(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電子文書管理装置、画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20240618BHJP
G06F 16/93 20190101ALI20240618BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G06Q10/10
G06F16/93
G06T1/00 200C
(21)【出願番号】P 2020170222
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝元 孝介
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-71604(JP,A)
【文献】特開2020-46765(JP,A)
【文献】特開平9-81477(JP,A)
【文献】特開2013-46146(JP,A)
【文献】特開2005-322104(JP,A)
【文献】特開2005-309973(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111428218(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0283177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 16/93
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子文書を管理する電子文書管理装置であって、
前記電子文書を取得する取得手段と、
取得された前記電子文書の承認状況を管理する管理手段と、
前記電子文書の出力指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合にのみ、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像が付加された電子文書の出力を許可しない許可手段と、
を備えることを特徴とする電子文書管理装置。
【請求項2】
予め指定された前記承認対象者の一部の承認が完了している場合に、前記電子文書に承認した前記承認対象者が一部であることが分かる承認画像を付加した一部承認電子文書を作成する作成手段を備え、
前記許可手段は、前記一部承認電子文書の出力を許可することを特徴とする請求項1に記載の電子文書管理装置。
【請求項3】
前記承認画像は、前記電子文書に承認した前記承認対象者の前記印影画像と異なる氏名の画像を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子文書管理装置。
【請求項4】
前記承認画像は、前記電子文書に承認した前記承認対象者が承認を行った日時を示す画像を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の電子文書管理装置。
【請求項5】
前記承認画像は、前記電子文書の承認欄に付加された前記印影画像とは異なる画像を含むことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の電子文書管理装置。
【請求項6】
前記作成手段は、前記一部承認電子文書が未承認であることを示すウォーターマークを前記一部承認電子文書に形成することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電子文書管理装置。
【請求項7】
前記一部承認電子文書が出力された際、当該一部承認電子文書の作成者及び前記承認対象者のうち、予め定められた承認対象者に対して通知を行う通知手段を備えることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の電子文書管理装置。
【請求項8】
電子文書を管理する電子文書管理装置であって、
前記電子文書を取得する取得手段と、
取得された前記電子文書の承認状況を管理する管理手段と、
前記電子文書をフルカラー画像となるように出力する指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合にのみ、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての前記承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合に、承認した前記承認対象者の前記印影画像が付加された前記電子文書をモノクロ画像での出力を許可する許可手段と、
を備えることを特徴とする電子文書管理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子文書管理装置と、
前記許可手段により許可された前記承認済電子文書を用紙に画像形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
原稿をスキャンして前記電子文書を読み取る画像読取部を備え、
前記取得手段は、前記画像読取部で読み取られた前記電子文書を取得することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
電子文書を管理する電子文書管理装置のコンピュータを、
前記電子文書を取得する取得手段、
取得された電子文書の承認状況を管理する管理手段、
前記電子文書の出力指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合に、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像が付加された電子文書の出力を許可しない許可手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子文書管理装置、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のネットワークの発展により、従来は紙媒体を用いて行われていた処理を、文書を電子化した電子文書を用いて行うことが増えている。この発展に伴い、ネットワーク上で電子文書が複数者間で回される際に、ある変更を本当にその者が行ったのか、また、閲覧者が変わる中で誰が承認を行ったのか、を容易に確認することができる電子印章を押印する情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような情報処理装置においては、承認途中の電子文書に対しても電子印章を押印するため、あるユーザが確認又は修正のために承認途中の電子文書を出力する際、承認を行った一部のユーザの電子印章が押印された状態で出力されてしまう。そのため、他のユーザが、当該出力された文書を、必要な電子印章が全て押印された正式版の文書であると誤認してしまい、必要な全ての承認を得ないまま作業が進行し、不要な手戻りによる作業が発生してしまう恐れがある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、承認途中の電子文書を承認済の電子文書であると誤認してしまうことを防止することができる電子文書管理装置、画像形成装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子文書を管理する電子文書管理装置であって、
前記電子文書を取得する取得手段と、
取得された前記電子文書の承認状況を管理する管理手段と、
前記電子文書の出力指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合にのみ、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像が付加された電子文書の出力を許可しない許可手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子文書管理装置であって、
予め指定された前記承認対象者の一部の承認が完了している場合に、前記電子文書に承認した前記承認対象者が一部であることが分かる承認画像を付加した一部承認電子文書を作成する作成手段を備え、
前記許可手段は、前記一部承認電子文書の出力を許可することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子文書管理装置であって、
前記承認画像は、前記電子文書に承認した前記承認対象者の前記印影画像と異なる氏名の画像を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電子文書管理装置であって、
前記承認画像は、前記電子文書に承認した前記承認対象者が承認を行った日時を示す画像を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の電子文書管理装置であって、
前記承認画像は、前記電子文書の承認欄に付加された前記印影画像とは異なる画像を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の電子文書管理装置であって、
前記作成手段は、前記一部承認電子文書が未承認であることを示すウォーターマークを前記一部承認電子文書に形成することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項2から6のいずれか一項に記載の電子文書管理装置であって、
前記一部承認電子文書が出力された際、当該一部承認電子文書の作成者及び前記承認対象者のうち、予め定められた承認対象者に対して通知を行う通知手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、電子文書を管理する電子文書管理装置であって、
前記電子文書を取得する取得手段と、
取得された前記電子文書の承認状況を管理する管理手段と、
前記電子文書をフルカラー画像となるように出力する指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合にのみ、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての前記承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合に、承認した前記承認対象者の前記印影画像が付加された前記電子文書をモノクロ画像での出力を許可する許可手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、画像形成装置であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子文書管理装置と、
前記許可手段により許可された前記承認済電子文書を用紙に画像形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像形成装置であって、
原稿をスキャンして前記電子文書を読み取る画像読取部を備え、
前記取得手段は、前記画像読取部で読み取られた前記電子文書を取得することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、プログラムであって、
電子文書を管理する電子文書管理装置のコンピュータを、
前記電子文書を取得する取得手段、
取得された電子文書の承認状況を管理する管理手段、
前記電子文書の出力指示を受けた際に、前記承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合に、前記全ての承認対象者の印影画像が付加された承認済電子文書の出力を許可し、前記全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像が付加された電子文書の出力を許可しない許可手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子文書管理装置、画像形成装置及びプログラムによれば承認途中の電子文書を承認済の電子文書であると誤認してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る電子文書管理装置及び電子文書出力処理に係るその他装置のブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る電子文書出力処理を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は本実施形態に係る電子文書の一例であり、(b)は本実施形態に係る承認済電子文書の一例である。
【
図4】(a)~(e)は承認画像が付加された承認欄の一例であり、(f)はウォーターマークが形成された一部承認電子文書の一例である。
【
図5】変形例に係る電子文書出力処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る電子文書管理装置10と、電子文書出力処理に係るその他装置を示すブロック図である。
図1に示すように、電子文書管理装置10は、端末装置20及び画像形成装置30と、互いにネットワークNWを介して接続しており、通信を行うことが可能である。
【0020】
ネットワークNWは電子文書管理装置10、端末装置20及び画像形成装置30を相互に接続する通信形態であれば良く、例えばインターネットやイントラネットが相当する。ネットワークNWに対する各装置の接続態様は、有線接続であっても良く、無線接続であっても良い。
なお、
図1にはネットワークNWに接続する電子文書管理装置10、端末装置20及び画像形成装置30を1台ずつ記載しているが、その数は任意で良い。また、ネットワークNWに接続する機器も、これらに限られない。
【0021】
[電子文書管理装置]
電子文書管理装置10は、例えばサーバコンピュータであって、通信部11、記憶部12及び制御部13を備え、電子文書Dと、電子文書Dに係る承認情報と、電子文書Dに印影画像Sを付加した承認済電子文書ADの出力許可とを主に管理する。電子文書管理装置10がサーバコンピュータである場合、インターネットのクラウド上に設けられたクラウドサーバであっても、機器として実体を有するオンプレミスサーバであっても良い。
【0022】
通信部11は、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタ等を有し、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種の通信プロトコルを利用することで、ネットワークNWを介したネットワーク通信を行い、端末装置20、画像形成装置30及びその他のコンピュータ(図示省略)等、所望の相手先との間で各種のデータの授受を行う。
【0023】
記憶部12は、不揮発性の半導体メモリであるROM(Read Only Memory))や不揮発性のストレージであるHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成され、電子文書出力処理に係る各種のデータを記憶する。詳細には、記憶部12にはデータベースが構築され、電子文書管理装置10に登録された電子文書Dのファイルデータ並びに、電子文書Dの情報を管理する文書管理テーブル121、電子文書Dの承認対象者及び当該承認対象者の承認完了の有無(承認状況)や、承認完了している場合はその日時等の電子文書Dの承認情報と、電子文書Dの承認フローを管理する承認管理テーブル122及び各ユーザの印影画像Sを管理する印影管理テーブル123を備える。
【0024】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)及び各種の半導体メモリ(RAM;Random Access Memory)等を備えるコンピュータシステムとして構成され、当該CPUにおいて、所定のプログラムを実行することによって、各種の処理部を実現する。詳細には、電子文書管理装置10には所定のOS(Operating System)が搭載され、複数のプログラムを当該OS上で実行することが可能であり、通信制御部131、取得部132、データ管理部133、出力制御部134及び画像付加部135を含む各種の処理部を実現する。なお、当該プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬性を有する記録媒体、あるいはネットワークNW等を介して電子文書管理装置10にインストールされればよい。
【0025】
通信制御部131は、通信部11と協働して、端末装置20及び画像形成装置30等の外部機器との通信の制御を行う処理部である。
【0026】
取得部132は、端末装置20又は画像形成装置30から電子文書管理装置10に送信された電子文書Dを取得する取得処理を行う処理部であって、電子文書Dの取得手段として機能する。
【0027】
データ管理部133は、記憶部12への各種データの登録処理、あるいは記憶部12からの各種データの取得処理を行う処理部であって、例えば、取得部132が取得した電子文書Dの文書管理テーブル121への登録や、承認管理テーブル122に登録された電子文書Dの承認情報の取得を行う、電子文書管理装置10における管理手段として機能する。
【0028】
出力制御部134は、承認済電子文書ADの出力を許可するか否かの判断を行う処理部であって、電子文書管理装置10における許可手段として機能する。具体的には、端末装置20から電子文書Dの出力指示を受けた際に、データ管理部133が承認管理テーブル122から取得した電子文書Dの承認情報を参照して、予め指定された全ての承認対象者が承認完了している場合のみ、承認済電子文書ADの出力を許可し、全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像Sが付加された電子文書Dの出力を許可しない。
【0029】
なお、電子文書Dの承認対象者は、例えばユーザが電子文書Dの送信時に手動操作により指定するものであっても良い。あるいは、取得部132がテキストデータである電子文書Dを取得した際に、当該テキストデータから電子文書Dの種別(稟議書、請求書等)や、記載された金額等の情報を取得し、当該情報と予め設定された承認対象者テーブル(図示省略)に基づいて、データ管理部133によって自動的に指定されるものであっても良い。
【0030】
画像付加部135は、電子文書Dに印影画像Sの付加を行う処理部であって、電子文書管理装置10における作成手段として機能する。具体的には、出力制御部134による承認済電子文書ADの出力許可指示を受けて、電子データである電子文書Dに、データ管理部133が印影管理テーブル123から取得した印影画像Sを付加し、承認済電子文書ADの電子データを作成する。また、画像付加部135は、予め指定された承認対象者の一部の承認が完了している場合に、電子文書Dに、承認した承認対象者が一部であることが分かる承認画像Iを付加した一部承認電子文書PDの電子データを作成する。
【0031】
(端末装置)
端末装置20は、例えば所定の場所に設置されたクライアントPC(Personal Computer)や、各ユーザが持ち運び可能な、スマートフォン等の携帯端末のような、電子文書出力処理を行う各ユーザが所持して使用する装置である。端末装置20には、電子文書管理装置10へのリクエスト入力画面を表示させることができるアプリケーション又はWebブラウザがインストールされており、当該リクエスト入力画面より、ネットワークNWを介して、電子文書Dの登録処理、承認処理、出力指示等の各種操作を行う。
【0032】
(画像形成装置)
画像形成装置30は、電子文書管理装置10の出力制御部134の許可に応じて用紙等の媒体上に電子文書D、一部承認電子文書PD又は承認済電子文書ADを出力する装置であって、画像読取部31、画像形成部32、通信部33、格納部34、入出力部35及び制御部36等を備えており、これらの各部を複合的に動作させることによって、各種の機能を実現する。
具体的には、画像形成装置30として、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能、メール機能、印刷出力機能を備えるMFP(Multi-Functional Peripheral)を例示するが、これに限られず、少なくとも印刷出力機能を備えるものであれば良い。
【0033】
画像読取部31は、自動原稿搬送部(ADF;Auto Document Feeder)、プラテンガラス、光学系等を備えて構成され、ADF又はプラテンガラスに載置された原稿の片面又は両面の画像を光学系により読み取って、その反射光をラインイメージセンサによって読み取って画像信号を取得し、当該画像信号にA/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理を施すことで、当該原稿の画像データ(電子文書D)を得るスキャン機能を実現する。
画像形成部32は、印刷出力対象の画像データに基づいて用紙等の各種の媒体に画像形成を行い、コピー機能及び印刷出力機能を実現する。
【0034】
通信部33は、ネットワーク通信等により電子文書管理装置10や端末装置20等の所望の相手先との間で各種のデータの授受を行うことで、各種の機能を実現する。例えば、他のファクシミリ装置(図示省略)との間でファクシミリ回線を経由して画像データを送受信するファクシミリ機能や、端末装置20との間でネットワークNWを経由して電子メールにより画像データを送受信するメール機能を実現する。また、画像読取部31で読み取った原稿の画像データを電子文書管理装置10に送信することで、電子文書Dの登録処理を実現する。
格納部34は、HDD等の記憶装置で構成され、印刷出力指示に伴うプリントジョブのデータ等を保持する。
【0035】
入出力部35は、画像形成装置30に対する入力を受け付ける操作入力部351と、各種情報の表示出力を行う表示出力部352とを備えている。表示出力部352は、透明電極を格子状に配置した感圧式のタッチパネルを備えるLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等を備えて構成され、案内画面等の各種画面や、ジョブの実行に関するメッセージをユーザに提示し、タッチ操作用の操作ボタンの画像を表示すると共に、ユーザのタッチ操作を受け付け、入力操作を操作信号に変換して制御部36に出力する。
【0036】
制御部36は、電子文書管理装置10の制御部13と略同様に、CPU及び各種の半導体メモリを備え、搭載されたOS上で所定のソフトウェアプログラムを実行することによって、入力制御部361、表示制御部362、通信制御部363、文字認識処理部364及び動作制御部365を含む各種の処理部を実現する。
【0037】
入力制御部361は、操作入力部351と協働して、画像形成装置30に対する操作入力を制御する処理部である。
表示制御部362は、表示出力部352における表示出力動作等を制御する処理部である。
通信制御部363は、通信部33と協働して、外部機器との通信を制御する処理部である。
文字認識処理部364は、画像読取部31と協働して、読み取られた原稿の画像データに対して文字認識処理を行い、テキストデータに変換する処理部である。
動作制御部365は、画像形成装置30のスキャンジョブ、コピージョブ、印刷出力ジョブ、通信ジョブ等の各種ジョブの動作等を制御する処理部である。
【0038】
[動作概要]
以下では、本実施形態に係る電子文書管理装置10による電子文書出力処理の具体的な動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態においては、端末装置20を使用するユーザが、電子文書管理装置10により電子文書Dの出力処理を実行する。本フローチャートは、例えばユーザが電子文書管理アプリケーションを起動するか、Webブラウザに本ワークフローを制御する電子文書管理装置10のアドレスを入力し、ログイン認証を行うことで開始される。
【0039】
初めにユーザは、端末装置20に表示された電子文書管理画面において、出力したい電子文書Dを選択して出力指示を行い、電子文書管理装置10は当該出力指示を受信する(ステップS101)。
【0040】
電子文書Dは、例えば端末装置20により作成され、電子文書管理装置10に登録されたものでも良く、あるいは、用紙等の媒体上に形成された原稿を、画像形成装置30の画像読取部31によって画像データに、あるいは文字認識処理部364によってテキストデータに変換し、通信部33によって電子文書管理装置10に送信することで登録されたものでも良い。
【0041】
端末装置20から電子文書Dの出力指示を受信した出力制御部134は、データ管理部133に対して、当該電子文書Dの承認状況を承認管理テーブル122から取得するように指示し、当該取得した承認状況から、予め指定された全ての承認対象者の承認が完了しているかを判定する(ステップS102)。
【0042】
予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合(ステップS102;Yes)、出力制御部134は、
図3(a)に示すような電子文書Dの承認欄B1、B2に、全ての承認対象者の印影画像S1、S2をそれぞれ付加した、
図3(b)に示すような承認済電子文書ADの出力を許可し、作成手段である画像付加部135に承認済電子文書ADを作成させる(ステップS103)。
【0043】
承認済電子文書ADを作成させた出力制御部134は、通信制御部131により、画像形成装置30に対して、承認済電子文書ADの出力指示を行う(ステップS104)。電子文書管理装置10から承認済電子文書ADと、当該承認済電子文書ADの出力指示を受信した画像形成装置30は、当該承認済電子文書ADを出力し、電子文書出力処理を終了する(ステップS111)。
【0044】
予め指定された全ての承認対象者の承認が完了していない場合(ステップS102;No)、出力制御部134は、更に、承認完了している承認対象者がいるかを判定する(ステップS105)。
【0045】
予め指定された承認対象者が、いずれも承認完了していない場合(ステップS105;No)、出力制御部134は、電子文書Dに全ての承認対象者の印影画像Sが付加された承認済電子文書ADの出力を許可せず、
図3(a)に示すような、印影画像Sも承認画像Iも付加されていない電子文書Dの出力を許可し、通信制御部131により、通信部11を通知手段として、当該電子文書Dの作成者及び承認対象者のうち、予め指定された承認対象者に対して、当該電子文書Dが出力されることの通知を行う(ステップS106)。
承認対象者への通知方法としては、例えば電子文書管理画面における通知や、予め登録された承認対象者のアドレスへのメール通知等、適宜公知の方法を用いることができる。
【0046】
電子文書Dの出力通知を行った出力制御部134は、画像形成装置30に対して、当該電子文書Dの出力指示を行う(ステップS107)。電子文書管理装置10から電子文書Dと、当該電子文書Dの出力指示を受信した画像形成装置30は、当該電子文書Dを出力し、電子文書出力処理を終了する(ステップS111)。
【0047】
予め指定された承認対象者のうち、一部の承認対象者が承認完了している場合(ステップS105;Yes)、出力制御部134は、電子文書Dに全ての承認対象者の印影画像Sが付加された承認済電子文書ADの出力を許可せず、電子文書Dに承認した承認対象者が一部であることが分かる承認画像Iが付加された一部承認電子文書PDの出力を許可し、画像付加部135に当該一部承認電子文書PDを作成させる(ステップS108)。
【0048】
具体的には例えば、電子文書Dの承認対象者が「課長」と「部長」の2名であり、このうち「課長」のみが承認完了している場合、
図4(a)に示すように、出力制御部134は画像付加部135に対して、電子文書Dの承認欄Bのうち、承認完了している承認対象者である「課長」の承認欄B2に、承認画像Iであるレ点が付加された一部承認電子文書PDを作成させる。
【0049】
承認画像Iは、
図4(a)に示したようなレ点に限られず、例えば黒点や、
図4(b)に示すような承認対象者の承認日時の画像や、
図4(c)に示すような印影画像Sとは異なる承認対象者の氏名の画像、あるいは
図4(d)に示すような半分が欠けた印影画像や、
図4(e)に示すような一部が塗り潰された印影画像のように承認欄Bに付加される印影画像Sとは異なる画像であっても構わない。
【0050】
印影画像S及び承認画像Iの付加位置は、例えば、電子文書Dの登録者が当該電子文書Dの登録時に、あるいは、電子文書Dの承認対象者が当該電子文書Dの承認時に、任意の箇所を指定するものとすれば良い。また、データ管理部133が電子文書Dを文書管理テーブル121に登録する際に、当該電子文書Dの画像データ又はテキストデータから自動的に決定するものとしても構わない。そのため、承認画像Iの付加位置は承認欄B内に限られず、電子文書Dのヘッダー部やフッター部等の余白部分でも構わない。
【0051】
また、一部承認電子文書PDの作成に際して、承認画像Iの付加に加えて、
図4(f)に示すように、未承認の電子文書DであることがわかるウォーターマークWを形成するようにしても構わない。
【0052】
なお、いずれの承認画像Iを一部承認電子文書PDに付加するか、あるいは、ウォーターマークWを形成するか否かは、予め画像付加部135に設定されているが、ユーザが端末装置20から任意に変更することができるようにしても構わない。
また、1つの一部承認電子文書PDに付加する承認画像Iは一種類に限られず、承認完了している一部の承認対象者が複数人である場合は、承認対象者によって異なる承認画像Iを付加するようにしても構わない。
【0053】
一部承認電子文書PDを作成させた出力制御部134は、ステップS106と略同様に、予め指定された承認対象者に対して、一部承認電子文書PDが出力されることの通知を行う(ステップS109)。
【0054】
一部承認電子文書PDの出力通知を行った出力制御部134は、画像形成装置30に対して、当該一部承認電子文書PDの出力指示を行う(ステップS110)。電子文書管理装置10から一部承認電子文書PDと、当該一部承認電子文書PDの出力指示を受信した画像形成装置30は、当該一部承認電子文書PDを出力し、電子文書出力処理を終了する(ステップS111)。
【0055】
[発明の効果]
以上のような動作によれば、電子文書Dを管理する電子文書管理装置10は、電子文書Dを取得する取得手段132と、取得された電子文書Dの承認状況を管理する管理手段133と、電子文書Dの出力指示を受けた際に、承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合にのみ、全ての承認対象者の印影画像Sが付加された承認済電子文書ADの出力を許可し、全ての承認対象者のうち一部の承認が完了していない場合には、印影画像Sが付加された電子文書Dの出力を許可しない許可手段134と、を備える。
したがって、承認途中の電子文書Dを承認済の電子文書Dであると誤認してしまうことを防止することができる。
【0056】
また、電子文書管理装置10は、予め指定された承認対象者の一部の承認が完了している場合に、電子文書Dに承認した承認対象者が一部であることが分かる承認画像Iを付加した一部承認電子文書PDを作成する作成手段135を備え、許可手段134は、一部承認電子文書PDの出力を許可する。
したがって、承認途中の電子文書Dを承認済の電子文書Dであると誤認してしまうことを防止しつつ、承認完了している一部の承認対象者が誰であるかを明らかにすることができる。
【0057】
また、電子文書管理装置10は、一部承認電子文書PDが出力された際、一部承認電子文書PDの作成者及び承認対象者のうち、予め定められた承認対象者に対して通知を行う通知手段11を備える。
したがって、承認途中の電子文書Dを承認済の電子文書Dであると誤認される恐れをより小さくすることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態にかかる電子文書管理装置10を用いた電子文書出力処理について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0059】
例えば、予め指定された承認対象者のうち、一部の承認対象者が承認完了しており、かつ、端末装置20からフルカラー画像となるように出力する指示を受けている場合、一部の承認対象者の印影画像Sが付加された、モノクロ画像の電子文書Dを出力させるようにしても構わない。
以下、一部の承認対象者の印影画像Sが付加された、モノクロ画像の電子文書Dを出力する処理を含む変形例の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS201~S207の処理は、
図2のステップS101~S107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
予め指定された承認対象者のうち、一部の承認対象者が承認完了している場合(ステップS205;Yes)、出力制御部134は、更に、フルカラー画像となるように出力する指示を端末装置20から受けているかを判定する(ステップS208)。
【0061】
フルカラー画像となるように出力する指示を受けている場合(ステップS208;Yes)、出力制御部134は、承認完了した一部の承認対象者の印影画像Sが付加された、モノクロ画像の電子文書Dの出力を許可し、画像付加部135に当該電子文書Dを作成させる(ステップS209)。
当該電子文書Dを作成させた出力制御部134は、ステップS206と略同様に、予め指定された承認対象者に対して、当該電子文書Dが出力されることの通知を行う(ステップS210)。
【0062】
電子文書Dの出力通知を行った出力制御部134は、画像形成装置30に対して、作成した電子文書Dの出力指示を行う(ステップS211)。電子文書管理装置10から電子文書Dと、当該電子文書Dの出力指示を受信した画像形成装置30は、当該電子文書Dを出力し、電子文書出力処理を終了する(ステップS215)
以下、ステップS212~S214の処理は、
図2のステップS108~S110の処理と略同様であるので、説明を省略する。
【0063】
なお、ステップS209において、承認完了した一部の承認対象者の印影画像Sが付加されたモノクロ画像の電子文書Dを画像付加部135に作成させるとしたが、これに限られず、ステップS209においては、画像付加部135に、承認完了した一部の承認対象者の印影画像Sが付加された電子文書Dを作成させ、ステップS211においては、画像形成装置30に対して、当該電子文書Dをモノクロ画像となるように出力するように指示するものとしても構わない。
【0064】
また、ステップS104、S107、S110、S204、S207、S211及びS214においては、電子文書D、一部承認電子文書PD又は承認済電子文書ADの出力指示を画像形成装置30に対して行い、ステップS111及びS215においては、画像形成装置30が印刷出力を行う場合を例示したが、これに限られず、「文書の出力」は、例えば端末装置20のユーザが、電子文書管理装置10から電子文書D、一部承認電子文書PD又は承認済電子文書ADを取得し、当該端末装置20の画面上に出力処理を行う場合を含む。
【0065】
また、本実施形態においては、電子文書管理装置10が、電子文書Dを取得する取得手段132と、取得された電子文書Dの承認状況を管理する管理手段133と、電子文書Dの出力指示を受けた際に、承認状況に基づいて予め指定された全ての承認対象者の承認が完了している場合に、全ての承認対象者の印影画像Sが付加された承認済電子文書ADの出力を許可する許可手段134と、を備えるものとしたが、これに限られず、画像形成装置30を、取得手段132、管理手段133及び許可手段134の機能を備えるものとしても構わない。
【0066】
画像形成装置30が、取得手段132、管理手段133及び許可手段134の機能を備える場合、取得手段132が画像読取部31により原稿から電子文書Dの画像データを取得し、文字認識処理部364により当該画像データがテキストデータに変換された際に、管理手段133は、当該テキストデータと文書管理テーブル121に記憶されたデータとを照合し、例えば文書Noが一致するデータが存在する場合、許可手段134は、管理手段133に、承認管理テーブル122から、当該一致した電子文書Dの承認情報を取得させ、全ての承認対象者の承認が完了していない場合は、通信部33の機能のうちメール機能及びファクシミリ機能を停止し、当該電子文書Dの画像データ及びテキストデータを外部機器に送信できないようにしても構わない。
このようにすることで、電子文書D又は一部承認電子文書PDが、画像形成装置30によって他のユーザに送信され、当該他のユーザに、取得した電子文書D又は一部承認電子文書PDが承認済の電子文書Dであると誤認される恐れを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 電子文書管理装置
11 通信部(通知手段)
132 取得部(取得手段)
133 データ管理部(管理手段)
134 出力制御部(許可手段)
135 画像付加部(作成手段)
30 画像形成装置
31 画像読取部
32 画像形成部
I 承認画像
W ウォーターマーク
S1、S2 印影画像
D 電子文書
AD 承認済電子文書
PD 一部承認電子文書