701eとマーカ702eとの検出像と各距離Dt1,Dt2,Dt3のずれや、マーカ701eとマーカ702eとの平行度や形状の変化、焦点ずれ等から、受光部60の据え付け異常や受光レンズの異常、ミラー51の据え付け異常などの光測距装置の各部の異常を検出することができる。
【0060】
(F4)上記各実施形態において、走査部50は、回転部52とミラー51とを備える一次元スキャナを例に説明したが、走査部50は、互いに直交する軸方向で回転する回転部と、ミラーとで構成される二次元スキャナで構成されてもよい。また、上記各実施形態では、回転部52は、ミラー51を水平面に沿った一方向、すなわち水平方向に走査させる例を示したが、ミラー51は、例えば、鉛直方向に沿って走査されてもよく、任意の一方向に沿って走査されてよい。この場合において、受光部60における画素66の配列は、レーザ光DLの出射幅に対応するように、水平方向に沿って長尺な略矩形状に配列されてよい。
【0061】
(F5)上記各実施形態において、制御部110は、回転部52を制御して、予め定められた単位検出角度TDずつでミラー51を回転させて範囲RBをスキャンする例を示した。これに対して、範囲RBの初回のスキャンにおいて、検出角度を2×TDや3×TDといった、単位検出角度TDよりも大きい検出角度で範囲RBをスキャンして、基準角度マーカ70のおおよその位置を特定したのちに、特定された基準角度マーカ70近傍の範囲を単位検出角度TDで分解能を高めた状態でスキャンしてもよい。このような態様であれば、基準角度マーカ70のトータルの検出期間を短縮することができる。
【0062】
(F6)上記第2実施形態において、筐体80と窓部82との境界82e1,82e2を基準角度マーカ70b1,70b2として利用し、基準角度マーカ70b1、70b2から基準回転角度ATb1,ATb2を検出する例を示した。これに対して、境界82e1,82e2を、例えばZ方向に沿った直線状に形成し、受光部60による境界82e1,82e2の検出像から、受光部60の据え付け異常や受光レンズの異常、ミラー51の据え付け異常などの光測距装置の各部の異常を検出してもよい。
【0063】
(F7)上記第3実施形態において、第一基準角度マーカ70c1と、第二基準角度マーカ70c2とを暗状態と明状態とで切り換えて利用する例を示した。これに対して、光測距装置は、回転角度ずれ検出において、受光部60による入射光の受光を行わず、すなわち明暗状態を取得せず、第一基準角度マーカ70c1と、第二基準角度マーカ70c2とのうち受光部60によって検出できるいずれかのマーカから基準回転角度を取得してよい。
【0064】
(F8)上記第3実施形態において、第一基準角度マーカ70c1と、第二基準角度マーカ70c2との双方を備える例で説明したが、いずれか一方のみを備える態様であってもよい。第一基準角度マーカ70c1と、第二基準角度マーカ70c2とのうち、筐体80内の明暗状態に応じて適した基準角度マーカを備えることが好ましい。
【0065】
(F9)上記各実施形態では、筐体80の内部に備えられる基準角度マーカの例、および筐体80と窓部82との境界82e1,82e2が基準角度マーカとして用いられる例を示した。これに対して、基準角度マーカは、窓部82に備えられてよく、また、窓部82に備えられる部材が基準角度マーカとして用いられてもよい。
図19には、窓部82に備えられる基準角度マーカ70f1,70f2の例が示されている。本実施形態において、窓部82には、ヒータ83が備えられている。ヒータ83は、例えば、窓部82の結露等を防止するために用いられる。ヒータ83は、導電性を有する透明な膜と、窓部82の両端近傍に備えられる電極84,85とを備えている。ヒータ83は、電極84,85に電圧を印加することにより通電して発熱する。電極84,85は、Z方向に沿って長尺な形状を有しており、基準回転角度ATf1,ATf2となる位置に配置されている。本実施形態では、電極84,85が基準角度マーカ70f1,70f2として機能する。位置ずれ検出装置100は、例えば、測距処理によるレーザ光DLの電極84,85からの反射光を受光した受光部60から出力される受光信号を用いて電極84,85の検出角度を取得して、基準回転角度ATf1,ATf2との差分から回転角度のずれ量を検出する。受光信号を用いて生成した電極84,85の距離画像や距離データから回転角度のずれ量を検出してもよい。電極84,85を互いに平行な状態で配置し、基準角度マーカ70f1,70f2の配置関係から受光部60の据え付け異常や受光レンズの異常、ミラー51の据え付け異常などの光測距装置の各部の異常を検出してもよい。基準角度マーカ70f1,70f2は、電極84,85に代えて、電極84,85に通電するための配線であってもよい。基準角度マーカ70f1,70f2は、電極84,85に代えて、受光部60によって検出可能な幾何学模様を窓部82に描画してもよく、当該幾何学模様に設定される基準回転角度と、検出角度との差分から回転角度のずれ量を検出してもよい。この形態の光測距装置200によれば、回転角度ずれ検出制御における走査範囲を、窓部82内に抑えることができ、筐体80の内部を走査範囲に含む場合に比べて、回転角度のずれ量の検出速度を向上することができる。
【0066】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0067】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
40…発光部、51…ミラー、52…回転部、60…受光部、68…受光素子、70,70b1,70b2,70c1,70c2,70d,70e,70f1,70f2…基準角度マーカ、80…筐体、82…窓部、200,200b,200c,200d,200e…光測距装置、DL…レーザ光