IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7505389画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置
<>
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240618BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G03G21/00 370
B65H43/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020205677
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092782
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 克敏
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-162032(JP,A)
【文献】特開2020-194015(JP,A)
【文献】特開2018-066844(JP,A)
【文献】特開2018-146657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせた状態で、前記シート特性検知部における前記連続シートの搬送速度が、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する
画像形成システム。
【請求項2】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記弛み部分を前記画像形成部に向けて第1の速度で搬送している間に、前記シート特性検知部の検知位置において前記連続シートを前記第1の速度よりも遅い第2の速度で通過させ、通過中の連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する
画像形成システム。
【請求項3】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記弛み部分を前記画像形成部に向けて第1の速度で搬送している間に、前記シート特性検知部の検知位置において前記連続シートを停止させ、停止中の連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する
画像形成システム。
【請求項4】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シート特性検知部が前記連続シートのシート特性を検知する前から検知した後まで、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度を一定に維持するように制御する
画像形成システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記シート特性検知部が前記連続シートのシート特性を検知する前から検知した後まで、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度を一定に維持するように制御する
請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記シート特性検知部が前記シート特性を検知する前に、前記弛み生成部が所定量の弛みを生成するように制御する
前記所定量の弛みは、前記画像形成部で画像形成を実行中の連続シートの搬送速度と、前記シート特性検知部で前記シート特性を検知するために必要な検知時間とに基づいて決定される
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記必要な検知時間は、前記シート特性検知部で検知対象となるシート特性に応じて使用されるセンサに基づいて決定される
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記必要な検知時間は、前記シート特性検知部に適用される検知モードに基づいて決定される
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記所定量の弛みは、シート情報によって補正される
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記所定量の弛みは、環境情報によって補正される
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記シート情報は、剛度および紙種の少なくとも一方を含む
請求項に記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記環境情報は、温度および湿度の少なくとも一方を含む
請求項10に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記シート特性検知部によって検知されたシート特性に基づいて前記画像形成部における画像形成条件を補正するとともに、補正後の画像形成条件を、前記シート特性検知部が前記シート特性の検知を完了した後に最初に作像される画像に対して適用する
請求項1~12のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記制御部は、前記シート特性検知部によって検知されたシート特性に基づいて前記画像形成部における画像形成条件を補正するとともに、補正後の画像形成条件を、前記シート特性検知部がシート特性を検知したシート位置以降に形成される画像に対して適用する
請求項1~12のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項15】
連続シートに画像を形成する画像形成部に連続シートを供給するシート供給部と、
前記シート供給部から供給された連続シートが搬送されるシート搬送経路において前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記シート搬送経路において前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせた状態で、前記シート特性検知部における前記連続シートの搬送速度が、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する
シート搬送システム。
【請求項16】
連続シートに画像を形成する画像形成部に連続シートを供給するシート供給部と、
前記シート供給部から供給された連続シートが搬送されるシート搬送経路において前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、
前記シート搬送経路において前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、
前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シート特性検知部が前記連続シートのシート特性を検知する前から検知した後まで、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度を一定に維持するように制御する
シート搬送システム。
【請求項17】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部、および、前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御し、
前記制御部は、前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせた状態で、前記シート特性検知部における前記連続シートの搬送速度が、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する
画像形成装置。
【請求項18】
連続シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部、および、前記弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記弛み生成部によって前記連続シートに弛みを生じさせるとともに、前記連続シートに生じた弛み部分を前記画像形成部に向けて搬送している間に、前記連続シートのシート特性を前記シート特性検知部が検知するように制御し、
前記制御部は、前記シート特性検知部が前記連続シートのシート特性を検知する前から検知した後まで、前記画像形成部における前記連続シートの搬送速度を一定に維持するように制御する
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成の対象となるシートの特性をセンサによって検知し、この検知結果に基づいて画像形成条件を補正する技術が知られている。特許文献1には、カット紙からなるシートをセンサ部で停止させ、その状態でセンサ部によりシート特性を検知する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-138406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像形成の対象となるシートが連続シートである場合は、以下の理由により、シート特性を検知することができなかった。
連続シートはシート搬送方向につながって搬送されるため、シート特性を検知するために連続シートの搬送を停止させると、画像形成部や定着部でもシート搬送が停止する。このため、たとえば熱圧着式の定着部においては、シートや画像がシート搬送の停止によって過度に加熱されてダメージを受けるおそれがある。したがって、シート等のダメージを避けるにはシート搬送を継続する必要があり、結果的に、連続シートのシート特性を検知することができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、画像形成の対象となるシートが連続シートである場合でも、シート特性を検知することができる画像形成システム、シート搬送システムおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像生成システムは、連続シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせるとともに、連続シートに生じた弛み部分を画像形成部に向けて搬送している間に、連続シートのシート特性をシート特性検知部が検知するように制御する制御部とを備える。制御部は、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせた状態で、シート特性検知部における連続シートの搬送速度が、画像形成部における連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する。
【0007】
本発明に係るシート搬送システムは、連続シートに画像を形成する画像形成部に連続シートを供給するシート供給部と、シート供給部から供給された連続シートが搬送されるシート搬送経路において画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部と、シート搬送経路において弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部と、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせるとともに、連続シートに生じた弛み部分を画像形成部に向けて搬送している間に、連続シートのシート特性をシート特性検知部が検知するように制御する制御部と、を備える。制御部は、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせた状態で、シート特性検知部における連続シートの搬送速度が、画像形成部における連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する。
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、連続シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、連続シートに弛みを生じさせる弛み生成部、および、弛み生成部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、連続シートのシート特性を検知するシート特性検知部を制御する制御部と、を備える。制御部は、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせるとともに、この弛み部分を画像形成部に向けて搬送している間に、連続シートのシート特性をシート特性検知部が検知するように制御する。制御部は、弛み生成部によって連続シートに弛みを生じさせた状態で、シート特性検知部における連続シートの搬送速度が、画像形成部における連続シートの搬送速度よりも遅くなるように制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成の対象となるシートが連続シートである場合でも、シート特性を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムの構成例を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像形成システムの制御系の構成例を示すブロック図である。
図3図2に示す制御部の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る画像形成システムの処理手順を示すフローチャートである。
図5】連続シートに弛みを生じさせずに連続シートに画像を形成している状態を示す概略図である。
図6】所定量の弛みを算出した結果の一例を示す図である。
図7】連続シートに弛みを生じさせて連続シートに画像を形成している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの構成例を示す概略図である。図1は、画像形成システムを使用(操作)するユーザーの立ち位置側から見た場合を示している。
本発明の実施形態に係る画像形成システム1は、画像形成の対象として連続シートを取り扱う。本実施形態においては、連続シートの一例としてロール紙を挙げて説明する。ただし、連続シートはロール紙に限らず、たとえば、交互(Z字形)に折り畳まれた形態のシートであってもよい。また、連続シートの材質は、紙に限らず、たとえば、樹脂フィルムや布などであってもよい。また、連続シートは、接着剤が塗布されたラベルを、剥離紙に貼り合わせて構成されるラベル紙であってもよい。
【0013】
図1に示すように、画像形成システム1は、シート供給装置10と、弛み生成装置20と、画像形成装置30と、シート排出調整装置40と、シート巻き取り装置50とを備えている。連続シート2は、シート供給装置10から弛み生成装置20、画像形成装置30およびシート排出調整装置40を経由してシート巻き取り装置50へと搬送される。
【0014】
シート供給装置10は、ロール状に巻かれた連続シート2としてのロール紙R0を収容および保持する。シート供給装置10は、画像形成部36に連続シート2を供給するシート供給部として機能する。シート供給装置10は、弛み生成装置20および画像形成装置30に向けて連続シート2を供給する。シート供給装置10の内部では、連続シート2を供給する際にロール紙R0が矢印方向(図1の反時計回り方向)に回転する。
【0015】
シート供給装置10はシート特性検知部11を備えている。シート特性検知部11は、弛み生成装置20が有する弛み生成部21よりもシート搬送方向の上流側に配置されている。シート特性検知部11は、連続シート2のシート特性を検知する部分である。シート特性検知部11が検知するシート特性としては、たとえば、連続シート2としてのロール紙の紙種、平滑度、光沢度、含水量、坪量、紙厚(シート厚)、表面抵抗、剛度、密度、透気度などを挙げることができる。シート特性検知部11は、検知対象となるシート特性に応じて複数のセンサを備える。この種のセンサはメディアセンサとも呼ばれる。本実施形態においては、一例として、シート特性検知部11は、平滑度を検知する反射型光センサと、表面抵抗を検知する超音波センサと、紙厚を検知する静電容量センサとを備えるものとする。
【0016】
弛み生成装置20は、シート供給装置10よりもシート搬送方向の下流側に配置されている。また、弛み生成装置20は、画像形成装置30よりもシート搬送方向の上流側に配置されている。弛み生成装置20は、連続シート2に弛みを生じさせる弛み生成部21を備えている。弛み生成部21は、前段搬送ローラ22と、弛み収容部23と、後段搬送ローラ24とを備えている。前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24は、シート搬送方向において隣り合わせに配置されている。弛み生成部21は、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との回転速度差(搬送速度差)を利用して弛みを生成する。
【0017】
前段搬送ローラ22は、シート供給装置10から供給された連続シート2を搬送するローラである。弛み収容部23は、弛み生成部1によって生成される連続シート2の弛みを収容する部分である。弛み収容部23は、前段搬送ローラ22と弛み収容部23との間に収容空間23aを形成し、この収容空間23aに連続シート2の弛み部分2aが収容される構成となっている。後段搬送ローラ24は、連続シート2を画像形成装置30に向けて搬送するローラである。
【0018】
後段搬送ローラ24による連続シート2の搬送速度V1は、第1の速度に相当する。搬送速度V1は、画像形成部36において連続シート2に画像を形成するのに適した速度となるように制御される。一方、前段搬送ローラ22による連続シート2の搬送速度V2は、第2の速度に相当する。シート特性検知部11の検知位置においては、前段搬送ローラ22の回転にしたがって連続シート2が搬送される。このため、搬送速度V2は、シート特性検知部11の検知位置における連続シート2の搬送速度と同じ速度になる。
【0019】
搬送速度V1および搬送速度V2は、いずれも変更可能である。具体的には、搬送速度V1は、後段搬送ローラ24を回転させる駆動源がステッピングモータである場合に、このステッピングモータのドライバに入力するパルス信号の周期を変えることによって変更可能である。同様に、搬送速度V2は、前段搬送ローラ22を回転させる駆動源がステッピングモータである場合に、このステッピングモータのドライバに入力するパルス信号の周期を変えることによって変更可能である。前段搬送ローラ22の駆動源と、後段搬送ローラ24の駆動源は、後述する制御部31によって個別に制御される。
【0020】
搬送速度V1は、連続シート2に画像を形成する際に適用される画像形成条件に合わせて設定され、一旦、画像形成条件が設定された後は、画像形成条件が変更(補正等)されない限り、一定の速度となるように制御される。これに対し、搬送速度V2は、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間で連続シート2を弛みなく搬送する場合は、搬送速度V1と同じ速度となるように制御される。また、搬送速度V2は、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間で連続シート2に弛みを生じさせる場合は、搬送速度V1よりも高速となるように制御される。
【0021】
弛み生成部21における連続シート2の弛み量は、シート搬送方向における連続シート2の長さにより、次のように定義される。
まず、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間で連続シート2に弛みが生じていない場合、すなわち弛み量がゼロの場合に、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間に存在する連続シート2の長さをL1(mm)とする。また、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間で連続シート2に弛みが生じている場合に、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間に存在する連続シート2の長さをL2(mm)とする。そうした場合、長さL2と長さL1との差が、連続シート2の弛み量に相当する。
【0022】
画像形成装置30は、周知の作像プロセスである電子写真プロセスにより、画像データに基づく画像を連続シート2に形成する。画像形成装置30の詳細については後述する。
【0023】
シート排出調整装置40は、シート搬送方向において、画像形成装置30とシート巻き取り装置50との間に配置されている。シート排出調整装置40は、画像形成装置30からシート巻き取り装置50へと排出される連続シート2の供給を調整する。具体的には、シート排出調整装置40は、画像形成装置30とシート巻き取り装置50との間の連続シート2の微小な搬送速度の差を吸収するバッファー機能を有する。シート排出調整装置40は、必要に応じて設けられる。
【0024】
シート巻き取り装置50は、画像形成装置30から排出される連続シート2を、シート排出調整装置40を介して受け取るとともに、受け取った連続シート2をロール状に巻き取ることにより、ロール紙R1を形成する。
【0025】
次に、画像形成装置30について詳しく説明する。
画像形成装置30は、操作パネル34と、シート搬送部35と、画像形成部36と、定着部37とを備えている。画像形成装置30の各構成要素は、信号をやり取りするためのバスを介して、相互に接続されている。この点は、後述する画像形成システム1の制御系の構成要素についても同様である。
【0026】
操作パネル34は、各種の入力操作を受け付ける操作部、および、各種の情報を表示する表示部として機能する。操作パネル34は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)、あるいは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなる表示部に、操作部としてのタッチセンサが重畳されたタッチパネルによって構成される。また、操作部は、タッチパネルの他に、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備える。なお、本実施形態では、表示部と操作部とが一体に形成される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。ボタンやキーなどによる操作部と、LCD等による表示部とが、それぞれ別々に構成されてもよい。
【0027】
シート搬送部35は、画像形成装置30に形成されたシート搬送路に沿って連続シート2を搬送する。シート搬送部35は、上記のシート搬送路上に所定の間隔をあけて配置された複数の搬送ローラと、この搬送ローラを回転させるための駆動源である搬送モータ(図示せず)とを備える。
【0028】
画像形成部36は、シート搬送部35によって搬送される連続シート2に、画像データに基づく画像を形成する。画像形成部36は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応する4つの作像ユニット361と、中間転写ベルト362と、転写ローラ363と、対向ローラ364とを備えている。
【0029】
各々の作像ユニット361は、像担持体である感光体ドラムと、感光体ドラムの周囲に配置される除電部、帯電器、現像器、一次転写部、ドラムクリーナーなどを備える。各々の作像ユニット361は、感光体ドラムの表面に各色のトナーを用いてトナー画像を形成する。中間転写ベルト362は、無端ベルトによって構成されている。中間転写ベルト362は、複数のローラによってループ状に支持されている。作像ユニット361によって形成されたトナー画像は、感光体ドラムから中間転写ベルト362へと転写される。この段階の転写は一次転写と呼ばれる。
【0030】
転写ローラ363および対向ローラ364は、中間転写ベルト362を間に挟んで回転するローラである。転写ローラ363および対向ローラ364は、中間転写ベルト362を介して対向(近接)しており、この対向部分に転写ニップ部365を形成している。対向ローラ364は、中間転写ベルト362によって搬送されてきたトナー画像を、転写ニップ部365において連続シート2に転写する。この段階の転写は二次転写と呼ばれる。
【0031】
定着部37は、定着ローラ371および加圧ローラ372を備えている。定着部37は、画像形成部36によって画像(トナー画像)が形成された連続シート2を加熱および加圧することにより、連続シート2に画像を定着させる。定着ローラ371は、内部に配置されたヒーター(図示せず)や、外部に配置された加熱ローラ(図示せず)等によって加熱される。加圧ローラ372は、対向する定着ローラ371との間に定着ニップ部を形成し、この定着ニップ部を通過する連続シート2を加熱および加圧する。
【0032】
上述した転写ローラ363および対向ローラ364からなるローラ対と、上述した定着ローラ371および加圧ローラ372からなるローラ対は、それぞれモーター(図示せず)を駆動源として回転することにより、連続シート2を搬送する搬送ローラとしても機能する。すなわち、シート搬送部35は、転写ローラ363および対向ローラ364からなるローラ対と、上述した定着ローラ371および加圧ローラ372からなるローラ対とを含む。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの制御系の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成システム1は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、操作パネル34とを備えている。操作パネル34については前述したとおりである。制御部31、記憶部32および通信部33は、たとえば、画像形成装置30に設けられる。
【0034】
制御部31は、コンピュータのハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備える。CPUは、ROMから所定のプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムにしたがって画像形成システム1全体の動作を統括的に制御する。
【0035】
たとえば、制御部31は、上述したシート供給装置10、弛み生成装置20、画像形成装置30、シート排出調整装置40およびシート巻き取り装置50を連携して動作させることにより、連続シート2の搬送を制御する。画像形成システム1は、上述したシート搬送部35を有するシート搬送経路3を備えている。このシート搬送経路3は、シート供給装置10からシート巻き取り装置10へと至るシート搬送路に適宜の間隔をおいて配置される複数の搬送ローラと、各々の搬送ローラによって搬送される連続シート2の搬送を案内する複数の搬送案内部材とによって構成される。シート搬送経路3を構成する搬送ローラには、上述した前段搬送ローラ22および後段搬送ローラ24が含まれる。
【0036】
また、制御部31は、シート特性検知部11によって検知された連続シート2のシート特性に基づいて画像形成部36における画像形成条件を補正する。シート特性検知部11が検知したシート特性の検知データは、シート特性検知部11から制御部31へと与えられる。シート特性に基づいて補正される画像形成条件には、連続シート2に形成される画像の品質に影響を与える条件、および、連続シート2の仕上がり状態に影響を与える条件のうち、少なくとも一方が含まれる。
【0037】
画像形成システム1のコンピュータを制御部31として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して提供される。記録媒体としては、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、USBメモリ、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を挙げることができる。また、プログラムのデータは、インターネットなどを介した送受信によって提供することも可能である。
【0038】
記憶部32は、画像形成システム1の動作を制御するのに必要な各種のデータ、例えば画像データ等の印刷データ、ジョブの設定値、各種検出値、基準値等、を記憶する。記憶部32は、たとえば、RAMの他、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)などによって構成される。
【0039】
通信部33は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置(たとえば、パーソナルコンピュータなど)と通信可能に接続され、外部装置との間で各種のデータをやり取りする。通信ネットワークは、たとえば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などである。制御部31は、たとえば、外部装置から送信されたページ記述言語(PDL:Page Description Language)を受信し、PDLに含まれる画像データに基づいて、画像形成部36や定着部37などの動作を制御することにより、連続シート2に画像を形成させる。
【0040】
図3は、図2に示す制御部の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部31は、システム制御部61と、エンジン制御部62と、シート搬送制御部63と、シート特性検知制御部64と、画像形成制御部65とを備えている。
【0041】
システム制御部61は、操作パネル34または外部装置からプリント指示を受け付けるとともに、受け付けたプリント指示に基づいてエンジン制御部62に制御指令を与える。プリント指示は、操作パネル34を操作するユーザーから受け付ける場合と、外部装置を操作するユーザーから受け付ける場合がある。システム制御部61は、プリント指示に含まれる画像データに画像処理を施す。画像処理の例としては、画像補正処理、描画処理、圧縮処理、色補正処理、領域抽出、色空間変換処理、二値化処理などを挙げることができる。
【0042】
エンジン制御部62は、画像形成システム1が備える各々の装置(10,20,30,40,50)のエンジンを制御する。エンジンとは機械的な機構である。エンジン制御部62は、システム制御部61から与えられる制御指令にしたがって各装置のエンジンを制御する。エンジン制御部62には、シート搬送制御部63と、シート特性検知制御部64と、画像形成制御部65とが接続されている。
【0043】
シート搬送制御部63は、シート搬送動作を制御する。シート搬送制御部63は、シート弛み制御部67を有する。シート弛み制御部67は、弛み生成装置20における弛み生成部21の動作を制御する。弛み生成部21の動作とは、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24の回転動作である。シート特性検知制御部64は、シート特性検知部11の動作を制御する。シート特性検知部11の動作とは、メディアセンサを使用して連続シート2のシート特性を検知する動作である。画像形成制御部65は、画像形成部36の動作や定着部37の動作を制御する。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの処理手順を示すフローチャートである。
まず、システム制御部61は、プリント指示があったか否かを繰り返し確認する(ステップS1)。そして、システム制御部61は、操作パネル34または外部装置からプリント指示を受け付けると、ステップS1でYESと判断し、受け付けたプリント指示に基づいてエンジン制御部62に制御指令を与える。
【0045】
次に、エンジン制御部62は、上述した制御指令にしたがって各装置(10,20,30,40,50)のエンジンを制御することにより、各装置の動作を開始する(ステップS2)。これにより、画像形成システム1は次のように動作する。まず、シート供給装置10は、図5に示すように、シート供給装置10からシート巻き取り装置50へ向けて連続シート2をY方向に搬送する。Y方向はシート搬送方向を示す。なお、図5においては、シート排出調整装置40を省略している。
【0046】
シート搬送方向Yに搬送される連続シート2には、画像形成部36の転写ニップ部365において画像が形成(転写)される。図5においては、画像形成部36の上流側に配置された搬送ローラ351と、画像形成部36の下流側に配置された搬送ローラ352とが、連続シート2を搬送速度V0で搬送している。搬送速度V0は、連続シート2に画像を形成する際に適用される搬送速度である。
【0047】
一方、弛み生成装置20においては、前段搬送ローラ22および後段搬送ローラ24が、同じ搬送速度で連続シート2を搬送している。つまり、後段搬送ローラ24による搬送速度V1と前段搬送ローラ22による搬送速度V2の関係は、V1=V2である。また、後段搬送ローラ24による搬送速度V1と上記搬送ローラ351,352による搬送速度V0の関係は、V1=V0である。そして、搬送速度V0,V2,V3は、一定の速度に維持されている。これにより、連続シート2は、前段搬送ローラ22から搬送ローラ352へと至るシート搬送路において、弛むことなく一定の速度で搬送される。
【0048】
また、連続シート2に形成すべき画像が、たとえばラベル画像であって、このラベル画像を連続シート2に隙間なく並べて印刷(以下、「ラベル印刷」ともいう。)する場合は、画像形成部36の転写ニップ部365において連続シート2にラベル画像が連続的に転写される。なお、連続シート2に形成される画像は、ラベル画像以外の画像でもよい。画像形成済の連続シート2は、図示しないシート排出調整装置40を介してシート巻き取り装置50へと送られ、そこでロール状に巻き取られることによりロール紙R1を形成する。
【0049】
再び図4のフローチャートに戻って説明する。ステップS3において、シート特性検知制御部64は、シート特性の検知タイミングになったか否かを判断する。そして、シート特性検知制御部64がシート特性の検知タイミングになったと判断するとステップS4に進み、シート特性の検知タイミングになっていないと判断するとステップS11に移行する。シート特性の検知タイミングになったか否かは、たとえば、画像形成動作時間、画像形成面数、環境変化のうち少なくともいずれか1つに基づいて判断される。以下、具体的に説明する。
【0050】
画像形成動作時間は、ステップS2で各装置の動作を開始してからの経過時間である。画像形成動作時間は、たとえば、制御部31が備えるタイマー機能により計測可能である。シート特性検知制御部64は、タイマー機能により計測中の時間が予め設定された基準時間に達すると、シート特性の検知タイミングになったと判断する。
【0051】
画像形成面数は、連続シート2に形成される画像の面数である。画像形成面数は、たとえば、制御部31が備えるカウンター機能により計数可能である。シート特性検知制御部64は、カウンター機能により計数中の画像形成面数が予め設定された基準面数に達すると、シート特性の検知タイミングになったと判断する。
【0052】
環境変化は、画像形成システム1が設置されている環境の変化である。環境には、たとえば、温度、湿度などがある。温度は、画像形成装置30が備える温度センサにより計測可能である。湿度は、画像形成装置30が備える湿度センサにより計測可能である。シート特性検知制御部64は、温度センサにより計測中の温度が、上記ステップS2以降でどの程度変化したかを監視し、温度変化が予め設定された温度変化基準量以上になると、シート特性の検知タイミングになったと判断する。また、シート特性検知制御部64は、湿度センサにより計測中の湿度が、上記ステップS2以降でどの程度変化したかを監視し、湿度変化が予め設定された湿度変化基準量以上になると、シート特性の検知タイミングになったと判断する。
【0053】
なお、シート特性の検知タイミングになったか否かを判断するためのパラメータは、上述した画像形成動作時間、画像形成面数、環境変化に限らず、他のパラメータを採用してもよい。また、上述した基準時間、基準面数、温度変化基準量、湿度変化基準量は、記憶部32に記憶しておけばよい。
【0054】
続いて、ステップS4において、シート弛み制御部67は、シート特性の検知に必要な所定量の弛み(以下、「必要弛み量」とも記す)を算出する。以下に、所定量の弛みの算出方法について説明する。
【0055】
所定量の弛みは、画像形成部36で画像形成を実行中の連続シート2の搬送速度と、シート特性検知部11でシート特性を検知するために必要な検知時間とに基づいて決定される。画像形成を実行中の連続シート2の搬送速度は、上述した搬送ローラ351,352による搬送速度V0である。この搬送速度V0は、後段搬送ローラ24による搬送速度V1と同じである。一方、シート特性検知部11でシート特性を検知するために必要な検知時間は、シート特性検知部11で検知対象となるシート特性に応じて使用されるセンサに基づいて決定される。
【0056】
ここで、たとえば、画像形成を実行中の連続シート2の搬送速度V0が100(mm/秒)であり、シート特性検知部11で連続シート2の平滑度を検知するために必要な検知時間Tが1.0(秒)であり、この検知時間だけ連続シート2をシート特性検知部11に停止させておく必要がある場合、必要弛み量Sは、次の(1)式に基づいて100(mm)と算出される。
S(mm)=V0(mm)×T(秒) …(1)
【0057】
図6は、所定量の弛みを算出した結果の一例を示す図である。
図6に示すように、シート特性検知部11によって検知可能なシート特性は、平滑度、表面抵抗および紙厚である。シート特性検知部11において、平滑度の検知に使用するセンサは反射型センサであり、表面抵抗の検知に使用するセンサは超音波センサであり、紙厚の検知に使用するセンサは静電容量センサである。また、平滑度を検知するのに必要な検知時間は1.5(秒)であり、表面抵抗を検知するのに必要な検知時間は1.0(秒)である。一方、紙厚を検知するのに必要な検知時間は、シート特性検知部11に適用される検知モードに応じて異なる。具体的には、紙厚の検知に適用される検知モードには、通常モードと高精度モードがある。高精度モードは、通常モードよりも高い精度で紙厚を検知するモードである。通常モードで紙厚を検知するのに必要な検知時間は1.0(秒)であり、高精度モードで紙厚を検知するのに必要な検知時間は2.0(秒)である。換言すると、必要な検知時間は、シート特性検知部11に適用される検知モードに基づいて決定される。なお、本実施形態においては、シート特性検知部11に適用される検知モードの一例として、紙厚の検知に適用される検知モード(通常モード、高精度モード)を挙げたが、シート特性の検知に必要な検知時間は、これ以外の検知モードに基づいて決定してもかまわない。
【0058】
再び図5に戻って説明すると、検知時搬送速度は、シート特性検知部11において連続シート2のシート特性を検知するときに適用されるシート搬送速度である。検知時搬送速度は、シート特性検知部11によって検知可能なシート特性ごとに予め設定されている。具体的には、平滑度を検知するときに適用されるシート搬送速度は0(mm/秒)に設定され、表面抵抗を検知するときに適用されるシート搬送速度も0(mm/秒)に設定されている。また、紙厚を検知するときに適用されるシート搬送速度は、上述した検知モード(通常モード、高精度モード)の違いによらず、20(mm/秒)に設定されている。
【0059】
必要弛み量は、画像形成部36における連続シート2の搬送速度が100(mm/秒)である場合に、シート特性ごとに次のように算出される。図6に示すように、平滑度に関しては、必要な検知時間が1.5(秒)、検知時搬送速度が0(mm/秒)であることから、必要弛み量が150(mm)と算出される。また、表面抵抗に関しては、必要な検知時間が1.0(秒)、検知時搬送速度が0(mm/秒)であることから、必要弛み量が100(mm)と算出される。一方、紙厚に関しては、検知モードが通常モードである場合は、必要な検知時間が1.0(秒)、検知時搬送速度が20(mm/秒)であることから、必要弛み量が80(mm)と算出され、検知モードが高精度モードである場合は、必要な検知時間が2.0(秒)、検知時搬送速度が20(mm/秒)であることから、必要弛み量が160(mm)と算出される。
【0060】
シート弛み制御部67は、上述のように算出した必要弛み量を、シート情報および環境情報のうち少なくとも一方の情報によって補正してもよい。シート情報は、連続シート2の物性に関する情報であり、たとえば、剛度および紙種の少なくとも一方を含む。環境情報は、画像形成システム1の設置環境に関する情報であり、たとえば、温度および湿度の少なくとも一方を含む。シート弛み制御部67は、算出した必要弛み量に対し、シート情報や環境情報に応じて、たとえば、+5%の補正を加える。これにより、算出した必要弛み量が100(mm)であれば、シート情報や環境情報に応じて補正した後の必要弛み量は105(mm)となる。なお、必要弛み量の補正量は任意に変更可能である。また、必要弛み量の補正量は、操作パネル34または外部装置を用いてユーザーが手動で設定してもよい。このように、シート情報や環境情報に基づいて必要弛み量を補正することにより、前段搬送ローラ22によるシート搬送を停止してから物理的なスリップや振動が収まるまでの時間が、紙種や湿度などによって変わる場合でも、シート特性検知部11において連続シート2を安定させた状態でシート特性を検知することができる。
【0061】
ここで、シート特性検知部11において、連続シート2の平滑度、表面抵抗および紙厚を、それぞれに対応するセンサを使用して同時並行で検知する場合、シート弛み制御部67は、上述のように算出した必要弛み量のうち、最大の必要弛み量(図5の例では150(mm))を算出結果として採用する。また、シート特性検知部11において、連続シート2の平滑度、表面抵抗および紙厚を、それぞれに対応するセンサを使用して順に検知する場合、シート弛み制御部67は、上述のように算出した必要弛み量の合計量を算出結果として採用する。ちなみに、紙厚の検知モードが通常モードの場合は、必要弛み量の合計値が330(mm)となり、紙厚の検知モードが高精度モードの場合は、必要弛み量の合計値が410(mm)となる。
【0062】
本実施形態においては、一例として、連続シート2の表面抵抗を検知するものとする。上記図5に示したように、連続シート2の表面抵抗を検知するために必要な検知時間は1.0(秒)であり、検知時搬送速度は0(mm/秒)であり、必要弛み量は100(mm)である。
【0063】
再び図4に戻って説明すると、ステップS5において、シート弛み制御部67は、前段搬送ローラ22による連続シート2の搬送速度V2を増加させる。搬送速度V2を増加させる前は、搬送速度V0,V2,V3が同じ速度に維持されているが、搬送速度V2を増加させた後は、搬送速度V0,V2,V3の関係が、V0=V1、V1<V2になる。これにより、図7に示すように、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間で連続シート2に弛みが生じる。図7における符号2aは、連続シート2の弛み部分を示している。また、図7においては、シート排出調整装置40を省略している。
【0064】
次に、ステップS6において、シート弛み制御部67は、前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間に所定量の弛みが確保されたか否かを判断する。前段搬送ローラ22と後段搬送ローラ24との間における連続シート2の弛み量は、搬送速度V2を増加し始めてからの経過時間と、搬送速度差(V2-V1)とを基に演算等によって検出することが可能である。また、連続シート2の弛み量は、図示しないセンサやカメラ等を用いて測定することも可能である。
ステップS5において搬送速度V2を100(mm/秒)から200(mm/秒)へと増加させる場合は、計算上、搬送速度V2を1秒間だけ200(mm/秒)に増加させることで、所定量(本例では100mm)の弛みを確保することができる。ただし実際には、加速に要する時間や、連続シート2と前段搬送ローラ22との間に生じるスリップなどを考慮する必要がある。
【0065】
その後、シート弛み制御部67は、上記ステップS6において所定量の弛みが確保されたと判断すると、前段搬送ローラ22の回転を停止する(ステップS7)。つまり、シート弛み制御部67は、弛み生成部21によって連続シート2に弛みを生じさせた状態で、シート特性検知部11における連続シート2の搬送速度V2が、画像形成部36における連続シート2の搬送速度V0よりも遅くなるように制御する。搬送速度V2が搬送速度V0よりも遅い状態には、搬送速度V2が0(mm/秒)の状態と0(mm/秒)よりも速い状態の両方が含まれる。本実施形態では、前段搬送ローラ22の回転を停止させるため、前段搬送ローラ22による搬送速度V2は0(mm/秒)、すなわち連続シート2が停止した状態になる。したがって、シート特性検知部11における連続シート2の搬送速度も0(mm/秒)、すなわちシート特性検知部11の検知位置で連続シート2が停止した状態になる。なお、前段搬送ローラ22の回転が停止すると、ロール紙R0の回転も停止する。よって、シート特性検知部11の検知位置において連続シート2の弛みの発生が抑制される。
【0066】
次に、シート特性検知制御部64は、シート特性検知部11に連続シート2のシート特性を検知させる(ステップS8)。上記ステップS5~S7の処理は、ステップS8の処理よりも前に行われるため、弛み生成部21は、シート特性検知部11がシート特性を検知する前に、所定量の弛みを生成することになる。ステップS8において連続シート2の表面抵抗を検知する場合は、シート特性検知制御部64からシート特性検知部11に与えられる制御指令により、シート特性検知部11が超音波センサを使用して連続シート2の表面抵抗を検知する。また、表面抵抗の検知は、1.0秒の検知時間をかけて行われ、その検知結果がシート特性検知部11から画像形成制御部65へ与えられる。このようにシート特性検知部11で連続シート2の表面抵抗を検知している間、後段搬送ローラ24は画像形成部36に向けて連続シート2を搬送速度V1で搬送し続ける。このため、上記ステップS5~S7において弛み生成部21が生成した連続シート2の弛み部分2a(図7参照)は、シート特性(本例では表面抵抗)の検知が行われている間、徐々に減少していく。
【0067】
シート特性の検知を終えると、シート弛み制御部67は、前段搬送ローラ22の回転を再開させる(ステップS9)。換言すると、シート弛み制御部67は、シート特性の検知を終えた後に、シート特性検知部11における連続シート2の搬送速度を回復させる。このとき、シート弛み制御部67は、連続シート2の弛みが消失する前に、前段搬送ローラ22の回転を再開させる。また、シート弛み制御部67は、前段搬送ローラ22による搬送速度V2を、後段搬送ローラ24による搬送速度V1と同じ速度にする。これにより、図5に示す状態に戻る。シート搬送制御部63は、シート特性検知部11が連続シート2のシート特性を検知する前から検知した後まで、画像形成部36における連続シート2の搬送速度V0を一定に維持するように、後段搬送ローラ24および搬送ローラ351,352を含む複数の搬送ローラの回転を制御する。
【0068】
次に、画像形成制御部65は、シート特性検知部11から与えられる連続シート2のシート特性に基づいて画像形成条件を補正する(ステップS10)。補正の対象となる画像形成条件としては、たとえば、作像ユニット361における帯電電圧やトナー供給量、あるいは定着部37における定着圧力や定着温度など、種々の条件が考えられる。画像形成制御部65は、補正後の画像形成条件を、シート特性検知部11がシート特性の検知を完了した後に最初に作像される画像に対して適用する。ここで記述する「作像される画像」とは、電子写真プロセスにおいてレーザービームの照射により感光体に形成される画像をいう。また、画像形成制御部65は、補正後の画像形成条件を、シート特性検知部11がシート特性を検知したシート位置以降に形成される画像に対して適用する。ここで記述する「シート位置以降」とは、シート特性検知部11がシート特性を検知したシート位置と該シート位置よりもシート搬送方向上流側のシート位置とを含む。
このように、補正後の画像形成条件を適用する画像を設定することにより、シート特性検知部11においてシート特性を検知した連続シート2の位置に、補正後の画像形成条件にしたがって画像を形成することができる。このため、連続シート2に形成される画像の品質を高めることができる。
【0069】
次に、エンジン制御部62は、上記ステップS1で受け付けたプリント指示に基づくプリントが終了したか否かを判断する(ステップS11)。そして、エンジン制御部62は、プリントが終了していないと判断した場合は上記ステップS3の処理に戻り、プリントが終了したと判断すると、各装置(10,20,40,50)の動作を停止する(ステップS12)。
【0070】
なお、本実施形態においては、シート特性検知部11において連続シート2の表面抵抗を検知する場合を例に挙げて説明したが、連続シート2の平滑度を検知する場合は、所定量の弛みを確保するために前段搬送ローラ22による搬送速度V2を増加させる期間(時間)や、シート検知のために前段搬送ローラ22の回転を停止させる時間が異なるだけで、基本的に同様の処理手順となる。これに対して、シート特性検知部11において連続シート2の紙厚を検知する場合は、シート弛み制御部67は、上記ステップS7において前段搬送ローラ22による搬送速度V2を100(mm/秒)から20(mm/秒)へと減速させる。そして、シート弛み制御部67は、連続シート2を20(mm/秒)の搬送速度でシート特性検知部11の検知位置を通過させ、シート特性検知制御部64は、その通過中の連続シート2の紙厚を静電容量センサを使用して検知するようにシート特性検知部11を制御する。
【0071】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態においては、画像形成部36よりもシート搬送方向の上流側に弛み生成部21を配置し、弛み生成部21よりもシート搬送方向の上流側にシート特性検知部11を配置した構成を採用している。これにより、画像形成部36における連続シート2の搬送速度V0と、シート特性検知部11における連続シート2の搬送速度V2との差を、弛み生成部21が生成する連続シート2の弛みによって吸収することができる。このため、画像形成の対象となるシートが連続シート2である場合でも、シート特性検知部11において連続シート2のシート特性を検知することができる。
【0072】
また、本発明の実施形態においては、シート特性検知部11でシート特性を検知する場合に、弛み生成部21によって連続シート2に弛みを生じさせるとともに、この弛み部分2a(図7参照)を画像形成部36に向けて搬送している間に、連続シート2のシート特性をシート特性検知部11が検知するように制御する。これにより、画像形成に悪影響を与えることなく、シート特性を検知することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態においては、弛み生成部21によって連続シート2に弛みを生じさせた状態で、シート特性検知部11における連続シートの搬送速度V2が、画像形成部36における連続シート2の搬送速度V0よりも遅くなるように制御する。これにより、搬送速度V0を画像形成に適した速度に維持しつつ、搬送速度V2をシート特性の検知に適した速度に設定することができる。このため、画像形成に悪影響を与えることなく、シート特性の検知精度を高めることができる。また、画像形成部36においては連続シート2を搬送速度V0で継続搬送することができる。このため、連続シート2にラベル印刷を行う場合は、シート搬送方向で隣り合うラベル画像間に隙間を生じさせることなく、シート特性を検知することが可能となる。また、シート搬送方向で隣り合うラベル画像間に規定量の隙間を確保しながら印刷する場合は、ラベル画像間に規定量を超える隙間を生じさせることなく、シート特性を検知することが可能となる。また、ラベル画像間に余分な隙間が生じると、画像形成後の後処理においてロール幅断裁、型抜き等を行う場合に、余分な隙間によるラベル画像の相対的な位置ずれにより、後処理を適切に行うことができなくなるが、本実施形態ではそのような不都合が生じるおそれがない。
【0074】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0075】
たとえば、上記実施形態においては、シート供給装置10にシート特性検知部11を設けるとともに、弛み生成装置20に弛み生成部21を設けているが、本発明はこれに限らず、たとえば画像形成装置30にシート特性検知部11と弛み生成部21とを設けてもよい。画像形成装置30にシート特性検知部11を設ける場合、弛み生成部21は、画像形成部36における転写ニップ部365よりもシート搬送方向の上流側に配置し、シート特性検知部11は、弛み生成部21よりもシート搬送方向の上流側に配置すればよい。
【0076】
また、シート供給装置10と画像形成装置30との間に、連続シート2の微小な搬送速度差を吸収するシート供給調整装置(図示せず)を設ける場合は、このシート供給調整装置を用いて弛み生成装置20を構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、電子写真プロセスによって連続シートに画像を形成する画像形成システムを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、他の作像プロセス、たとえばインクジェットプロセスによって連続シートに画像を形成する画像形成システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…画像形成システム、2…連続シート、2a…弛み部分、11…シート特性検知部、21…弛み生成部、31…制御部、36…画像形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7