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  • 特許-フィルターカートリッジ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】フィルターカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20240618BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20240618BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20240618BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20240618BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240618BHJP
   D06J 1/04 20060101ALI20240618BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B01D46/52 A
B60H3/06 631
F02M35/024 511E
D04H1/4374
B01D39/16 E
D06J1/04
B32B5/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020201231
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022089024
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046478(JP,A)
【文献】国際公開第2005/107920(WO,A1)
【文献】特開2004-301121(JP,A)
【文献】特開2015-044183(JP,A)
【文献】特開2016-211081(JP,A)
【文献】特開2006-045692(JP,A)
【文献】特開2003-299924(JP,A)
【文献】特開2004-174461(JP,A)
【文献】特開平08-309136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-20、46/52
D04H 1/4374、3/08-16、5/00-03
D06J 1/00-12
B32B 5/26
B60H 3/06
F02M 35/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が20μm以上の繊維から成る不織布Aと、平均繊維径が15μm以下の繊維から成る不織布Bとの積層体から成るフィルターカートリッジであって、
前記不織布Aは前記不織布Bよりも繊維間距離が大きい粗構造不織布、かつ前記不織布Bは前記不織布Aよりも繊維間距離が小さい緻密構造不織布であり、
前記不織布Aと前記不織布Bとの少なくとも一方は熱接着性繊維を含み、
前記積層体は襞状に折り曲げられており、前記熱接着性繊維の融着により当該折り曲げ部分の形状が固定されていることを特徴とするフィルターカートリッジ。
【請求項2】
前記積層体は濾過部と付属部とを備え、
前記濾過部と前記付属部とが一連に繋がって成形されている請求項1に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項3】
前記積層体は、前記不織布Aと前記不織布Bとの間に平均繊維径が10μm以上20μm以下の繊維から成る中間層不織布を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項4】
前記不織布Bは、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項5】
前記熱接着性繊維は、前記積層体における重量分率が15%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項6】
平均繊維径が20μm以上の繊維から成る不織布Aと、平均繊維径が15μm以下の繊維から成る不織布Bとを積層して機械交絡して積層体を形成する工程と、
前記積層体を襞状に折り曲げる工程と、
前記機械交絡した積層体には熱接着性繊維が含まれており、前記襞状に折り曲げた積層体を、前記熱接着性繊維の融点以上の温度に加熱圧着する工程と、を含み、
前記不織布Aは前記不織布Bよりも繊維間距離が大きい粗構造不織布、かつ前記不織布Bは前記不織布Aよりも繊維間距離が小さい緻密構造不織布である、ことを特徴とするフィルターカートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルターカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているフィルターやフィルターカートリッジは、主に短繊維より形成されており、特許文献1にあるように、気流の上流から下流に向けて繊維密度が高くなるよう密度勾配をつけてフィルター寿命を長くするための工夫がなされている。深層濾過で粒子を捕捉するためには、密度勾配をつけたフィルターは厚みが大きいことが必要であり、フィルターカートリッジを作る際に折り込み襞数を多くすることが難しい。特許文献1では、緻密層だけでも0.5~1mmの厚みが必要とされて、全体の厚みを十分小さくすることができないため、襞数を多くできず、濾過面積を増やすことが難しい。また、接着樹脂で寸法安定化を図る必要がある。
【0003】
また、襞折加工やセットするための枠材の取り付けには高いコストを要する。ここで、厚みの小さい濾過材にて折り込み襞数を増やして有効濾過面積を大きくしたとしても、曲げ剛性が不足するために、濾過流体により襞が変形して目よりすることが多く、圧力損失が高くなる。かかる問題を解決するために、スペーサーやビートと呼ばれる固定相を設置する試みもあるが、その効果は極めて限定的であり、組み立て工数も増えてコストアップになるという問題がある。
【0004】
また、最近のSUV車などでは、車内空間(キャビン)を広くとったり、軽量化したりするために、小型のフィルターカートリッジが求められる。そのため、有効濾過材面積を大きくとることが難しくなり、濾過材を通過する線速度が高くならざるをえないために、拡散支配で捕捉されるサブミクロン粒子の捕集に不利となっている。また、圧力損失は流体の透過線速度にほぼ比例することから、圧力損失が高くなるという問題も生じやすい。
【0005】
これらを鑑み、引用文献2には、熱接着繊維を含む繊維層が下流に行くほど繊維径が細くなるようにして、2層以上積層されたフィルター用不織布が提案されている。
【0006】
また、特許文献3や4には、フィルターカートリッジを効率的に作る方法として、濾過材と枠材や末端封鎖部を同じ材料を用いることで効率的に成形できることが開示されている。
【0007】
【文献】特公昭59-23847号公報
【文献】特開平10-180023号公報
【文献】特開平8-24546号公報
【文献】特開平8-309136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の技術でも折り込み襞数をより増やす、すなわち濾過面積を増やす、ことは困難であり、高濾過精度でありながら長いフィルター寿命を得る効果は不十分であるこ。特に、濾過される流体中のダスト(固形物質)の粒径分布が大きい場合や濾過速度が高い場合には、緻密層で閉塞が起こって寿命が短くなるという現象がみられる。また、特許文献3や4の技術でも、サブミクロン粒子の濾過精度やフィルター寿命を延ばすという効果は期待できない。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、捕捉対象にサブミクロン粒子が含有されていても濾過効率が高く、かつ捕捉対象の全体重量(粉塵負荷)が大きい場合でもフィルター寿命の長い、フィルターカートリッジおよびその製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の構成を採用するものである。
1.平均繊維径が20μm以上の繊維から成る不織布Aと、平均繊維径が15μm以下の繊維から成る不織布Bとの積層体から成るフィルターカートリッジであって、前記不織布Aは前記不織布Bよりも繊維間距離が大きい粗構造不織布、かつ前記不織布Bは前記不織布Aよりも繊維間距離が小さい緻密構造不織布であり、前記不織布Aと前記不織布Bとの少なくとも一方は熱接着性繊維を含み、前記積層体は襞状に折り曲げられており、前記熱接着性繊維の融着により当該折り曲げ部分の形状が固定されていることを特徴とするフィルターカートリッジ。
2.前記積層体は濾過部と付属部とを備え、前記濾過部と前記付属部とが一連に繋がって成形されている上記1に記載のフィルターカートリッジ。
3.前記積層体は、前記不織布Aと前記不織布Bとの間位に平均繊維径が10μm以上20μm以下の繊維から成る中間層不織布を備えたことを特徴とする上記1または2に記載のフィルターカートリッジ。
4.前記不織布Bは、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布であることを特徴とする上記1から3のいずれか1つに記載のフィルターカートリッジ。
5.前記熱接着性繊維は、前記積層体における重量分率が15%以上であることを特徴とする上記1から4のいずれか1つに記載のフィルターカートリッジ。
6.平均繊維径が20μm以上の繊維から成る不織布Aと、平均繊維径が15μm以下の繊維から成る不織布Bとを積層して機械交絡して積層体を形成する工程と、前記積層体を襞状に折り曲げる工程と、前記機械交絡した積層体には熱接着性繊維が含まれており、前記襞状に折り曲げた積層体を、前記熱接着性繊維の融点以上の温度に加熱圧着する工程と、を含み、前記不織布Aは前記不織布Bよりも繊維間距離が大きい粗構造不織布、かつ前記不織布Bは前記不織布Aよりも繊維間距離が小さい緻密構造不織布である、ことを特徴とするフィルターカートリッジの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記構成により、襞数を多く取ることができ、折り曲げられた襞が互いに拘束されるため、高い濾過精度を保ちつつ長寿命なフィルターカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のフィルターの襞折加工後の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルターカートリッジは、平均繊維径が20μm以上の繊維から成る不織布Aと、平均繊維径が15μm以下の繊維から成る不織布Bとの積層体から成り、前記不織布Aは前記不織布Bよりも繊維間距離が大きい粗構造不織布、かつ前記不織布Bは前記不織布Aよりも繊維間距離が小さい緻密構造不織布であり、前記粗構造不織布と前記緻密構造不織布との少なくとも一方は熱接着性繊維を含み、前記積層体は襞状に折り曲げられており、当該折り曲げ部分の前記積層体が前記熱接着性繊維の融着固定により一体化されている。
【0014】
本発明で用いる粗構造不織布と緻密構造不織布における「粗構造」と「緻密構造」とは、隣り合う繊維同士の距離で規定される。緻密構造を形成するには、より細い繊維径の繊維を使用したり、厚みを薄くして充填密度を上げたりするなどして実現することが可能である。充填率は、機械的交絡点を増やすことで上げることが可能であり、例えばニードルパンチ法を用いて不織布を作成する場合は、打ち込み本数(突き刺し密度)を高くしたり、打ち込み深さを深くしたりすることで実現可能である。
【0015】
本発明において粗構造不織布を構成する繊維の平均繊維径は、高い生産性及び大きい曲げ剛性を得やすいことから、20μm以上である。さらに、20μm~40μmであることが好ましく、25μm~30μmがより好ましい。粗構造不織布に含まれる熱接着性繊維も同様に平均繊維径を20μm以上にすることで、隣接する濾材が熱により接着される面積が大きくなり、しっかりと一体化される。プリーツ加工した後、粗構造不織布同士が隣り合って干渉して捕集粒子が蓄積するため、濾過寿命を長くするためには、厚みが一定以上大きいことが必要である。粗構造不織布の好ましい厚みは0.2mmから2.0mmの間である。この粗構造不織布の厚みは、後工程の襞折加工および熱処理工程で厚みが1/3から半分程度まで圧縮される。また、外力に対する変形を極力小さくするため、繊維径が大きな繊維であることが必要である。そこで、本発明の粗構造不織布を構成する繊維の平均繊維径は上記数値とする。ここで、「平均繊維径が20μm以上の繊維から成る粗構造不織布」という記載において、平均繊維径が20μm以上の繊維は、本発明の粗構造不織布の重量分率において一番多い含有量を占める繊維のことを指す。よって、本発明の粗構造不織布において、平均繊維径が20μm未満の繊維が含有されていても、それが一番多い含有量でなければ、構わない。
【0016】
本発明において緻密構造不織布を構成する主な繊維の平均繊維径は、濾過効率を高くする目的から、15μm以下である。好ましくは、1μmから15μmである。より好ましくは3μmから13μmである。また、濾過効率を高めるために繊維間距離を小さくする必要があり、非接着繊維の比率は30%以上であることが好ましく、特に好ましくは40%以上である。ここで、「平均繊維径が15μm以下の繊維から成る緻密構造不織布」という記載において、平均繊維径が15μm以下の繊維は、本発明の緻密構造不織布の重量分率において一番多い含有量を占める繊維のことを指す。よって、本発明の緻密構造不織布において、平均繊維径が15μm超の繊維が含有されていても、それが一番多い含有量でなければ構わない。
【0017】
更に、緻密構造不織布として、長繊維不織布を用いることも好ましい形態の一つである。長繊維不織布は繊維が面内方向(2次元面方向)に配列され、ポア(孔)サイズをより小さくコントロールすることが可能である。また、曲げ剛性を高くすることも容易であり、機械強度特性を得やすいため、スパンボンド不織布を好ましく用いることができる。また、濾過効率を更に高めるためにメルトブロー不織布を用いることも好ましい。
【0018】
本発明において粗構造不織布と緻密構造不織布とからなる積層体の目付は、最終製品に必要な機械強度特性を考慮し適宜設定することができるが、好ましくは80~330g/mである。目付が低すぎると軽量にはなるが適切な剛性を得ることが難しくなる。目付が大きいほど高い剛性が期待されるが、必要とされる設置スペースが大きくなるため襞折された濾材の面積が小さくなってしまうため適正に設定する必要がある。積層体の厚みは濾材構成と目付により決定されるが、本発明の積層体は従来の濾材に比べて厚みを10~30%程度下げても、フィルターカートリッジにおいて折り込み面積(折り込み襞数)を増やすことができるため、長い濾過寿命を期待できる。
【0019】
本発明において積層体に含まれる熱接着性繊維は、粗構造不織布及び/または緻密構造不織布に混繊されている。熱接着繊維は積層体全体の重量分率で15%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは35%以上であることが望ましい。熱接着繊維の重量分率が15%よりも少なければ、折り曲げられた積層体が一体化して固定することが困難になり、本発明の目的とする生産性の改善効果が小さくなる場合がある。特に粗構造不織布関しては、熱接着繊維の重量分率35%以上が好ましく、より好ましくは45%以上80%以下である。
【0020】
本発明において積層体を構成する繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィンやポリアミドが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエステルやポリオレフィンが特に好ましい。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルおよびそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。また、ポリオレフィンではポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などが例示できる。ナイロン6(NY6)やナイロン66などのポリアミド系繊維も使用可能である。また、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでも良い。また、本発明の目的を損なわない範囲での少量の他のポリマー、例えばナイロン、オレフィンなどを混合することも可能である。また、熱接着性繊維は、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維を用いることが好ましい。特には、PP/PET、共重合PET/PET、PBT/PET、PE/PPの組み合わせが好ましい。自動車用途では、モノマテリアル系の繊維の使用が特に好適である。
【0021】
粗構造不織布及び/または緻密構造不織布に短繊維不織布を用いる場合、短繊維不織布は、カーディング法やエアーレイド法などにより構成繊維と熱接着繊維が混繊される。必要に応じてニードルパンチ法や水流交絡法などで一体化処理をしてもよい。長繊維不織布を使用する場合は、これらの交絡工程で一体化される。ニードルパンチ加工する場合は粗構造不織布側からニードルが貫入するようにして、粗構造不織布を構成する太い径の繊維や熱接着性繊維が貫通してループを形成することが好ましい。襞折加工した際にそのループが互いに干渉することで適正な空間が得られ、その結果として長い濾過寿命につながる。また、隣り合う襞の表面から出た熱接着繊維が貫通してできたループが熱処理工程で溶融接着することで、たとえ濾材の剛性が低くても、フィルターカートリッジの形態安定性を与えることにつながる。
【0022】
本発明の積層体は、同一成分の不織布を積層してもよいが、異なる成分の不織布や芯鞘型繊維不織布を積層してもよい。積層体は、上記のように、ウォーターパンチ法やニードルパンチ法で粗構造不織布側から水流やニードルを貫入させ交絡させることが好ましい。ニードル密度(ペネ数)や針深は使用するニードルの種類、得たい機械強力特性や各層の目付により適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。好ましい積層方法として、複数の不織布をあらかじめニードルパンチ法などによりゆるく繊維交絡をしておき、最後に積層体をニードルパンチ法で1層に仕上げる方法がある。この方法により、適度な繊維拘束を持たせて層間剥離を防止しつつ高い成形性を得ることが容易となる。単層当たりの目付が小さいほど、繊維が面内方向に配列されることにより曲げ剛性を高くすることが可能となる。これにより流体から受ける応力に対する変形抵抗を高くすることが可能となる。
【0023】
本発明では、上記の積層体に対して襞折加工(折り曲げ加工)をして、折り曲げた状態で熱接着性繊維の融点以上の温度に加熱圧着して、熱接着性繊維を融解して固着させ、フィルターカートリッジを製造する。このように製造することで、本発明のフィルターカートリッジでは、折り曲げ部分の積層体が熱接着性繊維の融着固定により一体化されている。
まず、襞折加工について説明する。襞折加工には、例えば、上野山機工株式会社製ウェーブ・フォーマやストルート加工機等を用いることが可能である。これらの設備は、条件を適正化することで柔らかい素材も襞折することが可能である。本発明のフィルターカートリッジにおいて、襞高さ5~50mm、襞折数が10cm長さあたり8~40、好ましくは10~30であることが好ましい。襞折加工において、好ましい加工速度は1~20m/分であり、特に好ましくは3~10m/分である。襞折加工されたシート(積層体)の排出速度に対するシート供給速度を高くしたり、熱風処理温度を高くしたりすることで、隣り合う襞同士の接着が強固になり、また充填密度が高くなるようにコントロールすることができる。
【0024】
従来、上記の加工機は主にクッション材の製造装置として使用されてきた。場合により袋状のフィルターの加工にも使用可能と考えられる。しかしながら、本発明のように有効濾過面積を大きくし、高い濾過効率と長い濾過寿命を得る目的で使用される例は、本発明者の知る限り公知ではない。襞折加工を行う設備としては、レシプロあるいはロータリー方式の加工機もあり、これらの設備も、積層体の剛性が一定以上あれば使用可能である。
【0025】
フィルターカートリッジに折り込める襞折数は、濾過流体によってフィルターが変形して積層体(濾材)同士が接触する(目寄り)により、有効濾過面積が小さくならないように適正に決定すればよい。積層体の剛性が低いほど、襞折数を小さく(ピッチを大きく)する必要がある。本発明のフィルターカートリッジは、隣り合う襞が接触して互いに支えあう形で形態変化を抑えることを可能にしている。後述の実施例で示す形態安定性は、濾過試験後のフィルターカートリッジの変形状態を目視で評価した。変形が大きい場合は、濾過されたダストが襞の下部に付着しない(濾過流体が目寄りで通過しない)ことでも判断できる。
【0026】
上記のように形成した襞を固定するために熱接着性繊維を融解して固着させる。これには、通常のエアースルー法やオーブンを通過させるなどの方法を用いることができる。以上のようにして、本発明のフィルターカートリッジが形成される。
【0027】
積層体の緻密構造不織布を構成する繊維がPPである場合は、フィルターカートリッジ形成後にそのままの形態でエレクトレット加工をすることも好ましい。エレクトレット加工法としては、コロナ放電法や水含侵法などが適用可能である。
【0028】
また、特許文献3に示されているように、フィルターの端部を熱により圧縮成形し、フィルターのパッキンや枠材(ツバ部、付属部)の代わりとして用いることも生産工数の削減やコストダウンの観点から好ましい。この場合、成形型の中に襞折加工したフィルターを入れて、端部側からフィルターを押し込むように力を加えて成形することが好ましい。最終的には、端部から約1.5~2cmの部分を圧縮して密度を上げたり、例えば、熱圧着によりフィルム化させたりして枠材を形成させることが可能である。その後、枠材の余分な端部をトムソン刃などにより打ち抜き加工をして形状を整えることも可能である。
【実施例
【0029】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は実施例に限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で作製した試料に関する物性値の測定方法について説明する。
<平均繊維径>
光学顕微鏡を用いて繊維の径を任意の箇所で測定し、平均値を求める
【0030】
<目付>
目付は、試料を20cm角に切り出してその重量を測定した値を1mあたりに換算して求める。
【0031】
<厚み>
厚みは、20g/cmの荷重下でJIS L1908に準拠して測定する。
【0032】
<襞折数>
試料10cm当たりの襞数を数える。
【0033】
<有効濾過面積>
有効濾過面積(推定使用面積)として、試料をカートリッジとして成形した後、枠材以外の面積を算出する。
【0034】
<換算単板通気抵抗>
通気速度10cm/秒にて通気抵抗を測定する。試料の中間部の繊維密度が小さい場合には、パッキンなどの固定部分の面内に空気が流れて過大評価になる可能性があるので、試料端部を溶融したパラフィンなどで含浸封止しておくことも場合により必要となる。
【0035】
<濾過効率、フィルター寿命>
JIS8種粉体を用いてJIS D1612に準拠して測定する。濾過効率は、流入総粒子量に対する除去された粒子重量割合を100分率で表す。フィルター寿命は、比較例2の市販品の詳細が不明であり形態も異なるため、比較例2の市販品の性能(濾過効率が所定値になるまでの時間)を1.00として相対比較で結果を示す。
【0036】
<形状安定性>
濾過試験後の試料の変形状態を目視で評価する。
【0037】
(実施例1)
繊度6.6dtex(繊維径24.4μm)のポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度6.6dtex(繊維径24.4μm)のポリエステル系芯鞘熱接着繊維とを55:45の重量比率にて混繊後、クロスラッパーで積層して粗構造不織布(80g/m)を得た。次に、繊度1.1dtex(繊維径9.9μm)のポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度2.2dtex(繊維径14.1μm)のポリエステル系熱接着繊維とを60:40の重量比率にて混繊して、予めオルガン社製ニードルFPD220(40SM)を用い、ペネ数50、針深8mmにてニードルチ加工を行って緻密構造不織布(80g/m)を得た。
次に、緻密構造不織布と粗構造不織布とを緻密構造不織布を下にして積層し、オルオルガン社製ニードルガンFPD220(40SM)を用い、ペネ数30、針深15mmにてニードルパンチ加工を行うこと積層体を得た。
次に、得られた積層体に対して、上野山機工株式会社製ウェーブ・フォーマと同等の設備にて深さ5cmの襞折加工を行い、続けて155℃の熱風オーブンをゆっくり通過させて熱溶着加工を行いフィルターを得た。10cm当たりの襞数は25個であった。ループ状になった熱接着繊維で相互の襞が固着され優れた形態安定性を得ることができた。このように襞折加工されて得られたフィルターの外観の写真を図1に示す。
次に、得られたフィルターを成形型の中に入れて、端部側から押し込んで端部約1.5cmを圧縮してほぼフィルム化した枠材を形成させた。引き続き、枠材の余分な端部をトムソン刃により打ち抜き加工をして形状を整えた。このようにして、特許文献3に開示の方法にて枠材付きのフィルターカートリッジを作成した。得られたフィルターカートリッジは、ケーシングにぴったりとフィットしており、端部でのエアーの偏流(チャネリング)は、ほとんど認められなかった。
【0038】
(実施例2)
繊度6.6(繊維径24.4μm)dtexのポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度5.5dtex(繊維径22.4μm)のポリエステル系芯鞘型熱接着繊維を65:35の重量比率にて混繊して粗構造不織布(80g/m)を得た。また、中間層として、繊度3.3dtex(繊維径17.2μm)のポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度2.2dtex(繊維径14.1μm)のポリエステル系熱接着繊維とを40:60の重量比率にて混繊し、予めオルガン社製ニードルFPD220(40SM)を用いペネ数50、針深10mmでニードルパンチを行って中間層不織布(80g/m)を得た。次に、平均繊維径が6μmのポリプロピレン製メルトブローン不織布(17g/m)を緻密構造不織布として用意した。緻密構造不織布と中間層不織布と粗構造不織布とを緻密構造不織布を下にして積層し、オルガン社製ニードルFPD220(40SM)を用いペネ数30、針深13mmにてニードルパンチ加工を行い、積層体を得た。
次に、得られた積層体に対して、上野山機工株式会社製ウェーブ・フォーマと同等の設備を用いて深さ5cmの襞折加工を行い、続けて155℃の熱風オーブンをゆっくり通過させて熱溶着加工を行いフィルターを得た。10cm当たりの襞数は24個であった。ループ状になった熱接着繊維で相互の襞が固着され優れた形態安定性を得ることができた。
次に、得られたフィルターを成形型の中に入れて、端部側から押し込んで端部約1.5cmを圧縮してほぼフィルム化した枠材を形成させた。引き続き、枠材の余分な端部をトムソン刃により打ち抜き加工をして形状を整えた。このようにして、特許文献3に開示の方法にて枠材付きのフィルターカートリッジを作成した。得られたフィルターカートリッジは、ケーシングにぴったりとフィットしており、端部でのエアーチャネリングは、ほとんど認められなかった。
【0039】
(比較例1)
繊度3.4dtex(繊維径17.2μm)のポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度3.3(繊維径17.4μm)dtexのポリエステル系芯鞘熱接着繊維とを55:45の重量比率にて混繊後、クロスラッパーで積層して粗構造不織布(80g/m)を得た。次に、繊度1.1dtex(繊維径9.9μm)のポリエチレンテレフタレート短繊維と繊度2.2dtex(繊維径14.1μm)のポリエステル系熱接着繊維とを60:40の重量比率にて混繊して、予めオルガン社製ニードルFPD220(40SM)を用い、ペネ数50、針深8mmにてニードルパンチ加工を行って緻密構造不織布(80g/m)を得た。
次に、緻密構造不織布と粗構造不織布とを緻密構造不織布を下にして積層し、オルガン社製ニードルFPD220(40SM)を用い、ペネ数30、針深15mmにてニードルパンチ加工を行うこと積層体を得た。
次に、得られた積層体に対して、上野山機工株式会社製ウェーブ・フォーマと同等の設備で深さ5cmの襞折加工を行い、続けて200℃の熱風オーブンを通過させて熱溶着加工を行った。10cm当たりの襞数は16個であった。ループ状になった熱接着繊維で相互の襞の固着が弱く、形態安定性があまりよくなかった。
次に、形態が崩れないように注意して得られたフィルターを成形型の中に入れて、カートリッジの端部側から押し込んで端部約2cmを圧縮してほぼフィルム化した枠材を形成させた。引き続き、枠材の余分な端部をトムソン刃により打ち抜き加工をして形状を整えた。このようにして、特許文献3に開示の方法にて枠材付きのフィルターカートリッジを作成した。得られたフィルターカートリッジは、ケーシングにぴったりとフィットしており、端部でのエアーの偏流(チャネリング)は、ほとんど認められなかった。
【0040】
(比較例2(市販品))
市販の襞付きオール不織布タイプ(同じ繊維のみ)の汎用濾材を購入して、実施例1と同サイズのカートリッジ形状にしたフィルターカートリッジを作製し、ホルダーの隙間はテープで埋めて、評価した。
【0041】
各種物性の測定結果を表1にまとめた。
【0042】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、捕捉対象粒子がサブミクロン粒子を含有していても、濾過効率が高く、かつ粉塵負荷(捕捉される粒子の全体重量)が大きい場合でも、フィルター寿命の長い、フィルターカートリッジおよびその製造方法を提供することが可能になる。本発明のフィルターカートリッジは、建築材や工業資材、また自動車のエンジンフィルター、キャビンフィルター、空調フィルター、エアコンなど家電への組み込みフィルターなどとして有効に活用することが可能である。このように、本発明は、産業上の貢献度が大きい。
図1