(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240618BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240618BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240618BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240618BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/44
A61K8/73
A61K8/20
A61Q5/02
(21)【出願番号】P 2020548488
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2019036270
(87)【国際公開番号】W WO2020059678
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ブルーエン ジュニア.、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】池田 直哲
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-282565(JP,A)
【文献】特開2004-161758(JP,A)
【文献】特開2015-027977(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104692(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0112879(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0224863(US,A1)
【文献】Udo Walz, Germany,Detox Shampoo,Mintel GNPD [online],2016年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4379609, [検索日:2023.09.22], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(E)及び水を含有する
液体毛髪洗浄剤:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)窒素含量が、1.5重量%以上、2.2重量%以下であるカチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.3重量%以下
(D)グルタミン酸、
アスパラギン酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される
2種以上を、
0.3重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類。
【請求項2】
さらに成分(F)
アルギニン、グリシン及びアラニンからなる群から選択される1種以上を0.01重量%以上2重量%以下含む請求項1に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項3】
成分(F)がアルギニンである請求項2に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項4】
成分(C)カチオン化ポリマーがカチオン化セルロースである請求項1~
3のいずれか1項に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項5】
成分(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩が
、N-ココイルグルタミン酸、それらのカリウム塩、それらのナトリウム塩及びそれらのトリエタノールアミン塩からなる群から選択される1種以上である請求項1~
4のいずれか1項に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項6】
成分(E)無機塩類が塩化ナトリウ
ムである請求項1~
5のいずれか1項に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項7】
成分(A)がα-オレフィンスルホン酸塩である請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項8】
pHが7未満である請求項
7に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項9】
以下の成分(A)~(E)及び水を含有する
液体組成物を毛髪又は頭皮に適用する工程を含む、毛髪又は頭皮の洗浄方法:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)窒素含量が、1.5重量%以上、2.2重量%以下であるカチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.3重量%以下
(D)グルタミン酸、
アスパラギン酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される
2種以上を、
0.3重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類。
【請求項10】
前記組成物がさらに成分(F)アルギニンを0.01重量%以上2重量%以下含み、
成分(A)がα-オレフィンスルホン酸塩
成分(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩が、N-ココイルグルタミン酸、それらのカリウム塩、それらのナトリウム塩及びそれらのトリエタノールアミン塩からなる群から選択される1種以上、
成分(C)カチオン化ポリマーがカチオン化セルロース、
成分(D)がグルタミン酸又はその塩、アスパラギン酸又はその塩、及びPCA又はその塩、
成分(E)無機塩類が塩化ナトリウムであり、
組成物のpHが7未満である、請求項9に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡の特性や洗髪時の感触に優れた毛髪洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、太陽光による紫外線や乾燥等の影響を常に受けると共に、日々の毛髪ケアにおけるブラッシング、ドライヤーの熱等によりパサつきがちで、ツヤも失われがちである。またカラーリングやパーマが一般化した近年は、化学的なダメージも受けやすく、毛髪表面が損傷し、毛髪間の摩擦が増大し、指通りの悪化やツヤの減少といった問題が起きている。
このような問題に対して、硫酸残基を有するアニオン界面活性剤、環状構造を有するアルコール、有機カルボン酸の組み合わせよりなる水性毛髪洗浄剤(特許文献1)、植物エキスと、乳酸あるいはクエン酸あるいはグルタミン酸と、植物油の組み合わせよりなる毛髪洗浄料(特許文献2)、アシルアミノ酸系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン化ポリマーの組み合わせよりなる頭皮頭髪洗浄用組成物(特許文献3)、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン化ポリマー、毛髪補修成分の組み合わせよりなるシャンプー組成物(特許文献4)などの毛髪洗浄剤が提案されている。しかしながら、泡性能に加えて、洗髪時の指通りの良さ、すすぎ時の指通りの良さ、乾燥後の指通りの良さやツヤの改善を同時に達成するのは困難であった。
また近年、ラウレス硫酸塩フリーコンセプトの拡がりとともに、α-オレフィンスルホン酸塩を主要な界面活性剤として用いる例が増えているが、毛髪洗浄料としてのコンディショニング効果は満足のいくものではない。また、ラウレス硫酸塩フリーコンセプトを謳う場合、同時にシリコンフリーを訴求する場合が多く、シリコーン化合物を配合せずに、コンディショニング効果を発揮させるのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6180202号
【文献】特許4979126号
【文献】特開2016-210775
【文献】特開2006-282565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、良好な泡性能に加えて、洗髪、すすぎ及び乾燥という一連の洗髪プロセスにおけるコンディショニング効果や乾燥後の優れた毛髪外観を付与しうるシリコンフリーの毛髪洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アシルイセチオン酸塩又はα-オレフィンスルホン酸塩、アシル酸性アミノ酸又はその塩、カチオン化ポリマー、二塩基酸又はPCA及び無機塩類を特定の配合比の組成物とすることで泡立ち等に優れ、洗髪プロセスにおける指通りの良さに加えて乾燥後の髪のツヤなどの外観やしっとり感などの感触に優れた組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の成分(A)~(E)及び水を含有する毛髪洗浄剤:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)カチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.8重量%以下
(D)二塩基酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上を、0.25重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類
[2]さらに成分(F)塩基性又は中性アミノ酸を0.01重量%以上2重量%以下含む[1]に記載の毛髪洗浄剤。
[3]成分(B)アシル酸性アミノ酸が、アシルグルタミン酸である[1]又は[2]に記載の毛髪洗浄剤。
[4]成分(B)アシルグルタミン酸のアシル鎖長が、C8からC20である[3]に記載の毛髪洗浄剤。
[5]成分(C)カチオン化ポリマーの窒素含量が、1.5重量%以上、2.2重量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪洗浄剤。
[6]成分(D)二塩基酸がグルタミン酸である[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪洗浄剤。
[7](E)無機塩類が塩化ナトリウム、塩化カリウム又は塩化マグネシウムである[1]~[6]のいずれかに記載の毛髪洗浄剤。
[8]液体の形態である[1]~[7]のいずれかに記載の毛髪洗浄剤。
[9]pHが7未満である[8]に記載の毛髪洗浄剤。
[10]以下の成分(A)~(E)及び水を含有する組成物を毛髪又は頭皮に適用する工程を含む、毛髪又は頭皮の洗浄方法:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)カチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.8重量%以下
(D)二塩基酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上を、0.25重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類。
[11]毛髪洗浄剤を製造するための以下の成分(A)~(E)の使用:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)カチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.8重量%以下
(D)二塩基酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上を、0.25重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類。
[12]毛髪又は頭皮を洗浄するための以下の成分(A)~(E)の使用:
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)カチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.8重量%以下
(D)二塩基酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上を、0.25重量%以上、3重量%以下
(E)無機塩類。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、泡立ちの早さや豊富な泡量が得られる使用性に優れた洗浄剤を提供することができる。
本発明によれば、コンディショニング効果に優れた毛髪や頭皮の洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、
(A)アシルイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上を3重量%以上、12重量%以下
(B)アシル酸性アミノ酸又はその塩を、0.5重量%以上、10重量%以下
(C)カチオン化ポリマーを、0.005重量%以上、0.8重量%以下
(D)二塩基酸、PCA及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上を、0.25重量%以上、3重量%以下及び
(E)無機塩類
を配合する毛髪洗浄剤に関する(以下本発明の洗浄剤と略することもある)。
【0009】
本発明における成分(A)は、アシルシイセチオン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上であり、親水基としてスルホン酸塩を有するアニオン界面活性剤である。
【0010】
アシルイセチオン酸塩のアシル基は、炭素原子数8~20の脂肪酸から誘導されるアシル基であり、炭素原子数8~18の脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、炭素原子数10~18の脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。すなわちアシルイセチオン酸塩のアシル鎖長は、C8~C20であり、C8~C18が好ましく、C10~C18がより好ましい。
当該アシル基としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸又はヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、ラウリン酸又はヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。
【0011】
アシルイセチオン酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;及び塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、起泡力の観点から、アルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
【0012】
アシルシイセチオン酸塩としては、ココイルイセチオン酸ナトリウム(ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム)、ラウリン酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸トリエタノールアミン等が挙げられ、ココイルイセチオン酸ナトリウムが好ましい。
【0013】
成分(A)のα-オレフィンスルホン酸塩は、アルケニルスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸又はその混合物である。成分(A)のα-オレフィンスルホン酸塩の炭素原子数は、10~22(オレフィン(C10~22)スルホン酸塩)であり、好ましくは12~18(オレフィン(C12~18)スルホン酸塩)であり、より好ましくは14~16(オレフィン(C14~16)スルホン酸塩)である。α-オレフィンスルホン酸塩としては、炭素原子数が異なるα-オレフィンスルホン酸塩を2種以上混合して使用してもよい。
【0014】
α-オレフィンスルホン酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;及び塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、起泡力の観点から、アルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
【0015】
α-オレフィンスルホン酸塩としては、オレフィン(C14)スルホン酸ナトリウム、オレフィン(C14~16)スルホン酸ナトリウム、オレフィン(C14~18)スルホン酸ナトリウムが挙げられ、オレフィン(C14~16)スルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
成分(A)の含有量としては、泡量改善の観点から、洗浄剤全体に対して、通常3重量%以上であり、5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。また洗髪後の良好な感触を維持する観点から、洗浄剤全体に対して、通常12重量%以下であり、11重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明における成分(B)はアシル酸性アミノ酸又はその塩である。
アシル酸性アミノ酸はD体、L体及びDL体のいずれも使用することができる。またこれらのアシル酸性アミノ酸又はその塩は、夫々単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0018】
アシル酸性アミノ酸のアシル基は、炭素原子数8~20の脂肪酸から誘導されるアシル基であり、炭素原子数8~18の脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、炭素原子数10~18の脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。すなわちアシル酸性アミノ酸のアシル鎖長は、C8~C20であり、C8~C18が好ましく、C10~C18がより好ましい。
当該アシル基としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸又はヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基が好ましく、ラウリン酸又はヤシ油脂肪酸から誘導されるアシル基がより好ましい。
【0019】
アシル酸性アミノ酸における酸性アミノ酸としては、酸性アミノ酸であれば特に限定されないが、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、グルタミン酸がより好ましい。
【0020】
アシル酸性アミノ酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;及び塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、溶解性を維持する観点から、アルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
またアシル酸性アミノ酸の塩は、本発明の洗浄剤を調製するときに、アシル酸性アミノ酸と上記塩を形成する物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TEA等)と一緒に加えて中和し塩の形態としてもよい。
【0021】
アシル酸性アミノ酸及びその塩は、具体的には、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミルストイルグルタミン酸、N-ココイル(ヤシ油脂肪酸アシル)グルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ミルストイルアスパラギン酸、N-ココイルアスパラギン酸及びそれらのモノナトリウム塩、モノカリウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。これらは1種でも2種以上混合して使用してもよい。なかでもN-ラウロイルグルタミン酸、N-ミルストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸又はそれらのナトリウム塩、カリウム塩又はトリエタノールアミン塩が好ましく、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸又はそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はトリエタノールアミン塩がより好ましい。
【0022】
成分(B)の含有量としては、感触改善の観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.5重量%以上であり、1重量%以上が好ましく、1.5重量%以上がより好ましい。また使用時に使いやすい粘度を構築する観点から、洗浄剤全体に対して、通常10重量%以下であり、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0023】
本発明における成分(C)は、カチオン化ポリマーである。
カチオン化ポリマーの重量平均分子量は、通常1万~1000万であり、好ましくは、10万~200万であり、具体例としては、カチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化フェヌグリークガム、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩/アクリルアミド/アクリル酸共重合物等が挙げられる。中でも、入手が容易な観点から、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムが好ましく、感触面でカチオン化セルロースが好ましい。
【0024】
カチオン化ポリマーの窒素含有量は、感触の観点から、通常0.4重量%以上であり、1.2重量%以上が好ましく、1.5重量%以上がより好ましい。また、アニオン界面活性剤との相溶性の観点から、通常3重量%以下であり、2.5重量%以下が好ましく、2.2重量%以下がより好ましい。
【0025】
成分(C)の含有量としては、感触改善の観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.005重量%以上であり、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また毛髪に対して過度なべたつきを残さない観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.8重量%以下であり、0.5重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましい。
【0026】
本発明における成分(D)は、二塩基酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上である。
二塩基酸は、カルボキシル基を二つ有する二塩基酸であれば特に限定されないが、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、セバシン酸などが挙げられ、光学異性体であっても構わない。二塩基酸としては、感触面の観点から、グルタミン酸、アスパラギン酸が好ましい。
【0027】
二塩基酸及びピロリドンカルボン酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩;及び塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、溶解性の観点から、アルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩が好ましく、感触面からナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
また二塩基酸及びピロリドンカルボン酸の塩は、本発明の洗浄剤を調製するときに、二塩基酸及びピロリドンカルボン酸と上記塩を形成する物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TEA等)と一緒に加えて中和し塩の形態としてもよい。
【0028】
成分(D)の含有量としては、感触改善の観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.25重量%以上であり、0.3重量%以上が好ましく、0.35重量%以上がより好ましい。また溶解性を維持する観点から、洗浄剤全体に対して、通常3重量%以下であり、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0029】
本発明における成分(E)は、無機塩類である。無機塩類は特に制限されないが、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸又は炭酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩が好ましい。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、中でも、増粘効果の観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムが好ましい。また該成分(E)の無機塩類は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
成分(E)の含有量としては、増粘の観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.01重量%以上であり、0.1重量%以上が好ましく、0.15重量%以上がより好ましい。また溶解性を維持する観点から、洗浄剤全体に対して、通常5重量%以下であり、4重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0031】
本発明の洗浄剤における水の含有量は、洗浄剤全体に対して、通常40重量%以上であり、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。また洗浄剤全体に対して、通常90量%以下であり、75重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
【0032】
本発明の洗浄剤は、さらに成分(F)塩基性又は中性アミノ酸を含んでもよい。
塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンが挙げられ、感触の観点から、アルギニンが好ましい。
中性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、システイン、メチオニンが挙げられ、感触の観点から、グリシン、アラニンが好ましい。
【0033】
成分(F)の含有量としては、感触の観点から、洗浄剤全体に対して、通常0.01重量%以上であり、0.03重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましい。また溶解性を維持する観点から、洗浄剤全体に対して、通常2重量%以下であり、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。
【0034】
本発明における成分(A)~(F)は合成品や市販品を用いることができる。
【0035】
本発明の洗浄剤の形態としては、液体、ペースト、ゲル、クリーム、フォーム等の形態が挙げられる。なかでもチューブに充填しやすく使用性に優れることから、液体、ペースト、クリームが好ましく、液体、クリームが特に好ましい。
また本発明の洗浄剤は、コンディショニング効果が高いため、ヘアシャンプーだけでなく、頭皮用シャンプー、リンスインシャンプーとして調製することができる。
【0036】
本発明の洗浄剤が液体の場合のpHは、通常7未満であるが、増粘の観点からpH6.8~4.8が好ましく、pH5.8~4.8がより好ましい。pHは公知の方法により測定できる。
本発明の洗浄剤が液体以外の場合のpHは、1%水溶液(25℃)でのpHと定義され、上記pHの範囲に準じる。
【0037】
本発明の洗浄剤は、自体公知の方法で製造することができる。例えば、上記した各成分の混合物及びその他の添加物を混合し、この混合物を通常、65~85℃で、30分~1時間加熱して各成分を均一に溶解する。溶融状態の組成物を自体公知の方法により所望の形態の洗浄剤に調製しうる。例えば特許4979126号の方法により液体洗浄剤を得ることができる。また本発明の洗浄剤から自体公知の方法により水分を除去し粉末や顆粒洗浄剤を得ることができる。あるいは、加熱して各成分を均一に溶解し、これを型に注入し、冷却固化、乾燥熟成を経て、固形の洗浄剤を得ることができる。
【0038】
本発明の洗浄剤において、本発明の効果を阻害しない範囲で通常使用される各種添加剤を添加することができる。
例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、硬化牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の高級脂肪酸及びその塩、トリメチルグリシン等の保湿剤、アニオン界面活性剤(本発明における(A)を除く)、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の界面活性剤、植物油、動物系油脂、天然系油脂誘導体、鉱物系油脂、低級及び高級脂肪酸エステル等の合成系油脂、シリコーン化合物、高分子物質(本発明における(C)を除く)、動植物抽出物、アミノ酸(本発明における(D)を除く)、核酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、制汗剤、酸化染料、pH調整剤、パール化剤等の化粧品原料基準、化粧品種別配合成分規格、医薬部外品原料規格、日本薬局方、日本薬局外医薬品成分規格、食品添加物公定書等の各種公定書記載の原料等が挙げられる。
【0039】
本発明の洗浄剤は、公知の毛髪洗浄剤と同様に用いられる。つまり、髪を水洗し、本発明の洗浄剤を毛髪の汚れ等に応じた量を髪及び頭皮に適用して泡立ててから、当該洗浄剤を水洗除去する。
【0040】
また上記の成分(A)~(E)及び水を含有する組成物を毛髪又は頭皮に適用する工程を含む、毛髪又は頭皮の洗浄方法も本発明に含まれる。各成分の定義や好適量、追加の成分等は既述に準じる。
【0041】
さらに毛髪洗浄剤を製造するための上記成分(A)~(E)の使用も本発明に含まれる。各成分の定義や好適量、追加の成分等は既述に準じる。
【0042】
また毛髪又は頭皮を洗浄するための上記の成分(A)~(E)の使用も本発明に含まれる。各成分の定義や好適量、追加の成分等は既述に準じる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
1.ホームユーステスト
[洗浄剤の調製]
表1に示す量の各成分を混合し、この混合物を65~85℃に加熱して各成分を均一に溶解する。冷却後、20%クエン酸水溶液を添加しpH5.46に調整し、液体洗浄剤を得た。
【0045】
【0046】
[試験方法]
ホームユーステストは、日本人評価者4名、アメリカ人評価者6名の計10名で実施した。評価者は処方サンプルを2日間使用し、2日目に以下の項目に関して評価を行った。
【0047】
(1)洗髪中の泡立ちの速さ、泡量の多さ、泡立て時の指通りの良さ
(2)すすぎ時の髪表面の滑らかさ、指通りの良さ
(3)すすぎ後濡れた状態の髪の評価として、髪表面の滑らかさ、指通りの良さ
(4)完全乾燥後の髪表面の滑らかさ、しっとり感、髪のツヤ感
【0048】
評価は、1点を最低点、5点を最高点とした絶対評価で評価を行い、相加平均値を表2に示した。
【0049】
【0050】
実施例1は、比較例1及び2に比べて、ほぼ全ての項目で高い評点となり、実施例1の優位性が示された。
【0051】
使用成分の詳細は以下の通りである。
ポリクオタニウム-10:Ucare Polymer JR-400 (Nexeo/Dow)(窒素含量1.5-2.2重量%)
ココイルイセチオン酸Na:Galsoft SCI-80 (Galaxy)
ココイルグルタミン酸Na(30%):Amisoft ECS-22W(Ajinomoto)
オレフィン(C14-16)スルホン酸Na(40%):Bioterge AS-40K (Stepan)
コカミドMIPA:Ninol M10 (Stepan)
ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース:Glucamate DOE-120(Lubrizol)
コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(50%):Chembetaine CAS (Lubrizol)
香料:Orange Coriander V11715 (Continental Aromatics)
メチルクロルイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン:Kathon CG (Dow Chemical)
アミノ酸混合物(50%):PRODEW500(Ajinomoto)(PCAを19.27%及びアスパラギン酸を5.20%含有)
【0052】
2.毛束評価
[洗浄剤の調製]
表3に示す処方を常法に従い調製し、それらを水道水を用いて7倍希釈した。7倍希釈は、実際の洗髪時のヘアシャンプーの希釈倍率の目安とされている。
【0053】
[試験方法]
ビューラック社より入手したアジア人毛(化学処理の履歴無)を用いて毛束評価を行った。毛束を7倍希釈水溶液に一晩漬け込み、取り出した毛束を使って以下の項目に関して評価を行った。
【0054】
(1)泡量
(2)洗浄時の櫛通りの良さ
(3)すすぎ時の髪表面のきしみの無さ
(4)すすぎ時のくしどおりの良さ
(5)髪の毛の柔らかさ
(6)乾燥後の指通りの良さ
(7)乾燥後のツヤ
(8)乾燥後の髪の毛の柔らかさ
(9)乾燥後の髪の毛の滑らかさ
【0055】
各項目を専門パネラー1名が評価し、1点から5点の絶対評価で評価し、相加平均値を算出した。
相加平均が3.5点以上をA、3.0点以上3.5点未満をB、2.0点以上3.0点未満をC、2点未満をDとした。
【0056】
【0057】
【0058】
結果は表3に示した。実施例は比較例に比べて、洗髪時からすすぎ時、乾燥後までの感触において、優位な結果を示した。
【0059】
使用成分の詳細は以下の通りである。
ポリクオタニウム-10(2%)*1:JR-400(ダウ)(窒素含量1.5-2.2重量%)
ポリクオタニウム-10(2%)*2:レオガードGP(ライオンスペシャリティケミカルズ) (窒素含量1.6-2重量%)
ココイルグルタミン酸Na(25%):CS-22(Ajinomoto)
ラウリン酸:NAA122(日油)
ミリスチン酸:NAA142(日油)
グルタミン酸ナトリウム:(Ajinomoto)
オレフィン(C14-16)スルホン酸Na(37%):リポランLB440(ライオン)
ラウラミドヒドロキシスルタイン(30%):ソフタゾリンLSB(川研ファインケミカル)
アミノ酸混合液(50%):PRODEW500(Ajinomoto)(PCAを19.27%及びアスパラギン酸を5.20%含有)
乳酸Na(90%):乳酸Na(和光純薬工業)
アスパラギン酸Na:アスパラギン酸Na(Ajinomoto)
アルギニン:アルギニン(Ajinomoto)
グリシン:グリシン(Ajinomoto)
アラニン:アラニン(Ajinomoto)
クエン酸Na:クエン酸結晶(扶桑化学工業)
塩化ナトリウム:塩化ナトリウム(東京化成工業)
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、泡立ちや泡量に優れ、良好な使用感を有する毛髪洗浄剤を提供することができる。
【0061】
本出願はアメリカで出願された62/732,738を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。