(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20240618BHJP
F04B 27/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F04B49/02 331D
F04B27/02 M
(21)【出願番号】P 2020196938
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】古田土 誠一
(72)【発明者】
【氏名】圷 康輔
(72)【発明者】
【氏名】保科 壮希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 なつ美
(72)【発明者】
【氏名】池上 哲生
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227878(JP,A)
【文献】特開昭53-137408(JP,A)
【文献】特開2020-002854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
筒状であり、内部と外部とを連通可能な第1吸気通路および第1排気通路を有する第1シリンダと、
筒状であり、内部と外部とを連通可能な第2吸気通路および第2排気通路を有する第2シリンダと、
前記駆動源の駆動力で回転する回転軸と、
前記回転軸の回転により前記第1シリンダ内を第1の方向に往復動可能に収容され、前記第1シリンダ内における前記第1の方向の上死点側に第1空気室を形成する第1ピストンと、
前記回転軸の回転によ
り前記第2シリンダ内を第2の方向に往復動可能に収容され、前記第2シリンダ内における前記第2の方向の上死点側に第2空気室を形成
し、前記第1ピストンが上死点側に移動する時に前記第1ピストンと連動して下死点側に移動する第2ピストンと、
前記第1排気通路と前記第2吸気通路とを接続し、前記第1空気室から流出された空気を前記第2空気室へ流入させる接続通路と、
を有し、
前記第1シリンダは、前記第1シリンダの内部と外部とを連通可能な第1空気通路を備え、
前記第2シリンダは、前記第2シリンダの内部と外部とを連通可能な第2空気通路を備え、
前記第2空気通路は、前記第2ピストンが所定位置より下死点側に位置する時には前記第2空気室と連通し、かつ、前記第2ピストンが前記所定位置より上死点側に位置する時には前記第2ピストンによって前記第2空気室との連通が遮断され、
前記第1空気通路は、少なくとも
前記第2ピストンが前記所定位置より上死点側に位置する時に、前記第1空気室と連通する、作業機。
【請求項2】
前記所定位置は、前記第2の方向における前記第2空気室の中央部である、請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記第2空気通路は、前記第2ピストンが下死点に到達した時に前記第2シリンダの内部と外部とが連通する状態となる位置に設けられている、請求項2記載の作業機。
【請求項4】
前記第2シリンダにおいて前記第2ピストンが下死点と上死点との間を一往復する際に、該一往復に掛かる時間の少なくとも半分の時間は、前記第2シリンダの内部と外部との連通が前記第2ピストンによって遮断された状態で前記第2ピストンは移動する、請求項1乃至3の何れか1項記載の作業機。
【請求項5】
前記第1空気通路は、前記第1の方向における前記第1空気室の中央部より上死点側に設けられている、請求項1記載の作業機。
【請求項6】
前記第1空気通路は、前記第1ピストンが上死点に到達した時にも前記第1シリンダの内部と外部とが連通する状態となる位置に設けられている、請求項5記載の作業機。
【請求項7】
前記第2空気室で前記第2ピストンによって圧縮された空気の圧力は、前記第1空気室で前記第1ピストンによって圧縮された空気の圧力より大きい、請求項1乃至6の何れか1項記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機などの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、空気を圧縮し、この圧縮空気をタンクに貯留することが可能な空気圧縮機が知られている。さらに、上記空気圧縮機の中には、低圧側のシリンダと高圧側のシリンダを有することで、2段階で空気の圧縮を行う空気圧縮機がある。
【0003】
上記のような2段階で空気の圧縮を行う空気圧縮機の一例として、高圧側のシリンダに空気抜きのための通路が設けられた空気圧縮機が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気圧縮機において、シリンダから吐出される空気の圧力を確保するためには、ピストンが上死点に近づく過程で、シリンダに設けられた空気抜きのための通路が閉塞されることが望ましい。一方で、通路がピストンによって閉塞された状態でモータが停止すると、空気圧縮室に残った空気の圧力によりモータが再始動できなくなってしまう虞がある。
【0006】
特許文献1に記載された空気圧縮機では、高圧側のシリンダには空気抜きのための通路が設けられているものの、低圧側のシリンダには空気抜きのための通路が設けられていない。
【0007】
したがって、モータを停止させてピストンを止めた際、低圧側の空気圧縮室の圧力が高くなっていると、モータを再始動させてピストンを動かそうとしても低圧側の空気圧縮室の空気の圧力に負けてピストンが動き出せず、モータを再始動できなくなる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、駆動源の停止後の再始動性を確保しつつ性能の向上が図られた作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態の作業機は、駆動源と、筒状であり、内部と外部とを連通可能な第1吸気通路および第1排気通路を有する第1シリンダと、筒状であり、内部と外部とを連通可能な第2吸気通路および第2排気通路を有する第2シリンダと、前記駆動源の駆動力で回転する回転軸と、前記回転軸の回転により前記第1シリンダ内を第1の方向に往復動可能に収容され、前記第1シリンダ内における前記第1の方向の上死点側に第1空気室を形成する第1ピストンと、前記回転軸の回転により前記第2シリンダ内を第2の方向に往復動可能に収容され、前記第2シリンダ内における前記第2の方向の上死点側に第2空気室を形成し、前記第1ピストンが上死点側に移動する時に前記第1ピストンと連動して下死点側に移動する第2ピストンと、前記第1排気通路と前記第2吸気通路とを接続し、前記第1空気室から流出された空気を前記第2空気室へ流入させる接続通路と、を有し、前記第1シリンダは、前記第1シリンダの内部と外部とを連通可能な第1空気通路を備え、前記第2シリンダは、前記第2シリンダの内部と外部とを連通可能な第2空気通路を備え、前記第2空気通路は、前記第2ピストンが所定位置より下死点側に位置する時には前記第2空気室と連通し、かつ、前記第2ピストンが前記所定位置より上死点側に位置する時には前記第2ピストンによって前記第2空気室との連通が遮断され、前記第1空気通路は、少なくとも前記第2ピストンが前記所定位置より上死点側に位置する時に、前記第1空気室と連通する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業機の駆動源の停止後の再始動性を確保しつつ作業機の性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の一例である空気圧縮機を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す空気圧縮機の内部構造を示す平面図である。
【
図4】
図1に示す空気圧縮機の一部を破断して内部構造を示す正面図である。
【
図5】
図1に示す空気圧縮機のクランクケース内の構造を示す断面図である。
【
図6】
図1に示す空気圧縮機の一次側のシリンダに設けられた第1空気通路の構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のC-C断面図である。
【
図7】
図1に示す空気圧縮機の二次側のシリンダに設けられた第2空気通路の構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のD-D断面図である。
【
図8】(a)、(b)、(c)はそれぞれ
図1に示す空気圧縮機のピストン動作を示す断面図である。
【
図9】
図1に示す空気圧縮機の一次側のシリンダにおける吸気の状態を示す部分断面図である。
【
図10】
図1に示す空気圧縮機の一次側のシリンダに設けられた第1空気通路の第1変形例の構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のE-E断面図である。
【
図11】
図1に示す空気圧縮機の一次側のシリンダに設けられた第1空気通路の第2変形例の構造を示す断面図である。
【
図12】(a)、(b)、(c)はそれぞれ
図11に示す第2変形例のピストン動作を示す断面図である。
【
図13】
図1に示す空気圧縮機の一次側のシリンダに設けられた第1空気通路の第3変形例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態の作業機について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施の形態では、作業機の一例として、空気圧縮機10を取り上げて説明する。空気圧縮機10の一例が、
図1、
図2、
図3および
図4に示されている。なお、各図に示される同一の要素、または同等の要素には、それぞれ同一の符号を付してある。
【0014】
空気圧縮機10は、低圧側(一次側)のシリンダと高圧側(二次側)のシリンダを有しており、空気を2段階で圧縮可能な圧縮機である。したがって、空気圧縮機10は、低圧側の第1圧縮部14と高圧側の第2圧縮部15とを備えている。そして、低圧側の第1圧縮部14で圧縮された空気を高圧側の第2圧縮部15に送り、第2圧縮部15でさらに高圧に圧縮された空気を空気タンク17,18に貯留する構造となっている。
【0015】
なお、空気タンク17,18は、金属製であるとともに、接続アーム70によって接続されている。また、空気タンク17,18は、共に筒形状であり、かつ、空気タンク17の中心線A1と、空気タンク18の中心線A2とが、略平行になるように配置されている。そして、空気タンク17,18には複数の脚部19がそれぞれ取り付けられており、これら複数の脚部19は、空気圧縮機10の設置場所20に接触する。
【0016】
また、空気圧縮機10は、フレーム11、カバー12、電動モータ13および制御部16を有している。フレーム11は、金属製であり、かつ、空気タンク17と空気タンク18とに跨って取り付けられている。フレーム11は、電動モータ13、第1圧縮部14、第2圧縮部15を支持している。
【0017】
カバー12は、一例として合成樹脂製である。カバー12は、重力の作用方向である鉛直方向において、空気タンク17,18の上部に取り付けられている。具体的には、空気タンク17,18のそれぞれには、複数のブラケット71が中心線A1,A2に沿った方向に間隔をおいて設けられており、カバー12は、複数のブラケット71に対して固定要素、例えば、ねじ部材93によって固定されている。
【0018】
グリップ22,23が、カバー12の外部に露出して設けられている。グリップ22,23は、中心線A1,A2に沿った方向に間隔をおいて設けられ、グリップ22,23は、接続アーム70にそれぞれ固定されている。空気圧縮機10は可搬式であり、作業者はグリップ22,23を両手で掴んで空気圧縮機10を持ち上げ、かつ、運搬することができる。
【0019】
電動モータ13、第1圧縮部14および第2圧縮部15は、カバー12の内部に設けられている。つまり、電動モータ13、第1圧縮部14および第2圧縮部15は、カバー12によって覆われている。
【0020】
さらに、回転軸であるシャフト25を収容する容器として、クランクケース24がカバー12の内部に設けられている。すなわち、クランクケース24もカバー12によって覆われており、クランクケース24はフレーム11に固定されている。
図3に示すように、クランクケース24は、中心線A1,A2に沿った方向で第1圧縮部14と第2圧縮部15との間に設けられている。
【0021】
クランクケース24は金属製であり、シャフト25がクランクケース24の内部から外部に亘って配置されている。中心線B1は、シャフト25の回転中心を表す仮想線である。空気圧縮機10を平面視すると、中心線B1は、中心線A1,A2に対して所定角度で交差、例えば、略90度の角度で交差している。クランクケース24の外部に空気タンク17,18が設けられている。
【0022】
また、駆動源である電動モータ13は、固定子26および回転子27を有する。固定子26はクランクケース24に対して回転しないように設けられている。回転子27は、シャフト25に取り付けられている。電動モータ13は、例えば、3相交流型の電動ブラシレスモータである。電動モータ13は、電力が供給されると回転子27が回転し、これによってシャフト25が回転する。
【0023】
また、冷却ファン28がシャフト25に取り付けられている。冷却ファン28は、カバー12の内部に設けられている。冷却ファン28は、例えば、軸流ファンである。冷却ファン28は、複数の羽根28aを有する。複数の羽根28aは、中心線B1を中心として冷却ファン28の回転方向に間隔をおいて設けられており、中心線B1を中心とする径方向で内側から外側に沿って延ばされている。冷却ファン28は、電動モータ13の駆動力により回転し、風を生成する。つまり、冷却ファン28が回転されると、カバー12の外の空気は、
図1および
図2に示す複数の通気路34を通って内部へ吸い込まれ、内部に空気の流れが生成される。
【0024】
図3に示すように、冷却ファン28、電動モータ13、クランクケース24および制御部16は、中心線B1に沿った方向で互いに異なる位置に配置されている。
【0025】
空気圧縮機10が設置場所20に置かれた状態、つまり、
図2のように複数の脚部19が設置場所20に接触した状態において、設置場所20の表面が略水平であると、中心線A1,B1は、略水平である。また、冷却ファン28、電動モータ13、クランクケース24、第1圧縮部14および第2圧縮部15は、重力の作用方向、つまり、鉛直方向で空気タンク17,18より上方に位置する。
【0026】
図3に示すように、中心線A1,A2に沿った方向で、グリップ22とグリップ23との間に、カバー12(
図2参照)、冷却ファン28、電動モータ13、クランクケース24、第1圧縮部14および第2圧縮部15が配置されている。
【0027】
第1圧縮部14は、低圧で空気の圧縮が行われる一次側の圧縮部であり、第1シリンダ36、第1シリンダヘッド37、第1コネクティングロッド39、第1ピストン40、第1圧縮室41および第1排気室42を有している。第1ピストン40は、電動モータ13の駆動力により回転するシャフト25の回転によって往復動する。そして、筒状の第1シリンダ36は、第1ピストン40を中心軸C1方向に往復動可能な状態で収容する。言い換えると、第1ピストン40は、
図5に示すように、シャフト25の回転により第1シリンダ36内を第1の方向31に往復動可能に収容され、第1シリンダ36内における第1の方向31の上死点J1側に第1圧縮室(第1空気室)41を形成する。また、第1シリンダ36および第1シリンダヘッド37は、クランクケース24に固定されている。第1コネクティングロッド39の一方の端部は、シャフト25に回転可能に連結されている。第1ピストン40は、第1コネクティングロッド39の他方の端部に設けられている。第1ピストン40は、第1シリンダ36内で作動可能である。
【0028】
第2圧縮部15は、一次側の第1圧縮部14で圧縮された空気をさらに高圧で圧縮する二次側の圧縮部であり、第2シリンダ45、第2シリンダヘッド46、第2コネクティングロッド48、第2ピストン49、第2圧縮室50および第2排気室51を有している。第2ピストン49は、電動モータ13の駆動力により回転するシャフト25の回転によって往復動する。そして、筒状の第2シリンダ45は、第2ピストン49を
図4に示す中心軸C1方向に往復動可能な状態で収容する。言い換えると、第2ピストン49は、シャフト25の回転により、第1ピストン40と連動して第2シリンダ45内を第2の方向32に往復動可能に収容され、第2シリンダ45内における第2の方向32の上死点J2側に第2圧縮室(第2空気室)50を形成する。また、第2シリンダ45および第2シリンダヘッド46は、クランクケース24に固定されている。第2ピストン49は、第2シリンダ45内に作動可能に設けられている。第2コネクティングロッド48の一方の端部は、シャフト25に対して回転可能に連結されている。第2コネクティングロッド48の他方の端部は、第2ピストン49に連結されている。
【0029】
つまり、第1圧縮部14においては、電動モータ13のシャフト25の回転運動を第1ピストン40の往復運動に変換するために、第1ピストン40には、第1コネクティングロッド39の一方の端部が結合されており、第1コネクティングロッド39の他方の端部は、シャフト25上に設けられた偏心カム38にベアリング43を介して回転可能に結合されている。言い換えると、第1コネクティングロッド39は、クランクケース24と第1シリンダ36とに跨り、シャフト25と第1ピストン40とを連結している。
【0030】
また、第2圧縮部15においては、電動モータ13のシャフト25の回転運動を第2ピストン49の往復運動に変換するために、第2ピストン49には、第2コネクティングロッド48の一方の端部が結合されており、第2コネクティングロッド48の他方の端部は、シャフト25上に設けられた偏心カム38にベアリング43を介して回転可能に結合されている。言い換えると、第2コネクティングロッド48は、クランクケース24と第2シリンダ45とに跨り、シャフト25と第2ピストン49とを連結している。
【0031】
以上により、電動モータ13のシャフト25の回転運動は、偏心カム38や第1コネクティングロッド39などからなる運動変換機構39a、および偏心カム38や第2コネクティングロッド48などからなる運動変換機構48aによって往復運動に変換されて第1ピストン40および第2ピストン49に伝達される。言い換えれば、電動モータ13から出力される回転駆動力は、運動変換機構39aおよび運動変換機構48aによって往復駆動力に変換され、第1ピストン40および第2ピストン49に入力される。この結果、
図4に示すように、第1ピストン40および第2ピストン49は、シャフト25の延在方向(
図3に示す中心線B1の方向)と交差する各シリンダの中心軸C1に沿った方向に往復動する。
【0032】
なお、
図4に示すように、クランクケース24は、第1シリンダ36および第2シリンダ45に接続されており、内部にシャフト25、運動変換機構39aおよび運動変換機構48aを収容する容器である。すなわち、第1シリンダ36および第2シリンダ45の中心軸C1に沿った方向において、クランクケース24の一端に第1シリンダ36が接続され、クランクケース24の反対側の他端に第2シリンダ45が接続されている。これにより、クランクケース24の内部となるクランク室29は、一端が第1シリンダ36の内部と連通し、反対側の他端が第2シリンダ45と連通している。
【0033】
また、
図3および
図4に示すように、第1シリンダ36から排出される空気を第2シリンダ45に供給する接続通路として、接続管60が設けられている。言い換えると、接続管60は、第1シリンダ36と第2シリンダ45とを接続し、かつ、第1圧縮室(第1空気室)41から流出された空気を第2圧縮室(第2空気室)50へ流入させる接続通路である。具体的には、接続管60の一方の端部が第1圧縮部14の第1排気室42に接続され、接続管60の他方の端部が第2圧縮部15の第2圧縮室50に接続されている。接続管60は、一例として金属製である。接続管60は湾曲されており、電動モータ13および冷却ファン28の上方を迂回するように配置されている。
【0034】
また、第2圧縮部15における第2排気室51は、空気タンク17,18と連通している。具体的には、第2シリンダ45の第2圧縮室50に排出口52(第2排気通路)を介して連通する第2排気室51は、排出口53に設けられた連結管35に接続された接続管33を介して空気タンク17と連通し、さらに,空気タンク17が空気タンク18と連通している。これにより、第2シリンダ45の第2圧縮室50で圧縮された空気は、第2排気室51を経由し、かつ、接続管33を介して空気タンク17,18に送られて貯留される。なお、空気タンク17と空気タンク18とを接続する接続管73,87が設けられている。排出口52は、二次側弁座45a(
図5参照)に設けられ、排出口53は、第2シリンダヘッド46に設けられている。尚、排出口52には排出弁52aが設けられている。排出弁52aは、第2圧縮室50から排出口52を介して第2排気室51へ空気が排出されることを許容するが、第2排気室51から排出口52を介して第2圧縮室50へ空気が逆流することを抑制する。また、二次側弁座45aには吸入口54も設けられ、接続管60を流れる空気は、吸入口54を介して、第2シリンダ45の第2圧縮室50へ吸入される。吸入口54には吸入弁54aが設けられている。吸入弁54aは、接続管60から吸入口54を介して第2圧縮室50へ空気が吸入されることを許容するが、第2圧縮室50から吸入口54を介して接続管60へ空気が逆流することが抑制される。
【0035】
また、空気タンク17,18内の圧力を検出して信号を出力する圧力センサ74が設けられている。圧力センサ74は、空気タンク17の上端から上に向けて突出されている。空気タンク17は、減圧バルブ75を介して供給管76に接続されている。減圧バルブ75は、空気タンク17の上端から上に向けて突出されている。操作ノブ75aが減圧バルブ75に取り付けられており、作業者は、操作ノブ75aを操作可能である。減圧バルブ75は、空気タンク17から供給管76へ送られる空気の圧力を調整、具体的には、減圧する。
【0036】
また、供給管76内の空気圧を表示する圧力計77が設けられている。カプラ78が供給管76に取り付けられている。カプラ78には、エアホースの取り付けおよび取り外しが可能である。エアホースの一端がカプラ78に接続され、エアホースの他端が他の作業機に接続される。
【0037】
空気タンク18は、減圧バルブ79を介して供給管80に接続されている。操作ノブ79aが減圧バルブ79に取り付けられており、作業者は、操作ノブ79aを操作可能である。減圧バルブ79は、空気タンク18から供給管80へ送られる空気の圧力を調整、具体的には、減圧する。また、供給管80内の空気圧を表示する圧力計81が設けられている。操作ノブ75a,79aおよび圧力計77,81は、カバー12(
図1参照)の外部に露出して配置されている。カプラ82が供給管80に取り付けられている。カプラ82には、エアホースの取り付けおよび取り外しが可能である。エアホースの一端がカプラ82に接続され、エアホースの他端が他の作業機に接続される。
【0038】
また、リリーフバルブ90が空気タンク17に取り付けられている。リリーフバルブ90は、空気タンク17の上端から上に向けて突出されている。リリーフバルブ90は、空気タンク17,18内の空気圧が所定圧以上になることを抑制する。リリーフバルブ90は、空気タンク17,18内の空気圧が所定圧未満では閉じられている。リリーフバルブ90は、空気タンク17,18内の空気圧が所定圧以上であると開き、空気タンク17,18内の圧縮空気を排出させる。
【0039】
図1に示すように、カバー12の天板86に操作部83が設けられており、操作部83は、電源スイッチ、表示パネル等を有する。
図3に示すように、制御部16は、第1圧縮部14および第2圧縮部15の作動および停止を制御する機構である。制御部16は、入力インタフェース、出力インタフェース、中央演算処理部および記憶部を有するマイクロコンピュータである。
【0040】
インバータ回路がカバー12の内部に設けられている。制御部16はインバータ回路を制御する。カバー12の内部に、電動モータ13の回転方向の位相を検出するセンサ、電動モータ13の回転数を検出するセンサが設けられている。
図3に示す圧力センサ74、電源スイッチおよび各種のセンサの信号は制御部16に入力される。なお、制御部16がインバータ回路を含む構成でもよい。
【0041】
次に、作業者が空気圧縮機10の使用する例を説明する。作業者が操作部83の電源スイッチをオンすると、制御部16はインバータ回路を制御し、電動モータ13の回転子27が回転する。回転子27およびシャフト25が一体回転すると、シャフト25のトルクで第1ピストン40および第2ピストン49が、それぞれ往復動される。
【0042】
第1ピストン40が作動されると、カバー12の外部の空気は、第1圧縮部14の第1圧縮室41に吸入され、第1圧縮室41で空気が圧縮される。第1圧縮室41で圧縮された空気は、一次側弁座36aに設けられた排出口36f(第1排気通路)を介して第1排気室42へ排出される。第2ピストン49が作動されると、第1排気室42の空気は、接続管60を通って第2圧縮部15の第2圧縮室50に吸い込まれる。第2圧縮室50は、空気を更に圧縮し、第2圧縮室50で圧縮された空気は、第2排気室51を経由して空気タンク17,18に送られる。尚、排出口36fには排出弁36hが設けられている。排出弁36hは、第1圧縮室41から排出口36fを介して第1排気室42へ空気が排出されることを許容するが、第1排気室42から排出口36fを介して第1圧縮室41へ空気が逆流することを抑制する。
【0043】
ここで、本実施の形態の空気圧縮機10では、
図5に示すように、第1シリンダ36は、第1シリンダ36の内部と外部とを連通可能な第1空気通路30を備えており、一方、第2シリンダ45は、第2シリンダ45の内部と外部とを連通可能な第2空気通路44を備えている。そして、空気圧縮機10では、少なくとも第1空気通路30と第2空気通路44の何れか一方は、第1ピストン40および第2ピストン49が何れの位置にあっても、第1圧縮室41または第2圧縮室50に連通するようになっている。すなわち、2つの空気通路の圧縮室との連通状態としては、第1ピストン40および第2ピストン49が何れの位置に配置されていても、第1空気通路30が第1圧縮室41と連通しているか、または、第2空気通路44が第2圧縮室50と連通しているか、あるいは、第1空気通路30が第1圧縮室41と連通し、かつ、第2空気通路44も第2圧縮室50と連通している状態の何れかである。具体的には、第1空気通路30は、少なくとも第2ピストン49によって第2空気通路44と第2圧縮室50との連通が遮断されている時に、第1圧縮室41と連通する。尚、「第1空気通路30が第1圧縮室41と連通する」とは、第1空気通路30を介して少なくとも第1圧縮室41内の空気が外部へ排出可能であることを指し、例えば第1空気通路30を介して第1圧縮室41内へと空気が流入することを抑制する逆止弁を第1空気通路30に設けた構成も含む。また、「第2空気通路44が第2圧縮室50と連通する」とは、第2空気通路44を介して少なくとも第2圧縮室50内の空気が外部へ排出可能であることを指し、例えば第2空気通路44を介して第2圧縮室50内へと空気が流入することを抑制する逆止弁を第2空気通路44に設けた構成も含む。第1空気通路30および第2空気通路44は、直径0.1mm以上2.0mmとすることが望ましい。
【0044】
それぞれの空気通路が設けられる具体的な位置について説明すると、第1空気通路30は、
図6(a),(b)に示すように、第1の方向31において第1圧縮室41の中央部(中心)41aより第1シリンダ36の円筒部36cの上死点J1側に設けられていることが好ましい。
図6(b)に示す構造では、第1空気通路30は、第1シリンダ36の円筒部36cの上死点J1側の端部に第1シリンダ36の径方向に沿って設けられている。そして、第1空気通路30が第1シリンダ36の上死点J1側の端部に設けられた場合にも、第1シリンダ36内で第1ピストン40が上死点J1に到達した時、第1空気通路30は、第1シリンダ36の内部と外部とを連通している。すなわち、第1空気通路30は、第1ピストン40が何れの位置に配置されていても第1シリンダ36の内部と外部とを連通させる状態となっている。
【0045】
一方、第2空気通路44は、
図7(a),(b)に示すように、第2の方向32において第2圧縮室50の中央部(中心)50aより第2シリンダ45の円筒部45bの下死点K2側に設けられていることが好ましい。第2空気通路44は、
図7(a),(b)に示すように、第2シリンダ45の径方向に沿って設けられた第2空気通路44aと、該第2空気通路44aと連通し、かつ、第2シリンダ45の径方向と交差する方向(第2の方向32)に沿って延びる第2空気通路44bと、からなる。したがって、第2空気通路44は、該第2空気通路44における第2空気通路44aが、第2圧縮室50の中央部(中心)50aより第2シリンダ45の円筒部45bの下死点K2側に設けられていることが好ましい。このように第2圧縮室50に連通する第2空気通路44が、第2空気通路44aと第2空気通路44bとからなることで、第2空気通路44はL字型となる。その結果、第2圧縮室50からグリスが漏れることを抑制できる。
【0046】
なお、第2空気通路44の第2空気通路44aは、第2ピストン49が下死点K2に位置する時に第2シリンダ45の内部と外部とを連通するように設けられていることが好ましい。さらには、第2空気通路44は、第2ピストン49の先端が所定位置より下死点K2側に位置する時には第2圧縮室50と連通し、かつ、第2ピストン49の先端が上記所定位置より上死点J2側に位置する時には第2ピストン49によって第2圧縮室50との連通が遮断されるような位置に設けられていることが好ましい。上記所定位置は、第2の方向32における第2圧縮室50の中央部(中心)50aである。
【0047】
すなわち、本実施の形態の空気圧縮機10では、二次側(高圧側)の第2シリンダ45の下死点K2付近に第2空気通路44が設けられ、一方、一次側(低圧側)の第1シリンダ36の上死点J1付近に第1空気通路30が設けられている。これにより、二次側では、第2シリンダ45の下死点K2付近に第2空気通路44が設けられているため、第2ピストン49が上死点J2に向かって移動すると第2圧縮室50との連通が遮断される。そして、第2圧縮室50との連通が遮断されると、二次側で圧縮された空気は、第2空気通路44から抜けることなく第2圧縮室50から排出されて空気タンク17に送られる。
【0048】
一方、一次側では、第1シリンダ36の上死点J1付近に第1空気通路30が設けられているため、第1空気通路30は、第1ピストン40が何れの位置に配置されていても第1シリンダ36の内部と外部とが連通した状態となっている。つまり、第1ピストン40の位置に関わらず第1空気通路30は第1シリンダ36の内部と外部とに連通しているため、第1圧縮室41に残っている空気は、第1ピストン40の位置に関わらず常に上死点J1付近に設けられた第1空気通路30から抜けていく。尚、第1空気通路30は、より詳細には第1シリンダ36の外部において吸気路36d(
図6参照)を介してクランク室29と連通する。クランク室29は図示しない吸気口を介して空気圧縮機10の外部と連通しており、その内圧は大気圧と略等しい。つまり、「第1空気通路30は第1シリンダ36の内部と外部とに連通する」とは、「第1空気通路30は第1圧縮室41と空気圧縮機10の外部とを連通する」あるいは「第1空気通路30は第1圧縮室41とクランク室29とを連通する」ともいえる。また、第2空気通路44はより詳細には第2シリンダ45の外部においてクランク室29と連通する。つまり、「第2空気通路44は第2シリンダ45の内部と外部とに連通する」とは、「第2空気通路44は第2圧縮室50と空気圧縮機10の外部とを連通する」あるいは「第2空気通路44は第2圧縮室50とクランク室29とを連通する」ともいえる。
【0049】
次に、
図8を用いて、第1ピストン40と第2ピストン49の位置による各圧縮室での空気の状態について説明する。
【0050】
図8(a)に示すように、第1ピストン40が下死点K1に到達し、第2ピストン49が上死点J2に到達すると、第1圧縮室41内の空気は第1空気通路30から抜けるとともに、第2圧縮室50内では、第2空気通路44の連通が第2ピストン49によって遮断されているため、第2圧縮室50内の空気は高圧に圧縮される。そして、この高圧に圧縮された空気は、第2圧縮室50から排出され、第2排気室51を経由して空気タンク17,18に送られる。
【0051】
その後、第1ピストン40が上死点J1に向け、かつ、第2ピストン49が下死点K2に向けて動こうとする時、第1空気通路30は、第1シリンダ36の内部と外部とが連通した状態となっているため、第1圧縮室41内の空気は低圧の状態となっている。そして、第1ピストン40が上死点J1に向けて動き出そうとする時、第1圧縮室41内の空気は低圧の状態となっているため、第1ピストン40が第1圧縮室41の空気の圧力に負けることなく滑らかに動きだすことができる。
【0052】
次に、
図8(b)に示すように、第1ピストン40が第1圧縮室41の中央部付近を上死点J1に向けて通過し、第2ピストン49が第2圧縮室50の中央部付近を下死点K2に向けて通過する。この時、第1圧縮室41では、第1空気通路30から空気が微量に抜けつつも低圧で空気の圧縮が行われており、低圧で圧縮された空気は接続管60を介して第2圧縮室50に送られる。
【0053】
次に、
図8(c)に示すように、第1ピストン40が上死点J1に到達し、第2ピストン49が下死点K2に到達すると、第1圧縮室41では、低圧で圧縮された空気が接続管60を介して第2圧縮室50に送られるとともに、残った空気は第1空気通路30から抜ける。一方、第2圧縮室50では、第2空気通路44が第2シリンダ45の内部と外部とに連通しているため、第2圧縮室50に残っている空気は、第2空気通路44から抜けていく。
【0054】
その後、第1ピストン40が下死点K1に向け、かつ、第2ピストン49が上死点J2に向けて動こうとする時、第2圧縮室50に残っていた空気は、第2空気通路44から抜けるため、第2圧縮室50内の空気の圧力は低い状態となっている。したがって、第2ピストン49が上死点J2に向けて動き出そうとする時、第2ピストン49が第2圧縮室50の空気の圧力に負けることなく滑らかに動きだすことができる。
【0055】
ここで、
図9を用いて第1圧縮室41で行われる吸気について説明すると、第1圧縮室41で行われる吸気は、第1ピストン40が下死点K1に向けて移動する際、吸気の流れPのように空気が流れて吸気が行われる。すなわち、第1ピストン40が下死点K1に向けて移動する際に、第1シリンダ36の外周部に設けられた吸気路36d,36e、および一次側弁座36aに設けられた吸入口36b(第1吸気通路)を介して第1圧縮室41に空気が取り込まれる。尚、吸入口36bには吸入弁36gが設けられている。吸入弁36gは、吸気路36dから吸入口36bを介して第1圧縮室41へ空気が吸入されることを許容するが、第1圧縮室41から吸入口36bを介して吸気路36dへ空気が逆流することが抑制される。
【0056】
また、二次側の第2シリンダ45の第2圧縮室50では、第2ピストン49が下死点K2と上死点J2との間を一往復する際に、該一往復に掛かる時間の少なくとも半分の時間は、第2シリンダ45の内部と外部との連通が第2ピストン49によって遮断された状態で第2ピストン49は移動する。これにより、第2圧縮室50では、第1圧縮室41から送られた圧縮空気をさらに十分圧縮することが可能になり、空気圧縮機10の吐出性能を高めることができる。
【0057】
本実施の形態の空気圧縮機10は、一次側(低圧側)と二次側(高圧側)とで2段階で空気の圧縮が行われる圧縮機であるため、一次側で第1ピストン40が下死点K1に向けて移動して吸気を行う際、二次側の第2ピストン49は上死点J2に向けて移動して排気を行う(
図8(a)の状態)。例えば、この状態で電動モータ13を停止させると、上死点J1付近に第1空気通路30が設けられた一次側の第1圧縮室41では、第1空気通路30から空気が抜けていく。一方、二次側の第2圧縮室50内に空気が残留している場合には、空気の圧力によって第2ピストン49が押され、第2ピストン49は下死点K2側に向けて移動する(一次側の第1ピストン40は上死点J1側に移動する)。二次側の第2圧縮室50では、第2ピストン49が下死点K2側に向けて移動すると、第2空気通路44の遮断が解放され、第2圧縮室50においても残っていた圧縮空気を第2空気通路44から抜くことができる(
図8(b),(c)の状態)。例えば、二次側にしか空気穴が設けられていない空気圧縮機の場合、モータを停止させると、一次側と二次側とで空気の圧力が釣り合った位置でピストンが停止する。この場合、一次側の圧縮室に空気が残るため、空気圧縮機のモータの再始動が困難となる。また、第2空気通路44が遮断された状態で一次側と二次側との空気の圧力が釣り合ってしまった場合、一次側と二次側の両方の圧縮室に空気が残るため、空気圧縮機のモータの再始動はさらに困難となる。
【0058】
しかしながら、本実施の形態の空気圧縮機10では、一次側の第1圧縮室41では、常に第1空気通路30から空気が抜けているとともに、二次側の第2圧縮室50においても残っていた圧縮空気を第2空気通路44から抜くことができる。その結果、空気圧縮機10の電動モータ13の再始動を容易に行うことができる。すなわち、電動モータ13を停止させた後の空気圧縮機10の電動モータ13の再始動性を確保することができる。
【0059】
また、二次側の第2空気通路44を下死点K2付近に設けることで、上死点J2付近に設ける場合と比較して、二次側において空気圧縮機10の動作中に空気を抜けにくくすることができる。一次側の第1圧縮室41では、常に第1空気通路30から空気が抜けているが、第1圧縮室41内の空気圧が低いため、空気の抜ける量は少なくて済む。二次側では、下死点K2付近に第2空気通路44が設けられているため、空気圧縮機10の動作中に空気が抜けにくい。その結果、空気圧縮機10全体でみると空気圧縮機10の吐出性能を高めることができる。言い換えると、空気圧縮機10の電動モータ13の再始動性を確保しつつ、空気圧縮機10の性能の向上を図ることができる。
【0060】
また、空気圧縮機10では、二次側の下死点K2付近に第2空気通路44が設けられたことで、第2圧縮室50にある程度空気を残すことができる。これにより、第2ピストン49を上死点J2側から下死点K2側に移動させる際に、残った空気によって第2ピストン49を押すことが可能になる。空気圧縮機10では、電動モータ13の回転速度を速度センサで検知しているため、第2ピストン49が空気によって押されて加速すると、電動モータ13の回転速度を抑えることができ、空気圧縮機10における消費電力を低下させることができる。
【0061】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
図10に示す第1変形例は、
図10(b)に示すように、第1空気通路30が、第1シリンダ36の径方向に沿って設けられた第1空気通路30aと、該第1空気通路30aと連通し、かつ、第1シリンダ36の径方向と交差する方向(第1の方向31)に沿って延びる第1空気通路30bと、からなる。第1空気通路30が、第1空気通路30aと第1空気通路30bとからなることで、第1空気通路30はL字型となる。その結果、
図1に示す実施の形態と比較して第1空気通路30の長さを長く形成できるため、第1圧縮室41内で生じて第1シリンダ36外部に漏れる第1ピストン40等の動作音を低減することができる。また、第1圧縮室41内にグリスを充填した構成とした場合に、グリスが漏れることを抑制できる。尚、吸入弁36gは吸入口36bを覆うように取り付けられる。吸入弁36gは一次側弁座36aに固定される固定端と、一次側弁座36aに固定されず吸入口36bから第1圧縮室41に空気が取り込まれるときに一次側弁座36aから離間する自由端を有する。この自由端は第1空気通路30a内に挿通されており、自由端が一次側弁座36aから離間するときに第1空気通路30bの入口と接触する。このような位置関係としたため、第1空気通路30bの入口に塵埃等が付着しても、吸入弁36gによって除去される。
【0062】
また、
図11に示す第2変形例は、一次側の第1シリンダ36に設けられた第1空気通路30が、第1の方向31における第1圧縮室41の中央部41a(
図6参照)寄りの位置に設けられた構造となっている。
図11に示す構造によれば、第1ピストン40の位置によっては、第1空気通路30が遮断されて第1圧縮室41の空気が抜けない状態があるため、一次側の空気の圧力を高めることができる。
【0063】
ここで,
図12を用いて、
図11に示す構造における第1ピストン40と第2ピストン49の位置による各圧縮室での空気の状態について説明する。
【0064】
図12(a)に示すように、第1ピストン40が下死点K1に到達し、第2ピストン49が上死点J2に到達すると、第1圧縮室41内の空気は第1空気通路30から抜けるとともに、第2圧縮室50内では、第2空気通路44の連通が第2ピストン49によって遮断されているため、第2圧縮室50内の空気は高圧に圧縮される。そして、この高圧に圧縮された空気は、第2圧縮室50から排出され、第2排気室51を経由して空気タンク17,18に送られる。
【0065】
その後、第1ピストン40が上死点J1に向け、かつ、第2ピストン49が下死点K2に向けて動こうとする時、第1空気通路30は、第1シリンダ36の内部と外部とが連通した状態となっているため、第1圧縮室41内の空気は低圧の状態となっている。そして、第1ピストン40が上死点J1に向けて動き出そうとする時、第1圧縮室41内の空気は低圧の状態となっているため、第1ピストン40が第1圧縮室41の空気の圧力に負けることなく滑らかに動きだすことができる。
【0066】
次に、
図12(b)に示すように、第1ピストン40が第1圧縮室41の中央部付近を上死点J1に向けて通過し、第2ピストン49が第2圧縮室50の中央部付近を下死点K2に向けて通過する。この時、第1圧縮室41では、第1空気通路30から空気が微量に抜けつつも低圧で空気の圧縮が行われており、低圧で圧縮された空気は接続管60を介して第2圧縮室50に送られる。
【0067】
次に、
図12(c)に示すように、第1ピストン40が上死点J1に到達し、第2ピストン49が下死点K2に到達すると、第1圧縮室41では、第1ピストン40によって第1空気通路30の連通が遮断されているため、第1圧縮室41では、
図8(c)に示す状態に比べて高い圧力で空気が圧縮される。したがって、
図12に示す構造では、一次側(低圧側)において比較的高い圧力で空気を圧縮することが可能である。
【0068】
その後、第1ピストン40が下死点K1に向け、かつ、第2ピストン49が上死点J2に向けて動こうとする時、第2圧縮室50に残っていた空気は、第2空気通路44から抜けるため、第2圧縮室50内の空気の圧力は低い状態となっている。さらに、第1圧縮室41では、第1空気通路30の連通が遮断されているため、第1圧縮室41にある程度空気を残すことができる。これにより、第1ピストン40を上死点J1側から下死点K1側に移動させる際に、第1圧縮室41に残った空気によって第1ピストン40を押すことが可能になる。その結果、
図8に示す構造と同様に、空気圧縮機10における消費電力を低下させることができる。
【0069】
次に、
図13に示す第3変形例は、一次側の第1圧縮室41に連通する第1空気通路30cが、第1シリンダ36ではなく、第1シリンダ36の端部に接続された一次側弁座36aに設けられた構造となっている。このように第1空気通路30cが第1シリンダ36ではなく、一次側弁座36aに設けられていることにより、第1シリンダ36の構造を容易な構造にすることができる。
【0070】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、作業機が空気圧縮機の場合を説明したが、上記作業機は、ピストンの往復運動によって空気室の空気を圧縮するものであれば、空気圧縮機以外の作業機であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…空気圧縮機(作業機)、11…フレーム、12…カバー、13…電動モータ(駆動源)、14…第1圧縮部、15…第2圧縮部、16…制御部、17,18…空気タンク、19…脚部、20…設置場所、22,23…グリップ、24…クランクケース、25…シャフト(回転軸)、26…固定子、27…回転子、28…冷却ファン、28a…羽根、29…クランク室、30,30a,30b,30c…第1空気通路、31…第1の方向、32…第2の方向、33…接続管、34…通気路、35…連結管、36…第1シリンダ、36a…一次側弁座、36b…吸入口、36c…円筒部、36d,36e…吸気路、37…第1シリンダヘッド、38…偏心カム、39…第1コネクティングロッド、39a…運動変換機構、40…第1ピストン、41…第1圧縮室(第1空気室)、41a…中央部、42…第1排気室、43…ベアリング、44,44a,44b…第2空気通路、45…第2シリンダ、45a…二次側弁座、45b…円筒部、46…第2シリンダヘッド、48…第2コネクティングロッド、48a…運動変換機構、49…第2ピストン、50…第2圧縮室(第2空気室)、50a…中央部、51…第2排気室、52,53…排出口、60…接続管(接続通路)、70…接続アーム、71…ブラケット、73…接続管、74…圧力センサ、75…減圧バルブ、75a…操作ノブ、76…供給管、77…圧力計、78…カプラ、79…減圧バルブ、79a…操作ノブ、80…供給管、81…圧力計、82…カプラ、83…操作部、86…天板、87…接続管、90…リリーフバルブ、93…ねじ部材