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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】検出装置、管理装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240618BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240618BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240618BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240618BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240618BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
G01R31/378
G01R31/392
G01R31/389
G01R27/02 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021100855
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000182
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235846(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147572(WO,A1)
【文献】特開2020-165859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/378
G01R 31/392
G01R 31/389
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池の状態を検出する検出装置であって、
リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加する共振回路を1以上有し、1以上の共振電流の減衰特性を測定し検出信号として出力する検出部と、
前記検出部から取得した減衰特性の前記検出信号を用いて前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する制御部と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記共振電流の減衰特性として複数時刻の電圧値を用いて電池抵抗を推定することによって前記リチウムの析出及び/又は前記異物金属の存在を検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、1以上の前記共振回路と、共振回路から出力された信号を整流して前記検出信号として出力する検波器と、前記共振回路を駆動させる駆動回路と、を備える、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記リチウムイオン二次電池に並列接続されたピックアップコイル付きインダクタと前記インダクタに直列接続された共振コンデンサと前記インダクタに直列接続された半導体スイッチとを含む前記共振回路で構成される閉回路と、前記インダクタに流通する共振電流を検出するピックアップコイルと該ピックアップコイルに接続されたダイオードブリッジで構成された整流回路とコンデンサ及び抵抗を含み整流波形をフィルターし前記検出信号を出力するフィルタとを有する前記検波器と、前記リチウムイオン二次電池に並列接続された駆動用コンデンサと前記駆動用コンデンサから電力供給されたバッファを介して前記半導体スイッチをオンする前記駆動回路と、を備えた、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、サンプル及びホールド回路を1以上有し前記検出信号を演算するロジック演算器と、直列キャパシタを有し駆動回路へ駆動信号を出力する絶縁器と、前記絶縁器へ駆動信号を出力し前記ロジック演算器から前記検出信号を入力する主演算器と、を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記共振回路が5MHz以下の範囲の周波数振動を印加したときのインピーダンスの実部の低下に基づいて前記リチウムイオン二次電池内部でのリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記共振回路が10MHz以上の範囲の周波数振動を印加したときのインピーダンスの実部の増加に基づいて前記リチウムイオン二次電池の電極上の被膜の形成を検出する、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記リチウムイオン二次電池は、前記検出部が接続された単セルが複数並列又は直列に接続されており、
前記制御部は、複数の前記検出部が接続されており、いずれかの前記単セルの内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出部は、接続された前記リチウムイオン二次電池を識別する識別情報を有し、前記検出信号と前記識別情報とを対応付けて出力する、請求項1~8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記リチウムイオン二次電池には、不可逆スイッチが直列接続されており、
前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池が異常状態であると判定したときには、前記不可逆スイッチをオフにする、請求項1~9のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の検出装置から取得した情報に基づいて前記リチウムイオン二次電池を管理する管理装置であって、
前記制御部から出力された前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用い、活性リチウムの残容量から、該リチウムイオン二次電池の用途を限定して利用する管理部、
を備えた管理装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の検出装置から取得した情報に基づいて前記リチウムイオン二次電池を管理する管理装置であって、
前記制御部から出力された前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用い、活性リチウムの残容量から、残利用時間を含む該リチウムイオン二次電池の残存価値を定量化する管理部、を備えた管理装置。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の検出装置から取得した情報に基づいて前記リチウムイオン二次電池を管理する管理装置であって、
前記制御部から出力された前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用いて流通価値を算出し、算出された流通価値を出力する管理部、を備えた管理装置。
【請求項14】
リチウムイオン二次電池の状態を検出する検出方法であって、
リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加し、1以上の共振電流の減衰特性を測定し検出信号として出力する出力ステップと、
前記出力ステップで取得した減衰特性の前記検出信号を用いて前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する検出ステップと、
を含む検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では検出装置、管理装置及び検出方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電デバイスの劣化判定方法としては、例えば、複数の周波数における電池のインピーダンスを計測し、その実数成分に基づいて、鉛蓄電池の集電部の腐食劣化を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、リチウムイオン二次電池の劣化判定方法としては、電解液の凍結温度と容量とを測定し、これらを用いてリチウム析出による容量低下量の割合を求めるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この劣化判定方法では、材料劣化による容量低下とリチウム析出による容量劣化とを精度よく算出することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6436271号
【文献】特開2018-200800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1では、鉛蓄電池の集電体の腐食に関する劣化については検討されているが、リチウムイオン二次電池のリチウム析出に関する劣化については検討されていなかった。また、上述の特許文献2では、電解液の凍結温度を測定する必要があり、簡便な手法ではなく、新たな手法が望まれていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の状態を検出することができる新規な検出装置、管理装置及び検出方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、共振回路を用いてリチウムイオン二次電池に特定の周波数振動を印加したあとの共振電流の減衰特性から電池抵抗を推定することができ、更に、この電池抵抗から電池内部のリチウム析出量や被膜生成などの状態を推定することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する検出装置は、
リチウムイオン二次電池の状態を検出する検出装置であって、
リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加する共振回路を1以上有し、1以上の共振電流の減衰特性を測定し検出信号として出力する検出部と、
前記検出部から取得した前記減衰特性の検出信号を用いて前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する制御部と、
を備えたものである。
【0008】
本明細書で開示する管理装置は、
上述した検出装置から取得した情報に基づいて前記リチウムイオン二次電池を管理する管理装置であって、
前記制御部から出力された前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用い、活性リチウムの残容量から、該リチウムイオン二次電池の用途を限定して利用する管理部、
を備えたものである。
【0009】
本明細書で開示する検出方法は、
リチウムイオン二次電池の状態を検出する検出方法であって、
リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加し、1以上の共振電流の減衰特性を測定し検出信号として出力する出力ステップと、
前記出力ステップで取得した前記減衰特性の検出信号を用いて前記リチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する検出ステップと、
を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の検出装置、管理装置及び検出方法では、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の状態を検出することができる。本開示がこのような効果を奏する理由は、以下のように推察される。例えば、共振回路を用いてリチウムイオン二次電池に特定の周波数振動を印加したあとの共振電流の減衰特性から電池抵抗を推定することができる。更に、この電池抵抗から、例えば、電池内部のリチウム析出量や、被膜生成などの内部状態を推定することができる。本開示では、リチウムイオン二次電池の使用中にオンボードでセル状態を検出可能である簡素な共振回路の検出部を用いることができる。したがって、本開示では、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電池管理システム10の一例を示す説明図。
図2】検出装置32の一例を示す説明図。
図3】検出部300及び制御部310の一例を示す説明図。
図4】別の検出部300A及び制御部310Aの一例を示す説明図。
図5】検出部300の一例を示す説明図。
図6】別の検出部300Bの一例を示す説明図。
図7】別の検出部300Bの一例を示す説明図。
図8】制御部310の一例を示す説明図。
図9】別の回路構成の一例を示す説明図。
図10】インダクタL1,L2の一例を示す説明図。
図11】等価回路モデルの一例を示す説明図。
図12】劣化における周波数とインピーダンス実部との関係図。
図13】共振電流の減衰特性の一例を示す説明図。
図14】セルの状態を検出する演算処理の概要を示すフローチャート。
図15】検出処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
図16】検出装置32の様々な形態の説明図。
図17】セル301を直列で接続した検出装置32Fの一例を示す説明図。
図18】セル301を並列で接続した検出装置32Gの一例を示す説明図。
図19】複数のセル301に接続された検出装置32Hの一例を示す説明図。
図20】セル貸し出し用のデータストレージの一例を示す説明図。
図21】セル販売用のデータストレージの一例を示す説明図。
図22】別の検出部300Cの一例を示す説明図。
図23】別の検出部300Dの別の一例を示す説明図。
図24】別の検出部300Eの別の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(電池管理システム10)
本明細書で開示する検出装置の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、電池管理システム10の一例を示す概略説明図である。図2は、検出装置32の一例を示す説明図である。図3は、検出部300及び制御部310の一例を示す説明図である。図4は、別の検出部300A及び制御部310Aの一例を示す説明図である。図5は、検出部300の一例を示す説明図である。図6は、別の検出部300Bの一例を示す説明図である。図7は、別の検出部300Bの一例を示す説明図である。図8は、制御部310の一例を示す説明図である。図9は、別の回路構成の一例を示す説明図である。図10は、インダクタL1,L2の一例を示す説明図である。
【0013】
まず、測定対象であるセル301について説明する。セル301は、リチウムイオン二次電池として構成されている。セル301は、例えば、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えるものとしてもよい。正極は、正極活物質として、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを含むものとしてもよい。正極活物質は、例えば、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物などを用いることができる。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。負極は、負極活物質として炭素材料やリチウムを含む複合酸化物などを含むものとしてもよい。負極活物質は、例えば、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素材料としては、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。イオン伝導媒体は、例えば、支持塩を溶解した電解液とすることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6やLiBF4、などのリチウム塩が挙がられる。電解液の溶媒は、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類等が挙げられる。また、イオン伝導媒体は、固体のイオン伝導性ポリマーや、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。このセル301は、正極と負極との間にセパレータを配置してもよい。
【0014】
電池管理システム10は、例えば、製造したリチウムイオン二次電池(セル301)の販売や使用管理を実行するシステムである。この電池管理システム10は、生産者サーバ20と、管理サーバ25と、電池システム30とを備えている。生産者サーバ20は、セル301の製造を行う生産者が有するものであり、検出装置32から取得した情報に基づいてリチウムイオン二次電池を管理する管理装置である。この生産者サーバ20は、電池システム30から取得したセル301に含まれる異物金属の存在などに関する情報を管理部21が求め、品質管理を行うものとしてもよい。
【0015】
管理サーバ25は、セル301の使用時の管理を行う管理者が有するものであり、検出装置32から取得した情報に基づいてリチウムイオン二次電池を管理する管理装置である。管理サーバ25は、電池システム30から取得したセル301の状態に関する情報などをストレージ27,28に記憶し、管理部26により、使用したセル301の回収や、交換、保守の内容を設定する処理を実行する。例えば、管理サーバ25は、検出装置32から出力されたリチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用い、活性リチウムの残容量から、このリチウムイオン二次電池の用途を限定して利用するものとしてもよい。また、管理サーバ25は、検出装置32から出力されたリチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用い、活性リチウムの残容量から、残利用時間を含むこのリチウムイオン二次電池の残存価値を定量化する処理を行うものとしてもよい。あるいは、管理サーバ25は、検出装置32から出力されたリチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出の検出結果を用いて流通価値を算出し、算出された流通価値を出力するものとしてもよい。
【0016】
電池システム30は、セル301を用いて負荷31を駆動するシステムである。この電池システム30は、例えば、車両の駆動システムや、家庭のエネルギー供給システムなどに利用される。電池システム30は、セル301の状態を検出する検出装置32を備えている。また、電池システム30は、セル301の温度を測定する温度センサ311など、セル301の管理制御に必要なセンサなどを有している。検出装置32は、セル301の状態として、例えば、リチウムの析出状態や、被膜の形成状態などを含む劣化状態を検出することができる。また、検出装置32は、電池内部おける異物金属の混入状態を検出することができる。
【0017】
検出装置32は、図1、2に示すように、検出部300と、制御部310とを備えている。検出部300は、測定対象のセル301にオンボードで接続されたセンサとして構成されている。検出部300は、リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加する共振回路302を1以上有し、1以上の共振電流の減衰特性を測定し検出信号として制御部310へ出力する。この検出部300は、図2に示すように、1以上の共振回路302と、共振回路302から出力された信号を検出信号として出力する検波器303と、共振回路302を駆動させる駆動回路304とを備えるものとしてもよい。制御部310は、電池監視ユニット(BMU)として構成されており、検出部300からの検出信号を入力し、セル301の状態に関する情報を取得し、管理する。この制御部310には、複数の検出部300が接続されているものとしてもよい。制御部310は、検出部300が接続されたセル301が複数並列又は直列に接続されたリチウムイオン二次電池のいずれかのセル301の内部のリチウムの析出及び異物金属の存在のうち少なくとも一方を検出するものとしてもよい。この制御部310は、検出部300から取得した減衰特性の検出信号を用いてリチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する。この制御部310は、図2に示すように、検出部300の駆動回路304へ駆動信号を出力する絶縁器305と、検出部300から出力された検出信号を演算するロジック演算器306と、絶縁器305へ駆動信号を出力しロジック演算器306から検出信号を入力する主演算器307とを備えるものとしてもよい。
【0018】
検出部300は、例えば、図3~7に示したいずれかの構成を具体例として有するものとしてもよい。共振回路302は、図3に示すように、セル301に並列接続されたピックアップコイル付きインダクタL1と、インダクタL1に直列接続された共振コンデンサC1と、共振コンデンサC1に並列接続された抵抗R1と、インダクタL1に直列接続された半導体スイッチS1とを含む閉回路で構成される。共振回路302は、周波数領域A1として、5MHz以下の範囲の周波数振動をセル301に印加するものとしてもよい。この周波数領域A1は、例えば、0.5MHz以上としてもよく、0.8MHz以上2MHz以下の範囲としてもよい。この範囲では、リチウムの析出状態を把握しやすい。あるいは、共振回路302は、周波数領域A2として、10MHz以上の範囲の周波数振動をセル301に印加するものとしてもよい。この周波数領域A2は、例えば、100MHz以下としてもよく、20MHz以上40MHz以下の範囲としてもよい。この範囲では、被膜の析出状態を把握しやすい。検波器303は、共振回路302から出力された信号を整流して検出信号として出力するものとしてもよい。検波器303は、例えば、図3、5に示すように、ピックアップコイルL2と、整流回路308と、フィルタ309とを有するものとしてもよい。ピックアップコイルL2は、インダクタL1に対向して設けられ、インダクタL1に流通する共振電流を検出する。整流回路308は、ピックアップコイルL2に接続されたダイオードDr1~Dr4を有するダイオードブリッジで構成されているものとしてもよい。フィルタ309は、図5に示すように、コンデンサCf及び抵抗Rfを含み整流波形をフィルタし検出信号をBMUとしての制御部310へ出力するものとしてもよい。あるいは、検波器303は、共振回路302から出力された信号を検出信号として出力できればよく、図4に示すように、整流回路308やフィルタ309を省略してもよい。駆動回路304は、半導体スイッチS1をオンする回路であり、例えば、図5に示すように、セル301にダイオードDx1を介して並列接続された駆動用コンデンサCx1と駆動用コンデンサCx1から電力供給されたバッファBUF1を介して半導体スイッチS1を駆動するものとしてもよい。
【0019】
制御部310は、例えば、図3、4、8に示したいずれかの構成を有するものとしてもよい。制御部310は、例えば、共振電流の減衰特性として複数時刻の電圧値Venv1,Venv2を用いて電池抵抗Rbatを推定することによってリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出するものとしてもよい。ロジック演算器306は、図3、8に示すように、サンプル及びホールド回路を1以上有するものとしてもよい。絶縁器305は、直列キャパシタを有し駆動回路304へ駆動信号を出力するものとしてもよい。絶縁器305は、簡易的な直列キャパシタとしロジック演算器306にはサンプル&ホールド回路を2~3器使用するものとしてもよい。検出装置32では、制御部310からの発信信号は絶縁器305で絶縁し、かつ、検出部300からの信号はピックアップコイルの効果により絶縁されている。このため、検出装置32は、測定対象のセル301を直列に接続した複数のセルで構成される大容量のモジュールの測定に対して問題が生じない特徴を有する。この制御部310は、共振回路302が5MHz以下の範囲の周波数振動を印加したときのインピーダンスの実部の低下に基づいてリチウムイオン二次電池内部でのリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出するものとしてもよい。また、制御部310は、共振回路302が10MHz以上の範囲の周波数振動を印加したときのインピーダンスの実部の増加に基づいてセル301の電極上の被膜の形成を検出するものとしてもよい。
【0020】
この検出装置32は、図4に示すように、駆動回路304にピックアップコイルを設け、絶縁器305に共振コイルを設け、駆動回路304と絶縁器305とを物理的に分離すると共に、共振回路302と検波器303との間を物理的に分離する検出部300Aと制御部310とを備えるものとしてもよい。この図4では、入力信号はRFIDを用い、駆動回路304側では電源レスで動作可能なRFID-TAGを用いることにより、完全な無線でセンサの動作及び信号の受信を可能にすることができる。ない、ワイヤレス化の際に、結合係数が問題となることがあるが、入力信号は1,0のデジタル信号であるため、問題とならず、減衰率から抵抗を計算することから、受信側の共振振動信号は結合係数に依存せずに演算が可能である。
【0021】
また、図6、7に示すように、共振回路302Aとこれを駆動する駆動回路304A、共振回路302Aと異なる周波数で共振する共振回路302Bとこれを駆動する駆動回路304Bのように、複数の共振回路を有する検出部300Bとしてもよい。この検出部300Bでは、比較的簡素な回路構成で、セル301に対して並列接続された複数の共振回路により、複数の異なる周波数帯、例えば、5MHz以下の範囲の周波数や10MHz以上の範囲の周波数で共振電流の減衰特性を得ることができる。この検出部300では、共振回路302Bは、インダクタL1に直列接続された共振コンデンサC2と、共振コンデンサC2に並列接続された抵抗R21と、インダクタL1に直列接続された半導体スイッチS2とを含む。また、共振回路302Bは、セル301にダイオードDx2を介して並列接続された駆動用コンデンサCx2と駆動用コンデンサCx2から電力供給されたバッファBUF2を介して半導体スイッチS2をオンする駆動回路304Bにより駆動される。
【0022】
また、図9に示すように、共振器による減衰波形から減衰率を計算する検波器303やロジック演算器306の構成例は他にも挙げられる。例えば、ダイオードにより包絡線整流を行わなくても、減衰振動波形に対してピークホールド回路を用いることで、減衰率の計算に必要な電圧差を取得することができる。共振周波数はLとCとによって固定されており、減衰振動のピークタイミングはあらかじめ予測できるため、例えば2個目の極大点と5個目の極大点のピークをホールドできるようにピークホールド回路を動かすことで、二つの極大点の電圧を取得できる。あるいは、高速なADCを用いるものとして、減衰振動波形すべてを取得して、減衰率の計算に用いてもよい。
【0023】
インダクタL1,L2は、図10Aに示すように、磁性体MでインダクタL1,L2を覆う閉磁路トランスとしてもよいし、図10Bに示すように、側面を開放した開磁路トランスとしてもよいし、図10Cに示すように、インダクタL1,L2を分離したワイヤレストランスとしてもよい。検出部300及び制御部310が有する構成に応じて適宜適したものを選択するものとすればよい。
【0024】
ここで、検出装置32の動作原理について説明する。図11は、リチウムイオン二次電池の等価回路モデルの一例を示す説明図であり、図11Aが機械構造モデル、図11Bが等価回路のフルモデル、図11Cが簡略した等価回路モデル、図11Dが高周波機能での等価回路モデルである。図12は、劣化における周波数とインピーダンス実部との関係図である。図13は、共振電流の減衰特性の一例を示す説明図である。特に図11Dは、その構成要素のうち、高周波で支配的となるパラメータを抽出した等価回路である。表1に各要素に関する注記をまとめた。図12は、図11の等価回路モデルと、式(1)を用いて計算したインピーダンス特性結果を示す。リチウムイオン二次電池の劣化パターンの1つに電池内部でのリチウム金属の析出があり、金属析出が多いほど電池が不安全になることが懸念される。ここでは、リチウムイオン二次電池の状態として、初期電池、リチウム析出劣化電池、SEI(被膜)析出劣化電池の3つを検討した。図12の領域A1で示すように、5MHz以下の範囲、特に1MHz前後でリチウム析出量に応じて実部インピーダンスの減少を確認できる。一方、この周波数領域では、SEI析出劣化電池では、初期電池に比して実部インピーダンスの増加を確認できる。即ち、実部インピーダンスの減少、増加に基づいて、電池劣化がリチウム析出と被膜析出とのいずれであるかを明確に区別することができる。また、10MHz以上の範囲、特に20MHz前後の領域A2において、SEI析出量に応じたインピーダンスの増加が確認できる。即ち、この周波数領域では、リチウム析出劣化よりもSEI析出劣化の影響が大きく現れるものと推察される。なお、図12は、式(1)による計算結果を示しているが、18650型リチウムイオン二次電池を用いて計測した結果も図12に示す波形と同じ傾向を示したことから、この計算結果が正しいことが確認されている。
【0025】
検出部300の特長は、簡素、短時間、正確に高周波インピーダンスの実部成分をオンボード測定可能とする点である。図13は、図12の構成を持ったリチウムイオン二次電池の代表的な動作例である。ある時刻に、BMUとしての制御部310から絶縁器305を介してステップ的なオン信号が入力される。この信号を受けて、駆動回路304は、セル301から充電された駆動コンデンサCx1に蓄電された電力を用いて、半導体スイッチS1の駆動を行い、共振回路302にある半導体スイッチS1をオンする。半導体スイッチS1がオンされると、セル301は、インダクタL1、共振コンデンサC1で設計された共振周波数で振動しながら、共振コンデンサC1をセル301の電圧まで充電する。この共振動作の振動は、共振経路に含まれる抵抗成分、すなわちセル301に含まれる特定周波数に対する電池抗Rbatによって減衰する。すなわち、セル301の内部インピーダンスの大小によってその減衰率が変わるので、その減衰率から電池抵抗Rbatを算出することができる。この算出を行うために、ピックアップコイルL2で検出される信号波形を整流回路308のダイオードブリッジで整流し、振動の包絡線を得る。その包絡線の複数時刻(t1,t2)の電圧値Venv1,Venv2から、電池抵抗Rbatを算出することができる。
【0026】
以下の式(2)、(3)は、インダクタL1に流れる共振電流の式、およびピックアップコイルL2から得られる包絡線出力波形から電池抵抗Rbatを算出するための基本式となる。式(2)は、時刻t=0に半導体スイッチS1を閉じたとき、検出部300の回路に流れる電流の式である。また、式(3)は、時刻t1,t2において、その時の包絡線電圧Venv1,Venv2の値から、電池抵抗Rbatを求める式である。式(2)から、包絡線の減衰はexpの肩の値にある抵抗Rbatで変化することが解り、その値は式(3)のように、2点の包絡線の値の比から測定することができる事が解る。本方式は、電池の自己電力(電圧V)で検出部300を駆動可能で構成がシンプルであり、かつ、電池の電圧Vは充電状態で変化するがその電圧変化に依存することが無い点が利点である。これは、式(3)に電池の電圧Vが含まれていないことからわかる。また、本方式は、インダクタL1,共振コンデンサC1で設計する特定の共振周波数に対しての抵抗をピンポイントで得られる点や、シングルショットで動作し、極めて低消費電力な点、2つの電圧値Venv1,Venv2が汎用のサンプル&ホールド回路で取得することができるといった特徴があり、実際の実装に関しての課題が少ないことが利点である。
【0027】
検出部300では、共振回路302の設計に推定精度が依存する。まず、共振動作が減衰振動を発生することが必要であり、かつその系の抵抗成分において電池の抵抗Rbatが支配的である必要がある。共振周波数の帯域を1MHzとした場合、共振の鋭さQを50~100程度にとれば、数10~数100mΩのレンジでの電池抵抗変化を検知することができる。これらは、ピックアップコイル付きリアクトルの抵抗を小さく設計することで実現することができる範囲である。また、拡散、反応などが追従できないほど高い周波数かつ、測定可能で、配向分極の影響が生じる周波数以下である1MHz前後の周波数帯において、リチウム析出による抵抗減少を捕捉可能である。また、検出装置32では、特定の周波数に絞り、減衰特性を計測するため、より簡素でかつより簡易な極小サイズのセンサ回路をセル301にオンボードで実装可能である。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
【表1】
【0031】
(検出方法)
次に、こうして構成された本実施形態の検出装置32の動作、特に、検出装置32が実行する、リチウムイオン二次電池の状態を検出する検出方法について説明する。この検出方法は、例えば、リチウムイオン二次電池に1以上の特定の周波数振動を印加し、この共振電流の減衰特性を測定し検出信号として出力する出力ステップと、出力ステップで取得した減衰特性の検出信号を用いてリチウムイオン二次電池内部のリチウムの析出及び/又は異物金属の存在を検出する検出ステップと、を含むものとしてもよい。ここでは、検出ステップでは、説明の便宜のため、リチウムの析出を検出し、電池の劣化を検出する場合について主として説明する。
【0032】
図14は、制御部310のロジック演算器306に実装されたセルの状態を検出する演算処理の概要を示すフローチャートであり、図14Aが周波数領域A1での演算処理であり、図14Bが周波数領域A2での演算処理である。ロジック演算器306は、例えば整流に用いるダイオードの温度特性を補償するための補正演算や、必要に応じて二つの周波数測定が可能なロジックを実装し、劣化量、析出量の演算を行う。さらに、その結果をトレーサブルな形でデータベースに記録することで、劣化・析出の推移や要因の断定などに役立てることができる。また、同様の原理を用いると、電池内部に金属異物が混入した際に生じる抵抗変化を検知することが可能であり、生産者サーバ20において、この情報を用いて生産工程における品質を向上することが可能となる。ロジック演算器306は、図14Aに示すように、周波数領域A1において共振電流の減衰特性を測定し電池抵抗Rbatを取得し、事前に取得したMAPを用いて抵抗変化量からリチウム金属析出量を得る処理を実行する(S10)。MAPは、例えば、抵抗変化量とリチウム金属析出量との関係を予め実験などで経験的に得たものに基づいて設定することができる。そして、制御部310は、例えば、得られたリチウム金属析出量から該当するセル301の安全率などを提示する。あるいは、ロジック演算器306は、図14Bに示すように、S10の演算のあと、周波数領域A2において共振電流の減衰特性を測定し電池抵抗Rbatを取得し、事前に取得したMAPを用いて抵抗変化量から残容量SOCを得る処理を実行する(S20)。MAPは、例えば、抵抗変化量と残容量SOCとの関係を予め実験などで経験的に得たものに基づいて設定することができる。そして、制御部310は、例えば、該当するセル301の安全率や残容量SOCなどを提示する。
【0033】
次に、より具体的な検出装置32の処理について説明する。図15は、検出装置32の主演算器307が実行する検出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、例えば所定時間経過後(例えば、1分や1時間)に繰り返し実行される。主演算器307は、検出部300や制御部310が有する回路構成を利用してこのルーチンを実行する。ここでは、具体例として、図7に示す共振回路302A,302Bを備えた検出部300Bを用い、周波数領域A1,A2で電池抵抗Rbatを測定する例について説明する。このルーチンを開始すると、主演算器307は、温度センサ311からセル301の温度Tを取得し(S100)、全ての周波数に対して処理を実行したかを判定する(S110)。全ての周波数に対して処理を実行していないときには、共振回路nにn+1をセットする(S120)。nは初期値が値0に設定されている。主演算器307は、例えば、S120で共振回路302の使用をセットする。
【0034】
次に、主演算器307は、駆動信号Vsnを絶縁器305を介して検出部300の半導体スイッチS1へ出力する(S130)。共振回路302は、周波数領域A1で共振した共振電流の減衰特性を測定する。次に、主演算器307は、電圧値Venv1,Venv2を測定する時間S/H1、S/H2を出力し(S140)、検波器303から出力された検出信号からサンプル及びホールドされた電圧値Venv1,Venv2をロジック演算器306から取得する(S150)。続いて、主演算器307は、電圧値を所定の平均回数取得したか否かを判定し(S160)、電圧値を所定の平均回数取得していないときには、S110以降の処理を実行する。即ち、S120で次の共振回路302をセットし、周波数領域A2で共振した共振電流の減衰特性を測定し、電圧値Venv1,Venv2をロジック演算器306から取得する。
【0035】
一方、S160で電圧値を所定の平均回数取得したときには、主演算器307は、ロジック演算器306から得られた電圧値Venv1,Venv2の値に温度Tでの温度補正を実行し(S170)、補正後の電圧値Venv1,Venv2から電池抵抗Rbatを求め、更にそれぞれの平均抵抗Rnを計算によって取得し(S180)、S110以降の処理を実行する。S110で全ての周波数での処理を完了したときには、主演算器307は、平均抵抗Rnをストレージに保存し(S190)、リチウム析出量Xと、被膜量Yとを算出し、出力する(S200)。リチウム析出量Xや被膜量Yの算出は、S10,S20の処理で行うことができる。
【0036】
続いて、主演算器307は、析出量Xが所定の許容範囲を超えているか否かによって過剰な析出が検出されたか否かを判定する(S210)。この許容範囲は、セル301の充放電に影響が生じるようなリチウム金属析出量を経験的に求め、その値に設定することができる。過剰な析出が検出されないときには、主演算器307は、被膜量Yが所定の許容範囲を超えているか否かに基づいて、許容範囲を超えた被膜析出の状態が検出されたか否かを判定する(S220)。この許容範囲は、セル301の充放電に影響が生じるような被膜析出量を経験的に求め、その値に設定することができる。被膜析出の劣化が検出されないときには、劣化度合いに応じたセル301の出力制限を実行し(S240)、このルーチンを終了する。
【0037】
一方、S210で過剰析出が検出されたとき、または、S220で被膜析出の劣化が検出されたときには、主演算器307は、該当するセル301の非常停止処理を実行し(S230)、このルーチンを終了する。このように、電池システム30では、短絡のおそれがあるリチウムの析出では、セル301の使用を停止し、容量劣化には、それに応じた出力制限を与えることによって、セル301の適切な使用を持続させるのである。
【0038】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のセル301が本開示のリチウムイオン二次電池に相当し、検出装置32が検出装置に相当し、生産者サーバ20や管理サーバ25が管理装置に相当し、検出部300が検出部に相当し、制御部310が制御部に相当する。また、共振回路302が共振回路に相当し、検波器303が検波器に相当し、駆動回路304が駆動回路に相当し、絶縁器305が絶縁器に相当し、ロジック演算器306がロジック演算器に相当し、主演算器307が主演算器に相当する。なお、本実施形態では、検出装置32の動作を説明することにより本開示の検出方法の一例も明らかにしている。
【0039】
以上説明した本実施形態の検出装置32では、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の劣化を検出することができる。検出装置32がこのような効果を奏する理由は、以下のように推察される。例えば、共振回路302を用いてリチウムイオン二次電池に特定の周波数振動を印加したあとの共振電流の減衰特性から電池抵抗Rbatを推定することができる。更に、この電池抵抗Rbatから、例えば、電池内部のリチウム析出量や、被膜生成などの内部状態を推定することができる。この検出装置32では、リチウムイオン二次電池の使用中にオンボードでセル状態を検出可能である簡素な共振回路302の検出部300を用いることができるから、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の劣化を検出することができる。また、検出装置32は、2つの周波数領域A1,A2で求めた電池抵抗Rbatを用いて、劣化状態に対する金属析出の割合を推定することができる。特に、周波数領域A1での実部インピーダンス変化から、電池内部でのリチウム金属析出量を推定することができる。また、周波数領域A2で求めた電池抵抗Rbatを用いて被膜析出量を推定することができ、リチウム金属析出量と組み合わせることによって、損失リチウムの量、即ちリチウムイオン二次電池の劣化をより正しく見積もることができる。
【0040】
また、検出装置32は、拡散、反応などが追従できないほど高い周波数かつ、測定可能で配向分極の影響がでる周波数以下である1MHz前後の周波数帯において、リチウム析出による抵抗減少を捕捉可能である。また、特定周波数に絞り、共振回路302、検波器303、駆動回路304、絶縁器305及びロジック演算器306などの比較的構成の簡素な回路を用いることによって、簡易かつ、極小サイズのセンサ回路を電池システム30実装することができる。そして、検出装置32は、非破壊でリチウムイオン二次電池内に生成したリチウム析出量を推定でき、許容範囲を基準にそのセル301を使用中に停止することができる。また、被膜量を推定することができ、この被膜量に応じた出力制限を実行することによって、セル301のより安全な使用を確保することができる。
【0041】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
例えば、図16は、検出装置32の様々な形態の説明図であり、図16Aがアナログインタフェースの検出装置32A、図16Bがアナログインタフェース且つID管理する検出装置32B、図16Cがデジタルインタフェースの検出装置32C、図16Dがワイヤレスインタフェースの検出装置32D、図16Eが電池単独での検出装置32Eの説明図である。図16は、検出部300および制御部310の実装構成例である。検出装置32Bでは、識別が容易となるようにセル301の識別情報IDを付与するRFID312を検出部300に設け、制御部310には、RFID313を設け、セル301の検出結果と識別情報IDとを対応付けて出力可能になっている。したがって、出力先の生産者サーバ20や管理サーバ25、検出装置32の表示部などにおいて、セル301を特定しやすい。また、検出装置32Cでは、検出部300にIDタグ314と、デジタルインタフェース(I/F)315とを設け、デジタルI/F315を介して主演算器307との情報のやりとりを行う構成である。この検出装置32Cは、制御部側を簡易化し、検出部,電池側を高機能にした例である。また、検出装置32Dは、検出部300にワイヤレスI/F316を設け、無線で主演算器307との情報のやりとりを行う構成である。また、検出装置32Eは、制御部310の機能を検出部300内に設けた構成であり、検出部300は、シーケンサ318と停止回路319とを備えている。また、セル301には、不可逆スイッチ320が直列接続されている。シーケンサ318は、定期的に駆動回路304へ駆動信号を出力し、停止回路319は、ロジック演算器306から取得した情報に基づいて、セル301が異常状態であると判定したときには、不可逆スイッチ320をオフにし、セル301の使用を停止する。この検出装置32Eにおいても、構成がより簡略であり、且つより簡便な手法でリチウムイオン二次電池の劣化を検出することができる。
【0043】
上述した実施形態では、セル301を1つ備えた電池システム30について説明したが、特にこれに限定されず、検出装置32は、セル301を直接に接続した電池システム30に用いるものとしてもよいし、セル301を並列に接続した電池システム30に用いるものとしてもよい。図17は、セル301を直列で接続した検出装置32Fの一例を示す説明図である。図18は、セル301を並列で接続した検出装置32Gの一例を示す説明図である。検出装置32Fでは、制御部310側に多重器401を設け、多重器401によりマルチプレクス処理を実行することによって、各々の検出部300の駆動及び検出信号の取得を行うことができる。
【0044】
図19は、複数のセル301で構成される電池モジュールを備えた電池システムに用いられる検出装置32Hの一例を示す説明図である。検出装置32Hでは、複数のセル301で構成される電池モジュールに対して検出部300Hを各々のセル301に実装し、BMUとしての制御部310側でマルチプレクス処理をすることで、すべてのセル301の状態を簡便に測定することができる。この検出装置32Hは、例えば、複数の電池モジュールが搭載された電気自動車などの電池を用いたシステムに用いられるものとしてもよい。この検出装置32Hは、それぞれのセル301に検出部300Hを接続し、複数の検出部300Hに対してBMUとしての制御部310Hを接続し、さらにその制御部310Hの信号を上位のECU410で取りまとめ、外部との通信手段を用いてトレーシングが可能な大容量のデータストレージ結果を保存する。ECU410は、記憶装置411と外部通信装置412とを備えており、検出装置32Hの検出結果を保存すると共に、外部のデータベース413などにその検出結果を提供することができる。また、システム内で検出値に対する閾値を設けておけば、ECU410内部でシステムの出力抑制などを含む、電池の保護動作(制御)が可能となる。図1に示すように、例えば電気自動車などの電池利用システムから発信された本測定データは、その他の利用記録(例えば走行データ等)と共にストレージB,Dに保存される。ストレージ27,28を管理する管理サーバ25は演算システムを有する管理部26により管理され、利用記録などを用いて、例えば回収、交換、保守などの情報を電池システム30側に提供することができる。また、生産者サーバ20を利用するアセンブリメーカは、検出装置32の検出結果を取得し、演算システムを有する管理部21により、その品質向上などに用いることができる。
【0045】
図20は、セル貸し出し用のデータストレージの一例を示す説明図である。図20、21は、管理者が提供可能なサービスの一例で、例えば、演算システムをリース電池管理の管理アルゴリズムとすれば、安全利用を管理可能な貸出サービスが提供できる。図20に示すように、電池リースシステム500は、顧客から、顧客ID、利用目的、使用期日、サービスポイント、使用場所などの情報を取得する。また、電池リースシステム500は、使用された電池モジュールの電池ID、残容量SOC、蓄電量、リチウム析出状態、劣化状態、使用場所などの情報を取得する。そして、電池リースシステム500は、貸し出す電池モジュールの価格、顧客との適合、メンテナンスや利用安全管理などを実行し、顧客への適切な電池モジュールの貸し出しを行うことができる。
【0046】
図21は、セル販売用のデータストレージの一例を示す説明図である。例えば、演算システムを劣化安全率管理のアルゴリズムとすれば、リユースに対する再販サービスを構築することができる。図21に示すように、電池リユースシステム510は、顧客から、顧客ID、利用目的、使用期日、サービスポイント、使用場所などの情報を取得する。また、電池リユースシステム510は、使用された電池モジュールの電池ID、残容量SOC、蓄電量、リチウム析出状態、劣化状態、使用場所などの情報を取得する。そして、電池リユースシステム510は、リユース販売する電池モジュールの価格、顧客との適合、メンテナンスや利用安全管理などを実行し、顧客への適切な電池モジュールのリユース販売を行うことができる。
【0047】
上述した実施形態では、検出装置32は、インピーダンスの実部のみを考慮した回路設計であるものとしたが、特にこれに限定されず、インピーダンスの虚部まで考慮した回路設計などを行うものとしてもよい。図22は、別の検出部300Cの一例を示す説明図である。図23は、別の検出部300Dの別の一例を示す説明図である。図24は、別の検出部300Eの別の一例を示す説明図である。図22~24に示すように、検出部300C~Eでは、検波器1のほかに、セル301に対して並列に検波器2を接続し、この検波器2からバッファBUF2を介して、制御部310へ検出信号を出力する構成になっている。また、図23の検出部300Dでは、ピックアップコイルL2に直列に接続されたハイパスフィルタHPF1と、セル301に直列に接続されたハイパスフィルタHPF2と、バッファBUF4を介してハイパスフィルタHPF1に接続されると共にバッファBUF5を介してハイパスフィルタHPF2に接続されたXORゲートXOR1とを備えている。XORゲートXOR1は、ローパスフィルタLPF1を介して制御部310に接続され、電圧Vf3を制御部310へ出力する。図24の検出部300Eでは、検出部300Dの構成に加えてハイパスフィルタHPF1の先を分岐させ位相差を設けてローパスフィルタLPF1,2を介して電圧Vsinf3,Vcosf3を制御部310へ出力するよう構成されている。図22~24に示したような構成を採用すれば、更なる検出精度を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本明細書で開示した検出装置、管理装置及び検出方法は、リチウムイオン二次電池の状態を検出する技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 電池管理システム、20 生産者サーバ、21 管理部、25 管理サーバ、26 管理部、27 ストレージ、28 ストレージ、30 電池システム、31 負荷、32,32A~32H 検出装置、300,300A~300H 検出部、301 セル、302A,302B 共振回路、303,303A,303B 検波器、304、304A,304B 駆動回路、305 絶縁器、306 ロジック演算器、307 主演算器、308 整流回路、309 フィルタ、310,310H 制御部、311 温度センサ、312 RFID、313 RFID、314 IDタグ、315 デジタルI/F、316 ワイヤレスI/F、318 シーケンサ、319 停止回路、320 不可逆スイッチ、401 多重器、410 ECU、411 記憶装置、412 外部通信装置、413 データベース、500 電池リースシステム、510 電池リユースシステム、A1,A2 周波数領域、BUF1~5 バッファ、HPF1,2 ハイパスフィルタ、LPF1,2 ローパスフィルタ、C1 共振コンデンサ、Cf フィルタコンデンサ、Cx1 駆動コンデンサ、Dx1 駆動ダイオード、Dr1~4 整流ダイオード、L1 インダクタ、L2 ピックアップコイル、M 磁性体、R1 抵抗、Rf フィルタ抵抗、Rbat 電池抵抗、S1,S2 半導体スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図19
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図24