(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電池監視装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240618BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240618BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20240618BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240618BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240618BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
G01R19/00 B
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/02 H
(21)【出願番号】P 2020208507
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】松川 和生
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064697(JP,A)
【文献】特開2014-093886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
G01R 19/00
G01R 31/389
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セル(Cb)が直列接続された構成の組電池(2)を監視する電池監視装置(1、51、61、71、81)であって、
前記複数の電池セルの電圧を検出する第1電圧検出部(13)と、
冗長監視のために前記複数の電池セルの電圧を検出する第2電圧検出部(14)と、
前記組電池に交流電流を印加する電流印加部(30)と、
前記電流印加部により前記組電池に交流電流が印加される期間における前記複数の電池セルの電圧を検出する第3電圧検出部(15、63)と、
前記電池セルのインピーダンスを算出する算出部(34)と、
を備え、
前記電流印加部は、
前記組電池の両端子間に直列に接続された負荷素子(6)、スイッチング素子(7)およびシャント抵抗(Rsh)と、
所望する周波数を有する前記交流電流が前記組電池に印加されるように前記スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部(29、74、85)と、
を備え、
前記算出部は、
前記シャント抵抗の端子電圧に基づいて複数の前記電池セルに流れる電流を検出する電流検出部(33)を備え、
前記第3電圧検出部により検出される前記複数の電池セルの電圧値および前記電流検出部により検出される前記複数の電池セルの電流値に基づいて前記インピーダンスを算出し、
前記駆動制御部は、
所望する周波数を有する交流信号をパルス幅変調することにより前記スイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成するPWM変調器(35)と、
所望する周波数を有する交流信号をパルス粗密変調することにより前記駆動信号を生成するPDM変調器(36)と、
前記PWM変調器により生成される前記駆動信号により前記スイッチング素子を駆動する第1駆動状態と前記PDM変調器により生成される前記駆動信号により前記スイッチング素子を駆動する第2駆動状態とのいずれかに切り替える切替部(37)と、
を備える電池監視装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記交流信号の周波数が所定の閾値周波数を超える場合には前記第1駆動状態に切り替えるとともに、前記交流信号の周波数が前記閾値周波数以下である場合には前記第2駆動状態に切り替える請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記組電池に印加される前記交流電流の直流成分が所定の閾値電流を超える場合には前記第2駆動状態に切り替えるとともに、前記交流電流の直流成分が前記閾値電流以下である場合には前記第1駆動状態に切り替える請求項1または2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記電流検出部により検出される電流に基づいて前記交流電流の直流成分を検出するようになっている請求項3に記載の電池監視装置。
【請求項5】
さらに、前記負荷素子または前記電池セルの温度を検出する温度検出部(84)を備え、
前記切替部は、前記温度検出部により検出される温度に基づいて前記交流電流の直流成分を推定するようになっている請求項3に記載の電池監視装置。
【請求項6】
前記電流検出部は、
前記シャント抵抗の端子電圧をA/D変換するA/D変換器(31)と、
前記A/D変換器から出力されるデジタル信号に対し、前記交流信号と同じ周波数を有するSIN波信号およびCOS波信号をそれぞれ乗算することにより2つの乗算後信号を生成し、それら2つの乗算後信号のそれぞれについて積分フィルタ(40、41)を介して積分することにより前記複数の電池セルに流れる電流の検出値に対応した信号の実数部および虚数部を検出する直交ロックイン検出部(32)と、
を備え、
前記積分フィルタの動作周期は、前記交流信号の周期の整数倍の周期となっている請求項1から5のいずれか一項に記載の電池監視装置。
【請求項7】
前記PDM変調器により生成される前記駆動信号は、Return to Zeroの信号となっている請求項1から6のいずれか一項に記載の電池監視装置。
【請求項8】
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、前記電池セルを放電するための放電用抵抗(Rcb)を介して前記電池セルの低電位側端子に接続される第1接続端子(S1~S24)と、
前記放電用抵抗を介して前記組電池において最も高電位側に設けられる前記電池セルである最上位電池セル(Cb24)の高電位側端子に接続される第2接続端子(S25)と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、第1フィルタ用抵抗(Rp)を介して前記電池セルの高電位側端子に接続される第3接続端子(V1~V24)と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、第2フィルタ用抵抗(Rs)を介して前記電池セルの低電位側端子に接続される第4接続端子(W1~W24)と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、対応する前記電池セルに接続される前記第1接続端子と対応する前記電池セルに接続される前記第3接続端子との間に接続される第1フィルタ用容量(Cp)と、
前記複数の電池セルのそれぞれに対応して設けられ、前記最上位電池セルを除く前記電池セル(Cb1~Cb23)については対応する前記電池セルの上段側に隣接する前記電池セルに接続される前記第1接続端子と対応する前記電池セルに接続される前記第4接続端子との間に接続されるとともに、前記最上位電池セルについては前記第2接続端子と前記最上位電池セルに接続される前記第4接続端子との間に接続され
る第2フィルタ容量(Cs)と、
を備え、
前記第1電圧検出部は、検出対象の前記電池セルに対応する前記第1接続端子および前記第3接続端子を介して電圧を検出し、
前記第2電圧検出部は、前記最上位電池セルを除く前記電池セルについては、検出対象の前記電池セルの上段側に隣接する前記電池セルに対応する前記第1接続端子および検出対象の前記電池セルに対応する前記第4接続端子を介して電圧を検出し、前記最上位電池セルについては、前記第2接続端子および前記最上位電池セルに対応する前記第4接続端子を介して電圧を検出し、
前記第3電圧検出部は、前記最上位電池セルを除く前記電池セルについては、検出対象の前記電池セルの上段側に隣接する前記電池セルに対応する前記第1接続端子および検出対象の前記電池セルに対応する前記第1接続端子を介して電圧を検出し、前記最上位電池セルについては、前記第2接続端子および前記最上位電池セルに対応する前記第1接続端子を介して電圧を検出する請求項1から7のいずれか一項に記載の電池監視装置。
【請求項9】
前記第3電圧検出部は、
前記第1接続端子および前記第2接続端子の各電圧を入力し、それら入力された電圧のうち検出対象の前記電池セルの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力するマルチプレクサ(25)と、
前記マルチプレクサの出力電圧が入力される抵抗および容量を備えたフィルタ(22)と、
を備え、
前記フィルタの出力電圧に基づいて前記電池セルの電圧を検出する請求項8に記載の電池監視装置。
【請求項10】
少なくとも前記第1電圧検出部、前記第2電圧検出部および前記算出部は、半導体集積回路として構成されており、
前記フィルタを構成する前記抵抗および前記容量のうち少なくとも一部は、前記半導体集積回路の外部に設けられる外付けの素子により構成される請求項9に記載の電池監視装置。
【請求項11】
前記第3電圧検出部は、
前記フィルタの出力電圧を入力し、その入力された電圧にオフセットを付与するとともに増幅する増幅部(23)と、
前記増幅部の出力電圧をA/D変換するA/D変換器(20、64)と、
前記第1電圧検出部および前記第2電圧検出部のうち少なくとも一方の電圧の検出結果に基づいて前記増幅部における増幅率およびオフセットの量を制御するオフセット制御部(26)と、
を備える請求項9または10に記載の電池監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルが直列接続された組電池を監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池監視装置は、各電池セルのSOCを推定する機能、各電池セルの劣化状態を推定する機能、各電池セルの電圧を均等化する機能などを備えている。なお、SOCは、電池の充電状態を表す指標であり、State Of Chargeの略称である。電池監視装置では、これらの機能などを実現するため、電池セルの電圧を検出する電圧検出部が設けられている。上記した電池セルの劣化状態は、交流インピーダンス法により推定することができる。
【0003】
交流インピーダンス法では、組電池の端子間に例えば10Hz~5kHz程度の周波数を有する交流電流が印加された際における電池セルに流れる電流を検出し、その電流の検出値および電池セルの電圧の検出値に基づいて周波数毎のインピーダンスが算出され、それら周波数毎のインピーダンスに基づいて電池セルの劣化状態が推定される。そのため、従来の電池監視装置には、特許文献1に開示されるように、組電池の端子間に交流電流を印加するための構成である電流印加部、電池セルに流れる電流を検出するための構成である電流検出部などが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電池監視装置における電流印加部の具体的な構成例として、組電池の両端子間に直列に接続された負荷素子およびスイッチング素子と、上記した交流電流が組電池に印加されるようにスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を備えた構成を挙げることができる。この場合、スイッチング素子を駆動するための駆動信号は、所望する周波数を有する交流信号をパルス幅変調することにより生成することが一般的である。
【0006】
しかしながら、このような構成では、特に交流電流の周波数が比較的低い周波数となる低周波測定時、駆動信号のパルスが時間的に集中し易くなり、その結果、負荷素子、スイッチング素子などに発熱の時間的集中が生じる。このような発熱の時間的集中が生じると、動作の安全性が低下するといった問題、負荷素子の温度による特性変動に起因するインピーダンスの測定誤差が生じるといった問題などが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池セルの電圧検出の冗長監視を行うとともに、インピーダンスの算出における動作の安全性および算出精度を良好に維持することができる電池監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電池監視装置(1、51、61、71、81)は、複数の電池セル(Cb)が直列接続された構成の組電池(2)を監視するものであって、複数の電池セルの電圧を検出する第1電圧検出部(13)と、冗長監視のために複数の電池セルの電圧を検出する第2電圧検出部(14)と、組電池に交流電流を印加する電流印加部(30)と、電流印加部により組電池に交流電流が印加される期間における複数の電池セルの電圧を検出する第3電圧検出部(15、63)と、電池セルのインピーダンスを算出する算出部(34)と、を備える。
【0009】
電流印加部は、組電池の両端子間に直列に接続された負荷素子(6)、スイッチング素子(7)およびシャント抵抗(Rsh)と、所望する周波数を有する交流電流が組電池に印加されるようにスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部(29、74、85)と、を備える。算出部は、シャント抵抗の端子電圧に基づいて複数の電池セルに流れる電流を検出する電流検出部(33)を備え、第3電圧検出部により検出される複数の電池セルの電圧値および電流検出部により検出される複数の電池セルの電流値に基づいてインピーダンスを算出する。駆動制御部は、PWM変調器(35)、PDM変調器(36)および切替部(37)を備える。
【0010】
PWM変調器は、所望する周波数を有する交流信号をパルス幅変調することによりスイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成する。PDM変調器は、所望する周波数を有する交流信号をパルス粗密変調することにより駆動信号を生成する。切替部は、PWM変調器により生成される駆動信号によりスイッチング素子を駆動する第1駆動状態とPDM変調器により生成される駆動信号によりスイッチング素子を駆動する第2駆動状態とのいずれかに切り替える。
【0011】
このような構成によれば、複数の電池セルの電圧を検出する構成として、第1電圧検出部に加え、第2電圧検出部が設けられていることから、電池セルの電圧の冗長監視が可能となる。また、上記構成では、インピーダンス算出のために組電池に交流電流を流す際、交流信号をパルス幅変調することにより生成される駆動信号によりスイッチング素子が駆動される第1駆動状態および交流信号をパルス粗密変調することにより生成される駆動信号によりスイッチング素子が駆動される第2駆動状態のうちいずれかを選択することが可能となる。
【0012】
交流信号をパルス粗密変調することにより駆動信号を生成する場合、低周波測定時、駆動信号のパルスが時間的に集中し難くなる。そのため、上記構成では、低周波測定時、第2駆動状態を選択することにより、駆動信号のパルスの時間的集中、ひいては発熱の時間的集中を避けることができ、その結果、インピーダンス算出における動作の安全性および算出精度を良好に維持することができるという優れた効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の電池監視装置において、電流検出部は、シャント抵抗の端子電圧をA/D変換するA/D変換器(31)と、直交ロックイン検出部(32)と、を備える。直交ロックイン検出部は、A/D変換器から出力されるデジタル信号に対し、交流信号と同じ周波数を有するSIN波信号およびCOS波信号をそれぞれ乗算することにより2つの乗算後信号を生成し、それら2つの乗算後信号のそれぞれについて積分フィルタ(40、41)を介して積分することにより複数の電池セルに流れる電流の検出値に対応した信号の実数部および虚数部を検出する。
【0014】
駆動信号は、PWM変調器およびPDM変調器のいずれにより生成される場合にも矩形波の信号となることから高調波成分を含む。このような駆動信号に含まれる高調波成分は、直交ロックイン検出部における検出誤差に繋がるおそれがある。そこで、上記構成では、積分フィルタの動作周期は、交流信号の周期の整数倍の周期となっている。このようにすれば、高調波成分を積分フィルタのノッチと一致させることが可能となり、大きな減衰特性を得ることができる。したがって、上記構成によれば、検出誤差となる駆動信号の高調波成分を大きく減衰することが可能となるため、直交ロックイン検出部による検出のS/N比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る駆動制御部の具体的な構成例を示す図
【
図3】第1実施形態に係る交流信号およびPWM変調器により生成される駆動信号の一例を示す図
【
図4】第1実施形態に係る交流信号およびPDM変調器により生成される駆動信号の一例を示す図
【
図5】第1実施形態に係る直交ロックイン検出部の具体的な構成例を示す図
【
図6】第1実施形態に係る積分フィルタの特性および駆動信号のスペクトルの一例を示す図
【
図7】第1実施形態に係るPDM変調器により生成されるNRZの信号の駆動信号およびその非理想成分の波形の一例を示す図
【
図8】第1実施形態に係るPDM変調器により生成されるRZの信号の駆動信号およびその非理想成分の波形の一例を示す図
【
図9】第2実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
【
図10】第3実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
【
図11】第4実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
【
図12】PWMとPDMとの特徴を説明するための図
【
図13】PWMとPDMとの周波数スペクトルの一例を示す図
【
図14】第4実施形態の変形例に係る切替処理の流れを示す図
【
図15】第5実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図8を参照して説明する。
【0017】
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態の電池監視装置1は、組電池2の電圧などの各種状態を検出して組電池2の状態を監視する装置であり、電池監視のための各種の動作を行う回路が集積化された集積回路である電池監視IC3と、電池監視IC3の外部に設けられる複数の外付けの素子と、を備えている。なお、ICは、Integrated Circuitの略称である。組電池2は、例えば自動車などの車両に搭載されるものであり、一対の直流電源線L1、L2間に、複数個、例えば24個の電池セルCbが多段に直列接続された構成となっている。
【0018】
この場合、電池セルCbは、例えばリチウムイオン電池などの二次電池、燃料電池などである。なお、
図1では、24個の電池セルCbのうち4個の電池セルCbが示されており、それら4つの電池セルCbを区別するために、符号の末尾に数字を付している。この数字は、組電池2における電池セルCbの配置に対応するものであり、最も低電位側に配置される電池セルCbには1が付与され、高電位側に進むにつれて2、3、4、…と付与される数字が大きくなってゆき、最も高電位側に配置される電池セルCbには24が付与される。
【0019】
したがって、
図1には、最も低電位側に配置される電池セルCb1と、二番目に低電位側に配置される電池セルCb2と、二番目に高電位側に配置される電池セルCb23と、最も高電位側に配置される電池セルCb24とが示されている。これら4つの電池セルCb1、Cb2、Cb23、Cb24のそれぞれに対応して電池監視装置1に設けられる各構成についても、符号の末尾に同様の数字を付して区別することがある。ただし、これら各構成について、区別する必要がない場合には、末尾の符号を省略して総称することとする。
【0020】
<外付け素子の構成>
まず、電池監視IC3の外部に設けられる外付けの素子の構成について説明する。電池セルCb24の高電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S25に接続されているとともに、抵抗Rpおよび抵抗Rvを介して接続端子V24に接続されている。電池セルCb24の高電位側端子と抵抗Rcbとの間には、抵抗Rpおよび容量Cpが直列接続されている。電池セルCb24の低電位側端子および電池セルCb23の高電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S24に接続されているとともに、抵抗Rsを介して接続端子W24に接続されている。
【0021】
また、電池セルCb24の低電位側端子および電池セルCb23の高電位側端子は、抵抗Rpおよび抵抗Rvを介して接続端子V23に接続されている。電池セルCb24の高電位側端子と接続端子W24との間には、容量Csが接続されている。電池セルCb24の低電位側端子と、抵抗Rpおよび抵抗Rvの共通接続ノードであるノードN1との間には、容量Cpが接続されている。
【0022】
電池セルCb23の低電位側端子および図示しない電池セルCb22の高電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S23に接続されているとともに、抵抗Rsを介して接続端子W23に接続されている。また、電池セルCb23の低電位側端子および電池セルCb22の高電位側端子は、抵抗Rpおよび抵抗Rvを介して接続端子V22に接続されている。電池セルCb23の高電位側端子と接続端子W23との間には、容量Csが接続されている。電池セルCb23の低電位側端子と抵抗Rpおよび抵抗Rvの共通接続ノードであるノードN1との間には、容量Cpが接続されている。
【0023】
図示しない電池セルCb3の低電位側端子および電池セルCb2の高電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S3に接続されているとともに、抵抗Rsを介して接続端子W3に接続されている。また、電池セルCb3の低電位側端子および電池セルCb2の高電位側端子は、抵抗Rpおよび抵抗Rvを介して接続端子V2に接続されている。電池セルCb2の低電位側端子および電池セルCb1の高電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S2に接続されているとともに、抵抗Rsを介して接続端子W2に接続されている。
【0024】
また、電池セルCb2の低電位側端子および電池セルCb1の高電位側端子は、抵抗Rpおよび抵抗Rvを介して接続端子V1に接続されている。電池セルCb2の高電位側端子と接続端子W2との間には、容量Csが接続されている。電池セルCb2の低電位側端子と抵抗Rpおよび抵抗Rvの共通接続ノードであるノードN1との間には、容量Cpが接続されている。
【0025】
電池セルCb1の低電位側端子は、抵抗Rcbを介して接続端子S1に接続されているとともに、抵抗Rsを介して接続端子W1に接続されている。電池セルCb1の高電位側端子と接続端子W1との間には、容量Csが接続されている。電池セルCb1の低電位側端子と抵抗Rpおよび抵抗Rvの共通接続ノードであるノードN1との間には、容量Cpが接続されている。
【0026】
上記構成において、接続端子S1~S24は、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、抵抗Rcbを介して電池セルCbの低電位側端子に接続される第1接続端子として機能する。抵抗Rcbは、均等化の際に電池セルCbを放電するための放電用抵抗である。抵抗Rcbは、均等化時の電流制限抵抗として機能するため、その抵抗値は、他の抵抗の抵抗値に比べて小さい値、具体的には例えば数十Ω程度となっている。接続端子S25は、抵抗Rcbを介して組電池2において最も高電位側に設けられる最上位電池セルである電池セルCb24の高電位側端子に接続される第2接続端子として機能する。
【0027】
接続端子Vは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、抵抗Rpを介して電池セルCbの高電位側端子に接続される第3接続端子として機能する。抵抗Rpは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた第1フィルタ用抵抗として機能する。容量Cpは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、対応する電池セルCbに接続される接続端子Sと対応する電池セルCbに接続される接続端子Vとの間に接続される第1フィルタ用容量として機能する。この場合、抵抗Rpおよび容量Cpにより、いわゆるL型のLPFであるフィルタ4が構成されている。つまり、この場合、複数の電池セルCbのそれぞれに対応するようにフィルタ4が設けられている。
【0028】
接続端子Wは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられ、抵抗Rsを介して電池セルCbの低電位側端子に接続される第4接続端子として機能する。抵抗Rsは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた第2フィルタ用抵抗として機能する。容量Csは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられた第2フィルタ用容量Csとして機能する。
【0029】
最上位電池セルを除く電池セルCb1~Cb23に対応する容量Csは、対応する電池セルCbの上段側に隣接する電池セルCbに接続される接続端子Sと、対応する電池セルCbに接続される接続端子Wとの間に接続される。最上位電池セルである電池セルCb24に対応する容量Csは、接続端子S25と電池セルCb24に接続される接続端子W24との間に接続される。この場合、抵抗Rsおよび容量Csにより、いわゆるL型のLPFであるフィルタ5が構成されている。つまり、この場合、複数の電池セルCbのそれぞれに対応するようにフィルタ5が設けられている。
【0030】
直流電源線L1、L2間、つまり組電池2の両端子間には、負荷素子6、Nチャネル型のMOSトランジスタであるスイッチング素子7およびシャント抵抗Rshが直列に接続されている。負荷素子6の一方の端子は直流電源線L1に接続され、その他方の端子はスイッチング素子7のドレインに接続されている。スイッチング素子7のソースは、シャント抵抗Rshを介して直流電源線L2に接続されている。スイッチング素子7のゲートは、端子8に接続されている。この場合、負荷素子6は、電池セルCbを温めるためのPTCヒータを流用する形で構成されている。
【0031】
シャント抵抗Rshの各端子は、それぞれ抵抗Rzaを介して端子9、10に接続されている。端子9、10間には、容量Czaが接続されている。2つの抵抗Rzaおよび容量Czaにより、いわゆるパイ型のLPFであるフィルタ11が構成されている。外付け容量接続用の端子C1、C2間には、容量Czbが接続されている。
【0032】
<電池監視ICの内部の構成>
続いて、電池監視IC3の内部の構成について説明する。複数の電池セルCbのそれぞれに対応して均等化スイッチSWが設けられている。均等化スイッチSWは、例えばMOSトランジスタにより構成されており、抵抗Rcbとともに放電回路を構成する。均等化スイッチのオンオフは、制御部12により制御される。制御部12は、外部との通信のための通信I/F、各種のデータを格納するためのレジスタなどを含む構成であり、電池監視IC3の動作全般を制御する。なお、I/Fは、インターフェースの略称である。均等化の処理では、各電池セルCbの電圧が、最も低い電池セルCbの電圧と同程度の電圧となるように各放電回路の動作が制御される。
【0033】
均等化スイッチSWの具体的な接続形態は、次のようになっている。すなわち、電池セルCb24に対応する均等化スイッチSW24は、接続端子S25および接続端子S24の間に接続されている。電池セルCb23に対応する均等化スイッチSW23は、接続端子S24および接続端子S23の間に接続されている。図示しない電池セルCb22に対応する均等化スイッチSW22は、接続端子S23および図示しない接続端子S22の間に接続されている。電池セルCb2に対応する均等化スイッチSW2は、接続端子S3および接続端子S2の間に接続されている。電池セルCb1に対応する均等化スイッチSW1は、接続端子S2および接続端子S1の間に接続されている。
【0034】
電池監視IC3は、いずれも複数の電池セルCbの電圧を検出する第1電圧検出部13、第2電圧検出部14および第3電圧検出部15という3つの電圧検出部を備えている。第1電圧検出部13および第2電圧検出部14は、各電池セルCbのSOCの推定、均等化の処理などを実行するために電圧計測を行うものである。つまり、この場合、SOCの推定、均等化の処理などを実行するために電圧計測を行う構成が冗長化されている。
【0035】
第1電圧検出部13は、主計測を行うものであり、マルチプレクサ16およびA/D変換器17を備えている。第1電圧検出部13は、検出対象の電池セルCbに対応する接続端子S1~S24および接続端子V1~V24を介して電圧を検出する。第1電圧検出部13は、このような検出動作を実現するため、次のような構成を備えている。すなわち、マルチプレクサ16は、接続端子S1~S24および接続端子V1~V24の各電圧を入力し、それら入力された電圧のうち検出対象の電池セルCbの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力する。なお、本明細書では、マルチプレクサのことをMUXと省略することがある。
【0036】
具体的には、MUX16は、次のような選択動作を実行する。すなわち、MUX16は、検出対象の電池セルCbの末尾に付与される数字をnとして一般化したとき、接続端子Vnの電圧および接続端子Snの電圧を選択して出力する。例えば、検出対象が電池セルCb24である場合には接続端子V24、S24の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb23である場合には接続端子V23、S23の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb2である場合には接続端子V2、S2の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb1である場合には接続端子V1、S1の各電圧が出力される。
【0037】
A/D変換器17は、MUX16から出力される電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を出力する。なお、本明細書では、A/D変換器のことをADCと省略することがある。ADC17から出力されるデジタル信号は、第1電圧検出部13による電圧の検出結果を表す信号であり、デジタルフィルタ18に与えられている。デジタルフィルタ18は、ADC17から出力されるデジタル信号を入力し、その高周波成分を除去するLPFとして機能する。
【0038】
デジタルフィルタ18は、一般的なデジタルフィルタと同様に折り返しが生じるが、前述したフィルタ4などがアンチエイリアスフィルタとして機能することにより、その折り返しが抑制されている。デジタルフィルタ18のカットオフ周波数は、電池セルCbに発生するノイズの周波数などに応じて任意の値に設定することができる。デジタルフィルタ18の出力信号は、制御部12に与えられている。制御部12は、デジタルフィルタ18の出力信号に基づいて各電池セルCbの電圧の検出値を取得する。上記した構成の第1電圧検出部13による電圧の検出動作は、常時行われる。
【0039】
第2電圧検出部14は、冗長監視のために副計測を行うものであり、MUX19およびADC20を備えている。第2電圧検出部14は、最上位電池セルである電池セルCb24を除く電池セルCb1~Cb23については、検出対象の電池セルCbの上段側に隣接する電池セルCbに対応する接続端子Sおよび検出対象の電池セルCbに対応する接続端子Wを介して電圧を検出する。第2電圧検出部14は、最上位電池セルである電池セルCb24については、接続端子S25および電池セルCb24に対応する接続端子W24を介して電圧を検出する。第2電圧検出部14は、このような検出動作を実現するため、次のような構成を備えている。
【0040】
すなわち、MUX19は、接続端子S2~S25および接続端子W1~W24の各電圧を入力し、それら入力された電圧のうち検出対象の電池セルCbの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力する。具体的には、MUX19は、次のような選択動作を実行する。すなわち、MUX19は、検出対象の電池セルCbの末尾に付与される数字をnとして一般化したとき、接続端子Sn+1の電圧および接続端子Wnの電圧を選択して出力する。
【0041】
例えば、検出対象が電池セルCb24である場合には接続端子S25、W24の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb23である場合には接続端子S24、W23の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb2である場合には接続端子S3、W2の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb1である場合には接続端子S2、W1の各電圧が出力される。
【0042】
MUX19から出力される電圧は、セレクタ21に入力されている。セレクタ21には、後述する第3電圧検出部15が備えるフィルタ22の出力電圧も入力されている。セレクタ21は、第2電圧検出部14による検出動作が行われる期間には第2電圧検出部14のMUX19から出力される電圧を選択して出力し、第3電圧検出部15による検出動作が行われる期間には第3電圧検出部15のフィルタ22の出力電圧を選択して出力するようになっている。
【0043】
セレクタ21から出力される電圧は、後述する第3電圧検出部15が備える増幅部23に入力されている。増幅部23は、例えばゲインアンプであり、オフセットおよびゲインを切り替えて設定することができる構成となっている。増幅部23では、第2電圧検出部14による検出動作が行われる期間、オフセットが「0」に設定されるとともにゲインが「1」に設定されるようになっている。
【0044】
ADC20は、増幅部23から出力される電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を出力する。ADC20から出力されるデジタル信号は、制御部12に与えられている。制御部12は、ADC20から出力されるデジタル信号に基づいて各電池セルCbの電圧の検出値を取得する。上記した構成の第2電圧検出部14による電圧の検出動作は、断続的に行われる。
【0045】
第1電圧検出部13のADC17から出力されるデジタル信号および第2電圧検出部14のADC20から出力されるデジタル信号は、減算器24に入力されている。減算器24は、ADC17から出力されるデジタル信号が表すデジタル値からADC20から出力されるデジタル信号が表すデジタル値を減算した値を表す信号を出力する。減算器24の出力信号は、第1電圧検出部13により検出された電圧と第2電圧検出部14により検出された電圧との差に対応する誤差電圧を表す信号となる。減算器24の出力信号は、制御部12に与えられている。制御部12は、減算器24の出力信号に基づいて、SOCの推定、均等化の処理などを実行するために電圧計測を行う構成に関連する故障を診断する。
【0046】
第3電圧検出部15は、各電池セルCbの劣化状態の推定、つまり各電池セルCbのインピーダンスの算出を実行するために電圧計測を行うものであり、組電池2に後述する交流電流が印加される期間における複数の電池セルCbの電圧を検出する。第3電圧検出部15は、MUX25、フィルタ22、増幅部23、オフセット制御部26およびADC20を備えている。この場合、ADC20は、第2電圧検出部14と共用されている。第3電圧検出部15は、最上位電池セルである電池セルCb24を除く電池セルCb1~Cb23については、検出対象の電池セルCbの上段側に隣接する電池セルCbに対応する接続端子Sおよび検出対象の電池セルCbに対応する接続端子Sを介して電圧を検出する。
【0047】
第3電圧検出部15は、最上位電池セルである電池セルCb24については、接続端子S25および電池セルCb24に対応する接続端子S24を介して電圧を検出する。第3電圧検出部15は、このような検出動作を実現するため、次のような構成を備えている。すなわち、MUX25は、接続端子S1~S25の各電圧を入力し、それら入力された電圧のうち検出対象の電池セルCbの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力する。具体的には、MUX25は、次のような選択動作を実行する。
【0048】
すなわち、MUX25は、検出対象の電池セルCbの末尾に付与される数字をnとして一般化したとき、接続端子Sn+1の電圧および接続端子Snの電圧を選択して出力する。例えば、検出対象が電池セルCb24である場合には接続端子S25、S24の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb23である場合には接続端子S24、S23の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb2である場合には接続端子S3、S2の各電圧が出力され、検出対象が電池セルCb1である場合には接続端子S2、S1の各電圧が出力される。
【0049】
MUX25の各出力端子は、それぞれ抵抗Rzbを介してセレクタ21の各入力端子に接続されている。セレクタ21の各入力端子間には、前述した外付けの素子である容量Czbが接続されている。2つの抵抗Rzbおよび容量Czbにより、いわゆるパイ型のLPFであるフィルタ22が構成されている。抵抗Rzaおよび抵抗Rzaとして互いに抵抗値が同一のものを用いるとともに、容量Czbおよび抵抗Rzbとして互いに静電容量値が同一のものを用いることが最も望ましい。また、これら各抵抗値が同一でない場合、またはこれら各静電容量値が同一でない場合であっても、抵抗Rzaおよび容量Czaの積と抵抗Rzbおよび容量Czbの積が等しくなるように各素子の定数を選定すればよい。これら最も望ましい定数選定方法、およびそれに次いで望ましい定数選定方法によれば、フィルタ11およびフィルタ22のカットオフ周波数同一にすることができる。なお、上記した抵抗と容量の積を等しくすることができない場合、電圧測定系と電流測定系のそれぞれの特性を測定し、その測定結果に基づいて補正することが望ましい。このように、MUX25の出力電圧は、抵抗Rzbおよび容量Czbを備えたフィルタ22に入力されている。フィルタ22の出力電圧は、セレクタ21に入力されている。
【0050】
セレクタ21の後段に接続された増幅部23は、第3電圧検出部15による検出動作が行われる期間、フィルタ22の出力電圧を入力し、その入力された電圧にオフセットを付与するとともに増幅する。増幅部23における増幅率および増幅部23により付与されるオフセットの量は、オフセット制御部26により制御される。オフセット制御部26には、ADC17から出力されるデジタル信号が与えられている。
【0051】
オフセット制御部26は、第1電圧検出部13による電圧の検出結果に基づいて増幅部23における増幅率およびオフセットの量を制御する。第3電圧検出部15は、高精度な交流インピーダンスを測定するために、微小な交流電圧を測定する必要がある。そのため、所定の電池セルCbの電圧に対応したフィルタ22の出力電圧からDC値を引いた後に増幅して信号とノイズの比であるS/N比を向上させるようになっている。所定の電池セルCbのDC値は、第1電圧検出部13による電圧の検出結果に基づいて知ることが可能である。そこで、オフセット制御部26は、このような点を考慮して増幅部23における増幅率およびオフセットの量を制御するようになっている。
【0052】
前述したように、ADC20は、増幅部23から出力される電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を出力する。上記した構成の第3電圧検出部15による電圧の検出動作は、インピーダンスを算出する際に行われる。ADC20から出力されるデジタル信号は、直交ロックイン検出部27に与えられている。直交ロックイン検出部27には、SIN/COS生成部28から出力されるSIN波信号およびCOS波信号が与えられている。
【0053】
SIN/COS生成部28は、制御部12から与えられる指令に基づいて、所望する周波数を有する交流信号であるSIN波信号およびCOS波信号を生成して出力する。直交ロックイン検出部27は、例えばロックインアンプであり、ADC20から出力されるデジタル信号、つまり複数の電池セルCbの電圧の検出値に対応したデジタル信号の実数部および虚数部を検出する。直交ロックイン検出部27による検出結果を表す信号は、制御部12に与えられている。制御部12は、直交ロックイン検出部27から出力される信号に基づいて、インピーダンスの算出に用いるための各電池セルCbの電圧の検出値を取得する。
【0054】
駆動制御部29は、所望する周波数を有する交流電流、つまり励起電流が組電池2に印加されるようにスイッチング素子7の駆動を制御する。駆動制御部29は、前述した外付けの素子である負荷素子6、スイッチング素子7およびシャント抵抗Rshとともに、組電池2に交流電流を印加する電流印加部30を構成する。駆動制御部29には、SIN/COS生成部28から出力されるSIN波信号またはCOS波信号が与えられている。駆動制御部29は、SIN波信号またはCOS波信号に基づいて、スイッチング素子7を駆動するための駆動信号、つまり励起信号を生成する。この場合、駆動信号は、矩形波の信号となる。駆動制御部29から出力される駆動信号は、端子8を介してスイッチング素子7のゲートに与えられている。
【0055】
ADC31は、フィルタ11および端子9、10を介して入力されるシャント抵抗Rshの端子電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を出力する。ADC31から出力されるデジタル信号は、直交ロックイン検出部32に与えられている。ADC31および直交ロックイン検出部32は、シャント抵抗Rshの端子電圧に基づいて複数の電池セルCbに流れる電流を検出する電流検出部33を構成する。
【0056】
直交ロックイン検出部32は、例えばロックインアンプであり、ADC31から出力されるデジタル信号、つまり複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応したデジタル信号の実数部および虚数部を検出する。直交ロックイン検出部32による検出結果を表す信号は、制御部12に与えられている。制御部12は、直交ロックイン検出部32から出力される信号に基づいて、インピーダンスの算出に用いるための各電池セルCbの電流の検出値を取得する。
【0057】
制御部12は、上記したようにして取得した各電池セルCbの電圧の検出値および各電池セルCbの電流の検出値に基づいて、言い換えると、第3電圧検出部15により検出される複数の電池セルCbの電圧値および電流検出部33により検出される複数の電池セルCbの電流値に基づいて、電池セルCbのインピーダンスを算出する。この場合、制御部12は、電流検出部33とともに算出部34を構成する。
【0058】
上記したように、本実施形態の電池監視装置1において、第1電圧検出部13、第2電圧検出部14、第3電圧検出部15の一部および算出部34などは、電池監視IC3に内蔵されている、つまりICとして構成されている。また、本実施形態の構成において、第3電圧検出部15の一部、具体的には第3電圧検出部15が備えるフィルタ22を構成する容量Czbは、電池監視IC3の外部に設けられる外付けの素子により構成されている。
【0059】
<駆動制御部の具体的な構成>
駆動制御部29の具体的な構成としては、例えば
図2に示すような構成を採用することができる。
図2に示すように、駆動制御部29は、PWM変調器35、PDM変調器36および切替部37を備えている。前述したように、駆動制御部29には、SIN/COS生成部28から出力される交流信号であるSIN波信号またはCOS波信号が与えられるが、ここでは、駆動制御部29にSIN波信号が与えられているものとする。
【0060】
PWM変調器35は、SIN波信号をパルス幅変調することによりスイッチング素子7を駆動するための駆動信号を生成する。なお、PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。PWM変調器35により生成された駆動信号は、例えば
図3に示すように、SIN波信号の振幅に応じてパルス幅が変化する信号となっており、切替部37に与えられる。
【0061】
PDM変調器36は、ΔΣ変調器であり、SIN波信号をパルス粗密変調することにより駆動信号を生成する。なお、PDMは、Pulse Density Modulationの略称である。PDM変調器36により生成された駆動信号は、例えば
図4に示すように、SIN波信号の振幅に応じてパルスの密度が変化する信号となっており、切替部37に与えられる。この場合、PDM変調器36により生成された駆動信号は、Return to Zeroの信号となっている。なお、本明細書では、Return to ZeroのことをRZと省略することがある。
【0062】
切替部37は、PWM変調器35により生成された駆動信号およびPDM変調器36により生成された駆動信号のうちいずれか一方を選択して出力する。つまり、切替部37は、PWM変調器35により生成される駆動信号によりスイッチング素子7を駆動する第1駆動状態と、PDM変調器36により生成される駆動信号によりスイッチング素子7を駆動する第2駆動状態と、のいずれかに切り替える。切替部37による駆動状態の切り替えは、次のような考え方に基づいて行うことができる。
【0063】
すなわち、電池セルCbのインピーダンスを算出する際、駆動制御部29は、所望する周波数を有する交流電流が組電池2に印加されるようにスイッチング素子7の駆動を制御するが、その交流電流の周波数は、例えば10Hzから5kHzの範囲で掃引されるようになっている。そのため、SIN波信号またはCOS波信号である交流信号の周波数も、交流電流と同様に10Hzから5kHzの範囲で掃引される、つまり変化するようになっている。そして、PWMとPDMとには、次のような特徴がある。まず、スイッチング素子7のオンオフの切り替え頻度は、PWMのほうがPDMに比べて少ない。また、最小パルス幅は、PWMのほうが確保し易く、PDMでは比較的高い周波数となる高周波時に確保が困難となる。また、駆動信号がハイレベルとなる期間は、PDMでは長くなり難く、PWMでは比較的低い周波数となる低周波時に長くなる。
【0064】
交流電流の周波数が5kHzに近い比較的高い周波数である高周波時、PDMのようにスイッチング素子7のオンオフの切り替え頻度が多いと、電力の消費量が増えて安全な範囲での動作が困難になる。また、高周波時、PDMでは、リンギングが収まる程度のパルス幅にしなければならないとともに、交流信号の例えば100倍程度の周波数のパルスが必要となることから、そのパルス幅を狭くしなければならず、最小パルス幅を確保できなくなるおそれがある。
【0065】
一方、交流電流の周波数が10Hzに近い比較的低い周波数である低周波時、PWMでは、駆動信号がハイレベルとなる期間が長くなり、負荷素子6およびスイッチング素子7の発熱が時間的に集中し、安全な範囲での動作が困難になるとともに、負荷素子6の抵抗値、スイッチング素子7のオン抵抗などの素子特性の変動に伴い、電流値の検出、ひいてはインピーダンスの算出の精度が低下するおそれがある。
【0066】
そこで、この場合、切替部37は、SIN波信号の周波数が所定の閾値周波数を超える場合には第1駆動状態に切り替えるとともに、SIN波信号の周波数が閾値周波数以下である場合には第2駆動状態に切り替えるようになっている。閾値周波数は、5kHzに近い比較的高い周波数である高周波と、10Hzに近い比較的低い周波数である低周波との境界を設定するためのものであり、任意の値に設定することができる。閾値周波数は、例えば電池監視装置1の仕様などに応じて、上記した各課題を所望する程度に解消できるように設定することができる。
【0067】
<直交ロックイン検出部の具体的な構成>
直交ロックイン検出部32の具体的な構成としては、例えば
図5に示すような構成を採用することができる。なお、直交ロックイン検出部27の具体的な構成についても、直交ロックイン検出部32と同様の構成を採用することができる。
図5に示すように、直交ロックイン検出部32は、乗算器38、39およびデジタルフィルタである積分フィルタ40、41を備えている。乗算器38、39の各一方の入力端子にはADC31から出力されるデジタル信号が入力されている。
【0068】
乗算器38の他方の入力端子には、SIN/COS生成部28から出力されるCOS波信号が入力されている。乗算器39の他方の入力端子には、SIN/COS生成部28から出力されるSIN波信号が入力されている。乗算器38、39の各出力信号、つまり各乗算後信号は、それぞれ積分フィルタ40、41に入力されている。積分フィルタ40の出力信号は、ADC31から出力されるデジタル信号、つまり複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応した信号の実数部を表す信号となる。積分フィルタ41の出力信号は、ADC31から出力されるデジタル信号、つまり複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応した信号の虚数部を表す信号となる。
【0069】
上記構成によれば、直交ロックイン検出部32は、ADC31から出力されるデジタル信号に対し、SIN波信号およびCOS波信号をそれぞれ乗算することにより2つの乗算後信号を生成し、それら2つの乗算後信号のそれぞれについて積分フィルタ40、41を介して積分することにより複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応した信号の実数部および虚数部を検出するようになっている。
【0070】
本実施形態の構成では、スイッチング素子7を駆動するための駆動信号は矩形波であるため、高調波成分が生じる。このような高調波成分は検出誤差に繋がる。そこで、本実施形態では、積分フィルタ40、41に次のような工夫を加えることで上記高調波成分を減衰させてS/N比を向上させている。すなわち、積分フィルタ40、41は、
図6に破線で示すようなフィルタ特性を有している。つまり、積分フィルタ40、41は、ノッチを有するノッチフィルタ、つまりバンドストップフィルタとなっている。
また、下記(1)式に示すように、矩形波である駆動信号の成分xSquare(t)は高調波成分を含んでいる。
【0071】
【0072】
本実施形態では、上述した点を踏まえ、積分フィルタ40、41の動作周期は、駆動信号の基本周期、つまり駆動信号を生成するための元信号であるSIN波信号またはCOS波信号の周期の整数倍となっている。このようにすれば、
図6に実線で示すように、駆動信号の高周波成分が積分フィルタ40、41のノッチに一致するとともに、
図6に一点鎖線で示すように乗算後信号の高調波成分が積分フィルタ40、41のノッチに一致するため、大きな減衰特性が得られる。
【0073】
なお、積分フィルタ40、41は、デジタルフィルタであるため、その動作周期は、動的に変更することが容易である。前述したように、電池セルCbのインピーダンスを算出する際、SIN波信号またはCOS波信号の周波数は10Hz~5kHzの間で掃引されることから、駆動信号の基本周期も同様に変化する。したがって、駆動信号の基本周期の変化に応じて、積分フィルタ40、41の周期を変化させるようにすれば、常に大きな減衰特性を得ることができる。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の構成によれば、各電池セルCbのSOCの推定、均等化の処理などを実行するために複数の電池セルCbの電圧を検出する構成として、第1電圧検出部13に加え、第2電圧検出部14が設けられていることから、電池セルCbの電圧の冗長監視が可能となる。この場合、第1電圧検出部13は、抵抗Rpおよび容量Cpにより構成されたフィルタ4を介して各電池セルCbの電圧を検出する構成となる。また、この場合、第2電圧検出部14は、抵抗Rsおよび容量Csにより構成されたフィルタ5を介して各電池セルCbの電圧を検出する構成となる。
【0075】
そのため、上記構成では、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14の各フィルタ4、5について、互いに影響を受けることなく、同じカットオフ周波数を持つフィルタを構成することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14による各電圧検出についての検出誤差が低減され、その結果、電池セルCbの電圧検出の冗長監視を精度良く行うことができるという優れた効果が得られる。
【0076】
また、上記構成では、インピーダンス算出のための電圧検出を行う第3電圧検出部15は、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14とは異なる検出経路を介して各電池セルCbの電圧を検出するようになっている。そのため、上記構成では、第3電圧検出部15のフィルタとして、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14のフィルタとは独立したフィルタ22を設けることが可能となる。このようにすれば、第3電圧検出部15のフィルタ22のカットオフ周波数と、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14の各フィルタ4、5のカットオフ周波数と、を独立して設定することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、各電圧検出について用途に応じた適切なフィルタリング特性を得ることができるという優れた効果が得られる。
【0077】
インピーダンス算出のための電圧検出では、振幅だけでなく位相精度も重要であることから電池セルCb毎にフィルタのカットオフ周波数にばらつきが生じると、検出電圧の振幅および位相の誤差が生じてしまい、その結果、インピーダンスの算出精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態の電池監視装置1では、第3電圧検出部15は、接続端子S1~S25の各電圧を入力し、それら入力された電圧のうち検出対象の電池セルCbの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力するMUX25と、MUX25の出力電圧が入力される抵抗Rzbおよび容量Czbを備えたフィルタ22と、を備え、フィルタ22の出力電圧に基づいて電池セルCbの電圧を検出する。
【0078】
このような構成では、インピーダンス算出のための電圧検出を行う第3電圧検出部15は、同一のフィルタ22を介して各電池セルCbの電圧を検出することになる。そのため、上記構成によれば、電池セルCb毎にフィルタのカットオフ周波数がばらつくことがなくなることから、検出電圧の振幅および位相の誤差が低減され、その結果、インピーダンスの算出精度を良好に維持することができる。
【0079】
本実施形態の電池監視装置1では、第1電圧検出部13、第2電圧検出部14および算出部34などは電池監視IC3に内蔵されている一方で、第3電圧検出部15のフィルタ22を構成する容量Czbは、電池監視IC3の外部に設けられる外付けの素子により構成されている。このようにすれば、電池監視装置1の機能を実現するための各回路の大部分を集積化することにより装置の小型化および製造コストの低減を図ることができる。また、この場合、容量Czbは、外付けの素子であることから、その静電容量値を比較的大きいものを用いることが可能となる、つまり容量Czbの大容量化を容易に実現することができる。
【0080】
第3電圧検出部15は、フィルタ22の出力電圧を入力し、その入力された電圧にオフセットを付与するとともに増幅する増幅部23と、増幅部23の出力電圧をA/D変換するADC20と、第1電圧検出部13の電圧の検出結果に基づいて増幅部23における増幅率およびオフセットの量を制御するオフセット制御部26と、を備える。このような構成によれば、第3電圧検出部15にとって不要となるDC成分を予め減算しておいてからAC成分だけを増幅することができる。したがって、上記構成によれば、集積回路内のノイズに対するS/N比が改善され、電圧の検出ばらつきを低減することができる。
【0081】
本実施形態の電池監視装置1では、インピーダンス算出のために組電池2に交流電流を流す際、交流信号をパルス幅変調することにより生成される駆動信号によりスイッチング素子7が駆動される第1駆動状態および交流信号をパルス粗密変調することにより生成される駆動信号によりスイッチング素子7が駆動される第2駆動状態のうちいずれかを選択することが可能となる。
【0082】
交流信号をパルス粗密変調することにより駆動信号を生成する場合、低周波時に駆動信号のパルスが時間的に集中し難くなる。そのため、上記構成では、低周波時に第2駆動状態を選択することにより、駆動信号のパルスの時間的集中、ひいては発熱の時間的集中を避けることができ、その結果、インピーダンス算出における動作の安全性および算出精度を良好に維持することができるという優れた効果が得られる。また、上記構成では、高周波時に第1駆動状態を選択することにより、スイッチング素子7のオンオフの切り替え頻度を少なくして電力の消費量を低く抑えることができるとともに、最小パルス幅を確保することができる。
【0083】
インピーダンス算出のための電流検出部33は、シャント抵抗Rshの端子電圧をA/D変換するADC31と、直交ロックイン検出部32と、を備える。直交ロックイン検出部32は、ADC31から出力されるデジタル信号に対し、交流信号と同じ周波数を有するSIN波信号およびCOS波信号をそれぞれ乗算することにより2つの乗算後信号を生成し、それら2つの乗算後信号のそれぞれについて積分フィルタ40、41を介して積分することにより複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応した信号の実数部および虚数部を検出する。
【0084】
駆動信号は、PWM変調器35およびPDM変調器36のいずれにより生成される場合にも矩形波の信号となることから高調波成分を含む。このような駆動信号に含まれる高調波成分は、直交ロックイン検出部32における検出誤差に繋がるおそれがある。そこで、上記構成では、積分フィルタ40、41の動作周期は、交流信号の周期の整数倍の周期となっている。このようにすれば、高調波成分を積分フィルタ40、41のノッチと一致させることが可能となり、大きな減衰特性を得ることができる。したがって、上記構成によれば、検出誤差となる駆動信号の高調波成分を大きく減衰することが可能となるため、直交ロックイン検出部32による検出のS/N比を向上させることができる。
【0085】
本実施形態では、PDM変調器36により生成される駆動信号は、RZの信号となっている。なお、以下の説明では、PDM変調器36により生成される駆動信号のことをPDM駆動信号と称することとする。このようにすれば、PDM駆動信号をNon Return to Zeroの信号とした場合に比べ、次のような効果が得られる。なお、本明細書では、Non Return to ZeroのことをNRZと省略することがある。
【0086】
NRZの信号とされたPDM駆動信号の波形は、
図7の上段に示すような波形となる。なお、
図7および後述する
図8では、PDM駆動信号の理想波形を点線で示し、その実波形を実線で示している。
図7に示すように、NRZの信号であるPDM駆動信号の実波形と理想波形とには差異が生じており、その差異に応じた非理想成分が存在する。
図7の下段に示すように、非理想成分は、駆動信号の微分成分に比例したものであり、ランダム的なノイズとなる。すなわち、PDM駆動信号をNRZの信号とした場合、リンギング、スルーレートの低下、デューティ比ずれなどに起因してシンボル間干渉が発生してノイズフロアが上昇し、その結果、インピーダンスの算出におけるS/N比が劣化するおそれがある。
【0087】
一方、RZの信号とされたPDM駆動信号の波形は、
図8の上段に示すような波形となる。
図8に示すように、RZの信号であるPDM駆動信号の実波形と理想波形とにも差異が生じており、その差異に応じた非理想成分が存在する。しかし、この場合、
図8の厳談に示すように、非理想成分は、出力と同じタイミングとなることから、フロアノイズにならない。したがって、PDM駆動信号をRZの信号とした場合、インピーダンスの算出におけるS/N比を良好に維持することができる。
【0088】
ただし、PDM駆動信号をRZの信号とした場合、PDM駆動信号をNRZの信号とした場合に対し、信号振幅が小さくなるとともに、スイッチング素子7のスイッチング回数が増加することから消費電力が増える、といったデメリットがある。そこで、電池監視装置1の仕様として、インピーダンスの算出におけるS/N比よりも、これらの点を重要視するような仕様である場合などには、PDM信号をNRZの信号にすることもできる。
【0089】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図9を参照して説明する。
図9に示すように、本実施形態の電池監視装置51は、第1実施形態の電池監視装置1に対し、電池監視IC3に代えて電池監視IC6を備えている点などが異なっている。電池監視IC52は、電池監視IC3に対し、端子C1、C2が省かれるとともに、容量Czbが外付けから内蔵に変更されている点などが異なっている。つまり、本実施形態の電池監視装置51では、第1電圧検出部13、第2電圧検出部14、第3電圧検出部15および算出部34が電池監視IC52に内蔵されている、つまりICとして構成されている。
【0090】
以上説明した本実施形態の電池監視装置51によっても、第1実施形態の電池監視装置1と同様の動作を行うことができる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の電池監視装置51では、第3電圧検出部15のフィルタ22を構成する容量Czbも電池監視IC52に内蔵されている。このようにすれば、第1実施形態の電池監視装置1よりも更に集積化が図れることから、装置の小型化および製造コストの低減を一層図ることができる。
【0091】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図10を参照して説明する。
図10に示すように、本実施形態の電池監視装置61は、第1実施形態の電池監視装置1に対し、電池監視IC3に代えて電池監視IC62を備えている点などが異なっている。電池監視IC62は、第3電圧検出部15に代えて第3電圧検出部63を備えている点、セレクタ21が省かれている点などが異なっている。
【0092】
第3電圧検出部63は、第3電圧検出部15に対し、ADC20を第2電圧検出部14と共用するのに代えて、専用のADC64を備えている点などが異なっている。この場合、第2電圧検出部14において、MUX19から出力される電圧は、ADC20に直接入力されている。また、この場合、第3電圧検出部63において、フィルタ22の出力電圧は、増幅部23に入力されている。ADC64は、増幅部23から出力される電圧をA/D変換し、その変換結果として得られるデジタル信号を出力する。ADC64から出力されるデジタル信号は、直交ロックイン検出部27に与えられている。
【0093】
以上説明した本実施形態の電池監視装置61によっても、第1実施形態の電池監視装置1と同様の動作を行うことができる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の電池監視装置61によれば、第1実施形態の電池監視装置1に対し、セレクタ21が省かれるものの、セレクタ21に比べて大きな回路面積を要するADC64が追加されるため、その差分だけ回路規模が増加する。しかし、本実施形態の電池監視装置61によれば、第3電圧検出部63が専用のADC64を用いて電圧検出を行う構成となっていることから、第3電圧検出部63による電圧検出の高速化、ひいてはインピーダンスの算出の高速化を図ることができる。
【0094】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図11~
図14を参照して説明する。
図11に示すように、本実施形態の電池監視装置71は、第1実施形態の電池監視装置1に対し、電池監視IC3に代えて電池監視IC72を備えている点などが異なっている。電池監視IC72は、電池監視IC3に対し、波高/DC検出部73が追加されている点、駆動制御部29に代えて駆動制御部74を備えている点などが異なっている。
【0095】
波高/DC検出部73は、ADC31から出力されるデジタル信号、つまり複数の電池セルCbに流れる電流の検出値に対応したデジタル信号に基づいて、組電池2に印加される交流電流の波高またはDC値、つまり直流成分を検出する。波高/DC検出部73は、直流成分の検出値を表す信号を駆動制御部74へ出力する。駆動制御部74は、駆動制御部29と同様の構成であるが、切替部37の動作が駆動制御部29とは異なっている。
【0096】
この場合、切替部37は、波高/DC検出部73から出力される信号に基づいて、言い換えると電流検出部33により検出される電流に基づいて、交流電流の直流成分の値を検出するようになっており、その検出した直流成分の値に基づいて駆動状態の切り替えを行う。具体的には、本実施形態の切替部37は、交流電流の直流成分が所定の閾値電流を超える場合には第2駆動状態に切り替えるとともに、交流電流の直流成分が閾値電流以下である場合には第1駆動状態に切り替えるようになっている。なお、閾値電流は、例えば電池監視装置71の仕様などに応じて、後述する課題を所望する程度に解消できるような任意の値に設定することができる。
【0097】
以上説明した本実施形態の電池監視装置71によっても、第1実施形態の電池監視装置1と同様の動作を行うことができる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の電池監視装置71によれば、次のような効果が得られる。すなわち、従来、インピーダンスの算出に対するユーザの要求として、S/N比を向上して算出精度を高めたいという要求と、算出の際の消費電力を低く抑えたいという要求とがある。
【0098】
しかし、算出精度を高めるためには組電池2に印加する交流電流を大きくする必要があり、そうすると、消費電力が大きくなる。また、消費電力を小さく抑えるためには組電池2に印加する交流電流を小さくする必要がり、そうするとシャント抵抗Rshの端子電圧が小さくなることから算出精度が低くなる。つまり、これらの各要求は、トレードオフの関係にあるため、その両立が難しいという課題があった。
【0099】
本実施形態では、これらの要求を両立するため、次のような考え方に基づいて、切替部37による駆動状態の切り替えを行うようになっている。すなわち、PWMとPDMとには、
図12に示すような特徴がある。組電池2に印加される交流電流の振幅に相当する最大主信号振幅は、PWMでは「4/π≒1.273」となり、PDMでは「1」となる。なお、最大主信号振幅は、駆動信号のパルス高との比で表されている。そのため、最大主信号振幅の観点で見れば、PWM変調器35により駆動信号を生成する場合は、PDM変調器36により駆動信号を生成する場合に対し、S/N比を高めることができる。
【0100】
PWMでは、パルス幅を変更することにより、交流電流の直流成分、つまりDC電流を低減することができる。一方、PDMでは、交流信号であるSIN波信号またはCOS波信号の直流成分および振幅を変更することにより、DC電流を容易に低減することができる。また、PDMでは、RZの信号である駆動信号のパルス幅を変更することにより、DC電流を低減することもできる。そのため、PDM変調器36により駆動信号を生成する場合は、PWM変調器35により駆動信号を生成する場合に対し、DC電流を容易に低減することができる。
【0101】
PWMおよびPDMは、
図13に示すように、周波数スペクトルが異なっている。PWMでは、デューティ比が50%の場合には奇数次の高調波だけが発生するものの、デューティ比が50%以下の場合には奇数次だけでなく偶数次の高調波も発生する。そのため、PWMでは、信号近傍にノイズが多くなる。一方、PDMでは、PWMに比べて高調波が極めて小さい。したがって、周波数スペクトルの観点で見れば、PDM変調器36により駆動信号を生成する場合は、PWM変調器35により駆動信号を生成する場合に対し、S/N比を高めることができる。
【0102】
また、本実施形態の構成では、交流電流の大きさ、より具体的には交流電流の直流成分の大きさは、次のような理由から変化する。すなわち、この場合、負荷素子6は、PTCヒータを流用したものであるため、その抵抗値は温度に比例して変化する。したがって、負荷素子6近傍の温度が高くなるほど負荷素子6の抵抗値は大きくなり、負荷素子6近傍の温度が低くなるほど負荷素子6の抵抗値は小さくなる。
【0103】
このような点を考慮し、本実施形態の切替部37は、前述した2つの要求を満たすため、交流電流の大きさに基づいて第1駆動状態と第2駆動状態とを切り替えるようになっている。具体的には、切替部37は、交流電流の直流成分が所定の閾値電流を超える場合にはPDM変調器36により生成される駆動信号によりスイッチング素子7を駆動する第2駆動状態に切り替えるとともに、交流電流の直流成分が閾値電流以下である場合にはPWM変調器35により生成される駆動信号によりスイッチング素子7を駆動する第1駆動状態に切り替えるようになっている。
【0104】
このようにすれば、交流電流が比較的小さい場合にはPWMの最大主信号振幅に関する特徴によりS/N比を高めることが可能となり、その結果、インピーダンスの算出精度を高めるとともに、算出の際の消費電力を低く抑えることができる。また、交流電流が比較的大きい場合にはPDMによりDC電流を容易に低減することが可能となり、その結果、インピーダンスの算出精度を高めるとともに、算出の消費電力を低く抑えることができる。このように、本実施形態によれば、インピーダンスの算出について、S/N比を向上して算出精度を高めるとともに、算出の際の消費電力を低く抑えることができるという優れた効果が得られる。
【0105】
<切替部の変形例>
切替部37は、本実施形態で説明した交流電流の直流成分に基づいた切り替えと、第1実施形態で説明した交流信号の周波数に基づいた切り替えと、を組み合わせた切替処理を行うように変形することができる。このような切替処理について、
図14を参照して説明する。まず、ステップS100では、交流信号の周波数が閾値周波数を超えるか否かが判断される。ここで、交流信号の周波数が閾値周波数を超える場合、ステップS100で「YES」となり、ステップS200に進む。ステップS200では、PWM変調器35を用いた第1駆動状態への切り替えが選択される。ステップS200の実行後、本処理が終了となり、インピーダンスの算出に関する各種の動作が開始される。
【0106】
一方、交流信号の周波数が閾値周波数以下である場合、ステップS100で「NO」となり、ステップS300に進む。ステップS300では、交流電流の直流成分が検出される。ステップS300の実行後は、ステップS400に進み、検出された交流電流の直流成分が閾値電流を超えるか否かが判断される。ここで、検出された交流電流の直流成分が閾値電流以下である場合、ステップS400で「NO」となり、ステップS200に進む。一方、検出された交流電流の直流成分が閾値電流を超える場合、ステップS400で「YES」となり、ステップS500に進む。
【0107】
ステップS500では、PDM変調器36を用いた第2駆動状態への切り替えが選択される。ステップS500の実行後は、ステップS600に進み、検出された交流電流の直流成分の値に応じて、交流信号の直流成分、つまりDC値および振幅が設定される。ステップS600の実行後、本処理が終了となり、インピーダンスの算出に関する各種の動作が開始される。このような変形例によれば、交流信号の周波数および交流電流の直流成分の双方に基づいて、PWM変調器35を用いた第1駆動状態およびPDM変調器36を用いた第2駆動状態のうち最適な駆動状態を選択することが可能となる。
【0108】
<駆動制御部の変形例>
駆動制御部74は、PWM変調器35により駆動信号を生成する構成またはPDM変調器36により駆動信号を生成する構成とすることができる。これらの変形例では、第1駆動状態および第2駆動状態の切り替えを行う切替部37は省かれることになる。このような変形例の駆動制御部74は、波高/DC検出部73から出力される信号に基づいて、言い換えると電流検出部33により検出される電流に基づいて、交流電流の直流成分の値を検出し、その検出した直流成分の値に基づいて、交流電流の直流成分、つまりDC電流を調整するDC電流制御を行うようになっている。すなわち、変形例の駆動制御部74は、PWM変調器35またはPDM変調器36の動作を制御することにより組電池2に印加される交流電流の直流成分を調整するDC電流制御を実行することができる構成となっている。
【0109】
変形例の駆動制御部74によるDC電流制御の具体的な内容としては、例えば次のようなものを挙げることができる。PWM変調器35により駆動信号を生成する構成の駆動制御部74は、パルス幅を変更することによりDC電流を調整することができる。また、PDM変調器36により駆動信号を生成する構成の駆動制御部74は、交流信号であるSIN波信号またはCOS波信号の直流成分および振幅を変更することによりDC電流を調整することができる。また、上記PDM変調器36により生成される駆動信号がRZの信号である場合、駆動制御部74は、そのRZの信号のパルス幅を変更することによりDC電流を調整することができる。
【0110】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について
図15を参照して説明する。
図15に示すように、本実施形態の電池監視装置81は、第1実施形態の電池監視装置1に対し、温度センサ82が追加されている点、電池監視IC3に代えて電池監視IC83を備えている点などが異なっている。温度センサ82は、負荷素子6または電池セルCbの近傍に設けられたものであり、負荷素子6または電池セルCbの温度に対応した温度検出信号Saを出力する。
【0111】
電池監視IC83は、電池監視IC3に対し、温度検出部84が追加されている点、駆動制御部29に代えて駆動制御部85を備えている点などが異なっている。温度検出部84は、温度センサ82から出力される温度検出信号Saに基づいて負荷素子6または電池セルCbの温度を検出する。本実施形態では、温度センサ82が負荷素子6の近傍に設けられており、温度検出部84が負荷素子6の温度を検出するようになっているものとする。温度検出部84は、負荷素子6の温度の検出値を表す信号を駆動制御部85へ出力する。
【0112】
負荷素子6の温度は、負荷素子6の抵抗値と相関があることから、駆動制御部85は、負荷素子6の温度から負荷素子6の抵抗値を割り出すことができる。また、電池監視装置81では、組電池2の総電圧を測定するようになっていることから、駆動制御部85は、総電圧の値を取得することができる。なお、電池監視装置81が組電池2の総電圧を測定していない場合であっても、各電池セルCbの電圧の総和から総電圧の値を求めることができる。
【0113】
そこで、駆動制御部85の切替部37は、温度検出部84により検出される温度と、組電池2の総電圧とに基づいて、交流電流の直流成分を推定する。本実施形態の切替部37は、このように推定した交流電流の直流成分に基づいて、第4実施形態の切替部37と同様に駆動状態の切り替えを行うようになっている。したがって、本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0114】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0115】
第1実施形態および第2実施形態における増幅部23は、セレクタ21とADC20との間、つまりセレクタ21の後段に設けられていたが、フィルタ22とセレクタ21との間、つまりセレクタ21の前段に設けることもできる。
【0116】
上記各実施形態では、オフセット制御部26は、第1電圧検出部13の電圧の検出結果に基づいて増幅率およびオフセットの量を制御するようになっていたが、これに代えて、または、これに加えて、第2電圧検出部14の電圧の検出結果に基づいて増幅率およびオフセットの量を制御することもできる。つまり、オフセット制御部26は、第1電圧検出部13および第2電圧検出部14のうち少なくとも一方の電圧の検出結果に基づいて増幅部23における増幅率およびオフセットの量を制御することができる。
【0117】
上記各実施形態では、フィルタ22を構成する2つの抵抗Rzbは、ICに内蔵されていたが、これらをICの外付けの素子により構成することもできる。つまり、フィルタ22を構成する2つの抵抗Rzbおよび容量Czbは、その全てまたは一部を、外付けの素子により構成することができる。抵抗Rzbおよび容量Czbに加えて抵抗Rzaおよび容量CzaをICに内蔵すれば、フィルタ11、22を構成する全ての素子が同一チップ内に設けられることになるため、それらの特性を一致させ易いというメリットがある。
第5実施形態の駆動制御部85は、第4実施形態の変形例の駆動制御部74と同様の変形が可能である。すなわち、駆動制御部85は、推定した交流電流の直流成分の値に基づいて、第4実施形態の変形例で説明したDC電流制御を行うように変形することができる。
【0118】
上記各実施形態では、フィルタ11を構成する2つの抵抗Rzaおよび容量Czaは、ICの外付けの素子により構成されていたが、これらの全てまたは一部をICに内蔵することもできる。
【0119】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0120】
1、51、61、71、81…電池監視装置、2…組電池、6…負荷素子、7…スイッチング素子、13…第1電圧検出部、14…第2電圧検出部、15、63…第3電圧検出部、20、64…A/D変換器、22…フィルタ、23…増幅部、25…MUX、26…オフセット制御部、29、74、85…駆動制御部、30…電流印加部、31…A/D変換器、32…直交ロックイン検出部、33…電流検出部、34…算出部、35…PWM変調器、36…PDM変調器、37…切替部、40、41…積分フィルタ、84…温度検出部、Cb…電池セル、Cp…容量、Cs…容量、Czb…容量、S1~S24…接続端子、S25…接続端子、Rcb…抵抗、Rp…抵抗、Rs…抵抗、Rsh…シャント抵抗、Rzb…抵抗、V1~V24…接続端子、W1~W24…接続端子。