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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/03 20060101AFI20240618BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20240618BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B43K8/03
A45D34/04 525Z
B43K8/02 130
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020213339
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2021102342
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2019233571
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 成美
(72)【発明者】
【氏名】古屋 圭章
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真史
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-8488(JP,U)
【文献】実開平3-61967(JP,U)
【文献】特開2000-312854(JP,A)
【文献】特開2020-146366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-1/12
B43K 5/00-8/24
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液タンク部材と当該液タンク部材に対する螺合による接合部材とを有し、両部材の螺合により一方部材が他方部材に挿通して液タンクを未開栓状態から開栓状態とする塗布具であって、前記液タンク部材と前記接合部材との間に、前記未開栓状態を維持し、塗布具の使用開始時には除去される阻害部材を配置し、前記液タンク部材と前記接合部材とが前記阻害部材に当接した状態において、前記液タンク部材及び/又は前記接合部材が空転可能とした塗布具。
【請求項2】
前記阻害部材は、前記液タンク部材と前記接合部材のいずれに対しても非固定状態である請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記阻害部材が、配置される位置の前記液タンク部材又は前記接合部材の外径より大径の内径を有する環状部材である請求項1又は請求項2に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液タンクとしての部材と当該液タンク部材に対する螺合による接合部材とを有し、両部材の螺合により一方部材が他方部材に挿通して液タンクを開栓してなる塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液タンク部材を備えた塗布具は、内部の塗布液が減少した際に、液タンクごと交換可能な所謂カートリッジ式とすることによって塗布液の充填が容易なものとして知られている。
【0003】
そこで、液タンクが意図しない場面で開栓状態となり塗布液が漏れないよう、その部材を除去しなければ液タンクが開栓状態とはならない阻害部材を備えた塗布具が存在する。
例えば特許文献1(特開平2-187398号公報)には、阻害部材としての保護リングを除去してキャップを押圧することによって、液タンクが開栓状態となる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-187398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、阻害部材が塗布具の未使用状態において固定されているため、使用者が阻害部材を使用開始時には不要な部材であることが認識しにくく、塗布具使用開始が困難なものであった。
【0006】
本発明は、使用者が、阻害部材が塗布具の使用開始時に不要な部材であることを容易に認識することができ、使用開始が容易な塗布具を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液タンク部材と当該液タンク部材に対する螺合による接合部材とを有し、両部材の螺合により一方部材が他方部材に挿通して液タンクを未開栓状態から開栓状態とする塗布具であって、前記液タンク部材と前記接合部材との間に、前記未開栓状態を維持し、塗布具の使用開始時には除去される阻害部材を配置し、該阻害部材は、液タンク部材と接合部材のいずれに対しても非固定状態であることを第1の要旨とするものである。
また、前記阻害部材が、配置される位置の前記液タンク部材又は接合部材の外径より大径の内径を有する環状部材であることを第2の要旨とするものである。
そして、前記液タンク部材と前記接合部材とが阻害部材に当接した状態において、前記液タンク部材及び/又は前記接合部材が空転可能としたことを第3の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の要旨においては、阻害部材が液タンク部材と接合部材のいずれに対しても非固定状態で配置されているため、塗布具の使用開始時に、使用者が阻害部材を不要な部材であることを容易に認識することができ、使用開始が容易な塗布具を提供することができるものである。
本発明の第2の要旨においては、阻害部材が、配置される位置の液タンク部材又は接合部材の外径より大径の内径を有する環状部材であるため、圧入ではない状態で配置することができ、塗布具の使用開始時に、使用者が阻害部材を不要な部材であることをより容易に認識することができ、かつ、容易に除去することができ、使用開始がより容易な塗布具を提供することができるものである。
本発明の第3の要旨においては、液タンク部材と接合部材が阻害部材に当接した状態において、液タンク部材及び/又は接合部材が空転可能としたため、塗布具の使用開始時に、万が一阻害部材を除去せずに液タンク部材と接合部材の螺合を進行させても、所定の位置で螺合が空転し進まなくなるため、無理なねじ込みによる各部材の破損を防ぎつつ、使用者が阻害部材を不要な部材であることをより容易に認識することができ、使用開始がより容易な塗布具を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】塗布具1の外観図
図2】塗布具1の縦断面図
図3図2のA部分拡大図
図4図3から後軸2を開栓状態とした図
図5】リング7を装着した状態における後軸2と前軸3の空転を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗布具は、液タンク部材と接合部材、そして未使用状態において阻害部材とを、少なくとも備えるものである。
塗布具の種類としては、筆ペン、サインペン、マーキングペン等の筆記具、アイライナー、リプライナー等の化粧品等、修正具等その他の任意の塗布具を適宜選択可能である。それに応じ、任意の塗布液及び塗布液を被塗布面へと吐出する塗布先を適宜選択可能である。
【0011】
液タンク部材とは、内部に塗布液を収納している部材である。塗布液を収納する方法としては、塗布液を液タンク部材に直接収納したり、中綿と呼ばれる塗布液吸蔵体に含侵さて収納しても良い。また、塗布液を直接収納した液タンクとしての他の部材をその内部に収納し、間接的に塗布液を収納する形態としても良い。ここで、単に液タンクと記載する場合は、内部に塗布液を直接収納した実際に液タンクとしての機能を有する部材又は部分を示すものとし、液タンク部材と記載する場合は、内部に直接塗布液を収納している場合だけでなく、液タンクを介して間接的に塗布液を収納した場合を含むものとして説明する。
液タンク部材が他の部材と独立した部材であることによって、塗布液の充填が容易であったり、塗布液を充填済みの新しい液タンク部材と交換できるカートリッジ式の塗布具とすることができる等の面で好ましい。
塗布具の使用開始前は、液タンクは未開栓状態となっており、内部の塗布液が塗布先へと流通しないことはもちろん、意図しない塗布液の漏れも生じない状態を形成している。未開栓状態を形成する方法としては、単に液タンク部材に開口部を設けずに内部空間が密閉された部材としたり、その一部に開口部を設けつつその開口部に栓部材を装着しても良い。
【0012】
液タンク部材としては、合成樹脂の射出成型品やブロー成型品を採用することができ、有底筒体、無底の筒体に底部材を配したもの、塗布液の消費に伴って稼働する移動底を有するものなどとすることができる。内部に直接的に塗布液を収容する場合に、液タンク部材を変形させて液の吐出支援をなすような場合には、可撓性の材質を用いたブロー成型品が好ましい。また、液タンク部材を手で把持して押圧変形させることができるような場合、塗布先から内容液を吸い上げるスポイト式構造とすることもできる。塗布液の吐出支援としては、後端ノック式や、圧縮空気を内蔵した内部加圧式のものとすることもできる。
液タンク部材の材質は、内部に収容する塗布液に対して、膨潤、融解、溶解、分解等の反応により形状変化を生じないものが好ましく、ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー等、またはこれらの樹脂を含む複合材、金属、木材等が例示できる。特に低密度ポリエチレン樹脂を採用すると、成形性及び可撓性に優れるため好ましい。
【0013】
接合部材とは、液タンク部材と螺合によって接合する部材である。液タンク部材の態様にもよるが、例えば液タンク部材が内部に筆記具用のインキを収納した軸筒の後軸である場合、接合部材を塗布先を備えた前軸とすること等が可能である。また、螺子は通常の螺子とは逆方向に相対回転させることで螺合が進行する所謂逆螺子であっても良い。
【0014】
本発明の塗布具は、使用開始時に液タンクを未開栓状態から開栓状態とすることによって、内部の塗布液を塗布先へと流通させることができるものである。そして該開栓状態は、液タンク部材と接合部材の螺合により一方部材が他方部材に挿通することにより形成するものである。例えば、栓部材を装着した開口部を有する液タンク部材に、接合部材が挿通し、栓部材が液タンク部材内に押圧され開口部から離脱することによって、液タンクが開栓状態となるものとすることができる。該挿通は、螺合の完了に伴うものや、螺合の半ばにおいて挿通が完了するものとしても良い。
塗布先への塗布液の流通は、繊維収束体や多孔質連通体などの中継芯にて連通させることもでき、液タンク部材内の液タンクとの間に、複数の細通路を形成した流通制御部材を配置することもできる。流通制御部材は、柱状の外側壁に複数の細凹部を縦方向に渡って形成し、軸筒など外装体の内壁との間に穴状の通路を形成したものとすることで、部品形成が容易なものとすることができる。
【0015】
本発明の塗布具は、意図しない場面で液タンクの開栓状態が形成され塗布液が漏れたりするのを防ぐために、使用開始前においては液タンク部材と接合部材との間に阻害部材を配置し、該阻害部材が配置されたままでは液タンクの未開栓状態が維持されるものとしている。例えば、阻害部材によって螺合自体が開始しないか、所定の距離螺合が進行しても挿通が可能な程度には螺合が進行しないものとすることができる。これにより、意図しない外力が掛かった場合でも、阻害部材を除去した後に液タンク部材と接合部材の螺合を進行させるような複雑な方向及び程度の外力は人為的な操作以外では掛かりにくいため、塗布具の使用開始前における塗布液漏れを防ぎ、初期品質を維持することができ好ましい。
【0016】
阻害部材は、液タンク部材と接合部材にいずれにも非固定状態で配置している。非固定状態とは、実質的に圧入や凹凸篏合などの篏合関係にない状態で、不自然に大きな外力を掛けることなく除去できる程度の状態を指し、極めて弱い結合力によって液タンク部材と接合部材の間に配置した状態を含意するものである。このようにすることによって、使用者が塗布具使用開始時に阻害部材が不要な部材であることを容易に認識することができるため、阻害部材を除去しないまま液タンク部材と接合部材の螺合を進行させてしまい液タンクの開栓状態を形成することができないといったことがなく、使用開始が容易な塗布具とすることができる。
阻害部材を配置する位置は、液タンク部材と接合部材の間であればどこに配置しても良く、特に各部材の螺子部のいずれかに配置しても良い。特に雄螺子部に配置すると雌螺子部と違い外部に阻害部材が露出することとなり、容易に視認できるため好ましい。
【0017】
特に、阻害部材が、配置される位置の液タンク部材又は接合部材の外径よりも大径の内径を有する環状部材であると、配置される位置の各部材に対して圧入ではない状態で配置することができる。非固定状態の中でも、圧入ではなく遊挿した自由状態で各部材に配置可能であることによって、使用開始時に塗布具に接した使用者は、阻害部材を、塗布具の使用においては不要な部材であることをより容易に認識することができ好ましい。さらに、その除去も容易に行うができ、使用開始がより容易な塗布具とすることができ好ましい。
環状部材であれば、全周に渡り連なるリング状や、その一部が途切れる所謂Cリング状等、適宜選択可能である。
【0018】
さらに、阻害部材を配置した状態において、液タンク部材と接合部材とが、両部材が阻害部材に当接した状態では空転させるものとすると、使用者が、万が一阻害部材が塗布具の使用において不要な部材であると認識できず除去しないまま液タンク部材と接合部材の螺合を進めてしまった場合であっても、所定の位置で螺合が空転し進まなくなるため、無理なねじ込みによる各部材の破損等を防ぐことができ好ましい。そして、螺合が途中で空転し進行しないことにより、使用者が阻害部材を不要な部材であることをより容易に認識することができ、使用開始がより容易な塗布具とすることができ好ましい。
螺合を空転させる方法としては、螺合の進行を阻害しつつ、螺合の進行に伴い各螺子山に発生する軸力に対して一方又は両方の螺子山が変形し、各螺子山同士が一巻分乗り越えるように構成するもの、例えば一方又は両方の螺子山の高さや硬さ、表面粗さ等を調節すること等が例示できる。さらに、各螺子山の一方又は他方を、螺子山の巻く方向に対する横断面形状を半円状にすることで、接触する他方の螺子山に対しての接触面積が減少し、破損等を生じることなく前記空転をさせることができ好ましい。
【0019】
これらの効果を奏するものであれば、接合部材及び阻害部材の材質は、ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂などの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール等の生分解性樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂を含む複合材、金属、木材等が例示できる。特に、液タンク部材と阻害部材と接合部材のうち、阻害部材を他の部材のうち一方又は両方と異なる材質であると、表面の親和性が低くなることから経時での接着等が生じにくく、より除去しすいものとすることができ好ましい。また阻害部材は、塗布具使用開始時には必ず除去、廃棄する部材であることから、ポリ乳酸等の生分解性樹脂製であると環境への悪影響を低減することができ好ましい。
【実施例
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の一例について説明する。
図1は塗布具1の外観図、図2は塗布具1の縦断面図である。
本実施例の塗布具1は、所謂筆ペンである。液タンク部材としての後軸2と、接合部材としての前軸3とからなる軸筒の先端開口部から、固定管4を介して塗布先としての筆穂5が突出しており、キャップ6により保護されている。後軸2の内部に収納したインキが軸筒内を流通し筆穂5から被塗布面へと塗布されるものである。後軸2はポリエステル樹脂からなるものであるため、可撓性を備えており、外部から押圧することによっても内部のインキを筆穂5へと供給することができる。
参照符号7は、ポリプロピレン樹脂からなる阻害部材としてのリング7である。
【0021】
図3は、図2のA部分拡大図であり、図4図3から後軸2を開栓状態とした図である。
後軸2の先端開口部の外壁には雄螺子部2aを、前軸3の後端開口部の内壁には雌螺子部3aを形成しており、逆螺子の螺合により接合可能としている。
後軸2の先端開口部の内部には、液タンク部分から外部に貫通しインキが流出する貫通孔を有する筒状部材9を配置しており、該貫通孔には栓部材8を配置し、後軸2の液タンクの未開栓状態を形成している。栓部材8は、後側には貫通孔に圧入可能な外径を有する棒状の首部と、前側には貫通孔の内径より大きい外径の首部とを備えている。そして、頭部から首部の所定の位置まで連なって、その外壁の一部が切り欠きとなっている。栓部材8を前軸側から押圧し、首部を液タンク側へと挿入していくと、切り欠きの後ろ側の一部分が貫通孔を通過し、液タンク側へと達する。これによって未開栓状態が解除され、インキは、切り欠きの外壁と貫通孔の内壁とが形成する経路と通過して流出する開栓状態を形成することとなる。よって、切り欠きを設ける範囲は、少なくとも貫通孔の肉厚を超える範囲に設けている。そして、首部自体は貫通孔の内径より大きい外径を備えているため、貫通孔を通過せず、また切り欠きによって貫通孔を閉塞することもないため、開栓状態を維持することができるものである。
【0022】
ここで、使用開始前の塗布具1には、後軸2と前軸3の間に、リング7を配置している。詳細には、後軸2の雄螺子部2aに装着することにより配置しており、雄螺子部2aの外径よりも大きい内径を有する環状部材であるため、圧入ではない非固定状態であり、使用者は容易に不要な部材であることを認識することができ好ましい。特に本実施例では、外部に露出した部材であるため視認性にも優れより好ましいものとなっている。
図1のようにリング7を装着したうえで螺合を限界まで進めると、リング7が雄螺子部2aの螺子山を約1巻分覆うよう設計している。これにより、螺子の巻数のうち、螺合完了時に雄螺子と雌螺子がかみ合う有効巻数が減少するので、内部では図3のように前軸2の後端部が栓部材8に到達せず、液タンクの未開栓状態を維持するものとなっている。
【0023】
図5は、リング7を装着した状態における後軸2と前軸3の空転を示す断面図である。
リング7は、その肉厚と硬度により、雄螺子部2aを約1巻分覆いつつ雌螺子部3aには覆われないものとしている。本実施例では、リング7の肉厚が、前軸3の内径と雄螺子部2aの螺子山の高さを合わせた長さよりも厚くしている。これにより、前軸2の後端部はリング7の前端部と、後軸2の雄螺子部2aの根元の段部がリング7の後端部とそれぞれ当接した状態となっている。この状態で螺合を進行しようとすると、雌螺子部3aの後端は螺子山に沿った螺合を進めることができないにも関わらず、他の螺子山は雄螺子部2aの各螺子山との間に軸力を発生させつつ螺子山に沿って進もうとする。すると、各螺子山間に発生した軸力が逃げ場を失い、本実施例においてはポリプロピレン樹脂からなる前軸3より柔らかい低密度ポリエチレン樹脂からなる後軸2の雄螺子部2aを変形させる結果、螺合は進行しない状態で雌螺子部3aが周方向に回転を続けてしまう螺子山の乗り越えを生じさせ、螺合の空転を生じさせている。これによって、使用者が万が一リング7を不要な部材と認識できず除去しないまま螺合を進めてしまった場合であっても、該空転によって液タンクの流通が生じないことでリング7が不要であることを容易に認識できるため好ましいものである。本実施例の螺合は逆螺子であるため、使用開始後に誤って螺合を通常の螺子の方向に解除しようとすると逆に螺子が締まるため好ましいが、リング7を除去しようとする際に解除の方向を誤るとリング7ごと後軸2に食い込みかねないところ、前記空転によりそれが阻害されるため、より好ましいものである。
【0024】
特に本実施例は筆穂5が未使用状態では白色の外観を有する合成繊維性の材質からなるものであり、インキは黒色であるため、筆穂5にインキが到達していないことが容易に認識できるため好ましい。
【0025】
各螺子部の巻く方向に対する横断面形状について、雄螺子部2aは半円状、雌螺子部3aは前側より後側をなだらかに傾斜させた形状としている。これにより、接触する他方の螺子山に対しての接触面積が減少し、破損等を生じることなく空転をさせることができ好ましい。
【0026】
本実施例は、先述の通りリング7を後軸2から除去しないまま螺合を進めると、螺合部分の内部材である後軸2に形成されている雄螺子部2aを径方向内側に変形させる力が働くが、該部においてインキの通路である貫通孔は後軸2とは別部材として内部に配置された筒状部材9によって形成されるため、雄螺子部2aの変形が筒状部材9及び貫通孔に影響しにくく、筒状部材9の破損が生じにくくインキ流通に支障が出ないため好ましい。また筒状部材9の後軸2に挿入される部分の外壁と、後軸2の雄螺子部2aが設けられている範囲の内壁との間の軸方向の一部の範囲においては、周方向に亘って隙間を設けているため、雄螺子部2aに働く力が筒状部材9に伝わりにくくなり、筒状部材9がより変形しにくく好ましい。そして筒状部材9は柔らかい低密度ポリエチレンより硬いポリプロピレン樹脂からなるため、より変形しにくく好ましい。さらに筒状部材9は、軸方向に直交する方向の断面(横断面)が円形であるため、周方向いずれの位置における径方向外側からの外力に対して変形を生じにくいため好ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 塗布具
2 後軸
2a 雄螺子部
3 前軸
3a 雌螺子部
4 固定管
5 筆穂
6 キャップ
7 リング
8 栓部材
9 筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5