(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】物体検出装置および物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240618BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240618BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20240618BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650A
G06T7/60 200G
(21)【出願番号】P 2020190234
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075638(JP,A)
【文献】特開2018-032074(JP,A)
【文献】特開2004-271513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検出装置(100)であって、
物体を表す複数の点を含む点群情報と、前記点群情報を用いて算出され前記物体を直線で表す線情報と、を取得する取得部(111)と、
前記点群情報を用いて
、前記物体を前記物体検出装置の検出方向から見た前記直線の左端と右端とを決定する決定部であって、前記点群情報のうち前記直線からの最短距離が予め定められた閾値距離以下の点のうち、最も左に位置する点である最左点を用いて前記左端を決定し、最も右に位置する点である最右点を用いて前記右端を決定する決定部(112)と、を備える、物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置であって、
前記決定部は、
前記最左点と前記直線とが垂直に交わる位置を前記左端に決定し、
前記最右点と前記直線とが垂直に交わる位置を前記右端に決定する、物体検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の物体検出装置であって、
前記決定部は、前記直線が水平になるように前記点群情報の座標を回転させてから前記最短距離を求める、物体検出装置。
【請求項4】
物体検出方法であって、
物体を表す複数の点を含む点群情報と、前記点群情報を用いて算出され前記物体を直線で表す線情報と、を取得する工程と、
前記点群情報を用いて
、前記物体を検出する方向から見た前記直線の左端と右端とを決定する工程であって、
前記点群情報のうち前記直線からの最短距離が予め定められた閾値距離以下の点において、最も左に位置する点である最左点を用いて前記左端を決定する工程と、
前記点群情報のうち前記直線からの最短距離が予め定められた閾値距離以下の点のうち、最も右に位置する点である最右点を用いて前記右端を決定する工程と、を備える、物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を検出する技術として占有グリッドマッピング(Occupancy Grid Mapping(OGM))が知られている。特許文献1には、電波レーダによってガードレール等の路側物の位置を点群で検出し、検出した点群を用いて近似曲線を算出する技術が記載されている。特許文献1は、この近似曲線を用いて、道路形状を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
OGMによって連続している物体を線分として検出する場合、対象物体とは異なる物体の点を用いて線分の端点を決定する場合がある。この場合、線分が表す物体が、実際の物体と乖離する恐れがある。そのため、精度良く物体を線分として検出できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、物体検出装置(100)が提供される。この物体検出装置は、物体を表す複数の点を含む点群情報と、前記点群情報を用いて算出され前記物体を直線で表す線情報と、を取得する取得部(111)と、前記点群情報を用いて、前記物体を前記物体検出装置の検出方向から見た前記直線の左端と右端とを決定する決定部であって、前記点群情報のうち前記直線からの最短距離が予め定められた閾値距離以下の点のうち、最も左に位置する点である最左点を用いて前記左端を決定し、最も右に位置する点である最右点を用いて前記右端を決定する決定部(112)と、を備える。
【0006】
この物体検出装置によれば、決定部は、点群情報のうち直線からの最短距離が閾値距離以下の点を用いて、直線の左端と右端とを決定する。そのため、精度良く物体を線分として検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】物体検出装置の構成の概要を示す説明図である。
【
図2】物体検出処理の一例を示したフローチャートである。
【
図5】直線と点群情報とを回転させる一例を示す説明図である。
【
図6】直線から閾値距離の範囲の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1に示すように、本実施形態において、物体検出装置100は、車両10に搭載される。車両10は、物体検出装置100と、カメラ122と、物体センサ124とを備える。
【0009】
カメラ122は、車両10の前方を撮像して画像を生成する。カメラ122が撮像した画像である撮像画像は、点群である複数の画素データによって構成される。
【0010】
物体センサ124は、検知範囲に存在する複数の物体との距離を測定する。物体センサ124として、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。物体センサ124は、3次元の座標として物体を検出する。検出した物体の位置の情報である位置情報から点群を取得する。
【0011】
物体検出装置100は、物体を線分として検出する。「物体」とは、ある単体の物だけでなく、互いの距離が予め定められた距離以内である複数の物体からなる連続構造物を含む概念である。物体には、例えば、ガードレールや家等の建造物、ブロック塀等の壁面が含まれる。物体は、車両や歩行者等の移動体を含まないことが好ましい。また、空き缶や雑誌等の予め定められた高さよりも小さい物体も含まないことが好ましい。予め定められた高さとは、例えば、車両が乗り越えることが出来る大きさである。本実施形態において、物体検出装置100は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、取得部111と、決定部112と、して機能する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。
【0012】
取得部111は、物体を表す複数の点を含む点群情報と、点群情報を用いて算出され物体を直線で表す線情報と、を取得する。本実施形態において、取得部111は、カメラ122が撮像した撮像画像および物体センサ124が検出した位置情報から点群情報を取得する。例えば、取得部111は、セマンティックセグメンテーション等の画像解析技術を用いて、撮像画像から物体を抽出し、その物体の輪郭を検出して25cm毎に点を設定した点群情報を取得する。取得部111は、例えば、最小二乗法や最小メジアン法(Least Median of Squares(LMedS)を用いて、取得部111によって取得された点群情報から算出される線情報を取得する。本実施形態において、取得部111は、取得した点群情報から線情報を算出し、取得する。
【0013】
決定部112は、点群情報を用いて線情報における直線の左端と右端とを決定する。左右端の決定の詳細については後述する。
【0014】
図2に示す物体検出処理は、物体検出装置100が物体を検出する一連の処理である。より具体的には、物体を線分として検出する処理である。この処理において、物体検出装置100は、線情報が表す直線の左端と右端とを決定する。この処理は車両10の走行中、物体検出装置100により繰り返し実行される処理であり、例えば、100ms毎に繰り返し実行される処理である。
【0015】
ステップS100で、取得部111は、点群情報を取得する。より具体的には、取得部111は、カメラ122が撮影した撮像画像や、物体センサ124が検出した物体の位置情報から、点群情報を取得する。
【0016】
ステップS110で、取得部111は、線情報を取得する。より具体的には、取得部111は、ステップS100で取得した点群情報から線情報を取得する。
【0017】
図3に示すように、車両10の前方には物体20がある。物体20は、中央分離帯である。
図4に示すように、物体20を表す複数の点群情報から、物体20を表す直線LNが算出される。
【0018】
ステップS120で、決定部112は、カウンタ変数nを1に設定する。
【0019】
ステップS130で、決定部112は、第n最短距離dn(nは自然数)を算出する。「第n最短距離」とは、ステップS100で取得した点群情報におけるn番目の点からステップS110で取得した線情報における直線LNまでの最短距離である。点群情報における何番目の点において最短距離を求めるかは、ステップS120で設定したカウンタ変数nを用いて決定する。
【0020】
図5に示すように、本実施形態において、決定部112は、直線LNが水平になるように、直線LNと点群情報におけるn番目の点の座標とを回転させてから第n最短距離dnを求める。例えば、決定部112は、
水平方向に対する直線LNの傾きを求め、回転行列を用いて直線LNとn番目の点の座標を変換する。
図5は、n=1の場合を示している。決定部112は、直線LNが水平になるように、直線LNと点群情報における1番目の点P1である点P1との座標を回転させて、最短距離d1を求める。
【0021】
ステップS140で、決定部112は、ステップS130で算出した第n最短距離dnが予め定められた閾値距離dth以下か否かを判定する。つまり、
n番目の点が、直線LNから予め定められた範囲の中にあるか否かを判定する。閾値距離dthは、例えば4mである。
図6において、直線LNから閾値距離dth以下の範囲はハッチングを付している。ステップS140において、決定部112は、n番目の点がハッチングが付された領域内に位置するか否かを判定している。第n最短距離dnが閾値距離dth以下の場合(ステップS140:YES)、すなわち、n番目の点がハッチングが付された領域内に位置する場合、ステップS150の処理に進む。一方、第n最短距離dnが閾値距離dthより大きい場合(ステップS140:NO)、すなわちn番目の点がハッチングが付された領域外に位置する場合、ステップS170の処理に進む。
【0022】
ステップS150で、決定部112は、左端を決定する。本実施形態において、決定部112は、最も左に位置する点である最左点とステップS110で取得した線情報における直線LNとが垂直に交わる位置を左端に決定する。「最左点」とは、車両10から見て最も左側に位置する点である。本実施形態において、決定部112は、物体検出処理において、今まで最短距離を算出した点群情報における点のうち最も左側に位置する点を最左点とする。そのため、最左点は、ステップS150の処理の度に更新されうる。より具体的には、決定部112は、n番目の点が最左点であるか否かを判定し、最左点である場合、左端を更新する。一方、n番目の点が最左点でない場合、左端を更新しない。
【0023】
例えばカウンタ変数n=1の場合、決定部112は、点群情報における1番目の点を最左点であると判定し、左端を更新する。カウンタ変数n=2の場合、決定部112は、最左点である点群情報における1番目の点と、点群情報における2番目と、を比較する。点群情報における1番目の点の方が、点群情報における2番目の点よりも左側に位置する場合、決定部112は、左端を更新しない。
【0024】
ステップS160で、決定部112は、右端を決定する。本実施形態において、決定部112は、最も右に位置する点である最右点とステップS110で取得した線情報における直線とが垂直に交わる位置を右端に決定する。「最右点」とは、車両10から見て最も右側に位置する点である。本実施形態において、決定部112は、物体検出処理において、今まで最短距離を算出した点群情報における点のうち最も右側に位置する点を最右点とする。そのため、最右点は、ステップS160の処理の度に更新されうる。より具体的には、決定部112は、n番目の点が最右点であるか否かを判定し、最右点である場合、右端を更新する。一方、n番目の点が最右点でない場合、右端を更新しない。なお、ステップS150とS160とはこの順に限らず、任意の順で行うことができ、並行して行ってもよい。
【0025】
ステップS170で、決定部112は、ステップS100で取得した点群情報における全点において最短距離の算出が完了したか否か判別する。最短距離の算出が完了した場合、つまりnが点群情報における点の数と等しい場合(ステップS170:YES)、ステップS180の処理に進む。一方、最短距離の算出が完了していない場合、つまりnが点群情報における点の数より小さい場合(ステップS170:NO)、ステップS175においてnを1インクリメントし、ステップS130の処理に戻る。すなわち、全最短距離の算出が完了するまで、ステップS130~S170の処理を繰り返す。
【0026】
ステップS180で、物体検出装置100は、物体検出装置100の検出結果を用いて処理を行う装置に、ステップS110で取得した線情報とステップS150で決定した左端とステップS160で決定した右端とを含む情報を出力する。
【0027】
以上で説明した本実施形態の物体検出装置100によれば、決定部112は、点群情報のうち、点群情報を用いて生成された直線LNからの最短距離が閾値距離dth以下の点を用いて、直線LNの左端と右端とを決定する。そのため、決定部112は、直線LNから予め定められた範囲の中にある点群情報を用いて物体20を線分として検出できる。そのため、精度良く物体20を線分として検出できる。
【0028】
また、決定部112は、最左点と直線LNとが垂直に交わる位置を左端に決定し、最右点と直線LNとが垂直に交わる位置を右端に決定する。そのため、線分の傾きに応じて左右端を定めることが出来る。
【0029】
また、決定部112は、直線LNが水平になるように点群情報におけるn番目の点の座標を回転させてから第n最短距離dnを求める。そのため、煩雑な演算を用いることなく、第n最短距離dnを求めることができる。
【0030】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、取得部111は、カメラ122が撮像した画像や物体センサ124が検出した測距情報から点群情報を取得している。また、点群情報から直線情報を取得している。この代わりに、取得部111は、カメラ122や物体センサ124から、直接点群情報および直線情報を取得してもよい。
【0031】
(B2)上記実施形態において、決定部112は、ステップS170(
図2)において、点群情報における全点において最短距離の算出が完了したか否か判別している。この代わりに、決定部112は、予め定められた範囲にある点のみを、最短距離を算出する対象としてもよい。例えば、車両10の走行予定経路上における点のみを対象としてもよい。
【0032】
(B3)上記実施形態において、決定部112は、最左点と直線LNとが垂直に交わる位置を左端に決定し、最右点と直線LNとが垂直に交わる位置を右端に決定している。この代わりに、決定部112は、最左点から垂直に下ろした線と直線LNとが交わる位置を左端に決定し、最右点から垂直に下ろした線と直線LNとが交わる位置を右端に決定してもよい。
【0033】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【0034】
本開示に記載の制限部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の取得部及び決定部、その手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制限部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…車両、20…物体、100…物体検出装置、111…取得部、112…決定部、122…カメラ、124…物体センサ