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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20240618BHJP
   F28F 3/10 20060101ALI20240618BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28F3/10
B23K20/00 310L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216782
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102192
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐川 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 駿
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053542(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035253(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/131240(WO,A1)
【文献】特開2014-191916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 13/00
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱板のそれぞれと外殻板である複数の第1金属板のそれぞれとが積層され、前記複数の伝熱板と前記複数の第1金属板とが積層された積層方向に沿った側面と、前記側面に連設し前記積層方向に対向する第1主面と第2主面とを有し、前記側面に流体の流出入口となる開口と、前記開口の周辺に設けられ前記開口と連通しない少なくとも1つの第1孔部が設けられた積層ブロック本体と、
前記側面に設けられ前記第1孔部に挿入される凸部を有する継手体と、
前記凸部を前記第1孔部において係止する係止部材と
を具備し、
前記積層ブロック本体には、前記第1主面または前記第2主面から前記積層方向に沿って前記第1孔部にまで到達する貫通孔が設けられ、
前記凸部には、前記凸部が前記第1孔部に挿入されたとき、前記積層方向に沿って前記貫通孔に連通する第2孔部が設けられ、
前記係止部材が前記貫通孔及び前記第2孔部に挿入され得る
積層体。
【請求項2】
請求項1に記載された積層体であって、
前記継手体と前記積層ブロック本体との間及び前記係止部材と前記積層ブロック本体との間に接合部材をさらに具備する
積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載された積層体であって、
前記継手体は、複数の第2金属板のそれぞれが拡散接合により積層された積層体であり、
前記積層方向において、前記継手体の長さと、前記積層ブロック本体の長さとが同じである
積層体。
【請求項4】
複数の第1伝熱板と外殻板である複数の第1金属板とを積層し、前記複数の第1伝熱板のそれぞれと前記複数の第1金属板のそれぞれとを拡散接合により接合して積層ブロック本体を形成するときに、前記積層ブロック本体に対して、前記積層ブロック本体の積層方向に沿った側面に流体の流出入口となる開口と、前記開口の周辺に設けられ前記開口と連通しない少なくとも1つの第1孔部を形成するとともに、前記側面に連設する第1主面または第2主面から前記積層方向に沿って前記第1孔部にまで到達する貫通孔を形成し、
前記第1孔部に挿入され、前記第1孔部に挿入されたときに前記積層方向において前記貫通孔と連通する第2孔部が形成された凸部を有する継手体を形成し、
前記凸部と前記第1孔部が嵌合するように前記継手体を前記側面に配置し、
前記貫通孔及び前記第2孔部に係止部材を挿入して、前記凸部を前記第1孔部で係止し、
前記継手体と前記積層ブロック本体との間及び前記係止部材と前記積層ブロック本体との間を接合部材で接合する
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に適用される積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の1つに、積層型のマイクロ流路熱交換器がある。このマイクロ流路熱交換器は、例えば、微細な高温流体流路が形成された複数の金属板と、微細な低温流体流路が形成された複数の金属板を交互に積層して、真空状態で加圧・加熱することによって各金属板を互いに拡散接合することで形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなマイクロ流路熱交換器には、マイクロ流路熱交換器に高温流体または低温流体を流入したり流出させたりする継手体(出入口管)が設けられる場合がある。このような継手体は、例えば、マイクロ流路熱交換器の上面、側面、あるいは下面にロウ付けによって接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6056928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ロウ付けは、真空炉中ロウ付を行う場合、マイクロ流路熱交換器または継手体がロウ付けの際には互いに固定されていないため、運搬中の衝撃や炉中での配置、またはロウ付け中の熱膨張により、継手体が本来装着される位置からずれるおそれがある。このずれを回避するために継手体をマイクロ流路熱交換器に予め仮止めするTig溶接等が必要となっているが、この仮止め工程がマイクロ流路熱交換器の生産性向上の妨げとなっていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性を向上させた積層体及び積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体は、積層ブロック本体と、継手体と、係止部材を具備する。
上記積層ブロック本体は、複数の伝熱板のそれぞれと複数の第1金属板のそれぞれとが積層され、上記複数の伝熱板と上記複数の第1金属板とが積層された積層方向に沿った側面と、上記側面に連設し上記積層方向に対向する第1主面と第2主面とを有し、上記側面に少なくとも1つの第1孔部が設けられる。
上記継手体は、上記側面に設けられ、上記第1孔部に挿入される凸部を有する。
上記係止部材は、上記凸部を上記第1孔部において係止する。
上記積層ブロック本体には、上記第1主面または上記第2主面から上記積層方向に沿って上記第1孔部にまで到達する貫通孔が設けられる。
上記凸部には、上記凸部が上記第1孔部に挿入されたとき、上記積層方向に沿って上記貫通孔に連通する第2孔部が設けられる。
上記係止部材が上記貫通孔及び上記第2孔部に挿入され得る。
【0008】
このような積層体であれば、上述したロウ付け前の仮止めが不要となって、積層体の生産性が向上する。
【0009】
上記の積層体においては、上記継手体と上記積層ブロック本体との間及び上記係止部材と上記積層ブロック本体との間に接合部材をさらに具備してもよい。
【0010】
このような積層体であれば、ロウ付け前の仮止めが不要となった積層体において、継手体と積層ブロック本体との間及び係止部材と積層ブロック本体との間が接合部材によって接合される。
【0011】
上記の積層体においては、上記継手体は、複数の第2金属板のそれぞれが拡散接合により積層された積層体であり、上記積層方向において、上記継手体の長さと、上記積層ブロック本体の長さとが同じであってもよい。
【0012】
このような積層体であれば、凸部の高さと第1孔部の高さとが同じになり、第1孔部の高さに適合させた凸部を後加工する工程を略すことができる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体の製造方法では、複数の第1伝熱板と複数の第1金属板とを積層し、上記複数の第1伝熱板のそれぞれと上記複数の第1金属板のそれぞれとを拡散接合により接合して積層ブロック本体を形成するときに、上記積層ブロック本体に対して、上記積層ブロック本体の積層方向に沿った側面に少なくとも1つの第1孔部を形成するとともに、上記側面に連設する第1主面または第2主面から上記積層方向に沿って上記第1孔部にまで到達する貫通孔が形成される。
上記第1孔部に挿入され、上記第1孔部に挿入されたときに上記積層方向において上記貫通孔と連通する第2孔部が形成された凸部を有する継手体が形成される。
上記凸部と上記第1孔部が嵌合するように上記継手体が上記側面に配置される。
上記貫通孔及び上記第2孔部に係止部材を挿入して、上記凸部が上記第1孔部で係止される。
上記継手体と上記積層ブロック本体との間及び上記係止部材と上記積層ブロック本体との間が接合部材で接合される。
【0014】
このような積層体の製造方法であれば、ロウ付け前の仮止めが不要となって、積層体の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、生産性を向上させた積層体及び積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る積層体の概要を示す模式的斜視図である。
図2】図(a)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合される前の模式的断面図である。図(b)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合された後の模式的断面図である。
図3】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図4】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図5】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図6】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図7】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図8】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
図9】本実施形態の変形例1を示す模式的斜視図である。
図10】本実施形態の変形例2を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0018】
(積層体の構造)
図1は、本実施形態に係る積層体の概要を示す模式的斜視図である。
【0019】
図1に示す積層体10は、積層ブロック本体(熱交換器本体)1と、継手体51~54とを具備する。積層ブロック本体1は、例えば、略直方体形状をしている。図1では、積層体10の構造を説明する都合上、継手体51~54のそれぞれが積層ブロック本体1から離れて描かれている。継手体51~54のそれぞれは、積層ブロック本体1の側面1wに接合される。
【0020】
積層体10は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。例えば、高温の流体が積層体10の継手体51から流入すると、流体は、積層ブロック本体1を経由し、継手体52から流出する。一方、低温の流体が継手体53から流入すると、流体は、積層ブロック本体1を経由し、継手体54から流出する。継手体51~54のそれぞれの孔部5hには、例えば、連結管等が接続される。
【0021】
積層ブロック本体1は、伝熱板である複数の金属板2Aaと、伝熱板である複数の金属板2Baと、下側外殻板である複数の金属板3Aaと、上側外殻板である複数の金属板3Baとを有する。例えば、積層ブロック本体1の主面1u側には複数の金属板3Baが、主面1d側には複数の金属板3Aaが、それぞれZ方向に積層されている。複数の金属板3Aaと複数の金属板3Baとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Aaと、複数の金属板2Baとが交互に積層されている。金属板3Aa及び金属板3Baのそれぞれは、複数の金属板に限らず、1つの金属板でもよい。
【0022】
積層ブロック本体1は、主面1u(第1主面(上面))と、主面1uとは反対側の主面1d(第2主面(下面))と、側面1wとを有する。側面1wは、複数の金属板3Aa、2Aa、2Ba、及び3Baが積層された積層方向に沿って形成され、主面1u、1dは、側面1wに連設される。主面1u、1dは、積層方向(Z軸方向)に対向する。
【0023】
複数の金属板3Aa、2Aa、2Ba、及び3Baのそれぞれは、このように積層された状態で拡散接合により接合される。拡散接合としては、固相接合、熱間圧接、冷間圧接等があげられる。複数の金属板3Aaと複数の金属板3Baとの間の複数の金属板2Aa、2Baを積層体2とする。なお、図1では、Z軸方向に積層された複数の金属板のそれぞれの境界に実線が描かれているが、拡散接合後、実線は消滅することがある。また、本実施形態では、金属板3Aaと、金属板3Baとを総括的に第1金属板とする。
【0024】
複数の金属板2Aaのそれぞれ及び複数の金属板2Baのそれぞれには、流路が形成されている(後述)。積層ブロック本体1の側面1wのそれぞれには、流体が出入りする少なくとも1つの開口2hが設けられている。例えば、図1の例では、4つの側面1wに、それぞれ1つの開口2hが設けられる。開口2hは、1つの側面1w当たりに1つとは限らず、複数設けることもできる。
【0025】
継手体51、52と、継手体53、54とは、積層ブロック本体1の側面1wに挿入されて、例えば、側面1wにロウ付けにより接合される。例えば、継手体51、52は、Y軸方向において積層ブロック本体1の側面1wに配置され、継手体53、54は、X軸方向において積層ブロック本体1の側面1wに配置される。すなわち、継手体51から継手体52に向かう方向と、継手体53から継手体54に向かう方向とは、交差する。
【0026】
また、積層ブロック本体1の側面1wのそれぞれには、例えば、少なくとも1つの孔部11(第1孔部)が設けられている。例えば、孔部11は、開口2hの周辺に、複数設けられる。側面1wを側面1wに対して垂直な方向から見たときに、孔部11の開口面積は、開口2hの開口面積よりも小さい。また、継手体51~54のそれぞれは、孔部11に挿入される凸部55を有する。
【0027】
図2(a)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合される前の模式的断面図である。図2(b)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合された後の模式的断面図である。図2(a)、(b)では、一例として、図1に例示した継手体52を含むA1-A1線に沿った断面が示されている。図2(a)、(b)に示される断面構造は、他の継手体51、53、54にも適用される。
【0028】
図2(a)に示すように、積層ブロック本体1の側面1wには、流体の出入口となる開口2hが設けられている。さらに、側面1wには、継手体52の凸部55が挿入される孔部11が設けられている。凸部55は、積層方向に対し交差する方向(例えば、直交する方向)に突出する。凸部55は、積層方向に直交する方向において孔部11に挿入される。側面1wを側面1wに対して垂直な方向から見たときに、開口2h、孔部11の形状は、例えば、矩形状である。
【0029】
また、積層ブロック本体1には、主面1uまたは主面1dから積層方向に沿って孔部11にまで到達する貫通孔110が設けられている。また、凸部55には、凸部55が孔部11に挿入されたとき、積層方向に沿って貫通孔110に連通する孔部550(第2孔部)が設けられている。孔部550は、図示するように積層方向に貫通した無底の孔でもよく、有底の孔でもよい。凸部55が孔部11に挿入されたとき、係止部材510は、貫通孔110及び孔部550に積層方向において挿入され得る。これにより、係止部材510によって、凸部55が孔部11において係止される。
【0030】
例えば、凸部55が孔部11に挿入された後、主面1uの側から係止部材510が貫通孔110及び孔部550に打ち込み等の手段によって挿入される。また、主面1dの側においても、係止部材510が貫通孔110及び孔部550に同手段によって挿入される。これらの孔部11、凸部55、及び係止部材510の組は、積層ブロック本体1の主面1u側のみに設けてもよく、積層ブロック本体1の主面1d側のみに設けてもよい。
【0031】
また、図2(b)の例では、継手体52と積層ブロック本体1との間及び係止部材510と積層ブロック本体1との間に、継手体52と積層ブロック本体1との間及び係止部材510と積層ブロック本体1との間を接合する接合部材501が設けられている。
【0032】
例えば、継手体52と積層ブロック本体1との間及び係止部材510と積層ブロック本体1との間には、ロウ材等の接合部材501が配置される。この後、孔部11に継手体52の凸部55が挿入され、凸部55が係止部材510によって孔部11に係止され、接合部材501によって継手体52が積層ブロック本体1の側面1wに接合される(図2(b))。
【0033】
なお、凸部55は、1つの金属板3Abまたは1つの金属板3Bbから突出させるほか、複数に重ねた金属板3Abまたは複数に重ねた金属板3Bbからまとめて突出させてもよい。この場合、凸部55の厚みが金属板3Abまたは金属板3Bbの積層数に比例して厚くなる。この場合、凸部55を受ける孔部11は、凸部55の厚みに適合するように複数に重ねた金属板3Aaまたは複数に重ねた金属板3Baに形成される。凸部55の厚みを増加させることで、凸部55の機械的強度が増加する。
【0034】
なお、継手体52は、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Bbと、下側外殻板である複数の金属板3Abと、上側外殻板である複数の金属板3Bbとを有する。複数の金属板3Abと複数の金属板3Bbとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Bbとが交互に積層されている。複数の金属板3Ab及び複数の金属板3Bbのそれぞれは、1つの金属板でもよい。複数の金属板3Ab、2Ab、2Bb、3Bbのそれぞれは、このように積層された状態で拡散接合により接合される。すなわち、継手体52も、複数の金属板3Ab、2Ab、2Bb、3Bbのそれぞれが拡散接合により接合された積層体である。なお、本実施形態では、金属板2Abと、金属板2Bbと、金属板3Abと、金属板3Bbとを総括的に第2金属板とする。
【0035】
また、積層体10においては、積層方向において、継手体52の長さと、積層ブロック本体1の長さとが同じである。例えば、積層方向において、複数の金属板3Aaが積層された長さは、複数の金属板3Abが積層方向に積層された長さと一致している。また、積層方向において、複数の金属板2Aa、2Baが交互に積層された長さは、複数の金属板2Ab、2Bbが交互に積層方向に積層された長さと一致している。また、積層方向において、複数の金属板3Baが積層された長さは、複数の金属板3Bbが積層方向に積層された長さと一致している。なお、ここでの「長さ」とは、各々の金属板を積層し拡散接合を行って一体化したときの長さのことである。また、長さが「同じ」とは、長さが実質的に同じの意味であり、長さが完全に同じであるほか、原材料板の積み重ねの位置によって生じる寸法誤差を含める。
【0036】
金属板2Aa、2Ba、3Aa、3Ba、2Ab、2Bb、3Ab、3Bbは、熱伝導率が高く、例えば、同じ材料の金属板である。これらの金属板は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼板、銅、アルミニウム合金、チタン、マグネシウム合金等のいずれかでよい。金属板2Aaと金属板2Ab、金属板2Baと金属板2Bb、金属板3Aaと金属板3Ab、金属板3Ba及びと金属板3Bbのそれぞれの組み合わせは、同じ原材料板から形成される。従ってそれぞれの組み合わせにおける金属板の板厚は、原材料板の寸法誤差を含めて同一である。
【0037】
継手体52には、外部の冷媒管等と接続するための継手管(不図示)が接続される孔部5hが設けられている。継手体52が側面1wに接合されると、孔部5hは、開口2hに連通する。孔部5hは、例えば、継手体52の拡散接合後、エンドミル、ドリル等の加工冶具により形成される。
【0038】
(積層体の製造方法)
【0039】
図3(a)~図8(b)は、積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【0040】
例えば、積層ブロック本体1及び継手体51~54を形成する金属板としては、図3(a)に示す金属板2Aと、図3(b)に示す金属板2Bと、図4(a)に示す金属板3Aと、図4(b)に示す金属板3Bと、図5(a)に示す金属板3Aと、図5(b)に示す金属板3Bとが使用される。
【0041】
図3(a)に示す金属板2Aは、金属板2Aaと、金属板2Aaを囲む金属板2ABと、金属板2Aaと金属板2ABとを繋ぐリブ部2Arとを有する。金属板2Aaと金属板2ABとの間では、リブ部2Ar以外の部分において貫通溝が形成されている。
【0042】
金属板2Aは、主面2uと、主面2uとは反対側の主面2dと、主面2uと主面2dとに連続する側面2wとを有する。金属板2Aa、金属板2AB、及びリブ部2Arは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0043】
金属板2Aaには、その4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Aaの主面2uには、熱交換部分であって高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aが設けられている。溝25A、30A、31Aは、金属板2Aの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。
【0044】
溝25A、30A、31Aの深さはいずれの箇所も均一であってよい。複数の溝25Aは、X軸方向に沿って形成される。溝30A、31Aは、Y軸方向に沿って形成される。溝30Aは、その一端が開口部212と連通する。溝31Aは、その一端が開口部222と連通する。
【0045】
すなわち、Y軸方向の両端部に設けられる開口部212と開口部222との間には、開口部212と開口部222との間を連通する複数の溝25A、30A、31Aが形成されている。溝25Aの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Aの形状も図示される直線状に限られず、任意の形状でよい。
【0046】
金属板2Aaを囲む金属板2ABには、金属板2ABが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板2Abがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板2ABには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0047】
図3(b)に示す金属板2Bは、金属板2Baと、金属板2Baを囲む金属板2BBと、金属板2Baと金属板2BBとを繋ぐリブ部2Brとを有する。金属板2Baと金属板2BBとの間では、リブ部2Br以外の部分において溝が形成されている。金属板2Bは、主面2uと、主面2dと、側面2wとを有する。金属板2Ba、金属板2BB、及びリブ部2Brは、一体物であり、同じ材料で形成される。例えば、金属板2Bの材料は、金属板2Aの材料と同じである。
【0048】
金属板2Baには、その4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Baの主面2uには、熱交換部分であって低温流体の流路を形成する溝25Bが設けられている。溝25Bは、金属板2Bの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。複数の溝25Bは、X軸方向に沿って形成される。溝25Bは、その一端が開口部232と連通し、他端は、開口部242と連通する。
【0049】
すなわち、X軸方向の両端部に設けられる開口部232と開口部242との間には、開口部232と開口部242との間を連通する複数の溝25Bが形成されている。溝25Bの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Bの形状も図示される直線状に限られず、任意の形状でよい。
【0050】
金属板2Baを囲む金属板2BBには、金属板2BBが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板2Bbがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板2BBには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0051】
上記の溝、開口部を形成する処理は、エッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。また、該処理として、3Dプリンターのような積層造形技術も用いることができる。
【0052】
また、本実施形態では、金属板2A、2Bにおいて、流路が形成された金属板2Aa、2Baを金属板2A、2Bの第1領域とし、第1領域を囲む金属板2Ab、2Bbを金属板2A、2Bの第2領域(後述のフレーム体5を形成する部分)とする。
【0053】
図4(a)に示す金属板3Aは、金属板3Aaと、金属板3Aaを囲む金属板3ABと、金属板3Aaと金属板3ABとを繋ぐリブ部3Arとを有する。金属板3Aaと金属板3ABとの間では、リブ部3Ar以外の部分において溝が形成されている。金属板3Aa、金属板3AB、及びリブ部3Arは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0054】
また、金属板3Aaを囲む金属板3ABには、金属板3ABが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板3Abがそれぞれ4か所の領域に設けられている。金属板3Abには、金属板3Aaに向けて孔部550を持った凸部55が形成されている。また、凸部55が対向する金属板3Aaの位置には、孔部11が形成されている。また、金属板3ABには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。凸部55、孔部11、ピン孔251は、例えば、エッチング技術により形成される。
【0055】
図4(b)に示す金属板3Bは、金属板3Baと、金属板3Baを囲む金属板3BBと、金属板3Baと金属板3BBとを繋ぐリブ部3Brとを有する。金属板3Baと金属板3BBとの間では、リブ部3Br以外の部分において貫通溝が形成されている。金属板3Ba、金属板3BB、及びリブ部3Brは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0056】
また、金属板3Baを囲む金属板3BBには、金属板3BBが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板3Bbがそれぞれ4か所の領域に設けられている。金属板3Bbには、金属板3Baに向けて孔部550を持った凸部55が形成されている。また、凸部55が対向する金属板3Baの位置には、孔部11が形成されている。また、金属板3BBには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。凸部55、孔部11、ピン孔251は、例えば、エッチング技術により形成される。
【0057】
図5(a)に示す金属板3Aは、図4(a)に示す金属板3Aに貫通孔110が形成されたものであり、凸部55、孔部11が形成されていない。また、図5(b)に示す金属板3Bは、図4(b)に示す金属板3Bに貫通孔110が形成されたものであり、凸部55、孔部11が形成されていない。
【0058】
図6(a)に示す金属板3Aは、図4(a)に示す金属板3Aにある凸部55、孔部11予めが形成されていない。また、図6(b)に示す金属板3Bは、図4(b)に示す金属板3Bにある凸部55、孔部11が予め形成されていない。
【0059】
特に、金属板3Ab、3Baには、流路が設けられないことから、金属板3Ab、3Baに孔部11または貫通孔110が設けられたとしても、流路の配置の自由度を阻害することにならない。
【0060】
次に、図7(a)に示すように、複数の金属板3Aが積層され、その上に金属板2A、2Bが交互に積層され、その上に複数の金属板3Bが積層される。ここで、複数の金属板3Aにおいては、例えば、最下段に図5(a)に示す金属板3Aが配置され、その上に図4(a)に示す金属板3Aが配置され、その上に図6(a)に示す金属板3Aが配置される。また、複数の金属板3Bにおいては、例えば、最上段に図5(b)に示す金属板3Bが配置され、その下に図4(b)に示す金属板3Bが配置され、その下に図6(b)に示す金属板3Bが配置される。
【0061】
この際、各金属板の四隅に形成されたピン孔251には、位置決め用のピン(不図示)が挿入される。
【0062】
次に、図7(b)に示すように、複数の金属板3A、複数の金属板2A、2B、及び複数の金属板3Bのそれぞれを真空の状態で積層方向に加圧・加熱することによって、それぞれの金属板が拡散接合により接合されて、積層ブロック体4が形成される。
【0063】
積層ブロック体4は、積層ブロック本体1と、積層ブロック本体1を囲むフレーム体5を有する。積層ブロック本体1は、金属板3Aa、2Aa、2Ba、3Baのそれぞれが積層方向において接合されたものである。フレーム体5は、金属板3AB、2AB、2BB、3BBのそれぞれが積層方向において接合されたものである。また、積層ブロック体4では、リブ部2Ar、2Br、3Ar、3Brのそれぞれが積層方向において接合されてリブ6が形成される。積層ブロック本体1とフレーム体5とは、リブ6によって接続されている。
【0064】
積層ブロック本体1では、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部212、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部222、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部232、及び金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部242が積層方向に重なることで、図1に示す4つの開口2hが形成される。また、積層ブロック本体1では、積層ブロック本体1の積層方向に沿った側面1wに少なくとも1つの孔部11が形成されるとともに、主面1uまたは主面1dから積層方向に沿って孔部11にまで到達する貫通孔110が形成される(図2(a))。
【0065】
また、フレーム体5には、金属板3Ab、2Ab、2Bb、3Bbのそれぞれが積層方向において接合することで、継手体51A、52A、53A、54Aが形成される。この段階では、継手体51A~54Aには、孔部5hが形成されていない。
【0066】
次に、図8(a)に示すように、積層ブロック体4の一部である図7(b)に示すリブ6を切除することにより、積層ブロック体4が金属板2Aa、2Baを含む積層ブロック本体1と、金属板2Ab、2Bbを含むフレーム体5とに分割される。リブ6の切除は、例えば、放電加工による。
【0067】
次に、図8(b)に示すように、フレーム体5が機械加工されて、フレーム体5の一部が積層ブロック本体1の側面1wに接合される継手体51~54として加工される。継手体51~54には、凸部55が設けられる。この後、継手体51~54のそれぞれには、機械加工によって孔部5hが形成される。この後、図2(a)、(b)に示すように、凸部55と孔部11とが嵌合するように、継手体51~54のそれぞれが側面1wに配置され、貫通孔110及び孔部550に係止部材510が挿入されて、凸部55が孔部11で係止される。そして、継手体51~54と積層ブロック本体1との間及び係止部材510と積層ブロック本体1との間が接合部材501で接合される。
【0068】
なお、図8(a)、(b)では図示を省略しているが、図7(b)に示すリブ6を切除して分割した後の積層ブロック本体1の側面1wとフレーム体5の内周面には、リブ6を切除した痕跡が例えば凸状痕として残る場合がある。
【0069】
本実施形態の効果の例について説明する。
【0070】
本実施形態によれば、積層ブロック本体1に凸部55が勘合する孔部11が設けられ、孔部11に凸部55を勘合させて、係止部材510を貫通孔110及び孔部550に差し込み、凸部55を孔部11に固定してから、継手体51~54と積層ブロック本体1との間の接合を実行している。これにより、従来行われていた、継手体51~54と積層ブロック本体1とを接合する前に、継手体51~54と積層ブロック本体1とをTig溶接等で仮止めする工程が不要となり、積層体10の生産性が向上する。
【0071】
さらに、本実施形態によれば、積層ブロック本体1の厚さと、フレーム体5の厚さとが同じ積層ブロック体4から分割されているため、両者の厚さがほぼ同じになる。そして、同じ金属板3A(または、金属板3B)から、金属板3Aaと金属板3Ab(または、金属板3Baと金属板3Bb)を切り出すため、継手体51~54のそれぞれにおいて、凸部55の高さと、孔部11の高さとが一致する。
【0072】
これにより、継手体51~54のそれぞれにおいて、孔部11の高さに適合させた凸部55を後加工で製作する手間が省け、積層体10の生産性が向上する。
【0073】
(変形例1)
図9(a)、(b)は、本実施形態の変形例1を示す模式的斜視図である。図9(a)、(b)に示す例は、継手体51~53にも適用される。
【0074】
例えば、図9(a)に示すフレーム体5中の継手体54Aにおいては、凸部55が形成された側面とは反対側の側面を機械加工することにより、孔部5hに連通する管部56が一体的に形成された継手体54が形成される。
【0075】
このような手法によれば、継手体51~54の孔部5hに連通する管部56を継手体51~54から機械加工で形成することで、管56を別部品として用意する必要がなくなり部品点数を削減することができる。さらに継手体51~54と管部56とをTig溶接等で仮止めする工程が不要となり、積層体10の生産性が向上する。
【0076】
(変形例2)
図10は、本実施形態の変形例2を示す模式的断面図である。図10に示す例は、継手体51、53、54にも適用される。
【0077】
図3(a)~図8(b)に例示して形成された、積層ブロック本体1及び継手体52には、同じ金属板を積層し拡散接合した後に積層ブロック本体1と継手体52とを分離形成したものであるため、積層方向における孔部11の厚みと、凸部55の厚みとが同じになる。但し、孔部11の厚みと凸部55の厚みとが完全に同じになった場合、凸部55が孔部11内に円滑に挿入できなくなる可能性がある。
【0078】
このような場合、例えば、凸部55の積層方向における厚さは、ハーフエッチング等の手法により調整してもよい。例えば、図4(a)、(b)に示す状態から、凸部55以外の部分をマスク部材によって被覆して、凸部55が選択的にハーフエッチングされる。あるいは、マスク部材を用いず、レーザ加工、機械的研磨によって、凸部55の厚みを調整してもよい。これにより、凸部55をより確実に孔部11に篏合させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…積層ブロック本体
1d、1u、2d、2u…主面
1w、2w…側面
2Aa、2Ba、2Ab、2Bb、3A、3B…金属板
2Ar、2Br、3Ar、3Br…リブ部
5…フレーム体
5h…孔部
10…積層体
11…孔部
25A、25B、30A、31A…溝
51、51A、52、52A、53、53A、54、54A…継手体
55…凸部
56…管部
110…貫通孔
212、222、232、242…開口部
251…ピン孔
501…接合部材
510…係止部材
550…孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10