(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240618BHJP
H01R 13/6593 20110101ALI20240618BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/00 306
H01R13/6593
(21)【出願番号】P 2020212409
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横谷 晃一
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072335(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132984(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121494(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/034034(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01R 13/6593
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、
第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、
前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、
複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、
複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、
前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、
前記電線の各々の長さは同一であり、
前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、
複数の前記第2接続部は、前記第2方向に沿って並んでおり、
複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1端子の各々は、相手端子に接続される先端部を有し、
前記先端部は、前記第1方向と前記第2方向との双方に直交する第3方向において前記第1開口から突出している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第1端子の各々は、相手端子との接続に用いられるボルトが挿入される挿入孔を有し、
前記挿入孔は、前記第1方向に長い長孔である、
請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第1端子の各々は、同一の形状を有している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第1間隔は、前記第2間隔より小さい、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記第1接続部は、前記第1ハウジングに埋設されており、
前記第2接続部は、前記第2ハウジングに埋設されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1コネクタ及び前記第2コネクタの一方は、インバータに電気的に接続されるものであり、
前記第1コネクタ及び前記第2コネクタの他方は、モータに電気的に接続されるものであり、
複数の前記電線は、高電圧が印加される高圧電線である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、
第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、
前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、
複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、
複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、
前記第1端子の各々は、同一の形状を有しており、
前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、
前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、
複数の前記第2接続部は、前記第1方向に沿って並んでおり、
複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用のモータとインバータとを電気的に接続するワイヤハーネスが開示されている。同ワイヤハーネスは、モータに接続される第1コネクタと、インバータに接続される第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとを電気的に接続する複数の電線とを備えている。
【0003】
第1コネクタは、並列する複数の第1端子と、複数の第1端子を保持する第1ハウジングとを備えている。第2コネクタは、並列する複数の第2端子と、複数の第2端子を保持する第2ハウジングとを備えている。第1端子の各々と、第2端子の各々とは、電線の各々によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたワイヤハーネスにおいては、例えば、第1端子同士の間隔と第2端子同士の間隔とが異なる場合がある。この場合、これら第1端子と第2端子との間の距離が第1端子及び第2端子毎に異なることとなり、電線の長さが電線毎に異なることとなる。この場合には、長さの異なる複数種類の電線を準備する必要があるため、ワイヤハーネスにおける部品の種類が増加するおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、部品の種類が増加することを抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、前記電線の各々の長さは同一であり、前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、複数の前記第2接続部は、前記第2方向に沿って並んでおり、複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている。
【0008】
本開示のワイヤハーネスは、第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、前記第1端子の各々は、同一の形状を有しており、前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、複数の前記第2接続部は、前記第1方向に沿って並んでおり、複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、部品の種類が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスの平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のワイヤハーネスの模式図である。
【
図4】
図4は、比較例のワイヤハーネスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、前記電線の各々の長さは同一であり、前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、複数の前記第2接続部は、前記第2方向に沿って並んでおり、複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている。
【0012】
例えば、第1間隔と第2間隔とが異なるとともに、複数の第1接続部と、複数の第2接続部との双方が第2方向に沿って並ぶワイヤハーネスにおいては、第1端子と第2端子とを接続する電線は、当該電線によって接続される第1接続部と第2接続部との第2方向における間隔が大きいほど、その長さが大きくなる。
【0013】
ここで、上記構成によれば、電線の各々の長さが同一である。また、複数の第1接続部のうち対応する第2接続部との第2方向における間隔が大きいものほど、第1方向において対応する第2接続部に近い位置に設けられている。このように第1接続部の位置を設定することで、同一の長さを有する複数の電線を用いることができる。したがって、ワイヤハーネスにおける部品の種類が増加することを抑制できる。
【0014】
[2]前記第1端子の各々は、相手端子に接続される先端部を有し、前記先端部は、前記第1方向と前記第2方向との双方に直交する第3方向において前記第1開口から突出していることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、第1端子の先端部が第1開口から突出しているため、相手端子に対して第1端子を接続する際の作業性を向上させることができる。
[3]前記第1端子の各々は、相手端子との接続に用いられるボルトが挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔は、前記第1方向に長い長孔であることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、相手端子と第1端子とをボルトによって締結する際に、相手端子に対する第1端子の位置を第1方向において変更することができる。これにより、第1接続部の各々の位置が第1方向において異なっていても、第2方向に沿って並ぶ相手端子に対して、第1端子を接続することができる。したがって、第1間隔と第2間隔との差に起因する第1端子の各々の第1方向における位置の差を吸収することができる。
【0017】
また、上記構成によれば、例えば、製造公差の範囲内において複数の電線の長さにばらつきが生じた場合であっても、第1端子の各々の長孔によって当該ばらつきが吸収される。このため、相手端子と第1端子とを好適に接続することができる。
【0018】
[4]前記第1端子の各々は、同一の形状を有していることが好ましい。
同構成によれば、複数種類の第1端子を準備しなくても済む。これにより、複数の第1端子の共通化、及び複数の電線の共通化を図ることができる。したがって、ワイヤハーネスにおける部品の種類が増加することを一層抑制できる。
【0019】
[5]前記第1間隔は、前記第2間隔より小さいことが好ましい。
同構成によれば、第1ハウジングの第2方向における体格の増大を抑制できる。したがって、第1コネクタの第2方向における体格の増大を抑制できる。
【0020】
[6]前記第1接続部は、前記第1ハウジングに埋設されており、前記第2接続部は、前記第2ハウジングに埋設されていることが好ましい。
同構成によれば、電線と第1ハウジングとの間、及び電線と第2ハウジングとの間を止水することができる。
【0021】
[7]前記第1コネクタ及び前記第2コネクタの一方は、インバータに電気的に接続されるものであり、前記第1コネクタ及び前記第2コネクタの他方は、モータに電気的に接続されるものであり、複数の前記電線は、高電圧が印加される高圧電線であることが好ましい。
【0022】
同構成によれば、高電圧が印加されるインバータ及びモータ間の導電経路に対してワイヤハーネスを適用することができる。
[8]本開示のワイヤハーネスは、第1開口を有する第1ハウジング、及び前記第1ハウジングにより保持される複数の第1端子を有する第1コネクタと、第2開口を有する第2ハウジング、及び前記第2ハウジングにより保持される複数の第2端子を有する第2コネクタと、前記第1端子の各々と前記第2端子の各々とを接続する複数の電線と、を備え、複数の前記第1端子は、前記第1開口の内部に向けて第1方向に沿って突出するとともに前記第1方向と直交する第2方向に沿って第1間隔にて並んでおり、複数の前記第2端子は、前記第2開口の内部に向けて前記第1方向に沿って突出するとともに前記第2方向に沿って第2間隔にて並んでおり、前記第1端子の各々は、同一の形状を有しており、前記第1間隔と前記第2間隔とは異なっており、前記電線の各々は、前記第1端子に接続される第1接続部と、前記第2端子に接続される第2接続部と、を有し、複数の前記第2接続部は、前記第1方向に沿って並んでおり、複数の前記第1接続部のうち対応する前記第2接続部との前記第2方向における間隔が大きいものほど、前記第1方向において対応する前記第2接続部に近い位置に設けられている。
【0023】
例えば、第1間隔と第2間隔とが異なるとともに、複数の第1接続部と、複数の第2接続部との双方が第2方向に沿って並ぶワイヤハーネスにおいては、第1端子と第2端子とを接続する電線は、当該電線によって接続される第1接続部と第2接続部との第2方向における間隔が大きいほど、その長さが大きくなる。
【0024】
ここで、上記構成によれば、複数の第1接続部のうち対応する第2接続部との第2方向における間隔が大きいものほど、第1方向において第2接続部に近い位置に設けられている。このため、複数の第1接続部が第2方向に沿って並ぶワイヤハーネスにおける電線と比較すると、第1接続部と第2接続部との第2方向における間隔が大きい電線ほど、その長さが小さくなる。これにより、電線の各々の長さを揃えやすくなり、ひいては複数の電線を共通化することができる。したがって、ワイヤハーネスにおける部品の種類が増加することを抑制できる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「直交」は厳密に直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交の場合も含まれる。
【0026】
(ワイヤハーネス10の構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の第1端子40を有する第1コネクタ20と、複数の第2端子80を有する第2コネクタ60と、第1端子40の各々と第2端子80の各々とを電気的に接続する複数の電線90とを備えている。ワイヤハーネス10は、例えば、モータやインバータなどの車両用の機器同士を電気的に接続するものである。第1コネクタ20は、例えば、インバータに電気的に接続されている。第2コネクタ60は、例えば、モータに電気的に接続されている。
【0027】
(電線90の構成)
図2に示すように、電線90は、導体からなる芯線91と、芯線91の外周を被覆する絶縁被覆92とを有している。電線90は、例えば、高電圧が印加される高圧電線である。本明細書における「高圧電線」とは、「JASO D624(2015)」に規格される電線である。高圧電線の定格電圧は、交流電圧の場合には、30Vを超え600V以下であり、直流電圧の場合には、60Vを越え750V以下である。
【0028】
図1に示すように、電線90は、第1端子40に接続される第1接続部90Aと、第2端子80に接続される第2接続部90Bとを有している。第1接続部90Aは電線90の一端に設けられており、第2接続部90Bは電線90の他端に設けられている。第1接続部90A及び第2接続部90Bにおいては、芯線91が絶縁被覆92から露出している。したがって、第1接続部90Aでは、芯線91の一端が第1端子40に接続されており、第2接続部90Bでは、芯線91の他端が第2端子80に接続されている。
【0029】
電線90の各々の長さは同一である。本明細書における「電線90の各々の長さは同一」とは、電線90の各々の長さが完全に一致している場合だけでなく、製造公差や組付け公差の範囲内において電線90の各々の長さが僅かに異なる場合も含む。
【0030】
(第1コネクタ20の構成)
図2に示すように、第1コネクタ20は、開口101を有するインバータのケース100に取り付けられている。
【0031】
図1に示すように、第1コネクタ20は、複数の第1端子40を保持する第1ハウジング30を有している。第1コネクタ20は、例えば、6つの第1端子40を有している。第1端子40の各々は、同一の形状を有している。
【0032】
第1ハウジング30には、第1ハウジング30の外周から突出する金属製のプレート50が一体に設けられている。プレート50は、複数の取付孔51を有している。取付孔51の各々には、プレート50をケース100に取り付けるための図示しないボルトが挿入されている。プレート50がケース100に取り付けられることによって、第1コネクタ20がケース100に取り付けられている。
【0033】
(第1ハウジング30の構成)
第1ハウジング30は、複数の第1端子40を保持する保持部31と、筒状をなす筒状部32とを有している。第1ハウジング30は、例えば、樹脂材料により形成されている。
【0034】
保持部31は、筒状部32から筒状部32の外周側に突出している。保持部31は、第1端子40と、第1接続部90Aを含む電線90の一部とを保持している。複数の電線90に接続された複数の第1端子40と、第1ハウジング30とはインサート成形によって一体化されている。したがって、第1接続部90Aの各々は、保持部31に埋設されている。
【0035】
筒状部32は、筒状部32を貫通する第1開口33を有している。第1開口33は、長円状をなしている。
図2に示すように、第1ハウジング30のうちケース100に対向する部分には、第1開口33を取り囲む溝34が設けられている。溝34には、第1ハウジング30とケース100との間をシールする環状のシール部材52が設けられている。
【0036】
(第1端子40の構成)
図1に示すように、複数の第1端子40は、保持部31から第1開口33の内部に向けて突出するとともに第1間隔P1にて並んでいる。なお、第1間隔P1は、後述する挿入孔43の中心軸線同士の第2方向Yにおける距離である。
【0037】
以降において、複数の第1端子40が突出する方向に沿う方向を第1方向Xとし、複数の第1端子40が並ぶ方向を第2方向Yとし、第1方向Xと第2方向Yとの双方に直交する方向を第3方向Zと称する。第1方向Xと、第2方向Yと、第3方向Zとは互いに直交している。
【0038】
第1端子40は、電線接続部41と端子接続部42とを有している。第1端子40は、電線接続部41と端子接続部42とが一体に形成された単一部品である。第1端子40は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0039】
電線接続部41には、電線90の芯線91が電気的に接続されている。電線接続部41の長さ方向における途中の部分は、第1方向Xと第2方向Yとの双方に交差する方向に屈曲しつつ第1開口33に向かって延びている。
【0040】
図2に示すように、端子接続部42は、例えば、板状をなしている。端子接続部42は、電線接続部41から第1方向Xにおいて第1開口33の内部まで延びる基端部42aと、基端部42aから屈曲して第3方向Zにおいてケース100の開口101に向かって延びる中間部42bと、中間部42bから屈曲して第1方向Xにおいて基端部42aとは反対側に延びる先端部42cとを有している。端子接続部42は、第1ハウジング30の第1開口33から突出している。本実施形態では、端子接続部42の中間部42bの一部及び先端部42cが、第1開口33から第3方向Zに突出している。このため、先端部42cは、第1開口33の外部に位置するとともにケース100の開口101の内部に位置している。
【0041】
先端部42cには、先端部42cを第3方向Zに貫通する挿入孔43が設けられている。挿入孔43は、第1方向Xに長い長孔である。挿入孔43の軸線方向は、第1開口33の貫通方向と一致している。第3方向Zから視たときに、挿入孔43の全体は第1開口33に重なっている。
【0042】
複数の第1端子40は、ケース100の開口101の内部に設けられた金属製の複数の相手端子110に電気的に接続されている。図示は省略するが、複数の相手端子110は、第2方向Yに沿って並んでいる。相手端子110は、第3方向Zに貫通する円形状の貫通孔111を有している。相手端子110には、例えば、貫通孔111に連通するナット120が取り付けられている。第1端子40の挿入孔43と、相手端子110の貫通孔111とに挿入されたボルト130がナット120にねじ込まれることによって、第1端子40と相手端子110とが締結されている。
【0043】
(第1端子群40G)
図1に示すように、第1コネクタ20は、複数の第1端子40からなる1つまたは複数の第1端子群40Gを有している。本実施形態の第1コネクタ20は、3つの第1端子40からなる2つの第1端子群40Gを有している。2つの第1端子群40Gは、第1方向Xに沿う軸線を中心に互いに反転した姿勢にて設けられている。なお、2つの第1端子群40Gにおける都合6つの第1端子40は、第1間隔P1にて並んでいる。
【0044】
第1端子群40Gにおける第1端子40の各々は、第1方向Xにおける位置が異なる。第1端子群40Gでは、第2方向Yの一方側に位置する第1端子40ほど第1方向Xにおいて保持部31に埋設される部分が多い。換言すると、第2方向Yの一方側に位置する第1端子40ほど、保持部31からの第1方向Xにおける突出量が小さい。
【0045】
(第2コネクタ60の構成)
第2コネクタ60は、図示しないモータのケースに取り付けられている。
第2コネクタ60は、複数の第2端子80を保持する第2ハウジング70を有している。第2コネクタ60は、例えば、6つの第2端子80を有している。第2端子80の各々は、同一の形状を有している。
【0046】
(第2ハウジング70の構成)
第2ハウジング70は、複数の第2端子80を保持する保持部71と、筒状をなす筒状部72とを有している。第2ハウジング70は、例えば、樹脂材料により形成されている。
【0047】
保持部71は、筒状部72から筒状部72の外周側に突出している。保持部71は、第2端子80と、第2接続部90Bを含む電線90の一部とを保持している。複数の電線90に接続された複数の第2端子80と、第2ハウジング70とはインサート成形によって一体化されている。したがって、第2接続部90Bの各々は、保持部71に埋設されている。
【0048】
筒状部72は、筒状部72を貫通する第2開口73を有している。第2開口73は、長円状をなしている。
(第2端子80の構成)
図1に示すように、複数の第2端子80は、保持部71から第2開口73の内部に向けて突出するとともに第2方向Yに沿って第2間隔P2にて並んでいる。なお、第2間隔P2は、後述する挿入孔83の中心軸線同士の第2方向Yにおける距離である。第1間隔P1と第2間隔P2とは異なっている。本実施形態では、第1間隔P1は、第2間隔P2よりも小さい。
【0049】
第2端子80は、電線接続部81と端子接続部82とを有している。第2端子80は、電線接続部81と端子接続部82とが一体に形成された単一部品である。第2端子80は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0050】
電線接続部81には、電線90の芯線91が電気的に接続されている。
端子接続部82には、端子接続部82を第3方向Zに貫通する挿入孔83が設けられている。挿入孔83は、円形状をなしている。挿入孔83の軸線方向は、第2開口73の貫通方向と一致している。第3方向Zから視たときに、挿入孔83の全体は第2開口73に重なっている。
【0051】
複数の第2端子80は、図示しないモータのケースの内部に設けられた金属製の複数の相手端子に電気的に接続されている。第2端子80と相手端子とは、図示しないボルトによって締結されている。
【0052】
(第2端子群80G)
第2コネクタ60は、複数の第2端子80からなる1つまたは複数の第2端子群80Gを有している。本実施形態の第2コネクタ60は、3つの第2端子80からなる2つの第2端子群80Gを有している。2つの第2端子群80Gは、第1方向Xに沿う軸線を中心に互いに反転した姿勢にて設けられている。なお、2つの第2端子群80Gにおける都合6つの第2端子80は、第2間隔P2にて並んでいる。第1端子群40Gと第2端子群80Gとは、3つの電線90によって電気的に接続されている。
【0053】
第2端子群80Gにおける第2端子80は、第2方向Yに沿って並んでいる。このため、2つの第2端子群80Gにおける都合6つの第2端子80は、第2方向Yに沿って並んでいる。したがって、2つの第2端子群80Gに接続される複数の電線90の第2接続部90Bは、第2方向Yに沿って並んでいる。
【0054】
(ワイヤハーネス10の構成)
次に、
図3を参照してワイヤハーネス10の構成についてより具体的に説明する。
図3は、複数の第1端子40、複数の第2端子80、及び複数の電線90の位置関係を示す模式図である。
図3では、第1接続部90Aと、当該第1接続部90Aに対応する第2接続部90Bとの第2方向Yにおける間隔を間隔d1として説明する。また、第1接続部90Aと、当該第1接続部90Aに対応する第2接続部90Bとの第1方向Xにおける間隔を間隔d2として説明する。
【0055】
上述したように、第1間隔P1は第2間隔P2よりも小さい。また、第2接続部90Bは、第2方向Yに沿って並んでいる。また、第1端子群40Gに接続される電線90においては、第2方向Yの一方側に位置する第1接続部90Aほど、第1方向Xにおいて対応する第2接続部90Bに近い位置に設けられている。より詳しくは、複数の第1接続部90Aのうち、間隔d1が大きいものほど間隔d2が小さくなるように設けられている。
【0056】
電線90の各々における間隔d1及び間隔d2は、電線90の各々の長さが同一となるように規定されている。同一の長さを有する複数の電線90によって複数の第1端子40と複数の第2端子80とを接続することで、電線90の各々における間隔d1及び間隔d2が自ずと定まる。
【0057】
また、上述したように、相手端子110は、第2方向Yに沿って並んでいるため、第1端子群40Gでは、相手端子110の各々に対する第1端子40の各々の位置が第1方向Xにおいて異なる。したがって、
図1に示すように、第1端子群40Gでは、第2方向Yに沿って並ぶボルト130の各々に対する第1端子40の各々の位置が第1方向Xにおいて異なる。
【0058】
本実施形態の作用について説明する。
まず、
図4に示す比較例のワイヤハーネス11について説明する。ワイヤハーネス11は、第1間隔P1が第2間隔P2より小さい、且つ複数の第1接続部90Aと、複数の第2接続部90Bとの双方が第2方向Yに沿って並ぶものである。このため、ワイヤハーネス11では、電線90毎に間隔d1は異なるものの、間隔d2は同一となる。したがって、ワイヤハーネス11では、間隔d1が大きい電線90ほどその長さが大きくなる。
【0059】
図3に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10によれば、電線90の各々の長さが同一である。また、複数の第1接続部90Aのうち対応する第2接続部90Bとの第2方向Yにおける間隔d1が大きいものほど、第1方向Xにおいて対応する第2接続部90Bに近い位置に設けられている。このように第1接続部90Aの位置を設定することで、ワイヤハーネス10においては、同一の長さを有する複数の電線90を用いることができる。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)複数の第1端子40は、第2方向Yに沿って第1間隔P1にて並んでおり、複数の第2端子80は、第2方向Yに沿って第2間隔P2にて並んでいる。第1間隔P1と、第2間隔P2とは異なっている。電線90の各々の長さは同一である。電線90の各々は、第1端子40に接続される第1接続部90Aと、第2端子80に接続される第2接続部90Bとを有している。複数の第2接続部90Bは、第2方向Yに沿って並んでいる。複数の第1接続部90Aのうち対応する第2接続部90Bとの第2方向Yにおける間隔が大きいものほど、第1方向Xにおいて対応する第2接続部90Bに近い位置に設けられている。
【0061】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、ワイヤハーネス10における部品の種類が増加することを抑制できる。
(2)第1端子40の各々における先端部42cは、第3方向Zにおいて第1開口33から突出している。
【0062】
こうした構成によれば、第1端子40の先端部42cが第1開口33から突出しているため、相手端子110に対して第1端子40を接続する際の作業性を向上させることができる。
【0063】
(3)第1端子40の各々における挿入孔43は、第1方向Xに長い長孔である。
こうした構成によれば、相手端子110と第1端子40とをボルト130によって締結する際に、相手端子110に対する第1端子40の位置を第1方向Xにおいて変更することができる。これにより、第1接続部90Aの各々の位置が第1方向Xにおいて異なっていても、第2方向Yに沿って並ぶ相手端子110に対して、第1端子40を接続することができる。したがって、第1間隔P1と第2間隔P2との差に起因する第1端子40の各々の第1方向Xにおける位置の差を吸収することができる。
【0064】
また、上記構成によれば、例えば、製造公差の範囲内において複数の電線90の長さにばらつきが生じた場合であっても、第1端子40の各々の長孔によって当該ばらつきが吸収される。このため、相手端子110と第1端子40とを好適に接続することができる。
【0065】
(4)第1端子40の各々は、同一の形状を有している。
こうした構成によれば、複数種類の第1端子40を準備しなくても済む。これにより、複数の第1端子40の共通化、及び複数の電線90の共通化を図ることができる。したがって、ワイヤハーネス10における部品の種類が増加することを一層抑制できる。
【0066】
(5)第1間隔P1は、第2間隔P2より小さい。
こうした構成によれば、第1ハウジング30の第2方向Yにおける体格の増大を抑制できる。したがって、第1コネクタ20の第2方向Yにおける体格の増大を抑制できる。
【0067】
(6)第1接続部90Aは、第1ハウジング30の保持部31に埋設されており、第2接続部90Bは、第2ハウジング70の保持部71に埋設されている。
こうした構成によれば、電線90と第1ハウジング30との間、及び電線90と第2ハウジング70との間を止水することができる。
【0068】
(7)第1コネクタ20は、インバータに電気的に接続されるものである。第2コネクタ60は、モータに電気的に接続されるものである。複数の電線90は、高電圧が印加される高圧電線である。
【0069】
こうした構成によれば、高電圧が印加されるインバータ及びモータ間の導電経路に対してワイヤハーネス10を適用することができる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・電線90は、低電圧が印加される低圧電線であってもよい。
・本実施形態では、インバータに電気的に接続されるコネクタに第1コネクタ20を適用し、モータに電気的に接続されるコネクタに第2コネクタ60を適用した。これに代えて、インバータに電気的に接続されるコネクタに第2コネクタ60を適用し、モータに電気的に接続されるコネクタに第1コネクタ20を適用することができる。
【0071】
・第1接続部90A及び第2接続部90Bは、第1ハウジング30及び第2ハウジング70にそれぞれ埋設されていなくてもよい。この場合、例えば、電線90が挿通可能に構成された保持部31,71に対して、保持部31,71と電線90との間をシールするシール部材を設けることができる。
【0072】
・第1間隔P1は、第2間隔P2より大きくてもよい。この場合であっても、複数の第1接続部90Aのうち対応する第2接続部90Bとの第2方向Yにおける間隔d1が大きいものほど、第1方向Xにおいて対応する第2接続部90Bに近い位置に設けられる。
【0073】
・第1端子40の各々の形状は異なっていてもよい。例えば、間隔d2が小さい電線90に接続された第1端子40ほど第1方向Xにおける長さを大きくすることができる。この場合、第1端子40の各々の先端部42cにおける位置を第2方向Yにおいて揃えることができる。これに加えて、挿入孔43の各々の位置を第2方向Yにおいて揃えることができる。
【0074】
・第1端子40から挿入孔43を省略することができる。この場合、例えば、第1端子40として、ピン形状をなす雄端子を採用するとともに、相手端子110として、雄端子が挿入される雌端子を採用することができる。この変更例は、第2端子80についても同様にして適用できる。
【0075】
・第1端子40の挿入孔43は、円形状をなすものであってもよい。この場合、相手端子110が、挿入孔43の位置に応じた位置に設けられていればよい。また、この場合、相手端子110に第1方向Xに長い長孔が設けられていてもよい。
【0076】
・第1端子40の先端部42cは、第1ハウジング30の第1開口33の内部に位置するものであってもよい。この場合、第1コネクタ20がケース100に取り付けられた状態においては、相手端子110が第1開口33の内部に位置する。
【0077】
・第1端子群40Gにおける第1端子40の数と、第2端子群80Gにおける第2端子80の数とは、適宜変更することができる。
・第1コネクタ20は、第1端子40とは異なる端子を別途有するものであってもよい。同様に、第2コネクタ60は、第2端子80とは異なる端子を別途有するものであってもよい。この場合、これら端子同士を接続する電線90は、第1端子40と第2端子80とを接続する電線90と同一の長さでなくてもよい。
【符号の説明】
【0078】
d1 間隔
d2 間隔
P1 第1間隔
P2 第2間隔
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
10 ワイヤハーネス
11 ワイヤハーネス
20 第1コネクタ
30 第1ハウジング
31 保持部
32 筒状部
33 第1開口
34 溝
40 第1端子
40G 第1端子群
41 電線接続部
42 端子接続部
42a 基端部
42b 中間部
42c 先端部
43 挿入孔
50 プレート
51 取付孔
52 シール部材
60 第2コネクタ
70 第2ハウジング
71 保持部
72 筒状部
73 第2開口
80 第2端子
80G 第2端子群
81 電線接続部
82 端子接続部
83 挿入孔
90 電線
90A 第1接続部
90B 第2接続部
91 芯線
92 絶縁被覆
100 ケース
101 開口
110 相手端子
111 貫通孔
120 ナット
130 ボルト