(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】移動体検出装置及び移動体検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20240618BHJP
G01P 1/02 20060101ALI20240618BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01D11/24 W
G01P1/02
G01D5/14 E
(21)【出願番号】P 2020140010
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】南雲 友博
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097974(WO,A1)
【文献】特開平10-181466(JP,A)
【文献】特許第6579226(JP,B1)
【文献】特開2017-083231(JP,A)
【文献】特開平10-243520(JP,A)
【文献】特開平11-230975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24
G01D 5/00 ~ 5/252
G01P 1/00 ~ 3/80
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と、
移動体の移動によって変化する前記磁石による磁場を検出する磁気センサと、
前記磁石及び前記磁気センサを収容するインナケースと、
前記磁気センサと電気的に接続され、前記インナケースの外部へ引き出される配線部と、を備え、
前記インナケースは、前記配線部を固定する配線固定部と、外部へ引き出される前記配線部が通過する引出口と、前記インナケースに対す
るアウタケースの位置を決めるためのボスと、を有し、
前記配線固定部は、前記配線部の一部に溶着され、
前記ボスは、前記引出口と隣り合う位置に設けられるとともに、前記引出口から前記インナケースの外部へ引き出された前記配線部が延びる方向とは反対方向に位置し、
前記ボスは、軸線に沿って立つ柱状をなし、側面部と、前記側面部から前記軸線を中心とする径方向に突出するリブと、を有し、
前記リブは、前記軸線を法線とする平面と平行な平坦部と、前記平坦部の外周端と前記側面部とを繋ぐ傾斜部と、を有する、移動体検出装置。
【請求項2】
磁石と、
移動体の移動によって変化する前記磁石による磁場を検出する磁気センサと、
前記磁石及び前記磁気センサを収容するインナケースと、
前記磁気センサと電気的に接続され、前記インナケースの外部へ引き出される配線部と、
前記インナケースの周囲を覆うアウタケースと、
前記アウタケースに保持され、金属からなる筒状体と、を備え、
前記インナケースは、前記配線部を固定する配線固定部と、外部へ引き出される前記配線部が通過する引出口と、前記インナケースに対する前記アウタケースの位置を決めるためのボスと、を有し、
前記配線固定部は、前記配線部の一部に溶着され、
前記ボスは、前記筒状体と前記引出口との間に位置し、
前記インナケースは、前記ボスと隣り合う位置に設けられ、前記筒状体側に向けて突起する突起部を有し、
前記突起部は、前記筒状体に当接する、移動体検出装置。
【請求項3】
前記磁気センサと電気的に接続されるリード部をさらに備え、
前記配線部は、前記リード部を介して前記磁気センサと電気的に接続され、
前記インナケースは、前記リード部を固定するリード固定部を有し、
前記リード固定部は、前記リード部の一部に溶着されている、
請求項1又は2に記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記インナケースは、前記配線部のうち、前記配線固定部と前記引出口との間に位置する部分を収容する凹部を有し、
前記引出口には、前記凹部から前記配線部が外れることを抑制するフックが設けられている、
請求項1又は2に記載の移動体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体検出装置及び移動体検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、磁石が形成する磁場変化に基づいて移動する物体(以下、移動体と言う。)を検出する移動体検出装置が記載されている。特許文献1に記載の移動体検出装置は、磁石と、磁石による磁場変化を検出する磁気センサを収容するインナケースとを備え、磁気センサと電気的に接続されてインナケースの外部へ引き出される配線部を、インナケースに取り付けられるコードキャップによって保持固定する構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造によっても配線部を良好に固定することは可能である。しかしながら、配線部を所望の引き出し方向に折り曲げた際に配線部がずれて、配線部と磁気センサの接続不良が生じることを抑制する点については、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、配線部と磁気センサの接続不良が生じることを抑制することができる移動体検出装置及び移動体検出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る移動体検出装置は、
磁石と、
移動体の移動によって変化する前記磁石による磁場を検出する磁気センサと、
前記磁石及び前記磁気センサを収容するインナケースと、
前記磁気センサと電気的に接続され、前記インナケースの外部へ引き出される配線部と、を備え、
前記インナケースは、前記配線部を固定する配線固定部と、外部へ引き出される前記配線部が通過する引出口と、前記インナケースに対するアウタケースの位置を決めるためのボスと、を有し、
前記配線固定部は、前記配線部の一部に溶着され、
前記ボスは、前記引出口と隣り合う位置に設けられるとともに、前記引出口から前記インナケースの外部へ引き出された前記配線部が延びる方向とは反対方向に位置し、
前記ボスは、軸線に沿って立つ柱状をなし、側面部と、前記側面部から前記軸線を中心とする径方向に突出するリブと、を有し、
前記リブは、前記軸線を法線とする平面と平行な平坦部と、前記平坦部の外周端と前記側面部とを繋ぐ傾斜部と、を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る移動体検出装置は、
磁石と、
移動体の移動によって変化する前記磁石による磁場を検出する磁気センサと、
前記磁石及び前記磁気センサを収容するインナケースと、
前記磁気センサと電気的に接続され、前記インナケースの外部へ引き出される配線部と、
前記インナケースの周囲を覆うアウタケースと、
前記アウタケースに保持され、金属からなる筒状体と、を備え、
前記インナケースは、前記配線部を固定する配線固定部と、外部へ引き出される前記配線部が通過する引出口と、前記インナケースに対する前記アウタケースの位置を決めるためのボスと、を有し、
前記配線固定部は、前記配線部の一部に溶着され、
前記ボスは、前記筒状体と前記引出口との間に位置し、
前記インナケースは、前記ボスと隣り合う位置に設けられ、前記筒状体側に向けて突起する突起部を有し、
前記突起部は、前記筒状体に当接する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線部と磁気センサの接続不良が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動体検出装置の斜視図。
【
図2】
図1に示す移動体検出装置からアウタケースを省いた省略状態を示す斜視図。
【
図3】
図2に示す省略状態を別方向から見た斜視図。
【
図4】同上実施形態に係るボスの断面及びボスを成形する際の金型例を示す図。
【
図5】同上実施形態に係る移動体検出装置を製造する際に用いるコードクランプの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
移動体検出装置100は、
図1に模式的に示す移動体Dの移動を検出する。移動体検出装置100は、例えば、車両の車輪とともに回転するロータからなる移動体Dの回転移動を検出する。移動体Dは、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの合金等からなる強磁性体を含む。移動体Dは、例えば、後述のZ軸と平行な回転軸を中心に回転し、回転に応じて後述のように磁石10が形成する磁場を変化させる。
【0013】
以下では、互いに直交するX、Y、Z軸を適宜用いて、移動体検出装置100が備える各部を説明する場合がある。
図1においては、左右方向がX方向、上下方向がY方向、前後方向がZ方向にそれぞれ対応する。また、X、Y、Z軸の各軸を示す矢印が向く方向を、各軸の+(プラス)方向、その反対方向を-(マイナス)方向とする。
【0014】
移動体検出装置100は、
図1~
図3に示すように、磁石10と、磁気センサ20と、リード部30と、配線部40と、インナケース50と、アウタケース60と、筒状体70と、を備える。
【0015】
磁石10は、移動体Dとの間であって、磁気センサ20を含む領域に磁場を形成する。この磁場は、移動体Dの回転に応じて変化する。磁石10は、ネオジム、フェライト等の公知の材料から構成されている。磁石10は、例えば、Y方向を高さ方向とする円柱状に形成されている。
【0016】
磁気センサ20は、移動体Dの回転移動によって変化する磁石10による磁場を検出する。磁気センサ20は、磁石10と移動体Dの間に位置する。磁気センサ20は、例えば、ホール素子、オペアンプ等を含むホールIC(Integrated Circuit)からなる。磁気センサ20は、検出した磁場(磁束密度)の強さに応じた検出信号(電圧信号)を、リード部30及び配線部40を介して外部へ出力する。磁石10が形成する磁場は移動体Dの回転によって変化するため、この検出信号は、移動体Dの回転位置に応じた値を示す。なお、磁気センサ20は、MR(Magneto Resistive Sensor)素子などを利用した他の公知のセンサであってもよい。
【0017】
リード部30は、
図3に示すように、磁気センサ20と配線部40とを電気的に接続する。リード部30は、一対のリード端子31,32を有する。各リード端子31,32は、板状の導電性材料を折り曲げて形成され、Z方向に延びる部分とY方向に延びる部分とを有する。各リード端子31,32は、X方向から見て、略L字状をなす。例えば、一対のリード端子31,32の一方は磁気センサ20に電力を供給する電源ラインであり、他方は磁気センサ20からの検出信号を出力する信号ラインである。リード端子31,32のZ方向に延びる部分は、磁気センサ20と電気的に接続される。リード端子31,32のY方向に延びる部分の上端は、配線部40の下端と電気的に接続される。
【0018】
配線部40は、移動体検出装置100の外部にある図示しない制御部と、磁気センサ20とを電気的に接続する。配線部40は、
図3に示すように、一端がリード部30を介して磁気センサ20と電気的に接続され、他端がインナケース50の外部へ引き出される。配線部40は、一対のコード41,42を有する。コード41はリード端子31と接続され、コード42はリード端子32と接続されている。各コード41,42は、銅など導電性の金属を絶縁材で被覆して構成されている。また、配線部40は、インナケース50の外側に位置する構成として、コード41,42をさらに被覆する被覆部43を有する。例えば、被覆部43は、
図2、
図3に示すように、X方向に沿った略円柱状をなす。なお、図示しない制御部は、マイクロコンピュータからなり、磁気センサ20から出力され、リード部30及び配線部40を介して伝送される検出信号を取得する。この制御部は、取得した検出信号に基づき、移動体Dの回転位置、回転数などを公知の手法により算出する。
【0019】
インナケース50は、
図2、
図3に示すように、Y方向に沿った略直方体状をなし、例えば、PBT(Poly Butylene Terephthalate)等の樹脂により形成されている。インナケース50は、射出成形により成形される。そして、インナケース50の成形後に、後述のアウタケース60が射出成形により成形される。つまり、射出成形において、インナケース50は一次成形品であり、アウタケース60は二次成形品である。
【0020】
インナケース50は、磁石収容部51と、センサ収容部52と、リード固定部53と、配線固定部54と、引出口55と、ボス56と、凹部57と、突起部58と、を備える。
【0021】
磁石収容部51は、
図2に示すように、磁石10を収容する。磁石収容部51は、インナケース50のうち+Z方向に向く第1主面部50aの下方に設けられ、第1主面部50aから凹む形状を有する。磁石10は、例えば、磁石収容部51に圧入され、固定されている。
【0022】
センサ収容部52は、
図3に示すように、磁気センサ20を収容する。センサ収容部52は、第1主面部50aの裏側に位置する第2主面部50bの下方に設けられ、第2主面部50bから凹む形状を有する。磁気センサ20は、例えば、センサ収容部52に圧入され、固定されている。
【0023】
リード固定部53は、
図3に示すように、インナケース50の第2主面部50bの側に設けられ、リード部30の一部を固定する。具体的に、リード固定部53は、各リード端子31,32のY方向に延びる部分を挟み込むリード挟込部53a,53bを有する。各リード挟込部53a,53bは、対応するリード端子31,32に熱溶着される。各リード挟込部53a,53bは、第2主面部50bから-Z方向に突出している。
【0024】
配線固定部54は、
図3に示すように、インナケース50の第2主面部50bの側であってリード固定部53の上方に設けられ、配線部40の一部を固定する。具体的に、配線固定部54は、各コード41,42の下端部を挟み込むコード挟込部54a,54bを有する。各コード挟込部54a,54bは、対応するコード41,42に熱溶着される。各コード挟込部54a,54bは、第2主面部50bから-Z方向に突出している。
【0025】
引出口55は、インナケース50の上方に向かって開口する開口部であり、インナケース50の外部へ引き出される配線部40が通過する。この実施形態では、
図3に示すように、配線部40のうち、引出口55の外部にある部分は、+X方向へ引き出されている。引出口55には、後述の凹部57から配線部40が外れることを抑制するフック55aが設けられている。
【0026】
ボス56は、Y方向に延びる軸線A2に沿って立つ柱状をなし、インナケース50に対するアウタケース60の位置を決めるために設けられている。ボス56は、筒状体70と引出口55との間に位置する。具体的に、ボス56は、インナケース50を覆うアウタケース60を成形する際の位置決めに用いられる。
【0027】
ボス56は、引出口55と隣り合う位置に設けられるとともに、引出口55からインナケース50の外部へ引き出された配線部40が延びる方向とは反対方向(つまり、-X方向)に位置する。
ここで、後述のようにインナケース50を覆うアウタケース60を成形した後、気密検査のために、配線部40に接続されているコネクタ(不図示)からアウタケース60の内部に向けて空気を加圧することが行われる。この際、仮に、ボス56が配線部40に近接した位置にあると、ボス56と配線部40の間に隙間が生じた状態でアウタケース60が成形される虞がある。そうすると、気密検査の際に空気が配線部40を伝ってボス56から漏れる気密不良が生じる虞がある。しかしながら、この実施形態の構成によれは、ボス56が配線部40の引き出し方向とは反対方向に、配線部40と離れて位置するため、気密不良が生じることを抑制できる。
【0028】
ボス56は、
図4に示すように、側面部56aと、側面部56aから軸線A2を中心とする径方向に突出するリブ5,6と、を有する。側面部56aは、円柱の側面に対応する形状を有する。リブ5は、側面部56aの外周を囲む環状をなす。具体的に、リブ5は、軸線A2を法線とする平面と平行な平坦部5aと、平坦部5aの外周端と側面部56aとを繋ぐ傾斜部5bと、を有する。傾斜部5bは、平坦部5aの下方に位置し、側面部56aに近付くに従って徐々に縮径する。リブ6は、リブ5の上方に位置し、平坦部6aと傾斜部6bとを有する。リブ6は、リブ5と同様の形状を有する。
【0029】
上記に説明したリブ5,6の特徴的な形状により、ボス56を成形する際に用いられる金型の加工に係る工数を低減することができる。この理由を以下に述べる。
図4の破線部は、ボス56を成形する際の金型である入れ子B1~B3(入駒とも呼ばれる。)を示している。入れ子B1~B3は、インナケース50の他の部分を成形する際の金型に差し込まれるものであり、例えば、軸線A2を中心とした径方向に分割可能に構成されている。ここで、平坦部5aの代わりに傾斜部が設けられた形状(以下、関連形状と言う。)のリブについて考える。つまり、関連形状のリブは、上面と下面のそれぞれが傾斜する形状である。この関連形状のリブを成形するには、入れ子B1と入れ子B2のそれぞれに、傾斜部に相当する形状を施す必要が生じる。
一方、本実施形態のリブ5によれば、傾斜部5bに相当する金属加工面を入れ子B1に施し、平坦部5aに相当する形状については入れ子B2の下端部の形状をそのまま用いることができる。リブ6についても同様であり、リブ6によれば、傾斜部6bに相当する金属加工面を入れ子B2に施し、平坦部6aに相当する形状については入れ子B3の下端部の形状をそのまま用いることができる。このように、リブ5,6によれば、関連形状と比べて、金属加工の工数を低減することができる。
【0030】
図3に戻って、凹部57は、配線部40のうち、配線固定部54と引出口55との間に位置する部分を収容する。
【0031】
突起部58は、ボス56と隣り合う位置に設けられ、-X方向(つまり、引出口55から外部へ引き出された配線部40が延びる方向とは反対方向)に突起する。突起部58の先端は、筒状体70の外周面に当接する。
ここで、射出成形における一次成形品であるインナケース50を成形した後に、二次成形品であるアウタケース60を成形する際の成形圧によってインナケース50が変形し、インナケース50とアウタケース60に隙間が生じ、気密不良が発生してしまう虞がある。しかしながら、筒状体70に当接する突起部58をインナケース50に設けることで、インナケース50の変形を抑制し、気密不良を抑制することができる。
【0032】
図1に示すアウタケース60は、例えばPBT等の樹脂からなり、
図2、
図3等を参照して説明したインナケース50の周囲を覆って形成される。具体的に、アウタケース60は、インナケース50を囲む本体部61と、移動体検出装置100が取り付けられる取付対象(図示せず)に固定される固定部62と、インナケース50から引き出された配線部40の姿勢を保つ引出部63と、を備える。本体部61は、Y方向に沿った円柱状をなす。固定部62は、本体部61の上方に位置する板状の部分であり、XZ平面と平行な上面及び下面を有する。固定部62の上面には、ボス56が露出している。固定部62は、X方向に長尺であり、その-X方向の端部において、筒状体70を保持する。引出部63は、固定部62の+Z方向の端部と連結され、X方向に沿う円柱状をなす。引出部63は、インナケース50から引き出されたコード41,42と、被覆部43の一部とを覆っている。
【0033】
筒状体70は、金属から円筒状に形成され、インサート成形によってアウタケース60と一体化されている。筒状体70には図示しないボルトが挿入され、移動体検出装置100は、このボルトによって前記の取付対象に取り付けられる。
【0034】
(製造方法)
ここからは、以上の構成からなる移動体検出装置100の製造方法の一例について説明する。
【0035】
まず、インナケース50を射出成形で形成する。この際に用いられる金型は、ボス56を成形するための入れ子B1~B3(
図4参照)を含む。
【0036】
インナケース50の成形後に、磁石10を磁石収容部51に圧入して固定する。また、リード部30が接続された磁気センサ20を用意し、リード部30と配線部40を、例えば半田付けで接続するステップ(以下、接続ステップと言う。)を実行する。具体的には、リード端子31とコード41を接続し、リード端子32とコード42を接続する。そして、磁気センサ20をセンサ収容部52に圧入して固定する。
【0037】
なお、インナケース50の成形前に、予め接続ステップを行っておいてもよい。また、リード部30と配線部40を、スポット溶接やレーザー溶接などの溶接加工によって接続してもよい。
【0038】
接続ステップに続いて、リード部30の一部をリード固定部53に溶着により固定するステップ(以下、リード固定ステップと言う。)を実行する。具体的には、リード挟込部53aを部分的に熱で溶かし、リード挟込部53aにリード端子31を熱溶着する。また、リード挟込部53bを部分的に熱で溶かし、リード挟込部53bにリード端子32を熱溶着する。
【0039】
リード固定ステップに続いて、配線部40の一部を配線固定部54に溶着により固定するステップ(以下、配線固定ステップと言う。)を実行する。具体的には、コード挟込部54aを部分的に熱で溶かし、コード挟込部54aにコード41を熱溶着する。また、コード挟込部54bを部分的に熱で溶かし、コード挟込部54bにコード42を熱溶着する。
【0040】
配線固定ステップに続いて、配線部40をフック55aに掛けるステップ(以下、フッキングステップと言う。)を実行する。この際、配線部40のうち、配線固定部54と引出口55との間に位置する部分は、凹部57に収容される。
ここで、後に述べるように二次成形品であるアウタケース60を成形する際には、樹脂を勢いよく流すため、金型内で配線部40が暴れてしまい、配線部40の予期せぬ部分がアウタケース60の表面に露出する成形不良が生じる可能性がある。しかしながら、この実施形態では、フック55aに配線部40を引っ掛けて、配線部40の動きを規制した後にアウタケース60を成形するため、前記の成形不良が生じることを抑制できる。これにより、アウタケース60の成形時に樹脂の射出速度や保圧を上げ易くなり、成形条件の幅を広げることもできる。
【0041】
フッキングステップに続いて、配線部40を引き出し方向(一例として+X方向)に折り曲げた後、アウタケース60を射出成形する工程を行う。
【0042】
アウタケース60は、インナケース50及び筒状体70をインサート品としたインサート成形により成形される。この際に用いられる金型は、インナケース50から引き出された配線部40の姿勢を保持するための金型である、
図5、
図6に示すコードクランプC,Eを含む。
【0043】
コードクランプC,Eは、配線部40を径方向から挟み込む。
図6に示すように、コードクランプCは、配線部40に向かって山状に凸となる山部C1を有する。山部C1はX方向に複数配列され、隣り合う山部C1の間には配線部40から遠ざかる方向へ凹む谷部C2が現れる。同様に、コードクランプEも、配線部40に向かって山状に凸となる山部E1を有する。山部E1はX方向に複数配列され、隣り合う山部E1の間には配線部40から遠ざかる方向へ凹む谷部E2が現れる。ただし、コードクランプCの山部C1とコードクランプEの山部E1とは、配線部40の径方向において対向しない位置に設けられている。つまり、当該径方向において、コードクランプCの山部C1はコードクランプEの谷部E2と対向し、コードクランプEの山部E1はコードクランプCの谷部C2と対向する。
このように、コードクランプCの山部C1とコードクランプEの山部E1とをX方向にずらした構成により、配線部40に過大な応力が生じることを抑制できるため、配線部40の芯線部40a(つまり、コード41,42のそれぞれの芯線)が断線することを防止しつつも、強固に配線部40を固定することができる。
【0044】
なお、
図5では、コードクランプC,Eが、アウタケース60の引出部63の先端に相当する箇所まで至る例を示したが、コードクランプC,Eの構成はこれに限られない。引出部63の先端に相当する箇所とコードクランプC,Eとの間に隙間(X方向の間隔)を設けた上で、アウタケース60を成形してもよい。このように隙間を設ければ、コードクランプC,Eの把持圧や、アウタケース60を成形する際の成形圧によって配線部40の被覆部43が変形したとしても、当該変形を吸収することができる。
【0045】
アウタケース60の成形後、前述の気密検査を含む各種検査を経て、移動体検出装置100が完成する。
【0046】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0047】
検出対象の移動体Dは、磁石10が形成する磁場であって、磁気センサ20が検出可能な磁場を変化させるものであれば、その種別は任意である。移動体Dは、回転移動するものに限られず、直線移動するものであってもよい。
【0048】
以上では、リード固定ステップ、配線固定ステップにおいて熱溶着を行う例を説明したが、インナケース50を構成する樹脂の材料によっては、高周波溶着又は超音波溶着を行ってもよい。
【0049】
(1)以上に説明した移動体検出装置100において、インナケース50は、配線部40を固定する配線固定部54を有し、配線固定部54は、配線部40の一部に溶着されている。
この構成によれば、配線部40がインナケース50に確実に固定されるため、配線部40をインナケース50から引き出す際に配線部40を曲げたとしても、配線部40がずれることを抑制することができる。結果として、配線部40と磁気センサ20の接続不良が生じることを抑制することができる。
【0050】
(2)また、インナケース50は、リード部30を固定するリード固定部53を有し、リード固定部53は、リード部30の一部に溶着されている。
この構成によれば、リード部30がインナケース50に確実に固定されるため、配線部40をインナケース50から引き出す際に配線部40を曲げたとしても、配線部40とリード部30とがずれることを抑制することができる。結果として、配線部40と磁気センサ20の接続不良が生じることを抑制することができる。
【0051】
(3)また、インナケース50は、インナケース50に対するアウタケース60の位置を決めるためのボス56を有する。ボス56は、引出口55と隣り合う位置に設けられるとともに、引出口55からインナケース50の外部へ引き出された配線部40が延びる方向とは反対方向に位置する。
この構成によれば、ボス56が配線部40の引き出し方向とは反対方向に、配線部40と離れて位置するため、前述のように気密不良が生じることを抑制できる。
【0052】
(4)また、インナケース50は、配線部40のうち、配線固定部54と引出口55との間に位置する部分を収容する凹部57を有する。そして、引出口55には、凹部57から配線部40が外れることを抑制するフック55aが設けられている。
この構成によれば、前述したように、フック55aに配線部40を引っ掛けて、配線部40の動きを規制した後にアウタケース60を成形するため、前記の成形不良が生じることを抑制できる。
【0053】
(5)また、ボス56は、軸線A2に沿って立つ柱状をなし、側面部56aと、側面部56aから軸線A2を中心とする径方向に突出するリブ5,6と、を有する。リブ5,6は、軸線A2を法線とする平面と平行な平坦部5a,6aと、平坦部5a,6aの外周端と側面部56aとを繋ぐ傾斜部5b,6bと、を有する。
この構成によれば、前述のように、インナケース50を成形する際の金属加工の工数を低減することができる。
【0054】
(6)また、ボス56は、筒状体70と引出口55との間に位置する。そして、インナケース50は、ボス56と隣り合う位置に設けられ、引出口55からインナケース50の外部へ引き出された配線部40が延びる方向とは反対方向に突起する突起部58を有する。この突起部58は、筒状体70に当接する。
この構成によれば、前述のように、インナケース50の変形を抑制し、気密不良を抑制することができる。
【0055】
(7)以上に説明した移動体検出装置100の製造方法は、リード部30と配線部40を接続するステップ(接続ステップ)と、リード部30の一部をリード固定部53に溶着により固定するステップ(リード固定ステップ)と、配線部40の一部を配線固定部54に溶着により固定するステップ(配線固定ステップ)と、を備える。
この構成によれば、配線部40及びリード部30がインナケース50に確実に固定されるため、配線部40をインナケース50から引き出す際に配線部40を曲げたとしても、配線部40とリード部30とがずれることを抑制することができる。結果として、配線部40と磁気センサ20の接続不良が生じることを抑制することができる。
【0056】
(8)また、移動体検出装置100の製造方法は、配線固定部54に一部が固定された配線部40を、引出口55に設けられたフック55aに掛けるステップ(フッキングステップ)をさらに備える。
この構成によれば、前述したように、フック55aに配線部40を引っ掛けて、配線部40の動きを規制した後にアウタケース60を成形するため、前記の成形不良が生じることを抑制できる。
【0057】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0058】
100…移動体検出装置、D…移動体
10…磁石
20…磁気センサ
30…リード部、31,32…リード端子
40…配線部、41,42…コード、43…被覆部
50…インナケース、50a…第1主面部、50b…第2主面部
51…磁石収容部
52…センサ収容部、
53…リード固定部、53a,53b…リード挟込部
54…配線固定部、54a,54b…コード挟込部
55…引出口、55a…フック
56…ボス、56a…側面部
5,6…リブ、5a,6a…平坦部、5b,6b…傾斜部
57…凹部
58…突起部
60…アウタケース、61…本体部、62…固定部、63…引出部
70…筒状体
A2…軸線、B1~B3…入れ子、C,E…コードクランプ