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  • 特許-医用画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】医用画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240618BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240618BHJP
【FI】
A61B5/00 D
A61B6/00 560
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020148151
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042663
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】畑中 正雄
(72)【発明者】
【氏名】竹下 浩
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-159986(JP,A)
【文献】米国特許第06323869(US,B1)
【文献】特開2015-066014(JP,A)
【文献】特開2018-139919(JP,A)
【文献】特開2015-173890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データを医用画像表示装置に所定の画質で表示するために選択された調整値を保持する調整値保持部と、
前記医用画像データの属性を検出する画像属性検出部と、
前記調整値保持部に保持されている調整値が、前記画像属性検出部によって検出された属性に対応する調整値と一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって、前記調整値保持部に保持されている調整値が前記画像属性検出部によって検出された属性に対応する調整値と一致しないと判定されたとき、前記医用画像表示装置の操作者に、前記調整値保持部に保持されている調整値が前記医用画像表示装置に表示しようとする医用画像データの属性に対応する調整値と一致しない旨を視覚的または聴覚的に報知し、さらに、前記医用画像表示装置の調整値を前記医用画像データの属性に対応する調整値に調整するよう指示するため、前記医用画像データの属性に対応する調整値を視覚的または聴覚的に報知する報知部と、
を備える医用画像表示装置。
【請求項2】
互いに属性の異なる複数の医用画像データにおける各医用画像データに対応する調整値を記憶する調整値記憶部をさらに備え、
前記調整値記憶部は、前記各医用画像データに対応する調整値として、前記医用画像表示装置の周囲の明るさに対応する複数の調整値を含む
請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記医用画像表示装置の周囲の明るさを検出する周囲光センサと、
前記調整値記憶部に記憶されている前記各医用画像データに対応する調整値のうちから、前記医用画像表示装置に表示しようとする医用画像データの調整値を選択する操作部と、
前記操作者が前記操作部によって選択した調整値に対応し、前記医用画像表示装置の周囲の明るさに対応する複数の調整値のうちから、前記周囲光センサが検出した明るさに応じた調整値を選択して、前記調整値保持部に保持させる調整値設定部と、
をさらに備える請求項2に記載の医用画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、胸部X線(レントゲン写真)の画像データ、マンモグラフィの画像データ等の医用画像データに基づく医用画像を医用画像表示装置に表示し、医師が医用画像を見て患者を診断することがある(特許文献1及び2参照)。一般的に、各種の医用画像はPACS(Picture Archiving and Communication System)サーバに記憶されている。ワークステーションはPACSサーバより医用画像を読み出し、医用画像表示装置は医用画像を表示部に表示する。
【0003】
医用画像表示装置は、マンモグラフィ画像表示専用の画像表示装置と胸部X線画像表示専用の画像表示装置とに区分けされているとは限らない。従って、1台の医用画像表示装置が、マンモグラフィ画像を表示部に表示したり、胸部X線画像を表示部に表示したりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-57592号公報
【文献】特開2015-19815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マンモグラフィ画像に適した画質で表示するための医用画像表示装置の調整値と、胸部X線画像に適した画質で表示するための医用画像表示装置の調整値は異なる。例えば、医用画像表示装置がマンモグラフィ画像の表示に適した画質となるように設定されている状態で、胸部X線画像を表示したとすれば、医師は正確な診断を行うことができないおそれがある。
【0006】
マンモグラフィ画像及び胸部X線画像はモノクロ画像である一方で、内視鏡画像及び超音波診断画像はカラー画像である。医用画像表示装置がカラー画像を表示できる表示部(カラーパネル)を備え、モノクロ画像をカラーパネルに表示するときに適した画質となる調整値と、カラー画像をカラーパネルに表示するときに適した画質となる調整値は異なる。例えば、医用画像表示装置がカラー画像を表示するのに適した画質となるように設定されている状態で、モノクロ画像を医用画像表示装置に表示したとすれば、医師は正確な診断を行うことができないおそれがある。
【0007】
このように、医用画像表示装置に設定されている調整値が、表示しようとする医用画像に適した調整値でない場合には、表示された画質が最適ではなく医師が正確な診断を行うことができないおそれがある。そこで、医用画像表示装置に設定されている調整値と、表示しようとする医用画像に適した調整値との不一致を回避することができる医用画像表示装置の登場が望まれる。
【0008】
本発明は、医用画像表示装置に設定されている調整値と、表示しようとする医用画像に適した調整値との不一致を回避することができる医用画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医用画像データを医用画像表示装置に所定の画質で表示するために選択された調整値を保持する調整値保持部と、前記医用画像データの属性を検出する画像属性検出部と、前記調整値保持部に保持されている調整値が、前記画像属性検出部によって検出された属性に対応する調整値と一致するか否かを判定する判定部と、前記判定部によって、前記調整値保持部に保持されている調整値が前記画像属性検出部によって検出された属性に対応する調整値と一致しないと判定されたとき、前記医用画像表示装置の操作者に、前記調整値保持部に保持されている調整値が前記医用画像表示装置に表示しようとする医用画像データの属性に対応する調整値と一致しない旨を視覚的または聴覚的に報知し、さらに、前記医用画像表示装置の調整値を前記医用画像データの属性に対応する調整値に調整するよう指示するため、前記医用画像データの属性に対応する調整値を視覚的または聴覚的に報知する報知部とを備える医用画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医用画像表示装置によれば、医用画像表示装置に設定されている調整値と、表示しようとする医用画像に適した調整値との不一致を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の医用画像表示装置を示すブロック図である。
図2図1の調整値記憶部に記憶されている画質の調整値の一例を示す表である。
図3】DICOM GSDFとガンマ2.2の階調特性を示す特性図である。
図4】第1実施形態の医用画像表示装置の変形例を示すブロック図である。
図5】第2実施形態の医用画像表示装置を示すブロック図である。
図6図5の調整値記憶部に記憶されている画質の調整値の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施形態の医用画像表示装置について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1において、図示していないワークステーションがPACSサーバより読み出した医用画像データは、画像属性検出部15及び表示部20に供給される。
【0014】
調整値記憶部13には、各種の医用画像を表示部20に表示するときの画質を調整するための調整値が記憶されている。調整値記憶部13は例えばROMである。図2に示すように、調整値とは階調特性と最大輝度との組み合わせであり、調整値記憶部13には、例えば調整値1~3の3つの調整値が記憶されている。調整値1はマンモグラフィ画像用の調整値であり、調整値2は胸部X線画像用の調整値であり、調整値3はカラー画像用の調整値である。液晶パネル23がモノクロパネルである場合には、調整値3は必要ない。
【0015】
図2に示すDICOM GSDFとは、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠したグレースケール標準表示関数(GSDF:Grayscale Standard Display Function)を用いる階調特性である。図2に示すガンマ2.2とは、ガンマ値2.2を有する階調特性である。医用画像データが8ビットであるとすると、DICOM GSDFとガンマ2.2とは、図3に示す入出力特性を示す階調特性を有する。
【0016】
図1に戻り、医師、看護師等の操作者は、操作部11を操作して、表示部20に表示しようとする医用画像に応じた調整値を選択する。操作部11の操作によって複数の調整値をトグル的に切り替えてもよいし、操作部11の操作によって表示部20に調整値を選択するメニューを表示して、いずれかの調整値を選択してもよい。操作部11によって調整値を選択する操作がなされると、調整値設定部12は、選択された調整値を調整値記憶部13より読み出して調整値保持部14に保持させる。調整値保持部14は例えば不揮発性メモリである。
【0017】
表示部20は、ガンマ補正部21、輝度調整部22、液晶パネル23、バックライト24を備える。ガンマ補正部21は、入力された医用画像データを図3に示すような階調特性でガンマ補正して液晶パネル23に供給する。輝度調整部22は、バックライト24の明るさを制御して、液晶パネル23に表示される医用画像の最大輝度を調整する。液晶パネル23に表示される医用画像の最大輝度は、バックライト24の明るさによって決まる。
【0018】
例えば、操作者が調整値1を選択して調整値保持部14に調整値1が保持されているとすると、ガンマ補正部21は、入力された医用画像データをDICOM GSDFの階調特性となるようガンマ補正する。輝度調整部22は、最大輝度が500cd/mとなるようにバックライト24の明るさを制御する。
【0019】
画像属性検出部15は、医用画像データに付加されているタグ(DICOMタグ)を解析することによって、医用画像の種類を示す属性を検出する。画像属性検出部15がタグを解析することによって、医用画像データがマンモグラフィ画像であるとか、胸部X線画像であるとかが検出される。
【0020】
DICOMタグについて具体的に説明すると、DICOMタグの(0008,0060)には、画像を生成した機器(モダリティ)の種類、いわゆるモダリティコードが格納されている。モダリティコードはアルファベット2文字で表現されており、例えば、MGはマンモグラフィを示す。DICOMタグの(0008,0060)に記述されたモダリティコードがMGであれば、医用画像データを生成した機器がマンモグラフィであり、医用画像データはマンモグラフィ画像であると検出できる。
【0021】
画像属性検出部15は、DICOMタグの(0008,0060)と、それ以外のタグの情報とを組み合わせて医用画像データの属性を検出してもよい。
【0022】
判定部16は、調整値保持部14に保持されている調整値が、画像属性検出部15が検出した属性に対応した調整値であるか否かを判定する。判定部16は、判定結果を報知部17に供給する。調整値保持部14に保持されている調整値が、画像属性検出部15が検出した属性に対応した調整値でないということは、医用画像表示装置に設定されている画質と表示部20に表示しようとする医用画像に適した画質とが不一致であるということである。
【0023】
そこで、報知部17は、判定部16による判定結果が不一致を示すとき、医用画像表示装置の使用者に、調整値保持部14に保持されている調整値が表示部20に表示しようとする医用画像に適した画質ではない旨を視覚的または聴覚的に報知する。報知部17は、LEDのような警告灯であってもよいし、スピーカであってもよい。報知部17は、医用画像データが胸部X線画像の画像データであって、調整値1が選択されているときに、「最大輝度を350cd/mに調整してください」と報知してもよいし、「調整値を選択してください」と報知してもよい。
【0024】
報知部17による報知を受けた使用者は、操作部11を操作して、表示部20に表示しようとする医用画像に応じた適切な調整値を選択することができる。これによって、第1実施形態によれば、医用画像表示装置に設定されている画質と医用画像表示装置に表示しようとする医用画像に適した画質との不一致を回避することができる。
【0025】
図4に示すように、表示部20が備えるオンスクリーン・ディスプレイ(OSD)重畳部27を報知部17として機能させてもよい。OSD重畳部27は、判定部16による判定結果が不一致を示すとき、ガンマ補正部21より出力されたガンマ補正された医用画像データに調整値が適切でないことを示す文字情報または画像情報を重畳させて液晶パネル23に供給する。
【0026】
使用者は、液晶パネル23に表示される医用画像に重畳された文字情報または画像情報によって調整値が適切でないことを認識して、適切な調整値を選択することができる。
【0027】
<第2実施形態>
図5に示す第2実施形態は、医用画像表示装置の周囲光の明るさに応じてより適切な画質に調整することを目的とする。図5において、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略することがある。
【0028】
図6に示すように、調整値記憶部13には、医師、看護師等の調整値が認識できる調整値として、例えば調整値1~3の3つの調整値が記憶されている。第2実施形態においては、調整値1~3それぞれが、周囲が明るいときに適した調整値と暗いときに適した調整値との2つの調整値で構成されている。
【0029】
マンモグラフィ画像用の調整値1は、周囲が明るいときに適した調整値1Aと、周囲が暗いときに適した調整値1Bとを含む。胸部X線画像用の調整値2は、周囲が明るいときに適した調整値2Aと、周囲が暗いときに適した調整値2Bとを含む。カラー画像用の調整値3は、周囲が明るいときに適した調整値3Aと、周囲が暗いときに適した調整値3Bとを含む。
【0030】
周囲が明るいときと暗いときとは、周囲の明るさが所定の明るさ以上であるときに前者、所定の明るさ未満であるときに後者としている。図6に示す例においては、周囲が明るいときと暗いときとで、最大輝度を異ならせている。周囲の明るさを3段階以上で分け、最大輝度を3段階以上に異ならせてもよい。調整値は調整値1~3のいずれかを選択することができるものの、調整値1A、1B、2A、2B、3A、3Bを直接的に選択することはできない。
【0031】
図5において、周囲光センサ18は、周囲の明るさが所定の明るさ以上であるか所定の明るさ未満であるかを検出する。操作者は、操作部11を操作して、表示部20に表示しようとする医用画像に応じた調整値1~3のうちのいずれかの調整値を選択する。調整値設定部12は、操作者が選択した選択値に対応し、周囲光センサ18が検出した明るさに応じて調整値を選択する。調整値設定部12は、選択された調整値を調整値記憶部13より読み出して調整値保持部14に保持させる。
【0032】
調整値保持部14には、操作者が調整値1を選択したときには調整値1Aまたは1Bを、操作者が調整値2を選択したときには調整値2Aまたは2Bを、操作者が調整値3を選択したときには調整値3Aまたは3Bを調整値保持部14に保持させる。
【0033】
第2実施形態によれば、医用画像表示装置の周囲光の明るさに応じてより適切な画質に調整することができる。第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた医用画像表示装置を構成してもよい。
【0034】
本発明は以上説明した第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。表示部20は、液晶パネル23を備える構成に限定されず、有機ELパネルを備える構成であってもよい。この場合、バックライト24は不要であり、輝度調整部22は有機ELパネルが発光するときの最大輝度を調整する。
【0035】
図1または図5において、調整値設定部12、画像属性検出部15、判定部16をマイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成してもよい。医用画像表示装置の一部がソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成されていてもよい。ハードウェアとソフトウェアとの使い分けは任意である。さらには、医用画像表示装置の一部の機能を医用画像表示装置に接続されたコンピュータ装置で実現してもよい。
【符号の説明】
【0036】
11 操作部
12 調整値設定部
13 調整値記憶部
14 調整値保持部
15 画像属性検出部
16 判定部
17 報知部
20 表示部
21 ガンマ補正部
22 輝度調整部
23 液晶パネル
24 バックライト
27 オンスクリーン・ディスプレイ重畳部
図1
図2
図3
図4
図5
図6