(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】冷却システム、及び回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240618BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20240618BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/24 C
H02K3/04 E
(21)【出願番号】P 2021103082
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 航平
(72)【発明者】
【氏名】稲野 宏
(72)【発明者】
【氏名】川村 葉月
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知幸
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-058189(JP,A)
【文献】特開2011-234531(JP,A)
【文献】特開2016-101003(JP,A)
【文献】特開2019-080416(JP,A)
【文献】特表2004-516788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 3/24
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された回転電機と、
オイルが流通する冷却油路と、を備え、
前記回転電機は、
ステータコアと、
前記ステータコアに取り付けられ
、4つの側面を有する断面四角形状の複数のセグメントコイルと、を備えており、
前記ステータコアは、
前記車両の上下軸に対して直交する向きに延びる中心軸線を有する円環状のコア本体と、
前記コア本体の内周面から、前記中心軸線に向かって延びる複数のティースと、
を備えており、
前記セグメントコイルは、直線状に延びる一対の直線部分と、当該直線部分の端同士を繋ぐ一対の湾曲部分と、を備えており、
前記
直線部分は、
隣り合う前記ティース同士の間に
位置しており、
前記
湾曲部分は、前記中心軸線に沿う方向において、前記ステータコアの第1端から外側に飛び出しているコイルエンドを
構成しており、
前記冷却油路は、前記コイルエンドに向けてオイルを噴射するための噴射孔を備えており、
前記噴射孔は、前記コイルエンドから視て上側に位置しており、
前記中心軸線に沿う方向で視たときに、前記中心軸線及び前記上下軸の双方に直交する直線を仮想直線とし、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの上側を第1部分とし
、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの下側を第2部分としたとき、
前記セグメントコイルのうち前記第1部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線とは反対方向側を向く
前記4つの側面のうちの1つである外周面を有しており、
前記セグメントコイルの外周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有
しており、
前記セグメントコイルのうち前記第2部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線に向かう方向側を向く前記4つの側面のうちの1つであって前記外周面とは異なる面である内周面を有しており、
前記セグメントコイルの内周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する
冷却システム。
【請求項2】
前記セグメントコイルは、
前記セグメントコイルの表面に、平面視で円形状の窪みである複数のディンプルを備えている
請求項
1に記載の冷却システム。
【請求項3】
ステータコアと、
前記ステータコアに取り付けられ
、4つの側面を有する断面四角形状の複数のセグメントコイルと、を備えており、
前記ステータコアは、
中心軸線を有する円環状のコア本体と、
前記コア本体の内周面から、前記中心軸線に向かって延びる複数のティースと、
を備えており、
前記セグメントコイルは、直線状に延びる一対の直線部分と、当該直線部分の端同士を繋ぐ一対の湾曲部分と、を備えており、
前記
直線部分は、
隣り合う前記ティース同士の間に
位置しており、
前記
湾曲部分は、前記中心軸線に沿う方向において、前記ステータコアの第1端から外側に飛び出しているコイルエンドを
構成しており、
前記中心軸線に沿う方向で視たときに、前記中心軸線に直交する直線を仮想直線とし、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの一方を第1部分とし
、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの他方を第2部分としたとき、
前記セグメントコイルのうち前記第1部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線とは反対方向側を向く
前記4つの側面のうちの1つである外周面を有しており、
前記セグメントコイルの外周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有
しており、
前記セグメントコイルのうち前記第2部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線に向かう方向側を向く前記4つの側面のうちの1つであって前記外周面とは異なる面である内周面を有しており、
前記セグメントコイルの内周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する
回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム、及び回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の冷却システムは、回転電機と、オイルが流通する冷却油路と、を備えている。回転電機は、円環状のステータ、及びステータから視て内周側に位置するロータを備えている。ステータは、ステータコアと、複数のセグメントコイルとを備えている。ステータコアは円環状である。セグメントコイルは、ステータに巻き回されている。セグメントコイルは、ステータの中心軸線に沿う方向において、ステータの両端面から突出する部分、いわゆるコイルエンドを備えている。冷却油路は、噴射孔を備えている。冷却油路は、ステータコアから視て上方に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、冷却油路から回転電機のコイルエンドに向けてオイルが噴射されると、オイルは、コイルエンドに接触した後、重力に従ってそのまま下部へと流れ落ちる。そのため、オイルがコイルエンド全体へと亘らず、期待される冷却効果を得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、車両に搭載された回転電機と、オイルが流通する冷却油路と、を備え、前記回転電機は、ステータコアと、前記ステータコアに取り付けられ、4つの側面を有する断面四角形状の複数のセグメントコイルと、を備えており、前記ステータコアは、前記車両の上下軸に対して直交する向きに延びる中心軸線を有する円環状のコア本体と、前記コア本体の内周面から、前記中心軸線に向かって延びる複数のティースと、を備えており、前記セグメントコイルは、直線状に延びる一対の直線部分と、当該直線部分の端同士を繋ぐ一対の湾曲部分と、を備えており、前記直線部分は、隣り合う前記ティース同士の間に位置しており、前記湾曲部分は、前記中心軸線に沿う方向において、前記ステータコアの第1端から外側に飛び出しているコイルエンドを構成しており、前記冷却油路は、前記コイルエンドに向けてオイルを噴射するための噴射孔を備えており、前記噴射孔は、前記コイルエンドから視て上側に位置しており、前記中心軸線に沿う方向で視たときに、前記中心軸線及び前記上下軸の双方に直交する直線を仮想直線とし、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの上側を第1部分としたとき、前記セグメントコイルのうち前記第1部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線とは反対方向側を向く前記4つの側面のうちの1つである外周面を有しており、前記セグメントコイルの外周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する冷却システムである。
【0006】
上記構成では、噴射孔から噴射されたオイルは、第1部分のセグメントコイルのうちの外周面に当たる。セグメントコイルの外周面に当たったオイルは、セグメントコイルからステータ外に零れ落ちたり、セグメントコイルの外周面に沿って流れたりする。上記構成によれば、セグメントコイルの外周面に当たったオイルは、当該外周面のうちのねじれ面に沿って、ステータコアの第1端側へと案内されやすい。そのため、オイルがステータ外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータの第1端側へと案内されたオイルは、多数のセグメントコイル上を伝いつつ落下していくので、コイルエンドが効率的に冷却される。
【0007】
上記構成において、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの下側を第2部分としたとき、前記セグメントコイルのうち前記第2部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線に向かう方向側を向く前記4つの側面のうちの1つであって前記外周面とは異なる面である内周面を有しており、前記セグメントコイルの内周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する冷却システムとしてもよい。
【0008】
上記構成では、第1部分のセグメントコイルから落下したオイルは、第2部分のセグメントコイルのうちの内周面に当たる。セグメントコイルの内周面に当たったオイルは、セグメントコイルからステータ外に零れ落ちたり、セグメントコイルの内周面に沿って流れたりする。セグメントコイルの内周面に当たったオイルは、当該内周面のうちのねじれ面に沿って、ステータコアの第1端側へと案内されやすい。そのため、オイルがステータ外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータの第1端側へと案内されたオイルは、多数のセグメントコイル上を伝いつつ落下していくので、コイルエンドが効果的に冷却される。
【0009】
上記構成において、前記セグメントコイルは、前記セグメントコイルの表面に、平面視で円形状の窪みである複数のディンプルを備えている冷却システムとしてもよい。上記構成によれば、セグメントコイルを伝って流れるオイルは、セグメントコイルの表面を滑らかに流通する。そのため、オイルがセグメントコイルからステータ外へと零れ落ちにくい。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ステータコアと、前記ステータコアに取り付けられ、4つの側面を有する断面四角形状の複数のセグメントコイルと、を備えており、前記ステータコアは、中心軸線を有する円環状のコア本体と、前記コア本体の内周面から、前記中心軸線に向かって延びる複数のティースと、を備えており、前記セグメントコイルは、直線状に延びる一対の直線部分と、当該直線部分の端同士を繋ぐ一対の湾曲部分と、を備えており、前記直線部分は、隣り合う前記ティース同士の間に位置しており、前記湾曲部分は、前記中心軸線に沿う方向において、前記ステータコアの第1端から外側に飛び出しているコイルエンドを構成しており、前記中心軸線に沿う方向で視たときに、前記中心軸線に直交する直線を仮想直線とし、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの一方を第1部分としたとき、前記セグメントコイルのうち前記第1部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線とは反対方向側を向く前記4つの側面のうちの1つである外周面を有しており、前記セグメントコイルの外周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する回転電機のステータである。
【0011】
上記構成のステータを、中心軸線が水平面に平行、且つ第1部分が上側になるように配置し、ステータの上側からオイルを供給したとする。このときオイルは、第1部分のセグメントコイルのうちの外周面に当たる。セグメントコイルの外周面に当たったオイルは、セグメントコイルからステータ外に零れ落ちたり、セグメントコイルの外周面に沿って流れたりする。上記構成によれば、セグメントコイルの外周面に当たったオイルは、当該外周面のうちのねじれ面に沿って、ステータコアの第1端側へと案内されやすい。そのため、オイルがステータ外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータの第1端側へと案内されたオイルは、多数のセグメントコイル上を伝いつつ落下していくので、コイルエンドが効率的に冷却される。
【0012】
上記構成において、前記仮想直線で二分される前記コイルエンドのうちの他方を第2部分としたとき、前記セグメントコイルのうち前記第2部分を構成している部分は、当該部分から視て前記中心軸線に向かう方向側を向く前記4つの側面のうちの1つであって前記外周面とは異なる面である内周面を有しており、前記セグメントコイルの内周面は、前記ステータコアの前記第1端に近づくほど、前記ステータコア側を向くねじれ面を有する回転電機のステータとしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1部分を上側、第2部分を下側となるように配置した場合に、第1部分のセグメントコイルから落下したオイルは、第2部分のセグメントコイルのうちの内周面に当たる。セグメントコイルの内周面に当たったオイルは、セグメントコイルからステータ外に零れ落ちたり、セグメントコイルの内周面に沿って流れたりする。セグメントコイルの内周面に当たったオイルは、当該内周面のうちのねじれ面に沿って、ステータコアの第1端側へと案内されやすい。そのため、オイルがステータ外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータの第1端側へと案内されたオイルは、多数のセグメントコイル上を伝いつつ落下していくので、コイルエンドが効果的に冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】セグメントコイルのディンプルを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<概略構成>
以下、冷却システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、冷却システム100は、モータジェネレータ10と、冷却油路50と、を備えている。
【0018】
モータジェネレータ10は、ステータ20と、ロータ40と、を備えている。モータジェネレータ10は、回転電機の一例である。モータジェネレータ10は、車両に搭載されている。なお、車両の図示は省略している。
【0019】
ステータ20は、全体として円環状である。ステータ20は、ステータコア30と、ステータコア30に取り付けられている複数のセグメントコイル21と、を備えている。ステータコア30は、全体として円環状になっている。したがって、ステータコア30は、中心軸線CAを有している。なお、ステータコア30の中心軸線CAが車両の上下軸に対して直交するように、モータジェネレータ10が車両に搭載されている。ステータコア30は、磁性体である電磁鋼板を複数積層することにより形成されている。
【0020】
セグメントコイル21は、中心軸線CAに沿う方向において、ステータコア30の第1端から外側に飛び出しているコイルエンド22を備えている。また、セグメントコイル21は、中心軸線CAに沿う方向において、ステータコア30の第1端と反対方向の第2端から外側に飛び出しているコイルエンド22を備えている。すなわち、セグメントコイル21は、ステータコア30の両端面から突出する部分としてコイルエンド22を備えている。なお、
図1では、複数のセグメントコイル21をまとめて、円筒状に図示している。
【0021】
ロータ40は、全体として円柱状である。ロータ40は、ステータ20から視て内周側に位置している。ロータ40は、ロータシャフト41と、ロータコア42と、を備えている。ロータシャフト41は、棒状である。ロータシャフト41の中心軸線は、ステータコア30の中心軸線CAと一致している。ロータシャフト41の端部は、モータジェネレータ10の外側を囲うケースに接続している。なお、図面では、ケースの図示は省略している。ロータコア42は、円環状である。ロータコア42の内周面は、ロータシャフト41の外周面に固定されている。ロータコア42は、磁性体である電磁鋼板を複数積層することにより形成されている。図示は省略するが、ロータコア42は、複数の磁石を内蔵している。当該磁石は、ロータコア42の電磁鋼板に形成されたスロットに埋め込まれている。
【0022】
以下の説明では、中心軸線CAに沿う方向に延びる軸を第1軸Xとする。また、中心軸線CAに直交する軸を、第2軸Yとする。第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向の他方を第2負方向Y2とする。また、第2負方向Y2が重力方向と一致しているものとする。すなわち、第2軸Yは、車両の上下軸と同一である。
【0023】
図1に示すように、冷却油路50は、モータジェネレータ10から視て第2正方向Y1側に位置している。冷却油路50は、オイルが流通するパイプ等である。冷却油路50は、複数の噴射孔51を有している。複数の噴射孔51は、コイルエンド22に向けてオイルを噴射するためのものである。複数の噴射孔51は、コイルエンド22から視て第2正方向Y1に位置している。そして、複数の噴射孔51は、第2負方向Y2を向いている。複数の噴射孔51のうちの1つは、ステータ20から視て第1正方向X1側のコイルエンド22の直上に位置している。複数の噴射孔51のうちの1つは、第1負方向X2側のコイルエンド22の直上に位置している。冷却油路50内のオイルは、噴射孔51を通って、コイルエンド22に向かって第2負方向Y2側に噴射される。
【0024】
<ステータについて>
図2に示すように、ステータコア30は、コア本体31と、複数のティース32と、を備えている。コア本体31は、円環状である。コア本体31の中心軸線は、ステータコア30の中心軸線CAと一致している。各ティース32は、コア本体31の内周面から、中心軸線CAに向かって延びている。各ティース32は、コア本体31の周方向において、等間隔毎に存在している。したがって、隣り合うティース32同士の間には、隙間が生じている。隣り合うティース32同士の間にはセグメントコイル21が差し込まれている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、各セグメントコイル21は、全体として輪になっている。なお、各セグメントコイル21は、複数の線材の端同士を溶接することにより形成されたものである。
図3及び
図4では、セグメントコイル21の一部を示している。セグメントコイル21の断面は、四角形状である。セグメントコイル21は、直線状に延びる一対の直線部分201を有している。直線部分201は、互いに平行に延びている。また、セグメントコイル21は、一対の直線部分201における同一の側の端同士を繋ぐ一対の湾曲部分202を備えている。各直線部分201は、隣り合うティース32同士の間に位置している。なお、一方の直線部分201は、他方の直線部分201が位置しているティース32同士の間とは別のティース32同士の間に位置している。各湾曲部分202は、コイルエンド22を構成している。
【0026】
ここで、
図2に示すように、ステータ20を第1正方向X1で視たときに、中心軸線CA及び第2軸Yの双方に直交する仮想直線VLを引いたとする。そして、仮想直線VLで二分されるコイルエンド22のうち、仮想直線VLから視て第2正方向Y1側を第1部分22Aとする。また、仮想直線VLで二分されるコイルエンド22のうち、仮想直線VLから視て第2負方向Y2側を第2部分22Bとする。
【0027】
<コイルエンドについて>
図3に示すように、第1部分22Aのコイルエンド22の各湾曲部分202は、4つの側面を有している。4つの側面のうちの1つである外周面P1は、中心軸線CAとは反対方向側を向いている。ここで、セグメントコイル21の一対の直線部分201の双方を含む平面に対して直交する軸を直交軸とする。このとき、外周面P1は、湾曲部分202から視て、直交軸に沿う2つの方向のうちの一方側を向く側面である。なお、以下では、直交軸に沿う2つの方向のうち、中心軸線CAとは反対方向側を外側、中心軸線CAに向かう方向側を内側と呼称することもある。第1部分22Aのコイルエンド22において外周面P1は、ステータコア30の端に近づくほど、ステータコア30側を向くねじれ面を有している。すなわち、ねじれ面は、直線部分201と湾曲部分202との交点に近づくほど、直線部分201側を向いている。
図3に図示する例では、外周面P1は、
図3における下側に向かうほど、下側を向いている。本実施形態では、外周面P1の全体がねじれ面である。
【0028】
具体的には、湾曲部分202のうち最もステータコア30の端から遠い箇所を頂点Qとする。頂点Qにおいては、外周面P1は、略中心軸線CAとは反対方向、すなわち外側を向いている。そして、外周面P1は、頂点Qから離れるにしたがって、徐々にステータコア30側を向いている。つまり、各湾曲部分202は、ねじれている。そして、一方の湾曲部分202と他方の湾曲部分202とでは、頂点Qから視たねじれの方向が反対になっている。湾曲部分202のねじれの角度は、例えば、頂点Qから視て一方の部分側で90度、頂点Qから視て他方側の部分で90度である。
【0029】
図4に示すように、第2部分22Bの各湾曲部分202は、4つの側面を有している。4つの側面のうちの1つである内周面P2は、略中心軸線CAに向かう方向側すなわち内側を向いている。換言すると、内周面P2は、湾曲部分202から視て、直交軸に沿う2つの方向のうちの他方側を向く側面である。第2部分22Bにおいて内周面P2は、ステータコア30の端に近づくほど、ステータコア30側を向くねじれ面を有している。すなわち、ねじれ面は、直線部分201と湾曲部分202との交点に近づくほど、直線部分201側を向いている。
図4に示す例では、第2部分22Bの内周面P2は、
図4における下側に向かうほど、下側を向いている。
【0030】
具体的には、内周面P2は、頂点Qにおいては、略中心軸線CAに向かう方向、すなわち内側を向いている。そして、内周面P2は、頂点Qから離れるにしたがって、徐々にステータコア30側を向いている。つまり、湾曲部分202は、ねじれている。そして一方の湾曲部分202と他方の湾曲部分202とでは、頂点Qから視たねじれの方向が反対になっている。湾曲部分202のねじれ角度は、例えば、頂点Qから視て一方の部分側で90度、頂点Qから視て他方側の部分で90度である。
【0031】
なお、
図3及び
図4においては、図面上、湾曲部分202の形状が同じに図示されている一方で、内側、外側の向きが反対になっている。すなわち、第1部分22Aのコイルエンド22の湾曲部分202と、第2部分22Bのコイルエンド22の湾曲部分202とでは、湾曲部分202のねじりの向きが反対向きであり、互いに対称的な形状になっている。
【0032】
図5に示すように、セグメントコイル21の表面は、複数のディンプル60を有している。ディンプル60は、平面視で円形状の窪みである。複数のディンプル60は、等間隔毎に並んでいる。各ディンプル60の直径は、0.1~1mm程度である。各ディンプル60の深さは、0.1~1mm程度である。無数のディンプル60は、セグメントコイル21の表面においてオイルが流れるときに、いわゆるマグヌス効果を発生させるためのものである。なお、
図3及び
図4では、ディンプル60の図示を省略している。
【0033】
<本実施形態の作用について>
冷却油路50内のオイルが、噴射孔51からコイルエンド22に向かって噴射されたとする。噴射されたオイルは、噴射孔51から視て第2負方向Y2に位置する第1部分22Aのコイルエンド22の外周面P1にかかる。外周面P1にかかったオイルの多くは、ねじれ面に沿って直線部分201へと案内される。すなわち、オイルの多くは、ステータコア30側へと案内される。ステータコア30側へと案内されたオイルは、ステータコア30を伝って、ステータコア30全体に広がっていく。ステータコア30を伝うオイルの一部は、第2負方向Y2に位置する他のセグメントコイル21へと伝わっていく。このような現象を繰り返しつつ、オイルは、第1部分22Aのコイルエンド22の全体に広がっていく。
【0034】
第1部分22Aのコイルエンド22から滴り落ちたオイルは、第2部分22Bのコイルエンド22の内周面P2へとかかる。第2部分22Bの内周面P2にかかったオイルの多くは、ねじれ面に沿って直線部分201へと案内される。すなわち、オイルの多くは、ステータコア30側へと案内される。ステータコア30側へと案内されたオイルは、ステータコア30を伝って、ステータコア30全体に広がっていく。ステータコア30を伝うオイルの一部は、第2負方向Y2に位置する他のセグメントコイル21へと伝わっていく。このような現象を繰り返しつつ、オイルは、コイルエンド22の第2部分22Bの全体に広がっていく。
【0035】
<本実施形態の効果について>
(1)上記実施形態において、仮に第1部分22Aのセグメントコイル21にかかったオイルが、ステータコア30とは反対方向に流れていったとする。この場合、オイルは、ステータ20の外部へと滴下されることになる。したがって、あるセグメントコイル21から滴り落ちたオイルが他のセグメントコイル21にかかることがなく、オイルによる十分な冷却効果が期待できない。また、オイルがコイルエンド22を滴っていっても、そのオイルが広がっていかなければ、コイルエンド22全体を冷却するには至らない。上記実施形態では、第1部分22Aのセグメントコイル21に噴射されたオイルは、ステータコア30側へとオイルが流れやすい。そのため、オイルがステータ20外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータコア30側へと案内されたオイルは、ステータコア30を伝って全体に広がりやすくなる。そして、オイルは、多数のセグメントコイル21上を伝いつつ落下していくので、コイルエンド22が効率的に冷却される。
【0036】
(2)上記実施形態において、コイルエンド22に滴下されたオイルは、コイルエンド22のねじれ面を伝っていくため、比較的に長い時間にわたってセグメントコイル21と接触する。このように長い時間にわたって接触している分だけ、オイルとセグメントコイル21との熱交換が促進される。
【0037】
(3)上記実施形態では、第1部分22Aのセグメントコイル21から滴り落ちたオイルは、第2部分22Bのセグメントコイル21の内周面P2に当たる。第2部分22Bのセグメントコイル21の内周面P2に当たったオイルは、ステータコア30側へとオイルが流れやすい。そのため、オイルがステータ20外へと零れ落ちる量が少なくなる。そして、ステータコア30側へと案内されたオイルは、ステータコア30を伝って全体に広がりやすくなる。そして、オイルは、多数のセグメントコイル21上を伝いつつ落下していくので、コイルエンド22が効果的に冷却される。
【0038】
(4)上記実施形態では、各セグメントコイル21は無数のディンプル60を備えている。そのため、セグメントコイル21を伝って流れるオイルは、セグメントコイル21の表面を滑らかに流通する。
【0039】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
・上記実施形態において、噴射孔51の位置は、コイルエンド22の直上に限定されない。噴射孔51が、コイルエンド22から視て第2正方向Y1側に位置していれば、上記効果を期待できる。
【0041】
・上記実施形態において、噴射孔51の数は1つでもよいし、さらに多く設けられていてもよい。
・上記実施形態において、コイルエンド22の形状は、上記実施形態の例に限定されない。また、コイルエンド22の形状が、第1正方向X1側のコイルエンド22と、第1負方向X2側のコイルエンド22とで異なっていてもよい。このように、コイルエンド22の第1部分22Aを構成するセグメントコイル21が、外側を向く外周面P1を有していれば、上記にねじれ面に関する技術を適用可能である。
【0042】
・上記実施形態において、第1部分22Aの外周面P1全体がねじれ面になっていなくてもよい。すなわち、外周面P1のうちの一部がねじれ面になっていてもよい。同様に、第2部分22Bの外周面P2全体がねじれ面になっていなくてもよい。
【0043】
・第2部分22Bを構成するセグメントコイル21が、ねじれ面を有していなくてもよい。少なくとも第1部分22Aを構成するセグメントコイル21がねじれ面を有していれば、オイルをコイルエンド22の全体にいきわたらせる効果が期待できる。
【0044】
・上記実施形態において、第1部分22Aを構成する全てのセグメントコイル21が、湾曲部分202にねじれ面を有していなくてもよい。つまり、セグメントコイル21の少なくとも一部が、ねじれ面を有していればよい。
【0045】
・上記実施形態において、仮想直線VLの近傍で、第1部分22Aにおけるねじれ方向を有するセグメントコイル21と、第2部分22Bにおけるねじれ方向を有するセグメントコイル21とが混在していてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、ディンプル60の直径及び深さは、上記実施形態の例に限定されない。また、セグメントコイル21は、ディンプル60を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…モータジェネレータ
20…ステータ
21…セグメントコイル
22…コイルエンド
22A…第1部分
22B…第2部分
30…ステータコア
31…コア本体
32…ティース
40…ロータ
41…ロータシャフト
42…ロータコア
50…冷却油路
51…噴射孔
60…ディンプル
100…冷却システム
201…直線部分
202…湾曲部分
CA…中心軸線
P1…外周面
P2…内周面
Q…頂点