(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240618BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2021119599
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 義文
(72)【発明者】
【氏名】義浦 貴巳
(72)【発明者】
【氏名】西出 康貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 耕徳
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/166548(WO,A1)
【文献】特開2020-201245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0267405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に先端を有し、前記先端を介して細胞に対する操作を行うためのチップの前記先端の位置を検出する検出装置であって、
横方向の光を、上下方向にみたときに幅を有するように出力する光源と、
前記チップを移動させる移動機構と、
前記光源によって出力された光を検出する検出器と、
を備え、
前記光源によって出力されてから前記検出器によって検出されるまでの光は、互いに異なる横方向に進む第1の光及び第2の光を含み、
前記移動機構は、前記第1の光の一部及び前記第2の光の一部が前記先端によって遮られるように、前記チップを移動させ、
前記検出器は、前記先端によって一部が遮られた前記第1の光及び前記第2の光を検出し、
前記第1の光の幅は、当該幅方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大きく、
前記第2の光の幅は、当該幅方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大き
く、
前記検出装置は、前記光源からの光を前記検出器に向けて反射させるミラーをさらに備え、
前記第1の光及び前記第2の光の一方は、前記光源から前記ミラーに向かう光であり、前記第1の光及び前記第2の光の他方は、前記ミラーから前記検出器に向かう光である、
検出装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記先端によって一部が遮られた前記第1の光の幅方向において検出される光強度が小さい位置、及び、前記先端によって一部が遮られた前記第2の光の幅方向において検出される光強度が小さい位置を検出する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記先端によって一部が遮られた前記第1の光と、前記先端によって一部が遮られた前記第2の光とを、異なるタイミングで検出する、
請求項
1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1の光及び前記第2の光がいずれも同じ基準領域を通過するように前記ミラーが移動し、
前記移動機構は、前記同じ基準領域内に前記先端が位置するように、前記チップを移動させる、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1の光及び前記第2の光それぞれは、前記上下方向にも幅を有し、
前記上下方向における前記第1の光の幅は、当該幅
方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大きく、
前記上下方向における前記第2の光の幅は、当該幅
方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大きい、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出装置は、細胞操作システムに組み入れられ、
前記細胞操作システムでは、前記検出器の検出結果に基づいて、前記先端と前記細胞における操作対象との位置合わせが行われる、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記検出器の検出結果に基づいて、前記先端が顕微鏡の観察範囲内に位置するように、前記チップを移動させ、
前記細胞操作システムでは、前記顕微鏡による前記先端の観察結果に基づいて、前記位置合わせが行われる、
請求項
6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第1の光及び前記第2の光それぞれは、前記上下方向にも幅を有し、
前記上下方向
と直交する方向における前記第1の光の幅は、前記上下方向における前記第1の光の幅よりも大きく、
前記上下方向
と直交する方向における前記第2の光の幅は、前記上下方向における前記第2の光の幅よりも大きい、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
下方に先端を有し、前記先端を介して細胞に対する操作を行うためのチップの前記先端の位置を検出する検出方法であって、
横方向の光を、上下方向にみたときに幅を有するように
光源から出力することと、
前記チップを移動させることと、
出力した光を
検出器で検出することと、
を含み、
前記出力されてから前記検出されるまでの光は、互いに異なる横方向に進む第1の光及び第2の光を含み、
前記移動させることは、前記第1の光の一部及び前記第2の光の一部が前記先端によって遮られるように、前記チップを移動させ、
前記検出することは、前記先端によって一部が遮られた前記第1の光及び前記第2の光を検出し、
前記第1の光の幅は、当該幅方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大きく、
前記第2の光の幅は、当該幅方向における前記先端の位置のばらつき幅よりも大き
く、
前記検出方法は、前記光源からの光を前記検出器に向けてミラーで反射させることをさらに含み、
前記第1の光及び前記第2の光の一方は、前記光源から前記ミラーに向かう光であり、前記第1の光及び前記第2の光の他方は、前記ミラーから前記検出器に向かう光である、
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生命システムの研究等では、操作用チップの先端を介して、細胞或いは細胞内物質の吸引等の操作が行われる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞サンプルの正確な位置での吸引等を実施するために、チップ先端位置を把握することが重要である。チップは主にガラスを牽引させて製造されるため、チップ先端位置がばらつく。ばらつきを考慮した広範囲での位置検出が必要になる。この点について、特許文献1では具体的な検討は行われていない。
【0005】
本発明は、チップ先端位置を広範囲で検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る検出装置は、下方に先端を有し、先端を介して細胞に対する操作を行うためのチップの先端の位置を検出する検出装置であって、横方向の光を、上下方向にみたときに幅を有するように出力する光源と、チップを移動させる移動機構と、光源によって出力された光を検出する検出器と、を備え、光源によって出力されてから検出器によって検出されるまでの光は、互いに異なる横方向に進む第1の光及び第2の光を含み、移動機構は、第1の光の一部及び第2の光の一部が先端によって遮られるように、チップを移動させ、検出器は、先端によって一部が遮られた第1の光及び第2の光を検出する。
【0007】
一側面に係る検出方法は、下方に先端を有し、先端を介して細胞に対する操作を行うためのチップの先端の位置を検出する検出方法であって、横方向の光を、上下方向にみたときに幅を有するように出力することと、チップを移動させることと、出力した光を検出することと、を含み、出力されてから検出されるまでの光は、互いに異なる横方向に進む第1の光及び第2の光を含み、移動させることは、第1の光の一部及び第2の光の一部が先端によって遮られるように、チップを移動させ、検出することは、先端によって一部が遮られた第1の光及び第2の光を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チップ先端位置を広範囲で検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る検出装置の概略構成の例を示す図である。
【
図3】検出装置において実行される処理(検出方法)の例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る検出装置の概略構成の例を示す図である。
【
図7】検出装置において実行される処理(検出方法)の例を示すフローチャートである。
【
図8】チップ先端位置の検出の別の例を示す図である。
【
図9】チップ先端位置の検出の別の例を示す図である。
【
図10】細胞操作システムの概略構成の例を示す図である。
【
図11】細胞操作システムの概略構成の例を示す図である。
【
図12】細胞操作システムの概略構成の例を示す図である。
【
図13】細胞操作システムにおいて実行される処理(検出方法、細胞操作方法)の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
<序>
生命システムの研究等においては、細胞培養容器内の多くの細胞のうちの特徴的な細胞或いはその細胞内物質等に対して、吸引等の操作が頻繁に行なわれる。例えば、薬剤の細胞内での代謝の研究例では、細胞に対して薬剤を作用させた後、細胞の特定の部位から細胞内物質を吸引し、質量分析などの解析を行うことで、細胞のどの部位にどれだけ薬剤が残存しているか等の評価が行われる。以下、操作の対象となる細胞或いは細胞内物質等を、単に「操作対象」とも称する。
【0012】
操作には、操作用のチップが用いられる。チップは、上下方向に延在するように装置等に装着される。操作は、チップの下方先端が操作対象に位置している状態で行われる。横方向(上下方向と交差する方向)におけるチップ先端の長さ(例えば径)は、0.1μm~数百μm程度である。チップ先端位置の把握が重要であり、チップ先端位置の検出が必要になる。チップ製造時や装着時のばらつきに起因して、チップ先端位置がばらつく。横方向におけるチップ先端位置のばらつき幅は、例えば100μm~1000μmにも及ぶ。ばらつきを考慮した広範囲での位置検出が求められる。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る検出装置の概略構成の例を示す図である。検出装置50は、検出部60と、チップ5が装着される細胞操作部6と、移動機構7と、制御検出部8とを含む。図において、XYZ座標系が示される。Z軸方向は、チップ5の延在方向すなわち、上下方向に対応する。X軸方向及びY軸方向は、横方向に対応する。上下方向は鉛直方向であってよく、その場合、横方向は水平方向である。
【0014】
チップ5は、冒頭で述べたチップである。チップ5は、細胞操作部6に装着されるとともに、上下方向に延在する。チップ5は、下方(Z軸正方向)に先端5Eを有する。先端5Eを介して、操作対象が操作される。検出装置50は、先端5Eの位置を検出するために用いられる。以下、先端5Eの位置を、「チップ先端位置」とも称する。
【0015】
例えば操作が吸引操作の場合には、先端5Eを介して操作対象が吸引される。チップ5は吸引チップとして機能し、細胞操作部6は吸引器(ディスペンサ)として機能する。操作の他の例は、薬剤注入、センシング等である。薬剤は、先端5Eを介して操作対象に注入される。センシングでは、先端5Eに設けられたセンサ等を用いて、例えば操作対象の状態がモニタリングされる。
【0016】
検出部60は、光源1と、検出器2とを含む。光源1は、横方向の光を出力する。光源1によって出力された光を、光3と称し図示する。光3の例は、レーザ光である。光源1は、例えばLD(Laser Diode)を含んで構成される。光源1は、上下方向にみたときに(Z軸方向にみたときに)光3が幅を有するように、光3を出力する。「幅を有するように出力する」とは、その幅を有する光(例えば光束)を同時に出力するだけでなく、その幅の範囲でそれよりも狭い光を走査して出力することも含む意味であってよい。
【0017】
図1に示される例では、光3は、帯形状(長方形形状、ライン形状等)を有する平行光束である。例えば、光源1内の図示しない光学系等によって帯形状に整形された光3が、光源1から出力される。光3の幅は、横方向におけるチップ先端位置のばらつき幅よりも大きく、例えば1mm~数十mm程度である。
【0018】
光3は、上下方向にもある程度の幅(Z軸方向の長さ)を有する。この幅は、上下幅と称する。帯形状における上下幅はそれほど大きくなくてよく、例えば数μm~100μm程度である。
【0019】
検出器2は、光源1によって出力された光3を検出する。検出器2は、光3の幅方向における光強度(受光光量等)を検出する。検出器2は、受光素子を含んで構成される。受光素子の例は、PD(Photo Diode)である。受光素子は、光3の幅方向に沿って配列される複数の受光素子(1次元センサアレイ)であってよい。各受光素子の位置での光強度が検出される。配列の全体の長さは、光3の幅と同程度である。受光素子の配列間隔は、例えば数μm~数十μm程度である。配列間隔が狭いほど、高い分解能での光検出が可能になる。
【0020】
光源1によって出力されてから検出器2によって検出されるまでの光3は、互いに異なる横方向に進む光3a(第1の光)及び光3b(第2の光)を含む。光3aの幅及び光3bの幅はいずれも、横方向におけるチップ先端位置のばらつき幅よりも大きい。
【0021】
第1実施形態では、検出部60は、2つの光源1と、2つの検出器2とを含む。各光源1を区別できるように、光源1a及び光源1bと称し図示する。各検出器2を区別できるように、検出器2a及び検出器2bと称し図示する。
【0022】
光源1a及び検出器2aは、Y軸方向において互いに対向するように設けられた第1の光源及び第1の検出器である。光源1aは、光3aを、検出器2aに向けて出力する。この例では、光3aは、X軸方向を幅方向とし、Y軸正方向に進む。検出器2aは、光3aの幅方向すなわちX軸方向における光強度の分布を検出する。
【0023】
光源1b及び検出器2bは、X軸方向において互いに対向するように設けられた第2の光源及び第2の検出器である。光源1bは、光3bを、検出器2bに向けて出力する。この例では、光3bは、Y軸方向を幅方向とし、X軸正方向に進む。検出器2bは、光3bの幅方向すなわちY軸方向における光強度の分布を検出する。光源1bは、光3bが光3aと交差するように、光3bを出力する。ここでの交差は、上下方向における光3aの位置と光3bの位置とが重なっていることを含む。
【0024】
光3a及び光3bの少なくとも一方が通過する領域が、基準領域Rとして設定される。上下方向にみたときに、基準領域Rは、少なくとも一辺の長さが光3aの幅に相当する矩形形状の領域、及び、少なくとも一辺の長さが光3bの幅に相当する矩形形状の領域の少なくとも一方の領域を含む。
【0025】
第1実施形態では、光3a及び光3bが互いに交差する領域が、基準領域Rに設定される。上述のように光3a及び光3bの幅は、その方向におけるチップ先端位置のばらつき幅よりも大きい。基準領域Rは、少なくともXY平面方向におけるチップ先端位置のばらつき幅をカバーする広がりを有する。
【0026】
移動機構7は、細胞操作部6を移動させることによって、チップ5を移動させる。移動は、X軸方向の移動、Y軸方向の移動及びZ軸方向の移動を含む。移動機構7は、例えばアクチュエータ等を含んで構成される。
【0027】
制御検出部8は、検出装置50の各要素を制御することによって、検出装置50全体を制御する。制御は、制御信号等を用いて行われる。制御信号等の送受信を行うための信号線が、破線で模式的に図示される。例えば、制御検出部8は、移動機構7を制御することによって、チップ5を移動させる。また、制御検出部8は、検出器2の検出結果に基づいて、チップ先端位置を検出する。チップ先端位置の検出について、
図2も参照して説明する。
【0028】
図2は、チップ先端位置の検出の例を示す図である。下方にみたとき(Z軸負方向にみたとき)の検出部60及び先端5Eが模式的に示される。先端5Eは、基準領域R内に位置している。光3a及び光3bそれぞれの一部が、先端5Eによって遮られている。
【0029】
検出器2aは、先端5Eによって一部が遮られた光3aを検出する。検出器2aでは、光3aの幅方向すなわちX軸方向において光強度が小さくなる位置が検出される。この位置を、検出位置2a-Pと称し図示する。検出器2aの検出結果、より特定的には検出位置2a-Pに関する情報(X軸方向における位置、光強度等)は、例えば検出信号として、検出器2aから制御検出部8に送られる。
【0030】
検出器2bは、先端5Eによって一部が遮られた光3bを検出する。検出器2bでは、光3bの幅方向すなわちY軸方向において光強度が小さくなる位置が検出される。この位置を、検出位置2b-Pと称し図示する。検出器2bの検出結果、より特定的には検出位置2b-Pに関する情報は、検出器2bから制御検出部8に送られる。
【0031】
制御検出部8(
図1)は、検出器2aの検出結果に基づいて、先端5Eによって光3aの一部が遮られたことを検出する。具体的に、検出器2aの検出結果に検出位置2a-Pの情報が含まれている場合に、制御検出部8は、先端5Eによって光3aの一部が遮られたことを検出する。また、制御検出部8は、検出位置2a-Pを、X軸方向におけるチップ先端位置として検出する。制御検出部8によって検出されたX軸方向におけるチップ先端位置を、位置5Eaと称し図示する。
【0032】
制御検出部8は、検出器2bの検出結果に基づいて、先端5Eによって光3bの一部が遮られたことを検出する。具体的に、検出器2bの検出結果に検出位置2b-Pの情報が含まれている場合に、制御検出部8は、先端5Eによって光3bの一部が遮られたことを検出する。また、制御検出部8は、検出位置2b-Pを、Y軸方向におけるチップ先端位置として検出する。制御検出部8によって検出されたY軸方向におけるチップ先端位置を、位置5Ebと称し図示する。
【0033】
制御検出部8は、先端5Eによって光3aや光3bが遮られたときの上下方向における基準領域Rの位置を、上下方向におけるチップ先端位置として検出する。制御検出部8によって検出された上下方向におけるチップ先端位置を、位置5Ecと称し図示する。
【0034】
制御検出部8によって検出されるチップ先端位置(位置5Ea、位置5Eb及び位置5Ec)は、検出装置50内の位置、より具体的には、検出装置50を含む装置(例えば後述の
図10~
図12の細胞操作システム70等)内の座標等で把握されてよい。
【0035】
図3は、検出装置において実行される処理(検出方法)の例を示すフローチャートである。とくに説明がある場合を除き、各処理は、制御検出部8による制御等のもとで行われる。
【0036】
ステップS1において、検出装置50は、光を出力する。光源1a及び光源1bは、光3a及び光3bを出力する。検出器2a及び検出器2bは、光3a及び光3bを検出する。
【0037】
ステップS2において、検出装置50は、基準領域の上方の位置にチップを移動させる。移動機構7は、例えば細胞操作部6が基準領域Rよりも所定距離だけ上方に位置するように、チップ5を移動させる。所定距離は、例えば1mm程度である。この位置は、細胞操作部6の基準位置である。細胞操作部6が基準位置にある状態では、例えば、上下方向にみたときに、細胞操作部6とチップ5との接続箇所(細胞操作部6の中央部分)と基準領域Rの中央とが重なり得る。
【0038】
なお、上述のステップS1及びステップS2の順序は逆であってもよい。
【0039】
ステップS3において、検出装置50は、チップを下方に移動させる。移動機構7は、所定間隔だけチップ5を下方に移動させる。所定間隔の例は、10μm程度である。
【0040】
ステップS4において、検出装置50は、光の一部が遮られたか否か判断する。制御検出部8が、先に説明したように検出器2の検出結果に基づいて、先端5Eによって光3aの一部及び光3bの一部が遮られたことを検出すると、光の一部が遮られたと判断される。光の一部が遮られた場合(ステップS4:Yes)、ステップS5に処理が進められる。そうでない場合(ステップS4:No)、ステップS3に処理が戻される。移動機構7は、先端5Eが基準領域R内に位置し、それによって光3a及び光3bそれぞれの一部が先端5Eによって遮られるようになるまで、チップ5を下方に移動させる。
【0041】
ステップS5において、検出装置50は、チップ先端位置を検出する。制御検出部8は、先に説明したように検出器2の検出結果に基づいて、チップ先端位置を検出する。検出器2aでの検出位置2a-Pが、位置5Eaとして検出される。検出器2bでの検出位置2b-Pが、位置5Ebとして検出される。上下方向における基準領域Rの位置が、位置5Ecとして検出される。
【0042】
例えば以上のようにして、基準領域R内のチップ先端位置が検出される。基準領域Rは、チップ先端位置のばらつき幅を含む領域であるので、ばらつきを考慮した(ばらつき範囲をカバーするような)広範囲での検出が可能になる。
【0043】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態のいくつかの変形例について述べる。光3a及び光3bは幅方向に走査して出力されてもよい。その場合の光3a及び光3bそれぞれの幅は、チップ先端位置のばらつき幅よりも狭くてよい。光3a及び光3bは、例えば光束径が数μm~100μm程度のレーザ光であってよい。検出器2に含まれる受光素子は、単一の受光素子であってもよく、その場合、レーザ光が集光レンズによって受光素子に導かれるように検出器2等が構成されてよい。
【0044】
光3aの上下幅及び光3bの上下幅は、上下方向におけるチップ先端位置のばらつき幅よりも大きくてよい。基準領域Rは、上下方向にも広がりを有する。横方向(XY平面方向)におけるチップ先端位置の検出と同様の原理で、上下方向(Z軸方向)におけるチップ先端位置も検出することができる。上下幅の例は、1mm~数mm程度である。光3a及び光3bは、矩形形状や楕円形状の平行光束であってよい。検出器2に含まれる受光素子は、上下方向に配列された受光センサも含む複数の受光素子(2次元センサアレイ)であってよい。例えば、上下方向において光強度が小さくなる位置のうち、最も下方の位置が、チップ先端位置として検出される。先に説明した
図3のステップS2のように基準領域Rに向けてチップ5を徐々に下方に移動させなくとも、チップ先端位置を検出することができる。
【0045】
上述の変形例が組み合わされてもよい。光3a及び光3bは、光束径が数μm~100μm程度のレーザ光が幅方向に走査される平行光束であってよい。検出器2に含まれる受光素子は、単一の受光素子であってもよいし、2次元配列された複数の受光素子であってもよい。
【0046】
光3a及び光3bは、帯形状を有する平行光束であり、上下方向に走査されてもよい。上述の2次元センサアレイが採用されてよい。シリンドリカルレンズと組み合わされた1次元センサアレイが採用されてもよい。シリンドリカルレンズは、走査後の光3を1次元センサアレイに導くように設けられる。
【0047】
上記では、光3aがY軸正方向に進み、光3bがX軸正方向に進み、光3a及び光3bが直交する例について説明した。ただし、光3a及び光3bの進行方向及び交差の態様は、これに限定されない。光3a及び光3bは、互いに交差していればよい(平行でなければよい)。
【0048】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る検出装置の概略構成の例を示す図である。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、とくに、検出部60に含まれる光源1及び検出器2がいずれも1つである点、及び、検出部60がミラー4をさらに含む点において相違する。第1実施形態と共通する内容については適宜説明を省略する。
【0049】
ミラー4は、光源1からの光3を検出器2に向けて反射させる。ミラー4は、光源1から検出器2までの光3の光路上に設けられる。検出器2は、ミラー4によって反射された後の光3を検出する。光3a及び光3bの一方は、光源1からミラー4に向かう光(反射前の光)であり、他方は、ミラー4から検出器2に向かう光(反射後の光)である。この例では、光源1はX軸正方向に向けて光3を出力し、ミラー4は、光源1からの光3をY軸正方向に向けて反射する。光3aが反射後の光であり、光3bが反射前の光である。制御検出部8は、検出器2の検出結果に基づいて、チップ先端位置を検出する。チップ先端位置の検出について、
図5及び
図6も参照して説明する。
【0050】
図5及び
図6は、チップ先端位置の検出の例を示す図である。この例では、基準領域Rは、基準領域R1及び基準領域R2を含む。基準領域R1は、少なくとも一辺が光3aの幅に相当する矩形形状の領域を含む第1の基準領域である。基準領域R2は、少なくとも一辺が光3bの幅に相当する矩形形状の領域を含む第2の基準領域である。
【0051】
移動機構7は、先端5Eが基準領域R1内及び基準領域R2内それぞれに異なるタイミングで位置するように、チップ5を移動させる。検出器2は、先端5Eによって一部が遮られた光3aと、先端5Eによって一部が遮られた光3bとを、異なるタイミングで検出する。
【0052】
図5に示される例では、先端5Eは、基準領域R1内に位置している。光3aの一部が、先端5Eによって遮られている。検出器2では、光3aの幅方向すなわちX軸方向において光強度が小さくなる位置が、検出位置2a-Pとして検出される。検出結果が制御検出部8に送られる。
【0053】
図6に示される例では、先端5Eは、基準領域R2内に位置している。光3bの一部が、先端5Eによって遮られている。検出器2では、光3bの幅方向すなわちY軸方向において光強度が小さくなる位置が、検出位置2b-Pとして検出される。検出結果が制御検出部8に送られる。
【0054】
制御検出部8(
図4)は、検出器2の検出結果に基づいて、先端5Eによって光3aの一部や光3bの一部が遮られたことを検出する。また、制御検出部8は、検出位置2a-Pを、X軸方向におけるチップ先端位置(位置5Ea)として検出し、検出位置2b-Pを、Y軸方向におけるチップ先端位置(位置5Eb)として検出する。さらに、制御検出部8は、上下方向における基準領域R1の位置又は基準領域R2の位置を、上下方向におけるチップ先端位置(位置5Ec)として検出する。
【0055】
図7は、検出装置において実行される処理(検出方法)の例を示すフローチャートである。とくに説明がある場合を除き、各処理は、制御検出部8による制御等のもとで行われる。
【0056】
ステップS11において、検出装置50は、光を出力する。光源1は、光3を出力する。検出器2は、光3を検出する。
【0057】
ステップS12において、検出装置50は、第1の基準領域の上方の位置にチップを移動させる。移動機構7は、例えば細胞操作部6が基準領域R1よりも所定距離だけ上方に位置するように(第1の基準位置に位置するように)、チップ5を移動させる。
【0058】
なお、上述のステップS11及びステップS12の順序は逆であってもよい。
【0059】
ステップS13において、検出装置50は、チップを下方に移動させる。移動機構7は、所定間隔だけ、チップ5を下方に移動させる。
【0060】
ステップS14において、検出装置50は、第1の光の一部が遮られたか否か判断する。制御検出部8が先端5Eによって光3aの一部が遮られたことを検出すると、第1の光の一部が遮られたと判断される。第1の光の一部が遮られた場合(ステップS14:Yes)、ステップS15に処理が進められる。そうでない場合(ステップS14:No)、ステップS13に処理が戻される。移動機構7は、先端5Eが基準領域R1内に位置し、それによって光3aの一部が先端5Eによって遮られるようになるまで、チップ5を下方に移動させる。
【0061】
ステップS15において、検出装置50は、チップ先端位置を検出する。制御検出部8は、検出器2での検出位置2a-Pを、位置5Eaとして検出する。また、制御検出部8は、上下方向における基準領域R1の位置を、位置5Ecとして検出する。
【0062】
ステップS16において、検出装置50は、第2の基準領域の上方の位置にチップを移動させる。移動機構7は、例えば細胞操作部6が基準領域R2よりも所定距離だけ上方に位置するように(第2の基準位置に位置するように)、チップ5を移動させる。
【0063】
ステップS17において、検出装置50は、チップを下方に移動させる。移動機構7は、所定間隔だけ、チップ5を下方に移動させる。
【0064】
ステップS18において、検出装置50は、第2の光の一部が遮られたか否か判断する。制御検出部8が先端5Eによって光3bの一部が遮られたことを検出すると、第2の光の一部が遮られたと判断される。第2の光の一部が遮られた場合(ステップS18:Yes)、ステップS19に処理が進められる。そうでない場合(ステップS18:No)、ステップS17に処理が戻される。移動機構7は、先端5Eが基準領域R2内に位置し、それによって光3bの一部が先端5Eによって遮られるようになるまで、チップ5を下方に移動させる。
【0065】
ステップS19において、検出装置50は、チップ先端位置を検出する。制御検出部8は、検出器2での検出位置2b-Pを、位置5Ebとして検出する。
【0066】
例えば以上のようにして、基準領域R1内のチップ先端位置及び基準領域R2内のチップ先端位置がそれぞれ検出される。第1実施形態と同様に、広範囲での検出が可能である。光源1及び検出器2が1つずつで足りるので、第1実施形態よりも、検出装置50をコンパクト且つ低コストで実現することができる。検出装置50が他の装置(例えば後述の
図10の細胞操作システム)に組み入れて用いられる場合には、組み入れ先の装置においても同様のメリットが得られる。
【0067】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態のいくつかの変形例について述べる。矛盾の無い範囲において、第1実施形態の変形例と同様の変形例が可能である。詳細は先に説明したとおりであるので、説明は繰り返さない。
【0068】
上述のステップS15~ステップS17の処理は無くてもよい。この場合、移動機構7は、ステップS14で光が遮られたときの上下方向の位置を維持したまま、チップ5を基準領域R2まで移動させる。ステップS18において直ちに光が遮られたと判断される(ステップS18:Yes)。ステップS17及びステップS18の処理を繰り返す必要が無い分、チップ先端位置の検出に要する時間を短くすることができる。
【0069】
光源1、検出器2及びミラー4の配置は、
図4に示される例に限られない。ミラー4が光源1からの光3を検出器2に向けて反射し、基準領域R1及び基準領域R2が得られるような、さまざま配置が採用されてよい。
【0070】
ミラー4とチップ5の先端5Eとの相対位置を変更することで、基準領域R1及び基準領域R2を同じ領域とすることもできる。ミラー4の移動を利用したチップ先端位置の検出について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0071】
図8及び
図9は、チップ先端位置の検出の別の例を示す図である。ミラー4は、光3a及び光3bがいずれも同じ領域を通過するように移動する。この領域が、基準領域Rである。
図8に示されるように、ミラー4は、光源1からの光の一部を、基準領域Rを通過するように反射させる位置に移動する(矢印AR1)。反射後の光が光3aである。また、
図9に示されるように、ミラー4は、光源1からの光のうち、基準領域Rを通過した後の光を反射させる位置に移動する(矢印AR2)。反射前の光が、光3bである。
【0072】
移動機構7は、基準領域R内に先端5Eが位置するように、チップ5を移動させる。ミラー4は、例えば図示しない移動機構(駆動装置等)によって移動させられる。
図8のようにミラー4が移動した状態では、位置5Ea及び位置5Ecが検出可能である。
図9のようにミラー4が移動した状態では、位置5Eb及び位置5Ecが検出可能である。
【0073】
例えば上述のようにミラー4を移動させることで、同じ基準領域Rを用いてチップ先端位置を検出することができる。なお、ミラー4だけでなく、光源1、検出器2及びミラー4(すなわち検出部60全体)が移動してもよい。
【0074】
<第3実施形態>
これまで説明した検出装置50は、例えば細胞操作システムに組み入れられる。細胞操作システムの例は、特許文献1に開示されるような細胞吸引システムである。
【0075】
図10~
図12は、細胞操作システムの概略構成の例を示す図である。
図10を参照すると、細胞操作システム70には、これまで説明した検出装置50(
図1等)の各要素、すなわち検出部60、移動機構7及び制御検出部8等が含まれる。細胞操作システム70において、制御検出部8は、細胞操作システム70の各要素を制御することによって、細胞操作システム70全体を制御する。制御信号等の送受信を行うための信号線のいくつかが模式的に図示される。
【0076】
容器12には、細胞12aが収納されている。細胞12aは、複数の細胞からなる細胞群であってよい。特定の細胞或いは細胞内物質等が、操作対象となる。先端5Eと操作対象との位置合わせが行われ、操作対象に対する操作が行われる。操作時の位置合わせは、容器12を支持するステージを移動させることによって行われてもよいし、チップ5を移動させることによって行われてもよい。
【0077】
チップ先端位置を高精度で検出するために、顕微鏡11が用いられる。この例では、顕微鏡11は、チップ5を挟んで容器12とは反対側(Z軸負方向側)に設けられ、先端5Eを下方から観察する。顕微鏡11は、共焦点スキャナ15及びカメラ14とともに共焦点顕微鏡システムを構成する。
【0078】
顕微鏡11は、対物レンズ11aと、結像レンズ11bとを含む。共焦点スキャナ15は、ピンホールアレイディスク15cと、ダイクロイックミラー15bと、マイクロレンズアレイディスク15aと、軸部15dと、リレーレンズ15e-1と、バンドパスフィルタ15fと、リレーレンズ15e-2とを含む。ピンホールアレイディスク15c及びマイクロレンズアレイディスク15aは、軸部15dによって同軸回転可能である。焦点にある光がピンホールアレイディスク15cで結像され、ダイクロイックミラー15bで反射される。リレーレンズ15e-1、バンドパスフィルタ15f及びリレーレンズ15e-2を介して、先端5Eがカメラ14で撮像される。撮像画像中の先端5Eの位置が、横方向(XY平面方向)におけるチップ先端位置に対応する。画像は、カメラ14から制御検出部8に送られる。
【0079】
制御検出部8は、画像に基づいて、横方向におけるチップ先端位置を検出する。画像が顕微鏡11の対物レンズ11a等で拡大観察された拡大画像であるので、例えば数百nmオーダーでの高精度な位置検出が可能である。
【0080】
また、制御検出部8は、画像のコントラストが最大となるように、移動機構7を制御してチップ5を上下方向に移動させる。先端5Eが共焦点位置に位置するときに、コントラストが最大になる。制御検出部8は、共焦点位置を、上下方向におけるチップ先端位置として検出する。共焦点の分解能に近い高精度な位置検出が可能である。
【0081】
図11や
図12に示される構成によっても位置検出が可能である。
図11には、共焦点顕微鏡システムの構成要素として、顕微鏡11及び位置センサ16が例示される。顕微鏡11では、対物レンズ11aと結像レンズ11bとの間に、ダイクロイックミラー11cが設けられる。
【0082】
位置センサ16は、光源16aと、レンズ16cと、ミラー16dと、ビームスプリッタ16eと、集光レンズ16gと、ピンホール16hと、受光センサ16iとを含む。光源16aは、レンズ16cの焦点に設けられ、レーザ光16bをレンズ16cに向けて出力する。レンズ16cは、光源16aからのレーザ光16bを平行光(照射光)にコリメートする。照射光は、ビームスプリッタ16e(例えばハーフミラー)を通過し、顕微鏡11のダイクロイックミラー11cで反射し、対物レンズ11aを介して先端5Eを照明する。
【0083】
先端5Eからの光(反射光)は、顕微鏡11の対物レンズ11aを介して、ダイクロイックミラー11cで反射し、位置センサ16のビームスプリッタ16eを通過する。通過後の光が、反射光16fとして図示される。反射光16fは、集光レンズ16gで集光される。ピンホール16hは、集光レンズ16gの焦点位置に設けられ、対物レンズ11aの焦点にある光だけを通過させる。共焦点光学系が構成される。ピンホール16hを通過した光が、受光センサ16iで検出される。なお、図に示される破線矢印100それぞれは、細胞12aを照らす光と細胞12aから反射した光を指し示している。
【0084】
受光センサ16iの受光光量の情報は、受光センサ16iから制御検出部8に送られる。制御検出部8は、受光光量が最大となるように、移動機構7を制御してチップ5を上下方向に移動させる。先端5Eが対物レンズ11aの焦点位置に位置するときに、受光光量が最大になる。制御検出部8は、対物レンズ11aの焦点位置を、上下方向におけるチップ先端位置として検出する。共焦点の分解能に近い高精度な位置検出が可能である。
【0085】
図12に例示される位置センサ16は、
図11と比較して、集光レンズ16g及び受光センサ16iに代えてシリンドリカルレンズ16gA及び受光センサ16iAを含む点、並びに、ピンホール16hを含まない点において相違する。シリンドリカルレンズ16gAが用いられることで、ピンホール16hが不要となる。受光センサ16iAには、例えば4分割PDが用いられる。
【0086】
上述の細胞操作システム70の構成は例示に過ぎない。顕微鏡11を用いてチップ先端位置を検出するさまざまな構成が採用されてよい。顕微鏡11の観察結果、すなわち共焦点顕微鏡システムによって高精度に検出されたチップ先端位置に基づいて、先端5Eと操作対象との位置合わせが行われ、操作対象に対する操作が行われる。
【0087】
先にも述べたように、横方向(XY平面方向)におけるチップ先端位置は、カメラ14によって撮像された画像に基づいて検出される。ここで、カメラ14の撮像素子は、生物顕微鏡が有する一般的な視野数の関係から、大きくても一辺が15mm~20mm程度の長方形である。顕微鏡11の対物レンズ11aの倍率は、例えば40倍程度である。そうすると、画像による検出範囲は、広くても一辺500μmの正方形の範囲しかなく、チップ先端位置のばらつき幅(~1000μm)をカバーすることは困難である。先端5Eが画像に含まれず、位置検出が行えない可能性がある。
【0088】
広範囲での検出を可能にするために、対物レンズ11aの倍率を低倍率(例えば10倍)及び高倍率(例えば40倍)の2段階に切り替える手法も考えられる。ただし、2段階の検出が必要になり、検出に要する時間が長くなる。先に説明した第1実施形態や第2実施形態によるチップ先端位置検出を行うことで、検出に要する時間を短くすることができる。
【0089】
制御検出部8は、検出部60等によってチップ先端位置を検出する。詳細はすでに説明済みであるので、ここでは説明は繰り返さない。検出されるチップ先端位置は、細胞操作システム70内の座標等で把握されてよい。この検出結果に基づいて、制御検出部8は、移動機構7を制御し、先端5Eが顕微鏡11の観察範囲内に位置するように、チップ5を移動させる。これにより、カメラ14によって撮像された画像内に、先端5Eが確実に含まれるようになる。画像に基づいて、チップ先端位置がさらに高精度に検出される。検出結果に基づいて、先端5Eと操作対象との位置合わせが行われ、操作対象に対する操作が行われる。
【0090】
図13は、細胞操作システムにおいて実行される処理(検出方法、細胞操作方法)の例を示すフローチャートである。とくに説明がある場合を除き、各処理は、制御検出部8による制御等のもとで行われる。
【0091】
ステップS21において、細胞操作システム70は、検出部を用いてチップ先端位置を検出する。制御検出部8は、先に説明したように、検出器2の検出結果に基づいて、チップ先端位置を検出する。
【0092】
ステップS22において、細胞操作システム70は、顕微鏡の観察範囲内にチップ5を移動させる。移動機構7は、先のステップS21での検出結果に基づいて、先端5Eが顕微鏡11の観察範囲内に位置するように、チップ5を移動させる。
【0093】
ステップS23において、細胞操作システム70は、顕微鏡の観察結果に基づいてチップ先端位置を検出する。制御検出部8は、例えば顕微鏡11を介して得られた上述の画像等基づいて、チップ先端位置をさらに高精度に検出する。
【0094】
ステップS24において、細胞操作システム70は、チップ先端と操作対象との位置合わせを行う。制御検出部8は、先のステップS23での検出結果に基づいて、先端5Eが操作対象に位置するように、例えば図示しない駆動装置を制御して容器12を支持するステージを移動させる。
【0095】
ステップS25において、細胞操作システム70は、操作対象に対する操作を行う。制御検出部8は、先端5Eを介して、細胞12aにおける細胞或いは細胞内物質等の吸引等が行われるように、細胞操作部6を制御する。
【0096】
例えば以上のようにして、細胞操作が行われる。検出部60を用いた広範囲(例えば1mm~数十mm程度)でのチップ先端位置の検出により、とくに横方向においてチップ先端位置がばらついている場合でも、チップ先端位置を確実に検出することができる。また、顕微鏡11を用いた高精度(例えば数百nm程度)なチップ先端位置の検出により、高精度な位置合わせが可能になる。例えば細胞12a内の小器官等の非常に小さい操作対象への位置合わせも可能である。
【0097】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、検出装置である。
図1~
図9等を参照して説明したように、検出装置50は、下方(Z軸負方向)に先端5Eを有し、先端5Eを介して細胞(例えば
図10の細胞12a)に対する操作を行うためのチップ5の先端5Eの位置を検出する検出装置である。検出装置50は、光源1と、移動機構7と、検出器2と、を備える。光源1は、横方向(XY平面方向)の光3を、上下方向(Z軸方向)にみたときに幅を有するように出力する。移動機構7は、チップ5を移動させる。検出器2は、光源1によって出力された光3を検出する。光源1によって出力されてから検出器2によって検出されるまでの光3は、互いに異なる横方向(例えばY軸方向及びX軸方向)に進む光3a(第1の光)及び光3b(第2の光)を含む。移動機構7は、光3aの一部及び光3bの一部が先端5Eによって遮られるように、チップ5を移動させる。検出器2は、先端5Eによって一部が遮られた光3a及び光3bを検出する。
【0098】
上記の検出装置50によれば、先端5Eによって一部が遮られた光3a及び光3bを検出することにより、光3aの幅方向及び光3bの幅方向におけるチップ先端位置を検出することができる。光3aの幅及び光3bの幅に応じた広範囲での位置検出が可能になる。
【0099】
検出器2は、先端5Eによって一部が遮られた光3aの幅方向において検出される光強度が小さい位置、及び、先端5Eによって一部が遮られた光3bの幅方向において検出される光強度が小さい位置を検出してよい。例えばこのようにして、光3aの幅方向におけるチップ先端位置、及び、光3bの幅方向におけるチップ先端位置を検出することができる。
【0100】
図1~
図3等を参照して説明したように、光源1は、光3aを出力する光源1a(第1の光源)と、光3aと交差する光3bを出力する光源1b(第2の光源)と、を含み、検出器2は、先端5Eによって一部が遮られた光3aを検出する検出器2a(第1の検出器)と、先端5Eによって一部が遮られた光3bを検出する検出器2b(第2の検出器)と、を含み、移動機構7は、光3a及び光3bが互いに交差する基準領域R内に先端5Eが位置するように、チップ5を移動させてよい。例えばこのようにして、光3a及び光3bを得るとともに、先端5Eによって一部が遮られた光3a及び光3bを検出することができる。
【0101】
図4~
図7等を参照して説明したように、検出装置50は、光源1からの光3を検出器2に向けて反射させるミラー4をさらに備え、光3a及び光3bの一方は、光源1からミラー4に向かう光であり、光3a及び光3bの他方は、ミラー4から検出器2に向かう光であってよい。この場合、検出器2は、先端5Eによって一部が遮られた光3aと、先端5Eによって一部が遮られた光3bとを、異なるタイミングで検出してよい。例えばこのようにして、光3a及び光3bを得るとともに、先端5Eによって一部が遮られた光3a及び光3bを検出することもできる。光源1及び検出器2が1つずつで足りるので、検出装置50をコンパクト且つ低コストで実現することができる。
【0102】
図8及び
図9等を参照して説明したように、光3a及び光3bがいずれも同じ基準領域Rを通過するようにミラー4が移動し、移動機構7は、同じ基準領域R内に先端5Eが位置するように、チップ5を移動させてよい。これにより、同じ基準領域Rを用いてチップ先端位置を検出することができる。
【0103】
光3aの幅は、当該幅方向における(例えばY軸方向における)先端5Eの位置のばらつき幅よりも大きく、光3bの幅は、当該幅方向における(例えばX軸方向における)先端5Eの位置のばらつき幅よりも大きくてよい。これにより、チップ先端位置のばらつき範囲をカバーする広範囲での位置検出が可能になる。
【0104】
光3a及び光3bそれぞれは、上下方向(Z軸方向)にも幅を有し、上下方向における光3aの幅(上下幅)は、当該幅における(Z軸方向における)先端5Eの位置のばらつき幅よりも大きく、上下方向における光3bの幅(上下幅)は、当該幅における(Z軸方向における)先端5Eの位置のばらつき幅よりも大きくてよい。横方向(XY平面方向)におけるチップ先端位置の検出と同様の原理で、上下方向(Z軸方向)におけるチップ先端位置も検出することができる。
【0105】
図10~
図13等を参照して説明したように、検出装置50は、細胞操作システム70に組み入れられ、細胞操作システム70では、検出器2の検出結果に基づいて、先端5Eと細胞12aにおける操作対象との位置合わせが行われてよい。例えばこのようにして、チップ先端位置の検出結果を活用することができる。
【0106】
移動機構7は、検出器2の検出結果に基づいて、先端5Eが顕微鏡11の観察範囲内に位置するように、チップ5を移動させ、細胞操作システム70では、顕微鏡11による先端5Eの観察結果に基づいて、位置合わせが行われてよい。広範囲で検出されたチップ先端位置を、顕微鏡11によってさらに高精度に検出することで、高精度な位置合わせが可能になる。
【0107】
図3及び
図7等を参照して説明した検出方法も、開示される技術の1つである。検出方法は、下方(Z軸負方向)に先端5Eを有し、先端5Eを介して細胞(例えば
図10の細胞12a)に対する操作を行うためのチップ5の先端5Eの位置を検出する方法である。検出方法は、横方向(XY平面方向)の光3を、上下方向(Z軸方向)にみたときに幅を有するように出力すること(ステップS1、ステップS11)と、チップ5を移動させること(ステップS3、ステップS13、ステップS17)と、出力した光3を検出すること(ステップS4、ステップS14、ステップS18)と、を含む。出力されてから検出されるまでの光3は、互いに異なる横方向(例えばY軸方向及びX軸方向)に進む光3a(第1の光)及び光3b(第2の光)を含む。移動させることは、光3aの一部及び光3bの一部が先端5Eによって遮られるように、チップ5を移動させる(ステップS3、ステップS4、ステップS13、ステップS14、ステップS17、ステップS18)。検出することは、先端5Eによって一部が遮られた光3a及び光3bを検出する(ステップS4、ステップS14、ステップS18)。この検出方法によっても、これまで説明したように、光3aの幅及び光3bの幅に応じた広範囲での位置検出が可能になる。
【符号の説明】
【0108】
1 光源
1a 光源(第1の光源)
1b 光源(第2の光源)
2 検出器
2a 検出器(第1の検出器)
2b 検出器(第2の検出器)
3 光
3a 光(第1の光)
3b 光(第2の光)
4 ミラー
5 チップ
5E 先端
6 細胞操作部
7 移動機構
8 制御検出部
11 顕微鏡
12 容器
12a 細胞
14 カメラ
15 共焦点スキャナ
16 位置センサ
50 検出装置
60 検出部
70 細胞操作システム
R 基準領域
R1 基準領域(第1の基準領域)
R2 基準領域(第2の基準領域)