(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240618BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240618BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2021039564
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一寿
(72)【発明者】
【氏名】三木 早樹人
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110236(JP,A)
【文献】特開平6-074763(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146647(WO,A1)
【文献】米国特許第5543612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
G02B 26/10 - G02B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光ビーム(PB)を外界の検出領域(DA)へ向けて走査し、前記投光ビームに対する前記検出領域からの反射ビーム(RB)を検出する光検出装置(10)であって、
前記反射ビームを受光光軸(ROA)に沿って導光する受光光学系(42)と、
前記受光光学系により結像される前記反射ビームを受光することにより、検出信号を出力する受光器(45)と
、
前記受光器の前段側において前記反射ビームを屈折させる受光プリズム(2049,4049)とを、備え、
前記受光器は、前記受光光軸に直交する第一基準軸(Y)に長辺側が沿うアスペクト比として、受光アスペクト比(RR)の設定される受光面(47)を、形成し、
前記受光面は、前記受光光軸及び前記第一基準軸に直交する第二基準軸(X)に沿う姿勢に対して、前記第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置され
、
前記受光プリズムは、前記第二基準軸に沿う姿勢に対して、前記第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置される光学面を、入射面(2492,4492)及び射出面(2493,4493)のうち少なくとも一方により形成する光検出装置。
【請求項2】
投光ビーム(PB)を外界の検出領域(DA)へ向けて走査し、前記投光ビームに対する前記検出領域からの反射ビーム(RB)を検出する光検出装置(10)であって、
前記反射ビームを受光光軸(ROA)に沿って導光する受光光学系(42)と、
前記受光光学系により結像される前記反射ビームを受光することにより、検出信号を出力する受光器(45,2045)と、
前記受光器の前段側において前記反射ビームを屈折させる受光プリズム(2049,4049)とを、備え、
前記受光器は、前記受光光軸に直交する第一基準軸(Y)に長辺側が沿うアスペクト比として、受光アスペクト比(RR)の設定される受光面(47,2047)を、形成し、
前記受光プリズムは、前記受光光軸及び前記第一基準軸に直交する第二基準軸(X)に沿う姿勢に対して、前記第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置される光学面を、入射面(2492,4492)及び射出面(2493,4493)のうち少なくとも一方により形成する光検出装置。
【請求項3】
前記受光プリズムは、前記受光面において接合、若しくは前記受光プリズムとは別の部材により保持される請求項
1又は
2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記受光面を構成する複数の受光画素(46)は、
前記第一基準軸に沿って単列に配列される請求項1~
3のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記投光ビームを前記検出領域へ向けて走査し、前記反射ビームを前記受光光学系へ向けて反射する走査ミラー(32)を、さらに備え、
前記受光光学系は、前記第一基準軸に沿う回転中心線(CM)まわりに回転駆動される前記走査ミラーの駆動範囲(DR)に亘って、前記反射ビームを前記受光光軸に沿って導光する請求項1~
4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記走査ミラーへ向かう前記投光ビームを発する投光器(22)を、さらに備え、
前記投光器は、前記第一基準軸に長辺側が沿うアスペクト比として、投光アスペクト比(RP)の設定される投光窓(25)を、形成する請求項
5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記受光光学系は、
前記受光器に対して前記反射ビームを結像させる受光レンズ(43)を、有する請求項1~
6のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記受光光学系は、
前記受光レンズを収容する鏡筒(44)を、さらに有する請求項
7に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記鏡筒は、
前記受光器側の射出口(441)を絞る開口絞り(442)を、形成する請求項
8に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記鏡筒は、
前記受光器側の射出口(441)まわりに、前記受光器による前記反射ビームの再帰反射成分(RC)を吸収する光吸収面(443)を、形成する請求項
8又は
9に記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投光ビームを外界の検出領域へ向けて走査し、投光ビームに対する検出領域からの反射ビームを検出する光検出装置は、広く知られている。例えば特許文献1に開示される光検出装置では、反射ビームがレンズにより導光されて受光器により受光されることで、検出信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される光検出装置は、迷光による誤検出を抑制するように、走査ミラーによる投光ビームの走査方向に対し、受光器における受光面のアスペクト比が設計されている。しかし、反射ビームを導光するレンズの受光光軸に対して垂直に配置されている受光面では、反射ビームに対する再帰反射が発生すると、当該反射ビームの再帰反射成分が受光光軸に沿って検出領域にまで導光されてしまう。その結果、検出領域に存在する物標の反射率によっては、当該反射ビームの再帰反射成分がさらに反射されて受光面まで戻ってくることで、ゴーストが発生して誤検出を招くおそれがあった。
【0005】
本開示の課題は、検出精度を確保する光検出装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
投光ビーム(PB)を外界の検出領域(DA)へ向けて走査し、投光ビームに対する検出領域からの反射ビーム(RB)を検出する光検出装置(10)であって、
反射ビームを受光光軸(ROA)に沿って導光する受光光学系(42)と、
受光光学系により結像される反射ビームを受光することにより、検出信号を出力する受光器(45)と、
受光器の前段側において反射ビームを屈折させる受光プリズム(2049,4049)とを、備え、
受光器は、受光光軸に直交する第一基準軸(Y)に長辺側が沿うアスペクト比として、受光アスペクト比(RR)の設定される受光面(47)を、形成し、
受光面は、受光光軸及び第一基準軸に直交する第二基準軸(X)に沿う姿勢に対して、第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置され、
受光プリズムは、第二基準軸に沿う姿勢に対して、第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置される光学面を、入射面(2492,4492)及び射出面(2493,4493)のうち少なくとも一方により形成する。
【0008】
このように第一態様では、受光光軸に直交する第一基準軸に長辺側の沿う受光アスペクト比が、受光器の受光面に設定される。そこで第一態様によると、受光光軸及び第一基準軸に直交する第二基準軸に沿う姿勢に対して、第一基準軸まわりに傾斜する姿勢配置となる受光面においては、反射ビームに対する再帰反射が発生しても、受光光軸上から外れた方向へ当該反射ビームの再帰反射成分を可及的に導光することができる。しかも第一態様によると、受光アスペクト比の長辺側が沿う第一基準軸まわりに受光面が傾斜することで、第二基準軸とは交差した同比の短辺方向において当該傾斜が招く結像ボケを、抑えることができる。
【0009】
以上の如き第一態様によれば、再帰反射成分のさらなる反射に起因したゴーストの発生を抑制すると共に、当該ゴースト抑制のための構成に起因した検出解像度の劣化も抑制して、検出精度を確保することが可能となる。
【0010】
本開示の第二態様は、
投光ビーム(PB)を外界の検出領域(DA)へ向けて走査し、投光ビームに対する検出領域からの反射ビーム(RB)を検出する光検出装置(10)であって、
反射ビームを受光光軸(ROA)に沿って導光する受光光学系(42)と、
受光光学系により結像される反射ビームを受光することにより、検出信号を出力する受光器(45,2045)と、
受光器の前段側において反射ビームを屈折させる受光プリズム(2049,4049)とを、備え、
受光器は、受光光軸に直交する第一基準軸(Y)に長辺側が沿うアスペクト比として、受光アスペクト比(RR)の設定される受光面(47,2047)を、形成し、
受光プリズムは、受光光軸及び第一基準軸に直交する第二基準軸(X)に沿う姿勢に対して、第一基準軸まわりに傾斜する姿勢に配置される光学面を、入射面(2492,4492)及び射出面(2493,4493)のうち少なくとも一方により形成する。
【0011】
このように第一態様と同様に第二態様では、受光光軸に直交する第一基準軸に長辺側の沿う受光アスペクト比が、受光器の受光面に設定される。そこで第一及び第二態様によると、受光器の前段側において反射ビームを屈折させる受光プリズムの入射面及び射出面のうち少なくとも一方は、受光光軸及び第一基準軸に直交する第二基準軸に沿う姿勢に対して、第一基準軸まわりに傾斜する姿勢配置の光学面を形成する。これにより、受光面において反射ビームに対する再帰反射が発生しても、受光光軸から外れた方向へ当該反射ビームの再帰反射成分を可及的に導光することができる。しかも第一及び第二態様によると、受光面において受光アスペクト比の長辺側が沿う第一基準軸まわりに受光プリズムの光学面が傾斜することで、同比の短辺方向において当該傾斜が招く結像ボケを、抑えることができる。
【0012】
以上の如き第一及び第二態様によれば、再帰反射成分のさらなる反射に起因したゴーストの発生を抑制すると共に、当該ゴースト抑制のための構成に起因した検出解像度の劣化も抑制して、検出精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態による光検出装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】第一実施形態による投光器を示す模式図である。
【
図3】第一実施形態による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図4】第一実施形態による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図5】第一実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図6】第一実施形態による受光器を示す模式図である。
【
図7】第一実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図8】第二実施形態による光検出装置の全体構成を示す模式図である。
【
図9】第二実施形態による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図10】第二実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図11】第二実施形態による受光器を示す模式図である。
【
図12】第二実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図13】第三実施形態による光検出装置の全体構成を示す模式図である。
【
図14】第三実施形態による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図15】第三実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図16】第三実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図17】第三実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図18】第三実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図19】第三実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図20】第四実施形態による光検出装置の全体構成を示す模式図である。
【
図21】第四実施形態による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図22】第四実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図23】第四実施形態による受光ユニットを拡大して示す模式図である。
【
図24】変形例による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【
図25】変形例による走査ユニット及び受光ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示すように、本開示の第一実施形態による光検出装置10は、移動体としての車両に搭載される、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)である。尚、以下の説明では断り書きがない限り、前、後、上、下、左、及び右が示す各方向は、水平面上の車両を基準として定義される。また、水平方向は水平面に対する接線方向を示し、鉛直方向は水平面に対する垂直方向を示す。
【0016】
光検出装置10は、例えば前方部、左右の側方部、後方部、及び上方のルーフ等のうち、車両における少なくとも一箇所に配置される。光検出装置10は、車両の外界のうち、配置箇所に応じた検出領域DAへと向けて、投光ビームPBを走査する。光検出装置10は、投光ビームPBが検出領域DAの物標により反射されることで戻ってくる戻り光を、反射ビームRBとして検出する。こうして反射ビームRBとなる投光ビームPBには、通常、外界の人間から視認困難な近赤外域の光が、選択される。
【0017】
光検出装置10は、反射ビームRBを検出することで、検出領域DAの物標を観測する。ここで物標の観測とは、例えば光検出装置10から物標までの距離、物標が存在する方向、及び物標からの反射ビームRBの反射強度等のうち、少なくとも一種類である。車両に適用される光検出装置10において代表的な観測対象となる物標は、例えば歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、及び他車両等の移動物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。車両に適用される光検出装置10において代表的な観測対象となる物標は、例えばガードレール、道路標識、道路脇の構造物、及び道路上の落下物等の静止物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。
【0018】
光検出装置10においては、互いに直交する三軸としてのX軸、Y軸、及びZ軸により、三次元直交座標系が定義されている。特に光検出装置10において、第一基準軸となるY軸は、車両の鉛直方向に沿って設定されている。また光検出装置10において、第二基準軸となるX軸は、車両の水平方向に沿って設定されている。
【0019】
光検出装置10は、筐体11、投光ユニット21、走査ユニット31、受光ユニット41、及びコントローラ51を含んで構成されている。筐体11は、光検出装置10の外装を形成する。筐体11は、遮光ケース12、及びカバーパネル15を備えている。
【0020】
遮光ケース12は、遮光性を有する、例えば合成樹脂又は金属等により、形成されている。遮光ケース12は、全体として箱状を呈している。遮光ケース12は、単独の部品により、又は複数部品の組み合わせにより、構築されている。遮光ケース12は、投光ユニット21、走査ユニット31、受光ユニット41、及びコントローラ51を収容する収容室13を、内部に画成している。遮光ケース12において収容室13は、投光ユニット21と受光ユニット41とに共通に設けられている。遮光ケース12は、開口状の光学窓14を形成している。光学窓14もまた、投光ユニット21と受光ユニット41とに共通に設けられている。
【0021】
カバーパネル15は、近赤外域での透光性を有する、例えば合成樹脂又はガラス等の基材を主体として、形成されている。カバーパネル15には、例えば基材の着色、光学薄膜の成膜、又は基材表面へのフィルムの貼り付け等により、近赤外域での透光性及び可視域での遮光性が、与えられていてもよい。カバーパネル15は、全体として平板状又は曲率を持った形状を呈している。カバーパネル15は、投光ビームPBと反射ビームRBとの双方を透過可能に、光学窓14の全体を閉塞している。これにより、投光ビームPBと反射ビームRBとの双方が収容室13及び検出領域DAの間において往復可能となっていると共に、筐体11内部への異物の侵入を遮断することが可能となっている。
【0022】
投光ユニット21は、投光器22、及び投光光学系26を備えている。投光器22は、投光ビームPBとなる近赤外域のレーザ光を、発する。投光器22は、筐体11内部に配置され、遮光ケース12により保持されている。
【0023】
図2に示すように投光器22は、複数のレーザ発振素子24が基板上においてアレイ状に配列されることで、形成されている。各レーザ発振素子24は、車両の鉛直方向において、Y軸に沿って単列に配列されている。各レーザ発振素子24は、PN接合層において発振されたレーザ光を共振させる共振器構造、及びPN接合層を挟んでレーザ光を繰り返し反射させるミラー層構造により、位相の揃ったコヒーレント光なレーザ光を発する。各レーザ発振素子24は、コントローラ51からの制御信号に従うことで、それぞれ投光ビームPBの一部となるレーザ光を、パルス状に生成する。
【0024】
投光器22は、擬似的に長方形輪郭をもって規定される投光窓25を、基板の片面側に形成している。投光窓25は、各レーザ発振素子24におけるレーザ発振開口の集合体として、構成されている。投光窓25のアスペクト比である投光アスペクト比RPは、長辺側がY軸に沿うと共に、短辺側がX軸に沿うように、定義されている。即ち投光アスペクト比RPは、第一基準軸であるY軸と、第二基準軸であるX軸との、各々に沿って設定されている。
【0025】
各レーザ発振素子24のレーザ発振開口から投射されるレーザ光は、
図1に示す検出領域DAにおいてはY軸に沿って長手のライン状に擬制されることになる投光ビームPBとして、投光窓25から投射される。投光ビームPBには、Y軸の設定方向(以下、Y軸方向という)において各レーザ発振素子24の配列間隔に応じた非発光部が、含まれていてもよい。この場合でも、検出領域DAにおいては回折作用によって巨視的に非発光部の解消されたライン状の投光ビームPBが、形成されるとよい。
【0026】
投光光学系26は、投光器22からの投光ビームPBを、走査ユニット31の走査ミラー32へ向かって投光する。投光光学系26は、筐体11内部において投光器22及び走査ミラー32の間に、配置されている。
【0027】
投光光学系26は、例えば集光、コリメート、及び整形等のうち、少なくとも一種類の光学作用を発揮する。投光光学系26は、Z軸に沿った投光光軸POAを、形成する。投光光学系26は、遮光ケース12により保持される、少なくとも一つの投光レンズ27を有している。少なくとも一つの投光レンズ27は、透光性を有した、例えば合成樹脂又はガラス等の基材を主体として、発揮する光学作用に応じたレンズ形状に形成されている。投光光軸POAは、例えば少なくとも一つの投光レンズ27においてレンズ面の曲率中心等を通る、仮想的な光線軸として定義される。投光窓25の中心から射出される投光ビームPBの主光線は、投光光軸POAに沿って導光される。
【0028】
走査ユニット31は、走査ミラー32、及び走査モータ35を備えている。走査ミラー32は、投光ユニット21の投光光学系26から投射された投光ビームPBを検出領域DAへ向けて走査し、当該投光ビームPBに対する検出領域DAからの反射ビームRBを受光ユニット41の受光光学系42へ向けて反射する。走査ミラー32は、筐体11内部においてカバーパネル15及び投光光学系26の間、且つカバーパネル15及び受光光学系42の間に配置されている。
【0029】
走査ミラー32は、例えば合成樹脂又はガラス等の基材を主体として、形成されている。走査ミラー32は、全体として平板状を呈している。走査ミラー32は、例えばアルミニウム、銀、又は金等の反射膜が基材の片面側に蒸着されることで、長方形輪郭の反射面33を鏡面状に形成している。
【0030】
図1,3に示すように走査ミラー32は、遮光ケース12により回転自在に保持される、回転軸34を有している。回転軸34において回転中心線CMの延伸する車両の鉛直方向は、Y軸方向として、反射面33の長手方向と実質一致している。走査ミラー32は、Y軸に沿う回転中心線Mまわりに回転することで、反射面33の法線方向を当該回転中心線CMまわりに調整可能となっている。特に走査ミラー32は、例えば機械的又は電気的なストッパ等により、有限の駆動範囲DR内において揺動運動する。これにより、走査ミラー32の反射する投光ビームPBは、光学窓14から外れないように制限されている。
【0031】
図1に示すように走査ミラー32は、投光ユニット21と受光ユニット41とに共通に設けられている。即ち走査ミラー32は、投光ビームPBと反射ビームRBとに共通に設けられている。これにより走査ミラー32は、投光ビームPBの投光に利用する投光反射部331と、反射ビームRBの受光に利用する受光反射部332とを、反射面33においてY軸方向にずらして形成している。投光反射部331と受光反射部332とは、互いに離間する位置に、又は少なくとも一部ずつが互いに重畳する位置に、設けられる。
【0032】
投光ビームPBは、走査ミラー32の回転駆動に応じて法線方向の調整される投光反射部331から反射作用を受けることで、光学窓14を透過して検出領域DAを時間的及び空間的に走査する。検出領域DAに対する投光ビームPBの走査は、回転中心線CMまわりにおける走査ミラー32の回転駆動に応じて、水平方向での走査に実質制限される。これにより走査ミラー32の駆動範囲DRは、検出領域DAでの水平画角を定義付けることになる。
【0033】
投光ビームPBは、検出領域DAに存在する物標によって反射されることで、光検出装置10へ戻る反射ビームRBとなる。反射ビームRBは、光学窓14を再度透過して、走査ミラー32の受光反射部332へと入射する。ここで走査ミラー32の回転運動速度に対して、投光ビームPB及び反射ビームRBの速度は十分に大きい。これにより反射ビームRBは、投光ビームPBと略同一回転角度の走査ミラー32において受光反射部332から反射作用を受けることで、投光ビームPBと逆行するように受光ユニット41の受光光学系42へ導光されることになる。
【0034】
走査モータ35は、筐体11内部において走査ミラー32の周囲に、配置されている。走査モータ35は、例えばボイスコイルモータ、ブラシ付きDCモータ、又はステッピングモータ等である。走査モータ35の出力軸は、走査ミラー32の回転軸34に直接的に、又は例えば減速機等の駆動機構を介して間接的に、結合される。走査モータ35は、出力軸と共に回転軸34を回転駆動可能に、遮光ケース12によって保持されている。走査モータ35は、コントローラ51からの制御信号に従って、回転軸34を駆動範囲DR内において回転駆動する。
【0035】
図1,3に示すように受光ユニット41は、受光光学系42、及び受光器45を備えている。受光光学系42は、走査ミラー32によって反射された反射ビームRBを、受光器45へと向かって導光する。受光光学系42は、Y軸に沿った車両の鉛直方向において、投光光学系26よりも下方に位置決めされている。
【0036】
受光光学系42は、受光器45に対して反射ビームRBを結像させるように、光学作用を発揮する。受光光学系42は、Z軸に沿った受光光軸ROAを、形成する。受光光学系42は、遮光ケース12により鏡筒44を介して保持される、少なくとも一つの受光レンズ43を有している。少なくとも一つの受光レンズ43は、透光性を有した、例えば合成樹脂又はガラス等の基材を主体として、発揮する光学作用に応じたレンズ形状(例えば
図3の形状、又は後述
図5の形状等)に形成されている。受光光軸ROAは、例えば少なくとも一つの受光レンズ43においてレンズ面の曲率中心等を通る、仮想的な光線軸として定義される。
【0037】
走査ミラー32の受光反射部332から反射される反射ビームRBの主光線は、
図3,4に示すように駆動範囲DR内での任意の回転角度において、受光光軸ROAに沿って導光される。即ち、反射ビームRBの沿う受光光軸ROAは、回転駆動される走査ミラー32の駆動範囲DRに亘って、反射ビームRBの沿う光軸となる。
【0038】
図1,3,4に示すように受光光学系42は、遮光ケース12により保持される、鏡筒44を有している。鏡筒44は、遮光性を有した、例えば合成樹脂又は金属等の基材を主体として、形成されている。鏡筒44は、全体として筒状を呈している。鏡筒44は、少なくとも一つの受光レンズ43を収容して位置決めする。
【0039】
受光器45は、受光光学系42によって結像される反射ビームRBを受光することで、検出信号を出力する。受光器45は、筐体11内部に配置され、遮光ケース12により保持されている。受光器45は、Y軸に沿った車両の鉛直方向において投光器22よりも下方、且つ受光光軸ROA上に位置決めされている。
図3~5に示すように受光器45においては、Y軸に対して直交すると共に、受光光軸ROA(即ちZ軸)及びX軸の各々に対してY軸まわりの片側に鋭角且つY軸まわりの逆側に鈍角を挟んで傾斜する傾斜軸IAが、定義されている。
【0040】
図6に太線で示すように受光器45は、複数の受光画素46が基板上においてアレイ状に配列されることで、形成されている。各受光画素46は、車両の鉛直方向において、Y軸に沿って単列に配列されている。
図6に細線で示すように各受光画素46は、複数ずつの受光素子461から構成されている。各受光画素46毎に受光素子461は、Y軸及び傾斜軸IAの各々に沿って所定数ずつ並ぶ形態に、配列されている。即ち各受光画素46毎に複数の受光素子461が有ることから、その応答数に応じて出力値が異なってくる。そこで、各受光画素46毎に複数の受光素子461を束ねて出力とすることで、ダイナミックレンジを高めることが可能となる。各受光画素46の受光素子461は、例えばシングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD:Single Photon Avalanche Diode)等のフォトダイオードを主体として、構築されている。各受光画素46の受光素子461は、フォトダイオードアレイの前段にマイクロレンズアレイが積層されることで、一体的に構築されていてもよい。尚、
図6では、受光素子461に付される符号の一部が、省略されている。
【0041】
図1,3~6に示すように受光器45は、長方形輪郭の受光面47を、基板の片面側に形成している。受光面47は、各受光画素46における入射面の集合体として、構成されている。受光面47の長方形輪郭に対する幾何学中心は、受光光軸ROA上に、又は受光光軸ROAからX軸の設定方向(以下、X軸方向という)へ僅かにずれて、位置合わせされている。各受光画素46は、受光面47を構成する入射面へと入射した反射ビームRBを、それぞれの受光素子461により受光して検出する。
【0042】
受光面47のアスペクト比である受光アスペクト比RRは、長辺側がY軸に沿うと共に、短辺側が傾斜軸IAに沿うように、定義されている。即ち第一実施形態の受光アスペクト比RRは、投光アスペクト比RPとは異なり、第一基準軸であるY軸と、第二基準軸であるX軸且つ受光光軸ROAに対する傾斜軸IAとの、各々に沿って設定されている。ここで、検出領域DAにおいてライン状に擬制される投光ビームPBに対応して、反射ビームRBはライン状に拡がったビームとなる。
【0043】
図1に示すように受光器45は、デコーダ48を一体に有している。デコーダ48は、反射ビームRBの検出に応じて各受光画素46の生成する電気パルスを、サンプリング処理によって順次読み出す。デコーダ48は、順次読み出された電気パルスを検出信号として、コントローラ51に出力する。全受光画素46からの電気パルスが読み出されることで一回のサンプリング処理が終了すると、検出領域DAの物標を観測する一回の検出も終了する。
【0044】
コントローラ51は、検出領域DAにおける物標の観測を制御する。コントローラ51は、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータの、少なくとも一つを主体として構成されている。コントローラ51は、投光器22、走査モータ35、及び受光器45と接続されている。コントローラ51は、発光タイミングにおいて各レーザ発振素子24の発振により投光ビームPBを生成するように、投光器22への制御信号を出力する。コントローラ51は、投光ビームPBの発光タイミングと同期した走査ミラー32による走査及び反射を制御するように、走査モータ35への制御信号を出力する。コントローラ51は、投光器22の発光タイミング、並びに走査ミラー32による走査及び反射に合わせて、受光器45から検出信号として出力される電気パルスを演算処理することで、検出領域DAにおける物標の観測データを生成する。
【0045】
次に、受光ユニット41の詳細構成を説明する。
【0046】
図1,3~5に示すように、受光ユニット41の受光光学系42において鏡筒44は、受光器45側の射出口441を絞る開口絞り442を、形成している。開口絞り442は、長辺側がY軸に沿うと共に短辺側がX軸に沿うアスペクト比の長方形輪郭を、射出口441に与えている。射出口441の内法寸法となる開口絞り442の絞り径φは、検出領域DAから戻る反射ビームRBの全てを射出可能とする限りにおいて、可及的に小さく設定される。
【0047】
開口絞り442の絞り径φは、
図5に示すようにY軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面では、次の式1に従って設定されるとよい。式1においてLは、開口絞り442の入射端から受光器45における受光面47までの、受光光軸ROA上の離間距離である。式1においてθは、単独の受光レンズ43、又は複数のうち最後段の受光レンズ43から、開口絞り442が絞る射出口441の入射端を経由して受光面47へと入射する光線の、受光光軸ROAに対する最大角である。式1においてFは、単独の受光レンズ43に設定されているF値、又は複数の受光レンズ43に設定されているF値の合成値である。
φ=2・L・tan(θ)=2・L・tan(sin
-1(1/(2・F))) …式1
【0048】
図1,3~5に示すように、受光光学系42において鏡筒44は、受光器45側の射出口441まわり(即ち、開口絞り442まわり)に、光吸収面443を形成している。光吸収面443は、基材の外表面に対する、例えばアルマイト処理、メッキ処理、又は塗装処理等の黒色化処理により、形成されている。特に光吸収面443は、鏡筒44のうちZ軸の設定方向(以下、Z軸方向という)となる、受光光軸ROAの設定方向において受光器45と対向する対向外壁面の全体に、設けられているとよい。受光器45において反射ビームRBの入射する受光面47により再帰反射が発生する場合、当該反射ビームRBの再帰反射成分RCは、
図3~5の如く光吸収面443に入射することで、吸収可能となっている。
【0049】
図1,3~6に示すように、受光器45において実質平面状の受光面47は、傾斜軸IAの設定方向とY軸方向とへ広がる姿勢に、配置されている。これにより受光面47の姿勢は、傾斜軸IAの設定方向となる受光アスペクト比RRの短辺方向とは交差した、第二基準軸としてのX軸に沿う姿勢に対して、同比RRの長辺方向が沿う第一基準軸としてのY軸まわりに、傾斜している。
図3~5に示すようにY軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面において、受光光軸ROAをX軸方向に挟んだ両側のうち、受光面47のいずれの側が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜していてもよい。
【0050】
図5,7に示すように、X軸から受光光軸ROAへの接近方向(
図5,7では反時計方向)における受光面47の傾斜角ψは、例えば式1の最大角θ以上となる範囲等の鋭角に、設定される。ここで、傾斜角ψの増大に応じて受光面47での反射ビームRBに対する再帰反射成分RCは受光光軸ROAから外れ易くなる一方、傾斜角ψの減少に応じて受光面47での反射ビームRBの結像ボケが特に傾斜軸IAの設定方向(即ち、受光アスペクト比RRの短辺方向)において生じ難くなる。そこで傾斜角ψは、再帰反射成分RCの外れ易さと結像ボケの生じ難さとの、バランス(即ちトレードオフ)に応じて設定されるとよい。
【0051】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0052】
第一実施形態では、受光光軸ROAに直交する第一基準軸としてのY軸に長辺側の沿う受光アスペクト比RRが、受光器45の受光面47に設定される。そこで第一実施形態によると、受光光軸ROA及びY軸に直交する第二基準軸としてのX軸に沿う姿勢に対して、Y軸まわりに傾斜する姿勢配置となる受光面47においては、反射ビームRBに対する再帰反射が発生しても、
図5,7の如く受光光軸ROAから外れた方向へ当該反射ビームRBの再帰反射成分RCを可及的に導光することができる。しかも第一実施形態によると、受光アスペクト比RRの長辺側が沿うY軸まわりに受光面47が傾斜することで、X軸とは交差した同比RRの短辺方向において当該傾斜が招く結像ボケを、抑えることができる。
【0053】
以上の如き第一実施形態によれば、再帰反射成分RCのさらなる反射に起因したゴーストの発生を抑制すると共に、当該ゴースト抑制のための構成に起因した検出解像度の劣化も抑制して、検出精度を確保することが可能となる。ここで特に、再帰反射成分RCに起因してゴーストが発生する場合には、例えば物標までの実距離に対して二倍の距離が誤って検出される等の不具合が生じるのに対し、ゴースト発生の抑制により誤検出も抑制し得る光検出装置10では、検出精度の確保が可能となる。
【0054】
第一実施形態によると、受光面47を構成する複数の受光画素46は、受光アスペクト比RRの長辺側が沿うY軸に沿って単列に配列される。これによれば、X軸とは交差した受光アスペクト比RRの短辺方向において、受光面47の広がりを可及的に低減することができる。故に、結像ボケによる検出解像度の劣化を抑制する効果、ひいては検出精度を高めることが可能となる。
【0055】
第一実施形態によると、投光ビームPBを検出領域DAへ向けて走査し、反射ビームRBを受光光学系42へ向けて反射する走査ミラー32は、Y軸に沿う回転中心線CMまわりに回転駆動される。そこで、受光光学系42が走査ミラー32の駆動範囲DRに亘って反射ビームRBを受光光軸ROAに沿って導光することによれば、ゴーストの発生抑制と検出解像度の劣化抑制とを、投光ビームPBにより走査される検出領域DAの全域に対し発揮して、検出精度を高めることが可能となる。
【0056】
第一実施形態によると、走査ミラー32へ向かう投光ビームPBを発する投光器22は、受光アスペクト比RRの長辺側と同様に、Y軸に長辺側が沿った投光アスペクト比RPの設定される投光窓25を、形成する。これによれば、受光アスペクト比RR及び投光アスペクト比RPに共通の長辺方向となるY軸方向において、受光面47での結像ボケを抑えることができる。故に、検出解像度の劣化を抑制する効果、ひいては検出精度を高めることが可能となる。
【0057】
第一実施形態によると、受光光学系42の受光レンズ43は、受光器45に対して反射ビームRBを結像させる。これによれば、受光面47において発生した反射ビームRBの再帰反射成分RCは、受光レンズ43への再帰入射により反射される事態を、制限され得る。故に、受光レンズ43への再帰反射成分RCの再帰入射に起因したフレアの発生も抑制して、検出精度を高めることが可能となる。
【0058】
第一実施形態によると、受光光学系42において受光レンズ43は、鏡筒44に収容される。これによれば、受光面47において発生した反射ビームRBの再帰反射成分RCは、光検出装置10内部(具体的には筐体11内部)での反射により迷光となって検出領域DAへと向かう事態を、制限され得る。故に、再帰反射成分RCの迷光化に起因したゴーストの発生も抑制して、検出精度を高めることが可能となる。
【0059】
第一実施形態によると、鏡筒44において受光器45側の射出口441は、開口絞り442により絞られる。これによれば、受光面47において発生した反射ビームRBの再帰反射成分RCは、鏡筒44内部への入射により受光レンズ43へ再帰入射する事態、及び鏡筒44内部への入射により内壁面反射する事態を、制限され得る。故に、鏡筒44内部への再帰反射成分RCの入射に起因したフレア及びクラッタの発生も抑制して、検出精度を高めることが可能となる。
【0060】
第一実施形態によると、鏡筒44において受光器45側の射出口441まわりでは、受光面47において発生した反射ビームRBの再帰反射成分RCが、光吸収面443に吸収され得る。これによれば、鏡筒44の外壁面へ入射する再帰反射成分RCに対しての反射率を、低減することができる。故に、鏡筒44での再帰反射成分RCの外壁面反射に起因したクラッタの発生も抑制して、検出精度を高めることが可能となる。
【0061】
(第二実施形態)
第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0062】
図8~11に示すように、第二実施形態の受光ユニット2041において受光器2045の受光面2047は、Z軸に沿う受光光軸ROAに対して、実質直交する姿勢に配置されている。これにより受光面2047の受光アスペクト比RRは、投光アスペクト比RPと同様に、第一基準軸であるY軸と、第二基準軸であるX軸との、各々に沿って設定されている。即ち、第一実施形態と同様に単列配列された複数の受光画素46から構成される第二実施形態の受光面2047は、Y軸方向となる受光アスペクト比RRの長辺方向と、X軸方向となる受光アスペクト比RRの短辺方向とへ、広がっている。
【0063】
図8~10に示すように第二実施形態の受光ユニット2041は、受光プリズム2049をさらに備えている。受光プリズム2049は、筐体11内部において、受光光学系42の射出口441と受光器2045の受光面2047との間に配置されている。受光プリズム2049は、遮光ケース12により直接的に、又は受光器2045を介して間接的に保持される。
【0064】
受光プリズム2049は、受光器2045の前段側において反射ビームRBを屈折させる。受光プリズム2049は、透光性を有した、例えば合成樹脂又はガラス等の基材を主体として、形成されている。受光プリズム2049は、反射ビームRBに対して屈折作用を与える光学面として、互いに鋭角を挟んで非平行な入射面2492及び射出面2493を、形成している。
【0065】
Z軸方向となる受光光軸ROAの設定方向において入射面2492は、受光光学系42の射出口441と対向している。入射面2492は、検出領域DAから戻る反射ビームRBの全てが入射可能、且つ受光面2047から射出面2493へと入射した再帰反射成分RCの少なくとも一部を射出可能となる限りにおいて、例えば長辺側がY軸に沿うアスペクト比の長方形輪郭等を、与えられているとよい。受光光軸ROAの設定方向において射出面2493は、受光器2045の受光面2047と対向している。射出面2493は、検出領域DAから入射面2492へと入射した反射ビームRBの全てを射出可能、且つ受光面2047からの再帰反射成分RCの少なくとも一部が入射可能となる限りにおいて、例えば長辺側がY軸に沿うアスペクト比の長方形輪郭等を、与えられているとよい。
【0066】
受光プリズム2049において実質平面状の入射面2492は、傾斜軸IAの設定方向とY軸方向とへ広がる姿勢に、配置されている。これにより入射面2492の姿勢は、傾斜軸IAの設定方向とは交差した、受光面2047での受光アスペクト比RRの短辺方向に設定される、第二基準軸としてのX軸に沿う姿勢に対して、同比RRの長辺方向が沿う第一基準軸としてのY軸まわりに、傾斜している。
図9,10に示すようにY軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面において、受光光軸ROAをX軸方向に挟んだ両側のうち、入射面2492のいずれの側が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜していてもよい。
【0067】
図10,12に示すように、X軸から受光光軸ROAへの接近方向(
図10,12では時計方向)における入射面2492の傾斜角ωは、例えば第一実施形態により定義された式1の最大角θ以上となる範囲等の鋭角に、設定される。ここで、傾斜角ωの増大に応じて受光面2047での反射ビームRBに対する再帰反射成分RCは受光光軸ROAから外れ易くなる一方、傾斜角ωの減少に応じて受光面2047での反射ビームRBの結像ボケが特にX軸方向(即ち、受光アスペクト比RRの短辺方向)において生じ難くなる。そこで傾斜角ωは、再帰反射成分RCの外れ易さと結像ボケの生じ難さとの、バランス(即ちトレードオフ)に応じて設定されるとよい。
【0068】
図8~10に示すように受光プリズム2049において実質平面状の射出面2493は、Z軸に沿う受光光軸ROAに対して、実質直交する姿勢に配置されている。これにより射出面2493は、受光面2047と同様に、Y軸方向とX軸方向とへ広がっている。そこで特に射出面2493は、受光面2047に重ねて配置されるとよい。射出面2493は、受光面2047に対して直接的に、又は受光面2047を覆うカバーガラスを介して間接的に、重ねて配置されていてもよい。こうした重ね配置の射出面2493は、受光面2047に対して、例えば透光性の光学接着剤により直接的に接合、又は当該光学接着剤及び受光面2047のカバーガラスを介して間接的に接合される等により、受光器2045と一体化されていてもよい。受光プリズム2049は、それとは別の部材となる遮光ケース12により直接的に、又はさらに別の部材を介して遮光ケース12により間接的に保持されることで、受光面2047への射出面2493の重ね配置姿勢を維持していてもよい。受光プリズム2049は、それ自体により受光面2047のカバーガラスを構成していてもよい。
【0069】
(作用効果)
以上説明した第二実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0070】
第二実施形態においても、受光光軸ROAに直交する第一基準軸としてのY軸に長辺側の沿う受光アスペクト比RRが、受光器2045の受光面2047に設定される。そこで第二実施形態によると、受光器2045の前段側において反射ビームRBを屈折させる受光プリズム2049の入射面2492は、受光光軸ROA及びY軸に直交する第二基準軸としてのX軸に沿う姿勢に対して、Y軸まわりに傾斜する姿勢配置の光学面を形成する。これにより、受光面2047において反射ビームRBに対する再帰反射が発生しても、受光光軸ROAから外れた方向へ当該反射ビームRBの再帰反射成分を可及的に導光することができる。
【0071】
しかも第二実施形態によると、受光面2047において受光アスペクト比RRの長辺側が沿うY軸まわりに受光プリズム2049の入射面2492が傾斜することで、同比RRの短辺方向において当該傾斜が招く結像ボケを、抑えることができる。ここで特に、受光面2047での受光アスペクト比RRはY軸及びX軸の各々に沿って設定されるので、受光器2045の実装を容易にしつつ、X軸に沿う同比RRの短辺方向において結像ボケを抑えることができる。
【0072】
以上の如き第二実施形態によれば、再帰反射成分RCのさらなる反射に起因したゴーストの発生を抑制すると共に、当該ゴースト抑制のための構成に起因した検出解像度の劣化も抑制して、検出精度を確保することが可能となる。
【0073】
さらに第二実施形態においても、受光面2047を構成する複数の受光画素46は、受光アスペクト比RRの長辺側が沿うY軸に沿って単列に配列されることとなる。これによれば、X軸に沿った受光アスペクト比RRの短辺方向において、受光面2047の広がりを可及的に低減することができる。故に、結像ボケによる検出解像度の劣化を抑制する効果、ひいては検出精度を高めることが可能となる。
【0074】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第一実施形態と第二実施形態とを組み合わせた変形例である。
【0075】
図13~15に示すように第三実施形態の受光ユニット3041は、受光面47の傾斜する受光器45と、入射面2492の傾斜する受光プリズム2049とを、備えている。
図14,15に示すようにY軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面において、受光光軸ROAをX軸方向に挟んだ両側のうち、傾斜軸IA1に沿う受光面47が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側と、傾斜軸IA2に沿う入射面2492が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側とは、相異なっている。即ち、受光面47と入射面2492とは、第二基準軸であるX軸に沿った姿勢に対して、第一基準軸であるY軸まわりの相反方向に、傾斜している。
【0076】
図15~19に示すように、X軸から受光光軸ROAへの接近方向における受光面47の傾斜角ψと、X軸から受光光軸ROAへの接近方向における入射面2492の傾斜角ωとは、同一又は相異の大きさに設定される。第三実施形態においても傾斜角ψ,ωは、例えば第一実施形態により定義された式1の最大角θ以上となる範囲等の鋭角に、設定されるとよい。
【0077】
傾斜角ψ,ωが所定の上限角度以下に設定されると仮定した場合、傾斜角ψ,ωのいずれも上限角度とされる
図15では、傾斜角ψ,ωの一方が上限角度未満に変更された
図16,17よりも、再帰反射成分RCが受光光軸ROAから外れ易くなる。傾斜角ψが所定の固定角度に設定されると仮定した場合、傾斜角ωが
図16,15,18の順で増大するほど、再帰反射成分RCが受光光軸ROAから外れ易くなる。傾斜角ωが所定の固定角度に設定されると仮定した場合、傾斜角ψが
図17,15,19の順で増大するほど、再帰反射成分RCが受光光軸ROAから外れ易くなる。
【0078】
(作用効果)
以上説明した第三実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0079】
第三実施形態によると、受光面47での受光アスペクト比RRの長辺側が沿う第一基準軸としてのY軸まわりに、受光器45の受光面47と受光プリズム2049の入射面2492とがそれぞれ傾斜する。これによれば、第二基準軸としてのX軸とは交差した、受光面47での受光アスペクト比RRの短辺方向において、結像ボケを抑えることができる。故に、結像ボケによる検出解像度の劣化を抑制する効果、ひいては検出精度を高めることが可能となる。
【0080】
(第四実施形態)
第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。
【0081】
図20~22に示すように第四実施形態の受光ユニット4041は、Y軸まわりに回転させた受光プリズム2049に相当する、受光プリズム4049を備えている。この受光プリズム4049において実質平面状の入射面4492は、Z軸に沿う受光光軸ROAに対して、実質直交する姿勢に配置されている。これにより入射面4492は、受光器45の受光面47とは異なり、Y軸方向とX軸方向とへ広がっている。
【0082】
図21,22に示すように受光プリズム4049において、入射面4492とは非平行な実質平面状の射出面4493は、傾斜軸IAの設定方向とY軸方向とへ広がる姿勢に、配置されている。これにより射出面4493の姿勢は、傾斜軸IAの設定方向となる受光面47での受光アスペクト比RRの短辺方向とは交差した、第二基準軸としてのX軸に沿う姿勢に対して、同比RRの長辺方向が沿う第一基準軸としてのY軸まわりに、傾斜している。
【0083】
図21,22に示すようにY軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面において、受光光軸ROAをX軸方向に挟んだ両側のうち、傾斜軸IAに沿う受光面47が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側と、当該受光面47と共通の傾斜軸IAに沿う射出面4493が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側とは、一致することになる。即ち、受光面47と射出面4493とは、第二基準軸であるX軸に沿う姿勢に対して、第一基準軸であるY軸まわりの同一方向に、傾斜している。
【0084】
X軸から受光光軸ROAへの接近方向における受光面47の傾斜角ψと、X軸から受光光軸ROAへの接近方向における射出面4493の傾斜角ωとは、
図22,23に示すように同一、又は相異の大きさに設定される。第四実施形態においても傾斜角ψ,ωは、例えば第一実施形態により定義された式1の最大角θ以上となる範囲等の鋭角に、設定されるとよい。ここで特に、受光面47の傾斜角ψと同一角度に傾斜角ωが設定される射出面4493は、受光面47に重ねて配置されるとよい。射出面4493は、受光面47に対して直接的に、又は受光面47を覆うカバーガラスを介して間接的に、重ねて配置されていてもよい。こうした重ね配置の射出面4493は、受光面47に対して、例えば透光性の光学接着剤により直接的に接合、又は当該光学接着剤及び受光面47のカバーガラスを介して間接的に接合される等により、受光器45と一体化されていてもよい。受光プリズム4049は、それとは別の部材となる遮光ケース12により直接的に、又はさらに別の部材を介して遮光ケース12により間接的に保持されることで、受光面47への射出面4493の重ね配置姿勢を維持していてもよい。受光プリズム4049は、それ自体により受光面47のカバーガラスを構成していてもよい。
【0085】
(作用効果)
以上説明した第四実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0086】
第四実施形態によると、受光面47での受光アスペクト比RRの長辺側が沿う第一基準軸としてのY軸まわりに、受光器45の受光面47と受光プリズム4049の射出面4493とがそれぞれ傾斜する。これによれば、第二基準軸としてのX軸とは交差した、受光面47での受光アスペクト比RRの短辺方向において、結像ボケを抑えることができる。故に、結像ボケによる検出解像度の劣化を抑制する効果、ひいては検出精度を高めることが可能となる。
【0087】
(他の実施形態)
【0088】
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0089】
変形例において投光窓25を構成するレーザ発振素子24は、Y軸に沿う素子列がX軸方向に複数列並ぶように、配列されていてもよい。変形例において受光面47,2047を構成する複数の受光画素46は、Y軸に沿う画素列が傾斜軸IAの設定方向又はX軸方向に複数列並ぶように、配列されていてもよい。
【0090】
変形例において走査ミラー32の回転軸34は、三次元直交座標系におけるY軸以外の二軸、又はY軸に対して交差する方向に回転中心線CMが沿う形態に、配置されていてもよい。変形例において、三次元直交座標系の各軸方向と車両の各方向との関係は、例えば光検出装置10の配置箇所等に応じて、適宜規定されてもよい。
【0091】
変形例では、鏡筒44が遮光ケース12の一部として、筐体11と一体的に形成されていてもよい。変形例では、開口絞り442及び光吸収面443のうち、少なくとも一方が鏡筒44に設けられていなくてもよい。
【0092】
変形例では、受光光学系42における単独又は最後段の受光レンズ43から、受光器45,2045における受光面47,2047までの間となる限りにおいて、受光プリズム2049,4049が鏡筒44により保持されていてもよい。この場合に受光プリズム2049,4049は、受光光学系42の一部を構成していてもよい。
【0093】
図24に示すように変形例では、第二及び第三実施形態に準じてX軸からY軸まわりに傾斜する入射面2492が、第四実施形態の受光プリズム4049に適用されてもよい。この場合、Y軸に垂直且つ受光光軸ROA上の断面において、受光光軸ROAをX軸方向に挟んだ両側のうち、傾斜軸IA1に沿う受光面47及び射出面4493が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側と、傾斜軸IA2に沿う入射面2492が受光光軸ROAへの接近方向に傾斜する側とは、
図24の如く相異、又は一致していてもよい。
【0094】
図25に示すように変形例の受光ユニット41,2041,3041,4041(
図25は第一実施形態の例)では、受光光学系42における単独又は最後段の受光レンズ43から、受光器45,2045における受光面47,2047とまでの間に、平板状の反射型光学フィルタ(例えば近赤外域のバンドパスフィルタ等)1050が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10:光検出装置、22:投光器、25:投光窓、32:走査ミラー、42:受光光学系、43:受光レンズ、44:鏡筒、45,2045:受光器、46:受光画素、47,2047:受光面、441:射出口、442:開口絞り、443:光吸収面、2049,4049:受光プリズム、2492,4292:入射面、2493,4493:射出面、CM:回転中心線、DA:検出領域、DR:駆動範囲、PB:投光ビーム、RB:反射ビーム、RC:再帰反射成分、ROA:受光光軸、RP:投光アスペクト比、RR:受光アスペクト比