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  • 特許-空気調和機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20240618BHJP
   F24F 120/12 20180101ALN20240618BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240618BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F120:12
F24F110:10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020154488
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048592
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】カンモング ペチャリン
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040519(JP,A)
【文献】特開2016-173215(JP,A)
【文献】特開2014-070766(JP,A)
【文献】特開2012-052769(JP,A)
【文献】特開平06-117836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0321920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に室内機を備えた空気調和機であって、
前記室内機は、前記室内に存在するユーザーの高さ方向の移動を検知する移動検出手段と、
前記室内の床から所定の高さ以上に位置する所定位置と前記床との間で、前記ユーザーが高さ方向に移動することを前記移動検出手段により検出した場合、設定温度を変更する指示を出力する設定温度変更手段を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記移動検出手段は、前記室内の複数の個別エリアの温度を検知する温度センサを備え、検出した前記個別エリアにおける前記ユーザーの体温と対応する人検知温度の値の移動により前記ユーザーの移動を検知することを特徴とする請求項記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、ユーザーが部屋の高さ方向に移動した場合に設定温度を自動的に変更する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は複数の時間帯毎にそれぞれの設定温度を予め記憶しており、この設定温度を時間帯毎に自動的に切り替えるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
従って例えば就寝時の設定温度とそれ以外の時間帯とで、それぞれ快適な温度設定を行うことができる。
【0003】
ところで、エアコンが設置される部屋としてロフトにベッドがあるものや、学習机の上部にベッドを備えたシステム学習机が配置されているものがある。これらのベッドは一般的な床置きベッドと異なり、床から1.5メートル~2メートル又はそれ以上の高さとなる高所に設置される。また、一般的に床付近の温度よりも床より高い位置の例えば天井付近の温度が高くなる傾向がある。
【0004】
このため、例えば暖房運転を行ったまま就寝する場合、床付近では快適な温度であっても、床から高い位置にあるロフトやベッドでは床付近より高い温度になって、ユーザーは不快に感じることがあった。このため、特許文献1の機能を利用し、就寝時とその他の時間帯を分けて就寝時はそれ以外の場合に比較して設定温度を2℃だけ低下させるようにして快適な就寝温度にすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、就寝の開始時刻や就寝の時間帯は日によって異なることが一般的であり、特許文献1の機能によって設定温度を自動的に切り替えると、ユーザーにとって不快な設定温度になる場合がある。また、別の方法として就寝開始や起床の都度、設定温度変更や時間指定変更を毎日行う方法があるが、このような操作を毎日行うことは手間であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-150764号公報(段落番号0060~0081)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上述べた問題点を解決し、ユーザーが室内の高所へ移動した場合と高所から床に移動した場合に、設定温度を自動的に切り替えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明に記載の発明は、
室内に室内機を備えた空気調和機であって、
前記室内機は、前記室内に存在するユーザーの高さ方向の移動を検知する移動検出手段と、
前記室内の床から所定の高さ以上に位置する所定位置と前記床との間で、前記ユーザーが高さ方向に移動することを前記移動検出手段により検出した場合、設定温度を変更する指示を出力する設定温度変更手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、ユーザーが室内の高所に存在する場合とユーザーが床付近に存在する場合とで、室内機を運転する時に使用する室温の設定温度を自動的に切り替えることができるため、設定温度を切り替える手間を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による空気調和機の室内機が設置された室内を示す説明図である。
図2】本発明による室内機が設置された室内とサーモパイルの検出エリアを示す部屋の間取り図である。
図3】本発明による空気調和機の制御ブロックを示すブロック図である。
図4】移動検出部の内部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明による空気調和機の室内機10が設置された室内を示す説明図である。
室内機10が設置された部屋1は、床3と天井2とこれらの間に設けられた壁4、壁7、壁8(図2参照)、壁9を備えており、壁9の中央の上部に室内機10が設置されている。そして壁9の右側の壁7の前には、はしご5aを備えたシステム学習机5が備えられている。システム学習机とは、机と引き出し、本棚などをコンパクトにまとめて一体化したものである。システム学習机5の上部は所定位置である高所にベッド5bが設置されており、はしご5aを用いて部屋の中央側から壁7に向かって高所(所定位置)のベッド5bへ登る構造になっている。このベッド5bの床からの高さは1.7メートルであり、ほぼ人の背丈ほどの高さになっている。
【0013】
室内機10はその下部の左右中央に、検知エリアを複数のエリア(本実施例では16エリア)に分けて床3の温度を16分割して検知可能な温度センサであるサーモパイル11を搭載している。なお、サーモパイル11は室内の全ての範囲を検知できるのでなく、サーモパイル11側から見て直接見通せない部分の温度、例えば高所(所定位置)に配置されたベッド5bや出入り口のドア4aの温度を直接検知することはできない。
【0014】
図2は室内機10が設置された部屋1の間取り図である。部屋1は室内機10が設置された壁9と、システム学習机5に隣接する壁7と、ドア4aを備えた壁4と、壁9と対向する壁8で床3を取り囲む構造になっている。
また、図2において破線で示される矩形の範囲は、家具などが配置されていない床の面積とほぼ同じエリアの温度を検出可能なサーモパイル11の検知エリア6を示している。検知エリア6は縦と横が各4分割されて合計16個の個別エリア6aとなっている。
【0015】
この検知エリア6の16個の個別エリア6aには1~16の識別番号が付与されており、サーモパイル11はこの識別番号と対応させた個別エリア6aの温度検出を行っている。個別エリア6aの識別番号は図2において、壁8側で壁7側の位置を識別番号1として、ここから壁4側に向かって識別番号2~4、また、識別番号1の壁9側が識別番号5、ここから壁4側に向かって識別番号6~8が割り当てられている。以下同様に識別番号9~16が割り当てられている。
【0016】
図2において、サーモパイル11がドア4aに近い識別番号12の個別エリア6aで図示しない人(ユーザー)を例えば1秒前に検知していた時、現在のタイミングで人の不在を検出した場合、人はドア4aから部屋の外に出たと推測できる。同様にサーモパイル11が1秒前にはしご5aに近い識別番号13の個別エリア6aで人を検知しており、現在のタイミングで人の不在を検出した場合、人ははしご5aからシステム学習机5の上部のベッド5bへ移動したと推測できる。ここでは人が隣り合う個別エリア6a同士の間を移動するのに必要な最短時間を1秒と仮定して、人の移動を推測するための条件を決定しているが、人の移動速度がこれより速い、または、個別エリア6aの面積がこれより狭いなどの場合は、最短の移動時間を1秒より短くしたり、1秒で移動する個別エリアの数を二つ以上に増やしたりして、人の移動を推測するための条件を適宜設定してもよい。このような原理に基づいて本発明は、人がベッドへ移動したと室内機10が検出した時に、部屋1の高所(ベッド5b)の温度が室内機10に設定された設定温度に近づくように自動的に切り替えるようになっている。
なお、本実施例では人が就寝する時の室温の設定を行っており、必ずしも設定温度に近い温度でなく、人が就寝する時に快適と感じる温度であればよい。このため、切り替えられた室内の目標温度をユーザーの好みにより任意に設定できるようにしてもよい。
また、本実施例では人の操作によりリモコンに設定された室温の目標温度を設定温度と呼称する。また、本発明による人の高所方向の移動により一時的に変更される室温の目標温度を目標温度と呼称する。この場合、広義の意味では目標温度は設定温度と同じである。
【0017】
図3は本発明による空気調和機30の制御ブロックを示すブロック図である。なお、冷媒回路については本発明と直接的な関連性がないため図示と説明を省略している。
空気調和機30は室外機20と、これに通信接続された室内機10を備えている。室内機10は図示しないリモコンからの運転指示信号を受信して、この運転指示信号に対応して室外機20に指示を送信し、部屋1の空調を行う空調制御を行う。
【0018】
室内機10はリモコン受信部12と、室外機20と通信を行うと共に室内機10を制御する室内機制御部13と、サーモパイル11を備えて人の高さ方向への移動を検出する移動検出部(移動検出手段)40を備えている。
室内機制御部13は、設定温度変更部(設定温度変更手段)44とマイコン14を備えている。
【0019】
サーモパイル11から出力される個別エリア6aごとの検出温度である温度信号は移動検出部40とマイコン14に入力されている。マイコン14はこの温度信号を用いて室内機10を制御して室温を制御している。マイコン14にはリモコン受信部12からリモコン信号と、設定温度変更部44から増減温度信号がそれぞれ入力されている。また、マイコン14は設定温度変更部44へ冷房運転又は暖房運転を区別する運転モード信号を出力している。そして、設定温度変更部44は移動検出部40から人移動信号が入力されている。
【0020】
また、マイコン14は移動検出部40へ所定位置識別信号を出力し、移動検出部40は、マイコン14へサーモパイル11で検出した温度を温度信号として出力している。
さらに、マイコン14は、室外機20との間で運転制御信号を送受信している。なお、増減温度信号や所定位置識別信号や人移動信号については後で詳細に説明する。
【0021】
図4は移動検出部40の内部を示すブロック図である。
移動検出部40は、サーモパイル11と、現在温度分布記憶部41と、過去温度分布記憶部42と、不揮発性メモリからなる所定位置記憶部45と、高所移動判定部43を備えている。
【0022】
現在温度分布記憶部41は、サーモパイル11から出力される温度信号が入力されている。現在温度分布記憶部41は、入力された温度信号の温度を個別エリア毎の温度分布データとして記憶すると共に、記憶した温度分布のデータを高所移動判定部43へ出力する。一方、現在温度分布記憶部41は、新たな温度信号が入力されると、以前に記憶していた温度分布のデータを過去温度分布記憶部42へ出力する。すると過去温度分布記憶部42は、この入力された温度分布のデータを記憶すると共に、記憶した温度分布のデータを高所移動判定部43へ出力する。
【0023】
つまり、高所移動判定部43は、現在と過去の2つの温度分布のデータを比較することになる。現在温度分布記憶部41と過去温度分布記憶部42との記憶された温度の時間差が例えば1秒となるようにしておくと、高所移動判定部43は、現在温度分布記憶部41と過去温度分布記憶部42とで記憶された検知エリア6の温度分布を時間的な前後(1秒間)で比較して変化があったら、ある個別エリアから他の個別エリアに何かが移動したと判断する。
高所移動判定部43は、前述した検知エリア6の個別エリア6aに関して体温に近い温度、例えば30℃~36℃の温度(人検知温度)となった個別エリア6aが現在と過去でどこからどこに(識別番号で示されるどこの個別エリア6aからどこの個別エリア6aに)移動したのかを判定することができる。
【0024】
所定位置記憶部45は、システム学習机5の上部のベッド5bへ人が移動する時に最後に通過する個別エリア6aの識別番号である所定位置識別番号を記憶している。図2で説明すると、所定位置記憶部45は、識別番号が13の個別エリア6aの位置を所定位置識別番号として記憶している。これは予め図示しないリモコンの設定操作により、所定位置、つまり、高所である所定位置が所定位置識別番号13の隣(図2においてベッド5b側)であるとして記憶している。この情報はリモコン受信部12とマイコン14を経由して移動検出部40の所定位置記憶部45へ出力されてここで記憶されている。本実施例では所定位置(高所)をシステム学習机5の上部のベッド5bの位置として説明している。
【0025】
高所移動判定部43は、過去温度分布記憶部42において人検知温度となっている個別エリア6aが識別番号13である時、現在温度分布記憶部41において識別番号13の個別エリア6aから人検知温度が検出されなくなり、かつ、検知エリア6内に人検知温度が存在しないと判定した場合、人は床3からベッド5b(所定位置)へ移動したと判断し、高所の所定位置への移動を示す人移動信号を設定温度変更部44へ出力する。
【0026】
これを入力した設定温度変更部44は、現在の運転モードが暖房なら現状の設定温度を一時的に下げるために、例えば温度低下3℃の増減温度信号をマイコン14へ出力する。もし、現在の運転モードが冷房なら天井2付近の温度を低下させるため、例えば温度低下2℃の増減温度信号をマイコン14へ出力する。増減温度信号が入力されたマイコン14はリモコンによって設定された設定温度の値に対して増減温度信号によって指示された値で補正(低下)して、それを仮の設定温度(目標温度)として室内機10を運転する。
【0027】
冷房運転時においても暖房運転時と同様に、床面付近の温度よりも高所の方が一般的に高温になりやすい。このため、例えば就寝時には設定温度を起床後、つまり、人が床3に存在する時の温度よりも低くして高所の室温を下げることにより、快適な睡眠を得ることができる。なお、設定温度を起床後の温度よりも低くした時、同時に風向を上に向けて冷風を高所に送風するようにしてもよい。
【0028】
一方、例えば起床時、つまり人が所定位置から床3に移動した場合において、高所移動判定部43は、過去温度分布記憶部42において検知エリア6内に人がいない場合で、かつ、現在温度分布記憶部41において人検知温度を識別番号13の個別エリア6aで検出した場合、人は所定位置(高所)から床3へ移動したと判断し、床3への移動を示す人移動信号を設定温度変更部44へ出力する。
【0029】
これが入力された設定温度変更部44は、現在の運転モードが暖房なら現状の目標温度を上げて元の設定温度に戻すため、例えば温度上昇3℃の増減温度信号をマイコン14へ出力する。もし、現在の運転モードが冷房なら床3付近の現状の目標温度を上げて元の設定温度に戻すため、例えば温度上昇2℃の増減温度信号をマイコン14へ出力する。増減温度信号が入力されたマイコン14は、増減温度の値に対応して現在の仮の設定温度(目標温度)の値を上昇させる。室内機10は、結果的にリモコンを用いて設定した元の設定温度で空調運転を行う。
【0030】
以上説明したように、ユーザーが室内の高所に存在する場合とユーザーが床付近に存在する場合とで、空調運転で参照する設定温度を自動的に切り替えることができるため、背景技術で説明したように、ユーザーが移動する都度、設定温度を切り替える手間を無くすことができる。
【0031】
なお、本実施例では移動検出部や設定温度変更部を全てハードウェアとして説明しているが、これに限るものでなく、サーモパイルをハードウェアで、その他の機能をソフトウェアで実現してもよい。
【0032】
また、本実施例ではサーモパイルの検知範囲外に所定位置(高所のベッドなど)が有るものとして説明しているが、これに限るものでなく、サーモパイルの検知範囲内に所定位置が存在してもよい。この場合、人が所定位置に留まる、例えば就寝した時などに目標温度を自動的に切り替えるように制御する。このため、移動検出部において所定位置識別番号で示される個別エリアで検出された温度が人検知温度と判定される時を人が所定位置にいるものとし、それ以外の場合を人が所定位置にいないものとすればよい。これにより、本実施例での効果と同じ効果を得ることができる。
【0033】
本実施例では人の移動検出を行う移動検出手段の温度センサとしてサーモパイルを用いているが、これに限るものでなく、カメラによる画像認識や所定の位置での人検知を行う専用のセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 部屋
2 天井
3 床
4 壁
4a ドア
5 システム学習机
5a はしご
5b ベッド
6 検知エリア
6a 個別エリア
7 壁
8 壁
9 壁
10 室内機
11 サーモパイル
12 リモコン受信部
13 室内機制御部
14 マイコン
20 室外機
30 空気調和機
40 移動検出部(移動検出手段)
41 現在温度分布記憶部
42 過去温度分布記憶部
43 高所移動判定部
44 設定温度変更部(設定温度変更手段)
45 所定位置記憶部
図1
図2
図3
図4