(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車載カメラシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240618BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
H04N23/60 300
H04N23/66
(21)【出願番号】P 2021063502
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄介
(72)【発明者】
【氏名】日比野 克彦
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-112012(JP,A)
【文献】特開2007-166374(JP,A)
【文献】特開2007-164629(JP,A)
【文献】特開2010-130395(JP,A)
【文献】特開2020-072457(JP,A)
【文献】特開2014-187495(JP,A)
【文献】特開2016-001916(JP,A)
【文献】特開2015-177514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0069692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222-5/257、7/00-7/56、23/00、
23/40-23/76、23/90-23/959
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の画像を撮像する車載カメラ(2)を備えた車載カメラシステム(1)の制御装置(3)であって、
前記車載カメラとの間の差動通信の通信状態に基づいて、同差動通信の余裕度を取得する、余裕度取得部(501)と、
前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が制限閾値よりも小さい場合、前記車載カメラとの間の差動通信の通信特性、前記車載カメラによる撮像データを利用するアプリケーション、ならびに、前記車載カメラにおけるフレームレートおよび撮像エリアのうちの、少なくともいずれか1つを制限する、制限決定部(502)と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記制限決定部は、前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が前記制限閾値よりも低閾値である停止閾値よりも小さい場合、前記車載カメラとの間の差動通信を停止する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制限決定部は、前記余裕度が前記制限閾値よりも小さい場合、前記通信特性としての通信レートを低下させる、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記アプリケーションは、相対的に優先度が高い第一アプリケーションと、相対的に優先度が低い第二アプリケーションとを含み、
前記制限決定部は、前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が前記制限閾値よりも小さい場合、前記第二アプリケーションへの前記撮像データの提供を停止する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項5】
前記制限決定部は、前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が前記制限閾値よりも小さい場合、前記第一アプリケーションが動作可能な程度まで前記フレームレートを低下させる、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制限決定部は、前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が前記制限閾値よりも小さい場合、前記第一アプリケーションが動作可能な程度まで前記撮像エリアを縮小する、
請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制限決定部は、前記車載カメラシステムの動作条件に応じて前記制限閾値を可変に設定する、閾値設定部(521)を備えた、
請求項1~6のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項8】
前記制限決定部は、前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が前記制限閾値よりも小さい場合、前記通信特性としての、通信ポート(34)におけるドライブ能力の設定を変更する、
請求項1~7のいずれか1つに記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラシステムとして、LVDS等の差動通信を用いるものが知られている(例えば特許文献1等参照)。LVDSはLow Voltage Differential Signalingの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこの種の車載カメラシステムにおいて、電気的外乱等により差動通信にエラーが生じることがあり得る。特に、かかる車載カメラシステムが車両のADAS関連動作で利用されている場合、差動通信のロバスト性をできる限り向上することが好ましい。ADASはAdvanced Driver-Assistance Systemsの略である。
【0005】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、差動通信のロバスト性が良好な車載カメラシステムを実現可能な、車載カメラシステムの制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の、車載カメラシステム(1)の制御装置(3)は、
車両の周囲の画像を撮像する車載カメラ(2)との間の差動通信の通信状態に基づいて、同差動通信の余裕度を取得する、余裕度取得部(501)と、
前記余裕度取得部にて取得した前記余裕度が制限閾値よりも小さい場合、前記車載カメラとの間の差動通信の通信特性、前記車載カメラによる撮像データを利用するアプリケーション、ならびに、前記車載カメラにおけるフレームレートおよび撮像エリアのうちの、少なくともいずれか1つを制限する、制限決定部(502)と、
を備える。
【0007】
なお、出願書類において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、この場合であっても、かかる参照符号は、各要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車載カメラシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示された制御装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示された制御装置の動作概要を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示された制御装置の動作概要を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中ではなく、その後にまとめて説明する。
【0010】
(システム構成)
図1を参照すると、車載カメラシステム1は、車載カメラ2と制御装置3とを備えている。車載カメラ2は、車両の周囲の画像を撮像するように、当該車両に搭載されている。車載カメラ2と制御装置3とは、通信ケーブル4を介して電気接続されている。
【0011】
本実施形態においては、車載カメラシステム1は、PoCと称される伝送技術により、一本の同軸ケーブルである通信ケーブル4を介して、車載カメラ2と制御装置3との間の信号伝送および電源供給を実現するように構成されている。PoCはPower over Coaxialの略である。また、車載カメラシステム1は、車載カメラ2と制御装置3との間での信号伝送を、LVDSにより実現するように構成されている。
【0012】
制御装置3は、車載ネットワーク回線10を介して、第一アプリケーション11、第二アプリケーション12、第三アプリケーション13、等の、車載カメラ2による撮像データを利用する各種アプリケーションとの間で情報通信可能に接続されている。「アプリケーション」は、車両における各種動作を実行するモジュール、あるいは、これに実装されたソフトウェアである。「各種動作」は、例えば、衝突回避、自動操舵、等の、ADAS関連動作である。制御装置3は、車載カメラ2による撮像動作を制御するとともに、車載カメラ2により生成された撮像データを処理して上記の各種アプリケーションに提供するように設けられている。
【0013】
(車載カメラ)
図示の簡略化のため、
図1は、車載カメラ2における、LVDS通信関連の構成のみを抜き出して図示しており、撮像関連の構成(例えば撮像素子および光学系等)については図示を省略している。同様に、
図1においては、LVDS通信ICとPoCフィルタとの間のキャパシタ成分およびインダクタ成分は、図示が省略されている。
【0014】
図1に示されているように、車載カメラ2は、LVDS通信ICであるカメラ側通信IC21と、PoCフィルタであるカメラ側フィルタ22と、電源ICであるパワーレギュレータIC23とを備えている。カメラ側通信IC21は、制御装置3から出力された制御信号を、カメラ側フィルタ22を介して受信するように設けられている。すなわち、車載カメラ2は、制御装置3から受信した制御信号にて設定されたフレームレートおよび撮像エリア等の動作条件により、撮像データを生成するように構成されている。パワーレギュレータIC23は、制御装置3から通信ケーブル4およびカメラ側フィルタ22を介して供給された電源電圧を降圧して、カメラ側通信IC21に作動電源を供給するように設けられている。
【0015】
(制御装置)
制御装置3は、LVDS通信ICであるコントローラ側通信IC31と、PoCフィルタであるコントローラ側フィルタ32と、MCUである制御IC33と、電源ICであるパワーソースIC34とを備えている。MCUはMicro Controller Unitの略である。コントローラ側通信IC31および制御IC33は、パワーソースIC34により作動電源の供給を受けることで動作するようになっている。パワーソースIC34は、コントローラ側フィルタ32および通信ケーブル4を介して、車載カメラ2に電源供給するようになっている。
【0016】
コントローラ側通信IC31は、LVDS通信用の入出力ポートである通信ポート311を有している。すなわち、コントローラ側通信IC31は、通信ポート311にて、コントローラ側フィルタ32と信号通信可能に接続されている。
【0017】
制御IC33は、CPU、ROM、RAM、不揮発メモリ、等を備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータとしての構成を有していて、車載カメラシステム1の全体の動作を制御するように構成されている。不揮発メモリは、不揮発性リライタブルメモリであって、例えば、EEPROM等である。EEPROMはElectronically Erasable and Programmable ROMの略である。ROMおよび不揮発メモリは、プログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に相当するものである。
【0018】
制御IC33は、CPUがROMまたは不揮発メモリからプログラムを読み出して実行することで、各種の制御動作を実現可能に構成されている。このプログラムには、後述の動作説明あるいはフローチャートに対応する処理指令が含まれている。また、RAMおよび/または不揮発メモリは、CPUがプログラムを実行する際の処理データを一時的に格納可能に設けられている。さらに、ROMおよび/または不揮発メモリには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータが、あらかじめ格納されている。かかる各種のデータは、例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ、等である。
【0019】
図2は、
図1に示された制御IC33にてプログラムの実行により実現される機能構成を概略的に示す。具体的には、制御IC33は、かかる機能構成として、余裕度取得部501と、制限決定部502と、フレームレート設定部503と、撮像エリア設定部504と、通信特性設定部505と、アプリケーション設定部506とを有している。
【0020】
余裕度取得部501は、車載カメラ2との間の差動通信の通信状態に基づいて、通信余裕度を取得するようになっている。「通信余裕度」は、車載カメラ2と制御装置3との間の差動通信の余裕度であって、電気的外乱、振動、温度変化、等の外的要因に対する差動通信のロバスト性である。通信余裕度は、差動通信波形、スルーレート、セトリングタイム、ホールドタイム、ビットエラー率、誤り訂正率、等の各種パラメータのうちの少なくとも1つを用いて、測定すなわち算出することが可能である。具体的には、通信余裕度は、例えば、上記の各要因が標準値である状態を基準値とし、ロバスト性が低くなるほど小さくなる数値である。
【0021】
制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、車載カメラ2との間の差動通信の通信特性、アプリケーション、フレームレート、および撮像エリアのうちの、少なくともいずれか1つを制限するようになっている。「通信特性」は、通信レート、および、通信ポート311におけるドライブ能力を含む。具体的には、本実施形態においては、制限決定部502は、閾値設定部521と判定部522とを有している。
【0022】
閾値設定部521は、車載カメラシステム1の動作条件に応じて、制限閾値を可変に設定するようになっている。制限閾値の設定に用いられる動作条件パラメータは、例えば、温度、バッテリ電圧、製品供給電圧、走行状態、等のうちの少なくとも1つである。「バッテリ電圧」は、車載カメラシステム1の電源を供給するように車両に搭載された、不図示のバッテリの端子間電圧である。「製品供給電圧」は、車載カメラシステム1すなわち制御装置3に供給される電源電圧である。「走行状態」は、例えば、車速等である。
【0023】
判定部522は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度と、閾値設定部521にて設定した制限閾値とを比較することで、制限処理を実行するか否かを判定するようになっている。「制限処理」は、通信特性、アプリケーション、フレームレート、および撮像エリアのうちの、少なくともいずれか1つを制限する処理である。
【0024】
フレームレート設定部503は、車載カメラ2におけるフレームレートを設定するようになっている。撮像エリア設定部504は、車載カメラ2における撮像エリアを設定するようになっている。通信特性設定部505は、車載カメラ2との間の差動通信の通信特性を設定するようになっている。アプリケーション設定部506は、車載カメラ2による撮像データを利用するアプリケーションを設定するようになっている。
【0025】
(動作)
以下、本実施形態に係る制御装置3の動作の概要、ならびに、制御装置3により実行される制御方法および制御プログラムの概要を、これらにより奏される効果とともに、
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に係る制御装置3の構成と、これにより実行される制御方法および制御プログラムの処理とを、「本実施形態」と総称することがある。
【0026】
本実施形態においては、制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、通信特性としての通信レートを低下させる。また、制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、相対的に優先度が高いアプリケーションへの撮像データの提供を確保すべく、相対的に優先度が低いアプリケーションへの撮像データの提供を停止する。
【0027】
具体的には、例えば、第一アプリケーション11が、最高優先度のアプリケーション(例えば、衝突回避制御、障害物検知、等。)であるものとする。また、第二アプリケーション12が、二番目の優先度のアプリケーション(例えば自動操舵あるいは車線逸脱防止支援のための白線認識)であるものとする。また、第三アプリケーション13が、三番目の優先度のアプリケーション(例えばヘッドアップディスプレイ用の制限速度標識の認識)であるものとする。この例においては、制限決定部502は、通信余裕度が小さい場合、第二アプリケーション12および第三アプリケーション13の停止を前提に、第二アプリケーション12および第三アプリケーション13への撮像データの提供を停止する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る一動作例を示すフローチャートである。
図3において、「S」は「ステップ」を略記したものである。また、制御IC33に備えられたCPU、ROM、不揮発メモリを、それぞれ、以下単に「CPU」、「ROM」、「不揮発メモリ」と略称する。
【0029】
CPUは、ROMまたは不揮発メモリから
図3に示されているルーチンに相当するプログラムを読み出して、かかるルーチンを所定時間間隔で繰り返し起動する。かかるルーチンが起動されると、まず、ステップ301にて、CPUは、車載カメラ2と制御装置3との間での差動通信を実施する。次に、ステップ302にて、CPUは、ステップ301における差動通信の通信状態に基づいて、通信余裕度を取得する。
【0030】
通信余裕度は、例えば、
図4に示されているような差動通信における電圧波形に基づいて測定すなわち算出することが可能である。具体的には、通信余裕度の測定値は、電圧波形に形成された略六角形状の閉空間の面積(
図4におけるSv参照)と、他の特性値Pとをパラメータとする、計算式、マップ、あるいはルックアップテーブルを用いて、以下のように取得される:M=F(Sv,P)。Mは通信余裕度である。Fは計算式、マップ、あるいはルックアップテーブルを示す。Pは、差動電圧、スルーレート、セトリングタイム、ホールドタイム、ビットエラー率、誤り訂正率、等のうちの少なくとも1つである。Svが大きいほど、差動電圧が高いほど、スルーレート、セトリングタイム、ホールドタイムが大きいほど、ビットエラー率、誤り訂正率が低いほど、Mの値は大きくなる。
【0031】
続いて、ステップ303にて、CPUは、通信余裕度の測定値と制限閾値とを用いて、正常判定を行う。すなわち、まず、CPUは、車載カメラシステム1の動作条件に応じて、制限閾値を設定する。具体的には、CPUは、温度、バッテリ電圧、製品供給電圧、車速、等のうちの少なくとも1つをパラメータとする、計算式、マップ、あるいはルックアップテーブルを用いて、制限閾値を設定する。例えば、温度が常温から離れるほど、制限閾値は小さく設定される。また、電圧が正常時の所定電圧から低下するほど、制限閾値は小さく設定される。さらに、車速が通常想定される車速域から離れるほど(すなわち想定以上に高速であるほど)、制限閾値は小さく設定される。そして、CPUは、通信余裕度の測定値が制限閾値以上であるか否かを判定する。
【0032】
通信余裕度の測定値が制限閾値未満である場合(すなわちステップ303=NO)、CPUは、ステップ304の処理を実行した後、本ルーチンを一旦終了する。ステップ304にて、CPUは、通信レートを低下させるとともに、相対的に優先度が低いアプリケーションへの撮像データの提供を停止する。これに対し、通信余裕度の測定値が制限閾値以上である場合(すなわちステップ303=YES)、CPUは、ステップ304の処理をスキップして、本ルーチンを一旦終了する。
【0033】
このように、本実施形態は、画像データの生成および差動通信を実行しながら、通信余裕度を測定する。そして、本実施形態は、測定した通信余裕度に応じて、通信レートを設定するとともに、画像データを提供すべきアプリケーションを設定する。これにより、車載カメラシステム1の信頼性が良好に確保され得る。すなわち、本実施形態によれば、差動通信のロバスト性が良好な車載カメラシステム1を実現可能な、制御装置3を提供することが可能となる。
【0034】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、相互に同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0035】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、例えば、本発明は、PoCに限定されず、PoDLにも適用され得る。PoDLはPower over Data Linesの略である。また、差動伝送の種類も、LVDSに限定されない。
【0036】
図1に示された構成例においては、車載カメラシステム1すなわち制御装置3は、車載ネットワーク回線10を介して、3つのアプリケーションすなわち第一アプリケーション11~第三アプリケーション13に接続されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、アプリケーションは、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0037】
上記実施形態において、制御装置3は、CPUがROM等からプログラムを読み出して起動する、いわゆる車載マイクロコンピュータとしての構成を有していた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。具体的には、例えば、制御装置3の全部または一部は、上記のような動作を可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。よって、制御装置3において、車載マイクロコンピュータ部分とデジタル回路部分とは併存し得る。
【0038】
上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本発明に係るプログラムは、V2X通信を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、自車両の製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0039】
このように、上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされた、プロセッサおよびメモリを含む専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用論理回路によって提供された専用ハードウエアにより、実現されてもよい。
【0040】
あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと、一つ以上の論理回路によって構成されたハードウエアとの組み合わせにより構成された、一つ以上の専用処理装置により、実現されてもよい。
【0041】
コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶され得る。すなわち、上記の各機能構成および方法は、これを実現するための処理あるいは手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0042】
制限閾値は、車載カメラシステム1の動作条件にかかわらず一定値であってもよい。すなわち、
図2に示された閾値設定部521は、省略可能である。
【0043】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な動作態様あるいは処理態様に限定されない。すなわち、例えば、制限決定部502は、通信余裕度が小さい場合、通信レートを低下させる一方、車載カメラ2による撮像データを利用するアプリケーションには制限を設けなくてもよい。あるいは、例えば、制限決定部502は、通信余裕度が小さい場合、相対的に優先度が低いアプリケーションへの撮像データの提供を停止すれば、通信レートは低下させなくてもよい。
【0044】
制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも低閾値である停止閾値よりも小さい場合、車載カメラ2との間の差動通信を停止してもよい。これにより、誤通信の発生が良好に防止され得る。
【0045】
制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、通信レートを低下させることに代えて、あるいはこれとともに、フレームレートを低下させてもよい。具体的には、例えば、制限決定部502は、通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、優先度が相対的に高いアプリケーション(例えば第一アプリケーション11)が動作可能な程度までフレームレートを低下させてもよい。これにより、優先度が相対的に高いアプリケーションの実行が、良好に確保され得る。
【0046】
制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、アプリケーションを制限することに代えて、あるいはこれとともに、撮像エリアを制限すなわち縮小してもよい。具体的には、例えば、制限決定部502は、通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、優先度が相対的に高いアプリケーション(例えば第一アプリケーション11)が動作可能な程度まで撮像エリアを縮小してもよい。これにより、優先度が相対的に高いアプリケーションの実行が、良好に確保され得る。
【0047】
制限決定部502は、余裕度取得部501にて取得した通信余裕度が制限閾値よりも小さい場合、通信特性としての、通信ポート311におけるドライブ能力の設定を変更してもよい。具体的には、例えば、通信余裕度が小さくなる原因は、通信負荷の過多、温度上昇、経年劣化により、セトリングタイム、ホールドタイム、等が悪化することである場合が多い。この場合、ドライブ能力を上げることで、通信余裕度を向上することができる。一方、通信余裕度が小さい原因が、通信による電源ノイズ等である場合、通信速度の許す範囲でドライブ能力を下げることで、通信余裕度を向上することができる。
【0048】
制限決定部502は、測定した通信余裕度に応じて、アプリケーションの制限数を段階的に変化させてもよい。
【0049】
「閾値以上」と「閾値を超える」とは、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜置換可能である。同様に、「閾値以下」と「閾値未満」とは、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜置換可能である。
【0050】
「取得」、「推定」、「検出」、「検知」、「算出」、「抽出」、「生成」、等の、相互に類似する表現は、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜置換可能である。
【0051】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0052】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。さらに、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0053】
1 車載カメラシステム
2 車載カメラ
3 制御装置
501 余裕度取得部
502 制限決定部
521 閾値設定部
503 フレームレート設定部
504 撮像エリア設定部
505 通信特性設定部
506 アプリケーション設定部