(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】中空糸膜束内包モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 63/02 20060101AFI20240618BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 500
(21)【出願番号】P 2020148770
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019172588
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田宮 竜太
(72)【発明者】
【氏名】田中 和実
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-022923(JP,A)
【文献】特開2010-167372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に流体の導入孔および導出孔を有するモジュールケースならびにそれに内包される中空糸膜束および繊維から構成される保護ネットからなり、少なくともモジュール長手方向の一端が中空糸膜内腔部のみを開放するようにモジュールケースにポッティング剤で固着封止されているモジュールにおいて、保護ネットは中空糸膜束とモジュールケースの間に配置され、保護ネットはモジュール長手方向に沿って切断辺端部同士の重なり部を形成し、少なくとも中空糸膜束側に位置する切断辺端部が屈曲部を有しており、該屈曲部先端がモジュールケース側を向いて
おり、モジュールケース側を向いている屈曲部先端が、他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入していることを特徴とする中空糸膜束内包モジュール。
【請求項2】
保護ネットを構成する繊維径が100~500μmであり、保護ネットを構成する繊維間隙間距離が200~1,000μmであることを特徴とする請求項
1に記載の中空糸膜束内包モジュール。
【請求項3】
屈曲部の屈曲角が10~60°であることを特徴とする請求項1
または2に記載の中空糸膜束内包モジュール。
【請求項4】
保護ネットがモジュールケースの内側に密接されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の中空糸膜束内包モジュール。
【請求項5】
保護ネットの少なくとも一方の切断辺端部の先端を露出させ、当該先端のみを加熱処理することにより、構成繊維の先端に曲率を付与し、次いで、当該切断辺端部に屈曲部を形成することを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の中空糸膜束内包モジュールの製造方法。
【請求項6】
屈曲部先端をモジュールケース側に向け、屈曲部先端が他方の切断辺と重なるように保護ネットをモジュールケース内に挿入し、モジュールケースの所定位置に保護ネットを配置した後、屈曲部先端を他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入させ固定することを特徴とする請求項
5に記載の中空糸膜束内包モジュールの製造方法。
【請求項7】
屈曲部先端を他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入させ固定する手段が、モジュールケース長より長いバルーンを保護ネットの内側で加圧により膨張させて保護ネットをモジュールケースの内周に押圧し、次いで、当該バルーンを放圧により収縮させる操作であることを特徴とする請求項
6に記載の中空糸膜束内包モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空糸膜束内包モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜を含む機能糸素材の利用が進み、素材の高性能化が行われると同時に、処理条件の過酷化も増すことで、モジュールの性能安定化は必須の課題となっている。中でも処理流体の衝撃による糸束の破損は重大な問題となっており、この衝撃の緩和について、様々な試みが施されている。
【0003】
一般に、側面に導入孔および導出孔を有するモジュールにおいては、処理流体を中空糸膜束内部まで浸透させて、より効率的に処理を行わせるために、内包する糸束と直角に処理流体を導入した後、束内を長さ方向へ通過させた後、導出孔へと流すことが多い。
【0004】
この時、流体の衝撃を緩和するために、以下の特許文献に示されるように、内包糸束の周囲に保護ネットを配置して、糸束を損傷から保護することが試みられている。特許文献1には保護ネットの開口率や構成繊維のピッチを規定して、中空糸膜の損傷を抑制する技術が提示されているが、保護ネットを構成するシートの重なり部分の糸束側で露出する構成繊維端部の鋭利な形状の糸束に及ぼす影響が懸念される。また、特許文献2には接合部の解れ対策として、メッシュ状のシートの合わせ端部を縫製して筒状とした構成が提案されているが、構成繊維端部の糸束への影響を解決できるものではない。さらに、特許文献3には、網状に加工した保護ネットの使用が提案されているが、通常使用される織物シートに対して、網み上げによる筒状構成物は、その構成上、伸縮性があり、支持材としての剛性が低く、装着時のケースへのメッシュシートの密接固定なども行われにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5391704号公報
【文献】特許第4941150号公報
【文献】特開平11-333265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケース内の糸束を保護するための保護ネットにおいては、構成中空糸膜の形状に合わせて、保護ネットの性状を適切に設定するとともに、接触表面の形状を中空糸膜束に影響のないよう、なめらかな性状にしておくことが重要になる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、中空糸膜束の損傷を抑えることにより、モジュール性能の経時的な安定性を保持し、長期運転を可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題点を解決するために、本発明の中空糸膜束内包モジュールは、次の構成を有する。すなわち、
側面に流体の導入孔および導出孔を有するモジュールケースならびにそれに内包される中空糸膜束および繊維から構成される保護ネットからなり、少なくともモジュール長手方向の一端が中空糸膜内腔部のみを開放するようにモジュールケースにポッティング剤で固着封止されているモジュールにおいて、保護ネットは中空糸膜束とモジュールケースの間に配置され、保護ネットはモジュール長手方向に沿って切断辺端部同士の重なり部を形成し、少なくとも中空糸膜束側に位置する切断辺端部が屈曲部を有しており、該屈曲部先端がモジュールケース側を向いており、モジュールケース側を向いている屈曲部先端が、他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入していることを特徴とする中空糸膜束内包モジュール、である。
【0009】
本発明の中空糸膜束内包モジュールの製造方法は、次のいずれかの構成を有する。すなわち、
(1)保護ネットの少なくとも一方の切断辺端部の先端を露出させ、当該先端のみを加熱処理することにより、構成繊維の先端に曲率を付与し、次いで、当該切断辺端部に屈曲部を形成することを特徴とする上記中空糸膜束内包モジュールの製造方法、
または、
(2)屈曲部先端をモジュールケース側に向け、屈曲部先端が他方の切断辺と重なるように保護ネットをモジュールケース内に挿入し、モジュールケースの所定位置に保護ネットを配置した後、屈曲部先端を他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入させ固定することを特徴とする上記中空糸膜束内包モジュールの製造方法、である。
【0010】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは、モジュールケース側を向いている屈曲部先端が
、他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入している。
【0011】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは、保護ネットを構成する繊維径が100~500μmであり、保護ネットを構成する繊維間隙間距離が200~1,000μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは、保護ネットの切断辺端部を構成する繊維の先端が、該繊維径の0.25~2.0倍の曲率半径を有することが好ましい。
【0013】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは、屈曲部の屈曲角が10~60°であることが好ましい。
【0014】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは、保護ネットがモジュールケースの内側に密接されていることが好ましい。
【0015】
本発明の上記(2)の中空糸膜束内包モジュールの製造方法は、屈曲部先端を他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入させ固定する手段が、モジュールケース長より長いバルーンを保護ネットの内側で加圧により膨張させて保護ネットをモジュールケースの内周に押圧し、次いで、当該バルーンを放圧により収縮させる操作であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の中空糸膜束内包モジュールによれば、中空糸膜束の外側を流れる流体の衝撃による中空糸膜束の損傷を抑制できることにより、モジュール性能の経時的な安定性を保持し、長期運転を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の中空糸膜束内包モジュールの概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の中空糸膜束内包モジュールの保護ネット配置状態を示す断面図である。
【
図3】保護ネットの屈曲部を有する切断辺端部の屈曲部先端と他方の切断辺端部との接触状態を示す断面図である。
【
図4】保護ネットの屈曲部先端が他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入している状態を示す断面図である。
【
図5】モジュール長手方向に沿って形成された保護ネットの切断辺端部同士の重なり部を示す部分拡大断面図である。
【
図6】所定曲率半径を有する、保護ネットの切断辺端部を構成する繊維の先端形状のいくつかの例を示す側面図である。
【
図7】本発明モジュールを筐体に組み上げた一例の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の中空糸膜束内包モジュールの実施態様について、添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1のように中空糸膜束内包モジュールは複数本の中空糸膜1を平行に集束してその外周を保護ネット4で覆い、これを筒状のモジュールケース3内に収納し、その両端部は中空糸膜の内腔部のみが開口するように封止材5で封止されている。モジュールケース3の側面の一端に流体導入部6と他端に流体導出部7を設けた構造になっている。本実施形態の中空糸膜モジュールは、通常、
図7に示した筐体21と呼ばれる形に組み上げられ処理システムに組み込まれる。一般的には被処理流体は中空糸膜内側流体流入口22から導入され、中空糸膜内側流体流出口23から導出される。処理流体は、通常処理効率の高い対向流で流すため、中空糸膜外側流体流入口24から導入され、中空糸膜外側流体流出口25から導出される。
【0020】
この中空糸膜束内包モジュールの構成について詳しく説明する。初めに、モジュール両端に処理効率向上のため、偏流を起こさないよう、対角的に導出入孔の配置された筒状のモジュールケース3を準備する。モジュールケースの材質は、ポリスルホンやポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンなどのスーパーエンプラと呼ばれる耐熱耐衝撃性樹脂が好ましく用いられる。
【0021】
次に保護ネットを用意する。保護ネットは繊維から構成され、繊維の材質は、中空糸膜外側の流体導入出時の衝撃を緩和できるような剛性の高いもので、さらにシート構成繊維の先端を加熱加工できるよう、融点または軟化点を有するものが好ましい。さらに、保護ネットは、機械的にも中空糸膜の変形を抑制できるよう、保護ネットを構成する繊維径は100~500μmであることが好ましく、また、保護ネットを構成する繊維間隙間距離が200~1,000μmであることが好ましい。同時に、これらの構成を確実にすると共に、繊維の埋入を容易に設定できるよう、保護ネットの組織としては、平織りが好ましい。
【0022】
実施態様において、保護ネットの好ましい素材としてメッシュシートが挙げられる。また、保護ネットの材質として、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素含有樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等を、モジュールの使用目的によって適宜選択することができる。ポリエチレンテレフタレート系樹脂の好ましい具体例としては、NBCメッシュテック社製TB30を挙げることができる。
【0023】
この保護ネットの端部を封止材5の中に埋没させるとともに、ポッティング後にモジュール端部切断時に障害とならないよう、保護ネット4の長さはモジュールケース3の全長より5~10mm程度短くするのが好ましい。またモジュールケースの円周方向に配置する保護ネットは、モジュールケース側を向いている屈曲部先端が確実に他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に接触でき、さらには埋入できるよう、保護ネットの幅をモジュールケースの内円周より5~10mm程度長めにしておくのが好ましい。さらにモジュールケース側を向いている屈曲部先端が他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に容易に埋入できるよう、モジュール長さ方向に配置される保護ネット構成繊維1~2本を外しておくのが好ましい。次いで、保護ネット切断辺端部2mm幅程度のみが露出するように金属板で覆い固定し、保護ネット切断辺端部の露出部分をヒートガン(例えば、リョービ(株)製HAG-1550)などで加熱処理するのが好ましい。この際、加熱温度・時間を調整することで、保護ネットの切断辺端部を構成する繊維の先端に所定の曲率を持たせることができると共に、保護ネットの切断辺端部はヒートガンにより加熱処理する側に屈曲部を形成することができる。屈曲部の屈曲角度は屈曲部先端が他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入できるよう、また、埋入しないときであっても屈曲部先端が中空糸膜束に接触するおそれの無いよう、10~60°にしておくことが好ましい。
【0024】
図2および
図5に示したように、一方の切断辺端部が屈曲部を有する保護ネットの、該屈曲部先端がモジュールケース3側に向くよう配置する。この際、モジュールケース3内の保護ネット4のモジュールケースの長手方向に沿って形成される重なり部の切断辺端部が揃うよう、またモジュールケース3の中央に配置されるよう、位置調整を行う。次に、
図2において中空糸膜束2が配置される予定の位置に、伸縮性のソーセージ状耐圧バルーンを配置し、バルーンの両端はいずれも50mm程度モジュールケースからはみ出るように長いものにしておく。このバルーンに、50kPa程度の空気圧をかけて膨張させ、5秒ほど保持し、保護ネットを円周方向に拡張させた後、当該バルーンを放圧収縮させる。この操作を2~3度繰り返す。このように当該バルーンの拡張・収縮を繰り返すことで、内側に配置された保護ネットの屈曲部先端が、外側に配置された他方の切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に埋入し、中空糸膜束2から見ると、内側に配置された保護ネットの屈曲部先端は、外側に配置された保護ネットに隠される。あわせて、埋入した屈曲部先端が釣り針の「返し」と同等の役目を果たすと共に、保護ネットをモジュールケース内周に押圧することで、保護ネットがしっかりと固定される効果もある。このようにして保護ネットは、切断辺端部同士の重なり部以外はモジュールケース内面と保護ネットとの間隙が1mm以下の密接状態を形成することができる。
【0025】
保護ネットを挿入したモジュールケース3に、好ましくは易滑性シートを用いて、中空糸膜束を挿入し、中空糸膜束位置を保護ネット4がモジュールケース3の中央に位置するよう固定した後、通常手段によりポッティングを行い、モジュール両端をカットして、中空糸内腔部を開口させる。こうして中空糸膜束内包モジュールを作製することができる。
【0026】
中空糸膜の材質としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリオレフィン等が適宜選択して用いられる。更に、モジュールケースの素材としては、ステンレス等の金属、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネート、アクリル等の樹脂が適宜選択して用いられる。尚、ポッティング剤としては、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、ナイロン等が適宜選択して用いられる。次いで、このモジュールを
図7に示すような筐体に組み上げ、処理システムに組み込む。
【0027】
このように構成された保護ネットは、
図5に示すように、中空糸膜束側に配置された保護ネット4aの屈曲部先端13が、他方のモジュールケース側に配置された保護ネット4bの切断辺端部を構成する保護ネットの間隙部に突き刺さるように配置され、引っ掛かる様に固定されていることが好ましい。この好ましい態様とすると、重なり部のいずれの切断辺端部とも、その構成繊維の先端が、中空糸膜束に触れるおそれがなく、中空糸膜束の損傷を防止し、長期的なシステム運転維持を可能にする。
【実施例】
【0028】
以下、具体的な実施例にて本技術の内容を説明する。
【0029】
図1に示したような、円筒の両端の相対する位置に導通する流体の導入・導出部となる開口部を有するポリカーボネート製のケースを準備した。ケースの内径は55mm、外径は60mmで、長さは220mmであった。
【0030】
一方、ポリエチレンテレフタレート製メッシュシート(NBCメッシュテック社製TB30)を準備し、ケースの長さ方向に構成されるポッティング剤部分からメッシュシートの先端が露出しないよう、縦210mm、また、ケース内でメッシュシート円周方向の先端が10mm程度重なるよう、横183mmに切断する。この時、メッシュシートのカール方向をケースの円周方向に合わせておく。次に縦方向の構成フィラメントを1~2本外して、2mm程度の屈曲部分を構成するための領域を作成する。次に、このメッシュシートを金属板で挟み、屈曲部分構成領域が1.5~2mm露出するようにセットする。この露出部分にヒートガン(リョービ(株)製HAG-1550)で、熱風を軽く当て、露出部先端をカールさせる。この時、屈曲方向はカールと同方向につけ、反転した時にケースの外側方向へメッシュシートの押圧が働くようにしておく。
【0031】
準備したケースに、屈曲加工したメッシュシートを、屈曲部分が内側になるよう、カールとは反対方向に丸めて絞り込みながら挿入し、ケース中央に配置する。この時、屈曲部分はケース外側に向いている。このケースの中に、ケースの内径よりやや大きくなるようなプラスチック製のソーセージ状バルーンを挿入し、バルーンにゆっくりと50kPaの圧力をかけ、メッシュシートをケース内側に押しつけ、その後解放する。この操作を3回繰り返す。これによって、屈曲部分が相対するメッシュシートの中に食い込み、拡張状態で固定される。
【0032】
このケース内側交錯部分は、指で触っても、なんの引っ掛かりもなく、滑らかに仕上がっていた。一方、屈曲部分のないメッシュシートで同様に構成したケースの内側は、構成フィラメントの先端が引っかかり、ざらついていた。
【0033】
夫々のケースに中空糸束(外径900μm、内径670μm、構成本数1675本、充填率は約50%)を易滑性フィルムを用いて挿入した。屈曲部を有するメッシュシートを用いた方は、挿入もスムーズで、挿入後の中空糸束にも、なんら問題は認められなかった。一方、屈曲部を持たないメッシュシートを用いた方は、挿入時にも若干の引っ掛かりがあり、挿入後の中空糸束の一部に、メッシュシート構成フィラメントの先端と中空糸との引っ掛かりが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の中空糸膜束内包モジュールは上下水道、食品工業、一般工業、医療、理化学と幅広い分野に応用できるが、特に燃料電池用の加湿膜モジュールや熱交換膜モジュールとして、その効果を発揮する。
【符号の説明】
【0035】
1……中空糸膜
2……中空糸膜束
3……モジュールケース
4……保護ネット
4a……中空糸膜束側に配置された保護ネット
4b……モジュールケース側に配置された保護ネット
5……封止材
6……流体導入部
7……流体導出部
8……重なり部
9……屈曲部
10……接触部
11……埋入部
12……保護ネット構成繊維
13……屈曲部先端
20……モジュール
21……筐体
22……中空糸膜内側流体流入口
23……中空糸膜内側流体流出口
24……中空糸膜外側流体流入口
25……中空糸膜外側流体流出口