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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】発光装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20240618BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240618BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20240618BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240618BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240618BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240618BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240618BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20240618BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20240618BHJP
   F21Y 115/00 20160101ALN20240618BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/62
H01L33/54
H05K1/02 J
H05K3/28 C
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V5/00 510
F21V13/02 400
F21V17/00 200
F21Y115:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211817
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098333
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】武田 重郎
(72)【発明者】
【氏名】下西 正太
(72)【発明者】
【氏名】木村 友
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165190(JP,A)
【文献】特開2014-216416(JP,A)
【文献】特表2008-541412(JP,A)
【文献】特開2013-004815(JP,A)
【文献】特開2020-102512(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110715(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/079915(WO,A1)
【文献】特開2020-102510(JP,A)
【文献】特開2013-030572(JP,A)
【文献】特開2012-004517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0058834(US,A1)
【文献】特開2018-037259(JP,A)
【文献】特開2016-066742(JP,A)
【文献】特開2010-229382(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H05K 1/00-1/02
H05K 3/28
F21V 19/00ー19/06
F21V 5/00
F21V 13/02
F21V 17/00ー17/20
F21Y 115/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装された発光素子と、
前記発光素子の上のレンズと、
前記基板と前記発光素子の間の隙間を埋めるアンダーフィルと、
を有し、
前記基板は、
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する基材と、
前記基材の前記第2面の上の回路パターンと、
前記回路パターンを部分的に覆うソルダーレジスト層と、
を有し、
前記レンズは、
前記ソルダーレジスト層と対面する領域の境界の少なくとも一部を構成する外周部を有し、
前記レンズの前記外周部における前記基材の前記第1面から最も遠い位置までの第1距離と前記レンズの前記外周部における前記基材の前記第1面から最も近い位置までの第2距離との差は
0μm以上100μm以下であり、
前記アンダーフィルの硬化前における粘度は、前記レンズの硬化前における粘度よりも低く、
前記ソルダーレジスト層は、
第1層と、
前記第1層の上に配置され、前記レンズと接触する第2層と、を有し、
前記第1層の材質は、エポキシ、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、またはフッ化シラン系樹脂であり、
前記第2層の材質は、前記第1層よりも前記レンズから剥離させやすい材質であって、メチルシリコーン、ジメチルシリコーン、酸化チタン、アルミナ、または、アルミナもしくはジルコニアを含む白色材料である、
ことを含む発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記回路パターンは、
金属層を有し、
前記基材の前記第2面の面積に対する前記回路パターンの前記金属層が占める面積の比が
50%以上であること
を含む発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
前記回路パターンは、
ベタパターンから絶縁部分を選択的に絶縁したパターンであること
を含む発光装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の発光装置において、
前記回路パターンは、
金属層を有し、
前記金属層は、
回路となる回路領域と回路とならない非回路領域とを有し、
前記非回路領域は、
前記回路領域を挟むように配置されていること
を含む発光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第2層の材質は、メチルシリコーンである、
ことを含む発光装置。
【請求項6】
基板の上にソルダーレジスト層を形成する工程と、
前記基板の上に発光素子を実装する工程と、
前記基板と前記発光素子との間の隙間をアンダーフィルで埋める工程と、
前記発光素子の上にレンズの材料を滴下してレンズを形成する工程と、
前記発光素子を通電させることにより前記発光素子の発光状態を検査する工程と、
前記発光状態の光出力が予め定めた閾値に満たない場合に前記レンズおよび前記発光素子を前記基板から除去する工程と、
を有し、
前記ソルダーレジスト層を形成する工程では、
第1層を形成し、前記第1層の上に第2層を形成し、
前記レンズを形成する工程では、
前記第2層の上にレンズの材料を滴下し、
前記アンダーフィルの硬化前における粘度は、前記レンズの硬化前における粘度よりも低く、
前記第1層の材質は、エポキシ、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、またはフッ化シラン系樹脂であり、
前記第2層の材質は、前記第1層よりも前記レンズから剥離させやすい材質であって、メチルシリコーンである、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置の製造方法において、
前記レンズおよび前記発光素子を除去する工程では、
把持部により前記レンズおよび前記発光素子を把持して前記第2層の上から前記レンズおよび前記発光素子を剥がすこと
を含む発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、発光素子を有する発光装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置として、例えば、LEDバックライトモジュールがある。LEDバックライトモジュールにおいては、基板の上に多数の半導体発光素子が実装され、それぞれの半導体発光素子の上にレンズが形成されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズの材料である透明樹脂を基板の上に滴下する滴下法が開示されている。特許文献1に記載の技術においては、透明樹脂を基板に滴下する直前までに透明樹脂を硬化温度以下の温度に加熱する(特許文献1の請求項1、段落[0021])。これにより、透明樹脂が硬化するまでの時間が短縮され、レンズが基板に広がりすぎることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-102512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
滴下法により形成されるレンズの形状は、透明樹脂の粘性、透明樹脂が硬化するまでの時間、基板の表面材料と滴下される透明樹脂との間の濡れ性(接触角)、基板の形状等、に依存する。
【0006】
例えば、滴下法によりレンズを形成する基板の形状が複雑であれば、形成されるレンズの形状も不安定となる。すなわち、所望の形状のレンズを形成することが困難である。レンズの形状が安定しなければ、半導体発光素子からの配光にばらつきが出るおそれがある。したがって、均一な形状のレンズを形成することが好ましい。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、形状が均一なレンズを有する発光装置とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様における発光装置は、基板と、基板に実装された発光素子と、発光素子の上のレンズと、基板と発光素子の間の隙間を埋めるアンダーフィルと、を有する。基板は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有する基材と、基材の第2面の上の回路パターンと、前記回路パターンを部分的に覆うソルダーレジスト層と、を有する。レンズは、ソルダーレジスト層と対面する領域の境界の少なくとも一部を構成する外周部を有する。レンズの外周部における基材の第1面から最も遠い位置までの第1距離とレンズの外周部における基材の第1面から最も近い位置までの第2距離との差は0μm以上100μm以下である。アンダーフィルの硬化前における粘度は、レンズの硬化前における粘度よりも低い。ソルダーレジスト層は、第1層と、第1層の上に配置され、レンズと接触する第2層と、を有し、第2層は、第1層よりもレンズから剥離させやすい材質である。
【0009】
この発光装置においては、レンズの外周部において、基板からの高さがほぼ均一である。このため、レンズの材料である透明樹脂が発光素子の上に滴下されてから硬化するまでの間に、透明樹脂の表面張力が透明樹脂の表面にほぼ均等にかかる。これにより、好適な形状のレンズを形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、形状が均一なレンズを有する発光装置とその製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の発光装置100の概略構成図である。
図2図1のII-II断面を示す図である。
図3図1のIII-III断面を示す図である。
図4】第1の実施形態の発光装置100のレンズ140の形状を説明するための図である。
図5】第1の実施形態の変形例における回路パターンを示す図(その1)である。
図6】第1の実施形態の変形例における回路パターンを示す図(その2)である。
図7】第2の実施形態の発光装置200の概略構成図である。
図8】第3の実施形態の発光装置300の概略構成図である。
図9】第3の実施形態の素子交換装置1000の概略構成図である。
図10】第3の実施形態の素子交換装置1000の交換部1600の概略構成図である。
図11】第3の実施形態の素子交換方法を説明するための図(その1)である。
図12】第3の実施形態の素子交換方法を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、発光装置および発光装置の製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。実施形態とは異なる構造を有していても構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みの比は、概念的に示したものであり、実際の厚みの比を示しているとは限らない。
【0013】
(第1の実施形態)
1.発光装置
図1は、第1の実施形態の発光装置100の概略構成図である。発光装置100は、例えば、バックライト等に用いられる。そのため発光装置100は、多数の発光素子を有する。図1においては、1個の発光素子の周辺が描かれている。また、図1においては、複数層が重なった状態で描かれている。また、図1においては、発光素子の下の配線がハッチングされた領域として示されている。
【0014】
図2は、図1のII-II断面を示す図である。図2に示すように、発光装置100は、基板110と、半田層120と、発光素子130と、レンズ140と、を有する。
【0015】
基板110は、基材111と、回路パターン112と、ソルダーレジスト層113と、を有する。基材111は、基板110およびその上に実装される発光素子130等を支持する。回路パターン112は、発光素子130に電力を供給する回路を有する。ソルダーレジスト層113は、回路パターン112の表面を保護する。
【0016】
基材111は、第1面111aと第2面111bとを有する。第2面111bは第1面111aの反対側の面である。第1面111aの上には構造体が形成されていない。第2面111bの上には回路パターン112およびソルダーレジスト層113が形成されている。
【0017】
回路パターン112は基材111の第2面111bの上に形成されている。回路パターン112は、多数の配線を有する。つまり、回路パターン112は金属層を有する。回路パターン112は、例えば、基材111の側からCu、Ni、Pd、Auの順で形成されている。もちろん、金属層の積層構造は上記以外であってもよい。
【0018】
ソルダーレジスト層113は回路パターン112を部分的に覆っている。ソルダーレジスト層113は発光素子130を実装する領域を覆っていない。ソルダーレジスト層113の材質は、例えば、フッ化シラン系樹脂、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーン、有機変性シリコーン、エポキシである。
【0019】
半田層120は、発光素子130を基板110に実装するための層である。半田層120は、回路パターン112の一部と、発光素子130の電極とを接合する。このため、発光素子130は外部電源から電力の供給を受けることができる。半田層120の材質は、もちろん、半田である。例えば、Au-Sn半田である。
【0020】
発光素子130は、基板110に実装された半導体発光素子である。発光素子130は電力の供給を受けて発光する。発光素子130を実装する領域には、ソルダーレジスト層113が形成されていない。図2に示すように、発光素子130の形成領域は、凹部U1が形成されている。凹部U1では、ソルダーレジスト層113で覆われずに回路パターン112が部分的に露出している。凹部U1はソルダーレジスト層113に囲まれた領域である。発光素子130は回路パターン112の部分的な露出部分に半田層120により接合されている。
【0021】
レンズ140は、発光素子130からの光を外部に好適に取り出すための光学部品である。レンズ140は、発光素子130からの配光を改善する。レンズ140は、発光素子130の上に位置するとともに発光素子130の周囲を覆っている。レンズ140は曲面部141と外周部142とを有する。レンズ140は、滴下法により基板110および発光素子130の上に形成されている。レンズ140の材料は透明樹脂である。レンズ140の材料は、例えば、フッ化シラン系樹脂、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーン、有機変性シリコーン、エポキシである。
【0022】
図3は、図1のIII-III断面を示す図である。図3に示すように、回路パターン112は、基材111とソルダーレジスト層113との間に挟まれている。回路パターン112が存在する位置においては、ソルダーレジスト層113は、回路パターン112の上に形成されている。回路パターン112が存在しない位置においては、ソルダーレジスト層113は、基材111の上に形成されている。
【0023】
2.基板の表面形状と液滴の表面張力との間の関係
基板110のソルダーレジスト層113は、レンズ140と接触している。レンズ140は滴下法により形成されているため、レンズ140の形状は、レンズ140との接触面であるソルダーレジスト層113の形状の影響を受ける。
【0024】
図4は、第1の実施形態の発光装置100のレンズ140の形状を説明するための図である。ただし、発光素子130は省略されている。外周部142は、レンズ140のうち基板110と対面する領域のうちの外縁に位置するとともに、円周に近い形状の領域である。外周部142は、レンズ140の全周にわたって存在するほぼ円形の領域である。レンズ140の外周部142は、ソルダーレジスト層113または回路パターン112または基材111と接触している。また、外周部142のうちでも、基板110に対して高い位置と低い位置とが存在する。
【0025】
箇所142aは、基材111の第1面111aから最も遠い位置に位置する外周部142上の点である。箇所142aはソルダーレジスト層113の上に位置している。
【0026】
箇所142bは、基材111の第1面111aから最も近い位置に位置する外周部142上の点である。箇所142bは基材111または回路パターン112の上に位置している。
【0027】
ここで、距離H1は、箇所142aと箇所142bとの間の距離である。つまり、距離H1は、基材111の第1面111aから最も遠い位置に位置する外周部142の箇所142aと基材111の第1面111aから最も近い位置に位置する外周部142の箇所142bとの間の基板110の厚み方向の距離である。
【0028】
ここで、距離H1が大きいほど、外周部142上の箇所142aより上方の位置の箇所141aと、外周部142上の箇所142bより上方の位置の箇所141bと、の間で、表面張力の加わり方が異なる。つまり、距離H1が大きいほど、レンズ140は変形する傾向にある。
【0029】
したがって、距離H1を小さくすることが好ましい。なお、レンズ140の形状のうち、基板110に接触している領域はレンズ140のドーム形状にほとんど影響しない。
【0030】
3.レンズ
図3に示すように、レンズ140とソルダーレジスト層113とは、ある接触角θをなしている。接触角θはレンズ140の外周部142におけるレンズ140とソルダーレジスト層113とがなす角の角度である。ここで、接触角θが大きいほど、レンズ140の径に対するレンズ140の高さが高い傾向にある。
【0031】
レンズ140の表面141は、回転放物面または回転放物面に近い曲面を有する。発光装置100は、レンズ140の表面から好適な配光の光を発する。
【0032】
レンズ140は、ソルダーレジスト層113と対面する領域の境界の少なくとも一部を構成する外周部142を有する。距離H1は0μm以上100μm以下である。すなわち、レンズ140の外周部142における基材111の第1面111aから最も遠い位置までの第1距離とレンズ140の外周部142における基材111の第1面111aから最も近い位置までの第2距離との差は0μm以上100μm以下である。好ましくは、5μm以上50μm以下である。より好ましくは、10μm以上30μm以下である。なお、この距離H1は、ソルダーレジスト層113の高さと一致する場合もあれば、回路パターン112とソルダーレジスト層113との合計の高さと一致する場合もある。または、ソルダーレジスト層113の高さと回路パターン112の高さとの差の場合もある。また、設計次第では、その他の場合もある。
【0033】
4.レンズの形成方法
滴下法によりレンズ140を形成する。
【0034】
4-1.材料
レンズ140の原材料である透明樹脂は、耐光性の観点からシリコーン樹脂であるとよい。シリコーン樹脂として、例えば、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、フッ化シラン系樹脂が挙げられる。ソルダーレジスト層113とレンズ140との間の接触角を大きくするために、滴下するシリコーン樹脂の表面自由エネルギーが大きいほどよい。表面自由エネルギーは、エポキシ、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、フッ化シラン系樹脂の順に高い。このため、レンズ140の透明樹脂として、有機変性シリコーン、フェニルシリコーンが好ましい。
【0035】
4-2.滴下工程
原材料である透明樹脂を溶融状態で基板110に向かって吐出する。吐出する箇所は、発光素子130の上である。透明樹脂は発光素子130の周囲を覆う。滴下された透明樹脂は、ドーム状である。透明樹脂の表面張力により透明樹脂は球形に近い形状をとろうとする。また、透明樹脂を吐出する間際まで透明樹脂をある程度加熱しておくとよい。その際の透明樹脂の温度はもちろん、硬化温度未満の温度である。例えば、透明樹脂の硬化温度が70℃以上100℃以下の場合には、吐出する際の透明樹脂の温度は40℃以上60℃以下である。基板110に供給されてから透明樹脂が硬化するまでの時間が短縮されるからである。
【0036】
4-3.硬化工程
基板110は透明樹脂の硬化温度以上に加熱されている。このため、滴下された透明樹脂は基板110により加熱されて硬化する。これにより、回転放物面またはそれに近い形状を有するレンズ140が形成される。
【0037】
5.発光装置の製造方法
5-1.基板準備工程
基材111の上に回路パターン112およびソルダーレジスト層113が形成された基板110を準備する。または、基材111の上に、所望の回路パターン112およびソルダーレジスト層113を形成してもよい。
【0038】
5-2.発光素子実装工程
発光素子130を基板110に実装する。例えば、リフローにより発光素子130を基板110に半田接合する。
【0039】
5-3.レンズ形成工程
前述したレンズの形成方法により、基板110の上に透明樹脂を吐出しレンズ140を形成する。レンズ140は発光素子130の周囲を覆う。
【0040】
6.第1の実施形態の効果
第1の実施形態の発光装置100においては、レンズ140の外周部142の全周にわたってほとんど段差がない。このため、滴下法により形成されるレンズ140の形状は安定しており、発光装置100に実装される発光素子130ごとの配光のばらつきが小さい。
【0041】
7.変形例
7-1.回路パターン
図5は、第1の実施形態の変形例における回路パターンを示す図(その1)である。回路パターンは、金属層PT1と金属層PT2と金属層PT3とを有する。金属層PT1は、実際の回路となる回路領域である。金属層PT2、PT3は、回路とならない非回路領域である。非回路領域は、発光素子130の点灯時であっても電流が流れない領域である。すなわち、外部電源と導通していない領域である。回路領域と非回路領域とは接触していない。金属層PT1、PT2、PT3は、同一工程により形成された層である。このため、これらの金属層PT1、PT2、PT3の積層構造は、同じである。金属層PT1、PT2、PT3は別工程により形成してもよいが、同一工程により形成することで工程数を削減できる。金属層PT2、PT3は、レンズ140の外周部142の段差を小さくするために配置されている。この場合であっても、レンズ140の外周部142の段差を小さくすることができる。
【0042】
このように、非回路領域の金属層PT2、PT3が、回路領域の金属層PT1を両側から挟むように配置されている。非回路領域の金属層PT2、PT3は、扇形に近い形状をしている。もちろん、矩形形状であってもよい。レンズ140の外周部142を含む形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0043】
7-2.ベタパターン
図6は、第1の実施形態の変形例における回路パターンを示す図(その2)である。回路パターンは、基材111の第2面111bのほぼ全面に形成されている。回路パターンは、ベタパターンから絶縁部分を選択的に絶縁したパターンである。つまり、絶縁する必要がある領域のみ絶縁し、その他の金属層は互いにつながっている。この場合に、レンズ140の外周部142の周囲の段差はほとんどない。このように、レンズ140の外周部142の周囲の段差をほとんどなくすために、ベタパターンを用いるとよい。
【0044】
図6においては、絶縁領域I1、I2が、金属層PT4、PT5を区画している。絶縁領域I1、I2は、金属層を形成されていない領域である。素子配置領域CH1は、発光素子130を実装する領域である。
【0045】
7-3.面積比
図6のように、ベタパターンに近い形状にしなくても、回路パターン112に占める金属層の面積を広くとることにより同様の効果を得ることができる。前述のように、回路パターン112は、金属層を有する。基材111の第2面111bの面積に対する回路パターン112の金属層が占める面積の比が50%以上であるとよい。この面積比は、好ましくは、70%以上である。より好ましくは80%以上である。面積比は、現実的には、99%以下である。
【0046】
7-4.検査工程
発光素子130を実装してからレンズ140を形成するまでの間に、基板110に実装された発光素子130が通電により点灯するか否かを検査してもよい。
【0047】
7-5.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の発光装置200の概略構成図である。発光装置200は、基板110と、半田層120と、発光素子130と、レンズ140と、アンダーフィル250と、を有する。
【0049】
アンダーフィル250は、レンズ140の透明樹脂と同じ材料である。ただし、アンダーフィル250の硬化前の樹脂の粘度はレンズ140の効果前の樹脂の粘度よりも低い。アンダーフィル250の材料として、例えば、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、フッ化シラン系樹脂が挙げられる。
【0050】
2.発光装置の製造方法
第2の実施形態の発光装置の製造方法は、アンダーフィル250を基板110に供給するアンダーフィル供給工程を有する。それ以外の工程は第1の実施形態と同様である。したがって、アンダーフィル供給工程を中心に説明する。
【0051】
2-1.発光素子実装工程
基板110を準備する。準備した基板110に発光素子130を実装する。
【0052】
2-2.アンダーフィル供給工程
原材料である透明樹脂を凹部U1の上であって発光素子130が存在しない領域に滴下する(図1参照)。このとき基板110は加熱されている。アンダーフィル250となる透明樹脂は基材111または回路パターン112の上に滴下して基板110から加熱されながら広がる。これにより、アンダーフィル250が発光素子130と基板110との間の隙間を埋める。
【0053】
2-3.レンズ形成工程
アンダーフィル250が基板110と発光素子130との間の隙間を埋めてから、発光素子130の上にレンズ140を形成する。その際には滴下法を用いればよい。
【0054】
2-4.その他の工程
また、その他の工程を実施してもよい。
【0055】
3.第2の実施形態の効果
第2の実施形態では、アンダーフィル250が発光素子130と基板110との間の隙間を好適に埋める。このため、発光素子130と基板110との間に気泡がほとんど発生しない。これにより、発光装置200の光学特性は改善されている。
【0056】
4.変形例
4-1.アンダーフィルの材料
アンダーフィル250の材料はレンズ140の材料と異なっていてもよい。ただし、アンダーフィル250の硬化前の樹脂の粘度はレンズ140の効果前の樹脂の粘度よりも低いことが好ましい。
【0057】
4-2.基板加熱工程
アンダーフィル250の材料である透明樹脂を基板110に滴下する際に、基板110を加熱しなくてもよい。アンダーフィル250を形成するすべての箇所に透明樹脂を供給し終わった後に、基板110を加熱する基板加熱工程を一度に実施してもよい。これにより、凹部U1に供給した透明樹脂はほぼ同時に硬化されてアンダーフィル250となる。透明樹脂の粘性および凹部U1の広さに応じて透明樹脂を硬化させるタイミングを使い分けることができる。
【0058】
4-3.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0059】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態の発光装置300の概略構成図である。発光装置300は、基板310と、半田層120と、発光素子130と、レンズ140と、を有する。
【0060】
基板310は、基材111と、回路パターン112と、ソルダーレジスト層313と、を有する。ソルダーレジスト層313は、第1層313aと第2層313bとを有する。第1層313aは回路パターン112の上に配置されている。第2層313bは第1層313aの上に配置されている。
【0061】
レンズ140は第2層313bの上に接触して形成されている。レンズ140の外周部142は、第2層313bと接触しており、第1層313aとは接触していない。
【0062】
第1層313aの材質は、第1の実施形態のソルダーレジスト層113と同様である。ただし、レンズ140の外周部142は第1層313aとは接触しないので、レンズ140と第1層313aとの間の接触角については考慮しなくてよい。第1層313aの材質は、例えば、エポキシ、有機変性シリコーン、フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシリコーン、フッ化シラン系樹脂である。
【0063】
第2層313bは、レンズ140と接触している。もちろん、第2層313bは、レンズ140の外周部142と接触している。第2層313bの材質は、例えば、メチルシリコーンである。
【0064】
第2層313bは、レンズ140から剥離させやすい材質である。このため、後述するように、実装済みの不良の発光素子130を選択的に取り外して、新たな良品の発光素子130を取り付けることができる。
【0065】
2.素子交換装置(リワーク装置)
図9は、第3の実施形態の素子交換装置1000の概略構成図である。素子交換装置1000は、ベース1100と、筐体1200と、基板移動部1300と、ヒーター1400と、ヘッド部1500と、交換部1600と、を有する。
【0066】
基板移動部1300は、基板保持部1310を有する。基板保持部1310は、基板110を保持することができる。基板移動部1300は、基板110を保持しつつ基板110の板面に平行な方向(XY平面)を移動することができるようになっている。
【0067】
ヒーター1400は、基板保持部1310に保持されている基板110を加熱する。これにより半田が溶融し、発光素子130を取り外すことができる。
【0068】
ヘッド部1500は、基板110の板面に垂直な方向(Z軸方向)に移動することができる。ヘッド部1500は、交換部1600を連結する連結部1510を有する。
【0069】
図10は、第3の実施形態の素子交換装置1000の交換部1600の概略構成図である。交換部1600は、基体1610と爪1620と固定部1630とを有する。爪1620は先端部1621を有する把持部である。爪1620は、2つある。2つの爪1620は内側に折れ曲がっている。つまり、2つの爪1620は、基体1610から離れるにしたがって近づく形状を有する。
【0070】
交換部1600は基板110に向かって移動する。爪1620が基板110に押し付けられると、爪1620は基板110から内側に向かう力を受けて内側に折れ曲がる。これにより、爪1620は発光素子130を把持することができる。すなわち、交換部1600はレンズ140および発光素子130をつまんで基板110から取り外すことができる。
【0071】
3.素子交換方法
第3の実施形態では、実装後に点灯不良等が判明した発光素子130を基板110から取り外し、新たな発光素子130を基板110に実装する。
【0072】
図11は、第3の実施形態の素子交換方法を説明するための図(その1)である。図11(a)に示すように、素子交換装置1000の爪1620がレンズ140の外周部142を挟みこむ。
【0073】
次に、図11(b)に示すように、爪1620を内側に摺動させることにより爪1620の先端部1621をレンズ140および発光素子130と基板110との間に差し入れる。そして、交換部1600がレンズ140および発光素子130を取り外す。すなわち、爪1620によりレンズ140および発光素子130を把持して第2層313bの上からレンズ140および発光素子130を剥がす。
【0074】
図11(c)は、発光素子130を除去後の基板110を示している。この段階では、レンズ140の残渣R1a、R1bが基板110の上に残留している。
【0075】
図11(d)に示すように、基板110の上面を吸引等することにより、レンズ140の残渣R1a、R1bを除去することができる。その際に、半田を溶融させるとよい。
【0076】
図12(a)に示すように、半田を供給する。
【0077】
図12(b)に示すように、半田の上に新たな発光素子130を載置する。そして、例えば、リフローにより発光素子130を基板110に半田付けする。
【0078】
図12(c)に示すように、発光素子130を覆うようにレンズ140を形成する。この際に滴下法を用いればよい。
【0079】
4.発光装置の製造方法
この発光装置300の製造方法は、基板の上にソルダーレジスト層を形成する工程と、基板の上に発光素子を実装する工程と、発光素子の上にレンズの材料を滴下してレンズを形成する工程と、発光素子を通電させることにより発光素子の発光状態を検査する工程と、発光状態の光出力が予め定めた閾値に満たない場合にレンズおよび発光素子を基板から除去する工程と、を有する。
【0080】
ソルダーレジスト層を形成する工程では、メチルシリコーン層を形成する。
【0081】
レンズを形成する工程では、メチルシリコーン層の上にレンズの材料を滴下する。
【0082】
5.第3の実施形態の効果
ソルダーレジスト層313の第2層313bの材質が、メチルシリコーンである。第2層313bは、レンズ140と接触している。このため、レンズ140と第2層313bとの間の接触角は十分に大きい。また、爪1620によりレンズ140と基板110とを剥がす際に、レンズ140および発光素子130が剥がれやすい。このため、レンズ140と基板110とを剥がした後に、レンズ140の材料が第2層313bの上に残留しにくい。
【0083】
6.変形例
6-1.半田の溶融
素子交換装置1000の爪1620がレンズ140および発光素子130を挟みこむ前に半田を溶融させてもよい。レンズ140および発光素子130を好適に除去できることに変わりないからである。
【0084】
6-2.第2層
ソルダーレジスト層313の第2層313bの材質は、メチルシリコーンの代わりにジメチルシリコーン、酸化チタン、アルミナ、アルミナまたはジルコニア等が含まれた白色材料であってもよい。
【0085】
6-3.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0086】
(実施形態の組み合わせ)
第1の実施形態から第3の実施形態までを変形例を含めて互いに組み合わせてよい場合がある。
【0087】
(付記)
第1の態様における発光装置は、基板と、基板に実装された発光素子と、発光素子の上のレンズと、を有する。基板は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有する基材と、基材の第2面の上の回路パターンと、回路パターンを部分的に覆うソルダーレジスト層と、を有する。レンズは、ソルダーレジスト層と対面する領域の境界の少なくとも一部を構成する外周部を有する。レンズの外周部における基材の第1面から最も遠い位置までの第1距離とレンズの外周部における基材の第1面から最も近い位置までの第2距離との差は0μm以上100μm以下である。
【0088】
第2の態様における発光装置においては、回路パターンは、金属層を有する。基材の第2面の面積に対する回路パターンの金属層が占める面積の比が50%以上である。
【0089】
第3の態様における発光装置においては、回路パターンは、ベタパターンから絶縁部分を選択的に絶縁したパターンである。
【0090】
第4の態様における発光装置においては、回路パターンは、金属層を有する。金属層は、回路となる回路領域と回路とならない非回路領域とを有する。非回路領域は、回路領域を挟むように配置されている。
【0091】
第5の態様における発光装置においては、ソルダーレジスト層は、メチルシリコーン層を有する。メチルシリコーン層はレンズと接触している。
【0092】
第6の態様における発光装置の製造方法は、基板の上にソルダーレジスト層を形成する工程と、基板の上に発光素子を実装する工程と、発光素子の上にレンズの材料を滴下してレンズを形成する工程と、発光素子を通電させることにより発光素子の発光状態を検査する工程と、発光状態の光出力が予め定めた閾値に満たない場合にレンズおよび発光素子を基板から除去する工程と、を有する。ソルダーレジスト層を形成する工程では、メチルシリコーン層を形成する。レンズを形成する工程では、メチルシリコーン層の上にレンズの材料を滴下する。
【0093】
第7の態様における発光装置の製造方法においては、レンズおよび発光素子を除去する工程では、把持部によりレンズおよび発光素子を把持してメチルシリコーン層の上からレンズおよび発光素子を剥がす。
【符号の説明】
【0094】
100…発光装置
110…基板
120…半田層
130…発光素子
140…レンズ
1000…素子交換装置
1100…ベース
1200…筐体
1300…基板移動部
1400…ヒーター
1500…ヘッド部
1600…交換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12