(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】捕獲網展開飛翔体及び捕獲網展開飛翔装置
(51)【国際特許分類】
F42B 12/68 20060101AFI20240618BHJP
F42B 12/66 20060101ALI20240618BHJP
F41B 15/00 20060101ALI20240618BHJP
F41H 11/02 20060101ALI20240618BHJP
B64D 1/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F42B12/68
F42B12/66
F41B15/00 A
F41H11/02
B64D1/04
(21)【出願番号】P 2020182770
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 伸一
(72)【発明者】
【氏名】相馬 雅人
(72)【発明者】
【氏名】早川 芳仁
(72)【発明者】
【氏名】飛知和 一輝
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-502171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0283828(US,A1)
【文献】特開2001-174196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 12/00
F41B 15/00
F41H 11/00
F41H 13/00
B64D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数組み合わされて配置されたときに、円筒形状の空間が形成され、前記空間の軸方向に長尺な錘と、
複数の前記錘のそれぞれに外周縁部が取り付けられ、前記空間内に収納される捕獲網と、
複数の前記錘と前記捕獲網とを射出させる射出用ガスを発生させる放出薬と、複数の前記錘を放射方向に飛散させて前記捕獲網を展開させる飛散用ガスを発生させる展開薬と、を有し、前記空間内に一部が収納される放出装置と、
前記捕獲網が前記空間内に収納された状態で、複数の前記錘の外周を包囲する包装体と、
を備え
、
前記錘は、長手方向の一端側に本体部を有するとともに、前記一端側とは反対の他端側につば部を有し、
前記空間は、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記本体部によって形成される円筒形状の第1空間と、前記つば部によって形成される円筒形状の第2空間とに分かれて形成され、
前記つば部は、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときの半径方向の厚さが、前記本体部の前記半径方向の厚さよりも薄く、
前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記本体部によって形成される前記第1空間よりも、前記つば部によって形成される前記第2空間の方が、内径が大きい
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項2】
請求項1に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記放出装置は、前記本体部により形成される前記第1空間内に一部が収納され、前記捕獲網は、前記つば部により形成される前記第2空間内に収納される
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項3】
請求項2に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記放出装置は、
前記放出薬が収納される第1筒部材と、
前記放出薬の燃焼により引火し、前記放出薬の点火から所定時間経過後に前記展開薬を点火させる延時薬が収納される第2筒部材と、
前記展開薬が収納される第3筒部材と、
を有することを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項4】
請求項3に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記放出装置は、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記第1空間内に前記第3筒部材が収納される
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記放出装置は、前記第3筒部材の外周面に周方向に連続する凹部を有する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項6】
請求項5に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記本体部は、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに内周面となる位置に、第1凸部を有し、
前記第1凸部は、前記第3筒部材が前記第1空間内に収納されたときに、前記第3筒部材の前記凹部と篏合する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項7】
請求項3から請求項6の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記本体部は、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに内周面となる位置であって前記つば部との境目となる位置に第2凸部を有する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項8】
請求項7に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記第2凸部は、前記長手方向に直交する断面形状が三角形状であり、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記第2凸部の先端同士が、内部で突き当てられる
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項9】
請求項3から請求項8の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記第1空間と前記第2空間との間に、前記第1空間と前記第2空間とを仕切る保護板を
さらに備えることを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項10】
請求項3から請求項9の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記放出装置は、前記第1筒部材と前記第2筒部材との間に、前記第1筒部材と前記第2筒部材との間を仕切る隔壁を有する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項11】
請求項3から請求項10の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記捕獲網が配置される側の端部に配置され、前記錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、前記錘とともに前記包装体に包囲されて固定される保護蓋を
さらに備えることを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項12】
請求項11に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記保護蓋に折り畳まれた状態で取り付けられ、射出された後に飛翔方向に対して後方に伸びる飛翔安定部材を
さらに備えることを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記つば部の前記長手方向の長さは、30mm以上60mm以下である
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記つば部の前記半径方向の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下である
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項15】
請求項1から請求項14の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体において、
前記錘は、周方向に複数組み合わされて配置されたときの本数が4本以上16本以下の偶数本であり、前記放出装置の外周に沿って等間隔に配置された状態で、前記放出装置に固定される
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔体。
【請求項16】
請求項1から請求項15の何れか1項に記載の捕獲網展開飛翔体と、
軸方向における一端が閉口された筒形状のケースと、
を備え、
前記捕獲網展開飛翔体は、前記放出装置が配置される側の端部が、前記ケースの閉口された前記一端に配置される
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項17】
請求項16に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記ケースは、閉口された前記一端に、前記放出薬を点火する火薬を収納した雷管を有する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【請求項18】
請求項17に記載の捕獲網展開飛翔装置において、
前記ケースは、
両端が開口される筒形状のケース本体と、
前記雷管を保持した状態で前記ケース本体の一端に固定されるケースホルダと、
を有する
ことを特徴とする捕獲網展開飛翔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空を飛翔する無人航空機(マルチコプターなどの無人浮遊機を含む)の捕獲に用いられ、ガス筒発射器で射出可能な捕獲網展開飛翔体及び捕獲網展開飛翔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いた遠隔操作や自動制御で飛行する無人航空機が一般に提供されている。無人航空機は、遊び目的や搭載されるデジタルカメラ(デジタルビデオカメラを含む)による空撮を行う目的のために使用される。また、無人航空機は、例えば人間が立ち入ることが困難となる場所の検査や、状況把握を行う目的で使用される。その一方で、重要施設などの飛行禁止区域における無人航空機の飛行や、公共の安全に被害を与える物質や爆破物を搭載した無人航空機による攻撃などが問題視され、また、これらの事件が発生している。
【0003】
このような危険性を有する無人航空機に対しては、公共の安全に被害を与える物質や爆破物の周囲への影響範囲外から対処することが求められる。したがって、例えば、無人航空機を飛翔させて、無人航空機の下部に取り付けた捕獲網を捕獲対象となる無人航空機に絡ませて該無人航空機を飛翔不能にして捕獲する、又は、無人航空機に設置した捕獲網を捕獲対象となる無人航空機に向けて射出し、射出した捕獲網を展開させて捕獲対象となる無人航空機に絡ませて飛翔不能にして捕獲するなどの方法が考案されている。また、地上にて犯人を捕獲する方法として、銃から錘及びネットパッケージからなる組み合わせ体を放出し、放出された組み合わせ体を飛翔させながらネットを展開させ、展開したネットにより犯人を捕捉する方法が提案される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される拘束ネットシステムでは、発射器により筒状の飛翔体が射出され、発射された飛翔体は、約1.5m飛翔した後に、捕獲網を展開することで犯人を捕獲する。爆発物等による攻撃を目的とした無人航空機への対処には、爆発物等による攻撃の被害が及ぶ範囲外で対処する必要があるが、特許文献1に開示される拘束ネットシステムは、有効捕獲範囲が約1.5mと狭いため、安全距離から対処することが難しい。従って、上空を飛翔する無人航空機を捕獲するため、発射器で射出可能な有効射程の長い捕獲網展開飛翔体が求められる。
【0006】
ところで、飛翔距離を従来よりも長距離化させるためには、飛翔体の放出力を従来よりも向上させる必要がある。飛翔体の放出力を従来よりも向上させるためには、放出薬量を従来よりも増加させる必要がある。
【0007】
しかし、放出薬量を従来よりも増加させると、放出時に飛翔体にかかる圧力が従来よりも上昇する。飛翔体にかかる圧力が上昇すると、飛翔体に付随する捕獲用網が放出時に圧縮され、捕獲用網が放射方向へ変形してしまう。捕獲用網が放射方向に変形すると、飛翔体の捕獲用網の外側を覆う熱収縮フィルムが破損してしまい、射出後すぐに捕獲用網が展開してしまう可能性や、構成部品が脱落してしまう可能性があった。このため、従来の飛翔体では、放出薬量を従来よりも増加させることができず、飛翔距離を従来よりも長くすることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、熱収縮フィルムが破損する可能性を従来よりも低減させることで、捕獲網展開飛翔体の有効射程を従来よりも長距離化させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の捕獲網展開飛翔体は、周方向に複数組み合わされて配置されたときに、円筒形状の空間が形成され、空間の軸方向に長尺な錘と、複数の錘のそれぞれに外周縁部が取り付けられ、空間内に収納される捕獲網と、複数の錘と捕獲網とを射出させる射出用ガスを発生させる放出薬と、複数の錘を放射方向に飛散させて捕獲網を展開させる飛散用ガスを発生させる展開薬と、を有し、空間内に一部が収納される放出装置と、捕獲網が空間内に収納された状態で、複数の錘の外周を包囲する包装体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
なお、一態様の捕獲網展開飛翔体において、錘は、長手方向の一端側に本体部を有するとともに、一端側とは反対の他端側につば部を有し、空間は、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、本体部によって形成される円筒形状の第1空間と、つば部によって形成される円筒形状の第2空間とに分かれて形成されてもよい。
【0011】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、つば部は、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときの半径方向の厚さが、本体部の半径方向の厚さよりも薄く、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、本体部によって形成される第1空間よりも、つば部によって形成される第2空間の方が、内径が大きくてもよい。
【0012】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、放出装置は、本体部により形成される第1空間内に一部が収納され、捕獲網は、つば部により形成される第2空間内に収納されてもよい。
【0013】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、放出装置は、放出薬が収納される第1筒部材と、放出薬の燃焼により引火し、放出薬の点火から所定時間経過後に展開薬を点火させる延時薬が収納される第2筒部材と、展開薬が収納される第3筒部材と、を有してもよい。
【0014】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、放出装置は、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、第1空間内に第3筒部材が収納されてもよい。
【0015】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、放出装置は、第3筒部材の外周面に周方向に連続する凹部を有してもよい。
【0016】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、本体部は、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに内周面となる位置に、第1凸部を有し、第1凸部は、第3筒部材が第1空間内に収納されたときに、第3筒部材の凹部と篏合してもよい。
【0017】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、本体部は、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに内周面となる位置であってつば部との境目となる位置に第2凸部を有してもよい。
【0018】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、第2凸部は、長手方向に直交する断面形状が三角形状であり、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、第2凸部の先端同士が、内部で突き当てられてもよい。
【0019】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、第1空間と第2空間との間に、第1空間と第2空間とを仕切る保護板をさらに備えてもよい。
【0020】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、放出装置は、第1筒部材と第2筒部材との間に、第1筒部材と第2筒部材との間を仕切る隔壁を有してもよい。
【0021】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、捕獲網が配置される側の端部に配置され、錘が周方向に複数組み合わされて配置されたときに、錘とともに包装体に包囲されて固定される保護蓋をさらに備えてもよい。
【0022】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、保護蓋に折り畳まれた状態で取り付けられ、射出された後に飛翔方向に対して後方に伸びる飛翔安定部材をさらに備えてもよい。
【0023】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、つば部の長手方向の長さは、30mm以上60mm以下であってもよい。
【0024】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、つば部の半径方向の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下であってもよい。
【0025】
また、一態様の捕獲網展開飛翔体において、錘は、周方向に複数組み合わされて配置されたときの本数が4本以上16本以下の偶数本であり、放出装置の外周に沿って等間隔に配置された状態で、放出装置に固定されてもよい。
【0026】
本発明の一態様の捕獲網展開飛翔装置は、上記の何れかに記載の捕獲網展開飛翔体と、軸方向における一端が閉口された筒形状のケースと、を備え、捕獲網展開飛翔体は、放出装置が配置される側の端部が、ケースの閉口された一端に配置されることを特徴とする。
【0027】
なお、一態様の捕獲網展開飛翔装置において、ケースは、閉口された一端に、放出薬を点火する火薬を収納した雷管を有してもよい。
【0028】
また、一態様の捕獲網展開飛翔装置において、ケースは、両端が開口される筒形状のケース本体と、雷管を保持した状態でケース本体の一端に固定されるケースホルダと、を有してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、熱収縮フィルムが破損する可能性を従来よりも低減させることで、捕獲網展開飛翔体の有効射程を従来よりも長距離化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】捕獲網展開飛翔体及び捕獲網展開飛翔装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示した捕獲網展開飛翔体の一例を示す断面図である。
【
図3】
図2に示した捕獲網が展開されたときの状態の一例を示す図である。
【
図4】
図2に示した放出装置の一例を示す断面図である。
【
図6】捕獲網展開飛翔体を射出してから捕獲対象となる無人航空機を捕獲するまでの捕獲網展開飛翔体の動作の一例を示す図である。
【
図7】
図1から
図6に示す実施形態における捕獲網展開飛翔体の射出時の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
【
図8】比較例における捕獲網展開飛翔体の射出時の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
【
図9】別の実施形態に係る錘の一例を示す図である。
【
図10】別の実施形態に係る錘の一例を示す図である。
【
図11】別の実施形態に係る錘の一例を示す図である。
【
図12】別の実施形態に係る錘の一例を示す図である。
【
図13】別の実施形態に係る錘の一例を示す図である。
【
図14】飛翔試験の試験配置を上面から見た状況を示す図である。
【
図15】飛翔試験で用いられた飛翔体諸元を示す表である。
【
図16】射出時の飛翔体映像からのフィルム破損状況についての試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る捕獲網展開飛翔体及び捕獲網展開飛翔装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0032】
<第1実施形態の構成>
図1は、捕獲網展開飛翔体30及び捕獲網展開飛翔装置1の一実施形態を示す断面図である。
図1において、捕獲網展開飛翔装置1は、ケース10と、保護キャップ20と、捕獲網展開飛翔体30と、を有する。ケース10は、軸方向における一端(
図1中左側)が閉口された筒形状の部材であり、ケース10の内部には、捕獲網展開飛翔体30が格納される。保護キャップ20は、軸方向における一端とは反対側の他端(
図1中右側)からケース10に取り付けられる。なお、
図1において、捕獲網展開飛翔体30は、保護キャップ20が取り外された後に、
図1中左側から右側に向けてケース10から射出される。
【0033】
ケース10は、ケース本体11と、ケースホルダ12と、雷管13とを有する。ケース本体11には、軸方向における一端(
図1中左側)からケースホルダ12が取り付けられており、雷管13は、ケースホルダ12に設けられている。なお、本実施形態では、ケース本体11とケースホルダ12とは、別体として設けられているが、ケース本体11とケースホルダ12とは、一体として設けられてもよい。ケース10は、捕獲網展開飛翔体30を収納し、後述のガス筒発射器70(
図6参照)に装填される。
【0034】
ケース本体11は、例えば両端が開口された円筒形状の部材である。ケース本体11の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン等の金属である。ケース本体11は、軸方向(長手方向)における一端側(
図1中左側)にケースホルダ12を保持し、一端とは反対の他端側(
図1中右側)に保護キャップ20を保持する。ケース本体11は、捕獲網展開飛翔体30を収納する飛翔体収納部11aと、ケースホルダ12を収納するホルダ収納部11bとを有する。飛翔体収納部11aの内周面11fの内径D1は、ホルダ収納部11bの内径D2よりも大きい。このため、飛翔体収納部11aとホルダ収納部11bとの間には、内径D1と内径D2との差に基づいた段差面11cが形成される。この段差面11cには、捕獲網展開飛翔体30を構成する後述する放出装置31(
図2、
図4参照)が突き当てられる。
【0035】
また、ホルダ収納部11bにおいて、ケース本体11の軸方向における一端側(
図1中左側)の端面11dからの所定範囲A1は、ホルダ収納部11bの内径D2よりも大きい内径D3である。ケース本体11の端面11dからの所定範囲A1において、ホルダ収納部11bの内径D2よりも大きい内径D3となっている部位には、ケースホルダ12に取り付けられたパッキン14が入り込む。
【0036】
ケースホルダ12は、ケース本体11の軸方向における一端側(
図1中左側)の端面11d側に取り付けられる部材である。ケースホルダ12の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン等の金属である。ケースホルダ12は、軸方向における一端側(
図1中左側)の端部に、ケースホルダ12の外周面から突出するフランジ部12aを有する。また、ケースホルダ12は、フランジ部12aに近接する位置に、外周面の全周に亘る溝部12bを有している。溝部12bは、パッキン14を収納保持する。ケースホルダ12は、フランジ部12aが形成される軸方向における一端側とは反対側(
図1中右側)の端部に、後述する放出装置31の一端が挿入される収納空間12cを有する。
【0037】
雷管13は、ケースホルダ12のフランジ部12aが形成される軸方向における一端側(
図1中左側)における雷管収納空間12dに収納される。雷管13は、後述のガス筒発射器70(
図6参照)の不図示の撃鉄(ハンマー)により叩かれることで着火され、後述の放出薬51(
図4参照)に点火する。なお、
図1中符号12eは、雷管13と収納空間12cとの間に設けられ、雷管13の内部の火薬が燃焼する際に発生する火花や燃焼ガスが通過する伝火孔(フラッシュホール)である。
【0038】
パッキン14は、ケースホルダ12の周方向に取り付けられる、例えば、円形の断面形状を有する環状の部材である。パッキン14の材質は、例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム等のゴムや、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene:アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂である。パッキン14は、ケースホルダ12の溝部12bに挿入保持される。パッキン14は、ケースホルダ12の溝部12bに挿入保持された状態では、ケースホルダ12の溝部12bから一部が露呈される。この状態で、ケースホルダ12をケース本体11に取り付けると、パッキン14は、ケース本体11の内径D3を有する内周面11eと、ケースホルダ12の溝部12bの底面との間で圧接された状態となる。パッキン14は、後述の放出薬51(
図4参照)の燃焼ガスのガス漏れを抑止する。
【0039】
保護キャップ20は、ケース本体11のケースホルダ12が取り付けられる軸方向における一端とは反対側の他端(
図1中右側)に取り付けられる。保護キャップ20は、ケース本体11に装着することで、捕獲網展開飛翔装置1の保管時に、ケース10の内部に収納される捕獲網展開飛翔体30を保護する。なお、保護キャップ20は、後述のガス筒発射器70(
図6参照)に捕獲網展開飛翔装置1を装填する際に取り外される。保護キャップ20の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン等の金属、又はABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂である。
【0040】
図2は、
図1に示した捕獲網展開飛翔体30の一例を示す断面図である。捕獲網展開飛翔体30(以下、単に「飛翔体30」ともいう。)は、放出装置31と、複数の錘32と、保護板33と、捕獲網34と、保護蓋35と、フィルム36と、リボン37とを有する。錘32は、周方向に複数組み合わされて配置されたときに外周面が円筒形状となり、内周面に円筒形状の内部空間Sを有する。複数の錘32によって形成される内部空間Sは、錘32の形状に起因した内径の異なる円筒形状の内部空間S1と内部空間S2とに分かれる。内部空間S1には、放出装置31の一部が収納され、内部空間S2には、捕獲網34が収納される。飛翔体30は、内部空間Sに放出装置31の一部と捕獲網34とを収納した状態で保護蓋35が取り付けられ、フィルム36で包囲されて固定される。なお、内部空間Sは、請求項の空間の一例であり、内部空間S1は、請求項の第1空間の一例であり、内部空間S2は、請求項の第2空間の一例である。
【0041】
放出装置31は、飛翔体30の射出及び捕獲網34の展開を行う火薬を保持する。放出装置31は、後述のホルダ外筒41(
図4参照)の軸方向における一端側(
図2中左側)が、ケースホルダ12の収納空間12c(
図1参照)に収納される。また、放出装置31は、軸方向における一端側とは反対側の他端側(
図2中右側)が、複数の錘32によって形成される内部空間S1に収納される。なお、放出装置31の詳細は、後述する。
【0042】
錘32は、飛翔体30の周方向に複数配置されたときに円筒形状の内部空間S(S1,S2)が形成される軸方向(
図1の左右方向)に長尺な部材である。内部空間S1には、放出装置31の一部が収納され、内部空間S2には、捕獲網34が収納される。複数の錘32は、それぞれ紐通し穴64に不図示の紐部材が挿通され、紐部材は、それぞれ捕獲網34の端部に取り付けられる。錘32が取り付けられる捕獲網34の位置は、例えば、捕獲網34の頂点及び隣り合う頂点を結ぶ線の中点等である。錘32は、例えば無人航空機(ドローン)等の捕獲対象物を捕獲するときに飛翔体30における放射方向に飛散し、捕獲網34を展開させる。
【0043】
錘32の材質は、例えば鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン等の金属である。ここで、飛翔体30を形成する状態では、錘32は、放出装置31における後述の展開薬ケース44(
図4参照)の外周と捕獲網34の外周とに沿って配置される。錘32は、放出装置31の後述の展開薬ケース(
図4参照)の外周に沿って配置された状態で、不図示の両面テープ等により放出装置31に固定されてもよい。複数の錘32の本数は、例えば8本であり、展開薬ケース44(
図4参照)の外周に沿って等間隔に配置された状態で、放出装置31に固定される。なお、複数の錘32の本数は、例えば、4本以上16本以下の偶数本が挙げられるが、捕獲網34の外形形状に合わせて適宜設定されてもよい。なお、錘32の詳細は、後述する。
【0044】
保護板33は、複数の錘32が周方向に組み合わされて配置されることで形成される内部空間S1と内部空間S2との間に配置される。保護板33は、内部空間S1と内部空間S2との間を仕切り、放出装置31が保持する後述の展開薬53(
図4参照)が発火したときに、発火の炎や燃焼ガスによって捕獲網34が破損することを抑制する。保護板33の材質は、捕獲網34が展開するときに容易に破れるものであれば何でも良い。なお、保護板33の大きさや形状は、錘32によって形成される内部空間S(S1)の軸方向に直交する断面の大きさや形状によって適宜変更可能である。また、保護板33は、飛翔体30に配置されなくてもよい。
【0045】
捕獲網34は、例えば無人航空機(ドローン)等の捕獲対象物を捕獲する網である。捕獲網34は、外周縁部に複数の錘32が不図示の紐部材を介して取り付けられる。捕獲網34は、飛翔体30の飛翔時に錘32が放射状に飛散することにより展開される。捕獲網34の材質は、例えば、ケプラー、ベクトラン、ポリエステル、ナイロン、綿、絹等の糸である。
【0046】
図3は、
図2に示した捕獲網34が展開されたときの状態の一例を示す図である。
図3(a)は、四角形状の捕獲網34Aが展開されたときの状態の一例を示す図であり、
図3(b)は八角形状の捕獲網34Bが展開されたときの状態の一例を示す図である。
【0047】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、捕獲網34は、例えば、外形形状が四角形状の捕獲網34Aであってもよいし、例えば、外形形状が八角形状の捕獲網34Bであってもよい。なお、捕獲網34は、展開されたときに、例えば無人航空機(ドローン)等の捕獲対象物に絡ませられることが可能な形状であれば形状は何でもよく、四角形状又は八角形状以外の多角形状であってもよく、他の外形形状であってもよい。なお、捕獲網34は、外周縁部に取り付けられた複数の錘32によって形成される内部空間S2の内部に折り畳まれた状態で飛翔体30に保持される。
【0048】
図2に戻り、保護蓋35は、飛翔体30の射出時に、捕獲網34を保護する部材である。
図2において、保護蓋35は、保護蓋35aと保護蓋35bとの2枚取り付けられているが、2枚には限られず、1枚でも3枚以上でもよい。保護蓋35の材質は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂、又は厚紙(ボール紙)等である。
【0049】
フィルム36は、例えば、熱収縮フィルムであり、複数の錘32と捕獲網34と保護蓋35とを一体に保持し、展開前の飛翔体30の形状を保つための部材である。フィルム36は、複数の錘32と捕獲網34と保護蓋35との外周を包囲する。フィルム36は、複数の錘32と捕獲網34と保護蓋35との外周を包囲した状態で、熱収縮させることによりこれらの部材に密着しながらこれらの部材を包装する。フィルム36は、例えば1枚のフィルムを湾曲させた両端部を固着することで円筒形状としている。
【0050】
フィルム36は、例えば、フィルム36aとフィルム36bとが重ねられて二重に設けられてもよく、内側のフィルム36aが内側の保護蓋35aの外面を包装し、外側のフィルム36bが外側の保護蓋35bの外面を包装してもよい。なお、フィルム36の枚数は、2枚には限られず、1枚でも、3枚以上でも、保護蓋35の枚数に合わせた枚数に適宜変更してもよい。フィルム36の材質としては、錘32の放射方向への飛散、及び錘32の飛散による捕獲網34の展開時に、容易に破れる材質であれば、フィルム素材に限らず何でもよい。なお、フィルム36は、請求項の包装体の一例である。
【0051】
リボン37は、ケース10(
図1参照)から射出された飛翔体30の飛翔を安定させる部材である。リボン37は、保護蓋35(35b)に折り畳まれた状態で取り付けられる。リボン37の材質は、例えば、布又はナイロン等である。なお、リボン37は、飛翔体30がケース10(
図1参照)に収納されているときには、折り畳まれて収納されている。また、リボン37は、飛翔体30の飛翔時には折り畳まれた状態が解除され、飛翔体30の飛翔方向に対して後方に伸びた状態となる。このため、リボン37の材質は、布又はナイロン等には限られず、伸びた状態で、折り畳まれたときの折り目が付きづらい材質であれば、特に限定されるものではない。
【0052】
なお、
図2においては、1本のリボン37が保護蓋35(35b)に固定された状態を示しているが、2本以上のリボンを保護蓋35に固定することも可能である。この場合、リボン37は、隣り合うリボン37とのなす角度が同一角度となるよう交差するように配置させられて保護蓋35に固定されてもよい。なお、リボン37は、請求項の飛翔安定部材の一例である。
【0053】
図4は、
図2に示した放出装置31の一例を示す断面図である。放出装置31は、飛翔体30をケース10(
図1参照)から射出させるとともに、飛翔体30が飛翔している状態で錘32(
図2参照)を放射状に飛散させて捕獲網34(
図2参照)を展開させる装置である。放出装置31は、ホルダ外筒41と、ホルダ内筒42と、延時薬筒43と、展開薬ケース44と、アルミシール45と、パッキン46と、速火線47とを有する。
【0054】
放出装置31において、ホルダ外筒41は、内部にホルダ内筒42が設けられ、ホルダ内筒42の内部には、延時薬筒43が設けられる。また、放出装置31は、ケースホルダ12の収納空間12c(
図1参照)に挿入される軸方向における一端側の円筒部41aとは反対側の他端側には、展開薬ケース44が設けられる。パッキン46は、ホルダ外筒41の外側に周方向に設けられ、速火線47は、放出装置31の内部に軸方向に設けられる。
【0055】
ホルダ外筒41は、外径D4を有する円筒部41aと外径D5を有する円筒部41bとが軸方向に同軸となるように組み合わされた形状の部材である。ホルダ外筒41の材質は、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂である。ホルダ外筒41は、ケース本体11の段差面11c(
図1参照)に、外径D4を有する円筒部41aと外径D5を有する円筒部41bとの外径の差に基づく段差面41cが突き当てられる。また、ホルダ外筒41は、外径D4を有する円筒部41aが、ケースホルダ12の収納空間12c(
図1参照)に収納される。なお、ホルダ外筒41の形状として、異なる外径D4,D5を有する円筒部41a,41bとを軸方向に同軸となるように組み合わせた形状を例に挙げているが、ホルダ外筒41の形状は、これには限られず、適宜の形状を用いることが可能である。
【0056】
ホルダ外筒41は、円筒部41aの内部に、軸方向における一端側(
図4中左側)の端部が開口された放出薬収納部41dを有し、放出薬収納部41dの内部には、放出薬51が、アルミシール45で封止されて保持される。ホルダ外筒41は、円筒部41bの内部に、軸方向における一端側とは反対側の他端側(
図4中右側)の端部が開口されたホルダ内筒収納部41eを有し、軸方向における他端側(
図4中右側)から挿入されたホルダ内筒42を保持する。放出薬収納部41dとホルダ内筒収納部41eとの間には、隔壁48が設けられ、放出薬収納部41dとホルダ内筒収納部41eとが仕切られている。隔壁48の中心には、放出薬収納部41dとホルダ内筒収納部41eと連通する挿通孔48aが設けられる。なお、ホルダ外筒41は、請求項の第1筒部材の一例である。
【0057】
ホルダ内筒42は、軸方向における一端側(
図4中左側)の端面42aが隔壁48に突き当てられて、ホルダ外筒41のホルダ内筒収納部41eに収納される。ホルダ内筒42の材質は、例えば、鋼、銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン等の金属、又はABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂である。
【0058】
ホルダ内筒42は、軸方向における端面42a側に、端面42a側が開口された延時薬筒収納部42bが設けられ、延時薬筒収納部42bの内部には延時薬筒43が保持される。ホルダ内筒42の軸方向における端面42aとは反対側の端面42c側には、端面42cから突出する係止部42dが設けられる。なお、ホルダ内筒42に設けられる係止部42dの中心には、延時薬筒収納部42bと連通する挿通孔42eが設けられる。なお、ホルダ内筒42は、ホルダ外筒41と別体ではなくホルダ外筒41と一体に設けられてもよい。
【0059】
延時薬筒43は、軸方向における一端側(
図4中左側)が、隔壁48に突き当てられ、軸方向における一端側とは反対側の他端側(
図4中右側)が、ホルダ内筒42に突き当てられ、ホルダ内筒42の内部に保持される。延時薬筒43の軸方向における一端側(
図4中左側)は、挿通孔48aを介して放出薬収納部41dと連通し、延時薬筒43の軸方向における一端側とは反対側の他端側(
図4中右側)は、挿通孔42eを介して展開薬ケース44の内部と連通する。延時薬筒43は、内部に延時薬52を収納保持する。なお、延時薬筒43は、請求項の第2筒部材の一例である。
【0060】
展開薬ケース44は、軸方向における一端(
図4中左側)が開口され、軸方向における一端とは反対側の他端(
図4中右側)が閉口された筒形状の部材である。展開薬ケース44は、内部に展開薬53を収納した状態で、軸方向における一端(
図4中左側)がホルダ内筒42に取り付けられる。展開薬ケース44の材質は、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂や、紙等である。つまり、展開薬ケース44は、展開薬53の燃焼、又は展開薬53の燃焼により発生する燃焼ガスによって容易に破砕される材質であればよい。展開薬ケース44は、請求項の第3筒部材の一例である。
【0061】
展開薬ケース44は、ホルダ内筒42の係止部42dに係合される係合部44aを有する。展開薬ケース44は、ホルダ内筒42に取り付けられると、展開薬ケース44の係合部44aがホルダ内筒42の係止部42dに係合される。
【0062】
展開薬ケース44は、外周面に、凹部44bが周方向に全周に亘って連続して設けられる。凹部44bは、展開薬53の燃焼時に発生する燃焼ガスにより展開薬ケース44を破壊し易くする。なお、
図4においては、凹部44bは、展開薬ケース44の外周面の周方向に1箇所だけ設けられているが、凹部44bは、展開薬ケース44の軸方向に対して、複数箇所に設けられてもよく、設けられなくてもよい。また、凹部44bの形状は、
図4に示す断面長方形状には限られず、展開薬ケース44が破壊し易くなる形状であれば他の形状でもよい。また、凹部44bは、周方向に全周に亘って連続して設けられず部分的に設けられてもよい。展開薬ケース44は、複数の錘32が外周面44cに沿って円筒状に配置される。展開薬ケース44の軸方向における係合部44aを有する側と反対側の他端側(
図4中右側)の端面44dは、保護板33が配置される(
図2参照)。
【0063】
アルミシール45は、円筒部41aの軸方向における一端側(
図4中左側)の開口に貼付されることで開口を封止し、放出薬収納部41dに挿入された放出薬51を保持する。アルミシール45は、例えば、市販のアルミ製のシールであるが、アルミシール45の材質は、雷管13(
図1参照)の内部の火薬が燃焼することによる火種や燃焼ガスにより容易に破壊される材質であれば、アルミ製に限られず何でも良い。
【0064】
パッキン46は、ホルダ外筒41の周方向に取り付けられる、断面形状が、例えば、矩形状や円形状である環状の部材である。パッキン46の材質は、例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム等のゴムや、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂である。パッキン46は、ホルダ外筒41の溝部41fに収納保持される。なお、本実施形態では、パンキン46が2つ配置されているが、パッキン46の数は、溝部41fの数に応じて、1つでも、3つ以上であってもよい。
【0065】
パッキン46は、ホルダ外筒41の溝部41fに挿入保持された状態では、ホルダ外筒41の溝部41fから一部が露呈される。この状態で、飛翔体30(
図2参照)をケース本体11(
図1参照)に収納すると、パッキン46は、ホルダ外筒41の溝部41fの底面と、ケース本体11(
図1参照)の内径D1を有する内周面11f(
図1参照)との間で圧接された状態となる。これにより、飛翔体30(
図2参照)をケース10(
図1参照)の内部に収納した状態では、パッキン14(
図1参照)とパッキン46との間におけるケース10(
図1参照)の内部空間が気密に保持される。パッキン46は、放出薬51の燃焼ガスのガス漏れを抑止する。
【0066】
速火線47は、内部に、一例として黒色火薬を収納する。速火線47は、放出薬収納部41dと延時薬筒43とを連通する挿通孔48aに挿通される速火線47aと、延時薬筒43と展開薬ケース44の内部とを連通する挿通孔42eに挿通される速火線47bとに分かれる。なお、速火線47は、速火線47aと47bとに分かれず、一体であっても良く、速火線47は、速火線47aと47bとの何れか一方のみが配置されてもよい。
【0067】
速火線47aは、隔壁48が設けられたことによる延時薬52の着火性低下を低減させるために、挿通孔48aに挿入される。速火線47aは、放出薬51が着火されることにより着火し、挿通孔48aを伝った火が延時薬52に点火する。速火線47bは、延時薬筒43をホルダ内筒42に収納した状態では、係止部42dから外部に突出した状態となる。速火線47bは、展開薬ケース44に収納された展開薬53の内部に挿入された状態で保持される。速火線47bは、延時薬52が点火してから所定時間燃焼した後に着火し、挿通孔42eを伝った火が展開薬53に点火する。
【0068】
隔壁48は、放出薬収納部41dとホルダ内筒収納部41eとの間に設けられる。隔壁48の中央部分には、軸方向に速火線47aを挿通させる挿通孔48aが設けられる。隔壁48の材質は、ホルダ外筒41と同様であり、ホルダ外筒と一体成型される。隔壁48は、放出薬収納部41dとホルダ内筒収納部41eとの間を仕切り、射出時の圧力により延時薬筒43及び延時薬52が抜けることを抑制する。なお、隔壁48は、ホルダ外筒41とは別体として設けられてもよい。
【0069】
放出薬51は、燃焼時に発生する燃焼ガスにより、ケース10(
図1参照)の内部に収納される飛翔体30(
図2参照)をケース10の内部から射出するために設けられる。放出薬51は、例えば、黒色火薬、無煙火薬等である。放出薬51は、伝火孔12e(
図1参照)から収納空間12c(
図1参照)に伝播した雷管13(
図1参照)内の火薬の燃焼に基づいた火種により引火する。なお、雷管13(
図1参照)内の火薬の燃焼は、後述するガス筒発射器70(
図6参照)が有する不図示の撃鉄による打叩により発生する。
【0070】
放出薬51は、引火すると、燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、収納空間12c(
図1参照)の内周面と放出装置31との間の領域に充填されていく。なお、この領域に充填された燃焼ガスの圧力が所定値以上となることで、ケース10(
図1参照)の内部に収納される飛翔体30(
図2参照)がケース10の外部に向けて押し出される。なお、燃焼ガスは、請求項の射出用ガスの一例である。
【0071】
延時薬52は、延時薬筒43内に保持され、延時薬筒43とともにホルダ内筒42の延時薬筒収納部42bに収納される。延時薬52は、例えば、ボロン系延時薬、マンガン系延時薬等の火薬である。延時薬52は、放出薬51の引火及び燃焼に対して、展開薬53の引火及び燃焼を遅延させる。延時薬52は、放出薬51及び速火線47aから引火し、規定秒時(所定時間)燃焼後、速火線47bに点火する。なお、放出薬51の引火から展開薬53の引火までの遅延時間は、放出薬51及び延時薬52の薬量によって調整することが可能である。
【0072】
展開薬53は、展開薬ケース44の内部に保持される。展開薬53は、速火線47bの燃焼により引火して燃焼を開始し、燃焼時に燃焼ガスを発生する。展開薬53は、例えば黒色火薬、無煙火薬等である。なお、展開薬53が燃焼することで発生する燃焼ガスにより展開薬ケース44が破壊されるとともに、展開薬ケース44の外周面44cに配置される錘32が放射方向に飛散させる。なお、燃焼ガスは、請求項の飛散用ガスの一例である。
【0073】
図5は、
図2に示した錘32の一例を示す図である。
図5(a)は、
図2に記載された錘32の一例を示す斜視図である。
図5(b)は、
図2に記載された錘32が周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図5(c)は、
図2に記載された錘32が放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。
【0074】
図5(a)~
図5(c)に示すように、錘32は、本体部61と、つば部62とを有する。複数の錘32が周方向に組み合わされて配置されたときに、複数の本体部61は、円筒形状の内部空間S1を形成し、複数のつば部62は、内部空間S1よりも径が大きな円筒形状の内部空間S2を形成する。飛翔体30(
図2参照)が形成されるときには、内部空間S1には、放出装置31の展開薬ケース44が収納され、内部空間S2には、捕獲網34が収納される。
【0075】
本体部61は、複数の錘32が周方向に組み合わされて配置されたときに内周面となる位置に凸部63を有する。凸部63は、飛翔体30が形成されるときには、展開薬ケース44の外周面に周方向に連続する凹部44bと篏合され、錘32と放出装置31との分離や抜けが抑制される。なお、凸部63の形状は、
図5に示す形状には限られず、凹部44bの形状に合わせて適宜変更可能である。本体部61は、紐通し穴64と、紐通し溝65とを有し、不図示の紐部材が、紐通し穴64に挿通され、隣り合う錘32の紐通し溝65,65によって形成された孔65aを伝って、捕獲網34(
図2参照)の端部に取り付けられる。なお、凸部63は、請求項の第1凸部の一例である。
【0076】
つば部62は、複数の錘32が周方向に組み合わされて配置されたときに、軸方向となる部分に長さL1を有し、半径方向となる部分に厚さL2とを有する。つば部62は、複数の錘32が周方向に組み合わされて配置されたときに、内部空間S2に捕獲網34(
図2参照)が収納できるように、つば部の半径方向の厚さL2は、本体部の半径方向の厚さL3よりも薄くなっている。つば部62の軸方向の長さL1は、基準としては、例えば30mm~60mmであることが好ましいが、錘32の重さや捕獲網34の収納量により30mm以下や60mm以上で調整することが可能である。つば部62の半径方向の厚さL2は、基準としては例えば0.5mm~3.0mmであることが好ましいが、3.0mm以上にすれば圧縮強度が強くなるため、錘32の重さや捕獲網34の容量により3.0mm以上で調整することも可能である。
【0077】
なお、錘32は、本体部61の厚さL3とつば部62の厚さL2との差から形成される段差面66を有する。捕獲網34(
図2参照)が内部空間S2に収納されたときは、捕獲網34(
図2参照)は、段差面66と保護板33とに当接する。内部空間S1と内部空間S2とは、保護板33によって仕切られることにより分離され、展開薬ケース44内の展開薬53が発火したときに、発火の炎や燃焼ガスによって捕獲網34が破損することが抑制される。
【0078】
なお、放出装置31や捕獲網34(
図2参照)の大きさにより、錘32の厚さL2と厚さL3とを同一としてもよい。この場合、複数の錘32が周方向に配置されたときに、内部空間S1と内部空間S2とが形成されず、一つの内部空間Sが形成される。この場合、錘32には段差面66は形成されないが、長さL1の位置に保護板33が配置されるようにしても良い。
【0079】
<第1実施形態の動作>
次に、
図1から
図5に示す実施形態における捕獲網展開飛翔体30及び捕獲網展開飛翔装置1の動作について説明する。
【0080】
図6は、捕獲網展開飛翔体30を射出してから捕獲対象となる無人航空機を捕獲するまでの捕獲網展開飛翔体30の動作の一例を示す図である。
図6において、(a)は飛翔体30の射出を示し、(b)は飛翔体30の反転を示し、(c)は飛翔体30の安定飛翔を示し、(d)は捕獲網34の展開を示し、(e)は無人航空機80の捕獲及び落下を示す。
【0081】
図6(a)において、捕獲網展開飛翔装置1は、飛翔方向に対して前方にリボン37、捕獲網34及び錘32のつば部62が位置し、後方に放出装置31及び錘32の本体部61が位置した状態で、ガス筒発射器70に装填される。このとき、保護キャップ20は、取り外される。捕獲網展開飛翔装置1をガス筒発射器70に装填した状態で、ガス筒発射器70の不図示の引き金(トリガー)が動作されると、ガス筒発射器70が有する不図示の撃鉄(ハンマー)が移動する。撃鉄が移動すると、ガス筒発射器70に装填された捕獲網展開飛翔装置1のケース10に取り付けられた雷管13が撃鉄に叩かれ、雷管13の内部に収納された火薬が点火及び燃焼する。この燃焼による火炎や燃焼ガスは、伝火孔12eを介して放出装置31に貼付されたアルミシール45を破壊する(
図1、
図4参照)。
【0082】
そして、ホルダ外筒41の放出薬収納部41dに収納された放出薬51が引火及び燃焼して、燃焼ガスが発生する。ここで、ケース本体11とケースホルダ12との間は、パッキン14により気密に保持され、飛翔体30の放出装置31とケース本体11との間は、パッキン46により気密に保持される。このため、放出薬51が燃焼すると、燃焼により発生する燃焼ガスは、ケースホルダ12と放出装置31との間の収納空間12cに充填されていく。そして、収納空間12cに充填される燃焼ガスの圧力が所定値以上となることを受けて、飛翔体30がケース10から射出される。ケース10から射出された飛翔体30は、ガス筒発射器70の銃身の内部を移動した後、銃身の先端から斜め上方に射出される(
図1、
図4参照)。
【0083】
図6(b)において、ガス筒発射器70から斜め上方に射出された飛翔体30は、転倒モーメントの作用及び飛翔体30の重量バランスにより、
図6(b)の矢印方向に回転する。飛翔体30の回転により、折り畳まれたリボン37は、飛翔体30の飛翔方向に対して後方に徐々に伸びていく。リボン37が伸びていくことで、飛翔体30には、転倒モーメントだけでなく、リボン37の抗力によるモーメントが作用し始める。
【0084】
図6(c)において、放出装置31が前方に位置した状態まで飛翔体30が回転すると、リボン37が完全に伸びた状態となるので、リボン37の抗力によるモーメントが飛翔体30の空気抵抗による転倒モーメントよりも大きくなる。その結果、飛翔体30の回転が停止する。そして、射出時とは逆に、飛翔方向に対して前方に放出装置31及び錘32の本体部61が位置し、後方に捕獲網34及び錘32のつば部62が位置した状態で、リボン37を飛翔方向に対して後方になびかせながら飛翔体30が安定飛翔する。なお、本実施形態に係る飛翔体30の飛翔距離(有効射程)は、例えば、50mである。
【0085】
ここで、飛翔体30がケース10から射出されたときには、放出薬51が燃焼している。放出薬51の燃焼により、速火線47aが引火し、速火線47aの燃焼から引火されると、延時薬52が燃焼する。延時薬52が所定時間燃焼した後、速火線47bに引火し、速火線47bの燃焼から引火されると、展開薬53の燃焼が引き起こされる(
図1、
図4参照)。
【0086】
図6(d)において、展開薬53が燃焼されると、放出装置31の展開薬ケース44の内部に燃焼ガスが充填される。そして、展開薬ケース44の内部に充填された燃焼ガスの圧力が展開薬ケース44の耐力を超えると、展開薬ケース44が破壊され、燃焼ガスが外部に放出される。外部に放出される燃焼ガスは、展開薬ケース44の外周に配置された錘32を放射方向へと押圧する。ここで、飛翔体30は、外周面がフィルム36で被覆されている。錘32が放射方向に押圧される力は、例えば、錘32を放出装置31に固定する不図示の両面テープの粘着力や、フィルム36の耐力よりも大きい。従って、外部に放出される燃焼ガスに押圧される錘32は、放出装置31から外れ、同時にフィルム36を破り、飛翔方向に対する放射方向に飛散する(
図4参照)。
【0087】
錘32には、捕獲網34に取り付けられているため、錘32の飛翔体30の放射方向への飛散により、捕獲網34の外周縁が引っ張られ、捕獲網34が展開する(
図3参照)。一方、リボン37や、リボン37が固定される保護蓋35や、錘32が外れた放出装置31は、地上に落下する。
【0088】
図6(e)において、飛翔体30の飛翔方向に捕獲対象となる無人航空機(ドローン)80が飛行(浮遊)している場合には、捕獲網34は、飛翔体30の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に安定して展開される。飛翔体30にリボン37を設けることで、飛翔体30の飛翔姿勢が安定して、飛翔体30の飛翔距離を稼ぐことができるとともに、飛翔体30の飛翔方向に対して所定の角度の範囲で交差する面上に捕獲網34を安定して展開させることができる。その結果、展開された捕獲網34が確実に無人航空機80に絡まり、捕獲対象となる無人航空機80は、飛行(浮遊)が不能となる。そして、捕獲網34が絡まった無人航空機80は、その後落下する。
【0089】
<第1実施形態の作用効果>
図7は、
図1から
図6に示す実施形態における捕獲網展開飛翔体30の射出時の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
図7(a)は、
図1から
図6に示す実施形態における飛翔体30の射出前の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
図7(b)は、
図1から
図6に示す実施形態における飛翔体30の射出後の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。なお、
図7において、
図1から
図6に示す実施形態における構成と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図7において、説明に不要な構成は、一部省略されている。
【0090】
図7(a)に示すように、飛翔体30は、錘32と、捕獲網34と、保護蓋35と、フィルム36とを有する。錘32は、後述の比較例における錘32’(
図8参照)とは異なり、本体部61とつば部62とを有する。このため、捕獲網34は、複数の錘32のつば部62によって形成される内部空間S2の内部に収納されている。
【0091】
図7(b)に示すように、飛翔体30が射出されると、飛翔体30に負荷される圧縮荷重F1は、保護蓋35の全面に掛かり、錘32のつば部62に荷重F2が負荷される。これにより、錘32のつば部62の内部空間S2に収納されている捕獲網34への圧縮荷重F1は軽減され、捕獲網34の圧縮による放射方向への荷重負荷F4(
図8参照)は軽減される。これにより、捕獲網34の放射方向に掛かる力が軽減されるため、フィルム36が破損する可能性を従来よりも低減させることができる。
【0092】
以上、
図1から
図7に示す実施形態によれば、錘32につば部62が設けられたことにより、飛翔体30が形成されるときに、捕獲網34をつば部62の内部に収納することができる。これにより、錘32につば部62が設けられない場合よりも、捕獲網34に放射方向に掛かる力が軽減されるため、フィルム36が破損する可能性を従来よりも低減させることができる。このため、
図1から
図7に示す実施形態によれば、放出装置31の放出薬51の量を従来よりも増加させて、飛翔体30の有効射程を従来よりも長距離化させることができる。また、フィルム36の破損による飛翔体30の部品の落下の可能性も従来よりも低減させることができる。
【0093】
<比較例>
図8は、比較例における飛翔体30’の射出時の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
図8(a)は、比較例における飛翔体30’の射出前の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。
図8(b)は、比較例における飛翔体30’の射出後の圧縮荷重の掛かり方の一例を示す図である。なお、
図8において、
図1から
図7に示す実施形態における構成と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図8において、説明に不要な構成は、一部省略されている。なお、比較例の飛翔体30’は、従来の飛翔体30’の構成の一例を示す。
【0094】
図8(a)に示すように、飛翔体30’は、錘32’と、捕獲網34と、保護蓋35と、フィルム36とを有する。錘32’は、
図1から
図7に示す実施形態における錘32とは異なり、本体部61’のみを有し、つば部62を有さない。このため、捕獲網34は、直接フィルム36に包装されている。
【0095】
図8(b)に示すように、飛翔体30’が射出されると、飛翔体30’に負荷される圧縮荷重F3が捕獲網34に掛かり、圧縮荷重F3は捕獲網34の射出方向における放射方向に逃げる形となる。これにより、圧縮荷重F3により捕獲網34が圧縮され、捕獲網34が放射方向へ変形する。そして、捕獲網34の放射方向への変形による荷重負荷F4により、飛翔体30’を包装しているフィルム36が破損する。
【0096】
以上、
図8に示す比較例によれば、錘32’は、つば部62が設けられていない形状であるため、直接フィルム36に包装されている。このため、飛翔体30’は、捕獲網34の放射方向への変形により、フィルム36が破損してしまうという問題がある。これにより、飛翔体30’は、フィルム36の破損による部品の落下の問題もある。このため、従来の飛翔体30’では、放出装置31の放出薬51の量を従来よりも増加させることができず、飛翔体30’の有効射程を従来よりも長距離化させることができなかった。
【0097】
<第2実施形態>
以下、
図1から
図7に示す実施形態とは別の実施形態について説明する。
【0098】
図9は、別の実施形態に係る錘32Aの一例を示す図である。
図9(a)は、第2実施形態に係る錘32Aの一例を示す斜視図である。
図9(b)は、第2実施形態に係る複数の錘32Aが周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図9(c)は、第2実施形態に係る錘32Aが放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。なお、
図9において、
図1から
図7に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0099】
図9(a)~
図9(c)に示すように、第2実施形態に係る錘32Aは、
図5に示す錘32の構成に加えて凸部67Aを有する。凸部67Aは、錘32Aの本体部61Aとつば部62Aとの境目における本体部61A側であって、複数の錘32Aが周方向に組み合わされて配置されたときに内周面となる位置に設けられる。凸部67Aが設けられたことにより、段差面66Aは、
図5に示す段差面66よりも中心方向に面積が大きくなる。そして、複数の錘32Aが周方向に配置されたときに、凸部67Aの先端によって孔68Aが形成される。孔68Aには、保護板33Aが配置される。なお、つば部62Aは、
図5に示すつば部62と同様の構成を有する。また、凸部67Aは、請求項の第2凸部の一例である。
【0100】
従って、
図9に示す実施形態によれば、凸部67Aが設けられたことにより、展開薬53が燃焼し、展開薬ケース44が破壊されたときに、展開薬53の燃焼により捕獲網34が燃焼して破損することを抑制することができる。また、
図9に示す実施形態では、凸部67Aは、展開薬ケース44と捕獲網34との間に配置される保護板33の機能を兼ねることができる。このため、
図9に示す実施形態では、
図1から
図7に示す実施形態における保護板33よりも保護板33Aの大きさを小さくすることができる。また、凸部67Aの大きさすなわち孔68Aの大きさによっては、保護板33Aの配置を省略することができる。なお、
図9に示す実施形態においても、
図1から
図7に示す実施形態と同様の効果も奏する。
【0101】
<第3実施形態>
図10は、別の実施形態に係る錘32Bの一例を示す図である。
図10(a)は、第3実施形態に係る錘32Bの一例を示す斜視図である。
図10(b)は、第3実施形態に係る複数の錘32Bが周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図10(c)は、第3実施形態に係る錘32Bが放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。なお、
図10において、
図1から
図7及び
図9に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0102】
図10(a)~
図10(c)に示すように、第3実施形態に係る錘32Bの本体部61Bにおける凸部67Bは、
図9に示す錘32Aにおける凸部67Aよりも突起がさらに延長された形状であり、長手方向に直交する断面形状が三角形状となっている。凸部67Bが設けられたことにより、段差面66Bは、
図9に示す段差面66Aよりも中心方向に面積が大きくなる。そして、複数の錘32Bが周方向に配置されたときに、凸部67Bの三角形状の先端同士は内部で突き当てられ、
図9に示す孔68Aは形成されず、段差面66Bは、面一の平面を形成する。このため、凸部67Bが設けられることにより、錘32Bにより形成される内部空間S1と内部空間S2とは、凸部67Bにより完全に分離され、保護板33の配置を省略することができる。なお、つば部62Bは、
図5に示すつば部62と同様の構成を有する。また、凸部67Bは、請求項の第2凸部の一例である。
【0103】
従って、
図10に示す実施形態によれば、凸部67Bが設けられたことにより、展開薬53が燃焼し、展開薬ケース44が破壊されたときに、展開薬53の燃焼により捕獲網34が燃焼して破損することを抑制することができる。また、
図10に示す実施形態では、凸部67Bは、展開薬ケース44と捕獲網34との間に配置される保護板33の機能を兼ねることができる。そして、
図10に示す実施形態では、内部空間S1と内部空間S2とが凸部67Bによって完全に分離されるため、保護板33を配置しなくても、展開薬ケース44と捕獲網34との干渉を抑制することができる。なお、
図10に示す実施形態においても、
図1から
図7に示す実施形態と同様の効果も奏する。
【0104】
<第4実施形態>
図11は、別の実施形態に係る錘32Cの一例を示す図である。
図11(a)は、第4実施形態に係る錘32Cの一例を示す斜視図である。
図11(b)は、第4実施形態に係る複数の錘32Cが周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図11(c)は、第4実施形態に係る錘32Cが放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。なお、
図11において、
図1から
図7及び
図9、
図10に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0105】
図11(a)~
図11(c)に示すように、第4実施形態に係る錘32Cは、本体部61Cに、
図9に示す錘32Aにおける凸部63が設けられず、凸部67Aが設けられる。なお、つば部62Cは、
図5に示すつば部62と同様の構成を有する。従って、
図11に示す実施形態によれば、凸部63が設けられないことにより、錘32Cは、例えば、展開薬ケース44に凹部44bが設けられていなかった場合や、凹部44bの位置や数が相違する場合にも、放出装置31に取り付けることができる。なお、
図11に示す実施形態においても、
図1から
図7及び
図9に示す実施形態と同様の効果も奏する。
【0106】
<第5実施形態>
図12は、別の実施形態に係る錘32Dの一例を示す図である。
図12(a)は、第5実施形態に係る錘32Dの一例を示す斜視図である。
図12(b)は、第5実施形態に係る複数の錘32Dが周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図12(c)は、第5実施形態に係る錘32Dが放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。なお、
図12において、
図1から
図7及び
図9から
図11に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0107】
図12(a)~
図12(c)に示すように、第5実施形態に係る錘32Dは、本体部61Dに、
図5に示す錘32における凸部63が長手方向の断面が直角三角形状のV字形状となった凸部63Dを有する。凸部63Dは、放出装置31との抜け抑制の作用を有するため、射出方向における前方が直角となる断面直角三角形状の形状を有している。なお、凸部63Dは、請求項の第1凸部の一例である。なお、つば部62Dは、
図5に示すつば部62と同様の構成を有する。
【0108】
従って、
図12に示す実施形態によれば、展開薬ケース44の凹部44bと錘32Dの凸部63Dとが係止され、錘32が周方向に組み合わされて展開薬ケース44の周方向に配置されたときに、放出装置31から錘32Dが抜けることが抑制される。なお、凸部63Dの形状は、展開薬ケース44の凹部44bと係止され、放出装置31から錘32Dが抜けることが抑制される形状であれば、断面直角三角形状のV字形状には限られない。また、凸部63Dの形状は、展開薬ケース44の凹部44bの形状や数によっても適宜変更可能である。なお、
図12に示す実施形態においても、
図1から
図7及び
図9に示す実施形態と同様の効果も奏する。
【0109】
<第6実施形態>
図13は、別の実施形態に係る錘32Eの一例を示す図である。
図13(a)は、第6実施形態に係る錘32Eの一例を示す斜視図である。
図13(b)は、第6実施形態に係る複数の錘32Eが周方向に組み合わされて配置された状態の一例を示す斜視図である。
図13(c)は、第6実施形態に係る錘32Eが放出装置31に取り付けられたときの状態の一例を示す断面図である。なお、
図13において、
図1から
図7及び
図9から
図12に示す実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0110】
図13(a)~
図13(c)に示すように、第6実施形態に係る錘32Eは、本体部61Eに、
図5に示す錘32等における凸部63も、
図9に示す錘32A等における凸部67Aや
図10に示す凸部67Bも設けられていない。なお、つば部62Eは、
図5に示すつば部62と同様の構成を有する。従って、
図13に示す実施形態によれば、錘32Eは、凸部63が設けられていないため、展開薬ケース44の凹部44bの位置や数や形状に拘わらず、放出装置31に取り付けることができる。なお、
図13に示す実施形態においても、
図1から
図7及び
図11に示す実施形態と同様の効果を奏する。
【0111】
<飛翔試験による検証>
以下、例えば
図1から
図7及び
図9から
図13に示す、つば部を有する捕獲網収納型(網収納型)の錘が用いられた飛翔体と、例えば
図8に示す、つば部の無い捕獲網未収納型(網未収納型)の錘が用いられた飛翔体とを用いて行われた飛翔試験について説明する。
【0112】
図14は、飛翔試験の試験配置を上面から見た状況を示す図である。
図14に示すように、飛翔試験は、発射器(ガス筒発射器)と、発射器から飛翔方向における所定距離離れた場所の高速度カメラとを配置して行われた。なお、安全のため、飛翔方向における側面には遮壁が配置された。飛翔試験では、試験者が、発射器から射出された飛翔体を高速度カメラで撮影し、撮影された映像を確認することにより、展開薬が作動する前のフィルムの破損状況が調査された。
【0113】
図15は、飛翔試験で用いられた飛翔体諸元を示す表である。
図15に示すように、試験試料として、網収納型の錘が用いられた飛翔体が使用され、比較試料として、網未収納型の錘が用いられた飛翔体が使用された。試験試料に用いられた網収納型の錘は、つば部の長さが30mm~60mmのものが用いられた。また、試験試料に用いられた網収納型の錘は、つば部の厚さが0.5mm~3.0mmのものが用いられた。比較試料に用いられた網未収納型の錘は、つば部が無いものが用いられた。飛翔体を包装するフィルムの厚さは、試験試料及び比較試料共に0.05mmのものが2枚重ねられ総厚が0.10mmになるものが用いられた。また、飛翔体に用いられた放出薬は、試験試料及び比較試料共に0.4gの無煙火薬が用いられた。なお、本飛翔試験におけるつば部の長さ及び厚さは、
図5に示すつば部62の長さL1及び厚さL2と同義である。
【0114】
図16は、射出時の飛翔体映像からのフィルム破損状況についての試験結果を示す表である。
図16に示すとおり、つば部を有する網収納型の錘が用いられた試験試料は、長さ30mmかつ厚さ0.5mmのつば部を有するNo.1から、長さ60mmかつ厚さ3.0mmのつば部を有するNo.10まで、全てフィルムの破損は認められなかった。すなわち、つば部を有する網収納型の錘が用いられた試験試料の場合、つば部の長さ及び厚さが何れであってもフィルムの破損が認められず、結果は良好であった。一方、
図16に示すとおり、つば部を有さない網未収納型の形状の錘が用いられた比較試料は、フィルムの破損が認められるものがあった。
【0115】
以上の試験結果から、飛翔体に用いる錘を、捕獲網を収納する形状の錘にすることで、飛翔体を包装(カバー)しているフィルムの破損を防止することができることがわかった。また、少なくとも、つば部の長さが30mm~60mm、厚さが0.5mm~3.0mmの錘であれば、飛翔体を包装(カバー)しているフィルムの破損を防止することができることがわかった。
【0116】
なお、つば部の長さは、錘の質量及び捕獲網の収納量により30mm以下又は60mm以上で調整することも可能であると考えられる。また、つば部の厚さにおいても、3.0mm以上の厚さの錘は3.0mm以下の厚さの錘よりも強度が増すため、圧縮荷重による錘の破損は無いと言える。このため、つば部の厚さは、錘の質量及び捕獲網の収納量によっては3.0mm以上に調整することも可能であると考えられる。
【0117】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0118】
1…捕獲網展開飛翔装置;10…ケース;11…ケース本体;11a…飛翔体収納部;11b…ホルダ収納部;11c…段差面;11d…端面;11e…内周面;11f…内周面;12…ケースホルダ;12a…フランジ部;12b…溝部;12c…収納空間;12d…雷管収納空間;12e…伝火口(フラッシュホール);13…雷管;14…パッキン;20…保護キャップ;30,30’…捕獲網展開飛翔体(飛翔体);31…放出装置;32,32A,32B,32C,32D,32E,32’…錘;33,33A…保護板;34,34A,34B…捕獲網;35,35a,35b…保護蓋;36,36a,36b…フィルム;37…リボン;41…ホルダ外筒;41a,41b…円筒部;41c…段差面;41d…放出薬収納部;41e…ホルダ内筒収納部;41f…溝部;42…ホルダ内筒;42a…端面;42b…延時薬筒収納部;42c…端面;42d…係止部;42e…挿通孔;43…延時薬筒;44…展開薬ケース;44a…係合部;44b…凹部;44c…外周面;44d…端面;45…アルミシール;46…パッキン;47,47a,47b…速火線;48…隔壁;48a…挿通孔;51…放出薬;52…延時薬;53…展開薬;61,61A,61B,61C,61D,61E,61’…本体部;62,62A,62B,62C,62D,62E…つば部;63,63D…凸部;64…紐通し穴;65…紐通し溝;65a…孔;66,66A,66B…段差面;67A,67B…凸部;68A…孔;70…ガス筒発射器(発射器);80…無人航空機(ドローン);D1,D2,D3…内径;D4,D5…外径;F1…圧縮荷重;F2…荷重;F3…圧縮荷重;F4…荷重負荷;L1…長さ;L2,L3…厚さ;S,S1,S2…内部空間