(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】取付治具及び温度検出装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240618BHJP
F16D 51/18 20060101ALI20240618BHJP
F16D 65/06 20060101ALI20240618BHJP
F16D 66/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K1/14 E
F16D51/18
F16D65/06 H
F16D66/00 A
(21)【出願番号】P 2021064740
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸直
(72)【発明者】
【氏名】奥村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 康宏
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185003(JP,A)
【文献】特開2019-184420(JP,A)
【文献】実開昭52-019581(JP,U)
【文献】特開2018-184095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドラムブレーキ(3)のブレーキシュー(5)に、温度センサ(7)を取り付けるための取付治具(9)であって、
前記ブレーキシューのブレーキライニング(11)が取り付けられる板状のリム部(19)に、弾性力により挟み込むようにして装着可能なセンサ固定部(41)を備えており、
前記センサ固定部は、前記リム部に設けられた規制部(97、97L、97R)に係止するように構成された係止部(53、55)を備え、
前記規制部は、前記リム部の前記ブレーキライニングと反対側の内周面側に開口する凹部又は貫通孔(81)、或いは、前記リム部に取り付けられた部品(83)において前記リム部の前記内周面側に開口する凹部(97L、97R)又は貫通孔であり、
前記係止部は、前記リム部の前記内周面側に配置されるとともに、前記係止部の先端には、前記凹部又は前記貫通孔に嵌まるように前記リム部側に突出する突部を備えており、
前記係止部
の前記突部が、前記
凹部又は前記貫通孔に嵌って係止
されることによって、前記ドラムブレーキのブレーキドラム(13)の中心軸方向において前記取付治具の前記リム部から外れる側への移動を規制するように構成された、
取付治具。
【請求項2】
請求項1に記載の取付治具であって、
前記係止部は、長尺の板状の部材である、
取付治具。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の取付治具であって、
前記係止部は、帯状の部材である、
取付治具。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の取付治具であって、
前記センサ固定部は、前記ブレーキシューの前記規制部に係止する前記係止部とは別に、前記ブレーキシュー
とは異なる型式の他のブレーキシュー(101)の他のリム部(103)に設けられた他の規制部(113L、113R)に係止可能な他の係止部(57、59)を備え、
前記他の係止部は、前記センサ固定部が前記他のブレーキシューに装着された場合に、当該他のブレーキシューの前記他の規制部に係止して、前記取付治具の前記他のブレーキシューの前記他のリム部から外れる側への移動を規制するように構成されている、
取付治具。
【請求項5】
請求項
4に記載の取付治具であって、
前記他の係止部は、前記センサ固定部が前記ブレーキシューに装着された場合に、当該ブレーキシューの前記規制部に係止しないように構成されている、
取付治具。
【請求項6】
車両のドラムブレーキ(3)のブレーキシュー(5)に、温度センサ(7)を取り付けるための取付治具(9)であって、
前記ブレーキシューのブレーキライニング(11)が取り付けられる板状のリム部(19)に、弾性力により挟み込むようにして装着可能なセンサ固定部(41)を備えており、
前記センサ固定部は、前記リム部に設けられた規制部(97、97L、97R)に係止するように構成された係止部(53、55)を備え、
前記係止部は、前記規制部に係止することによって、前記ドラムブレーキのブレーキドラム(13)の中心軸方向において前記取付治具の前記リム部から外れる側への移動を規制するように構成され、
前記規制部は、前記リム部の前記ブレーキライニングと反対側の内周面より前記中心軸側に突出した凸部である、
取付治具。
【請求項7】
請求項6に記載の取付治具であって、
前記係止部は、前記リム部の前記内周面に沿って伸びる板状の部材である、
取付治具。
【請求項8】
車両のドラムブレーキ(3)のブレーキシュー(5)に、温度センサ(7)を取り付けるための取付治具(9)であって、
前記ブレーキシューのブレーキライニング(11)が取り付けられる板状のリム部(19)に、弾性力により挟み込むようにして装着可能なセンサ固定部(41)を備えており、
前記センサ固定部は、前記リム部に設けられた規制部(97、97L、97R)に係止するように構成された係止部(53、55)を備え、
前記係止部は、前記規制部に係止することによって、前記ドラムブレーキのブレーキドラム(13)の中心軸方向において前記取付治具の前記リム部から外れる側への移動を規制するように構成され、
前記センサ固定部は、前記ブレーキシューの前記規制部に係止する前記係止部とは別に、前記ブレーキシューとは異なる型式の他のブレーキシュー(101)の他のリム部(103)に設けられた他の規制部(113L、113R)に係止可能な他の係止部(57、59)を備え、
前記他の係止部は、前記センサ固定部が前記他のブレーキシューに装着された場合に、当該他のブレーキシューの前記他の規制部に係止して、前記取付治具の前記他のブレーキシューの前記他のリム部から外れる側への移動を規制するように構成されている、
取付治具。
【請求項9】
請求項8に記載の取付治具であって、
前記他の係止部は、前記センサ固定部が前記ブレーキシューに装着された場合に、当該ブレーキシューの前記規制部に係止しないように構成されている、
取付治具。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の取付治具であって、
前記規制部は、前記リム部の前記ブレーキライニングと反対側の内周面(19b)側に設けられている、
取付治具。
【請求項11】
請求項10に記載の取付治具であって、
前記規制部は、前記リム部の前記内周面側に開口する凹部又は貫通孔(81)、或いは、前記リム部に取り付けられた部品(83)において前記リム部の前記内周面側に開口する凹部(97L、97R)又は貫通孔である、
取付治具。
【請求項12】
請求項11に記載の取付治具であって、
前記係止部は、前記凹部又は前記貫通孔に嵌まる突部(53a、55a)を備えた、
取付治具。
【請求項13】
請求項12に記載の取付治具であって、
前記突部は、前記凹部又は前記貫通孔が設けられた前記リム部側に向かって突出する形状を有する、
取付治具。
【請求項14】
請求項1から請求項
13までのいずれか1項に記載の取付治具及び温度センサを備える温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドラムブレーキの異常を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック、バス及びトレーラ等の車両で使用されるドラムブレーキのブレーキシューに取り付けられた温度センサを用いて、ドラムブレーキ機構や軸受け機構の調整不良によって高温が発生する異常状態を検出する異常検出装置が知られている。
【0003】
ドラムブレーキのブレーキシューに取り付けられるブレーキライニングは、ドラムブレーキの使用によって摩耗するため、定期点検又は定期交換が行われる。この定期点検又は定期交換の際には、温度センサが容易に取り外し及び取り付けできることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、ブレーキシューに対して温度センサを容易に着脱可能に取り付けることができる取付治具が開示されている。この取付治具は、ブレーキシューにおけるブレーキライニングが取り付けられる板状のリム部を、板バネの弾性力により挟み込むことによって、自身をブレーキシューに対して装着するセンサ固定部を有している。
【0005】
なお、ドラムブレーキの中心軸方向(即ち、ブレーキドラムの中心軸方向)における一方の側には、ドラムブレーキの保護等の目的でバックプレートが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、従来の技術について、下記のような課題が見出された。
取付治具のセンサ固定部を、ブレーキシューのリム部(例えば、バックプレート側の端部)に、板バネの弾性力を利用して取り付ける場合には、車両の走行時の振動によって、取付治具が動く恐れがある。
【0008】
つまり、板バネに、開き方向の力と温度センサの中心軸方向(即ち、ドラムブレーキの中心軸方向)の力とが同時に加わった場合には、取付治具が中心軸方向に動く恐れがある。
【0009】
詳しくは、取付治具に対して、例えばバックプレート側に移動させる力が加わった場合には、取付治具が移動し、バックプレート等と干渉して摩耗する恐れがあり、そのような場合には、取付治具の寿命の低下を招く可能性がある。
【0010】
本開示の一局面は、取付治具が、バックプレートのような周囲の部材に干渉することを抑制して、取付治具の寿命を向上させることができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、車両のドラムブレーキ(3)のブレーキシュー(5)に温度センサ(7)を取り付けるための取付治具である。
この取付治具は、前記ブレーキシューのブレーキライニング(11)が取り付けられる板状のリム部(19)に、弾性力により挟み込むようにして装着可能なセンサ固定部(41)を備える。
【0012】
前記センサ固定部は、前記リム部に設けられた規制部(97、97L、97R)に係止するように構成された係止部(53、55)を備えている。
前記係止部は、前記規制部に係止することによって、前記ドラムブレーキのブレーキドラム(13)の中心軸方向において前記取付治具の前記リム部から外れる側への移動を規制するように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、取付治具が、バックプレートのような周囲の部材に干渉することを抑制できるので、取付治具の寿命を向上させることができる。
詳しくは、上述した弾性力により挟み込む構造のセンサ固定部を備えた取付治具では、車両の走行時の振動によって、センサ固定部に、例えば板バネを開く方向のような挟み込みを弱めるような力と、ブレーキドラムの中心軸方向の力(即ち、取付治具がリム部から外れる方向の力)と、が同時に加わった場合には、取付治具がリム部から外れる方向に動く恐れがある。
【0014】
しかし、本開示では、そのような場合には、センサ固定部の係止部がリム部の規制部に係止するので、取付治具が、リム部から外れる方向、即ち、バックプレート等のようなリム部の周囲の部材(即ち、側方の部材)側に移動することを規制できる。つまり、取付治具自身のリム部から離脱する方向への移動を規制できる。
【0015】
このように、本開示では、取付治具の外れる方向への移動を規制できるので、取付治具がバックプレート等の側方の部材と干渉して摩耗することを抑制できる。その結果、取付治具の寿命の低下を抑制できるという効果を奏する。
【0016】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の外観図である。
【
図3】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の正面図である。
【
図4】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図3のIV-IV断面図)である。
【
図8】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図9のVIII-VIII断面図)である。
【
図9】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の上面図である。
【
図10】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図9のX-X断面図)である。
【
図11】大径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図9のXI-XI断面図)である。
【
図13】小径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の外観図である。
【
図14】小径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の上面図である。
【
図15】小径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図14のXV-XV断面図)である。
【
図16】小径用のブレーキシューに取付けられた状態の第1実施形態の温度検出装置の断面図(
図14のXVI-XVI断面図)である。
【
図21】第2実施形態の取付治具の取付方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.概要]
図1に示すように、温度検出装置1は、トラック、バス及びトレーラ等の車両に搭載されるドラムブレーキ3のブレーキシュー5に設けられる。
【0019】
温度検出装置1は、温度センサ7と、温度センサ7をブレーキシュー5に着脱可能に装着する取付治具(即ち、固定ブラケット)9と、を備える。この温度検出装置1は、ブレーキシュー5の温度を検出することによって、ブレーキライニング11の摩耗及びブレーキ過熱等のブレーキの異常を検出するために用いられる。
【0020】
[1-2.ドラムブレーキ]
まず、温度検出装置1の取り付け対象となるドラムブレーキ3の構成を説明する。
図2に示すように、ドラムブレーキ3は、ブレーキドラム13と、ブレーキシュー5と、ブレーキライニング11と、Sカム15と、リターンスプリング17と、を備える。
【0021】
ブレーキシュー5は、リム部19と、補強部21と、を有する。リム部19は、長尺な板状の部材であって、その長手方向に沿って円弧状に湾曲した部材である。補強部21は、リム部19の凹面(即ち、ブレーキライニング11と反対側の内周面19b)から垂直に突出し、リム部19の長手方向に直交する直交方向(即ち、幅方向)の中央においてリム部19の長手方向に沿って形成された板状の部材である。つまり、ブレーキシュー5は、リム部19の直交方向に沿って切断した断面形状がT字状となるように構成されている。
【0022】
ブレーキシュー5は、1つのドラムブレーキ3に2つ設けられる。一対のブレーキシュー5は、リム部19の凸面(即ち、外周面19c)側が、ブレーキドラム13の内周壁と一定の隙間を空けて対向する位置に配置されるように、それぞれの一端が、アンカピン23によって回動自在に軸支されている。以下では、ブレーキシュー5において、アンカピン23によって軸支されている端部とは反対側の端部を開放端という。
【0023】
ブレーキライニング11は、ブレーキシュー5に取り付けられる。具体的には、リム部19の凸面(即ち、ブレーキドラム13の内周壁と対向する外周面19c)側に取り付けられる。ブレーキライニング11は、ブレーキシュー5によって、ブレーキドラム13の内周壁に押さえつけられることによって制動力を発生させる。ブレーキライニング11は、各ブレーキシュー5に対して2つずつ取り付けられる。
【0024】
ここでは、同じブレーキシュー5に取り付けられる2つのブレーキライニング11は、両者の間にブレーキシュー5が露出する間隙25が形成されるように、数mm~十数mm程度離して配置される。
【0025】
なお、後述するように、取付治具9は、一対のブレーキライニング11の間隙25を利用して、ブレーキシュー5に取り付けられる。
Sカム15は、一対のブレーキシュー5の開放端にそれぞれ接触する回動自在に取り付けられたS字状の部材である。そして、ブレーキペダルが踏み込まれると、アクチュエータ26が、一対のブレーキシュー5の開放端の間を広げる方向、すなわち、ブレーキライニング11をブレーキドラム13に押し付ける方向に、Sカム15を回動させる。これにより、ブレーキライニング11と回転するブレーキドラム13との間で発生する摩擦力によって制動が行われる。
【0026】
リターンスプリング17は、一対のブレーキシュー5の開放端の間に接続される。そして、ブレーキペダルの踏み込みが解除されると、アクチュエータ26が、一対のブレーキシュー5の開放端の間を狭める方向に、Sカム15を回動させる。その結果、リターンスプリング17の付勢力により、ブレーキライニング11は、ブレーキドラム13とは隙間を空けた位置に保持されることで制動が解除される。
【0027】
[1-3.温度検出装置の構成]
次に、温度検出装置1の構成を説明する。
図3及び
図4に示すように、温度検出装置1は、温度センサ7と、取付治具9と、を備える。
【0028】
なお、以下の説明では、
図3及び
図4における縦方向(即ち、Z軸方向)を上下方向と表現し、
図3における横方向(即ち、X軸方向)を左右方向と表現し、
図4における横方向(即ち、Y軸方向)を前後方向と表現する。なお、本第1実施形態の取付治具9は、左右対称形状である。
【0029】
温度センサ7は、取付治具9によりブレーキシュー5に取り付けられ、ブレーキシュー5の温度を検出する。温度センサ7は、2箇所で屈曲した棒状の部材であり、後端側の直線状の検知部27と、検知部27の前端側から屈曲して伸びる延長部29と、を備えている。なお、延長部29の右端側には、円柱状の接続部31が接続されており、この接続部31には、リード部33(例えば、
図1参照)が接続されている。
【0030】
温度センサ7のうち、検知部27及び延長部29は、金属製の円筒状部材に覆われ、その断面の外形形状が円形状である。検知部27は、その内部に温度によって電気的特性が変化する感温部を有する。
【0031】
[1-4.取付治具の構成]
次に、取付治具9について説明する。
図5~
図7に示すように、取付治具9は、単一の金属板をS字状に加工した板状部材である。
【0032】
この取付治具9は、リム部19を上下方向(例えば、
図4参照)から挟み込むように、略U字状に湾曲した部分であるセンサ固定部41と、温度センサ7の延長部29等を保持するために、センサ固定部41の前端から上方へ延びる部分である補助固定部43と、を備える。
【0033】
センサ固定部41(詳しくは、後述する弾性保持部51)は、リム部19を挟み込むための互いに対向する内面同士の間隔が、後端から前方へ向かって狭くなる、いわゆるクリップのような形状である。具体的には、後端部付近の間隔がリム部19の板厚よりも広く、前端部付近の間隔がリム部19の板厚よりも狭くなるように設計されている。このため、センサ固定部41は、リム部19を弾性力(即ち、バネ力)により挟み込むように装着可能である。
【0034】
詳しくは、センサ固定部41は、センサ固定部41の中央部分を構成する略板状の中央部45と、中央部45の後端の左右の端部に設けられた第1フック47及び第2フック49と、中央部45の後端の中央部分に設けられた弾性保持部51と、中央部45の左右の端部にそれぞれ設けられた第1係止部53及び第2係止部55と、中央部45の左右の端部において第1係止部53及び第2係止部55より前側にてそれぞれ設けられた第3係止部57及び第4係止部59と、を有する。
【0035】
中央部45は、XY平面に沿って配置された板状の第1板部61と第2板部63と第3板部65とを備える。第1板部61及び第2板部63は前後方向に平行に延びる長尺の板材であり、第3板部65は、第1板部61及び第2板部63の後端側をつなぐ板材である。
【0036】
第1板部61と第2板部63との間には、第1板部61と第2板部63とをつなぐように、板状のカバー部67が設けられている。このカバー部67は、後述するように、温度センサ7の検知部27の上側を覆って検知部27を固定する部材であり、検知部27の外形に沿って、半円状に上方に湾曲している。
【0037】
なお、カバー部67と第3板部65との間には、検知部27の先端が露出する貫通孔69が設けられている。
第1フック47及び第2フック49は、中央部45の後端の左右の端部より後端側に延びる長尺の板状の部材(即ち、帯状の部材)であり、その先端には、それぞれ下方に突出する突起47a、49aが設けられている。
【0038】
この突起47a、49aは、リム部19の後端側の側面19a(例えば、
図3、
図4参照)に係止して、取付治具9の前方への所定以上の移動を規制するものである。
なお、ここで係止とは、ある部材が他の部材に接触して、互いの移動を規制することを示す。例えば、ある部材が固定されている場合には、他の部材がある部材に接触して、それ以上の移動が制限される場合などを示す。
【0039】
弾性保持部51は、中央部45の後端から上方に曲がって後端側に延びるとともに(例えば、
図6参照)、途中で湾曲して、前方に延びる長尺の板状の部材(即ち、帯状の部材)である。
【0040】
この弾性保持部51は、
図4に示すように、自身と中央部45との間にリム部19を挟むことにより、自身の弾性力によって、取付治具9をリム部19に固定する部材である。
つまり、弾性保持部51は、上述したように、中央部45との間でリム部19を挟み込むために、中央部45と弾性保持部51の互いに対向する内面同士の間隔が、後端から前方へ向かって狭くなる、いわゆるクリップのような形状である。このため、弾性保持部51は、リム部19を弾性力により挟み込むように装着可能である。
【0041】
第1係止部53と第2係止部55とは、
図7に示すように、中央部45の左右にて左右対称に形成されている長尺の板状の部材(即ち、帯状の部材)である。つまり、第1係止部53は、中央部45の左端から左側に延びており、一方、第2係止部55は、中央部45の右端から右側に延びている。
【0042】
詳しくは、第1係止部53は、中央部45の左端から上方に曲がってから左側に延びており、その左端から下方に突出する突部53aを有している。一方、第2係止部55は、中央部45の右端から上方に曲がってから右側に延びており、その右端から下方に突出する突部55aを有している。
【0043】
この第1係止部53の突部53aと第2係止部55の突部55aとの各先端は、取付治具9をリム部19に取り付けた際に、リム部19の内周面19bに接しない高さに設定されている。
【0044】
また、後述するように、第1係止部53及び第2係止部55は、所定の型式のブレーキシュー5において、そのリム部19側の後述する規制部に係止するように構成されている。
【0045】
所定の型式のブレーキシュー5としては、例えば、大径(例えば、20インチ)のブレーキドラム用のブレーキシュー5(以下、大径用のブレーキシュー5と称することがある)が挙げられる。なお、
図1~
図4では、大径用のブレーキシュー5を例に挙げている。
【0046】
一方、第3係止部57及び第4係止部59は、その大きさや形状等は、第1係止部53及び第2係止部55とは多少異なるものの、基本的な構成は、第1係止部53及び第2係止部55と同様である。
【0047】
つまり、第3係止部57は、中央部45の左端から上方に曲がってから左側に延びており、その左端から下方に突出する突部57aを有している。一方、第4係止部59は、中央部45の右端から上方に曲がってから右側に延びており、その右端から下方に突出する突部59aを有している。
【0048】
また、
図7の左右方向において、第3係止部57は第1係止部53より短く、第4係止部59は第2係止部55より短い。つまり、第3係止部57の左端は第1係止部53の左端より右側にあり、第4係止部59の右端は第2係止部55の右端より左側にある。
【0049】
この第3係止部57の突部57aと第4係止部59の突部59aは、
図8に示すように、取付治具9が大径用のブレーキシュー5に装着された場合には、大径用のブレーキシュー5のリム部19の内周面19bに接触しないように構成されている。
【0050】
なお、後述するように(例えば、
図13参照)、第3係止部57の突部57aと第4係止部59の突部59aは、前記所定の型式とは異なる他の型式のブレーキシュー101の規制部に係止するものである。他の型式のブレーキシュー101としては、例えば、小径(例えば、15インチ)のブレーキドラム用のブレーキシュー101(以下、小径用のブレーキシュー101と称することがある)が挙げられる。
【0051】
一方、補助固定部43は、
図5~
図7に示すように、中央部45の前端から中央部45に対して垂直に上方に延びる垂直部71と、垂直部71の上端から左右に延びる平行部73と、平行部73の左右の両端から平行部73に垂直に延びる保持部75、77と、を有する。
【0052】
垂直部71は、平行な左右一対の板部71a、71bを備えている。保持部75、77は、温度センサ7の接続部31の近傍を保持する部材であり、延長部29やリード部33が掛けられる凹部75a、77aを備えている。
【0053】
[1-5.取付治具に関わる特徴的な構成]
次に、第1実施形態の特徴的な構成として、取付治具9をブレーキシュー5に取り付けるための構成を説明する。
【0054】
まず、ここでは、取付治具9を、大径用のブレーキシュー5に取り付けた場合について説明する。
図4に示すように、ドラムブレーキ3は、所定の厚みを有する円盤状の部材であり、ブレーキドラム13の回転軸である中心軸方向(即ち、厚み方向と垂直な
図4の前後方向)に、バックプレート35等の側方部材が配置されている。
【0055】
詳しくは、ブレーキドラム13の中心軸方向における一方の側、即ち、車体側である
図4の後側に、円盤形状のバックプレート35を備えるとともに、中心軸方向の他方の側(即ち、
図4の前側)に、ブレーキドラム13の図示しない側壁を備えている。
【0056】
なお、ブレーキドラム13は、車軸側に固定されてタイヤの回転とともに回転するが、バックプレート35は、車体側の軸受け機構等に固定されており、回転しない。
本第1実施形態では、ブレーキシュー5のリム部19において、そのバックプレート35側(
図4の後側)に、取付治具9のセンサ固定部41が、自身の弾性力によって、着脱可能に装着されている。つまり、センサ固定部41は、リム部19の幅方向に移動して着脱可能に装着されている。なお、リム部19の幅方向とは、ドラムブレーキ3(従って、ブレーキドラム13)の中心軸方向(
図4の前後方向)である。
【0057】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、取付治具9は、左右のブレーキライニング11の間隙25に対応する位置において、リム部19に沿って取り付けられている。そして、弾性保持部51の先端(前端)側が、間隙25に嵌まり込み、リム部19の外周面19c側に配置された弾性保持部51と内周面19b側に配置された中央部45によって、リム部19を挟んで保持することによって、取付治具9がリム部19に装着されている。
【0058】
<リム部側の構成>
また、
図1、
図9~
図11に示すように、リム部19には、リム部19の周方向(幅方向と垂直の方向:
図9の左右方向)には、所定間隔毎に、複数の貫通孔81が設けられている。貫通孔81は、リム部19の内周面19bと外周面19cとを貫通する孔であり、この貫通孔81には、周知のように、ブレーキシュー5とブレーキライニング11とを一体に固定するためのリベット83が嵌め込まれて固定されている。
【0059】
図12に示すように、リベット83は金属製であり、貫通孔81に固定される前は、円盤部83aと円盤部83aに同軸に配置された円筒部83bとを備えている。
ここで、リベット83でブレーキシュー5とブレーキライニング11とを固定する方法について説明する。
【0060】
ブレーキライニング11には、外周側(
図12の下側)に、円柱形状の凹部91が設けられており、この凹部91の軸中心には貫通孔93が設けられている。この貫通孔93は、ブレーキシュー5の貫通孔81の位置と一致するように構成されている。
【0061】
従って、両貫通孔81、93が一致するように、ブレーキシュー5とブレーキライニング11とを重ね合わせた状態で、リベット83の円筒部83bを凹部91に差し込み、両貫通孔81、93を貫通させるようにする。
【0062】
リベット83の円筒部83bの高さは、両貫通孔81、93の深さよりも大きく設定されているので、リベット83の円筒部83bを両貫通孔81、93に差し込むと、円筒部83bの先端は、ブレーキシュー5の貫通孔81の開口端より上方に突出する。
【0063】
この状態で、リベット83の円盤部83a側をポンチ等で支持して、リベット83の円筒部83bの先端をハンマー等でつぶすことにより、円筒部83bの先端が略半円状に潰れて、貫通孔81の開口端の周囲に凸状に広がる頭部95(例えば、
図9~
図11参照)が形成される。なお、頭部95の中心には、円筒部83bの内部からなる凹部97を有する。
【0064】
これによって、ブレーキシュー5とブレーキライニング11とが一体に固定される。
<取付治具の係止状態>
次に、取付治具9の特徴的な係止状態について説明する。
【0065】
図11に示すように、取付治具9がリム部19に取り付けられている場合には、第1係止部53の突部53aが左側のリベット83Lの頭部95Lの凹部97Lに嵌まり込んでおり、第2係止部55の突部55aが右側のリベット83Rの頭部95Rの凹部97Rに嵌まり込んでいる。
【0066】
なお、左右の部材を区別する場合には、添え字として、左側をL、右側をRと記すことがある。
また、第1係止部53の突部53aの先端は、リム部19の内周面19bより高い位置(即ち、上方)にあるが、リベット83Lの頭部95Lの頂点の位置よりは低い。同様に、第2係止部55の突部55aの先端は、リム部19の内周面19bより高い位置にあるが、リベット83Rの頭部95Rの頂点の位置よりは低い。
【0067】
一方、第3係止部57及び第4係止部59は、
図9に示すように、取付治具9がリム部19に取り付けられている場合には、各リベット83L、83Rよりも前側の位置にある。
【0068】
また、第3係止部57の左端は、第3係止部57の突部57aが、リベット83Lの頭部95Lの凹部97Lに嵌まらないように、凹部97Lよりも右側にずれている。同様に、第4係止部59の右端は、第4係止部59の突部59aが、リベット83Rの頭部95Rの凹部97Rに嵌まらないように、凹部97Rよりも左側にずれている。
【0069】
従って、取付治具9を後方から前方に向けて移動させて、リム部19に取り付ける場合には、まず、第3係止部57の突部57aは、リベット83Lの頭部95Lの凹部97Lに嵌まることなく、頭部95Lの表面を乗り越える。同様に、第4係止部59の突部59aは、リベット83Rの頭部95Rの凹部97Rに嵌まることなく、頭部95の表面を乗り越える。
【0070】
その後、更に、取付治具9を前方に向けて移動させると、第1係止部53の突部53aは、リベット83Lの頭部95Lの表面を摺動して凹部97Lに嵌まる。同様に、第2係止部55の突部55aは、リベット83Rの頭部95Rの表面を摺動して凹部97Rに嵌まる。
【0071】
そのため、取付治具9の装着後においては、取付治具9がリム部19の内周面19bに沿って前後方向に移動しても、第1係止部53の突部53aは、リベット83Lの頭部95Lの凹部97Lから外れにくい。同様に、第2係止部55の突部55aも、リベット83Rの頭部95Rの凹部97Rから外れにくい。
【0072】
[1-6.温度センサの取付方法]
次に、温度センサ7を取付治具9によってリム部19に取り付ける取付方法について説明する。
【0073】
図1等に示すように、取付治具9は、温度センサ7を保持した状態で、即ち、検知部27をカバー部67の下部に配置した状態で、リム部19を挟むようにして、リム部19の幅方向において後方から前方に移動させることによって、リム部19に装着される。
【0074】
つまり、弾性保持部51を左右のブレーキライニング11の間隙25に差し込むとともに、弾性保持部51と中央部45でリム部19を挟み、取付治具9を前方に押し込むようにして、取付治具9をリム部19に装着する。なお、温度センサ7の検知部27がリム部19の内周面19bに当接した状態となるように、リム部19に装着される。
【0075】
そして、
図9に示すように、取付治具9を温度センサ7とともに前方に押し込む際には、上述したように、まず、第3係止部57及び第4係止部59が、それぞれ、左右のリベット83L、83Rの頭部95L、95Rを乗り越えて、各リベット83L、83Rの前方に移動する。
【0076】
更に、取付治具9を前方に押し込むと、第1係止部53の突部53a及び第2係止部55の突部55aが、それぞれ、左右のリベット83L、83Rの頭部95L、95R上を摺動して左右の凹部97L、97Rに嵌まり込む。
【0077】
これによって、取付治具9がリム部19に係止される。なお、第1係止部53の突部53a及び第2係止部55の突部55aが、各凹部97に嵌まって係止されるので、各凹部97(詳しくは各凹部97の内壁)が規制部に該当する。
【0078】
また、このとき、第1フック47の突起47a及び第2フック49の突起49aは、リム部19の側面19aに当たって、取付治具9の前方へのそれ以上の移動が規制される。
この状態において、温度センサ7の検知部27は、カバー部67とリム部19で挟まれた状態となる。
【0079】
なお、温度センサ7の延長部29に接続された接続部31は、保持部75、77に挟まれており、延長部29の先端やリード部33の端部が保持部75、77に保持された状態となっている。
【0080】
[1-7.他の型式のブレーキシューに取り付けた場合]
次に、本第1実施形態の取付治具9を、他の型式のブレーキシュー101に取り付けた場合について説明する。
【0081】
図13に示すように、他の型式のブレーキシュー101は、例えば、上述した小径用のブレーキシュー101である。
小径用のブレーキシュー101のリム部103には、大径用のブレーキシュー5と同様に、複数の貫通孔105が設けられており、この貫通孔105には、小径用のブレーキシュー101とブレーキラニング107を一体に固定するリベット109が嵌め込まれている。
【0082】
図14に示すように、貫通孔105やリベット109は、大径用のブレーキシュー5の貫通孔81やリベット83よりも前側に配置されている。
図14及び
図15に示すように、取付治具9が、小径用のブレーキシュー101のリム部103に取り付けられている場合には、第3係止部57の突部57aは、左側のリベット109Lの頭部111Lの凹部113Lに嵌まり込んでいる。同様に、第4係止部59の突部59aは、右側のリベット109Rの頭部111Rの凹部113Rに嵌まり込んでいる。
【0083】
従って、小径用のブレーキシュー101に取付治具9を装着する場合には、大径用のブレーキシュー5と同様に、センサ固定部41でリム部103を挟むようにして、取付治具9を前方に移動させる。
【0084】
そして、その移動に伴って、大径用のブレーキシュー5と同様に、第3係止部57の突部57aが、リベット109Lの頭部111Lの凹部113Lに嵌まり、第4係止部59の突部59aが、リベット109Rの頭部111Rの凹部113Rに嵌まる。
【0085】
なお、
図16に示すように、第1係止部53の突部53a及び第2係止部55の突部55aは、リム部103の内周面103bに接触しない。
このようにして、取付治具9が小径用のブレーキシュー101に係止されて装着される。
【0086】
なお、取付治具9を小径用のブレーキシュー101に装着するためのその他の構成は、基本的に、大径用のブレーキシュー5とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
[1-8.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0087】
(1a)本第1実施形態の取付治具9は、ブレーキシュー5のブレーキライニング11が取り付けられるリム部19に、弾性力により挟み込むようにして装着可能なセンサ固定部41を備える。
【0088】
センサ固定部41は、リム部19に設けられた規制部であるリベット83の凹部97に係止するように構成された第1係止部53及び第2係止部55を備えている。
この第1係止部53及び第2係止部55は、前記規制部に係止することによって、ブレーキドラム13の中心軸方向において取付治具9のリム部19から外れる側への移動を規制する。
【0089】
このような構成によれば、取付治具9が、バックプレート35のような周囲の部材に干渉することを抑制できるので、取付治具9の寿命を向上させることができる。
詳しくは、車両の走行時の振動によって、センサ固定部41に、板バネを開く方向のような挟み込みを弱めるような力と、ブレーキドラム13の中心軸方向の力と、が同時に加わった場合には、取付治具9がリム部19から外れる方向に動く恐れがある。
【0090】
しかし、本第1実施形態では、そのような場合には、センサ固定部41の第1係止部53及び第2係止部55がリム部19の規制部に係止するので、取付治具9が、リム部19から外れる方向、即ち、バックプレート35等のようなリム部19の周囲の部材側に移動することを規制できる。つまり、取付治具9自身のリム部19から離脱する方向への移動を規制できる。
【0091】
このように、本第1実施形態では、取付治具9の外れる方向への移動(即ち、ずれ)を規制できるので、取付治具9がバックプレート35等の側方の部材と干渉して摩耗することを抑制できる。その結果、取付治具9の寿命の低下を抑制できるという効果を奏する。
【0092】
(1b)本第1実施形態では、規制部として、リム部19の内周面19b側に設けられたリベット83の頭部95の凹部97を採用できる。つまり、第1係止部53の突部53aと第2係止部55の突部55aが、それぞれ各リベット83L、83Rの頭部95L、95Rの凹部97L、97Rに嵌まって係止され、第1係止部53及び第2係止部55の移動(従って、取付治具9の移動)を規制することができる。
【0093】
(1c)また、上述した取付治具9のバックプレート35等との干渉を、弾性保持部51のバネ力を増加させることによって抑制することが考えられる。
しかし、その場合には、弾性保持部51における発生応力が大きくなるため、疲労限界の低下、応力腐食割れ寿命の低下、遅れ破壊寿命の低下等のリスクが増大する。
【0094】
それに対して、本第1実施形態では、上述した構成によって、取付治具9のずれを抑制できるだけでなく、第1係止部53及び第2係止部55が各リベット83L、83Rの頭部95L、95Rの凹部97L、97Rに嵌まった分、ばね反力を下げることができる。そのため、取付治具9の装着時の応力(即ち、組付応力)を低減でき、疲労限界の向上、遅れ破壊寿命の向上、応力腐食割れ寿命の向上など、高い信頼性を確保できる。
【0095】
(1d)本第1実施形態では、大径用のブレーキシュー5に装着する際に、リベット83との係止に用いられる第1係止部53及び第2係止部55と、小径用のブレーキシュー101に装着する際に、リベット109との係止に用いられる第3係止部57及び第4係止部59と、を備えている。
【0096】
つまり、第1係止部53及び第2係止部55が、大径用のブレーキシュー5のリベット83に係止可能であり、第3係止部57及び第4係止部59が、小径用のブレーキシュー101のリベット109に係止可能である。なお、第1係止部53及び第2係止部55は、小径用のブレーキシュー101のリベット109に係止されず、第3係止部57及び第4係止部59は、大径用のブレーキシュー5のリベット83に係止されない。
【0097】
従って、同じ取付治具9を、大径用のブレーキシュー5にも小径用のブレーキシュー101にも使用できるので、汎用性が高いという利点がある。
(1e)また、リベット83に係止しない係止部(即ち、第1、第2係止部53、55又は第3、第4係止部57、59)は、温度センサ7や取付治具9が傾いた場合に、ブレーキシュー5のリム部19の内周面19aに接触することがある。この場合には、弾性保持部51のばねの変位を制限でき、モーメントによる振幅応力を低減するとともに、取付治具9のずれを効果的に抑制することができる。その結果、バックプレート35等との接触による摩耗を抑制することができる。
【0098】
(1f)なお、本第1実施形態では、ドラムブレーキ3を使用している際に、ドラムブレーキ3の温度が上昇した場合でも、リベット83に係止した係止部(即ち、第1、第2係止部53、55又は第3、第4係止部57、59)は、その係止が外れない形状及び寸法に設定されている。
【0099】
つまり、ドラムブレーキ3の使用温度範囲において、係止している第1、第2係止部53、55又は第3、第4係止部57、60の突部53a、55a又は突部57a、59aの下端(即ち、先端)が、各リベット83の頭部95の凹部97の開口端よりも上方(中心軸側)に位置しないように設定されている。
【0100】
[1-9.文言の対応関係]
本第1実施形態と本開示との関係において、ドラムブレーキ3がドラムブレーキに対応し、ブレーキシュー5がブレーキシューに対応し、温度センサ7が温度センサに対応し、取付治具9取付治具に対応し、ブレーキライニング11がブレーキライニングに対応し、リム部19がリム部に対応し、センサ固定部41がセンサ固定部に対応し、凹部97、97L、97Rが規制部に対応し、第1係止部53及び第2係止部55が係止部に対応し、ブレーキドラム13がブレーキドラムに対応する。
【0101】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0102】
本第2実施形態は、前記第1実施形態とは、主に、センサ固定部が規制部に係止する構成が異なるので、異なる構成について説明する。
<取付治具の構成>
図17~
図20に示すように、本第2実施形態の取付治具121は、第1実施形態と同様に、単一の金属板をS字状に加工した板状部材である。
【0103】
この取付治具121は、例えば大径用のブレーキシュー5のリム部19を上下方向から挟み込むように、略U字状に湾曲した部分であるセンサ固定部123と、温度センサ7の延長部29等を保持するために、センサ固定部123の前端から上方へ延びる部分である補助固定部125と、を備える。
【0104】
センサ固定部123は、第1実施形態と同様に、リム部19を挟み込むための互いに対向する内面同士の間隔が、後端から前方へ向かって狭くなる、いわゆるクリップのような形状である。このため、センサ固定部123は、リム部19を弾性力により挟み込むように装着可能である。
【0105】
詳しくは、センサ固定部123は、前後方向に延びる板状の中央部127と、中央部127の後端の左右に設けられた第1フック129及び第2フック131と、中央部127の後端の中央に設けられた弾性保持部133と、中央部127の左右の端部にそれぞれ設けられた第1係止部135及び第2係止部137と、を有する。
【0106】
なお、中央部127の中央部分には、温度センサ7の検知部27を上方より覆うように、上方に湾曲した半筒形状のカバー部139が設けられている。
前記中央部127、第1フック129、第2フック131、弾性保持部133、第1係止部135、第2係止部137は、第1実施形態と同様な機能を有する。
【0107】
特に、本第2実施形態では、第1係止部135及び第2係止部137は、第1実施形態とは異なり、長尺の平板の板状である。つまり、第1係止部135及び第2係止部137は、リム部19の内周面19bに沿ってほぼ平行に延びる形状である。詳しくは、中央部127から平行に左右に延びるとともに、その先端がわずかに上方に傾斜している。
【0108】
また、第1係止部135及び第2係止部137の各先端は、
図21に示すように、取付治具121の装着時において、リム部19に取り付けられたリベット83の頭部95の位置に達するように構成されている。
【0109】
詳しくは、取付治具121の装着時において、図示しないが、第1係止部135の先端(例えば左端)は、リベット83Lの頭部95Lの外周の左端に到る位置まで延びている。同様に、第2係止部137の先端(例えば右端)は、
図21に示すように、リベット83Rの頭部95Rの外周の右端に到る位置にまで延びている。
【0110】
なお、本第2実施形態では、第1係止部135及び第2係止部137以外に係止部は設けられていない。
<取付治具の装着方法>
図21に示すように、本第2実施形態の取付治具121をリム部19に取り付ける場合には、第1実施形態と同様に、センサ固定部123の中央部127と弾性保持部133とでリム部19を挟むようにして、取付治具121を後方から前方に押し込む。
【0111】
この動作にともなって、第1係止部135及び第2係止部137は前方に移動し、リム部19に取り付けられたリベット83の頭部95を乗り越えて、頭部95の前方に配置される。
【0112】
なお、取付治具121の前方へのそれ以上の移動は、第1フック129、第2フック131によって規制される。
このような構成によって、本第2実施形態では、第1実施形態と同様な効果を奏する。特に、車両の振動等によって、取付治具121に後方に移動するような力(即ち、取付治具121が脱落する方向への力)が加わった場合でも、第1係止部135及び第2係止部137が、規制部であるリベット83の頭部95に係止することにより、取付治具121が脱落することを抑制できる。
【0113】
また、第1係止部135及び第2係止部137が、リベット83の頭部95を乗り越えるに必要な分、取付治具121を装着する際の弾性保持部133のバネ力を減らすことができる。
【0114】
なお、本第2実施形態では、リム部19の内周面19bより上方(即ち、ブレーキドラム13の中心軸側)に突出した凸部である頭部95が、規制部に該当する。
また、本第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、他の型式(即ち、小径用)のブレーキシュー101にも装着できるように、第1係止部135及び第2係止部137以外に、図示しないが、小径用のブレーキシュー101のリベット109に係止するように、第3係止部及び第4係止部を設けてもよい。
【0115】
なお、第3係止部及び第4係止部の形状は、第1係止部135及び第2係止部137と同様なほぼ平板状であるが、その長さは、他のリベット109の位置に応じて(即ち、他のリベット109の前方の位置となるように)設定してある。
【0116】
更に、本第2実施形態の変形例として、小径用のブレーキシュー101のみに係止するように、第1係止部135及び第2係止部137を設けることなく、第3係止部及び第4係止部を設けるようにしてもよい。
【0117】
[3.第3、第4実施形態]
第3、第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0118】
図22に示すように、本第3実施形態の取付治具141は、大径用のブレーキシュー5のみに取り付けられるものである。
この取付治具141は、前記第1実施形態とは異なり、第3係止部57及び第4係止部59を備えておらず、第1係止部53及び第2係止部55のみを備えている。
【0119】
本第3実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、構成を簡易化できるという利点がある。
図23に示すように、本第4実施形態の取付治具151は、小径用のブレーキシュー101のみに取り付けられるものである。
【0120】
この取付治具151は、前記第1実施形態とは異なり、第1係止部53及び第2係止部55を備えておらず、第3係止部57及び第4係止部59のみを備えている。
本第4実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、構成を簡易化できるという利点がある。
【0121】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0122】
(4a)例えば、ブレーキシューの規制部としては、リム部自体の内周面側に開口する凹部又は貫通孔の開口部を採用できる。例えば、リム部の内周面に設けられたディンプル状の凹部を採用できる。また、リム部に取り付けられた部品(例えば、リベット)において、リム部の内周面側に開口する凹部(例えば、リベットの頭部の凹部)又は貫通孔の開口部を採用できる。
【0123】
(4b)取付治具は、リム部において、バックプレート側に取り付けてもよいが、バックプレートと反対側に取り付けてもよい。
(4c)第1、第2フックは省略してもよい。
【0124】
(4d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0125】
1…温度検出装置、3…ドラムブレーキ、5、101…ブレーキシュー、7…温度センサ、9、121、141、151…取付治具、11…ブレーキライニング、13…ブレーキドラム、19、103…リム部、41…センサ固定部、53、135…第1係止部、55、137…第2係止部、57…第3係止部、59…第4係止部、83、83L、83R、109、109L、109R…リベット、95、95L、95R、111L、111R…頭部、97、97L、97R、113L、113R…凹部