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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】NIR反射性多層材料シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20240618BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20240618BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240618BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20240618BHJP
【FI】
G02B5/26
H01G9/20 307
H01G9/20 203Z
H01G9/20 311
H01G9/20 309
B32B7/023
H01L31/04 562
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020569940
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019068249
(87)【国際公開番号】W WO2020011709
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】18182789.0
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521561651
【氏名又は名称】エンデュランス ソーラー ソリューションズ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ENDURANCE SOLAR SOLUTIONS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ローウ, ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】パスマンズ, ピーター, レオナルドゥス, エリザベス, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, マルク, マルティヌス, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダーム, カート
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513942(JP,A)
【文献】特表2008-528313(JP,A)
【文献】特表2015-519735(JP,A)
【文献】特開2018-124449(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183658(WO,A1)
【文献】特開2012-019138(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194560(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1492386(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
H01G 9/20
B32B 7/023
H01L 31/049
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長750~1000nmのすべての光の20%を超える反射率を有し、且つ波長380~750nmのすべての光の50%を超える透過率を有するNIR反射性半透明ポリマー層と、波長1000nm~2100nmのすべての光の25%を超える反射率を有するNIR反射性着色ポリマー層と、を含む多層材料シート。
【請求項2】
前記NIR反射性着色ポリマー層が、波長380~750nmのすべての光の35%未満の反射率を有する、請求項1に記載の多層材料シート。
【請求項3】
前記NIR反射性半透明ポリマー層及び前記NIR反射性着色ポリマー層が、互いに隣接するか、又は接着剤層によって分離されている、請求項1又は2に記載の多層材料シート。
【請求項4】
前記NIR反射性半透明ポリマー層が、無機近赤外線反射性顔料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項5】
前記無機近赤外線反射性顔料が、マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、アンチモン酸化スズ、ZrO及びその混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の多層材料シート。
【請求項6】
前記NIR反射性半透明ポリマー層が、前記NIR反射性半透明ポリマー層の全重量に対して、前記無機近赤外線反射性顔料を0.1~8重量%含む、請求項4又は5に記載の多層材料シート。
【請求項7】
前記NIR反射性半透明ポリマー層が、ISO13468-2に準拠して測定される全透過度≧50%を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項8】
前記NIR反射性半透明ポリマー層が熱可塑性ポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン又はポリオレフィンの混合物である、請求項8に記載の多層材料シート。
【請求項10】
前記NIR反射性着色ポリマー層が、熱可塑性ポリマーを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項11】
前記NIR反射性着色ポリマー層の前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ゴム改質ポリエステル、ポリオレフィン及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の多層材料シート。
【請求項12】
前記NIR反射性半透明ポリマー層が厚さ10~150μmを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項13】
前記NIR反射性着色ポリマー層が厚さ100~400μmを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項14】
耐候性層をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の多層材料シート。
【請求項15】
波長750~1000nmのすべての光の20%を超える反射率を有し、且つ波長380~750nmのすべての光の50%を超える透過率を有し、無機近赤外反射顔料を含むNIR反射性半透明ポリマー層と、波長380~2100nmのすべての光の35%未満の反射率を有し、カーボンブラックを含む着色ポリマー層と、を含み、前記NIR反射性半透明ポリマー層及び前記着色ポリマー層が互いに隣接している多層材料シート。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の多層材料シートを含む、太陽電池モジュールにおいて使用するのに適したバックシート。
【請求項17】
請求項16に記載のバックシートを含む、太陽電池モジュール。
【請求項18】
前面の太陽面側から、背面の非太陽面側までの位置の順で:透明トップ層;任意選択的に前面封入剤層;1つ又は複数の電気的に連結された太陽電池を含む太陽電池層;任意選択的に背面封入剤層;及びバックシート;を含む、請求項17に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、近赤外線(NIR)反射性多層材料シートに関する。本発明はさらに、NIR反射性多層材料シートを含む太陽電池モジュールに適したバックシート;及び前記バックシートを含む太陽電池モジュールに関する。
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽光から電力を生成するために使用され、一般に、コア層として太陽電池システムを含むラミネートからなる。太陽電池モジュールを形成するために、「リボン」と呼ばれる金属導体を一般に用いて、適切な電気導体を介して直列にグループ化された光電池は通常、封入材料、例えばEVAによって封入される。光電池を封入する封入材料は、機械的影響及び天候に関連する影響に対する保護として役立つ。コア層は、表面層とベース層又はバックシートとの間に存在して、太陽電池モジュールが完成される。一般にガラス製のモジュールの表面層又は主要面は、太陽にさらされるモジュールの表面を覆い、太陽光がセルに到達することが可能となる。ベース層又はバックシートは多数のタスクを果たす。封入材料及び太陽電池の、環境的影響からの保護が保証されるのと同時に、電気的接続の酸化が防止される。バックシートは、太陽電池に対するフロントガラスを介した光の反射によって、モジュールの電力出力も高め得る。通常、バックシートは、大気条件に応じて、水分、酸素及び他の因子が封入材料、太陽電池及び電気的接続にダメージを与えることを防ぐ。バックシートは、光電池及び相当する電気回路に電気絶縁も付与する。
【0003】
太陽電池モジュールは従来から、太陽光へのその曝露が最大となる、屋上に、又は開け放った空間の屋外に取り付けられる。太陽光の強度が増加した場合、太陽電池モジュールからの電気出力も増加する。しかしながら、太陽電池モジュールが太陽光を電気へと変換する効率は通常、約20パーセントである。太陽光の残り80パーセントは、反射されるか、又は熱の状態でモジュールによって吸収される。熱の状態で吸収されるエネルギーによって、モジュールの作業温度が上昇する。過剰な熱は、太陽光を電気へと変換する太陽電池モジュールの効率を低下させる。大部分の太陽電池モジュールに一般的な作業温度は約40~60℃である。多くの太陽電池モジュールは、その作業温度が増加するセルシウス度毎に約0.3~0.5パーセントの効率を失う。例えば日中の大気温度の上昇、日光照射から生じる熱を放出し得る地表及び他の付近の表面からの放射熱、並びに長引く日光照射からの太陽モジュールそのものの温度の上昇など様々な因子が、作業温度の増加の一因となり得る。
【0004】
美的理由で、例えば黒色のバックシートを含む建築構造に太陽電池モジュールが組み込まれる状況において、この問題が起こる場合が多い。太陽電池モジュールにおける一般的に長方形の光電池は近傍にあるが、それらの間に通常は小さな隙間があり、下にあるバックシートが太陽光に曝露される。60又は72セルを含む一般的な単結晶ケイ素太陽電池モジュールによって全面積の10~15%も覆われ、バックシートに太陽光が直射照射される。
【0005】
太陽電池モジュールが建築構造に組み込まれる場合、そのバックシートは通常、着色されており、既存の建築の色と太陽電池モジュールが溶け込むように、且つより均質な外観を提供するために、特に暗い色、例えば黒色である。バックシートの着色、暗い色、又は黒色でさえある外観は通常、カーボンブラック若しくは酸化鉄などの顔料でバックシートをコーティングすることによって、又はバックシートがそれから作られるポリマーと、これらの顔料をバックシートの製造中に混合することによって生まれる。カーボンブラックは基本的に、ヒトに可視のすべての光を吸収する。さらに、カーボンブラックは、一般にヒトに可視の光の波長よりも長い波長、つまり可視光赤色光のエッジ約750nm~約1mmの範囲の波長を有する、電磁放射である赤外光も吸収する。赤外光の吸収は、バックシートの温度を上昇させ、最終的には、太陽電池モジュール全体の作業温度を上昇させる。カーボンブラックのような黒色顔料と対照的に、完全に白色に見える顔料は最も反射し、したがって、ヒトに可視の光をほとんど吸収せず、また赤外光の大部分を反射する。したがって、太陽電池モジュールにおける暗い色又は黒色のバックシートが美的理由により望ましいが、かかるバックシートは、太陽電池モジュールの作業温度を上昇させる傾向がある。これは、太陽光を電気へと変換する太陽電池モジュールの効率を下げる。さらに、黒色のバックシートはまた、IR及び可視光を吸収し、そのために、太陽電池モジュールの総合効率がさらに下がる。
【0006】
NIR反射性顔料を含む太陽電池モジュールバックシートが知られている。例えば、米国特許出願公開第2013/276876号明細書には、黒色(低い色反射性)赤外線反射性層を含む太陽電池モジュール用のバックシートが記載されている。任意選択的に、これは白色層で裏打ちされ得る。さらに、欧州特許第2860764号明細書には、黒色であるが、NIRを透過する第1(前面)層と、NIRを反射する第2(背面)層と、を有するバックシートが記載されている。
【0007】
しかしながら、黒色バックシートを含む太陽電池モジュールの作業温度及び効率を最適化する必要が依然としてある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バックシートにおけるNIR光の吸収を低減するNIR反射性多層バックシートを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、PV(太陽電池)モジュールに適用された場合に、太陽電池における光吸収の増加及び作業温度の低減によって、モジュール効率を高めるNIR反射性多層バックシートを提供することである。
【0010】
この目的は、波長750~1000nmのすべての光の20%を超える反射率及び波長380~750nmのすべての光の50%を超える透過率を有するNIR反射性半透明ポリマー層と、波長1000~2100nmのすべての光の25%を超える反射率を有するNIR反射性着色ポリマー層と、を含む多層材料シートの提供で達成された。好ましくは、NIR反射性着色ポリマー層は、波長380~750nmのすべての光の35%未満の反射率を有する。
【0011】
一般に、電磁放射は、その波長に従って、電波、マイクロ波、赤外光、可視光、紫外線、X線及びガンマ線に分類される。ヒトに見える可視光は、範囲約380~約750nmの波長を有する電磁放射である。近赤外(NIR)光は、可視光よりも長い波長の電磁放射である。従来から、近赤外光は、範囲約750~約2100nmの波長を有すると考えられている。可視光又は赤外光が物に当たった場合、その光は物によって反射され、物を通過する(つまり、物によって透過される)、又は物によって吸収され得る。一部、ヒトの目が物体を知覚するその色は、物体に当たる可視光の波長によって、及びヒトの目へと物体によって反射される可視光の波長によって決定される。
【0012】
意外なことに、NIR反射性半透明ポリマー層と、NIR反射性着色ポリマー層と、を含む多層材料シートを提供することによって、近赤外光の反射を高められることが判明した。
【0013】
本発明の文脈において、半透明とは、可視光に対して半透明であることを意味する。
【0014】
本発明の文脈において、着色という用語は、黒色を包含する。したがって、NIR反射性着色ポリマー層という用語は、NIR反射性黒色ポリマー層を包含する。着色は好ましくは黒色である。
【0015】
本明細書で使用される、透過率は、別段の指定がない限り、100μmの試料厚にてISO13468-2に準拠して積分球装置を用いて測定される。
【0016】
本明細書で使用される、反射率は、別段の指定がない限り、100μmの試料厚にてISO13468-2に準拠した方法に基づいて、積分球装置を用いて測定される。
【0017】
NIR反射性半透明ポリマー層は好ましくは、セルと対面しており、好ましくはNIR反射性着色層の上に位置する。着色層上のNIR反射性半透明ポリマー層の利点は、着色層のカラフルな外観を維持しながら、電力出力の増加、蓄積熱の低減を付与する黒色シートの性能の向上にある。そのNIR反射特性のために、NIR反射性半透明ポリマー層の導入によって、近赤外線(NIR)範囲(750~1000nm)の総反射光が増加し、その結果、PVセルの総電力出力が増加し、且つ熱の蓄積が低減される。例えば、非NIR反射性黒色層と比較して、バックシートにおけるNIR反射性黒色層上のNIR反射性半透明層の導入による、電力出力(IEC61215によって測定された)におけるPVモジュールの相対利得(relative gain)は、0.2%を超え、より好ましくは0.5%を超え、またより好ましくは1.0%を超え得る。増加は、顔料の総ローディング及びNIR反射性層の厚さの関数として変動し得て、太陽電池モジュールのデザインに応じて異なる。
【0018】
NIR反射性半透明ポリマー層及びNIR反射性着色ポリマー層は互いに隣接し得る。NIR反射性半透明ポリマー層とNIR反射性着色ポリマー層が接着剤によって分離し得ること;すなわち、ポリマー層が、その間に連結又は接着剤層を含むことも可能である。NIR反射性半透明ポリマー層は好ましくは、セルと対面している。NIR反射性着色ポリマー層は好ましくは、NIR反射性半透明ポリマー層とバックシートの外層との間に位置する。
【0019】
NIR反射性半透明ポリマー層は好ましくは、1種又は複数種の無機近赤外反射顔料を含む。無機近赤外反射顔料は、マイカ、SiO、TiO、酸化スズ(SnO又はSnO)、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO、酸化鉄黒色Fe(磁鉄鉱)、酸化クロムグリーンCr又は鉄クロムブラウン(Fe,Cr)及びその混合物からなる群から選択される。好ましくは、無機近赤外反射顔料は、マイカ、SiO、TiO、酸化スズ(SnO又はSnO)、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO及びその混合物からなる群から選択される。より好ましくは、NIR反射性半透明ポリマー層は、マイカ及びSiOから選択されるNIR反射性顔料を含む。適切な顔料を含む、工業的に知られている組成物は、Iriotec(登録商標)、例えばIriotec(登録商標)9870である。Iriotec(登録商標)9870は、マイカ+SiO、TiO(rutile)、SnO及びZrOを含む。NIR反射性半透明ポリマー層は、NIR反射性半透明ポリマー層の全重量に対して無機NIR反射性顔料を0.1~8重量%含み得る。より好ましくは、NIR反射性半透明ポリマー層は、無機NIR反射性顔料を0.15~6重量%含む。またより好ましくは、NIR反射性半透明ポリマー層は、無機NIR反射性顔料を0.2~4重量%含む。
【0020】
本発明によるNIR反射性半透明ポリマー層は、好ましくは薄膜層であり;好ましくは厚さ300μm未満を有し;ISO13468-2に準拠して積分球装置を使用して測定された全透過率(正透過&拡散透過)≧50%を有し、可視光に対して透明である。好ましくは、その厚さは、5~200μm;より好ましくは10~150μm;より好ましくは20~100μm;最も好ましくは30~80μmである。好ましくは、全透過率は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%、又は少なくとも90%である。
【0021】
一般に、波長750~1000nmを有する光に対するNIR反射性半透明ポリマー層の反射率は、30%を超え;好ましくは40%を超え;より好ましくは50%を超え;又は60%を超える。
【0022】
NIR反射性半透明ポリマー層は好ましくは、熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーは一般に、ポリオレフィン、ポリオレフィンの混合物、TPO又はポリオレフィン及び半結晶性ポリマーからのブレンドからなる群から選択される。熱可塑性ポリマーは好ましくは、ポリオレフィン又はポリオレフィンの混合物である。ポリオレフィンは好ましくは、任意選択的に官能基化されたポリエチレンホモポリマー又はコポリマー、任意選択的に官能基化されたポリプロピレンホモポリマー又は(ブロック)コポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)又はそのブレンドからなる群から選択される。
【0023】
本明細書に記載の熱可塑性ポリオレフィン(TPO)とは、例えばPP/EPR反応器ブレンド樹脂(Basellによって供給されている、Hifax CA10、Hifax CA12、 Hifax CA02、Hifax CA60など)又はエラストマーポリプロピレン(PP)樹脂(例えばランダムPPコポリマーとの混合物状態で商品名Versify 2300.01又は2400.01で知られている)又は熱可塑性加硫物(商品名サントプレーン(Santoprene)で知られている)を意味する。
【0024】
官能基化ポリエチレン若しくはポリプロピレンホモポリマー又は(ブロック)コポリマーの例は、例えば、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートから選択される極性コモノマーと共重合されたエチレン又はプロピレンである。好ましくは、エチレンは、メチルアクリレートと共重合されている。
【0025】
好ましくは、NIR反射性半透明ポリマー層は、官能基化ポリエチレン、ポリエチレン、任意選択的にポリプロピレンを含む。
【0026】
NIR反射性着色ポリマー層は、ポリマー材料と、少なくとも1種類のNIR反射性顔料とを含む。その層は着色もされる。したがって、それは通常、有色顔料を含む。NIR反射性顔料及び有色顔料は同じであってもよい。NIR反射性着色ポリマー層は、好ましくは、ポリマー材料と、少なくとも1種類のNIR反射性有色顔料とを含む。
【0027】
本発明によるNIR反射性着色ポリマー層は一般に、厚さ50~600μm;より好ましくは100~400μm;最も好ましくは200~300μmを有する。
【0028】
本発明によるNIR反射性着色ポリマー層は一般に、波長1000~2100nmのすべての光の40%を超える反射率を有する。より好ましくは、反射率は、波長1000~2100nmのすべての光の50%を超える、60%を超える、又は70%をも超える。本発明によるNIR反射性着色ポリマー層は一般に、波長1200~1600nmのすべての光の40%を超える反射率を有する。より好ましくは、反射率は、波長1200~1600nmのすべての光の50%を超える、60%を超える、70%を超える、又は80%を超える。
【0029】
NIR反射性着色ポリマー層のポリマー材料は、好ましくは熱可塑性ポリマーである。熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、官能基化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ゴム改質ポリエステル、PMMA、PEEK、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド又はポリフェニレンオキシドからなる群から選択される。好ましくは、NIR反射性着色ポリマー層の熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ゴム改質ポリエステル、ポリオレフィン及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
ポリオレフィンの例は、ポリエチレン又はポリプロピレンホモポリマー又は(ブロック)コポリマーである。好ましくは、ポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0031】
官能基化ポリオレフィンの例は、官能基化ポリエチレン若しくはポリプロピレンホモポリマー又は(ブロック)コポリマー、例えば無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートから選択される極性コモノマーと共重合されたエチレン又はプロピレンである。好ましくは、官能基化ポリオレフィンは、無水マレイン酸と共重合されたプロピレンである。
【0032】
ポリエステルの例としては、ポリ(トランス-1,4-シクロへキシレンアルカンジカルボキシレート、例えばポリ(トランス-1,4-シクロへキシレンスクシネート)及びポリ(トランス-1,4-シクロへキシレンアジペート)、ポリ(シス若しくはトランス-1,4-シクロヘキサンジメチレン)、アルカンジカルボキシレート、例えばポリ(シス1,4-シクロヘキサンジメチレン)オキサレート及びポリ(シス1,4-シクロヘキサンジメチレン)スクシネート、ポリ(アルキレンテレフタレート)、例えばポリエチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ(アルキレンイソフタレート、例えばポリエチレンイソフタレート及びポリテトラメチレンイソフタレート、ポリ(p-フェニレンアルカンジカルボキシレート)、例えばポリ(p-フェニレングルタラート)及びポリ(p-フェニレンアジペート)、ポリ(p-キシレンオキサレート)、ポリ(o-キシレンオキサレート)、ポリ(p-フェニレンジアルキレンテレフタレート)、例えばポリ(p-フェニレンジメチレンテレフタレート)及びポリ(p-フェニレン-ジ-1,4-ブチレンテレフタレート、ポリ(アルキレン-1,2-エチレンジオキシ-4,4’-ジベンゾエート)、例えばポリ(エチレン-1,2-エチレンジオキシ-4,4’-ジベンゾエート)、ポリ(テトラメチレン-1,2-エチレンジオキシ-4,4’-ジベンゾエート)及びポリ(ヘキサメチレン-1,2-エチレンジオキシ-4,4’-ジベンゾエート)、ポリ(アルキレン-4,4’-ジベンゾエート)、例えばポリ(ペンタメチレン-4,4’-ジベンゾエート)、ポリ(ヘキサメチレン-4,4’-ジベンゾエート)及びポリ(デカメチレン-4,4’-ジベンゾエート)、ポリ(アルキレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)、例えばポリ(エチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)、ポリ(トリメチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)及びポリ(テトラメチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)、及びポリ(アルキレンスルホニル-4,4’-ジベンゾエート)、例えばポリ(オクタメチレンスルホニル-4,4’-ジベンゾエート)及びポリ(デカメチレンスルホニル-4,4’-ジベンゾエートが挙げられる。好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリ(アルキレンテレフタレート)である。
【0033】
ポリエステルは、ポリエステルと化学的に結合し、且つ/又は物理的に相互作用する官能基を含有するエラストマーによって耐衝撃性改良され得る。官能基は、無水物、酸、エポキシド、シラン、イソシアネート、オキサゾリン、チオール及び/又は(メタ)アクリレートからなる群から選択される。好ましくは、官能基はエポキシドである。
【0034】
本明細書に記載のエラストマーは、EPDM、SBS、SEBS、EPDMなどのエチレン-プロピレンエラストマー、SBS若しくはSEBSなどのスチレン-ブタジエンエラストマーからなる群から選択されるエラストマーを意味する。ポリエステルと化学的に結合し、且つ/又は物理的に相互作用する官能基の量は、好ましくは0.01~5重量%(耐衝撃性改良されたポリエステルの全重量に対して)である。
【0035】
ポリアミドの例は、ポリアミド6、ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド6,14;ポリアミド6,13;ポリアミド6,15;ポリアミド6,16;ポリアミド11;、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド9,12、ポリアミド9,13、ポリアミド9,14、ポリアミド9,15、ポリアミド6,16、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド10,13、ポリアミド10,14、ポリアミド12,10、ポリアミド12,12、ポリアミド12,13、ポリアミド12,14、アジピン酸アジポアミド/テレフタル酸アジポアミドコポリアミド、テレフタル酸アジポアミド/イソフタル酸アジポアミドコポリアミド、ポリ(アジピン酸メタ-ジメチルベンズアミド)、テレフタル酸アジポアミド/テレフタル酸2-メチルグルタルアミド、アジピン酸アジポアミド/テレフタル酸アジポアミド/イソフタル酸アジポアミドコポリアミド及びポリカプロラクタム-テレフタル酸アジポアミドである。
【0036】
好ましくは、NIR反射性着色ポリマー層は、無水マレイン酸と共重合されたポリプロピレン又はプロピレンを含む。
【0037】
NIR反射性有色顔料の例を以下の表に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
暗い着色層に好ましいNIR反射性有色顔料は、BASF社からのSicopalブラックK0095などの酸化クロム鉄又はシェパード社からのシェパードブラック10G996である。
【0041】
NIR反射性着色ポリマー層は、NIR反射性着色ポリマー層の全重量に対してNIR反射性有色顔料を0.1~8重量%含み得る。より好ましくは、NIR反射性着色ポリマー層は、NIR反射性有色顔料を0.15~6重量%含む。より好ましくは、NIR反射性着色ポリマー層は、NIR反射性有色顔料を0.2~4重量%含む。
【0042】
本発明の多層材料シートはさらに、1つ又は複数の接着剤層、構造補強層及び/又は耐候性層などの他のポリマー層を含み得る。好ましくは、それは耐候性層を含む。
【0043】
耐候性層は、ポリアミド、PTFE、ポリオレフィン又はポリエステルを含み得る。適切なポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドの例は上述の通りである。好ましくは耐候性層は、ポリアミド12を含む。その代わりとして、耐候性層はポリプロピレンを含む。
【0044】
耐候性層はさらに、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、ガラスミクロビーズ及びガラス繊維などの無機充填剤、又はUV安定剤、熱安定剤若しくは酸化防止剤などの添加剤を含み得る。より好ましくは、耐候性層は、上述の着色(黒色を含む)顔料(IR反射性、有色顔料など)のいずれかによって、又は白色顔料によって着色され得る。最も好ましくは、耐候性層は白色顔料を含む。
【0045】
一実施形態において、接着剤層は、本発明で定義されるNIR反射性着色ポリマー層である。
【0046】
他の実施形態において、構造層は、本発明で定義されるNIR反射性着色ポリマー層である。
【0047】
一実施形態において、多層材料シートは以下の層:
a)セルと対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)暗色などの特定の色のNIR反射性顔料を含む接着ポリマー層;
c)構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含む。
【0048】
この実施形態において、層a)及びb)は、上記の成分を含む。これは、接着剤層が上述のNIR反射性着色ポリマー層であることを意味する。
【0049】
構造層c)は例えば、熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィン又はポリオレフィンの混合物、例えばポリプロピレン又はポリプロピレンの混合物、ポリエステル、例えば任意選択的にゴム改質されたPET又はPBT又はポリアミドを含む。任意選択的に、構造層は、NIR反射性有色顔料、例えば酸化クロム鉄、さらに具体的にはBasF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996を含み得る。
【0050】
PET又はPBTなどのポリエステルは、ポリエステルと化学的に結合し、且つ/又は物理的に相互作用する官能基を含有するエラストマーによって耐衝撃性改良され得る。官能基は、無水物、酸、エポキシド、シラン、イソシアネート、オキサゾリン、チオール及び/又は(メタ)アクリレートからなる群から選択される。好ましくは、官能基はエポキシドである。
【0051】
本明細書に記載のエラストマーは、EPDM、SBS、SEBS、EPDMなどのエチレン-プロピレンエラストマー、SBS又はSEBSなどのスチレン-ブタジエンエラストマーからなる群から選択されるエラストマーを意味する。ポリエステルと化学的に結合し、且つ/又は物理的に相互作用する官能基の量は好ましくは0.01~5重量%(耐衝撃性改良されたポリエステルの全重量に対して)である。
【0052】
ポリアミドの例は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6,14、ポリアミド6,13、ポリアミド6,15、ポリアミド6,16、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド9,12、ポリアミド9,13、ポリアミド9,14、ポリアミド9,15、ポリアミド6,16、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド10,13、ポリアミド10,14、ポリアミド12,10、ポリアミド12,12、ポリアミド12,13、ポリアミド12,14、アジピン酸アジポアミド/テレフタル酸アジポアミドコポリアミド、テレフタル酸アジポアミド/イソフタル酸アジポアミドコポリアミド、ポリ(アジピン酸メタ-ジメチルベンズアミド)、テレフタル酸アジポアミド/テレフタル酸2-メチルグルタルアミド、アジピン酸アジポアミド/テレフタル酸アジポアミド/イソフタル酸アジポアミドコポリアミド及びポリカプロラクタム-テレフタル酸アジポアミドである。
【0053】
バックシートの外側に位置する、空気側に対面するポリマー層又は耐候性層e)は、ポリアミド、PTFE、ポリオレフィン又はポリエステルを含み得る。ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドの例は上述のとおりである。好ましくは、耐候性層e)はポリアミド12を含む。その代わりとして、耐候性層はポリオレフィン、例えばポリプロピレンを含む。
【0054】
耐候性層e)はさらに、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、ガラスミクロビーズ及びガラス繊維などの無機充填剤、又はUV安定剤、熱安定剤若しくは酸化防止剤などの添加剤を含み得る。より好ましくは、耐候性層は、上述のNIR反射性顔料のいずれかによって、又は白色顔料によって着色され得る。最も好ましくは、耐候性層e)は白色顔料を含む。
【0055】
更なる実施形態において、多層バックシートは以下の層:
a)セルに対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)暗色などの特定の色のNIR反射性顔料を含む接着ポリマー層;
c)暗色などの特定の色のNIR反射性顔料を含む構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含み得る。
【0056】
この実施形態において、どちらの接着剤層も、暗色などの特定の色のNIR反射性顔料を含むことが可能である。層a)~e)は、上記の成分を含む。
【0057】
他の実施形態において、多層バックシートは以下の層:
a)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む、セルに対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物、BASF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996などの酸化クロム鉄からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む接着ポリマー層;
c)BASF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996などの酸化クロム鉄から選択されるNIR反射性顔料を含む構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)白色顔料を好ましくは含む、空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含み得る。
【0058】
この実施形態において、層a)~e)は上記の成分を含む。
【0059】
ポリマー層はさらに、当技術分野で公知の添加剤を含み得る。好ましくは、ポリマー層は、UV安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤及び/又は加水分解安定剤から選択される少なくとも1種類の添加剤を含む。かかる安定剤添加剤が存在する場合、ポリマー層は、ポリマーの全重量に対して添加剤を0.05~10重量%、より好ましくは1~5重量%含み得る。
【0060】
タルク、マイカ、TiO、ZnO又はZnSなどの白色顔料も添加され得る。
【0061】
更なる実施形態において、多層バックシートは以下の層:
a)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む、セルに対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)BASF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996などの酸化クロム鉄から選択されるNIR反射性顔料を含む接着ポリマー層;
c)BASF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996などの酸化クロム鉄から選択されるNIR反射性顔料を含む構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)白色顔料を好ましくは含む、空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含み得る。
【0062】
この実施形態において、層a)~e)は、上述のポリマー材料及び可能性のある添加剤を含む。
【0063】
一実施形態において、本発明は、
a)官能基化ポリエチレン、ポリエチレン及び任意選択的にポリプロピレン及びNIR反射性顔料を含む、NIR反射性半透明ポリマー層;
b)ポリオレフィン、NIR反射性顔料及び有色顔料を含むNIR反射性着色層;及び
c)耐候性層;
を含む多層材料シートを提供する。
【0064】
一般に、多層材料シートはさらに、ポリオレフィン又はポリアミドを含む耐候性層(c)を含む。ポリオレフィン及びポリアミドは本明細書において定義される通りである。
【0065】
一般に、NIR反射性半透明ポリマー層は、メタクリレートと共重合されたエチレンを含む。一般に、NIR反射性半透明ポリマー層(a)のNIR反射性顔料は、マイカ、SiO又はその両方を含む。一般に、NIR反射性半透明ポリマー層(a)のNIR反射性顔料の量は、NIR反射性半透明ポリマー層の全重量に対して0.1~8重量%である。一般に、NIR反射性半透明ポリマー層(a)は、厚さ10~150μmを有する。
【0066】
一般に、NIR反射性着色層は、無水マレイン酸と共重合されたポリプロピレン又はプロピレンを含む。一般に、NIR反射性着色層(b)において、NIR反射性顔料は有色顔料でもある。一般に、NIR反射性着色層(b)において、NIR反射性顔料は、層の全重量に対して0.1~8重量%の量で存在する。一般に、NIR反射性着色層(b)は厚さ100~400μmを有する。一般に、その色は黒色である。
【0067】
一般に、耐候性層は、ポリアミド12又はポリプロピレンを含む。一般に、耐候性層は厚さ10~50μmを有する。一般に、耐候性層は白色顔料を含む。
【0068】
特に好ましい実施形態は、上述の多層材料シートであり:
a)NIR反射性半透明ポリマー層が厚さ10~150μmを有し、メタクリレートと共重合されたエチレンを含み、且つマイカ及びSiOを含むNIR反射性顔料を0.1~8重量%含み;
b)NIR反射性着色層(b)が厚さ100~400μmを有し、無水マレイン酸と共重合されたポリプロピレン又はプロピレンを含み、且つ有色顔料でもあるNIR反射性顔料を0.1~8重量%含み;
c)耐候性層がポリアミド12又はポリプロピレンを含む。
【0069】
本発明による多層材料シートは、多層融合又は共押出しプロセスを用いて製造され得る。そのプロセスは以下の工程:無機充填剤、添加剤及び安定剤などの異なる層の個々の配合物(formulation)を配合する工程に続いて、異なる層を押出し成形する工程、それらをラミネートする工程を含む。
【0070】
その代わりとして、本発明による多層材料シートは、(1)異なる層の材料を押出機においてペレット化して、異なる層の粒子又はペレットを得る工程と、(2)押出機によって(1)で製造されたペレット又は粒子を溶融し、共押出し成形する工程と、によっても製造され得る。その代わりとして、多層材料シートにおける異なる層を溶融共押出し成形することによって、以下の工程:(1)異なる層の成分を別々に混合することによって、異なる層のポリマー組成物を調製する工程と、(2)異なるポリマー組成物を溶融して、異なるメルトストリームを得る工程と、(3)1つの押出ダイにおいて共押出し成形することによってメルトストリームを合わせる工程と、(4)共押出し成形層を冷却する工程と、を介して、多層材料シートを得ることが可能である。
【0071】
本発明はさらに、太陽電池モジュールに適したバックシートを提供し、前記バックシートは、本明細書で定義される多層材料シートを含む。多層材料シートは一般に、太陽電池モジュールにおいてバックシートとして使用するのに適している。一般に、多層材料シートは、バックシートを製造するためのサイズに簡単に切断される。したがって、多層材料シートは好ましくは、太陽電池モジュールに適したバックシートである。
【0072】
バックシートとして使用される場合、NIR反射性半透明層は前面に向いており、つまり太陽電池の方に向いており、NIR反射性着色層は背面に、つまり太陽電池と隔てた向きにある。
【0073】
本発明はさらに、本発明による多層材料シート(又はバックシート)を含む太陽電池モジュールに関する。太陽電池モジュールは、前面の太陽方向側から背面の非太陽方向側への位置の順で少なくとも以下の層:(1)透明前面シート、(2)任意選択的に前面封入剤層、(3)太陽電池層、(4)任意選択的に背面封入剤層、及び(5)PVモジュールの背面保護層に相当する、本発明による多層バックシートを含む。
【0074】
前面シートは通常、ガラスプレートである。
【0075】
前面及び背面封入剤は、壊れやすい太陽電池を封入し、且つ保護するように設計される。「前面側」は、光で照射される光電池の側、つまり光を受け取る側に相当し、用語「背面側」は、光電池の光を受け取る側の逆側に相当する。適切な封入剤は一般に、高い耐衝撃性、高い耐貫入性、良好な紫外線(UV)耐光性、良好な長期の熱安定性、ガラス及び/又は他の剛性ポリマーシートに対する適切な接着強さ、高い耐湿性、及び良好な長期耐候性などの特性の組み合わせを保持する。封入材の例は、イオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリビニルブチラール(PVB)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン、ポリオレフィンブロックエラストマー、ポリ(エチレン-co-メチルアクリレート)及びポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート)、シリコーンエラストマー又はエポキシ樹脂である。EVAは最も一般的に使用されている封入材料である。EVAシートは通常、太陽電池と上部表面(前面封入剤と呼ばれる)との間に、且つ太陽電池と後部表面(背面封入剤と呼ばれる)の間に挿入される。
【0076】
太陽電池層における太陽電池は、太陽電池のいずれかの種類、例えば薄膜太陽電池(例えばセレン化銅インジウム・ガリウム太陽電池及びテルル化カドミウム太陽電池)並びにウエハーベースの太陽電池であり得る。
【0077】
本発明はさらに、波長750~1000nmのすべての光の20%を超える反射率を有し、且つ波長380~750nmのすべての光の50%を超える透過率を有するNIR反射性半透明ポリマー層と、波長380~2100nmのすべての光の35%より低い反射率を有する着色ポリマー層と、を含む太陽電池モジュール用の多層バックシートに関する。好ましくは、着色ポリマー層はカーボンブラックを含む。NIR反射性半透明ポリマー層及び着色ポリマー層は、上述の材料で構成される。多層材料シートはさらに、少なくとも接着剤層、構造層及び耐候性層も含み得る。
【0078】
一般に、着色ポリマー層は、波長380~2100nmのすべての光の30%未満;より好ましくは25%未満;またより好ましくは20%未満の反射率を有する。
【0079】
一般に、波長380~750nmのすべての光のNIR反射性半透明ポリマー層の全透過率は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%である。
【0080】
一般に、波長750~1000nmを有する光に対するNIR反射性半透明ポリマー層の反射率は、30%を超え;好ましくは40%を超え;より好ましくは50%を超え;又は60%を超える。
【0081】
好ましい実施形態において、多層バックシートは以下の層:
a)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む、セルに対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物、BASF社からのSicopalブラックK0095又はシェパード社からのシェパードブラック10G996などの酸化クロム鉄からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む接着ポリマー層;
c)カーボンブラックを含む構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)白色顔料を好ましくは含む、空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含む。
【0082】
またより好ましい実施形態において、多層バックシートは以下の層;
a)マイカ、SiO、TiO、酸化スズ、ZnO、ZnSnO、アルミニウムドープZnO、酸化インジウムスズ、三酸化アンチモン、ZrO又はその混合物からなる群から選択されるNIR反射性顔料を含む、セルに対面するNIR反射性半透明ポリマー層;
b)顔料を含まない接着ポリマー層;
c)カーボンブラックを含む構造ポリマー層;
d)層(b)と同じ、又は異なり得る、接着ポリマー層;
e)白色顔料を好ましくは含む、空気側に対面するポリマー層又は耐候性層;
を含む。
【0083】
これらの実施形態における異なる層は好ましくは、上述のポリマー材料及び添加剤で構成される。
【0084】
図面及び実施例の助けを借りて、本発明はさらに説明されるが、それに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】実施例3のフィルム、NIR反射性半透明ポリマー層についての波長に対する反射率のプロットである。
図2】実施例3のフィルム、NIR反射性半透明ポリマー層についての波長に対する透過率のプロットである。
図3】実施例4のフィルム、NIR反射性着色ポリマー層についての波長に対する反射率のプロットである。
図4】実施例5の共押出フィルム、多層材料シートについての波長に対する反射率のプロットである。
図5】実施例6、7、8の共押出フィルム、多層材料シート、及び比較実験1についての波長に対する反射率のプロットである。
図6】実施例4のフィルム、NIR反射性着色ポリマー層についての波長に対する反射率のプロットである。
図7】実施例4のフィルム、NIR反射性着色ポリマー層についての波長に対する反射率のプロットである。
図8】本発明による多層材料シート実施例を示す。機能性層(1)が結合(tie)(2)層を介して構造補強層(3)に連結される。耐候性層(5)は、第2結合層(4)を介して構造補強層(3)の他の面に連結される。
【0086】
本発明は、実例として以下の非制限的な実施例を参照しながら、詳細に説明される。
【0087】
[実施例]
[実施例1:NIR反射性半透明顆粒1の製造]
フィーダー、混合、溶融及び溶融物の輸送のための18mmスクリュー含有構成要素、真空ドーム、気圧ガス抜き及び1×4mmのダイプレートを備えた二軸スクリュー押出機内で、添加剤を含む70重量%ポリエチレンと30重量%ポリエチレンコポリマーとのポリマー混合物の粉末に、Iriotec(登録商標)9870粉末を添加することによって、NIR反射性半透明ポリマー材料の顆粒を製造した。ダイの後に、長さ1.5mの水浴、エアナイフ及びペレタイザーを逐次設置した。コンパウンド中のIriotec(登録商標)9870の総濃度はポリマー材料の全重量に対して3重量%であった。すべての材料がスロート(throat)で投与された。ゾーン1の温度は200℃に設定され、他のゾーンは230℃に設定された。ダイを出る際に測定される溶融物の温度は270℃である。押出機は300RPMに設定され、処理量は5kg/時である。真空は-0.7バールに設定された。
【0088】
[実施例2:NIR反射性黒色顆粒2の製造]
フィーダー、混合、溶融及び溶融物の輸送のための18mmスクリュー含有構成要素、真空ドーム、気圧ガス抜き及び1×4mmのダイプレートを備えた二軸スクリュー押出機内で、粉末としての添加剤を含むポリプロピレンにシェパードブラックBK10G966粉末を添加することによって、NIR反射性黒色ポリマー材料の顆粒を製造した。ダイの後に、長さ1.5mの水浴、エアナイフ及びペレタイザーを逐次設置した。コンパウンド中のシェパードブラックBK10G966の総濃度はポリマー材料の全重量に対して8重量%である。すべての材料がスロートで投与された。ゾーン1の温度は200℃に設定され、他のゾーンは230℃に設定された。ダイを出る際に測定される溶融物の温度は270℃であった。押出機は300RPMに設定され、処理量は5kg/時であった。真空は-0.7バールに設定された。
【0089】
[実施例3:NIR反射性半透明顆粒1のフィルム加工]
3段階スクリュー、フィードブロック、300×0.4mmのコーティング用フラットダイ及び引き取りデバイスを有する一軸スクリュー押出機30/25Dを備えたCollinフラットラインセットアップを使用して、顆粒1(実施例1)を厚さ約20μmのキャストフィルムに加工した。シリンダー温度は、取り入れ口で冷却された水から、最後には225℃まで変化した。コネクター、フィードブロック及びダイ温度を225℃に設定した。引き取り速度は5m/分であった。スクリュー回転数は15RPMであった。
積分球装置を使用し、厚さ20μmにてISO13468-2に基づいて、このフィルムの全反射率及び全透過率を測定し、図1及び図2に示す。
【0090】
[実施例4:NIR反射性黒色顆粒2のフィルム加工]
3段階スクリュー、フィードブロック、300×0.4mmのコーティング用フラットダイ及び引き取りデバイスを有する一軸スクリュー押出機30/25Dを備えたCollinフラットラインセットアップを使用して、顆粒2(実施例2)を厚さ約150μmのキャストフィルムに加工した。シリンダー温度は、取り入れ口で冷却された水から、最後には225℃まで変化した。コネクター、フィードブロック及びダイ温度を225℃に設定した。引き取り速度は3m/分であった。スクリュー回転数は60RPMであった。積分球装置を使用し、厚さ150μmにてISO13468-2に基づいて、このフィルムの全反射率を測定し、図3に示す。
【0091】
[実施例5:NIR反射性多層バックシート]
2つの押出機を有する多層セットアップを備えたCollinフラットフィルムラインを使用して、顆粒1及び2を厚さ170μmの多層キャストフィルムへと共押出し成形した。押出機Aは3段階スクリューを有する一軸スクリュー押出機30/25Dであった。押出機Bもまた、3段階スクリューを有する一軸スクリュー押出機25/25Dであった。それはさらに、フィードブロック2層セットアップ、コーティング用フラットダイ300×0.4mm及び引き取りデバイスを備えた。シリンダー温度は、取り入れ口で冷却された水から、最後には225℃まで変化した。コネクター、フィードブロック及びダイ温度を225℃まで設定した。引き取り速度は3m/分であった。顆粒2を押出機A上に供給し、スクリュー回転数は60RPMであり、厚さ150μmが得られる。顆粒1を押出機B上に供給し、スクリュー回転数は16RPMであり、厚さ20μmが得られる。積分球装置を使用し、厚さ170μmにてISO13468-2に基づいて、光源に対するNIR反射性半透明層でこのフィルムの全反射率を測定し、それを図4に示す。
【0092】
[実施例6~8]
以下の表1における各実施例のそれぞれの層について挙げられる成分は、標準添加剤と共に押出機内でそれぞれ溶融混合され、ペレット化されて、それぞれの層で使用されるペレットが得られた。示される部は重量部であり、各成分の全重量が100である。
【0093】
【表3】
【0094】
それぞれの実施例で、ペレットを複数の押出機のうちの1つに供給し、高温で溶融押出しし、アダプター及びダイに通し、冷却ローラーによって冷却し、総厚300μmを有する多層フィルムへ成形した。それぞれの実施例は以下の組成:
・30μm耐候性層;
・25μm結合層;
・190μm構造補強層;
・25μm結合層;
・30μm機能性層;
を順番に有した。
【0095】
[比較実験1:高反射性黒色バックシート]
米国特許出願公開第2013/276876号明細書の実施例1及び2の実施形態(3)に従って製造された高反射性黒色バックシート。
【0096】
積分球装置を使用し、ISO13468-2に基づいて、光源に対する機能性ポリマー層に関して、実施例6、7、8及び比較例1のそれぞれの全反射率を測定した。その結果を図5に示す。実施例6、7、特に8によって、750nmから1000nmまでのNIR領域において高い全反射率が得られる。実施例6、7、特に実施例8によって、750nmから1000nmまでのNIR領域において高い全反射率が得られる。この範囲はヒトの目に対する可視スペクトル範囲を超え(約380~740nm)、この範囲において一般的なケイ素太陽電池の(外部)量子効率が比較的高い(>90%)ことから、この波長範囲は最も妥当である。
【0097】
[実施例9:NIR反射性緑色着色ポリマー層]
添加剤を含む70重量%ポリエチレンと30重量%ポリエチレンコポリマーとのポリマー混合物の粉末に、シェパードグリーン10C650粉末を添加することによって、NIR反射性ポリマー材料のストランドを製造した。混合物を小規模二軸スクリュー押出機に導入した。コンパウンド中のシェパードグリーン10C650の総濃度は、ポリマー材料の全重量に対して8重量%であった。混合物を175℃及び200rpmにて2分間にわたって溶融押出しし、材料をストランドとして回収する。寸法100mm×100mm×65μmのプレカットアルミニウム型に約1グラムを置くことによって、このストランドからフィルムをプレスした。175℃にて3分間、THB400ハンドヘルドプレスを使用して、プレスを行った。圧力を段階的に100kNから200kNへと増加し、最終的に300kNにした。それぞれのステップは1分間続けた。3分後、試料を加圧下にて室温に冷却した。厚さ100μmを有するフィルムが得られた。積分球装置を使用し、ISO13468-2に基づいて、フィルムの全反射率を測定し、図6に示す。波長750nmを超える著しい反射率を示す緑色着色フィルムが製造された。
【0098】
[実施例10:NIR反射性オレンジ色着色ポリマー層]
8重量%シェパードグリーン10C650の代わりに、シェパードオレンジ10P340粉末8重量%を使用したことを除いては、実施例9を繰り返した。積分球装置を使用し、ISO13468-2に基づいて、フィルムの全反射率を測定し、図7に示す。波長600nmを超える著しい反射率を示すオレンジ色着色フィルムが製造された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8