(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両用内装品
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/54 20170101AFI20240618BHJP
B60Q 3/64 20170101ALI20240618BHJP
B60Q 3/14 20170101ALI20240618BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60Q3/54
B60Q3/64
B60Q3/14
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2021091959
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 寛之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185980(JP,A)
【文献】特開2015-074328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/54
B60Q 3/64
B60Q 3/14
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し表側を車両室内に向ける内装パネルと、
発光部と前記発光部を収容し少なくとも一部が前記開口を臨む位置に配置されるケースとを有し、前記内装パネルの裏側に取り付けられる照明装置と、
前記ケースと前記内装パネルとを互いに固定する非バネ式の固定具と、を具備し、
前記内装パネルは、前記開口の周縁部に配置されかつ前記裏側に突出するパネル側ガイド部を有し、
前記ケースは、前記パネル側ガイド部に対応する位置に配置されかつ前記表側に突出するケース側ガイド部を有し、
前記パネル側ガイド部は、前記内装パネルに対する前記ケースの取り付け方向に対して傾斜するパネル側傾斜面を有し、
前記ケース側ガイド部は、前記パネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面を有し、
前記ケースが前記内装パネルに対して取り付けられる際に、前記ケース側傾斜面が前記パネル側傾斜面上を相対的に滑ることにより、前記ケースと前記開口とが位置決めされ
、
前記固定具はネジであり、前記パネル側傾斜面は前記ネジの軸線に対して傾斜する、車両用内装品。
【請求項2】
開口を有し表側を車両室内に向ける内装パネルと、
発光部と前記発光部を収容し少なくとも一部が前記開口を臨む位置に配置されるケースとを有し、前記内装パネルの裏側に取り付けられる照明装置と、
前記ケースと前記内装パネルとを互いに固定する非バネ式の固定具と、を具備し、
前記内装パネルは、前記開口の周縁部に配置されかつ前記裏側に突出するパネル側ガイド部を有し、
前記ケースは、前記パネル側ガイド部に対応する位置に配置されかつ前記表側に突出するケース側ガイド部を有し、
前記パネル側ガイド部は、前記内装パネルに対する前記ケースの取り付け方向に対して傾斜するパネル側傾斜面を有し、
前記ケース側ガイド部は、前記パネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面を有し、
前記ケースが前記内装パネルに対して取り付けられる際に、前記ケース側傾斜面が前記パネル側傾斜面上を相対的に滑ることにより、前記ケースと前記開口とが位置決めされ
、
前記パネル側傾斜面と前記ケース側傾斜面とを複数対有する、車両用内装品。
【請求項3】
前記パネル側傾斜面と前記ケース側傾斜面とを複数対有する、
請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項4】
前記ケースの外縁は前記開口の端よりも前記開口の内側にある、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用内装品。
【請求項5】
前記ケースは、前記開口を臨む光透過性のレンズ部と、前記固定具が取り付けられるベース部と、が組み合わされてなり、
前記ケース側ガイド部は、前記ベース部に設けられている、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用内装品。
【請求項6】
前記ケースは、前記開口を臨む光透過性のレンズ部と、前記固定具が取り付けられるベース部と、が組み合わされてなり、
前記ケース側ガイド部は、前記レンズ部に設けられている、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用内装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両室内に配設される車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両の車両室内には、インストルメントパネルやドアパネル等の内装パネルが配設されている(例えば特許文献1参照)。近年、車両室内を直接照明または間接照明するための照明装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。これらの照明装置の少なくとも一部は上記した内装パネルの裏側に配置される。また、照明装置は車両室内を照明するための発光部を有し、当該発光部は内装パネルに設けられた開口を通じて車両室内に光を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-43614号公報
【文献】特開2006-151005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の照明装置により車両室内を好適に照明するためには、上記した内装パネルと照明装置との相対位置を十分に位置決めする必要がある。
ここで、特許文献2の実施形態では、内装パネル、具体的にはインストルメントパネル1に断面略U字状の溝部11cを設け、発光部すなわち照明部材51を当該溝部11cの内部に直接配置している。そして、当該溝部11cの開口をカバー部材53で直接覆っている。このような技術によると、内装パネルにおける開口近傍の位置に照明部材を直接取り付けるために、両者を比較的精度高く位置決めすることが可能と考えられる。
【0005】
しかしその反面、このように内装パネルに対して発光部やカバー部材を直接取り付ける場合には、作業工数が非常に多くなるために、作業効率の向上や製造に要するコストの低減を実現し難い問題がある。
【0006】
発光部をケースに収容してユニット化したものを内装パネルにおける開口近傍の位置に取り付ける場合には、上記したように発光部やカバー部材を個別に内装パネルに取り付ける場合に比べて、作業効率が向上し、製造に要するコストが低減すると考えられる。
【0007】
この場合、上記のユニットにおけるケースを内装パネルに取り付ける際に、両者を何らかの固定具で固定すれば良いと考えられる。ここで、当該固定具として、クリップに代表されるバネ式の固定具、換言するとバネの弾性復元力を利用した固定具を用いる場合には、固定具の弾性力および弾性復元力によって、取り付け時および取り付け後にケースと開口とが相対的に位置変化可能になる。このため、当該バネ式の固定具を用いる場合には、開口とケースとを互いに十分に位置決めできるとは言い難い問題がある。
【0008】
特許文献1に紹介されているように、ネジに代表される非バネ式の固定具、換言するとバネの弾性復元力を利用しない固定具を用いる場合には、上記したバネ式の固定具を用いる場合に比べて、内装パネルの開口とケースとの相対的な位置変化を抑制でき、当該開口とケースとをある程度の精度をもって互いに位置決めできると考えられる。
【0009】
しかし乍ら、上記の非バネ式の固定具を用いる場合にも、内装パネルやケース自体の寸法誤差や弾性等に因り、開口とケースとの実際の取り付け位置が予定していた位置からずれる虞がある。したがってこの場合にも、内装パネルの開口とケースとを精度高く位置決めすることは非常に困難であった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、内装パネルの開口とケースとの位置決め精度を向上させ得る技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の車両用内装品は、
開口を有し表側を車両室内に向ける内装パネルと、
発光部と前記発光部を収容し少なくとも一部が前記開口を臨む位置に配置されるケースとを有し、前記内装パネルの裏側に取り付けられる照明装置と、
前記ケースと前記内装パネルとを互いに固定する非バネ式の固定具と、を具備し、
前記内装パネルは、前記開口の周縁部に配置されかつ前記裏側に突出するパネル側ガイド部を有し、
前記ケースは、前記パネル側ガイド部に対応する位置に配置されかつ前記表側に突出するケース側ガイド部を有し、
前記パネル側ガイド部は、前記内装パネルに対する前記ケースの取り付け方向に対して傾斜するパネル側傾斜面を有し、
前記ケース側ガイド部は、前記パネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面を有し、
前記ケースが前記内装パネルに対して取り付けられる際に、前記ケース側傾斜面が前記パネル側傾斜面上を相対的に滑ることにより、前記ケースと前記開口とが位置決めされる、車両用内装品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用内装品によると、内装パネルの開口とケースとの位置決め精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の車両用内装品を模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例1の車両用内装品を表-裏方向に切断した様子を模式的に表す説明図である。
【
図3】実施例1の車両用内装品における内装パネルの開口、ケースの端、パネル側傾斜面およびケース側傾斜面の位置関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の車両用内装品は、内装パネル、照明装置および非バネ式の固定具を具備する。照明装置は、発光部および当該発光部を収容するケースを有し、このうちケースはその少なくとも一部が内装パネルにおける開口を臨む位置に配置される。したがって、本発明の車両用内装品は、発光部およびケースをユニットとして扱うことができ、内装パネルに照明装置を取り付けるコストを低減できる。
【0015】
本発明の車両用内装品において、ケースと内装パネルとを互いに固定する固定具は非バネ式である。さらに、内装パネルとケースとは、開口の周縁部に配置されたパネル側ガイド部と、当該パネル側ガイド部に対応する位置に配置されたケース側ガイド部とによって、開口の周縁部で位置決めされる。より具体的には、ケースが内装パネルに対して取り付けられる際に、ケース側傾斜面がパネル側傾斜面上を相対的に滑ることにより、ケースと開口とが位置決めされる。
これにより、本発明の車両用内装品によると、内装パネルの開口とケースとの位置決め精度を向上させることが可能である。
【0016】
以下、本発明の車両用内装品をその構成要素毎に説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例や参考例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0017】
本発明の車両用内装品における内装パネルは、表側を車両室内に向ける。当該内装パネルの裏側には、照明装置が配置される。このような内装パネルとしては、車両用のインストルメントパネルやドアパネル等を例示できる。
ここで、内装パネルの表側とは、車両に取り付けた内装パネルのうち車両室内側に位置する側を意味し、裏側とは、その逆側、すなわち車両に取り付けた内装パネルのうち車両室外側に位置する側を意味する。なお、本発明の車両用内装品における他の構成要素についても同様に、車両に取り付けた時に車両室内側に位置する側を表側といい、その逆側を裏側という。また、後述する各種の方向についても、本願の車両用内装品を車両に取り付けた状態での各種の方向をいうものとする。
【0018】
内装パネルは開口を有する。当該開口は、内装パネルの表側と裏側とを連絡できればよく、例えば、内装パネルを表-裏方向に貫通する貫通穴状であっても良い。内装パネルが複数のパネルからなる場合等には、隣り合うパネル同士の隙間を開口と扱っても良い。
内装パネルは、開口の周縁部にパネル側ガイド部を有する。パネル側ガイド部については後述する。
【0019】
照明装置は、発光部およびケースを有する。発光部は、照明装置のうち光源の出射光により車両室内を照明する部分である。このような発光部は、光源自体であっても良いし、光源の出射光を光源から離れた位置に導く導光体であっても良い。
【0020】
具体的な光源としては、LED、白熱電球、ハロゲンランプ、蛍光灯、有機EL素子等の各種の光源を例示できるが、本発明の車両用内装品においては特に限定されない。
【0021】
導光体は、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート等の透明樹脂に代表される、光を透過し得る材料からなる。導光体の形状は特に限定しないが、光源から離れた位置にまで光を導き得る形状、例えば棒状や板状等を例示できる。導光体は、光を出射する出射面以外の面に、凹凸形状を有する反射面を有しても良い。更に、当該反射面には、光を透過しない反射層を設けても良い。
【0022】
発光部はケースに収容される。ケースは、例えば光源のみを収容しても良いし、導光体のみを収容しても良いし、光源と導光体との両方を収容しても良い。
発光部により車両室内を照明する都合上、ケースのうち少なくとも開口を臨む位置に配置される部分は、光を透過する。本明細書では、ケースのうち開口を臨む位置に配置され光を透過する部分を、レンズ部と称する。レンズ部は光を透過し得る材料からなれば良く、当該レンズ部の材料は特に限定されない。本発明の車両用内装品の製造コスト低減や軽量化を考慮すると、レンズ部の材料としてはアクリル樹脂、ポリカーボネート、PET等の透明樹脂を用いるのが好ましい。
【0023】
ケースのうち上記のレンズ部以外の部分をベース部と称する。レンズ部とベース部とは、一体に成形しても良いし、別体で成形し組み合わせて一体化しても良い。
ベース部は、レンズ部同様に光透過性を有しても良いが、光の損失を考慮すると光透過性が低いかまたは光透過性を有さないのが好ましい。ベース部の材料としては、着色したまたは不透明な樹脂材料を用いるのが好ましい。また、ベース部のうち発光部の面に、反射層を設けるのも好ましい。
ケースは、上記した内装パネルのパネル側ガイド部に対応する位置に、ケース側ガイド部を有する。ケース側ガイド部については後述する。
【0024】
固定具は、上記したケースと内装パネルとを互いに固定するための部分であり、かつ非バネ式のものである。「非バネ式」とは、既述したようにバネの弾性復元力を利用しない固定方式をいい、当該非バネ式の固定方式としては、ネジ締結やリベット止め等の、バネの弾性力や弾性復元力が生じない方式を適宜選択すれば良い。この場合、ネジやリベット等が非バネ式の固定具に該当する。さらには、ケースと内装パネルとを溶着や接着等の方法で固定し、この固定した部分を非バネ式の固定具とみなしても良い。
【0025】
なお、例えば非バネ式の固定具としてボルトとナットとを選択する場合、当該ボルトとナットとの間にスプリングワッシャーを介在させても良い。つまり、非バネ式の固定具には、副次的に、バネ式の固定具を併用しても良い。
【0026】
本発明の車両用内装品において、内装パネルはパネル側ガイド部を有し、ケースはケース側ガイド部を有する。
パネル側ガイド部は、既述したように内装パネルにおける開口の周縁部に配置されかつ内装パネルの裏側に突出する。また、ケース側ガイド部は、ケースのうちパネル側ガイド部に対応する位置に配置され、かつ、表側に突出する。ケースを含む照明装置は内装パネルの裏側に配置されるため、パネル側ガイド部はケース側に突出しケース側ガイド部は内装パネル側に突出するといい得る。
【0027】
パネル側ガイド部は、内装パネルに対するケースの取り付け方向に傾斜するパネル側傾斜面を有し、ケース側ガイド部は、当該パネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面を有する。そして、ケースが内装パネルに対して取り付けられる際に、ケース側傾斜面がパネル側傾斜面上を相対的に滑ることにより、ケースと開口とが位置決めされる。以下、必要に応じて、内装パネルに対するケースの取り付け方向を単にケースの取り付け方向と称する場合がある。
【0028】
本発明の車両用内装品では、内装パネルとケースとを互いに位置決めする機構、すなわち、パネル側ガイド部およびケース側ガイド部を開口の周縁部に設けている。これにより、本発明の車両用内装品では、開口の周縁部において内装パネルとケースとを互いに精度高く位置決めでき、ひいては、開口に対するケースの位置を精度高く位置決めできる。
【0029】
また、ケース側傾斜面およびパネル側傾斜面はともにケースの取り付け方向に対して傾斜する面であり、かつ、内装パネルに対するケースの取り付け時においては、ケース側傾斜面がパネル側傾斜面上を相対的に滑る。このためケースと開口とは、ケースの取り付け方向において精度高く位置決めされるのみならず、当該ケースの取り付け方向に交差する方向においても精度高く位置決めされる。これにより、本発明の車両用内装品によると、特に開口の端とケースの外縁との位置関係を精度高くコントロールできる利点がある。
【0030】
ここで、ケースの外縁は開口の端に接していても良いが、実施例の欄で詳説するように開口を経て車両室内側に供給される光の量をなるべく多くするためには、ケースの外縁は開口の端よりも開口の内側にあるのが好ましい。この場合、ケースの外縁と開口の端との間に隙間が形成される。
【0031】
その一方で、この場合には上記隙間の大きさ、すなわち、開口の端とケースの外縁との距離がばらつくと、開口を経て車両室内側に供給される光の量にもばらつきが生じ、当該ばらつきが大きいと車両用内装品の意匠性を損なう虞がある。
【0032】
本発明の車両用内装品によると、上記したように、開口の端とケースの外縁との位置関係を精度高くコントロールできるため、ケースの外縁と開口の端との隙間を望み通りの大きさにでき、車両用内装品の意匠性を損なうことなく、開口を経て車両室内に供給される光の量を十分な量にできる利点がある。
【0033】
上記した開口の端とケースの外縁との隙間は、開口の形状や大きさ、開口に対する発光部の配置位置等によって適宜適切な大きさに設定すれば良い。当該隙間の好適な大きさとして、0.05mm~10mmの範囲内を例示できる。
【0034】
本発明の車両用内装品における内装パネルは、一つのみのパネル側ガイド部を有しても良いし、複数のパネル側ガイド部を有しても良い。また、パネル側ガイド部は、上記した開口の周縁部に配置されれば良く、例えば一つのパネル側ガイド部が開口の端に沿って延びても良いし、または、複数のパネル側ガイド部が開口の端に沿って配列しても良い。さらには、一つのパネル側ガイド部が一つのみのパネル側傾斜面を有しても良いし、複数のパネル側傾斜面を有しても良い。パネル側傾斜面は平坦面であっても良いし、湾曲面であっても良い。
【0035】
同様に、本発明の車両用内装品におけるケースは、パネル側ガイド部のパネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面を有すれば良く、一つのみのケース側ガイド部を有しても良いし、複数のケース側ガイド部を有しても良い。なお、「パネル側傾斜面に相補的なケース側傾斜面」とは、内装パネルにケースを取り付けた時にパネル側傾斜面とケース側傾斜面とが完全に一致する場合、および、内装パネルにケースを取り付けた時にパネル側傾斜面とケース側傾斜面とが概ね一致する場合、の両方を含む。
【0036】
例えば、パネル側傾斜面およびケース側傾斜面が平面である場合、パネル側傾斜面の傾斜角θPとケース側傾斜面の傾斜角θCとは、同じ角度であるのが望ましいが、傾斜角θPとケース側傾斜面の傾斜角θCとの差が10°以内で範囲であれば許容できる。
または、内装パネルにケースを取り付けた時のパネル側傾斜面とケース側傾斜面との接触面積が、90%以上100%未満の範囲内である場合に、パネル側傾斜面とケース側傾斜面とが概ね一致する、とみなし得る。なお、上記の百分率は、パネル側傾斜面とケース側傾斜面とが完全に一致する場合における、パネル側傾斜面とケース側傾斜面との接触面積を100%とした百分率である。
【0037】
さらに、パネル側傾斜面はケースの取り付け方向に対して傾斜すれば良く、その傾斜角すなわち傾斜角θPは特に限定しないが、当該傾斜角θPの好ましい範囲として、1°以上10°以下の範囲内を例示できる。
【0038】
上記した固定具が、ネジやボルト、リベット等のようにケースおよび/または内装パネルに差し込まれるものである場合、パネル側傾斜面はこれらネジ等の固定具の軸線方向に対しても傾斜するのが好ましい。そして、当該固定具の軸線方向に対するパネル側傾斜面の傾斜角θAPは、1°以上10°以下の範囲内であるのが好ましい。なお、当該固定具の軸線方向は、ケースの取り付け方向と平行であるのが望ましく、傾斜角θAPと傾斜角θPとは一致するのが望ましい。
【0039】
なお、上記した開口の周縁部とは、内装パネルのうち開口の端からの距離が50mm以下である領域と言い換えることもできる。すなわち、開口の端からパネル側ガイド部までの距離は50mm以下といい得る。当該距離は30mm以下であるのが好ましく、10mm以下であるのが特に好ましい。
【0040】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用内装品を説明する。
【0041】
(実施例1)
実施例1の車両用内装品を模式的に表す説明図を
図1に示す。実施例1の車両用内装品を表-裏方向に切断した様子を模式的に表す説明図を
図2に示す。実施例1の車両用内装品における内装パネルの開口、ケースの端、パネル側傾斜面およびケース側傾斜面の位置関係を説明する説明図を
図3に示す。
以下、実施例において上、下、左、右、前、後とは各図に示す上、下、左、右、前、後を意味するものとする。このうち上下方向は鉛直方向と一致し、前後方向は車両進行方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。後述する内装パネルは、表側を後に向け裏側を前に向ける。
【0042】
実施例1の車両用内装品1は、照明装置3、内装パネル4および固定具2を具備する。
図1に示すように、実施例1の車両用内装品1は、内装パネル4として、インストルメントパネル40および加飾パネル5を有する。
インストルメントパネル40および加飾パネル5は上下に配列する。また、加飾パネル5は上下に2分割されている。加飾パネル5における上側部分をアッパパネル50と称し、下側部分をロアパネル60と称する。
【0043】
アッパパネル50とロアパネル60との間には隙間が設けられている。当該隙間は、本発明の車両用内装品1における開口45に相当する。開口45は概略左右方向に沿って延びる。アッパパネル50の表面には、
図2中の破線で示す表皮材51が重ねられている。
【0044】
図2に示すように、ロアパネル60には、パネル側ガイド部61およびパネル側締結座部65が設けられている。パネル側ガイド部61およびパネル側締結座部65は、各々、ロアパネル60の裏面から裏側、より具体的には、前側かつ下側に突出する。パネル側ガイド部61は開口45の周縁部に配置される。詳しくは、実施例1の車両用内装品1において、パネル側ガイド部61は開口45の端45eに一体的に連続し、開口45の端45eからパネル側ガイド部61までの距離は実質的にない。
【0045】
なお、図示しないが、実施例1の車両用内装品1におけるロアパネル60は、複数のパネル側ガイド部61を有する。各パネル側ガイド部61は、裏側に突出するとともに開口45の端45eに沿って延びる概略短冊状をなす。また、各パネル側ガイド部61は、開口45の延びる方向、すなわち
図1に示す左右方向に配列する。パネル側締結座部65は、何れも開口45から離れた位置に配置されている。
【0046】
実施例1の車両用内装品1における固定具2はネジであり、パネル側締結座部65には、固定具2すなわちネジに螺合するネジ穴66が設けられている。
パネル側ガイド部61については後述する。
【0047】
図1に示すように、照明装置3は、LED光源35および導光体36からなる発光部30と、当該発光部30を収容するケース7とを有する。ケース7は発光部30を収容した状態で、内装パネル4の裏側に配置されている。
【0048】
図1に示すように、発光部30のうちLED光源35は、内装パネル4の右端側に配置されている。導光体36は、ポリカーボネート製であり、内装パネル4の裏側において、アッパパネル50とロアパネル60との隙間すなわち開口45を臨む位置に配置されている。より詳しくは、導光体36は、開口45の前側において、当該開口45に沿って概略左右方向に延びる。導光体36の右端部はLED光源35の左隣に配置され、LED光源35が出射する光は導光体36に入射し、左側に向けて導かれる。
【0049】
図2に示すように、ケース7は、透明樹脂であるポリカーボネート製のレンズ部71と、ポリカーボネートに黒色顔料が配合された有色のベース部75とが組み合わせてなる。ケース7は、レンズ部71を概略上方に向け、ベース部75を概略下方に向けている。なお、レンズ部71およびベース部75は、図略の係合部によって互いに係合され一体化されている。
ケース7は、
図1に示す開口45に沿って左右に延びる、長尺の箱状をなす。
【0050】
ケース7のうちレンズ部71には、ケース側ガイド部72が設けられている。ケース側ガイド部72は、レンズ部71における開口45側の面から表側、より具体的には、後側かつ上側に突出する。
【0051】
ケース7のうちベース部75には、ケース側締結座部76が設けられている。ケース側締結座部76は、ベース部75における表側の面、つまり
図2に示す後側の面からさらに後側かつ下側に突出する。ケース側締結座部76には、固定具2が通る貫通孔77が設けられている。
【0052】
図3に示すように、内装パネル4に対するケース7の取り付け方向Aは、前側かつ下側から後側かつ上側に向けた方向である。当該ケース7の取り付け方向Aは、固定具2の軸線aに平行な方向である。なお、固定具の軸線aは、車両前後方向に対して45°で交差する。したがって、ケース7の取り付け方向Aもまた、車両前後方向に対して45°で交差する。
【0053】
上記した内装パネル4のパネル側ガイド部61は、
図2および
図3に示すように、略V字の溝を有する。当該溝は前側かつ下側に開口し、その溝壁はケース7の取り付け方向Aに対して傾斜している。換言すると、実施例1の車両用内装品1におけるパネル側ガイド部61は2つのパネル側傾斜面62(
図3参照)を有する。以下、必要に応じて、2つのパネル側傾斜面62の一方を第1パネル側傾斜面62fと称し、他方を第2パネル側傾斜面62sと称する。第1パネル側傾斜面62fは、第2パネル側傾斜面62sよりも上側に位置する。
【0054】
ケース7の取り付け方向Aに対する第1パネル側傾斜面62fの傾斜角θP1は約6°であり、ケース7の取り付け方向Aに対する第2パネル側傾斜面62sの傾斜角θP2は約5°である。
【0055】
また、上記したレンズ部71のケース側ガイド部72は、
図2および
図3に示すように、その突出端に向けて先細りになっている。当該先細り形状をなすケース側ガイド部72の上面および下面は、ともに、ケース7の取り付け方向Aに対して傾斜している。つまり、実施例1の車両用内装品1におけるケース側ガイド部72は2つのケース側傾斜面73(
図3参照)を有する。以下、必要に応じて、2つのケース側傾斜面73の一方を第1ケース側傾斜面73fと称し、他方を第2ケース側傾斜面73sと称する。第1ケース側傾斜面73fは、第2ケース側傾斜面73sよりも上側に位置する。
【0056】
ケース7の取り付け方向Aに対する第1ケース側傾斜面73fの傾斜角θC1は約6°であり、第1パネル側傾斜面62fの傾斜角θP1と概略一致する。また、ケース7の取り付け方向Aに対する第2ケース側傾斜面73sの傾斜角θC2は約5°であり、第2パネル側傾斜面62sの傾斜角θP2と概略一致する。つまり、第1ケース側傾斜面73fと第1パネル側傾斜面62fとは対をなし、第2ケース側傾斜面73sと第2パネル側傾斜面62sともまた対をなす。
【0057】
実施例1の車両用内装品1におけるケース7を内装パネル4に取り付ける際には、先ず、ケース7を内装パネル4の前側かつ下側に配置し、次いで、
図3に示す取り付け方向Aに沿ってケース7を後側かつ上側に向けて位置変化させる。
すると、ケース側ガイド部72がパネル側ガイド部61の溝に差し込まれ、第1ケース側傾斜面73fが第1パネル側傾斜面62f上を滑るとともに、第2ケース側傾斜面73sが第2パネル側傾斜面62s上を滑る。
これにより、内装パネル4に対してケース7が位置決めされ、ケース側締結座部76がパネル側締結座部65に対面する。
【0058】
その後、ネジすなわち固定具2をケース側締結座部76の貫通孔77およびパネル側締結座部65のネジ穴66に差し込み、固定具2をネジ穴66に螺合させることで、ケース7および当該ケース7に収容されている発光部30を、内装パネル4に対して固定する。
【0059】
実施例1の車両用内装品1においては、第1パネル側傾斜面62f、第1ケース側傾斜面73f、第2パネル側傾斜面62sおよび第2ケース側傾斜面73sが、ケース7の取り付け方向Aに対して傾斜している。このためケース7と内装パネル4とは、ケース7の取り付け時に、第1ケース側傾斜面73fが第1パネル側傾斜面62f上を滑るとともに、第2ケース側傾斜面73sが第2パネル側傾斜面62s上を滑ることにより、互いに適切な位置に案内される。これにより、ケース7と内装パネル4とが互いに精度高く位置決めされる。
【0060】
また、第1パネル側傾斜面62fおよび第2パネル側傾斜面62sが何れも開口45の周縁部に配置されているため、内装パネル4に対するケース7の位置決めは、開口45に非常に近い位置でなされる。これにより、開口45の端45eとケース7の外縁7eとの位置関係を精度高くコントロールでき、開口45の端45eとケース7の外縁7eとの隙間g(
図3参照)を望み通りの大きさにできる。
【0061】
さらに、実施例1の車両用内装品1においては、第1パネル側傾斜面62f、第1ケース側傾斜面73f、第2パネル側傾斜面62sおよび第2ケース側傾斜面73sが、固定具2の軸線a方向に対しても傾斜している。このため、ケース7と内装パネル4とは、固定具2による締結時にも、第1ケース側傾斜面73fが第1パネル側傾斜面62f上を滑るとともに、第2ケース側傾斜面73sが第2パネル側傾斜面62s上を滑ることにより、互いに適切な位置に案内される。
【0062】
さらに、実施例1の車両用内装品1においては、固定具2の軸線a方向すなわち内装パネル4に対するケース7の取り付け方向Aは、車両前後方向に対して45°で交差する。このため、ケース7と内装パネル4とは、その取り付け時において、車両前後方向および上下方向の2方向に位置規制され、互いに適切な位置に案内される。
【0063】
これらの協働により、実施例1の車両用内装品1においては、ケース7と内装パネル4とが互いに精度高く位置決めされるとともに、開口45の端45eとケース7の外縁7eとの隙間gの大きさも精度高くコントロールされる。
【0064】
実施例1の車両用内装品1において、ケース側ガイド部72はケース7のうちレンズ部71に設けられている。レンズ部71はケース7のうち開口45に隣り合う部分であり、ケース7の外縁7eと開口45の端45eとの距離は、実質的には、レンズ部71の外縁と開口45の端45eとの距離である。このようなレンズ部71にケース側ガイド部72を設けることで、ケース7の外縁7eすなわちレンズ部71の外縁を開口45に対して直接的に位置決めすることができ、その結果、開口45の端45eとケース7の外縁7eとの隙間gの大きさをより精度高くコントロールできる利点がある。換言すると、実施例1においては、ケース7のなかでも開口45の近傍に位置するレンズ部71に、ケース側ガイド部72を設けることで、ケース7の外縁7eと開口45の端45eとをより精密に位置決めでき、その結果、開口45の端45eとケース7の外縁7eとの隙間gの大きさをより精度高くコントロールできる、と言い得る。
【0065】
なお、本発明の車両用内装品1において、ケース側ガイド部72はケース7のうちベース部75に設けても良い。この場合には、ケース7の外縁7eすなわちレンズ部71の外縁は、ベース部75を介して、開口45に対して間接的に位置決めされる。このため、この場合には、例えば内装パネル4やケース7の寸法誤差等により、レンズ部71の外縁と開口45の端45eとに互いに近づく方向の力が作用する場合にも、ベース部75が僅かに撓み、かつ、レンズ部71が僅かに撓むことにより、当該力を緩和することができる利点がある。
【0066】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0067】
1:車両用内装品
2:固定具
3:照明装置
30:発光部
4:内装パネル
45:開口
45e:開口の端
61:パネル側ガイド部
62:パネル側傾斜面
7:ケース
7e:ケースの外縁
71:レンズ部
72:ケース側ガイド部
73:ケース側傾斜面
75:ベース部
A:内装パネルに対するケースの取り付け方向
a:ネジの軸線