(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両用フロア構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2020218289
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】種田 浩大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄眞
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193026(JP,A)
【文献】特開2022-081180(JP,A)
【文献】特開2019-202743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアの下側にバッテリパックを搭載可能な車両用フロア構造において、
当該車両用フロア構造は、
前記フロアの車幅方向両端に車両前後方向に沿って接続される一対のサイドシルと、
前記フロアの上側に設けられ前記一対のサイドシルに車幅方向にかけ渡されるフロアクロスメンバと、
前記フロアの下側と前記サイドシルの車幅方向内側との間を斜めにつなぐ支持ブラケットとを備え、
前記支持ブラケットは、
前記フロアの下側に車両前後方向にわたって接合される車内側フロア接合部と、
前記サイドシルの車幅方向内側から下側にまでわたって接合されるサイドシル接合部とを有し、
前記支持ブラケットは、前記フロアクロスメンバの下方に重なる位置に配置され
、
前記支持ブラケットはさらに、車幅方向において前記車内側フロア接合部と前記サイドシル接合部とを斜めにつなぐブラケット傾斜部を有することを特徴とする車両用フロア構造。
【請求項2】
前記支持ブラケットは、前記ブラケット傾斜部が前記フロアクロスメンバの下方に重なるよう配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロア構造。
【請求項3】
前記フロアクロスメンバは、
当該フロアクロスメンバの前壁から前方に屈曲して前記フロアの上側に接合されるクロスメンバ前側フランジと、
前記フロアクロスメンバの後壁から後方に屈曲して前記フロアの上側に接合されるクロスメンバ後側フランジとを有し、
前記支持ブラケットはさらに、
車幅方向にわたって前記フロアの下側に接合される前側フロア接合部と、
前記前側フロア接合部よりも後方で車幅方向にわたって前記フロアの下側に接合される後側フロア接合部とを有し、
前記支持ブラケットは、前記前側フロア接合部が前記フロアクロスメンバの前記クロスメンバ前側フランジの下方に重なり、前記後側フロア接合部が該フロアクロスメンバの前記クロスメンバ後側フランジの下方に重なるよう配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用フロア構造。
【請求項4】
前記フロアクロスメンバは、
前記サイドシルよりも高い位置に形成されて車両用シートのシートブラケットが設置されるクロスメンバ天面部と、
前記クロスメンバ天面部の車幅方向の端部から屈曲して前記サイドシルに向かって斜め下方に延びるクロスメンバ傾斜部とを有し、
前記支持ブラケットは、前記車内側フロア接合部が前記フロアクロスメンバの前記クロスメンバ天面部の下方に重なるよう配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用フロア構造。
【請求項5】
前記支持ブラケットはさらに、所定の配管の取付部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用フロア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車やハイブリッドカーは、フロアの下側にバッテリ等が搭載されていて、車両が他の構造物に接触したときを想定してバッテリ等の保護対策が求められている。例えば、特許文献1に記載の下部車体構造では、
図3等に記載されているように、フロアパネル2の下側にバッテリトレイ60が配置されている。そして、バッテリトレイ60の周囲のサイドフレーム40とサイドシル3との間に第1衝撃吸収部材70が配置されていて、これによって側面衝突等の衝撃荷重を吸収することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図6に記載されているように、第1衝撃吸収部材70はサイドシル3から見て車内側下方に設けられているため、この第1衝撃吸収部材70が変形等すると、サイドシル3がフロアパネル2との接続箇所を軸にしてフロアパネル2の下側に回転するように移動するおそれがある。バッテリや附随する配管等の部品をより十全に保護するためには、サイドシル3のフロアパネル2の下側への移動もなるべく抑えることが好ましい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、フロアの下側のバッテリパックを十全に保護可能な車両用フロア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用フロア構造の代表的な構成は、車両のフロアの下側にバッテリパックを搭載可能な車両用フロア構造において、当該車両用フロア構造は、フロアの車幅方向両端に車両前後方向に沿って接続される一対のサイドシルと、フロアの上側に設けられ一対のサイドシルに車幅方向にかけ渡されるフロアクロスメンバと、フロアの下側とサイドシルの車幅方向内側との間を斜めにつなぐ支持ブラケットとを備え、支持ブラケットは、フロアの下側に車両前後方向にわたって接合される車内側フロア接合部と、サイドシルの車幅方向内側から下側にまでわたって接合されるサイドシル接合部とを有し、支持ブラケットは、フロアクロスメンバの下方に重なる位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロアの下側のバッテリパックを十全に保護可能な車両用フロア構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用フロア構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1(b)の支持ブラケットを各方向から示した図である。
【
図3】
図2(b)の車両用フロア構造のA-A断面図である。
【
図4】
図2(b)の支持ブラケットの変形例を示した図である。
【
図5】
図4の支持ブラケットのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用フロア構造は、車両のフロアの下側にバッテリパックを搭載可能な車両用フロア構造において、当該車両用フロア構造は、フロアの車幅方向両端に車両前後方向に沿って接続される一対のサイドシルと、フロアの上側に設けられ一対のサイドシルに車幅方向にかけ渡されるフロアクロスメンバと、フロアの下側とサイドシルの車幅方向内側との間を斜めにつなぐ支持ブラケットとを備え、支持ブラケットは、フロアの下側に車両前後方向にわたって接合される車内側フロア接合部と、サイドシルの車幅方向内側から下側にまでわたって接合されるサイドシル接合部とを有し、支持ブラケットは、フロアクロスメンバの下方に重なる位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
上記支持ブラケットは、サイドシルとフロアとの間で筋交部品として機能し、サイドシルから受けた車幅方向外側からの荷重を、フロアに沿う方向およびフロアクロスメンバに向けて上下方向に伝達して分散させることができる。よって、上記構成によれば、車両に側突等が生じたとき等、サイドシルがフロアの下側に回転移動するような変形を、支持ブラケットによって荷重を車幅方向および上下方向に伝達させることで、効率よく抑えることができる。
【0011】
上記の支持ブラケットはさらに、車幅方向において車内側フロア接合部とサイドシル接合部とを斜めにつなぐブラケット傾斜部を有し、支持ブラケットは、ブラケット傾斜部がフロアクロスメンバの下方に重なるよう配置されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、支持ブラケットは、ブラケット傾斜部がフロアクロスメンバと重なることによって、サイドシルから受けた荷重をブラケット傾斜部に沿ってフロアクロスメンバへと効率よく伝達することが可能になる。
【0013】
上記のフロアクロスメンバは、当該フロアクロスメンバの前壁から前方に屈曲してフロアの上側に接合されるクロスメンバ前側フランジと、フロアクロスメンバの後壁から後方に屈曲してフロアの上側に接合されるクロスメンバ後側フランジとを有し、支持ブラケットはさらに、車幅方向にわたってフロアの下側に接合される前側フロア接合部と、前側フロア接合部よりも後方で車幅方向にわたってフロアの下側に接合される後側フロア接合部とを有し、支持ブラケットは、前側フロア接合部がフロアクロスメンバのクロスメンバ前側フランジの下方に重なり、後側フロア接合部がフロアクロスメンバのクロスメンバ後側フランジの下方に重なるよう配置されてもよい。
【0014】
上記構成によっても、支持ブラケットは、サイドシルから受けた荷重をフロアクロスメンバに効率よく伝達することが可能になる。具体的には、支持ブラケットの前側フロア接合部がフロアを介してクロスメンバ前側フランジに重なることで、サイドシルを車両内側に回転させるような方向への荷重がサイドシルおよび支持ブラケットに入力されても、フロアはクロスメンバ前側フランジで支えられ、フロアが上下方向に変形することを防ぐことができる。このことは、クロスメンバ後側フランジについても同様である。よって、上記構成であれば、サイドシルが車両内側に侵入するような変形を抑制できる。
【0015】
上記のフロアクロスメンバは、サイドシルよりも高い位置に形成されて車両用シートのシートブラケットが設置されるクロスメンバ天面部と、クロスメンバ天面部の車幅方向の端部から屈曲してサイドシルに向かって斜め下方に延びるクロスメンバ傾斜部とを有し、支持ブラケットは、車内側フロア接合部がフロアクロスメンバのクロスメンバ天面部の下方に重なるよう配置されてもよい。
【0016】
上記フロアクロスメンバのうち、クロスメンバ天面部とクロスメンバ傾斜部との間の屈曲箇所は、形状的に上下方向の剛性が高い。よって、支持ブラケットは、フロアクロスメンバの下方にて当該フロアクロスメンバの屈曲箇所を車幅方向に横切るようにフロアに設置されることで、サイドシルから受けた荷重を当該支持ブラケットからフロアクロスメンバへ伝達し、クロスメンバ傾斜部からクロスメンバ天面部の屈曲箇所へ効率よく分散させ、フロアクロスメンバと共にフロアの変形を抑えることが可能になる。
【0017】
上記の支持ブラケットはさらに、所定の配管の取付部を有してもよい。当該支持ブラケットは設置剛性が高いため、配管を好適に支持することが可能となる。特に、上記の支持ブラケットは、サイドシルの回転するような変形を抑制することができるため、車両前後方向にわたって延びる配管を好適に保護しつつ設置することが可能となる。
【実施例】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両用フロア構造100を示す斜視図である。
図1(a)は、車両用フロア構造100がバッテリパック104を搭載している状態を示している。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0020】
車両用フロア構造100は、フロアパネル102の下側にバッテリパック104を搭載することが可能になっている。バッテリパック104は、車幅方向に延びる複数の支持部材106によって下方から支えられ、前側を保護部材108によって保護されている。
【0021】
図1(b)は、
図1(a)のバッテリパック104を取り外した状態の図である。バッテリパック104を搭載する範囲には、複数の支持ブラケット110が設けられている。サイドシル112は、フロアパネル102の車幅方向両端に一対設けられていて、車両前後方向に沿って延びている部材である。支持ブラケット110は、フロアパネル102の下側とサイドシル112の車幅方向内側の壁部114とで形成される内角に設置されている。
【0022】
図2は、
図1(b)の支持ブラケット110を各方向から示した図である。
図2(a)は、
図1(b)の支持ブラケット110の斜視図である。支持ブラケット110は、中央側が膨出した膨出領域116になっていて、この膨出領域116を囲うようにフランジ118が形成された構成になっている。支持ブラケット110は、サイドシル112とフロアパネル102とで形成される内角に閉断面E1(
図3参照)を形成するよう設置され、サイドシル112とフロアパネル102との接続剛性を高めている。
【0023】
支持ブラケット110のフランジ118には、車幅方向内側の縁に沿って、車内側フロア接合部120が形成されている。車内側フロア接合部120は、フロアパネル102の下側に車両前後方向にわたって接合され、フロアパネル102を下方から支えている。また、フランジ118には、車幅方向外側に、サイドシル接合部122が形成されている。サイドシル接合部122は、車内側フロア接合部120よりも下方の位置にかけて、サイドシル112の車幅方向内側の壁部114から壁部114の下端の角部124をわたって当該サイドシル112の下側にまで接合されている。
【0024】
支持ブラケット110の膨出領域116は、サイドシル112とフロアパネル102との内角を埋めるように、三角形に形成されている。詳しくは、膨出領域116は、サイドシル112とフロアパネル102との間を斜めにつなぐブラケット傾斜部126と、ブラケット前壁部128およびブラケット後壁部130とで構成されている。
【0025】
支持ブラケット110のフランジ118にはさらに、当該支持ブラケット110の車両前側の縁に沿った前側フロア接合部132、および前側フロア接合部132よりも後方の車両後側の縁に沿った後側フロア接合部134が設けられている。前側フロア接合部132および後側フロア接合部134は、それぞれフロアパネル102の下側に車幅方向にわたって接合されている。
【0026】
フロアパネル102の上側には、サイドシル112に車幅方向にかけ渡されるようにフロアクロスメンバ136が設けられている。フロアクロスメンバ136は、前壁から前方に屈曲するクロスメンバ前側フランジ138と、後壁から後方に屈曲するクロスメンバ後側フランジ140とによって、フロアパネル102の上側に接合されている。
【0027】
図2(b)は、
図1(b)の支持ブラケット110を下方から見た図である。当該車両用フロア構造100では、支持ブラケット110を、フロアクロスメンバ136の下方に重なる位置に配置している。詳しくは、支持ブラケット110は、前側フロア接合部132がフロアクロスメンバ136のクロスメンバ前側フランジ138の下方に重なり、後側フロア接合部134がフロアクロスメンバ136のクロスメンバ後側フランジ140の下方に重なるよう配置される。
【0028】
なお、後述する
図3に記載するように、フロアパネル102はサイドシル112の上面112aに接合され、支持ブラケット110はサイドシル112の壁部114から角部124をまたいでサイドシルの下面112bにも接合されている。
【0029】
上記構成によって、支持ブラケット110は、サイドシル112から受けた荷重をフロアクロスメンバ136に効率よく伝達することが可能になっている。具体的には、支持ブラケット110の前側フロア接合部132がフロアパネル102を介してクロスメンバ前側フランジ138に重なることで、サイドシル112を車両内側に回転させるような方向への荷重がサイドシル112および支持ブラケット110に入力されても、フロアパネル102はクロスメンバ前側フランジ138で支えられ、フロアパネル102が上下方向に変形することを防ぐことができる。このことは、クロスメンバ後側フランジ140についても同様である。よって、本実施例であれば、サイドシル112が車両内側に侵入するような変形を効率よく抑制することができる。
【0030】
上記支持ブラケット110は、サイドシル112とフロアパネル102との間で筋交部品として機能し、サイドシル112から受けた車幅方向外側からの荷重を、フロアパネル102に沿う方向およびフロアクロスメンバ136に向けて上下方向に伝達して分散させることができる。よって、本実施例によれば、車両に側突等が生じたとき等、サイドシル112がフロアパネル102の下側に回転移動するような変形を、支持ブラケット110によって荷重を車幅方向および上下方向に伝達させることで、効率よく抑えることができる。特に、支持ブラケット110は、サイドシル接合部122がサイドシル112の角部124に接合されているため、サイドシル112の回転を効率よく受け止めることができる。
【0031】
図3は、
図2(b)の車両用フロア構造100のA-A断面図である。支持ブラケット110は、ブラケット傾斜部126がフロアクロスメンバ136の下方に重なるよう配置されている。そして、支持ブラケット110のブラケット傾斜部126は、車幅方向において、車内側フロア接合部120とサイドシル接合部122とを斜めにつないでいる。
【0032】
本実施例では、サイドシル接合部122はサイドシル112の壁部114に接合されていて、ブラケット傾斜部126は壁部114からフロアパネル102に向かって傾斜して延びている。なお、他の例として、ブラケット傾斜部126がサイドシル112の角部124からフロアパネル102に向かって傾斜して延びる構成とすることも可能である(
図5参照)。この構成のブラケット傾斜部126であると、サイドシル112をフロアパネル102の下側へ回転させようとする方向の荷重をより好適に吸収して分散し、サイドシル
112の移動を低減させることができる。
【0033】
本実施例によれば、支持ブラケット110は、ブラケット傾斜部126がフロアクロスメンバ136の下方に重なることによって、サイドシル112から受けた荷重をサイドシル接合部122からブラケット傾斜部126、そして車内側フロア接合部120からフロアパネル102を介してフロアクロスメンバ136へと、効率よく伝達することができる。
【0034】
ここで、フロアクロスメンバ136のクロスメンバ天面部142は、サイドシル112よりも高い位置に形成されていて、車両用シートを取り付けるためのシートブラケット144が設置される構成となっている。そして、フロアクロスメンバ136の車幅方向の端部には、クロスメンバ傾斜部146が形成されている。クロスメンバ傾斜部146は、クロスメンバ天面部142の車幅方向の端部から屈曲し、サイドシル112に向かって斜め下方に延びた領域である。これに対し、支持ブラケット110は、車内側フロア接合部120がフロアクロスメンバ136のクロスメンバ天面部142の下方に重なるよう配置されている。すなわち、支持ブラケット110は、ブラケット傾斜部126がサイドシル112からクロスメンバ天面部142の下方にわたるまで延びている。
【0035】
フロアクロスメンバ136のうち、クロスメンバ天面部142とクロスメンバ傾斜部146との間の屈曲箇所148は、平面の箇所に比べて断面二次モーメントが大きく、形状的に上下方向の剛性が高い。よって、支持ブラケット110は、フロアクロスメンバ136の下方にてフロアクロスメンバ136の屈曲箇所148を車幅方向に横切るようにフロアパネル102に設置されることで、サイドシル112から受けた荷重を当該支持ブラケット110からフロアクロスメンバ136へ伝達し、クロスメンバ傾斜部146からクロスメンバ天面部142の屈曲箇所148へ効率よく分散させることができ、フロアクロスメンバ136と共にサイドシル112およびフロアパネル102の変形を抑えることが可能になる。
【0036】
上記構成によれば、支持ブラケット110がサイドシル112から受けた荷重を、クロスメンバ天面部142からシートブラケット144にも分散させて吸収することが可能である。このとき、支持ブラケット110は、車内側フロア接合部120をより車幅方向内側の位置にまで延ばし、そしてブラケット傾斜部126の傾斜角度を緩めるほど、当該支持ブラケット110と上方のフロアクロスメンバ136とで構成される断面形状が太くなるため、剛性の向上を図ることができる。
【0037】
当該車両用フロア構造100によれば、サイドシル112からの荷重を吸収するにあたって、フロアクロスメンバ136およびシートブラケット144等の既存の部材を利用できる。そのため、支持ブラケット110は、簡潔な構成でサイドシル112の補強が達成でき、重量やコストを抑えることが可能になっている。
【0038】
フロアパネル102の下方にバッテリパック104を備える電気自動車等では、他の一般的な車両に比べて、サイドシル112に対してフロアパネル102およびフロアクロスメンバ136の位置が高い。そのため、従来の電気自動車では、サイドシル112を車幅方向内側から支える剛性が手薄になり、必然的にサイドシル112自体の板厚を増やす等して剛性を確保したり、サイドシル112の変形を許容するスペースをバッテリパックとの間に確保したりして、側面衝突等の際にサイドシル112とバッテリパック104とが接触する可能性を減らしていた。
【0039】
一方、本実施例の車両用フロア構造100によれば、支持ブラケット110によって、フロアクロスメンバ136をサイドシル112からの荷重吸収に寄与させることができる。そのため、本実施例では、サイドシル112自体の剛性向上を図る場合に比べて重量およびコストを抑えることが可能であり、サイドシル112とバッテリパック104との間の省スペース化も図ることが可能になっている。
【0040】
上記の支持ブラケット110はさらに、所定の配管150の取付部152を設けることも可能である。例えば、取付部152は、配管150の結束部に設けたピン154の挿入孔を膨出領域116(
図2(a)参照)に設ける等によって具現化することができる。また、配管150としては、例えば電源ユニットに関連する水冷管やブレーキパイプなどが挙げられる。
【0041】
当該支持ブラケット110は、設置剛性が高いため、配管150の重量も好適に吸収してこれを支持し、配管150の振動等を抑えることが可能である。特に、支持ブラケット110は、衝突発生時において、サイドシル112の回転するような変形を抑制することができるため、車両前後方向にわたって延びる配管150を変形したサイドシル112との接触から好適に保護しつつ設置することが可能となる。また、支持ブラケット110に取付部152を設けることで、配管設置用のブラケットが不要になり、部品点数を削減し、コストおよび重量を抑えることが可能になる。
【0042】
(変形例)
図4は、
図2(b)の支持ブラケット110の変形例を示した図である。
図4以降では、上記実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0043】
図4に示す支持ブラケット200では、
図2(b)の支持ブラケット110に比べて、ブラケット傾斜部202が車幅方向内側に向かって末広がりになっている。これによって、ブラケット前壁部204およびブラケット後壁部206も、フロアクロスメンバ136のクロスメンバ前側フランジ138およびクロスメンバ後側フランジ140の下方に重なっている。
【0044】
図5は、
図4の支持ブラケット200のB-B断面図である。支持ブラケット200では、サイドシル接合部122がサイドシル112の下面112bに接合され、ブラケット傾斜部202がサイドシル112の角部124からフロアパネル102に向かって傾斜して延びる構成となっている。すなわち、支持ブラケット200は、ブラケット傾斜部202からサイドシル接合部122にわたる範囲に屈曲箇所が無い。支持ブラケット200は、ブラケット傾斜部202によって、サイドシル112をフロアパネル102の下側へ回転させようとする方向の荷重をより好適に吸収し、サイドシル
112の移動を低減させることが可能になっている。
【0045】
当該支持ブラケット200によれば、サイドシル112からの荷重をフロアクロスメンバ136により効率良く伝えることができ、これによって側面衝突等におけるサイドシル112のフロアパネル102の下方への回転移動をより十全に防ぐことが可能になっている。
【0046】
なお、ブラケット傾斜部126、202は、
図3において、上下方向の縦断面が厳密な直線でなく、ある程度に湾曲していたとしても、サイドシル接合部122から車内側フロア接合部120への荷重伝達を問題なく行うことが可能である。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車両用フロア構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…車両用フロア構造、102…フロアパネル、104…バッテリパック、106…支持部材、108…保護部材、110…支持ブラケット、112…サイドシル、112a…上面、112b…下面、114…壁部、116…膨出領域、118…フランジ、120…車内側フロア接合部、122…サイドシル接合部、124…角部、126…ブラケット傾斜部、128…ブラケット前壁部、130…ブラケット後壁部、132…前側フロア接合部、134…後側フロア接合部、136…フロアクロスメンバ、138…クロスメンバ前側フランジ、140…クロスメンバ後側フランジ、142…クロスメンバ天面部、144…シートブラケット、146…クロスメンバ傾斜部、148…屈曲箇所、150…配管、152…取付部、154…ピン、200…支持ブラケット、202…ブラケット傾斜部、204…ブラケット前壁部、206…ブラケット後壁部