(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂、グラビアインキおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20240618BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2020171622
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】野崎 光徳
(72)【発明者】
【氏名】柳 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001672(JP,A)
【文献】特開2019-011435(JP,A)
【文献】特開2017-206623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41M 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を
同時に反応させてなる、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂であって、
前記酸化チタン顔料(c)に吸着した、前記ポリイソシアネート(a)および前記ポリオール(b)由来の構成単位を含むウレタン樹脂の質量が、前記酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%である、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂に、更に、ポリアミン(d)を反応させてなる、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂。
【請求項3】
印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂の固形分総質量中、活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を0.1~50質量%含む、請求項1または2に記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂。
【請求項4】
印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂が、末端にアミノ基、水酸基およびアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する、請求項1~3いずれかに記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含み、固形分20~35質量%であり、かつ、25℃における粘度が、50~2500mPa・sである、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体。
【請求項6】
請求項1~4いずれかに記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含む、顔料分散剤。
【請求項7】
請求項1~4いずれかに記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含む、グラビアインキ。
【請求項8】
さらに、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む請求項7記載のグラビアインキ。
【請求項9】
請求項5に記載の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法であって、
ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を
同時に反応させて顔料複合ウレタン樹脂を得る工程、および、固形分を20~35質量%とする工程を含む、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法。
【請求項10】
さらに、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂に、更に、ポリアミン(d)を反応させる工程を含む請求項9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂および分散体、当該顔料複合ウレタン樹脂を含む顔料分散剤、当該顔料複合ウレタン樹脂を含むグラビアインキ、当該顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷、フレキソ印刷は、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。グラビア印刷された被印刷体が包装材料として用いられる際、内容物や使用目的に応じたラミネート加工される場合が一般的である。ラミネート包材に用いられる印刷インキには、印刷適性だけでなく、各種プラスチックフィルムに対する接着性、耐ブロッキング性、ラミネート適性などの印刷物性が優れている必要がある。このような印刷インキにはバインダー樹脂として、柔軟な分子主鎖を有し、適度な剛性を有するウレタン樹脂が用いられることが多い(特許文献1)。
【0003】
印刷インキとしてのバインダー樹脂は、樹脂を合成してその後顔料を配合して分散する工程が一般的である。このため、印刷インキ製造には多くの工程と分散剤などの多種類の添加剤が必要であった。つまり、従来のウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキの製造は、ウレタン樹脂の製造工程に加え、更に当該ウレタン樹脂を用いた顔料分散による印刷インキ製造工程もあり、製造工程が多段階になり、工程時間も長時間に及ぶ。更に当該インキ製造工程では多種類の添加剤などが必要で手間であるなどの実情があった。
【0004】
たとえば、特許文献2では、無溶剤で塊状重合により製造された、顔料-ウレタン樹脂組成物が開示されている。しかしながらこれらは織物コーティングとして使用できる形態の発明であって印刷インキに適用できるかどうかも不明であり、分野として異なる技術である。また、特許文献3ではポリオール成分および着色剤と揺変性付与助剤を含む着色剤組成物を含有してなる、揺変性ウレタン樹脂組成物についての発明が記載されている。しかしながら、「揺変性」とは印刷インキには不向きなチキソ性を有する組成物であるし、分野としても接着剤、塗料についてであり、印刷インキとは異なるものである。
【0005】
したがって、バインダー樹脂と顔料をハイブリット化(複合化)して印刷インキ製造の工程数および時間を短縮した技術は開示されていないし、そのような複合ウレタン樹脂の持つ特性についても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-150945号公報
【文献】特開平4-255754号公報
【文献】特開平10-1607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、合成時の反応性、及び顔料分散性、および経時安定性に優れた印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂、それを含む分散体、顔料分散剤およびグラビアインキ、
並びに、製造工程および時間を短縮できる当該印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明の印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を反応させてなる、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂であって、
前記酸化チタン顔料(c)に吸着した、前記ポリイソシアネート(a)および前記ポリオール(b)由来の構成単位を含むウレタン樹脂の質量が、前記酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%である、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に関する。
【0010】
また、本発明は、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂に、更に、ポリアミン(d)を反応させてなる、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に関する。
【0011】
また、本発明は、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂の固形分総質量中、活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を0.1~50質量%含む、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に関する。
【0012】
また、本発明は、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂が、末端にアミノ基、水酸基およびアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に関する。
【0013】
また、本発明は、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含み、固形分20~35質量%であり、かつ、25℃における粘度が、50~2500mPa・sである、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体に関する。
【0014】
また、本発明は、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含む、顔料分散剤に関する。
【0015】
また、本発明は、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂を含む、グラビアインキに関する。
【0016】
また、本発明は、さらに、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む上記グラビアインキに関する。
【0017】
また、本発明は、上記印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法であって、
ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を反応させて顔料複合ウレタン樹脂を得る工程、および、固形分を20~35質量%とする工程を含む、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、さらに、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂に含まれるウレタン樹脂に、更に、ポリアミン(d)を反応させる工程を含む上記製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、合成時の反応性、及び顔料分散性、および経時安定性に優れた印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂、それを含む分散体、顔料分散剤およびグラビアインキ、
並びに、製造工程および時間を短縮できる当該印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体の製造方法を提供することを可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
本発明は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を反応させてなる、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂であって、前記酸化チタン顔料(c)に吸着した、前記ポリイソシアネート(a)および前記ポリオール(b)由来の構成単位を含むウレタン樹脂の質量が、前記酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%である、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂である。
【0022】
本発明の顔料複合ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(a)とポリオール(b)ならびに活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)反応させて合成し、場合によってはさらにポリアミン(d)などの鎖延長剤を反応せしめて得られる。当該酸化チタン顔料(c)にはポリイソシアネート(a)およびポリオール(b)由来の構成単位を含むウレタン樹脂が吸着(化学吸着、物理吸着)していると考えられ、前記酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%である。この場合に、合成時の反応性、及び顔料分散性、および経時安定性が良好である。
【0023】
本明細書において、「活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)」を単に「酸化チタン顔料(c)」あるいは「酸化チタン(c)」と表記する場合があるが同義である。「吸着」とは、化学吸着および物理吸着を含む概念であり、酸化チタン(c)と吸着物質(ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)等)との間の共有結合、水素結合、イオン結合やファンデルワールス力による吸着などを含む。「印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂」は「顔料複合ウレタン樹脂」や「複合ウレタン樹脂」などと表記する場合があるが同義である。
【0024】
(ポリイソシアネート(a))
本発明におけるポリイソシアネート(a)としては、ジイソシアネートを含むことが好ましい。当該ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;
α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、反応の制御が簡単で、得られるウレタン樹脂の性能のバランスが良好である観点から、脂環族または芳香脂肪族ジイソシアネートが好ましく、特に、イソホロンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが好ましい。ジイソシアネートは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(ポリオール(b))
ポリオール(b)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが好適に挙げられる。ポリオール(b)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
ポリオール(b)の数平均分子量は、500~10,000であることが好ましく、600~6000であることがなお好ましく、700~3000であることが更に好ましい。ここでポリオールに用いる数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JISK0070に従って行った値である。ポリオールの数平均分子量が10,000以下であると、プラスチックフィルムに対する耐ブロッキング性に優れる。また、ポリオールの数平均分子量が500以上であると、ウレタン樹脂被膜の柔軟性に優れプラスチックフィルムへの密着性に優れる。
【0026】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールとして数平均分子量は500~10,000であることが好ましい。また、ポリエステルポリオールとしてはポリエステルジオールであることが好ましい。なお、ジオールとは1分子中に水酸基を2個有する化合物をいう。
【0027】
当該ポリエステルジオールとしては、ジオールとジカルボン酸の縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。
当該ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。ポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。分岐ジオールを含むジオールとジカルボン酸との縮合物であるポリエステルジオールであることが好ましい。また、環状エステル(ラクトンなど)を開環反応させて得られるポリエステルジオールであってもよい。
当該ジカルボン酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられ、中でもアジピン酸、コハク酸、セバシン酸などが好ましい。
さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0028】
これらの中でも好ましい具体例として、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸その他の二塩基酸と分岐構造を有するジオール(分岐ジオール)含むものが好ましい。印刷層のプラスチック基材との密着性や印刷インキの溶解性を向上させることができるためである。なお、分岐構造を有するジオールとは、アルキレングリコールの少なくとも1の水素がアルキル基で置換された構造を有するジオールであり、分岐ジオールとしては例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルジオール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールなどが好適に挙げられる。中でも好ましいのは1,2-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、1,2-プロパンジオールおよび/または3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含むポリエステルポリオールの使用がなお好ましい。
【0029】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらの共重合体であるポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0030】
ポリオール(b)として、上記ポリオールのうち、分岐構造を有するポリオールを少なくとも一種類含有することが好ましい。
分岐構造を有するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールではポリプロピレングリコール等が好ましい。
ポリエステルポリオールでは、上記分岐ジオール類の中でも、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールなどの分岐ジオールと上記多塩基酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合によるポリエステルポリオール挙げられる。
好ましくは、二種類以上のポリオール(b)を併用することが好ましい。またポリオール(b)が分岐構造を有するポリオールを含み、分岐構造を有するポリオールは、ポリオール(b)総質量中に、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがなお好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。二種類以上のポリオール(b)を併用すると、印刷インキ中において顔料複合ウレタン樹脂と他の化合物(ウレタン樹脂、塩化ビニル共重合樹脂その他のバインダー樹脂など)との相溶性が増す。さらに好ましくは、分岐構造を有するポリオールを二種類以上使用することである。
【0031】
(活性水素基を有する酸化チタン顔料(c))
本発明における「活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)」の活性水素基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸、ウレタン基、尿素基などが好適である。酸化チタン顔料(c)表面の活性水素基が上記ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)等との反応サイトになるためである。酸化チタン顔料(c)は、結晶構造がアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれのものを使用してもよい。中でも顔料分散性が良好であるため、ルチル型酸化チタンの使用が好ましい。酸化チタン(c)の工業的生産では原料にルチル鉱石またはイルメナイト鉱石(FeTiO3)が用いられている。主な製造法には塩素法と硫酸法の二種類がありいずれの製法のものを用いても良い。
また、グラビア印刷における印刷適性が向上するため、酸化チタン顔料(c)は、Si、Al、Zn、Zrおよびそれらの酸化物から選ばれる少なくとも一種の金属により被覆されているものが好ましい。
【0032】
活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)は、例えば、テイカ社、石原産業社からで入手できる。例えば、テイカ社製のJR-301、JR-403、JR-405、JR-600A、JR-605、JR-600E、JR-603、JR-805、JR-806、JR-701JRNC、JR-800、JA-1、JA-C、JA-3などが挙げられる。
酸化チタン、アルミナ、シリカなどは赤外線吸収スペクトルにより表面水酸基にもとづくピークが観測でき、通常の酸化チタンは表面に水酸基を有している。更にシリカおよびまたはアルミナで表面被覆された酸化チタンも表面に水酸基を有している(表面科学 Vol.30,No.3,pp.148-156,2009特集「界面水の構造と制御」)。なお、当該酸化チタンに対してシランカップリング剤を反応させて表面修飾しても当該酸化チタンに対して水酸基、アミノ基その他の活性水素基を導入することができる。
当該シランカップリング剤は信越シリコーン社製のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103P)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)などを挙げることができる。
【0033】
例えば、酸化チタン(c)の表面にアミノ基を持たせたい場合は、当該酸化チタンと上記シランカップリング剤のうちアミノ基を有するもの(例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903))と反応させれば、容易に得ることができ、このように表面を修飾した酸化チタンを用いても酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%のウレタン樹脂吸着量を確保できる。
【0034】
また、JISK5101に規定されている測定法による吸油量が14~35ml/100gであることが好ましく、17~32ml/100gであることがより好ましい。また、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径(メディアン粒子径)が0.2~0.3μmであることが好ましい。
【0035】
(その他顔料)
本発明の印刷インキにおいて、酸化チタン顔料(c)の他に、その他の無機顔料、有機顔料も更に併用することができる。
具体的には、酸化チタン顔料(c)以外の無機顔料としては、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。有色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料で活性水素基を有するものを挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料で活性水素基を有するものが挙げられる。藍インキには活性水素を有する銅フタロシアニンを用いることが好ましい。
【0036】
(ポリアミン(d))
本発明における複合ウレタン樹脂は、更にポリアミン(d)を反応させてなる態様が好ましい。印刷インキとしての安定性、基材密着性などに寄与するためである。当該ポリアミン(d)としてはジアミンを含むことが好ましく、当該ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2
-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または二種類以上を混合して用いることができる。
【0037】
また、過剰反応防止を目的とした末端停止剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。これらの末端封鎖剤は単独で、または二種類以上を混合して用いることができる。
【0038】
(複合ウレタン樹脂の組成)
複合ウレタン樹脂の固形分総質量中、活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)を0.1~50質量%含むことが好ましい。1~20質量%であることがなお好ましく、3~20質量%であることが更に好ましい。複合ウレタン樹脂を構成する上記ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)を含むウレタン原料中に上記酸化チタン顔料(c)を上記配合とすることで含有させることができる。活性水素基を有する酸化チタン顔料(c)はウレタン合成反応を促進させる効果もあると考えられ、製造時間の短縮に効果的である。また、その他顔料を攪拌機やビーズミルなどで分散する場合にも顔料分散性が良好である。
【0039】
(複合ウレタン樹脂の製造)
以下に、複合ウレタン樹脂の製造を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
たとえば、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および酸化チタン顔料(c)主成分としてポリアミン(d)を用いないで複合ウレタン樹脂を製造する場合には、配合比率としてポリイソシアネート(a)とポリオール(b)との「イソシアネート基/水酸基」のモル比率は、70/100~99/100であることが好ましく、80/100~95/100であることがなお好ましい。この場合、複合ウレタン樹脂の末端には水酸基および/またはアルキル基を有することが好ましい。
なお、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、酸化チタン顔料(c)およびポリアミン(d)主成分として複合ウレタン樹脂を製造する場合、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および酸化チタン顔料(c)で、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂の一形態である、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー製造しておき、その後ポリアミン(d)とで鎖延長反応させる態様であることが好ましい。この場合では、配合比率としてポリイソシアネート(a)とポリオール(b)との「イソシアネート基/水酸基」のモル比率は、1.2/1~4/1であることが好ましく、1.5/1~3/1であることがなお好ましい。また、ポリアミン(d)による鎖延長後は、複合ウレタン樹脂の末端に1級または2級のアミノ基を有することが好ましい。上記において「主成分」とは、複合ウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、酸化チタン顔料(c)(およびポリアミン(d))の合計が、複合ウレタン樹脂総質量のうち50質量%以上であることを示し、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および酸化チタン顔料(c)を反応させる工程において、それ以外の反応成分を含んでいてもよい。例えば、ポリアミン(d)を含んでいてもよい。また、反応開始してから、前記反応成分が、添加されるものであってもよい。
【0040】
以下に限定されないが、上記複合ウレタン樹脂の製造工程においては、ポリイソシアネート(a)とポリオール(b)を反応させる場合は40~70℃程度で行うことが好ましく、撹拌速度としては300~1500rpmの範囲とすればよい。反応時間としては1~8時間で行えばよい。
ポリイソシアネート(a)またはポリイソシアネート(a)の反応物であるウレタンプレポリマーと、ポリアミン(d)との反応は0~50℃程度、好ましくは10~40℃において行うことが好ましい。この場合反応速度が速いので撹拌速度としては300~1500rpmの範囲とすればよい。反応時間としては1~4時間で行われればよい。
【0041】
(印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂分散体)
上記複合ウレタン樹脂の製造工程においては有機溶剤中で行うことが好ましく、その場合複合ウレタン樹脂分散体となる。
当該有機溶剤としては、イソシアネート基と反応活性の低い有機溶剤を含有することが好ましく、たとえば、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤が好適である。なお場合によりメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤なども使用でき、混合して使用しても良い。更に好ましくはエステル系有機溶剤を含むことが好ましく、ポリアミン(d)を用いた鎖延長反応ではエステル系有機溶剤およびアルコール系有機溶剤からなる有機溶剤が好ましい。なお顔料複合ウレタン樹脂分散体の固形分としては、20~35質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがなお好ましい。また、このとき、25℃における粘度が、50~2500mPa・sであることが好ましく、100~2000mPa・sであることがなお好ましく、300~1500mPa・sであることが更に好ましい。
【0042】
(ウレタン樹脂吸着量)
上記製造工程において上述した適切な製造条件とすれば、印刷インキ用顔料複合ウレタン樹脂において、酸化チタン顔料(c)に吸着した、ポリイソシアネート(a)およびポリオール(b)由来の構成単位を含むウレタン樹脂の質量は、酸化チタン顔料(c)100質量%に対して5~40質量%とすることができる。酸化チタン顔料(c)100質量%に吸着した上記ウレタン樹脂の質量は、10~30質量%であることがなお好ましく、15~25質量%であることが更に好ましい。「吸着した上記ウレタン樹脂の質量」はたとえば、上記顔料複合ウレタン樹脂分散体を遠心分離して沈降した酸化チタン顔料(c)を含む組成物を、TG/DTA(熱重量・示差熱同時分析)で分析して測定前後の質量差により算出することが可能である。遠心分離は、たとえば、日立社製 himac CR22GIIなどを使用して測定することができ、遠心分離の回転速度は12000~18000rpmであることが好ましい。また、TG/DTAは島津製作所社製 DTA-60Aなどを使用して測定することができ、測定条件としては温度範囲20~500℃、走査速度5~20℃/minであることが好ましい。
【0043】
本発明における顔料複合ウレタン樹脂は、上記のごとく、末端にアミノ基、水酸基およびアルキル基から選ばれる少なくとも一種を有することが好ましく、これらの基は顔料複合ウレタン樹脂の末端に有することが好ましい。以下に限定されないが、顔料複合ウレタン樹脂の末端にアミノ基を導入する場合は、たとえば、酸化チタン顔料(c)、ポリイソシアネート(a)およびポリオール(b)からなる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーをポリアミン(d)と反応させる工程において、ポリアミン(d)由来のアミノ基を上記ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基よりも多く設定して合成を行えばよい。また、顔料複合ウレタン樹脂の末端に水酸基を導入する場合は、上記ウレタンプレポリマーに対して水酸基を有するポリアミン(d)を反応させればよい。あるいは、顔料複合ウレタン樹脂の末端に水酸基を導入する場合は、ポリイソシアネート(a)およびポリオール(b)の反応比率においてポリオール(b)由来の水酸基をポリイソシアネート(a)由来のイソシアネート基よりも多く設定すればよい。また、末端にアルキル基を導入する場合は、上記ウレタンプレポリマーに対して一価のアルコールまたは一価のアルキルアミンを反応させることで可能となる。当該アルキル基としては炭素数2~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数2~8のアルキル基であることがなお好ましく、炭素数2~6のアルキル基であることがなお好ましい。例えばイソプロピル基などのように分岐状のアルキル基を有することが好ましい。
顔料複合ウレタン樹脂がアミン価を有する場合は、0.1~15mgKOH/gであることが好ましく、0.3~10mgKOH/gであることが好ましい。顔料複合ウレタン樹脂が水酸基価を有する場合は、0.1~15mgKOH/gであることが好ましく、0.3~10mgKOH/gであることが好ましい。
【0044】
また、本発明における顔料複合ウレタン樹脂の重量平均分子量は20000~90000であることが好ましく、25000~90000であることがなお好ましく、40000~80000であることが更に好ましい。印刷インキとしての印刷適性、物性に優れるためである。
【0045】
(顔料複合ウレタン樹脂を含む顔料分散剤)
顔料複合ウレタン樹脂は酸化チタンを含むので後述する印刷インキとして直接使用する態様も好ましいが、当該顔料複合ウレタン樹脂に含まれる酸化チタン顔料(c)単位の存在により、良好な顔料分散機能を発現すると考えられる。本発明の顔料複合ウレタン樹脂を顔料分散剤として使用する場合は、顔料複合ウレタン樹脂100質量%に対して、顔料を10~35質量%使用することが好ましい。なお、顔料分散剤には、他の顔料分散剤も併用することができ、顔料分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。更に具体的には、ウレタン樹脂系顔料分散剤、アクリル樹脂系顔料分散剤、ポリエステル系顔料分散剤、アクリル-ウレタン系顔料分散剤、などが好適である。顔料分散剤は、印刷インキの保存安定性の観点から印刷インキの総質量100質量%に対して0.1~5質量%でインキ中に含まれることが好ましい。0.1~3質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0046】
顔料複合ウレタン樹脂を含む顔料分散剤により顔料分散されるに適した顔料は、有機顔料、無機顔料、体質顔料等があげられるが、無機顔料を含むことが好ましく。当該無機顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、中でも酸化チタンが好ましく、上記酸化チタン顔料(c)と同一種類の酸化チタンであってもよいし異なる種類の酸化チタンであってもよい。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが好ましい。
【0047】
上記有機顔料としては、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。
【0048】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。また更には、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、黄色顔料、からなる群より選ばれる少なくとも一種または二種以上が好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I. )のC.I.ナンバーで示す。
好ましくはC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、一種または二種以上を使用することが好ましい。
【0049】
(顔料複合ウレタン樹脂を含む印刷インキ)
顔料複合ウレタン樹脂を含んでなる印刷インキ(以下、単に印刷インキまたはインキともいう)としては、以下に限定されないが、グラビアインキまたはフレキソインキとしての形態が好ましく、グラビアインキとしての使用がなお好ましい。グラビアインキその他の印刷インキには、顔料複合ウレタン樹脂のほかにもバインダー樹脂を含むことが好適である。
当該バインダー樹脂は、ウレタン樹脂(顔料複合ウレタン樹脂を含まないもの)、塩化ビニル共重合樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂など)、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。などが好適である。
【0050】
以下、印刷インキにおいて、顔料複合ウレタン樹脂と併用できるバインダー樹脂について代表的なものを詳細に説明する。
【0051】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂(顔料複合ウレタン樹脂を含まないもの)は、重量平均分子量が10,000~100,000のものが好ましく、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。-70℃~0℃であることがなお好ましく、-50~-5℃であることが更に好ましい。顔料複合ウレタン樹脂との親和性が良好となるためである。
また、ウレタン樹脂は、アミン価および/または水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。また、水酸基価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。上記範囲であると、基材への接着性が向上する。
【0052】
ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ウレタン樹脂固形分100質量%中、5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更に好ましくは10~50質量%である。
【0053】
ウレタン樹脂は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。ポリオールとポリイソシアネートからなるウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られるウレタン樹脂などが好ましい。製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0054】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル‐アクリル共重合樹脂が好ましい。
【0055】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、基材への接着強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0056】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0057】
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
【0058】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂とは、アクリルモノマーから形成された樹脂をいい、上記塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は含まれない。アクリル樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載する場合がある)は20~100℃の範囲が好ましく、30~90℃であることがより好ましく、35℃~85℃であることが更に好ましい。Tgが20℃以上であればグラビアインキからなる印刷層の耐ブロッキング性が向上し、Tgが100℃以下であることにより、印刷基材への密着性が保持できる。また、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000~200,000であることが好ましい。重量平均分子量を20,000以上とすることにより、積層体の成型性とインキ被膜の表面強度を兼ね備えることができる。重量平均分子量が200,000以下であることにより、耐薬品性が良好となる。なお、重量平均分子量が30,000~100,000であることがより好ましい。
アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーについては、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アクリルモノマーとしては、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートを含有することが好ましく、含有量としてはアクリル樹脂総量中に5~95質量%であることが好ましい。メチルメタクリレートを含むことがこの好ましい。
【0059】
アルキル(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの併記、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの併記を表す。)として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが、基材に対して良好な密着性を得やすいという点からより好ましい。なお、アクリルモノマーはその他あらゆる形態のものを含んでよく、これらの例に限定されるものではない。
【0060】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~1,000,000のものが好ましく、10,000~200,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。
【0061】
(ニトロセルロース)
ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、平均重合度35~480、更には50~200の範囲のものが好ましい。平均重合度が50以上の場合、インキ被膜の強度が向上し、耐摩擦性、耐もみ性が向上するため好ましい。又、平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、印刷インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。また、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
【0062】
<ロジン系樹脂>
本発明で使用するロジン系樹脂とは、ロジン酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等)由来の構造単位を主成分(50質量%以上)として有するものをいう。ロジン酸またはロジン系樹脂は水素化されていても良い。なお該ロジン系樹脂の酸価は150mgKOH/g以下であることが好ましく、酸価としては100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。軟化点は60~180℃であることが好ましい。軟化点としては70~150℃であることがより好ましい。ロジン系樹脂の種類としては例えばロジン変性フェノール樹脂 、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジン系樹脂などが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種のロジン系樹脂であることが好ましい。なお、軟化点とは環球法による測定値をいう。軟化点は例えばJISK2207に記載の測定法により測定することができる。
【0063】
(ロジンエステル)
ロジン系樹脂としては分子量が1000未満のポリオールとロジン酸のエステル縮合樹脂であるロジンエステルであることが好ましい。ポリオールは水酸基数が2~4(2~4官能と略記する場合がある)であることが好ましい。また、ポリオールは分子量が50~500であることがより好ましい。該低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオールなどの2官能低分子ポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3官能低分子ポリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどの4官能低分子ポリオールなどが好適である。中でも3および/または4官能低分子ポリオールが好ましい。ロジンエステルの重量平均分子量としては500~2000であることが好ましい。500~1500であることがより好ましい。
【0064】
(顔料)
印刷インキに使用できる顔料としては上記顔料分散剤の説明で述べたものと同様のものを使用することができる。顔料は、印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの総質量中、1~50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種類以上を併用して用いることができる。
【0065】
(有機溶剤)
本発明の印刷インキは、液状媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用しても良い。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくはエステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤からなる有機溶剤が好ましい。この場合インキ100質量%中、6質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含んでよい。なお、本発明の印刷インキは、液状媒体として水を含んでいても良いが、その含有量は液状媒体100質量%中0.1~5質量%が好ましい。
【0066】
<添加剤>
本発明の印刷インキは、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、インキ組成物の製造においては必要に応じて添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート架橋剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
【0067】
<グラビアインキの製造>
本発明のグラビアインキについて説明する。本発明のグラビアインキは、以下に限定されないが、たとえば、酸化チタン、顔料複合ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、を有機溶剤に溶解および/または分散することにより製造することができる。
具体的には、例えば酸化チタン、ポリウレタン樹脂、顔料複合ウレタン樹脂、および必要に応じて上記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を混合し、有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、更にポリウレタン樹脂、水、あるいは必要に応じて他の樹脂や添加剤などを配合することによりグラビアインキを製造することができる。また、顔料分散体の製造は、分散機としては一般に使用される、例えば羽根式攪拌機、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、ビーズミル(サンドミル、ガンマミルなど)を用いることができる。中でもサンドミル等のビーズミル分散機による製造が好ましい。ビーズミル分散機のビーズの種類およびサイズ、ビーズの充填率、分散処理時間、粘度などを適宜調節することにより、製造することができる。
【0068】
上記方法で製造された印刷インキの粘度は、高速印刷(50~300m/分)に対応させるため、B型粘度計での25℃における粘度が10~1000mPa・sの粘度範囲であることが好ましい。より好ましくは100~1000mPa・sである。ザーンカップ#4での粘度では25℃において10秒~60秒であることが好ましい。なお、印刷インキ組成物の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば有機顔料、バインダー樹脂、有機溶剤などの量を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の有機顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0069】
<グラビア印刷>
(グラビア版)
本発明のグラビアインキは、基材にグラビア印刷もしくはフレキソ印刷されて、印刷物となる。
上記グラビア印刷においては、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
(グラビア印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0070】
<フレキソ印刷>
(フレキソ版)
上記フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーン線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(フレキソ印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0071】
<基材>
本発明のグラビアインキに使用される基材は、たとえば、印刷される面(印刷層と接する面)の濡れ指数が30~60dyne/cmであることが好ましい。なお、濡れ指数は、濡れ指数標準液を用いてJISK6768に記載の方法で測定した値である。
本発明の印刷物に使用できる基材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂基材、ABS樹脂基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材、紙基材、アルミ基材、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。
基材は、印刷層と接する面の濡れ指数が上記範囲となるように易接着処理されていることが好ましい。易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。水素結合を利用できるためインキ中には水酸基やアミノ基といった官能基を有する化合物を含むことが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の一実施形態であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0073】
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0074】
(分子量および分子量分布)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0075】
(酸化チタンへのウレタン樹脂吸着量)
日立社製 himac CR22GIIを用いて回転数15000rpmで30分間行ったあと、上澄み液を取り除き、沈殿部分についてTG/DTA測定を島津製作所社製DTA-60Aを使用して温度範囲20~500℃、走査速度5.0℃/minにて行い、酸化チタンへのウレタン樹脂吸着量を求めた。
【0076】
[合成例1(分散体実施例1)]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオールとしての、ポリオールA1(数平均分子量1000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート、クラレ社製)6.0部、ポリオールA2(数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート、クラレ製)11.7部、ポリイソシアネート(a)としてのイソホロンジイソシアネート6.40部、酸化チタン(c)としてのチタニックスJR-708(水酸基を有するルチル型酸化チタン、吸油量20g/100g、平均粒子径0.27μm、テイカ社製)3.0部、2-エチルヘキサン酸錫0.003部および酢酸エチル9.0部を仕込み、窒素気流下に100℃で3.5時間反応させ、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液36.1部を得た。次いでポリアミン(d)としてのイソホロンジアミン2.9部、酢酸エチル31.0部およびイソプロピルアルコール30.0部を混合したものへ、得られたウレタンプレポリマーの溶液36.1部を室温で徐々に添加し鎖延長反応を行い、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、粘度1000mPa・s、アミン価4.0mgKOH/gである、顔料複合ウレタン樹脂の分散体(分散体A1)を得た。
【0077】
[合成例2~6、9(分散体実施例2~6、9)、比較合成例1~2]
表1の仕込み比にて、合成例1と同様の操作で、顔料複合ウレタン樹脂の分散体(分散体A2~A6、A9、分散体B1~B2)を得た。
なお、表1において、ウレタンプレポリマー合成反応時間とは、ポリオール(b)、ポリイソシアネート(a)および酸化チタン(c)の合成反応において反応が完了するまでに要した時間を表す。反応が完了するまでに要した時間とは、反応仕込み比率において固形分中の理論上のイソシアネート%に達するまでの時間をいい、当該イソシアネート%はJISK6806に準じて測定した値をいう。
【0078】
(比較例1の分散体B1(すなわち酸化チタンを含まないウレタン樹脂溶液)で酸化チタンを分散した場合の酸化チタンへのウレタン樹脂吸着量)
分散体B1の100部と酸化チタン(チタニックスJR-708)6部を混合してビーズミルであるサンドミル分散機にて10分間分散を行った。上記のように酸化チタンへのウレタン樹脂吸着量を求めると当該吸着量は4.5%であった。合成例3と比較すれば力学的に分散した場合と、顔料複合ウレタン樹脂の分散体において吸着量に差が見られた。
【0079】
[合成例7(分散体実施例7)]
合成例1と同様の操作で、ポリオールA1を7.0部、ポリオールA2を13.6部、イソホロンジイソシアネート6.4部、チタニックスJR-708を3.0部、2-エチルヘキサン酸錫0.003部および酢酸エチル9.0部を仕込み、窒素気流下に100℃で3.5時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液39.0部を得た。次いで酢酸エチル28.0部およびイソプロピルアルコール33.0部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液39.0部を室温で徐々に添加し、その後イソプロピルアルコールと反応させて末端停止を行い、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、粘度350mPa・s、アミン価0.0mgKOH/g、末端にイソプロピル基を有する顔料複合ウレタン樹脂の分散体(分散体A7)を得た。
【0080】
[合成例8(分散体実施例8)]
表1の仕込み比にて、合成例7と同様の操作でアミノエタノールで末端停止を行った顔料複合ウレタン樹脂の分散体(分散体A8)を得た。
【0081】
(実施例1)(インキA1の作製)
酸化チタン(チタニックスJR-708、テイカ製)33.8部、分散体A1 38.9部、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比70/30)10部を、ビーズミルであるサンドミルで分散した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比70/30)17.3部を攪拌混合し、白色のインキ(インキA1)を得た。
【0082】
(実施例2~13)(インキA2~A13の作製)
表2仕込み比にて使用した原料及び配合比率を用いた以外は実施例1と同様の操作で、インキA2~SA13、B1~B2を得た。なお、用いた原料の略称は以下の通りである。
NV:固形分
Disperbyk180:ビックケミー社製 顔料分散剤 酸性基を有する共重合体のアルキルアンモニウム塩
塩酢ビ溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(ソルバインA:日信化学社製)の固形分25部(酢酸エチル溶液)
硝化綿溶液:硝化綿(工業用硝化綿TR5-6:ジャパンテック社製)の固形分25部(酢酸エチル溶液)
アクリル樹脂溶液:アクリル樹脂(BR-105:三菱ケミカル社製、重量平均分子量60,000、ガラス転移点50℃)固形分25%の酢酸エチル溶液
【0083】
(比較例1~2)(インキB1~B2の作成)
表2仕込み比にて使用した原料及び配合比率を用いた以外は実施例1と同様の操作で、インキB1~B2を得た。なお、用いた原料の略称は以下の通りである。
【0084】
(特性評価)
本発明の実施例および比較例で得られた印刷インキを用いて以下の特性評価を行った。評価方法及び評価基準を以下に示す。また、評価結果を表2に示した。
なお、以下の評価について、「C-D」は評価Cと評価Dの中間の特性を示すこと意味し、「B-C」は評価Bと評価Cの中間の特性を示すこと意味する。
【0085】
1.インキ経時安定性
実施例および比較例で得られた印刷インキ、各200gを225mlのマヨネーズ瓶に蓋をして封入し40℃、7日間後及び60℃7日間後の酸化チタンの沈降具合を確認した。
A:酸化チタンの沈降の発生はなかった。
B:ごくわずかに酸化チタンの沈降が発生したが瓶を振ることで沈降が解消される。
C:酸化チタンの沈降が発生したが、瓶を振ることで沈降が解消される。
D:酸化チタンの沈降が発生し、瓶を振ってもわずかに酸化チタンの沈降が残る。
E:ほぼすべての酸化チタンが沈降し硬い沈降物として凝集している。
なお、Eは効果を示さない評価を表し、A~Dは効果が認められた評価を表し、(劣)E~A(優)の評価である。
【0086】
2.再溶解性
上記実施例および比較例で得られた印刷インキを、グラビア印刷機を使用してポリプロピレンフィルムに印刷した後、グラビア版表面に付着した印刷インキを乾燥させ、グラビア版表面に付着した印刷インキに対して酢酸エチル/イソプロピルアルコール(質量比70/30)の混合溶剤をかけ流し、グラビア版表面に付着したインキ皮膜の溶け具合を目視判定した。
A:グラビア版表面に付着したインキ皮膜が全て溶解した。
B:グラビア版表面に付着したインキ皮膜がわずかな溶け残りが認められた。
C:グラビア版表面に付着したインキ皮膜の10%以上30%未満の溶け残りが認められた。
D:グラビア版表面に付着したインキ皮膜30%以上70%未満の溶け残りが認められた。
E:グラビア版表面に付着したインキ皮膜ほとんど溶解しなかった。
再溶解性に優れればグラビア印刷適性において版つまり性などにおいて有利な効果が得られる。なお、本評価において実用レベルはC以上である。
【0087】
比較合成例1に記載の分散体B1と合成例に記載の複合ウレタン樹脂分散体製造において、ウレタンプレポリマー合成反応時間とを比較すれば、反応時間の短縮が確認できた。これは、酸化チタンの有する水酸基とポリイソシアネートの反応が寄与し、また酸化チタンの触媒的効果も考えられるので合成反応時間が短縮されたものと考えられる。また比較例の印刷インキに対して実施例の印刷インキは経時安定性に優れ、更にグラビア印刷適性の指標である再溶解性においても優位性が確認された。したがって、複合ウレタン樹脂を用いることで当該分散体およびこれを使用した印刷インキ(グラビアインキ)の品質維持期間がより長く保持できるとともに、印刷適性においても従来よりも向上することが期待される。
【0088】
【0089】