(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】冷凍包餡食品用の電子レンジ加熱用容器およびそれを用いた加熱方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240618BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A47J27/00 107
A47J37/06 346
(21)【出願番号】P 2020174236
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安希
(72)【発明者】
【氏名】今泉 圭介
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091793(JP,A)
【文献】特許第4374883(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/189548(WO,A1)
【文献】特開2014-094870(JP,A)
【文献】特開2013-022321(JP,A)
【文献】特開2018-068241(JP,A)
【文献】特開2008-125385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍包餡食品のための電子レンジ加熱用容器であって、
当該電子レンジ加熱用容器は、前記冷凍包餡食品を出し入れするための開口部を持った容器本体と、該開口部を開閉する蓋とを有し、
前記容器本体は、所定数の前記冷凍包餡食品をその焼き面を下方に向けた状態で配置し得る内部底面を有し、かつ、少なくとも前記内部底面の表層として、または、少なくとも前記内部底面の表層下に、電子レンジのマイクロ波を受けて発熱する粒子状の発熱体が第1のポリマー材料中に分散してなる複合材料製の発熱層を有し、
前記複合材料における第1のポリマー材料と発熱体との重量比率は、第1のポリマー材料100重量部に対して、発熱体250~300重量部であり、
当該電子レンジ加熱用容器内に前記所定数の冷凍包餡食品を配置しかつ蓋を閉じた状態で電子レンジ加熱を完了した時点での当該電子レンジ加熱用容器外への水蒸気の流出量が、収容された前記冷凍包餡食品1g当たり0.05g以下となるよう、前記容器本体および/または前記蓋が、前記水蒸気の流出量を抑制するための構成を有している、
前記電子レンジ加熱用容器。
【請求項2】
上記水蒸気の流出量を抑制するための構成が、上記容器本体および上記蓋のうちの一方または両方に設けられた通気孔である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項3】
第1のポリマー材料がシリコーン樹脂である、請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項4】
発熱体が強磁性体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項5】
容器本体の内側の表層が、発熱体を含有しない、第1のポリマー材料製またはそれ以外の表層用のポリマー材料製の層となっており、該表層の下層として発熱層が位置している、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項6】
当該電子レンジ加熱用容器内に前記所定数の冷凍包餡食品を配置しかつ蓋を閉じた状態での、当該電子レンジ加熱用容器の内部空間に対する前記所定数の冷凍包餡食品の総体積の比率が、5~50%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項7】
容器本体の外部底面には、該外部底面と電子レンジの加熱室の底面との接触面積を減少させながら該容器本体を該加熱室の底面上に支持するように、突起部が付与されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項8】
容器本体の外部側面には、1対の取っ手部が設けられており、該取っ手部は、第1のポリマー材料製またはそれ以外の取っ手部用のポリマー材料製であって、かつ、発熱体を含有しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項9】
上記冷凍包餡食品の皮が、アセチル化リン酸架橋澱粉またはヒドロキシプロピル化澱粉を含有している、請求項1~8のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電子レンジ加熱用容器を用いた、冷凍包餡食品の加熱方法であって、
前記電子レンジ加熱用容器の容器本体の内部底面上に、所定数の前記冷凍包餡食品がその焼き面を下方に向けた状態で配置され、かつ、該電子レンジ加熱用容器の蓋によって容器本体の開口部が閉じられた状態となった該電子レンジ加熱用容器を、電子レンジによって加熱する工程を有する、
前記冷凍包餡食品の加熱方法。
【請求項11】
電子レンジ加熱用容器の容器本体の内部底面上に配置される上記冷凍包餡食品が、冷凍された焼き餃子であって、かつ、
電子レンジによる加熱時の定格高周波出力が1400~1800Wであり、該電子レンジによる加熱時間が30~90秒である、
請求項10に記載の冷凍包餡食品の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍焼き餃子などの冷凍包餡食品を電子レンジによって加熱するための加熱用容器、および、該加熱用容器を用いた前記冷凍包餡食品の加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き餃子は、小麦粉を主原料とするシート状の皮によって中具(刻んだ野菜や肉等を混ぜた具材)を包んだものを、蒸しながら下面に焦げ目が付くように加熱した食べ物である。
図6(a)に例示するように、焼き餃子100の典型的な形状は、長手方向を持ちかつ湾曲した立体的な形状であるが、湾曲していないものや、太いもの、大きいものなど、種々のバリエーションが存在する。
【0003】
典型的な形状の焼き餃子は、焼き面(加熱されて焦げ目が付いた面)を下方に向けた姿勢では、
図6(a)に示すように2つの側面部と、上側に位置する耳部(折り畳まれた皮が互いに1枚のシートとなるように重なり合って接合され、長手方向の一方の端部から他方の端部まで伸びる部分)と、下面として位置する焼き面とを有する。
図6(b)は、焼き餃子を皿の上に盛り付ける際の、該焼き餃子の典型的な状態を例示する写真図である。同図に示すように、焼き餃子は、食べる者に焼き面を見せるように、該焼き面を上にして皿の上に配置される。
【0004】
焼き餃子は、中具の旨味のみならず、皮の焼き面の部分の香ばしくクリスピーな食感と、皮の側面部や耳部の歯切れよく適度に弾性を持った食感(パスタや麺類に求められるような触感)、皮本来の風味、中具のヘテロな食感およびジューシーな食感が、品質の良否を決める要素として重要視されてきた。そのために、焼き餃子を作って食べる際には、加熱前の餃子(生餃子ともいう)をフライパン上に並べ水を加え蓋をして蒸しながら焼き調理を行った後、なるべく早いうちに食することが良しとされてきた。これは、焼き面が吸湿せず、中具のドリップが皮に移行せず、かつ皮が乾燥して硬くならないうちに食するためである。よって、焼き餃子の調理法も、できるだけ食べる直前に、中具を皮で包んで生餃子を作り、該生餃子に水を加えて焼くのがより理想的である。しかしながら、そのような理想的な調理法は手間がかかる。
【0005】
近年、上記のような焼き餃子の調理の手間を省くべく、食べることができる状態へと調理された
図6(b)のような焼き餃子をさらに冷凍した商品(冷凍焼き餃子)が開発されている(例えば、特許文献1)。該冷凍焼き餃子は、電子レンジで加熱するだけで簡単に焼き餃子を食べることができるという点が長所となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4374883号公報
【文献】国際公開第2016/0174736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが電子レンジで加熱された冷凍焼き餃子を詳細に検討したところ、次の問題点が存在していることがわかった。
【0008】
冷凍焼き餃子では、製造から加熱までに中具の水分が皮の焼き面の部分へと内側から移行することは避けられず、これに加えて、電子レンジでのラップを伴う加熱では、皮や中具から放出された水蒸気が外側から焼き面を蒸してしまう。よって、冷凍焼き餃子を電子レンジで温めなおしたものは、焼き面の香ばしさやクリスピー感の点で、もとの焼いた直後のものに比べて大きく劣っている。
【0009】
一方、電子レンジのマイクロ波の照射によって比較的高い温度へと発熱する食品調理用容器が知られている。例えば、上記特許文献2に記載された電子レンジ加熱用容器は、マイクロ波吸収発熱体の粒子をシリコーン樹脂中に分散させてなる複合材料によって構成されたものであり、パンや菓子を焼くことも可能である。しかし、本発明者らがそのような食品調理用容器を用いて、冷凍焼き餃子をそれらの焼き面が香ばしくなるように加熱したところ、皮の耳部が乾燥しさらには焼けて硬くなり、皮に求められる食感が損なわれることがわかった。これは、餃子の皮の耳部が中具から離れた乾燥し易い突き出した部位であるのに加えて、エッジ効果によって電子レンジのマイクロ波が耳部に集中する傾向にあり、耳部の温度が局所的に上昇することも一因であると考えられる。
【0010】
即ち、焼き餃子は、外面全面に焦げ面を持ったパンや焼き菓子とは異なり、焼き面(香ばしさとクリスピー感が要求される面)と、耳部(パスタのような弾性的な食感が要求され、乾燥させてはならない部分)とが、同時に外部に露出した特殊な食品である。よって、従来公知の電子レンジ用の加熱容器を用いて冷凍焼き餃子を加熱するだけでは、焼き面と耳部に対するそれぞれの要求を同時に満たすことは容易でないことが分かった。
【0011】
上記のような問題は、冷凍焼き餃子のみならず、冷凍焼き小籠包や冷凍焼きまんじゅう(冷凍にら饅頭など)など、包餡食品を焼成しさらに冷凍した食品(即ち、香ばしさではなく柔らかな食感が求められる皮部(とりわけ耳部)と、香ばしさが求められる焼き面(焼かれて焦げた面)とを両方持った冷凍包餡食品)においても、同様に生じる問題である。
【0012】
本発明の目的は、上記の問題を解消し、電子レンジでの加熱によって、冷凍包餡食品の焼き面に好ましいクリスピー感および香ばしさを再付与しながらも、皮部(とりわけ耳部)の乾燥や焼けを抑制し得る、冷凍包餡食品のための電子レンジ加熱用容器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、本発明による電子レンジ用の加熱容器を用いて冷凍包餡食品を加熱する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討し、電子レンジ加熱用容器に含まれる発熱層を構成するポリマー材料の重量とその中に分散する発熱体の重量との比率を特定し、さらに、電子レンジによる加熱時に冷凍包餡食品から容器外へと流出する水蒸気の量を適切に制限することによって、焼き面にクリスピー感および香ばしさを復活させながらも、皮部(とりわけ耳部)の乾燥や焼けを抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の主たる構成は、次のとおりである。
〔1〕冷凍包餡食品のための電子レンジ加熱用容器であって、
当該電子レンジ加熱用容器は、前記冷凍包餡食品を出し入れするための開口部を持った容器本体と、該開口部を開閉する蓋とを有し、
前記容器本体は、所定数の前記冷凍包餡食品をその焼き面を下方に向けた状態で配置し得る内部底面を有し、かつ、少なくとも前記内部底面の表層として、または、少なくとも前記内部底面の表層下に、電子レンジのマイクロ波を受けて発熱する粒子状の発熱体が第1のポリマー材料中に分散してなる複合材料製の発熱層を有し、
前記複合材料における第1のポリマー材料と発熱体との重量比率は、第1のポリマー材料100重量部に対して、発熱体250~300重量部であり、
当該電子レンジ加熱用容器内に前記所定数の冷凍包餡食品を配置しかつ蓋を閉じた状態で電子レンジ加熱を完了した時点での当該電子レンジ加熱用容器外への水蒸気の流出量が、収容された前記冷凍包餡食品1g当たり0.05g以下となるよう、前記容器本体および/または前記蓋が、前記水蒸気の流出量を抑制するための構成を有している、
前記電子レンジ加熱用容器。
〔2〕上記水蒸気の流出量を抑制するための構成が、上記容器本体および上記蓋のうちの一方または両方に設けられた通気孔である、上記〔1〕に記載の電子レンジ加熱用容器。
〔3〕第1のポリマー材料がシリコーン樹脂である、上記〔1〕または〔2〕に記載の電子レンジ加熱用容器。
〔4〕発熱体が強磁性体である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔5〕容器本体の内側の表層が、発熱体を含有しない、第1のポリマー材料製またはそれ以外の表層用のポリマー材料製の層となっており、該表層の下層として発熱層が位置している、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔6〕当該電子レンジ加熱用容器内に前記所定数の冷凍包餡食品を配置しかつ蓋を閉じた状態での、当該電子レンジ加熱用容器の内部空間に対する前記所定数の冷凍包餡食品の総体積の比率が、5~50%である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔7〕容器本体の外部底面には、該外部底面と電子レンジの加熱室の底面との接触面積を減少させながら該容器本体を該加熱室の底面上に支持するように、突起部が付与されている、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔8〕容器本体の外部側面には、1対の取っ手部が設けられており、該取っ手部は、第1のポリマー材料製またはそれ以外の取っ手部用のポリマー材料製であって、かつ、発熱体を含有しない、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔9〕上記冷凍包餡食品の皮が、アセチル化リン酸架橋澱粉またはヒドロキシプロピル化澱粉を含有している、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
〔10〕上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器を用いた、冷凍包餡食品の加熱方法であって、
前記電子レンジ加熱用容器の容器本体の内部底面上に、所定数の前記冷凍包餡食品がその焼き面を下方に向けた状態で配置され、かつ、該電子レンジ加熱用容器の蓋によって容器本体の開口部が閉じられた状態となった該電子レンジ加熱用容器を、電子レンジによって加熱する工程を有する、
前記冷凍包餡食品の加熱方法。
〔11〕電子レンジ加熱用容器の容器本体の内部底面上に配置される上記冷凍包餡食品が、冷凍された焼き餃子であって、かつ、
電子レンジによる加熱時の定格高周波出力が1400~1800Wであり、該電子レンジによる加熱時間が30~90秒である、
上記〔10〕に記載の冷凍包餡食品の加熱方法。
【発明の効果】
【0015】
発熱層を構成するポリマー材料と発熱体の各重量の比率を特定することによって、該発熱層は、マイクロ波を受けて、冷凍包餡食品(とりわけ、冷凍焼き餃子)の焼き面を復活させるのに好ましい高温となる。これにより、焼き面に好ましいクリスピー感と香ばしさが再付与される。これに加えて、電子レンジ加熱を完了した時点での当該電子レンジ加熱用容器(当該加熱用容器ともいう)外への水蒸気の流出量が、収容された前記冷凍包餡食品1g当たり0.05g以下となるように、当該加熱用容器を構成することによって、加熱時に冷凍包餡食品(特に皮)から放出される水分が容器外に過度に流出することが抑制され、容器内に残留した適量の水蒸気によって皮部(とりわけ耳部)が適切に蒸され、乾燥や焼けが抑制され、上記した皮部(とりわけ耳部)の触感の劣化が抑制される。よって、当該加熱用容器および加熱方法を用いて冷凍包餡食品(とりわけ、冷凍焼き餃子)を電子レンジ加熱すれば、該冷凍包餡食品の包装容器の密封用フィルムの端を剥がしただけのような状態や、ラップで覆った状態で電子レンジ加熱した場合と比べて、焼き面のクリスピー感や香ばしさが好ましく再付与されながらも、皮部(とりわけ耳部)の乾燥や焼けが抑制された好ましい包餡食品(とりわけ、焼き餃子)が得られる。
【0016】
また、本発明は、冷凍包餡食品を電子レンジで焼くことを可能にするから、フライパン調理に比べて、調理の簡便性に優れ、また、火を使わないより安全な調理を可能にする。
また、加熱の対象が既に焼かれた包餡食品であるから、該包餡食品を複数同時に再度焼いても、包餡食品毎の焼き面に焼きムラが発生しない。このような焼き面における効果は、焼き面を上に向けて皿に盛り付けられる焼成された包餡食品(とりわけ、
図6(b)に示すように、盛り付けた状態で焼き面が見える割合が非常に大きい焼き餃子)において顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の電子レンジ加熱用容器の構成の好ましい一例を示す図である。同図では、説明のために、当該電子レンジ加熱用容器に冷凍焼き餃子が所定数(図では例として5個)配置された例を示している。
図1(b)は、容器本体の内部底面に冷凍焼き餃子を5つ配置した状態を上方から見た図(平面図)である。
図1(b)では、容器本体の内部を見せるために、蓋の図示を省略している。
図1(a)は、
図1(b)のX1-X1切断端面矢視図である(説明のために突起部50を描いている)。
図1(a)では、焼き餃子の断面の描写は省略しハッチングで表している。また、容器本体や蓋の断面を示すハッチングは省略している。
【
図2】
図2は、本発明の電子レンジ加熱用容器の好ましい態様例における各部の寸法を示す図である。
図1と同様に、
図2(a)は、
図2(b)のX1-X1切断端面矢視図であり、断面(切断端面)を示すハッチングは全て省略している。
図2(b)は、
図2(a)を上方から見た図(平面図)である、
図2(b)では、容器本体の内部を見せるために、蓋の左半分を切り欠いている。
【
図3】
図3は、容器本体の底部の積層構造を例示する断面図である。
【
図4】
図4は、容器本体を下から見た図であって、容器本体の外部底面の突起部の配置パターンを例示した図である。同図では、突起部にハッチングを施すことで、該突起部の配置パターンを分かりやすく示している。
【
図5】
図5は、容器本体に設けられる取っ手の好ましい態様を例示する図である。
図5(a)は、
図2(a)に示す端面図を断面図として示した図である。
図5(a)では、容器本体の底の突起部が、
図4(c)に示した配置パターンの断面となっている。
図5(b)は、
図5(a)の側面図(右側から見た図)であり、取っ手の外観が表れている。
【
図6】
図6は、従来の典型的な形状の焼き餃子の形態を説明する図である。
図6(a)は、焼き面を下方に向けたときの焼き餃子の各部の名称を示しており、
図6(b)は焼き餃子を皿に盛り付けたときの最も一般的な状態を例示する写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明による電子レンジ加熱用容器)
先ず、本発明による電子レンジ加熱用容器(以下、当該加熱用容器とも呼び、単に容器ともいう)を詳細に説明する。当該加熱用容器は、冷凍包餡食品(焼いて焦げ目を付けた包餡食品を冷凍したもの)を電子レンジで加熱するための容器である。以下、加熱対象の例として、冷凍焼き餃子(焼いて焦げ目を付けた餃子を冷凍したもの)を挙げて本発明を説明するが、加熱対象が他の冷凍包餡食品であっても、当該加熱用容器自体の主たる構成は基本的には同様である。
【0019】
図1は、当該加熱用容器の構成の一例を示す図であって、説明のために、当該加熱用容器の内部に冷凍焼き餃子を加熱時の状態で配置した様子を示している。当該加熱用容器1は、容器本体10と、蓋20とを有する。容器本体10は、前記冷凍焼き餃子100(加熱後は焼き餃子)を出し入れするための開口部10cを持ったトレイ状の器であり、蓋20は、容器本体10の開口部(エッジ部10cによって取り囲まれた出入口)を開閉するように構成されている。容器本体10は、内部底面10aを有し、該内部底面10aは、所定数(
図1の例では5個)の冷凍焼き餃子100をその焼き面を下方に向けた状態で配置し得るように所定の面積を持った平坦な面である。また、容器本体10は、発熱層11を有する。該発熱層11は、電子レンジのマイクロ波を受けて発熱する粒子状の発熱体m1が第1のポリマー材料m2中に分散してなる複合材料によって構成されている。
【0020】
発熱層11は、冷凍焼き餃子100の焼き面を再度焼くために、少なくとも容器本体の内部底面の表層として、または、少なくとも該内部底面の表層下の層として、底部全体に拡がって位置している。
図1の例では、発熱層11は、焼き面を選択的に加熱するための好ましい態様として容器本体の底部のみに拡がって位置しているが、容器本体の側壁部へと拡がっていてもよい。発熱層11を構成する複合材料における第1のポリマー材料m2と発熱体m1との重量比率は、第1のポリマー材料100重量部に対して、発熱体250~300重量部であるように選択されており、これにより、冷凍焼き餃子100の焼き面に適切な香ばしさを復活させることが可能になっている。
【0021】
また、当該加熱用容器1は、内部に前記所定数の冷凍焼き餃子100を配置しかつ蓋20を閉じた状態で電子レンジ加熱を完了した時点での当該加熱用容器外への水蒸気の流出量が、収容された焼き餃子1g当たり0.05g以下となるように、該水蒸気の流出量が抑制される構成となっている。水蒸気の流出量をこのような範囲に制限するための種々の構成例については後述する。
図1の例では、蓋20に通気孔30が設けられており、水蒸気の流出量が収容された焼き餃子1g当たり0.05g以下となるように、該通気孔30の断面積が選択されている。
【0022】
以上の構成によって、上記した効果が得られ、本発明の目的が好ましく達成される。以下、各部を詳細に説明する。
【0023】
(容器本体の形状)
容器本体の開口部や内部底面の基本形状は、特に限定されず、冷凍包餡食品の種類に応じて円形や楕円形などであってもよいが、正方形や長方形が好ましい形状である(外側の角部の丸みや、内側の隅部の丸みは適宜に設けられる)。その理由としては、i)
図1(a)、(b)に示すように、加熱時に容器本体10の内部(底面10a上)に冷凍焼き餃子100を互いに平行かつ密に配置したときに、デッドスペースが生じ難いことや、ii)一般的に、冷凍焼き餃子は正方形や長方形のトレイ内に整列して梱包されており、個々の餃子同士の焼面が互いに連結していることもあるため、正方形や長方形の方が、加熱時に冷凍焼き餃子を容器本体にそのまま並べやすく、加熱後も容器本体をひっくり返して皿に盛り付けしやすいことなどが挙げられる。また、一般に、焼き餃子を盛り付けるための皿は、楕円形や長方形の形状が多くみられることからも、容器本体の開口部や内部底面の基本形状は、
図1(b)に例示したような長方形が好ましい基本形状である。以下、容器本体の開口部や内部底面の基本形状が
図1(b)のような長方形である場合を例として、各部の寸法や構造を説明するが、それを参照して、容器本体の開口部や内部底面の形状が他の形状の場合の寸法や構造を適宜に決定してよい。
【0024】
(加熱するために配置すべき冷凍焼き餃子の大きさ)
一般的な餃子の形状や大きさは、多種多様であるが、現在市販されている一般的な冷凍焼き餃子の形状は、
図6に例示したとおりである。一般的な市販の冷凍焼き餃子(例えば、味の素冷凍食品株式会社製「レンジでジューシー焼餃子」)の長手方向の寸法(
図1(b)における1つの冷凍焼き餃子の、紙面上下方向の直線的な寸法)は75~95mm程度であり、幅方向の寸法(
図1(b)における1つの冷凍焼き餃子の、紙面左右方向の寸法)は20~40mm程度であり、高さ(
図1(a)における1つの冷凍焼き餃子の上下方向の寸法h1)は25~45mm程度であり、1つの冷凍焼き餃子の冷凍状態での平均的な重量は15~25g程度であり、1つの冷凍焼き餃子の冷凍状態での平均的な体積は16~26mL程度である(mLはミリリットルを表す)。以下、このような平均的な冷凍焼き餃子を加熱の対象とする場合について説明するが、冷凍焼き餃子の寸法、体積、重量が異なれば、それに応じて、当該加熱用容器の寸法や体積などの仕様も適宜に変更してよい。
【0025】
(加熱するために配置される冷凍焼き餃子の数)
加熱するために容器本体内に配置される冷凍焼き餃子の数は、特に限定はされないが、一般的な電子レンジの加熱室内に当該加熱用容器が収容され得るようにすべき点や、餃子をサイドメニューやメインメニューで喫食する場合は2~6個であり、当該加熱用容器を2個用いて2人前以上を一度に調理する場合もあるため、2~12個程度が好ましく実施され得る加熱形態として例示される。
【0026】
図2は、当該加熱用容器の各部の寸法を説明するための図である。容器本体10の各部の寸法は、特に限定はされないが、次に例示するような寸法であれば、上記した平均的な冷凍焼き餃子を一度に2~6個程度、好ましく加熱することができる。
図2(b)に示した容器本体10の内部の長方形の底面における、長辺の寸法L1は70~300mm、好ましくは100~200mm、短辺の寸法L2は60~250mm、好ましくは70~150mmである。
図2(a)において、容器本体10の内部の底面10aから、上面10eまでの深さD1は5~70mm、好ましくは15~30mmである。
図2(a)において、容器本体10の開口部を蓋20で閉じた場合に形成される容器内部の空間の全高さD3は10~120mm、好ましくは30~60mm、より好ましくは30~50mmである。
図2(a)において、蓋20の内部の深さD2は5~50mm、好ましくは15~30mmである。なお、
図2(a)の例では、蓋20の下端部分は、容器本体の内部に少し入り込むことができるように下方に延びている。この延びた部分は、蓋20の深さD2には含めていない。この延びた部分は、蓋の位置決めなどを意図したものであり、
図1(a)などの例とは逆に、容器本体の開口部が蓋の内部に少し入り込むことができるように上方に延びた態様であってもよい。
【0027】
容器本体の深さD1は、必ずしも内部に配置される冷凍焼き餃子の高さh1以上の寸法である必要はない。
図2(a)の例のように、容器本体10を蓋20で閉じた場合に、容器本体と蓋とで形成される内部空間の全高さ寸法D3が、該冷凍焼き餃子の高さh1以上であることが好ましく、配置される冷凍焼き餃子を押しつぶさない点から、D3>h1がより好ましい。
【0028】
図1(a)の例のように、容器本体10を蓋20で閉じた場合に、容器本体と蓋とで形成される内部空間の容積V1に占める、内部に配置される冷凍焼き餃子の総体積Vsの割合〔(Vs/V1)×100〕は、餃子の周縁部の乾燥やコゲを防ぐ点から、5~50%が好ましく、5~20%がより好ましい。該割合が5%を下回ると、餃子の周縁部に乾燥やコゲが発生することとなって好ましくなく、50%を上回ると餃子の形状が特殊な形状(一般的に餃子と認知し難い背の高さや盤面の大きさ)となって好ましくない。換言すると、前記内部空間が広すぎると餃子の周縁部に十分な水分が供給されず、耳部が乾燥し、さらには焦げが発生する恐れが高まる。逆に、内部空間が狭すぎると、水分供給過多になり、焼き面の食感が好ましくなくなる。
【0029】
容器本体の壁部の厚さは一様であってもよいし、底部の厚さ(
図2(a)に符号t10bで示した厚さ)と側壁部の厚さ(
図2(b)に符号t10sで示した部分)とが互いに異なっていてもよい。これらの壁部の厚さ(t10b、t10s)は、特に限定はされないが、容器の軽量化と強度、加熱後の容器に触れてしまったときの火傷対策などの点から、1~30mm程度が好ましく、5~15mmがより好ましい。容器底部の発熱層は加熱調理後に高温になるため、誤って接触しても火傷しないように、発熱層の下側(外部側)に位置する発熱しない壁部をより厚くして、高温になり難くした設計が好ましい。
【0030】
(発熱層)
上記したように発熱層は、電子レンジのマイクロ波を受けて発熱する粒子状の発熱体m1が第1のポリマー材料m2中に分散してなる複合材料によって構成されている。該複合材料や、発熱層を容器本体内(とりわけ、内部底面の表層または表層下)に設ける成型技術などは、上記特許文献1、2など、従来公知の技術を参照することができる。
【0031】
(発熱体の材料)
発熱体としては、電子レンジのマイクロ波を受けて発熱する材料が利用可能であり、効率よく発熱する点から、強磁性体が好ましい材料として挙げられる。強磁性体とは、フェロ磁性体やフェリ磁性体を指し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質を指す。例えば、マグネタイト、γFe2O3、NiZnフェライトのNi1-xZnxFe2O4、MnZnフェライトのMn1-xZnxFe2O4、バリウムフェライトのBaFe12O19、ストロンチウムフェライトのSrFe12O19やパーマロイ、センダスト、サマリウムコバルト、Nd2Fe14B1などのスピネル系結晶構造を有するフェライトや、I3Fe5O12、Gd3Fe5O12などのガーネット系結晶構造を有するフェライトが挙げられる。本発明では、発熱温度の観点から、NiZnフェライトが好ましい強磁性体として挙げられる。
【0032】
(発熱体の粒子径)
発熱体の粒子径は、特に限定はされず、従来公知の電子レンジ加熱用容器に用いられる発熱体の粒子径を参照することができ、例えば、フェレー径50~250(μm)程度が例示される。
フェレー径は、顕微鏡(透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡を含む)によって得られる個々の粒子像を挟む一定方向の二本の平行線間の距離(定方向径とも呼ばれる)である。
発熱体の粒子の製造方法は、粒状体や粉体を製造するための公知の技術を参照することができる。発熱体の粒子には、既存の粒状製品や粉体製品を使用することができる。
【0033】
(第1のポリマー材料)
発熱層を構成する母材である第1のポリマー材料としては、容器として利用可能な機械的強度を有し、かつ、マイクロ波照射時に上昇する温度(100~350℃程度)で溶融しない耐熱性を有する材料が利用可能であり、ポリオレフィン類、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール、フッ素系樹脂などの合成樹脂、セルロースなどの天然高分子系、或いは、天然パルプ繊維及び/又は熱可塑性繊維から製造した紙類、セラミックス等の無機材料、シリコーン樹脂、ガラス繊維を含んだポリマー材料などの、種々の成形材料を単独または複合して用いたものなどが好ましい材料として例示される。これらの材料のなかでも容器の成型性と加熱後の食品の剥離性、繰り返し使用した時の耐久性などの点からは、シリコーン樹脂が好ましい材料として例示される。発熱体としてNiZnフェライトの粒子を用い、第1のポリマー材料としてシリコーン樹脂を用いる組み合わせは、冷凍餃子の調理に最適な例であり、好ましい発熱層となる。
【0034】
(複合材料の混合比)
発熱層を構成する複合材料の重量比(混合比)は、発熱体として用いられる強磁性体の種類によっても異なるが、概ね第1のポリマー材料100重量部に対して、強磁性体の粒子250重量部~300重量部程度が好ましい重量比として例示される。特に、第1のポリマー材料がシリコーン樹脂であり、強磁性体の粒子がNiZnフェライトである場合には、シリコーン樹脂100重量部に対して、NiZnフェライト250~300重量部が好ましい混合比として例示される。例えば、シリコーン樹脂100重量部に対して、NiZnフェライト粒子が250重量部未満では発熱量が足らず、焼き面に香ばしさやクリスピー感を十分に復活させることができなくなり、シリコーン樹脂100重量部に対して、NiZnフェライト粒子が300重量部を超えると容器の強度が低下するなどの問題が生じるので好ましくない。
【0035】
(発熱層の厚さ)
発熱層の厚さは、特に限定はされず、発熱体の含有量や容器本体の設計などによっても異なるが、0.01~10mmが好ましく、0.5~5mmがより好ましい。
【0036】
(容器本体の内側の表層)
容器本体内の内面(
図1(a)における、内部底面10aと側壁部の内面10s1)は、冷凍焼き餃子が接触する面であるから、該内面には発熱層の発熱体が露出しない方が好ましい。よって、容器本体の内側の表層は、
図1(a)に示すように、発熱体を含有しないポリマー材料製の表層であって、該表層の下層として発熱層が位置している態様が好ましい。そのような表層の材料としては、発熱層の複合材料に用いられる第1のポリマー材料と同じ材料や、発熱層の複合材料とは異なる表層用のポリマー材料が挙げられ、例えば、耐熱温度の点から、シリコーン樹脂や、ポリエステルなどの単独または複合素材が好ましいものとして挙げられる。
【0037】
(容器本体の外側の表層)
容器本体の外側の面(
図1(a)における、外部底面10bと側壁部の外面10s2)も、加熱後に容器を電子レンジから取り出して、皿に盛りつけるまでに触れる可能性があり、火傷対策が必要という理由から、該外側の面には発熱層の発熱体が露出しない方が好ましい。よって、容器本体の外側の表層もまた、
図1(a)に示すように、発熱体を含有しないポリマー材料製の表層であることが好ましい。そのような表層の材料としては、内側の表層と同様、第1のポリマー材料と同じ材料や、それとは異なる外側の表層用のポリマー材料が挙げられ、例えば、耐熱温度の点から、シリコーン樹脂や、ポリエステルなどの単独または複合素材が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
図3は、容器本体の底部の積層構造の一例を示した断面図である。
図3(a)の例では、発熱層11を挟んで内側の表層12と外側の表層13が設けられて3層構造となっている。発熱層11の厚さt11は上記したとおりである。内側の表層12の厚さt12は、特に限定はされず、0.1~10mm程度であり、好ましくは0.5~3mm程度である。外側の表層13の厚さt12は、特に限定はされず、0.1~10mm程度であり、好ましくは0.5~5mm程度である。
図3(a)の例では、外側の表層13が、
図4(b)、(c)に示す突起部と一体的に形成された厚い層となっている。
【0039】
(容器本体の製造方法)
容器本体の製造方法は、特に限定はされず、従来公知の電子レンジ加熱用の容器の製造方法を参照することもできる。例えば、射出成形では、上記した第1のポリマー材料と発熱体の粒子を上記範囲の混合比率にて混合したものを、金型内に射出成形することにより該容器本体を得ることができる。また、
図3に示すような目的の多層シートを予め準備しておき、真空成形やプレス成形によって多層シートを容器形状へと成形することによっても該容器本体を得ることができる。また、容器本体の形状に成形した発熱層に対して、従来公知のコーティング法を用いて、内側の表層や外側の表層を形成してもよい。
【0040】
(蓋)
蓋の外周形状は、容器本体の開口部の形状に合うように適宜に決定してよい。蓋の全体的な形状は、
図1(a)に示すようなドーム状であってもよいし、膨らみのない平板状であってもよい。蓋が平板状である場合には、
図2(a)における深さD2が0となるので、容器本体の深さD1を十分な冷凍焼き餃子の高さh1に応じて適当な深さにすることが好ましい。
図1(a)等に示すように、蓋20には、取り扱いのためのつまみ(手でつかむための突起)21を設けることが好ましい。該つまみの形状は、特に限定はされず、取り扱い性が良く、製造し易いように適宜に設計してよい。該つまみは、蓋と一体的に成形されたものでも、別部品を蓋に固定したものでもよい。
【0041】
(蓋の材料)
蓋の材料は、電子レンジでの加熱に利用できるものを用いてよく、例えば、ポリマー材料、ガラス、陶磁器、焼結体、これらの複合材料などが好ましく利用できる。なお、蓋の材料としてポリマー材料を用いる場合、容器本体に接触する部分が溶融しないように、シリコーン樹脂やポリエステルなどの耐熱性の高いものを用いることが好ましい。
【0042】
(水蒸気の流出量を抑制するための構成)
当該加熱用容器には、次の条件(I)を満たすための構成が付与される。
条件(I):当該加熱用容器内に所定数の冷凍焼き餃子を配置しかつ蓋を閉じた状態で電子レンジ加熱を完了した時点での、当該加熱用容器外への水蒸気の流出量(重量)が、前記冷凍焼き餃子1g当たり0.05g以下となること。他の冷凍包餡食品の場合も同様である。
【0043】
本発明では、前記の条件(I)を満たすための構成それ自体は、内部の気体が流出可能なあらゆる構成を採用することができ、次に例示するような種々の構成が挙げられる。
【0044】
(i)容器本体の開口部を蓋が閉鎖したときに、容器内と容器外を連通する通気路が無い構成。ただし、ここでいう閉鎖は、加熱時に当該加熱用容器が破裂に至るような密封状態ではなく、一般的な料理用の鍋とその蓋とによる閉鎖のように、容器内の気体の体積が加熱によって増大すると、該気体自体が蓋を持ち上げて外部に逃げることができるような、開放可能な閉鎖である。気体の体積の増大は、容器内の空気の熱膨張や、冷凍焼き餃子に含まれた水分などが加熱によって蒸気となることによって生じる。
この(i)の構成では、蓋の重量を適宜に選択することで、容器内部の水蒸気が流出する際の蓋の不安定な開閉を抑制することができ、それにより、水蒸気の流出量を安全にかつ安定して抑制することができる。なお、蓋をより重くすることにより、水蒸気の流出量をより安定してより抑制し得る。また、この(i)の構成では、冷凍焼き餃子1g当たり水蒸気の流出量を、測定不能なほど小さくすることもできる。
【0045】
(ii)容器本体の開口部を蓋が閉鎖したときには容器内と容器外を連通する流通路が無いが、開口部の所定の一部が流通路として開放されるように、容器本体に対して蓋を所定量だけずらすことができるガイドやストッパーが設けられた構成(図示は省略する)。
この(ii)の構成では、予め実験等によって定められた量だけ蓋をずらすことができるので、水蒸気の流出量を安定させることができる。
【0046】
(iii)容器本体の開口部を蓋が閉鎖したときに、容器内と容器外を連通する流通路が無いが、容器内の気体の体積が加熱によって増大した場合に、該気体が流出できるような逃がし弁が容器本体または蓋に設けられた構成。
逃がし弁の構造は、従来公知の技術を参照することができ、例えば、容器本体または蓋に設けられた貫通孔(流通路)の内外両端の開口のうち外側の開口を、ヒンジ動作するフラップ(容器内の気体によって持ち上げられて開口の閉鎖を解除するフラップ)によって解放可能に閉じただけの簡単な構造であってもよい。逃がし弁の開放動作の特性によっては、冷凍焼き餃子1g当たり水蒸気の流出量を測定不能なほど小さくすることもできる。
【0047】
(iv)容器本体および蓋のうちの一方または両方に通気孔を設ける構成。
この(iv)の構成では、通気孔は、容器本体および蓋のうちの一方または両方に設けられる。
図1(b)では、分かりやすいように、蓋の上面に通気孔30が設けられた例を示しているが、通気孔の位置は、蓋の外周部(側壁部)であっても、容器の側壁部であってもよい。また、蓋と容器本体とが互いに合わさる境界面(即ち、
図2(a)における容器本体の開口部の上面10e、および、該上面10eに接する蓋の下面のうちの、一方または両方の面)に設けられた通気溝(所定区間に設けられた視覚的に溝と認識できないような隙間を含む)であってもよい。通気溝は、蓋および/または容器本体の前記境界面において、容器内部から容器外部に向かって設けられた溝(壁部を厚さ方向に横切る溝)であり、蓋を閉じたときに通気孔となる。容器本体の開口部の上面10eに設けられた通気溝と、蓋の外周部分の下面に設けられた通気溝とが互いに合わせられて、1つの通気孔になるものでもよい。
【0048】
通気孔の数は、通気孔の断面積に応じて1以上適宜に決定してよい。
図1(a)に示すように、蓋に1つ設ける態様であれば製造が容易であり、安定した蒸気抜きが行えるのでので好ましい。また、蒸気が側方に噴き出すように蓋の外周部に通気孔を設ける態様も、製造が容易であり、安定した蒸気抜きが行えるので、好ましい。
【0049】
上記(ii)~(iii)の構成における流通路の断面積(気体が進む方向に対して該経路を垂直に切断したときの断面積)や、上記(iv)の構成における通気孔(通気溝を含む)の断面積(気体が進む方向に対して該通気孔を垂直に切断したときの断面積)の総和は、収容すべき冷凍焼き餃子の所定数に応じて、上記の条件(I)を満たすように選択される。
【0050】
上記の条件(I)は、算出された水蒸気の流出量を、電子レンジ加熱前における配置された所定数の冷凍焼き餃子(または、所定数の他の冷凍包餡食品)の総重量で除した値である。
水蒸気の流出量は、電子レンジ加熱前における総重量(当該加熱用容器の重量とその中に配置された所定数の冷凍焼き餃子の重量との和)w1と、電子レンジ加熱完了時における総重量(当該加熱用容器の重量とその中に配置された所定数の冷凍焼き餃子の重量との和)w2との差(w1-w2)によって算出される。
【0051】
上記条件(I)における当該加熱用容器外への水蒸気の流出量のより好ましい値は冷凍焼き餃子1g当たり0.03g以下である。
該水蒸気の流出量の下限は、耳部を蒸すという点からより小さい値が好ましい。通気孔を設けることによって、簡単な構成でありながら、水蒸気の流出量を意図した値へと制御することができるので好ましい。通気孔の断面積を小さくした場合の前記重量の減少量の実際の下限は、焼き餃子1g当たり0.01g程度である。また、上記したように、通気孔を設けない態様では、前記重量の減少量の下限を、測定できない程度の小さい値(焼き餃子1g当たり実質的に0g)とすることも可能である。
【0052】
上記条件(I)を満たす流通路や通気孔の断面積の総和は、当該加熱用容器の大きさ(即ち、収容すべき冷凍焼き餃子の1つ当たりの重量と所定の数)によっても異なるが、例えば、冷凍焼き餃子の1つ当たりの重量が一般的な15~30g程度であり、所定の数が3~5個程度の場合には、該断面積の総和は1~10mm2程度、より好ましくは1~5mm2程度である。
前記流通路や通気孔の断面積の総和の値は、収容すべき冷凍焼き餃子(または他の冷凍包餡食品)の所定の数に比例するので、該所定の数に応じて適宜に変更すればよい。
【0053】
通気孔(溝を含む)の形成方法は、特に限定はされず、容器本体や蓋の成形時に金型によって形成する方法、容器本体や蓋を成形した後にそれらに穴加工を行う方法、本体と蓋との接触部に溝や隙間を設ける方法などが例示される。
【0054】
(容器本体の外部底面の突起部)
当該加熱用容器の好ましい態様では、
図1(a)、
図2(a)に一例を示すように、容器本体10の外部底面10bに、該外部底面と電子レンジの加熱室の底面との接触面積を減少させながら該容器本体を該加熱室の底面から離した状態で支持するための突起部50が付与される。
【0055】
この突起部50によって、容器本体10の下側に電子レンジからのマイクロ波がより多く回り込むことができるようになり、よって、発熱層をより効率よく発熱させることができる。また、該突起部50によって、容器本体10の外部底面10bと電子レンジの加熱室の底面との接触面積が減少するので、容器本体10から該加熱室の底面への熱伝導が抑制され、発熱層の発熱をより効率よく内部の冷凍焼き餃子の加熱に利用することができる。なお、突起部の下端面を下方に突き出した湾曲面とすることで、電子レンジの加熱室の底面との接触が点接触や線接触に近づき、前記熱伝導がより抑制されるので好ましい。また、突起部を稜線状突起(後述)として設けることによって、該突起部がリブやビームとして機能し、容器本体の底部の強度や剛性が向上するという利点もある。
【0056】
突起部50の高さ(
図2(a)に符号H1で示した寸法)は、特に限定はされないが、1~10mm程度が好ましい。突起部50と電子レンジの加熱室の底面との接触面積は、加熱で容器が軟化したときのたわみを防ぎ、強度を維持しつつ、底面からのマイクロ波の効率的な取り込みを促進する観点から、容器本体の外部底面の外形線によって規定される面積の5~60%程度であることが好ましい。
【0057】
(突起部の形態)
該突起部50の形態は、単発的な脚でも、種々のパターンを描くように延びる稜線状突起であってもよい。
図4(a)は、テーブルの脚のように4隅に単発的な突起部50aの例を示している。
図4(b)は、2条以上の平行な稜線状突起50bの例を示している。
図4(c)は、稜線状突起50c2が互いに角度をなして交差または結合するパターンの例を示している。
図4(c)における稜線状突起50c2の断面は、
図5(a)に現れている。
図4(c)の例では、稜線状突起50c2に加えて、容器本体の外部底面10bの外周縁を取り巻く環状の稜線状突起50c1が設けられ、これらが組み合わせられた稜線状突起50cとなっている。
図4(c)に示すような環状の稜線状突起50c1は、単独で設けられてもよく、
図4(b)の平行な稜線状突起50bと組み合わせて設けられてもよい。
【0058】
(突起部の形成方法)
突起部の形成方法は、特に限定はされないが、例えば、プレス成形等によって凹凸を形成する方法や、成形型で凹凸付きの容器本体を形成しこれに表層をさらにコーティングする方法、別途形成した凹凸を容器本体の底面に接合する方法などが挙げられる。
【0059】
(容器本体の取っ手部)
当該加熱用容器の好ましい態様では、
図1に示すように、容器本体10の外部側面に取っ手部(
図1の例では一対の取っ手部41、42)が設けられる。該取っ手部は、第1のポリマー材料製またはそれ以外の取っ手部用のポリマー材料製であって、かつ、発熱体を含有しない。よって、取っ手部は、電子レンジ加熱を行っても高温にはならず、使用者が手でつかむことができる。
【0060】
取っ手部は、容器本体の外周全体にわたってフランジのように側方に張り出す態様であってもよいし、取っ手として利用可能であるように単発的な突出部が1以上設けられた態様であってもよい。好ましい態様としては、
図1(b)に例示するように、容器本体10の開口部10cの外周縁のうちの互いに対向する反対側の位置(図の例では、長手方向の両端部)に設けられた1対の取っ手部(41、42)が挙げられる。
図1(b)に例示する取っ手部(41、42)の好ましい構造例は、
図5(a)の断面図および
図5(b)の右側面図に示されている。
図5(a)の取っ手部(41、42)を上から見たときの形状は、
図1(b)に現れている。
図5(a)および
図5(b)に示すように、取っ手部(41、42)のそれぞれの下側にはリブ(41a、42a)が設けられて取っ手部の強度が高められている。
【0061】
(冷凍包餡食品)
当該加熱用容器が加熱の対象とする冷凍包餡食品は、特に限定はされず、冷凍焼き餃子の他に、冷凍焼き小籠包、冷凍焼き饅頭(冷凍にら饅頭など)、冷凍春巻き、焦げ目を付けた大福餅を冷凍したものなど、加熱して焦げ目を付けた種々の包餡食品を冷凍したものであってよい。
【0062】
(冷凍包餡食品とりわけ冷凍焼き餃子の構成)
本発明が加熱の対象とする冷凍包餡食品は、市販のものであってよい。冷凍焼き餃子の場合、加熱時に冷凍焼き餃子の皮(とりわけ耳部)を適切に蒸すための水分として、該冷凍焼き餃子の皮に含まれた水分を利用することが好ましい態様として推奨される。これにより、電子レンジ加熱時に水を加える必要がなくなり、意図したとおりの水分量で冷凍焼き餃子を蒸すことが可能になり、加熱後の焼き面の香ばしさや耳部の柔らかさの品質が一定に近づく。
【0063】
(冷凍焼き餃子の皮)
加熱時に冷凍焼き餃子の皮を適切に蒸すための水分として、該冷凍焼き餃子の皮に含まれた水分を利用するために、該皮がアセチル化リン酸架橋澱粉またはヒドロキシプロピル化澱粉などの加工澱粉を含有する態様が好ましい。耐老化性を有する澱粉を添加することにより、電子レンジ加熱時に、自由水がマイクロ波を吸収し、皮から蒸発してしまうことを抑制するという作用が得られ、耳部などの乾燥が抑制され、もとの好ましい食感の皮に近いものが得られる。餃子と同様の皮を持った包餡食品に焼き面を形成して冷凍した食品の場合も同様である。
【0064】
冷凍焼き餃子に用いられる皮の仕様(材料の成分、製造方法、中具を包む前の展開した形状(通常は円形のシート状)、外形寸法、厚さ、重量など)や、中具の仕様(肉・野菜・調味料などの成分、重量、皮に包むまでの調理法)は、特に限定はされず、従来公知の冷凍焼き餃子や一般的な焼き餃子を参照することができる。また、冷凍焼き餃子の構成に応じて、当該加熱用容器の各部の仕様をさらに適宜に微調整することができる。他の冷凍包餡食品の場合も同様である。
【0065】
好ましい冷凍焼き餃子の各部の構成や製造方法を以下に例示する。
【0066】
(皮の水分含有量)
皮の水分含有量は、皮の全重量に対して、20~45重量%、好ましくは22~40重量%、より好ましくは25~35重量%である。電子レンジ加熱による耳部の乾燥を抑制する観点からは、水分含有量は多い方が良いが、多すぎると工業適性が低下する(即ち、皮を製造する時の圧延ローラーへの張り付き、破れが発生する)。
【0067】
(皮の厚さ)
皮の厚さは、0.2~5.0mm、好ましくは0.3~2.0mm、より好ましくは0.5~1.0mmである。電子レンジ加熱による耳部の乾燥を抑制する観点からは、皮は厚い方が良いが、厚過ぎると焼き面の食感(クリスピー感)が低下する。
【0068】
(皮の塩分濃度)
皮の塩分濃度は、0.0~2.0重量%、好ましくは0.0~1.0重量%、より好ましくは0.0~0.5重量%である。電子レンジ加熱による耳部の乾燥を抑制する観点からは、塩分濃度は少ない方が良い。
【0069】
(皮の材料)
皮は、少なくとも、穀粉、澱粉を含有する。澱粉は、保水性を向上するヒドロキシプロピル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉が好ましく、特に、澱粉をオキシ塩化リン又はトリメタリン酸と、無水酢酸又は酢酸ビニルでエステル化したアセチル化リン酸架橋澱粉が好ましい。アセチル化リン酸架橋澱粉の含有量は、皮の全重量に対して、1~48重量%、好ましくは2~42重量%、より好ましくは3~30重量%であることが好ましい。穀粉の含有量は、皮の全重量に対して、15~65重量%、好ましくは20~62重量%、より好ましくは25~60重量%であることが好ましい。皮は、穀粉、澱粉以外の成分、例えば、グルテン、食塩、油脂、グリシン、キシロース、糖類等を含んでいてもよい。
【0070】
(中具の水分含有量)
中具の水分含有量は、冷凍保存中における焼き面への水分移行の抑制や、皮の乾燥の防止の観点から、中具全重量に対して、50~80重量%、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~75重量%である。
【0071】
(中具の油分含有量)
中具の油分含有量は、電子レンジ加熱中に中具からの移行する油により、良好な焼き面の食感を得る観点から、中具全重量に対して、0~20重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは5~10重量%である。
【0072】
(電子レンジ加熱前の耳部の水分含有量)
耳部の水分含有量は、30~40重量%、好ましくは32~39重量%、より好ましくは35~38重量%である。水分含有量が前記範囲を下回ると、電子レンジ加熱中に耳部が乾燥し硬くなる。
【0073】
冷凍焼き餃子の好ましい製造条件を以下に例示する。
加熱工程は、生餃子を蒸す工程、次に、蒸された餃子を焼く工程を有することが好ましく、焼きながら蒸す工程であってもよい。加熱工程では、焼き上がった後の皮の周縁部(とりわけ耳部)の水分量が30~40重量%となるように、水を餃子に噴霧しながら加熱することが好ましい。蒸し工程は、例えば、飽和蒸気を吹き込む方法により行われ、蒸し時間は、1~20分程度が好ましい。焼き工程は、加熱温度150~260℃で、1~10分行われることが好ましい。
加熱工程を経た焼き餃子を、適切な低温で急冷し、冷凍焼き餃子を完成させる。
【0074】
(本発明の加熱方法)
次に、本発明による加熱方法を説明する。
当該加熱方法は、上記した本発明による電子レンジ加熱用容器を用いて、冷凍焼き餃子を電子レンジによって加熱する方法である。当該加熱方法では、
図1(a)に例示するように、本発明による加熱用容器1の容器本体10の内部底面10a上に、所定数の冷凍焼き餃子を配置し(焼き面を下方に向けて内部底面10aに接触させる)、次いで、当該加熱用容器の蓋20によって容器本体10の開口部を閉じ、該冷凍焼き餃子を収容した当該加熱用容器を電子レンジによって加熱する。
【0075】
当該加熱方法に利用可能な電子レンジは、家庭用(定格高周波出力500~1000W程度)でも、業務用(定格高周波出力1400~1800W程度(1900W程度のものもある)でもよく、冷凍包餡食品に応じて適宜選択してよい。冷凍焼き餃子を電子レンジで加熱する場合、短時間で調理解凍可能な点から、好ましい定格高周波出力は1400~1800W程度(1400~1900W程度でもよい)であり、その場合の好ましい加熱時間は30~120秒程度、より好ましい加熱時間は30~90秒程度である。他の定格高周波出力の加熱時間は、その定格高周波出力の値に比例して適宜に増減すればよい。
【実施例】
【0076】
以下、実際に本発明の電子レンジ加熱用容器を制作し、それを用い、冷凍包餡食品の典型的な例としての冷凍焼き餃子を加熱の対象として本発明の加熱方法を実施し、その有用性を評価した。
【0077】
図2(b)および
図5に示した当該加熱用容器(蓋の断面形状は、
図2(a)に示したもの)を、容器本体の各部の寸法を変えて3種類のサンプル1~3として製作し、これらのサンプルを用いて市販の冷凍焼き餃子を電子レンジ加熱し、その焼き上がりの品質から、容器本体の体積に占める冷凍焼き餃子の体積の適切な割合を検討した。該サンプル1~3では、水蒸気の流出量を安定して抑制する好ましい構成として通気孔を設けた。各サンプルの各部の寸法は次のとおりである。
【0078】
(サンプル1)
容器本体の内部底面10aの長辺の寸法L1:146mm
容器本体の内部底面10aの短辺の寸法L2:90mm
容器本体の内部底面10aから上面10eまでの深さD1:20mm
容器本体の層構造は、
図3(b)、
図5(a)に示すとおりであり、発熱層11の厚さt11は1mmであり、内側の表層12の厚さt12は1mm程度であり、外側の表層13の厚さ(容器本体の外部底面の突起部を含まない厚さ)t13は7mmである。
蓋の深さD2:23mm
蓋の厚さ:3mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の全深さD3(=D1+D2):43mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の容積:330mL
通気孔は蓋の側壁部に1つ設けた。通気孔の断面形状は円形であり、断面積は7mm
2である。
サンプル1に配置される一般的な冷凍焼き餃子の適正な数は4である。
【0079】
(サンプル2)
容器本体の内部底面10aの長辺の寸法L1:186mm
容器本体の内部底面10aの短辺の寸法L2:102mm
容器本体の内部底面10aから上面10eまでの深さD1:20mm
容器本体の層構造は、
図3(b)、
図5(a)に示すとおりであり、発熱層11の厚さt11は1mmであり、内側の表層12の厚さt12は1mm程度であり、外側の表層13の厚さ(容器本体の外部底面の突起部を含まない厚さ)t13は7mmである。
蓋の深さD2:23mm
蓋の厚さ:3mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の全深さD3(=D1+D2):43mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の容積:580mL
通気孔は蓋の側壁部に1つ設けた。通気孔の断面形状は円形であり、断面積は7mm
2である。
サンプル2に配置される一般的な冷凍焼き餃子の適正な所定数は5である。
【0080】
(サンプル3)
容器本体の内部底面10aの長辺の寸法L1:224mm
容器本体の内部底面10aの短辺の寸法L2:170mm
容器本体の内部底面10aから上面10eまでの深さD1:20mm
容器本体の層構造は、
図3(b)、
図5(a)に示すとおりであり、発熱層11の厚さt11は1mmであり、内側の表層12の厚さt12は1mm程度であり、外側の表層13の厚さ(容器本体の外部底面の突起部を含まない厚さ)t13は7mmである。
蓋の深さD2:23mm
蓋の厚さ:3mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の全深さD3(=D1+D2):43mm
容器本体を蓋で閉じた場合の内部空間の容積:1400mL
通気孔は蓋の側壁部に1つ設けた。通気孔の断面形状は円形であり、断面積は7mm
2である。
サンプル3に配置される一般的な冷凍焼き餃子の適正な所定数は8である。
【0081】
(容器本体と蓋の材料)
いずれのサンプルも、発熱層の母材m2はシリコーン樹脂であり、発熱体m1はNi-Znフェライト粉(粒子径:100~200μm程度(フェレー径))である。発熱層の材料混合比(重量比率)は、シリコーン樹脂100重量部に対して、発熱体300重量部である。内側の表層12の材料はシリコーン樹脂である。外側の表層13の材料はシリコーン樹脂である。蓋の材料はシリコーン樹脂である。
【0082】
(冷凍焼き餃子)
冷凍焼き餃子として市販のものを用いた。個々の冷凍焼き餃子の冷凍状態での各部の平均的な仕様は次のとおりである。
長手方向の寸法(直線距離):80mm
焼き面の幅:25mm
高さ:30mm
重量:15g
冷凍焼き餃子1つ当たりの平均的な体積:約16mL
皮にはアセチル化リン酸架橋澱粉が含まれている(含有率6%程度)。
【0083】
実施例1
(容器の内部空間の容積に占める冷凍焼き餃子の総体積が占める割合の検討)
上記サンプル1とサンプル3内に、上記冷凍焼き餃子(-18℃)を下記の数だけ配置し、蓋によって開口部を閉じて、電子レンジ(1400W)で50秒加熱した。
実験番号1:サンプル1に冷凍焼き餃子を5つ配置した
実験番号2:サンプル3に冷凍焼き餃子を5つ配置した
実験番号3:サンプル3に冷凍焼き餃子を4つ配置した
実験番号4:サンプル3に冷凍焼き餃子を2つ配置した
加熱完了直後の焼き餃子の温度(特に餃子内部の温度(芯温))は、いずれも85℃であった。実験番号1~4における水蒸気の流出量(収容された冷凍焼き餃子1g当たりの水蒸気の流出量:単位は(g/g))と、容器の内部空間に占める冷凍焼き餃子の総体積の割合(%)は、下記表1のとおりであった。
【0084】
【0085】
(加熱後の焼き餃子の評価)
焼き餃子を評価するのに充分な訓練を受けた専門の判定者5名にて、加熱後の焼き餃子の官能評価を行った。各項目についての評価は、下記表2のとおり4段階評価とし、各項目ごとに判定者5名の評価のうち最も多い評価を評価結果として採用した。下記表2における「パリ感」とは、クリスピー感を意味する。
【0086】
【0087】
加熱後の焼き餃子の評価結果を下記表3に示す。
【0088】
【0089】
表3の結果から明らかなとおり、容器の内部空間に占める冷凍焼き餃子の総体積の割合が5%以上のときに、加熱後の焼き餃子の耳部の焦げ、乾燥が少なく、焼き面の食感が良好な焼き餃子が得られることがわかった。
【0090】
実施例2
(容器外への水蒸気の流出量の検討)
本実施例では、上記サンプル2の容器をベースとして用い、通気孔の断面積を0から314mm2まで変えて5種類のサンプル4~8を製作し、それを用いて実施例1と同じ市販の冷凍焼き餃子を電子レンジ加熱し、その焼き上がりの品質から、容器本体の体積に占める冷凍焼き餃子の体積の適切な割合を検討した。
【0091】
サンプル4~7では、通気孔を蓋の側壁部に1つ設け、サンプル8では、通気孔を設けなかった。通気孔の断面形状は円形であり、断面積は次のとおりである。
サンプル4:314mm2
サンプル5:64mm2
サンプル6:28mm2
サンプル7:7mm2
サンプル8:0mm2(通気孔なし)
【0092】
電子レンジでの加熱条件は、1400W、30秒である。加熱完了直後の焼き餃子の芯温はいずれも85℃であった。実験番号5~9における水蒸気の流出量と、容器の内部空間に占める冷凍焼き餃子の総体積の割合(%)は、下記表4のとおりである。なお、実験番号9では、容器本体と蓋との間から水蒸気が流出することが目視で確認されたが、計測器では重量の減少は認められず、よって水蒸気の流出量を0.00(g/g)とした。
【0093】
【0094】
(加熱後の焼き餃子の評価)
実施例1と同様の判定者5名にて、上記表2のとおり4段階評価とし、実施例1と同様に加熱後の焼き餃子の官能評価を行った。加熱後の焼き餃子の評価結果を下記表5に示す。
【0095】
【0096】
表5の結果から明らかなとおり、当該加熱用容器外への水蒸気の流出量が、冷凍焼き餃子1g当たり0.00~0.05gのときに、加熱後の焼き餃子の耳部の焦げ、乾燥が少なく、焼き面の食感が良好な焼き餃子が得られることがわかった。
【0097】
実施例3
(発熱層に占める発熱体の重量の検討)
本実施例では、上記サンプル3の容器をベースとして用い、発熱層における第1のポリマー材料(100重量部)に対する発熱体の重量の割合を変えて3種類のサンプル9~11を製作し、それを用いて実施例1と同じ市販の冷凍焼き餃子を電子レンジ加熱し、その焼き上がりの品質から、発熱層に占める発熱体の重量の適切な割合を検討した。
電子レンジでの加熱条件は、1400W、70秒である。加熱完了直後の焼き餃子の芯温はいずれも85℃であった。容器のサンプル9~11を用いた実験10~12の加熱条件は、下記表6のとおりである。
【0098】
【0099】
(加熱後の焼き餃子の評価)
実施例1と同様の判定者5名にて、上記表2のとおり4段階評価とし、実施例1と同様に加熱後の焼き餃子の官能評価を行った。加熱後の焼き餃子の評価結果を下記表7に示す。
【0100】
【0101】
表7の結果から明らかなとおり、発熱層の材料成分を、ポリマー材料100重量部に対して、発熱体(Ni-Znフェライト粉)250~300重量部としたときに、加熱後の焼き餃子の耳部の焦げ、乾燥が少なく、焼き面の食感が良好な焼き餃子が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、電子レンジの加熱によって、冷凍包餡食品(とりわけ冷凍焼き餃子)の焼き面に好ましいクリスピー感および香ばしさを再付与しながらも、皮とりわけ耳部(特に冷凍焼き餃子の耳部)の乾燥や焼けを抑制できる。よって、焼き機のない外食産業などでもフライパンで調理したような高品質な焼いた包餡食品(とりわけ焼き餃子)を、冷凍包餡食品を用いて簡単に提供することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 電子レンジ加熱用容器
10 容器本体
11 発熱層
m1 発熱体
m2 ポリマー材料
20 蓋
30 通気孔
41、42 取っ手
50 容器本体の外部底面の突起部
100 冷凍焼き餃子