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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】内圧試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/12 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01N3/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021042631
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142455
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 忠興
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-084365(JP,A)
【文献】特開2004-361317(JP,A)
【文献】米国特許第6161425(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体の内部に圧力を印加して、前記試験体の強度を測定する内圧試験機であって、
前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定
前記試験体の内部に印加される圧力を検出する圧力センサを備え、
前記圧力センサを用いて、前記減圧期間における前記圧力の応答特性と、前記増圧期間における前記圧力の応答特性と、を測定し、
前記減圧期間における前記圧力の応答特性と、前記増圧期間における前記圧力の応答特性とに基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する、
内圧試験機。
【請求項2】
試験体の内部に圧力を印加して、前記試験体の強度を測定する内圧試験機であって、
前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定
前記目標圧力の周波数に基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する、
内圧試験機。
【請求項3】
試験体の内部に圧力を印加して、前記試験体の強度を測定する内圧試験機であって、
前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定
前記減圧期間、及び前記増圧期間の各々における前記目標圧力の波形を、正弦波の1/2波長で規定する、
内圧試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
試験体の内部に圧力を印加して、試験体の強度を測定する内圧試験機が知られている。
例えば、特許文献1に記載の内圧疲労試験機は、補助油圧源から増圧器に補給される作動油の圧力及び流量を任意に変更する圧力調整手段、及び流量調整手段を設け、試験圧力等に応じてこれらを適宜に調整することによって、補助油圧源の駆動時及び停止時における増圧器内の圧力の変動を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-361317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の内圧疲労試験機では、減圧過程での応答速度は、試験体の内部の圧力による作動油の流出速度に依存する。そこで、作動油を外力によって強制的に試験体の内部に押し込むことが可能な増圧過程と比較して、減圧過程では、流路抵抗の影響が大きくなる。そのため、周波数が増加する程、増圧期間と比較して減圧期間が長くなる。また、減圧期間が長くなること、及び、減圧期間におけるキャビテーションの発生に起因して、周波数を増加できない場合がある。
【0005】
本発明は、減圧期間におけるキャビテーションの発生を抑制することが可能な内圧試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る内圧試験機は、試験体の内部に圧力を印加して、前記試験体の強度を測定する内圧試験機であって、前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様に係る内圧試験機によれば、減圧期間が増圧期間よりも長くなるように減圧期間及び増圧期間が設定されるため、目標圧力の周波数が高い場合にも、減圧期間を長くすることができる。したがって、減圧期間におけるキャビテーションの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る内圧試験機の構成の一例を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る目標圧力、及び測定圧力の一例を示すグラフである。
図3】制御装置の波形設定部の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】従来の目標圧力、及び測定圧力の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[1.内圧試験機の構成]
図1は、本実施形態に係る内圧試験機100の構成の一例を示す側面図である。
内圧試験機100は、試験体TPの内部に圧力を印加して、試験体TPの強度を測定する。図1に示すように、内圧試験機100は、試験機本体1と、制御装置2と、負荷用油圧源3と、補助油圧源4と、を備える。
【0011】
試験機本体1は、負荷用油圧源3及び補助油圧源4と接続され、制御装置2からの指示に従って、試験体TPの内部に圧力を印加する。
試験機本体1は、支持構造11と、油圧アクチュエータ12と、増圧器13と、配管HPとを備える。
支持構造11は、基台111、複数の支柱112、及びビーム113を備える。複数の支柱112の各々は、その軸方向が鉛直方向に配置されるように、基台111に固定される。ビーム113は、その軸方向が水平方向に配置されるように複数の支柱112に固定される。また、ビーム113は、複数の支柱112に対して、上下方向に位置調整可能に構成される。基台111には、増圧器13が固定される。ビーム113には、油圧アクチュエータ12が固定される。
【0012】
油圧アクチュエータ12は、油圧シリンダ121、ピストンロッド122、及びサーボ弁123を備える。
サーボ弁123は、制御装置2からの指示に従って、負荷用油圧源3から作動油を油圧シリンダ121に供給する。ピストンロッド122は、油圧シリンダ121に挿通される。油圧シリンダ121の下端は、ピストンロッド122の軸方向が鉛直方向に配置されるように、ビーム113に固定される。
作動油が油圧シリンダ121に供給されることによって、ピストンロッド122は、下方向に駆動される。
【0013】
負荷用油圧源3は、サーボ弁123を介して、油圧アクチュエータ12に油圧シリンダ121に作動油を供給する。負荷用油圧源3からサーボ弁123までの間の配管には、アキュムレータ31が介設される。アキュムレータ31は、作動油を貯留し、負荷用油圧源3から供給される作動油の圧力変動を調整する。
【0014】
変位計S1は、油圧アクチュエータ12のピストンロッド122の変位を検出する。変位計S1の検出した変位XAは、制御装置2に出力される。
【0015】
増圧器13は、増圧シリンダ131、及びプランジャ132を備える。
増圧器13の増圧シリンダ131の内部には作動油が充填される。増圧シリンダ131の内部は、配管HPを介して、試験体TPの内部と連通して構成される。配管HPは、第1配管HP1と第2配管HP2とで構成される。増圧シリンダ131の内部と試験体TPの内部とは配管HPによって連通して構成されるため、試験体TPの内部の作動油の圧力は、増圧シリンダ131の内部の作動油の圧力と一致する。
【0016】
プランジャ132の上端は、油圧アクチュエータ12のピストンロッド122の下端に固定される。そこで、ピストンロッド122が下降することによって、プランジャ132がピストンロッド122と一体に下降する。プランジャ132が下降することによって、増圧シリンダ131の内部の作動油が配管HPを経由して、試験体TPの内部に送出される。その結果、試験体TPの内部の作動油の油圧が上昇する。
【0017】
増圧器13の増圧シリンダ131の内部の作動油の圧力Pは、圧力セルS2によって検出される。圧力セルS2の検出した測定圧力PAは、制御装置2に出力される。
圧力セルS2は、「圧力センサ」の一例に対応する。
【0018】
制御装置2は、目標圧力PT、測定圧力PA及び変位XAに基づき、サーボ弁123を制御する。具体的には、制御装置2は、測定圧力PAが目標圧力PTと一致するように、変位XAを制御する。換言すれば、制御装置2は、測定圧力PAが目標圧力PTと一致するように、サーボ弁123が油圧シリンダ121に供給する作動油の油量を制御する。
目標圧力PTは、試験体TPの内部に印加される圧力の目標値を示す。目標圧力PTは、例えば、周波数Fの繰り返し波形である。繰り返し波形は、例えば、正弦波状の波形である。
測定圧力PA、及び目標圧力PTについては、図2及び図4を参照して更に説明する。
【0019】
制御装置2からの指示に従って、サーボ弁123が制御され、油圧アクチュエータ12のピストンロッド122が上下動することによって、プランジャ132が上下動する。その結果、増圧器13の増圧シリンダ131の内部の作動油の圧力Pが変動する。増圧シリンダ131の内部は、配管HPを介して、試験体TPの内部と連通して構成されるため、試験体TPの内部の作動油の圧力が試験体TPの内部に繰り返し印加される。
【0020】
補助油圧源4は、増圧器13の増圧シリンダ131に作動油を供給する。補助油圧源4と増圧シリンダ131との間には、絞り弁41及び逆止弁42が配置されている。絞り弁41及び逆止弁42は、補助油圧源4から増圧シリンダ131の内部に流入する作動油の圧力及び流量を調整する。
【0021】
[2.制御装置の構成]
制御装置2は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され、測定圧力PAが目標圧力PTと一致するように、サーボ弁123に対して、負荷用油圧源3から油圧シリンダ121に供給する作動油の油量を調整させる。
制御装置2は、プロセッサ21と、メモリと、を備える。
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等で構成される。
メモリ22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
メモリ22は、制御プログラムPGを記憶する。
【0022】
制御装置2は、パーソナルコンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、制御装置2は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォン等で構成されてもよい。
また、制御装置2は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等、プログラムされたハードウェアを備えてもよい。また、制御装置2は、SoC(System-on-a-Chip)-FPGAを備えてもよい。
【0023】
制御装置2は、波形設定部211と、目標圧力設定部212と、圧力制御部213と、波形記憶部221と、を備える。
具体的には、制御装置2のプロセッサ21が、メモリ22に記憶された制御プログラムPGを実行することによって、波形設定部211、目標圧力設定部212、及び圧力制御部213として機能する。また、制御装置2のプロセッサ21が、メモリ22に記憶された制御プログラムPGを実行することによって、メモリ22を、波形記憶部221として機能させる。
【0024】
波形記憶部221は、目標圧力PTの1周期分の波形を記憶する。目標圧力PTの1周期分の波形は、波形設定部211によって設定され、波形記憶部221に記憶される。
【0025】
波形設定部211は、目標圧力PTの1周期分の波形において、減圧期間PDが増圧期間PUよりも長くなるように、減圧期間PD及び増圧期間PUを設定する。減圧期間PDは、試験体の内部に印加する目標圧力PTを減少する期間である。増圧期間PUは、試験体TPの内部に印加する目標圧力PTを増加する期間である。
【0026】
具体的には、波形設定部211は、圧力セルS2を用いて、減圧期間PDにおける増圧シリンダ131内の作動油の圧力Pの応答特性と、増圧期間PUにおける増圧シリンダ131内の作動油の圧力Pの応答特性と、を測定する。そして、波形設定部211は、減圧期間PDにおける圧力Pの応答特性と、増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性とに基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。比率Rは、例えば、増圧期間PUの長さに対する減圧期間PDの長さを示す。
【0027】
波形設定部211は、例えば、減圧期間PDにおける圧力Pの応答特性として、圧力Pをステップ的に減圧した場合の試験機本体1の応答特性、すなわち、ステップ応答を測定する。また、波形設定部211は、増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、圧力Pをステップ的に増圧した場合の試験機本体1の応答特性、すなわち、ステップ応答を測定する。
そして、波形設定部211は、圧力Pをステップ的に減圧した場合のステップ応答における立ち上がり時間TRD、及び遅れ時間TDDと、圧力Pをステップ的に増圧した場合のステップ応答における立ち上がり時間TRU、及び遅れ時間TDUとを測定する。
以下の説明において、立ち上がり時間TRDと立ち上がり時間TRUとを、立ち上がり時間TRと記載する場合がある。また、遅れ時間TDDと遅れ時間TDUとを、遅れ時間TDと記載する場合がある。
立ち上がり時間TRD、及び立ち上がり時間TRUの各々は、応答が目標値の10%から目標値の90%までに要する時間である。遅れ時間TDD、及び遅れ時間TDUの各々は、応答が目標値の50%になるまでに要する時間である。なお、目標値は、例えば、目標圧力PTに対応する。
【0028】
波形設定部211は、例えば、立ち上がり時間TRD及び立ち上がり時間TRUと、遅れ時間TDD及び遅れ時間TDUと、の少なくとも一方に基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。
例えば、波形設定部211は、立ち上がり時間TRD及び立ち上がり時間TRUに基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。波形設定部211は、例えば、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rが、立ち上がり時間TRDと立ち上がり時間TRUとの比率と一致するように、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さを設定する。
【0029】
また、波形設定部211は、目標圧力PTの周波数FTに基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。
波形設定部211は、例えば、目標圧力PTの周波数FTが大きくなる程、増圧期間PUの長さに対する減圧期間PDの長さの比率Rが大きくなるように、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。
波形設定部211は、例えば、次の式(1)によって、増圧期間PUの長さに対する減圧期間PDの長さの比率Rを設定する。
R=(TRD/TRU)×α(FT) (1)
ここで、関数α(FT)は、目標圧力PTの周波数FTに関する単調増加関数である。
【0030】
ここでは、波形設定部211が、立ち上がり時間TRD及び立ち上がり時間TRUに基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率を設定する場合について説明するが、これに限定されない。波形設定部211が、立ち上がり時間TRD及び立ち上がり時間TRUと、遅れ時間TDD及び遅れ時間TDUと、の少なくとも一方に基づき、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定すればよい。波形設定部211が、例えば、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rが、遅れ時間TDDと遅れ時間TDUとの比率と一致するように、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定してもよい。
【0031】
また、波形設定部211は、減圧期間PD及び増圧期間PUの各々における目標圧力PTの波形を、正弦波の1/2波長で規定する。
具体的には、図2を参照して説明するように、増圧期間PUにおける目標圧力PTの波形を、正弦波の位相が「-(1/2)π」から「(1/2)π」までの1/2波長で規定する。また、減圧期間PDにおける目標圧力PTの波形を、正弦波の位相が「(1/2)π」から「(3/2)π」までの1/2波長で規定する。
【0032】
目標圧力設定部212は、目標圧力PTの周波数FTと、波形設定部211によって設定された目標圧力PTの1周期分の波形とに基づいて、目標圧力PTの波形を設定する。
具体的には、目標圧力PTの周波数FTから、次の式(2)によって、目標圧力PTの周期TTを算出する。
TT=1/FT (2)
そして、波形設定部211によって設定された目標圧力PTの1周期分の波形の長さが、目標圧力PTの周期TTと一致するように、目標圧力PTの1周期分の波形の時間軸を調整する。
そして、目標圧力設定部212は、時間軸の方向に、調整後の1周期分の波形を繰り返し接続することによって、目標圧力PTの波形を設定する。
【0033】
圧力制御部213は、測定圧力PAが目標圧力PTと一致するように、サーボ弁123を制御する。例えば、圧力制御部213は、サーボ弁123をフィードバック制御する。
【0034】
[3.目標圧力、及び測定圧力の1周期分の波形]
次に、図2及び図4を参照して、目標圧力PT、及び測定圧力PAの1周期分の波形について説明する。なお、以下では、実験条件として、目標圧力PTの周波数FTを7Hz、目標圧力PTの最小値を0.5MPa、目標圧力PTの最大値を5MPa、に設定した場合における実験結果の一例について説明する。
【0035】
図4は、従来の目標圧力PT、及び測定圧力PAの一例を示すグラフである。図4の上段のグラフは、目標圧力PTの一例を示し、図4の下段のグラフは、実験結果として得られた測定圧力PAの一例を示す。
図4の上段のグラフ、及び図4の下段のグラフの各々において、横軸は時間T(sec)であり、縦軸は、目標圧力PT(Mpa)又は測定圧力PA(Mpa)である。
また、実験では、図4の上段に示す目標圧力PTを繰り返し印加するように、制御装置2は、サーボ弁123に対して指示を行った。すなわち、実験では、試験体TPに対して、内圧疲労試験を実行した。
【0036】
図4の上段のグラフG21は、目標圧力PTの1周期分の波形を示す。
図4の上段に示すように、時間T21から時間T22までにおいて、目標圧力PTは増加し、時間T22から時間T23までにおいて、目標圧力PTは減少する。換言すれば、時間T21から時間T22までの期間は、増圧期間PU2に対応し、時間T22から時間T23の期間は、減圧期間PD2に対応する。
増圧期間PU2は、従来の目標圧力PTにおける増圧期間PUを示し、減圧期間PD2は、従来の目標圧力PTにおける減圧期間PDを示す。
【0037】
図4に上段に示すように、従来の目標圧力PTでは、増圧期間PU2の長さと、減圧期間PD2の長さとは、同一である。すなわち、目標圧力PTの波形は、正弦波である。
【0038】
図4の下段のグラフG22は、従来の測定圧力PAの1周期分の波形の一例を示す。
区間AR21におけるグラフG22に示すように、従来の測定圧力PAは、増圧期間PU2の初期において、圧力が上昇しない領域が見られた。
また、区間AR22におけるグラフG22に示すように、従来の測定圧力PAは、増圧期間PU2から減圧期間PD2へ移行するときに、測定圧力PAが略一定となる平坦部が発生した。
更に、区間AR33におけるグラフG22に示すように、従来の測定圧力PAは、減圧期間PD2において、測定圧力PAが不規則に増減する振動が発生した。
加えて、従来の目標圧力PTの場合には、実験中のキャビテーションの発生に伴う振動や衝撃音が激しく、時間経過とともに試験の継続が不可能になった。
【0039】
図2は、本実施形態に係る目標圧力PT、及び測定圧力PAの一例を示すグラフである。
図2の上段のグラフは、目標圧力PTの一例を示し、図2の下段のグラフは、測定圧力PAの一例を示す。
図2の上段のグラフ、及び図2の下段のグラフの各々において、横軸は時間T(sec)であり、縦軸は、目標圧力PT(Mpa)又は測定圧力PA(Mpa)である。
また、実験では、図2の上段に示す目標圧力PTを繰り返し印加するように、制御装置2は、サーボ弁123に対して指示を行った。
【0040】
図2の上段のグラフG11は、目標圧力PTの1周期分の波形を示す。
図2の上段に示すように、時間T11から時間T12までにおいて、目標圧力PTは増加し、時間T12から時間T13までにおいて、目標圧力PTは減少する。換言すれば、時間T11から時間T12までの期間は、増圧期間PU1に対応し、時間T12から時間T13の期間は、減圧期間PD1に対応する。
増圧期間PU1は、本実施形態に係る目標圧力PTにおける増圧期間PUを示し、減圧期間PD1は、本実施形態に係る目標圧力PTにおける減圧期間PDを示す。
【0041】
図2に上段に示すように、本実施形態に係る目標圧力PTでは、減圧期間PD2の長さは、増圧期間PU1の長さよりも長い。減圧期間PD2の長さは、増圧期間PU1の長さの約3倍である。
ただし、図1を参照して説明したように、図2に上段に示す目標圧力PTの1周期分の波形において、増圧期間PUにおける目標圧力PTの波形を、正弦波の位相が「-(1/2)π」から「(1/2)π」までの1/2波長で規定する。また、減圧期間PDにおける目標圧力PTの波形を、正弦波の位相が「(1/2)π」から「(3/2)π」までの1/2波長で規定する。
【0042】
図2の下段のグラフG12は、本実施形態に係る測定圧力PAの1周期分の波形の一例を示す。
区間AR11におけるグラフG12に示すように、本実施形態に係る測定圧力PAは、図4の下段のグラフG22に示す従来の測定圧力PAと比較して、増圧期間PU2の初期における圧力が上昇しない領域が大幅に減少した。
また、区間AR12におけるグラフG12に示すように、本実施形態に係る測定圧力PAは、図4の下段のグラフG22に示す従来の測定圧力PAと比較して、増圧期間PU2から減圧期間PD2へ移行するときにおける平坦部の長さが大幅に短縮した。
更に、区間AR13におけるグラフG12に示すように、本実施形態に係る測定圧力PAは、図4の下段のグラフG22に示す従来の測定圧力PAと比較して、減圧期間PD1において、測定圧力PAが不規則に増減する振動の発生する期間が大幅に短縮すると共に、測定圧力PAが不規則に増減する振動の振幅が大幅に減少した。
加えて、本実施形態に係る目標圧力PTの場合には、減圧期間PD1におけるキャビテーションの発生を抑制できたため、試験の継続が可能になった。
【0043】
[4.制御装置の波形設定部の処理]
図3は、制御装置2の波形設定部211の処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、ステップS101において、波形設定部211は、増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、圧力Pをステップ的に増圧した場合の圧力Pの応答特性すなわち、ステップ応答を測定する。
次に、ステップS103において、波形設定部211は、減圧期間PDにおける圧力Pの応答特性として、圧力Pをステップ的に減圧した場合の圧力Pの応答特性、すなわち、ステップ応答を測定する。
【0044】
次に、ステップS105において、波形設定部211は、目標圧力PTの周波数FTを設定する。
次に、ステップS107において、波形設定部211は、増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性、減圧期間PDにおける圧力Pの応答特性、及び、目標圧力PTの周波数FTに基づいて、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。比率Rは、増圧期間PUの長さに対する減圧期間PDの長さを示す。波形設定部211は、例えば、図1を参照して説明した式(1)を用いて、比率Rを算出する。
次に、ステップS109において、波形設定部211は、減圧期間PD及び増圧期間PUの各々における目標圧力PTの波形を、正弦波の1/2波長で規定して、目標圧力PTを設定する。その後、処理が終了する。
【0045】
図1図3を参照して説明したように、波形設定部211は、目標圧力PTの1周期分の波形において、減圧期間PDが増圧期間PUよりも長くなるように、減圧期間PD及び増圧期間PUを設定する。したがって、キャビテーションの発生を効果的に抑制できる。また、低圧側の目標圧力PTに容易に到達できる。
【0046】
また、波形設定部211は、増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性、減圧期間PDにおける圧力Pの応答特性に基づいて、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。よって、比率Rを適正に設定できる。したがって、キャビテーションの発生を効果的に抑制できる。
【0047】
また、波形設定部211は、目標圧力PTの周波数FTに基づいて、減圧期間PDの長さと増圧期間PUの長さとの比率Rを設定する。よって、比率Rを適正に設定できる。したがって、減圧期間PDにおけるキャビテーションの発生を効果的に抑制できる。
【0048】
また、波形設定部211は、減圧期間PDにおける目標圧力PT、及び増圧期間PUにおける目標圧力PTの各々を、正弦波の1/2波長で規定して、目標圧力PTを設定する。よって、増圧期間PUにおける目標圧力PTの波形と減圧期間PDにおける目標圧力PTの波形とを滑らかに接続できる。したがって、増圧期間PUと減圧期間PDとの接続部における振動の発生等を効果的に抑制できる。
【0049】
[5.実施形態と効果]
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0050】
(第1項)
一態様に係る内圧試験機は、試験体に圧力を印加して、前記試験体の強度を測定する内圧試験機であって、前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定する。
【0051】
第1項に記載の内圧試験機によれば、前記試験体の内部に印加する目標圧力を減少する期間である減圧期間が、前記試験体の内部に印加する目標圧力を増加する期間である増圧期間よりも長くなるように、前記減圧期間及び前記増圧期間を設定する。
よって、減圧期間の長さを増圧期間の長さよりも長く設定できる。したがって、減圧期間におけるキャビテーションの発生を抑制できる。また、低圧側の目標圧力に容易に到達できる。
【0052】
(第2項)
第1項に記載の内圧試験機であって、前記試験体の内部に印加される圧力を検出する圧力センサを備え、前記圧力センサを用いて、前記減圧期間における前記圧力の応答特性と、前記増圧期間における前記圧力の応答特性と、を測定し、前記減圧期間における前記圧力の応答特性と、前記増圧期間における前記圧力の応答特性とに基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する。
【0053】
第2項に記載の内圧試験機によれば、前記減圧期間における前記圧力の応答特性と、前記増圧期間における前記圧力の応答特性とに基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する。
よって、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を適正に設定できる。したがって、減圧期間におけるキャビテーションの発生を効果的に抑制できる。
【0054】
(第3項)
第1項又は第2項に記載の内圧試験機であって、前記目標圧力の周波数に基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する。
【0055】
第3項に記載の内圧試験機によれば、前記目標圧力の周波数に基づき、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を設定する。
よって、前記減圧期間の長さと前記増圧期間の長さとの比率を適正に設定できる。したがって、減圧期間におけるキャビテーションの発生を効果的に抑制できる。
【0056】
(第4項)
第1項から第3項のいずれか1項に記載の内圧試験機であって、前記減圧期間、及び前記増圧期間の各々における前記目標圧力の波形を、正弦波の1/2波長で規定する。
【0057】
第4項に記載の内圧試験機によれば、前記減圧期間、及び前記増圧期間の各々における前記目標圧力の波形を、正弦波の1/2波長で規定する。
よって、前記増圧期間における前記目標圧力の波形と前記減圧期間における前記目標圧力の波形とを滑らかに接続できる。したがって、増圧期間と減圧期間との接続部における振動の発生等を効果的に抑制できる。
【0058】
[6.他の実施形態]
なお、本実施形態に係る内圧試験機100は、あくまでも「内圧試験機」の態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
本実施形態では、波形設定部211が、減圧期間PD及び増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、ステップ応答を測定する場合について説明したが、これに限定されない。波形設定部211が、減圧期間PD及び増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、インパルス応答を測定してもよい。
【0059】
本実施形態では、波形設定部211が、減圧期間PD及び増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、立ち上がり時間TR、及び遅れ時間TDを測定する場合について説明したが、これに限定されない。波形設定部211が、例えば、減圧期間PD及び増圧期間PUにおける圧力Pの応答特性として、伝達関数を測定してもよい。
【0060】
また、図1に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアで実現してもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0061】
また、図3に示すフローチャートの処理単位は、制御装置2の波形設定部211の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。図3のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって制限されることはなく、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0062】
また、図1に示した制御装置2の波形設定部211は、制御装置2が備えるプロセッサ21に、制御プログラムPGを実行させることで実現できる。また、この制御プログラムPGは、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、記録媒体は、制御装置2が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。また、制御プログラムPGをサーバ装置等に記憶させておき、サーバ装置から制御装置2に、制御プログラムPGをダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 内圧試験機
1 試験機本体
11 支持構造
12 油圧アクチュエータ
121 油圧シリンダ
122 ピストンロッド
123 サーボ弁
13 増圧器
131 増圧シリンダ
132 プランジャ
15 配管
2 制御装置
21 プロセッサ
22 メモリ
PG 制御プログラム
211 波形設定部
212 目標圧力設定部
213 圧力制御部
221 波形記憶部
3 負荷用油圧源
4 補助油圧源
F 周波数
FT 周波数
HP 配管
P 圧力
PA 測定圧力
PD、PD1、PD2 減圧期間
PT 目標圧力
PU、PU1、PU2 増圧期間
R 比率
S1 変位計
S2 圧力セル(圧力センサ)
T 時間
TD、TDD、TDU 遅れ時間
TP 試験体
TR、TRD、TRU 立ち上がり時間
TT 周期
XA 変位
α 関数
図1
図2
図3
図4