(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2020141771
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昂平
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部と、
前記出力部を駆動するモータと、
前記出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサと、
を備え、
前記センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知
し、
外部からの入力により、異物を検知する機能を無効化することが可能である、電動工具。
【請求項2】
作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部と、
前記出力部を駆動するモータと、
前記出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサと、
を備え、
前記センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知
し、
前記モータの回転方向を参照して、異物を検知する機能を無効化することが可能である、電動工具。
【請求項3】
作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部と、
前記出力部を駆動するモータと、
前記出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサと、
を備え、
前記センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知
し、
外部からの入力により、異物を検知する機能を無効化することが可能であり、かつ、前記モータの回転方向を参照して、異物を検知する機能を無効化することが可能である、電動工具。
【請求項4】
作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部と、
前記出力部を駆動するモータと、
前記出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサと、
を備え、
前記センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知
し、
前記モータが回転を開始したときに静電容量の初期値を検出し、この初期値を基に異物検知に使用する静電容量の閾値を決定する、電動工具。
【請求項5】
異物を検知したときに、前記モータを停止させる制御を行う、請求項1
~4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
異物を検知したときに、作業者への報知を行う、請求項1
~5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
外部からの入力により、異物検知の感度を変更可能である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業対象を加工しているときに異物を検出することができる電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具で作業を行う場合、作業対象の内部に異物が隠れていることがある。例えば、ドリルによりコンクリートを穿孔するときに、コンクリートの内部に鉄筋や金属配管が埋没していることがある。工具の先端が、こうした鉄筋や金属配管などの異物に誤って接触してしまうと、工具や構造物の破損につながるおそれがある。
【0003】
こうした問題を解決する手段として、例えば特許文献1には、異物を検出することができる金属探知検出器が記載されている。金属探知検出器を壁に当てることで、作業前に異物を検出することができる。
【0004】
また、特許文献2には、電動工具に異物検出機能を持たせたものが開示されている。この特許文献1記載の発明は、先端の刃部が金属物体に接触すると、アースを介して閉回路が構成されるようになっており、このときに流れる電流によって接触を検知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-264742号公報
【文献】特開平7-205052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような金属探知検出器は、作業を開始する前に施工位置や深さを決めなければならず、作業中に検出を行うことはできなかった。また、壁面から離れたところにある異物は検出しにくいため、奥に隠れている異物や細い鉄筋や中空の金属配管などを検出できない可能性があった。
【0007】
この点、特許文献2に記載されているような電動工具を使用すれば、作業中に検出を行うことができ、工具先端付近の異物を検知することができる。しかしながら、この特許文献2記載の電動工具は、接地線を使用して接地する必要があるため、電源コードのない充電式の電動工具であっても接地線が必要となり、工具の取り回しが悪くなるという問題があった。また、検出対象の金属も接地されていなければならないため、接地抵抗が高い鉄筋や金属配管を検出できないおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、作業中に精度良く異物を検出することができる電動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明は、作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部と、前記出力部を駆動するモータと、前記出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサと、を備え、前記センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の通りであり、出力部を含む金属部の静電容量を測定するセンサを備え、センサが測定した静電容量の変化に基づき異物を検知する。すなわち、出力部が金属などの静電容量の大きい物体に接近または接触していないときと、静電容量の大きい物体に接近または接触しているときとの静電容量の違いを検出することで異物を検知する。
【0011】
このような構成によれば、電動工具とは別の金属探知検出器を使用する必要がなく、作業中に異物を検出することができるので、作業性が良い。また、深い位置に埋没した異物や、接地されていない異物であっても検出することができるので、精度良く異物を検出することができる。また、電動工具に接地線を接続する必要もないので、電動工具の取り回しも良くすることができる。
【0012】
なお、検出する異物は必ずしも金属に限らず、金属以外の異物、例えば人体を検出するようにしてもよい。具体的には、人体を検知したときにモータを停止させる制御を行うことで、安全性を高める保護機能を実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】ハンマドリルの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】静電容量の変化を説明するための図であって、異物検出前の状態を示す図である。
【
図5】静電容量の変化を説明するための図であって、異物検出時の状態を示す図である。
【
図9】変形例2に係る電動丸鋸の断面図(
図8におけるX-X線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。本実施形態においては、電動工具としてハンマドリル10を例に挙げて説明する。
【0015】
本実施形態に係るハンマドリル10は、
図4および
図5に示すように、コンクリートA等の作業対象に対し、穿孔等の加工をすることができる電動工具である。
【0016】
本実施形態に係るハンマドリル10は、
図1に示すように、作業者が把持可能なグリップハウジング12と、このグリップハウジング12の前方に設けられたメインハウジング15と、を備えた手持ち工具である。このグリップハウジング12には、引き操作可能なトリガ13が設けられている。このトリガ13は、作業者が棒状のグリップを把持したときに、作業者の人差し指がかかる位置に設けられている。このトリガ13を作業者が引き操作すると、内蔵のモータ20が回転を開始し、後述する先端工具26が駆動されるようになっている。
【0017】
なお、このトリガ13の近傍には、モータ20の回転方向を切り替えるための回転切替部14が設けられている。この回転切替部14は、グリップハウジング12を貫通する棒状部材であり、グリップハウジング12に対して左右にスライド可能に取り付けられている。この回転切替部14は、グリップハウジング12の両側面から押し込み操作可能となっており、この回転切替部14の位置によって、モータ20の回転方向が切り替わるように構成されている。例えば、回転切替部14が右側から押し込み操作されて、左側に突出した状態となっている場合には、モータ20が正転し、回転切替部14が左側から押し込み操作されて、右側に突出した状態となっている場合には、モータ20が逆転するようになっている。
【0018】
メインハウジング15は、モータ20によって駆動する機構部24を収容した筒状の機構収容部15aと、バッテリ16を取り付けるためのバッテリ取付部15bと、を備えている。
【0019】
機構収容部15aの内部には、
図2に示すように、ギア21、機構部24、中間子23などが収容されている。
【0020】
ギア21は、モータ20の回転力を機構部24に伝達するための歯車である。本実施形態に係るギア21は、モータ20の出力軸20aに取り付けられた歯車に係合して回転する。このギア21は、機構収容部15aの内部に収容された金属製ケース22に内蔵されている。
【0021】
機構部24は、上記したギア21を介して伝達されたモータ20の回転力によって駆動する。本実施形態係る機構部24は、回転力を衝撃的な打撃力に変換することができるようになっており、これにより、後述する中間子23を回転させつつ打撃することができるようになっている。
【0022】
中間子23は、メインハウジング15の内部に、前後移動可能かつ回転可能に収容された部材である。この中間子23は、機構部24によって回転および打撃されることで、後述する先端工具26に回転力と打撃力とを付与するようになっている。
【0023】
この機構収容部15aの先端には、先端工具26を着脱可能なチャック部25が設けられている。作業者は、作業内容に合わせて任意の先端工具26をチャック部25に装着して使用することができる。先端工具26で作業対象を加工するとき(例えばコンクリートAに対して穿孔作業を行うとき)には、作業対象(コンクリートA)に先端工具26を接触させてトリガ13を引き操作すればよい。
【0024】
バッテリ取付部15bは、ハンマドリル10の動力源となるバッテリ16を着脱可能に構成されている。本実施形態に係るハンマドリル10は、バッテリ16から供給された電力で作動するため、電源ケーブルが不要となっている。
【0025】
このバッテリ取付部15bの側面には、
図1に示すように、表示パネル17が設けられている。この表示パネル17には、LED35などの表示装置が配置されており、ハンマドリル10の状態など、各種の情報を表示可能となっている。例えば異物を検出したときに、作業者への報知を行うようになっている。また、後述する感度変更スイッチ32によって設定された設定内容や、後述する検知切替スイッチ33によって設定された設定内容などを表示するようにしてもよい。
【0026】
また、このバッテリ取付部15bの上面には、
図1に示すように、操作パネル18が設けられている。この操作パネル18には、使用者が操作可能なボタンなどの入力手段が配置されており、ハンマドリル10のモードなどを入力可能となっている。例えば、後述する感度変更スイッチ32や検知切替スイッチ33を操作可能に設けてもよい。
【0027】
また、このバッテリ取付部15bの内部には、
図2に示すように、制御基板30が配置されている。この制御基板30には、CPU、ROM、RAM等が実装されており、CPUが所定のプログラムを実行することで、各種の入力装置及び出力装置を制御する制御部38が構成されている。
【0028】
制御部38には、
図3に示すような入力装置が接続されている。すなわち、トリガスイッチ31、センサ34、感度変更スイッチ32、検知切替スイッチ33が、制御部38に接続されている。なお、入力装置としては、この
図3に示す入力装置に限定されず、他の入力装置を備えていてもよい。
【0029】
トリガスイッチ31は、使用者がトリガ13を引き操作したことを検知するスイッチである。このトリガスイッチ31は、
図2に示すように、グリップハウジング12の内部に収容されている。トリガ13が引き操作されると、このトリガスイッチ31が押下され、制御部38に操作信号が出力される。この操作信号を受信した制御部38は、回転切替部14によって指定された方向にモータ20を回転させる制御を実行する。
【0030】
センサ34は、先端工具26が異物に接近または接触したことを検出するためのものであり、先端工具26を含む金属部の静電容量を測定する静電容量センサである。本実施形態に係る制御部38は、このセンサ34が測定した静電容量の変化に基づき異物を検知する。
【0031】
本実施形態に係るセンサ34は、制御基板30上に実装された自己容量方式の静電容量センサであり、1つのセンサ電極によって静電容量の変化を検出することができる。このセンサ34の電極は、先端工具26と電気的に接続されるように構成されている。このため、先端工具26が静電容量の大きな物体(金属等)に接近または接触すると、静電容量が増加したことをセンサ34が検知するようになっている。
【0032】
なお、本実施形態に係るセンサ34の電極は、直接的に先端工具26と接続されているのではなく、先端工具26を作動させるための部品を収容した金属製ケース22を介して、先端工具26と電気的に接続されている。具体的には、
図4に示すように、センサ34の電極は電線28を介して金属製ケース22に接続されている。この金属製ケース22は、各種の内蔵部品(ギア21等)を介して先端工具26と電気的に接続されているため、センサ34と金属製ケース22とを電気的に接続すれば、センサ34と先端工具26とを電気的に接続することができる。なお、電線28を金属製ケース22に取り付ける方法としては、電線28の先端を丸型端子に圧着し、この丸型端子を金属製ケース22にねじ止めしてもよい。または、電線28の先端を直接金属製ケース22に直接はんだ付けしてもよい。このようにセンサ34の電極を金属製ケース22に接続するようにすれば、先端工具26に対して電線28等を取り付ける必要がないので、内部構造のレイアウトの自由度を高く保つことができる。
【0033】
図4および
図5は、このセンサ34で異物を検知する様子を説明するためのものである。
図4に示すように、先端工具26が異物(金属配管B)に接近または接触する前の状態においては、センサ34が検出する静電容量は比較的小さい。具体的には、電動工具-アース間の静電容量をCo、出力部-アース間の静電容量をCx1としたときに、センサ34が検出する静電容量Cndetはおおよそ「Cx1×Co÷(Cx1+Co)」で求められる。
【0034】
一方、先端工具26が金属配管Bなどの異物に接近または接触した状態においては、
図5に示すように、センサ34が検出する静電容量は、
図4に示す状態よりも相対的に大きくなる。具体的には、電動工具-アース間の静電容量をCo、出力部-アース間の静電容量をCx1、異物-アース間の静電容量をCx2、異物-アース間の抵抗をRoとしたときに、Roが大きければ、センサ34が検出する静電容量Cdetはおおよそ「(Cx1+Cx2)×Co÷((Cx1+Cx2)+Co)」で求められる。また、Roが小さい場合には、センサ34が検出する静電容量Cdetはおおよそ「Co」である。
【0035】
ここで、「Co」「Cx1」「Cx2」がいずれも正の値であれば「Cdet-Cndet」は必ず正の値になるから、「Cdet>Cndet」である。すなわち、先端工具26が異物に接近または接触する前の状態よりも、先端工具26が異物に接近または接触した状態の方が、センサ34が検出する静電容量が大きくなる。このように、先端工具26が異物に接近または接触すると、センサ34が検出する静電容量が大きくなるため、異物を検出することができる。
【0036】
具体的には、本実施形態においては、先端工具26が異物に接近または接触していない状態(
図4の状態)においてセンサ34が検出した静電容量を初期値として設定し、この初期値に対して予め定められた所定の加算値を加算することで異物検出の閾値を設定している。そして、この異物検出の閾値を超える静電容量をセンサ34が検出したときに、異物に接近または接触したと判断するようにしている。
【0037】
なお、上記した初期値は、モータ20が回転を開始したタイミング(トリガ13が操作されて工具が作動したとき)で取得するようにしてもよい。
【0038】
また、上記した異物検出の閾値は、工具の動作状態に応じて動的に変動するようにしてもよい。すなわち、センサ34が検出する静電容量は、モータ20の回転数やコンクリートAの粉塵などの影響を受けて変動するおそれがあるため、静電容量が少しずつ変化している場合には、この変化に合わせて異物検出の閾値をスライドさせるようにしてもよい。また、モータ20の回転数が、予め定められた所定の回転数に到達するまでは、異物検出を行わないように制御してもよい。
【0039】
感度変更スイッチ32は、上記した異物検知の感度を外部から入力するためのスイッチである。例えば、上記した閾値を段階的に上げ下げすることができるスイッチである。この感度変更スイッチ32によって異物検知の感度を上げると、上記した異物検出の閾値を下げることができる。一方、この感度変更スイッチ32によって異物検知の感度を下げると、上記した異物検出の閾値を上げることができる。このように異物検知の感度を変更可能とすることで、先端工具26の種類や大きさ、作業対象物の種類に応じた最適な設定で異物検出を行うことができる。
【0040】
検知切替スイッチ33は、異物を検知をしたときの動作を外部から入力するためのスイッチである。例えば、異物を検知をしたときに、所定の異物検知動作(使用者への報知、モータ20の停止など)を実行するか否かを切り替えることができるスイッチである。このような検知切替スイッチ33を設けることで、異物を検知する機能を無効化することが可能である。このため、金属を加工する場合など、異物検出を行いたくない場合には、異物検知の機能を無効化した状態で作業を行うことができる。
【0041】
なお、上記説明では検知切替スイッチ33によって異物検知動作の実行可否を切り替えるようにしたが、これに限らず、検知切替スイッチ33によってセンサ34による異物検知の可否を切り替えるようにしてもよい。すなわち、異物を検知したときの動作をオフにできるようにするのではなく、異物検知そのものをオフにできるようにしてもよい。
【0042】
次に、制御部38について説明する。本実施形態に係る制御部38は、例えば、モータ制御部38a、異物検出部38b、などとして機能する。
【0043】
モータ制御部38aは、モータ20の回転を制御するプログラムまたは回路である。このモータ制御部38aは、トリガスイッチ31からの信号に基づき、モータ20の回転開始または回転停止を制御する。ただし、後述する異物検出部38bが異物を検知し、異物検出部38bからの停止信号を受信したときには、モータ20を停止させる制御を実行する場合がある。
【0044】
異物検出部38bは、センサ34が測定する静電容量の値をモニタリングし、この静電容量の値を異物検知の閾値と比較することで異物を検知するプログラムまたは回路である。本実施形態に係る異物検出部38bは、モータ20が回転を開始したときに静電容量の初期値を取得し、この静電容量の初期値に所定の加算値を加算して異物検知の閾値を設定する。このとき、初期値に加算する加算値は、感度変更スイッチ32によって設定された異物検知の感度に応じて決定する。その後、モータ20の回転数等に応じて、閾値を補正するようにしてもよい。そして、センサ34が測定した静電容量の値が異物検知の閾値を超えた場合、異物検知機能が有効に設定されていれば、所定の異物検知動作が実行される。なお、センサ34が測定した静電容量の値が異物検知の閾値を超えた場合でも、異物検知機能が無効に設定されているときには、異物検知動作は実行されない。
【0045】
異物を検知したときに実行される実異物検知動作は、例えば、モータ20の停止や作業者への報知である。これらを同時に行ってもよいし、どちらかだけを実行してもよい。
【0046】
異物検知時にモータ20の停止を行う場合、異物検出部38bは、異物を検知したときにモータ制御部38aに停止信号を出力する。停止信号を受信したモータ制御部38aは、モータ20が正転している場合(作業対象を加工する方向にモータ20が回転している場合)には、モータ20を停止する。このように異物検出によりモータ20が停止した場合、所定の復帰操作(本実施形態においては、モータ20を正転させる操作を除くすべての操作。例えば、モータ20を一度逆転させる動作、ハンマドリル10の作動モードを変更する動作、電源を入れ直す動作など)を行うまでは、モータ20は正転できないようになっている。このように制御することで、異物検出後に誤って再穿孔してしまうことを防止できる。
【0047】
なお、停止信号を受信したときにモータ20が逆転している場合(先端工具26を孔から排出する方向にモータ20が回転している場合)には、モータ制御部38aはモータ20を停止させる必要はない。また、異物検出後にはモータ20を逆転させて先端工具26を孔から引き抜く必要があるため、モータ20が逆転しているときには異物検知機能が無効化されるようになっている。
【0048】
また、異物検知時に作業者への報知を行う場合、異物検出部38bは、異物を検知したときにLED35やスピーカ36などを使用して作業者への報知を行う。なお、報知の方法としては、LED35やスピーカ36に限らず、他の報知方法を使用してもよいし、無線などを使用して外部機器へ信号を出力するような方法を使用してもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るハンマドリル10は、作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部(先端工具26)を含む金属部の静電容量を測定するセンサ34を備え、センサ34が測定した静電容量の変化に基づき異物を検知する。すなわち、先端工具26が金属などの静電容量の大きい物体に接近または接触していないときと、静電容量の大きい物体に接近または接触しているときとの静電容量の違いを検出することで、異物を検知する。
【0050】
このような構成によれば、ハンマドリル10とは別の金属探知検出器を使用する必要がなく、作業中に異物を検出することができるので、作業性が良い。また、深い位置に埋没した異物や、接地されていない異物であっても検出することができるので、精度良く異物を検出することができる。また、ハンマドリル10に電源コード(アース線)を接続する必要もないので、電動工具の取り回しも良くすることができる。
【0051】
なお、検出する異物は必ずしも金属に限らず、金属以外の異物、例えば人体を検出するようにしてもよい。具体的には、人体を検知したときにモータ20を停止させる制御を行うことで、安全性を高める保護機能を実現することも可能である。
【0052】
(変形例1)
上記した実施形態においては、電動工具としてハンマドリル10を例に挙げて説明したが、これに限らず、本発明は他の電動工具も適用可能である。
【0053】
例えば、
図6および
図7に示すような電動はさみ40に本発明を適用してもよい。この電動はさみ40は、木の枝等の作業対象に対し、切断等の加工をすることができる電動工具である。
【0054】
本変形例に係る電動はさみ40は、
図6に示すように、作業者が把持可能なハウジング41を備えた手持ち工具である。このハウジング41には、引き操作可能なトリガ42が設けられている。このトリガ42は、作業者が棒状のグリップを把持したときに、作業者の人差し指がかかる位置に設けられている。このトリガ42を作業者が引き操作すると、内蔵のモータ43によって、後述する刃部53が開閉駆動されるようになっている。
【0055】
ハウジング41の内部には、
図7に示すように、ギア45、ネジ軸50、ナット51、リンク52、制御基板55などが収容されている。
【0056】
ギア45は、モータ43の回転力をネジ軸50に伝達するための歯車である。このギア45は、ハウジング41の内部に収容された金属製ケース46に内蔵されている。
【0057】
ネジ軸50およびナット51は、ボールねじを構成する部品であり、上記したギア45を介して伝達されたモータ43の回転力によって駆動する。モータ43の回転力によってネジ軸50が回転すると、ネジ軸50に取り付けられたナット51が進退動作を行うようになっている。
【0058】
リンク52は、ナット51の進退動作に合わせて開閉する一対の部材である。この一対のリンク52の先端には、一対の刃部53が取り付けられている。この一対の刃部53は、作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部であり、リンク52の開閉に合わせて開閉する(言い換えると、この刃部53は、モータ43の回転動作に合わせて開閉する)。
【0059】
このような構成においても、上記したハンマドリル10の実施形態と同様のセンサ34を設けることで、刃部53に接近または接触した異物を検知することができる。
【0060】
なお、センサ34の電極は、
図4および
図5と同様に、電線(図示せず)を介して金属製ケース46に接続されていればよい。この金属製ケース46が、各種の内蔵部品を介して刃部53と電気的に接続されているので、センサ34と金属製ケース46とを電気的に接続すれば、センサ34と刃部53とを電気的に接続することができる。
【0061】
(変形例2)
本発明は、
図8および
図9に示すような電動丸鋸60に適用してもよい。この電動丸鋸60は、作業対象を切断加工をすることができる電動工具である。
【0062】
本変形例に係る電動丸鋸60は、
図8に示すように、作業者が把持可能なハウジング61を備えた手持ち工具である。このハウジング61には、引き操作可能なトリガ62(
図9参照)が設けられている。このトリガ62は、作業者が棒状のグリップを把持したときに、作業者の人差し指がかかる位置に設けられている。このトリガ62を作業者が引き操作すると、内蔵のモータ64によって、後述する円形の刃部68が回転駆動されるようになっている。
【0063】
ハウジング61の内部には、
図9に示すように、ギア65、鋸刃軸67、制御基板(図示せず)などが収容されている。
【0064】
ギア65は、モータ64の回転力を鋸刃軸67に伝達するための歯車である。このギア65は、ハウジング61の内部に収容された金属製ケース66に内蔵されている。
【0065】
鋸刃軸67は、円形の刃部68の回転軸であり、モータ64の回転に合わせて回転する。この鋸刃軸67が回転することで、刃部68(作業対象を加工するために作業対象に接触する出力部)が回転する。
【0066】
このような構成においても、上記したハンマドリル10の実施形態と同様のセンサ34を設けることで、刃部68に接近または接触した異物を検知することができる。
【0067】
なお、センサ34の電極は、
図4および
図5と同様に、電線(図示せず)を介して金属製ケース66に接続されていればよい。この金属製ケース66が、各種の内蔵部品を介して刃部68と電気的に接続されているので、センサ34と金属製ケース66とを電気的に接続すれば、センサ34と刃部68とを電気的に接続することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 ハンマドリル(電動工具)
12 グリップハウジング
13 トリガ
14 回転切替部
15 メインハウジング
15a 機構収容部
15b バッテリ取付部
16 バッテリ
17 表示パネル
18 操作パネル
20 モータ
20a 出力軸
21 ギア
22 金属製ケース
23 中間子
24 機構部
25 チャック部
26 先端工具(出力部)
28 電線
30 制御基板
31 トリガスイッチ
32 感度変更スイッチ
33 検知切替スイッチ
34 センサ
35 LED
36 スピーカ
38 制御部
38a モータ制御部
38b 異物検出部
40 電動はさみ(電動工具)
41 ハウジング
42 トリガ
43 モータ
43a 出力軸
45 ギア
46 金属製ケース
50 ネジ軸
51 ナット
52 リンク
53 刃部(出力部)
55 制御基板
60 電動丸鋸(電動工具)
61 ハウジング
62 トリガ
63 バッテリ
64 モータ
64a 出力軸
65 ギア
66 金属製ケース
67 鋸刃軸
68 刃部(出力部)
A コンクリート(作業対象)
B 金属配管(異物)