(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】レーザ発光装置および光測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20240618BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01S7/484
H01S5/042 630
(21)【出願番号】P 2021140688
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
(72)【発明者】
【氏名】帆足 善明
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/068837(WO,A1)
【文献】特開2019-068528(JP,A)
【文献】特開2016-152336(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207938(WO,A1)
【文献】米国特許第10141716(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
H01S 5/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光装置(10)であって、
コイル(L1)と、順方向接続のダイオード(D1)とが直列に接続される第1直列接続体(DC1)であって、一端が直流電源の正極に接続される第1直列接続体と、
順方向接続のレーザダイオード(LD)と、第1スイッチ(Q1)とが直列に接続される第2直列接続体(DC2)であって、一端が前記第1直列接続体の他端に接続され、他端が前記直流電源の負極に接続される第2直列接続体と、
前記第2直列接続体に並列接続されるコンデンサ(C1)と、
前記第2直列接続体に並列接続される第2スイッチ(Q
2)と、
前記レーザ発光装置の動作を制御する駆動部(61)と、を備え、
前記駆動部は、
前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第1スイッチ(Q1)に駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第2スイッチ(Q2)に第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップと、
前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第1スイッチ(Q1)に第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップと、をそれぞれ1回実行する単位期間(UP)を繰り返し、
前記単位期間において、前記第1ステップの後に実行される前記第2ステップの後であって、次の前記単位期間における前記第1ステップの前に実行される第3ステップ(S3)を実行し、
前記第3ステップにおいて、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オン信号(SBN2)を出力すると共に、前記第1スイッチ(Q1)に第2駆動オン信号(SDN2)を出力する、レーザ発光装置。
【請求項2】
光測距装置(100)であって、
コイル(L1)と、順方向接続のダイオード(D1)とが直列に接続される第1直列接続体(DC1)であって、一端が直流電源の正極に接続される第1直列接続体と、順方向接続のレーザダイオード(LD)と、第1スイッチ(Q1)とが直列に接続される第2直列接続体(DC2)であって、一端が前記第1直列接続体の他端に接続され、他端が前記直流電源の負極に接続される第2直列接続体と、前記第2直列接続体に並列接続されるコンデンサ(C1)と、前記第2直列接続体に並列接続される第2スイッチ(Q
2)と、
駆動部(61)とを備える、レーザ発光装置(10)と、
前記レーザダイオードから発光されたレーザ光(IL)が対象物(OB)により反射された反射光(RL)を受光する受光部(30)と、
前記レーザ光が発光されてから前記反射光が受光されるまでの時間を用いて前記対象物までの距離を算出する算出部(62)と、を備
え、
前記駆動部は、
前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第1スイッチ(Q1)に駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第2スイッチ(Q2)に第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップと、
前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第1スイッチ(Q1)に第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップと、をそれぞれ1回実行する単位期間(UP)を繰り返し、
前記単位期間において、前記第1ステップの後に実行される前記第2ステップの後であって、次の前記単位期間における前記第1ステップの前に実行される第3ステップ(S3)を実行し、
前記第3ステップにおいて、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オン信号(SBN2)を出力すると共に、前記第1スイッチ(Q1)に第2駆動オン信号(SDN2)を出力する、光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ発光装置および光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を対象物に向けて照射して、対象物からの反射光を受光し、照射から受光までの時間を計測することで、対象物までの距離を測定する測距装置が知られている。測距性能を向上させるためには、高出力のレーザ光を照射することが求められる。そして、高出力のレーザ光を照射させるためには、レーザ光を発光するレーザダイオードに高い電圧を印加する必要がある。
【0003】
レーザダイオードに高い電圧を印加するために、昇圧回路を用いることが考えられる。特許文献1には、チョッパ昇圧回路を備えるレーザ発光装置が記載されている。チョッパ昇圧回路では、コイルの通電・非通電が繰り返えされることにより、コンデンサが充電される。これにより、コンデンサの電圧は、昇圧される。そして、特許文献1に記載のレーザ発光装置では、コンデンサの電圧が目標の電圧となると、レーザダイオードに直列接続されたスイッチがオンされることにより、レーザダイオードは通電して発光する。コンデンサに蓄積された電荷はレーザダイオードを介して放電されることにより、コンデンサの電圧は下がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザダイオードに直列接続されたスイッチをオンするための信号が入力されない場合が生じ得る。この場合、コンデンサは放電されないため、コンデンサの電圧が目標の電圧を超えて上がり続け、レーザダイオードやコンデンサなどに過電圧が印加されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の第1の形態によれば、レーザ発光装置(10)が提供される。このレーザ発光装置は、コイル(L1)と、順方向接続のダイオード(D1)とが直列に接続される第1直列接続体(DC1)であって、一端が直流電源の正極に接続される第1直列接続体と、順方向接続のレーザダイオード(LD)と、第1スイッチ(Q1)とが直列に接続される第2直列接続体(DC2)であって、一端が前記第1直列接続体の他端に接続され、他端が前記直流電源の負極に接続される第2直列接続体と、前記第2直列接続体に並列接続されるコンデンサ(C1)と、前記第2直列接続体に並列接続される第2スイッチ(Q2)と、前記レーザ発光装置の動作を制御する駆動部(61)と、を備え、前記駆動部は、前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第1スイッチ(Q1)に駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第2スイッチ(Q2)に第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップと、前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第1スイッチ(Q1)に第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップと、をそれぞれ1回実行する単位期間(UP)を繰り返し、前記単位期間において、前記第1ステップの後に実行される前記第2ステップの後であって、次の前記単位期間における前記第1ステップの前に実行される第3ステップ(S3)を実行し、前記第3ステップにおいて、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オン信号(SBN2)を出力すると共に、前記第1スイッチ(Q1)に第2駆動オン信号(SDN2)を出力する。
【0008】
この形態のレーザ発光装置によれば、第1スイッチにオン信号が入力されない場合であっても、第2直列接続体に並列接続されている第2スイッチがオン状態にされることで、コンデンサの電荷が第2スイッチを介して放電されるため、レーザダイオードに過電圧が印加されることを抑制することができる。
【0009】
本開示の第2の形態によれば、光測距装置(100)が提供される。この光測距装置は、コイル(L1)と、順方向接続のダイオード(D1)とが直列に接続される第1直列接続体(DC1)であって、一端が直流電源の正極に接続される第1直列接続体と、順方向接続のレーザダイオード(LD)と、第1スイッチ(Q1)とが直列に接続される第2直列接続体(DC2)であって、一端が前記第1直列接続体の他端に接続され、他端が前記直流電源の負極に接続される第2直列接続体と、前記第2直列接続体に並列接続されるコンデンサ(C1)と、前記第2直列接続体に並列接続される第2スイッチ(Q2)と、駆動部(61)とを備える、レーザ発光装置(10)と、前記レーザダイオードから発光されたレーザ光(IL)が対象物(OB)により反射された反射光(RL)を受光する受光部(30)と、前記レーザ光が発光されてから前記反射光が受光されるまでの時間を用いて前記対象物までの距離を算出する算出部(62)と、を備え、前記駆動部は、前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第1スイッチ(Q1)に駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第2スイッチ(Q2)に第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップと、前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第1スイッチ(Q1)に第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップと、をそれぞれ1回実行する単位期間(UP)を繰り返し、前記単位期間において、前記第1ステップの後に実行される前記第2ステップの後であって、次の前記単位期間における前記第1ステップの前に実行される第3ステップ(S3)を実行し、前記第3ステップにおいて、前記第2スイッチ(Q2)に第2昇圧オン信号(SBN2)を出力すると共に、前記第1スイッチ(Q1)に第2駆動オン信号(SDN2)を出力する。
【0010】
この形態の光測距装置によれば、光測距装置が有するレーザ発光装置は、レーザダイオードに対する過電圧の印加が抑制されるため、信頼性の高い光測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】他の実施形態に係る発光処理のフローチャート。
【
図6】他の実施形態に係る発光処理のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.実施形態:
A1.光測距装置の構成:
図1に示す光測距装置100は、レーザ光ILを発光し、対象物OBによって反射された反射光RLを受光することによって、対象物OBまでの距離を検出する。光測距装置100は、例えば、車両に搭載されて用いられる。本実施形態において、光測距装置100は、LiDAR(Light Detection And Ranging)である。光測距装置100は、レーザ発光装置10と、走査部20と、受光部30と、制御部60とを備える。レーザ発光装置10は、測距のためのレーザ光ILを発光する。
【0013】
制御部60は、CPUおよびメモリを備えるコンピュータとして構成されている。制御部60は、レーザ発光装置10と、走査部20と、受光部30との動作を制御する。制御部60は、さらに算出部62を備える。算出部62は、対象物OBまでの距離を算出する。算出部62は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより実現されてもよく、電子回路により実現されてもよい。
【0014】
レーザ発光装置10は、パルス状のレーザ光ILを発光する後述のレーザダイオードLDを備える。レーザダイオードLDから発せられたレーザ光ILは、図示しないコリメートレンズにより平行光にされ、走査部20に入る。
【0015】
走査部20は、予め定められた測定範囲MR内でレーザ光ILを走査する。走査部20は、レーザ光ILを反射するミラー21と、ミラー21を駆動する図示しないロータリソレノイドとを備える。ロータリソレノイドが、予め定められた角度範囲内で正転および逆転を繰り返すことにより、レーザ光ILは、測定範囲MR内で走査される。
【0016】
受光部30は、レーザダイオードLDから発光されたレーザ光ILが対象物OBにより反射された反射光RLを受光する。受光部30は、受光した光の強度に応じた検出信号を算出部62に出力する。
【0017】
算出部62は、受光部30から入力された検出信号を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。具体的には、算出部62は、レーザ光ILが発光されてから反射光RLが受光されるまでの時間である飛行時間(TOF:Time of Flight)を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。
【0018】
A2.レーザ発光装置の回路構成:
図2に示すように、レーザ発光装置10は、直流電源V1と、第1直列接続体DC1と、第2直列接続体DC2と、コンデンサC1と、第2スイッチQ2と、駆動部61とを有する。第1直列接続体DC1は、コイルL1と、直流電源V1に対して順方向接続のダイオードD1とが直列に接続されて構成されている。コイルL1のインダクタンスは、10μH以上100μH以下程度である。第1直列接続体DC1の一端は、直流電源V1の正極と接続されている。本実施形態では、コイルL1およびダイオードD1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、コイルL1、ダイオードD1の順に接続されている。第2直列接続体DC2は、直流電源V1に対して順方向接続のレーザダイオードLDと、第1スイッチQ1とが直列に接続されて構成されている。第2直列接続体DC2の一端は、第1直列接続体DC1の他端に接続されており、第2直列接続体DC2の他端は、直流電源V1の負極に接続されている。本実施形態では、第1スイッチQ1およびレーザダイオードLDは、直流電源V1の正極から負極に向かって、第1スイッチQ1、レーザダイオードLDの順に接続されている。コンデンサC1は、第2直列接続体DC2に並列接続されている。コンデンサC1の容量は、数1000pF程度である。第2スイッチQ2は、第2直列接続体DC2に並列接続されている。本実施形態において、第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、NチャネルIGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)である。駆動部61は、電子回路により構成されている。第1スイッチQ1のゲートには、駆動部61から出力される第1ゲート信号SG1が入力される。第2スイッチQ2のゲートには、駆動部61から出力される第2ゲート信号SG2が入力される。直流電源V1の負極は、グランドに接続されている。
【0019】
他の実施形態として、第1直列接続体DC1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、ダイオードD1、コイルL1の順に接続されてもよい。また、第2直列接続体DC2は、直流電源V1の正極から負極に向かって、レーザダイオードLD、第1スイッチQ1の順に接続されてもよい。第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、IGFET以外のFET(Field Effect Transistor)でもよい。IGFET以外のFETとして、例えば、窒化ガリウム(GaN)を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)を挙げることができる。なお、HEMTは、HFET(Heterostructure Field-Effect Transistor)とも呼ばれる。さらに、第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、バイポーラトランジスタでもよく、集積回路により構成されてもよい。第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、PチャネルIGFETでもよい。
【0020】
A3.レーザ発光装置の駆動方法:
駆動部61は、制御部60が行う対象物OBまでの距離を測定する測距処理に合わせて、
図3に示す発光処理を行う。駆動部61は、第1ステップS1にて、第1スイッチQ1に、駆動オフ信号SDFを出力している期間に、第2スイッチQ2に第1昇圧オン信号SBN1を出力した後、第2スイッチQ2に第1昇圧オフ信号SBF1を出力する。
【0021】
図4に示すように、第1ステップS1では、具体的には、第1スイッチQ1のゲートには、時刻t1から時刻t3まで、駆動オフ信号SDFとしてのロウレベルLの第1ゲート信号SG1が入力される。そして、第2スイッチQ2のゲートには、時刻t1から時刻t2まで、第1昇圧オン信号SBN1としてのハイレベルHの第2ゲート信号SG2が入力された後、時刻t2から時刻t3まで、第1昇圧オフ信号SBF1としてのロウレベルLの第2ゲート信号SG2が入力される。
【0022】
時刻t1から時刻t2までの期間では、第2スイッチQ2はオン状態となるため、コイルL1に電流が流れる。そして、時刻t2で、第2スイッチQ2がオフ状態となると、第2スイッチQ2を通る電流経路は遮断されるため、コイルL1のインダクタンスに応じて、コイルL1に電流が流れる。また、コンデンサC1には、コイルL1を流れる電流により電荷が蓄積されるため、コンデンサC1の電圧であるコンデンサ電圧VCは、直流電源V1の直流電圧よりも高い目標電圧Vaまで上昇する。直流電源V1の直流電圧は、数10V程度であり、目標電圧Vaは、数10V以上数100V以下程度である。
【0023】
駆動部61は、
図3に示す第2ステップS2にて、第2スイッチQ2に第2昇圧オフ信号SBF2を出力している期間に、第1スイッチQ1に第1駆動オン信号SDN1を出力する。
【0024】
第2ステップS2では、具体的には、
図4に示すように、時刻t3から時刻t4まで、第2スイッチQ2には、第2昇圧オフ信号SBF2としてのロウレベルLの第2ゲート信号SG2が出力される。そして、第1スイッチQ1には、第1駆動オン信号SDN1としてのハイレベルHの第1ゲート信号SG1が出力される。時刻t3にて、第1スイッチQ1がオン状態となると、レーザダイオードLDには、目標電圧Vaに応じた電圧が印加される。
【0025】
コンデンサC1に蓄積された電荷は、オン状態の第1スイッチQ1およびレーザダイオードLDを介してグランドに移動する。これに伴い、レーザダイオードLDは、コンデンサC1に蓄積された電荷に応じた期間、発光する。つまり、レーザダイオードLDは、パルス状のレーザ光ILを発光する。レーザ光ILのパルス幅は、1ns以上10ns以下程度である。レーザ光ILの光出力は、数10W以上数100W以下程度である。コンデンサC1は、放電され、コンデンサ電圧VCは、0Vとなる。
【0026】
図3に示す第3ステップS3では、駆動部61は、第2スイッチQ2に第2昇圧オン信号SBN2を出力すると共に、第1スイッチQ1に第2駆動オン信号SDN2を出力する。第3ステップS3では、具体的には、
図4に示すように、時刻t4から時刻t5まで、第2スイッチQ2のゲートに第2昇圧オン信号SBN2としてのハイレベルHの第2ゲート信号SG2が出力されると共に、第1スイッチQ1に第2駆動オン信号SDN2としてのハイレベルHの第1ゲート信号SG1が出力される。これにより、第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は共にオン状態となる。第1ステップS1から第3ステップS3までが、単位期間UP内に行われる。単位期間UPの時間は、数μs程度である。
【0027】
図3に示す第4ステップS4にて、制御部60が測距処理を終了する場合(第4ステップS4:YES)、発光処理は終了する。一方、制御部60が測距処理を終了しない場合(第4ステップS4:NO)、第1ステップS1に移行し、第1ステップS1~第3ステップS3が繰り返し行われる。なお、発光処理の終了は、第3ステップS3の後に限られない。他の実施形態として、第1ステップS1~第3ステップS3の何れのステップが行われているかに拘わらず、制御部60が測距処理を終了する場合に、発光処理が終了する処理内容としても良い。
【0028】
発光処理が継続される場合、
図4に示すように、時刻t5から、次の単位期間UPにおける第1ステップS1が行われる。つまり、第3ステップS3の後に、次の単位期間UPにおける第1ステップS1が連続して行わる。第1ステップS1の前に、第3ステップS3が行われることにより、コンデンサC1の昇圧に寄与しない充電を削減することができる。仮に、第2ステップS2の後、第1スイッチQ1がオフ状態とされてから、第2スイッチQ2がオン状態とされると、第1スイッチQ1がオフ状態となるに伴い、コンデンサC1は充電され、その後、第2スイッチQ2がオン状態となるに伴い、第2スイッチQ2を介して、コンデンサC1は放電されてしまう。この点、本実施形態によれば、第2スイッチQ2がオン状態にされた後に、第1スイッチQ1がオフ状態に切り替えられることにより、コンデンサC1の昇圧に寄与しない、コンデンサC1の充電を削減することができる。
【0029】
なお、第1ステップS1と第2ステップS2、および、第2ステップS2と第3ステップS3とは、連続して行われる。つまり、第1昇圧オフ信号SBF1と第2昇圧オフ信号SBF2との間において、第2ゲート信号SG2の電圧レベルの切り替えは行われない。第1駆動オン信号SDN1と第2駆動オン信号SDN2との間において、第1ゲート信号SG1の電圧レベルの切り替えは行われない。同様に、第3ステップS3と、次の単位期間UPにおける第1ステップS1とは、連続して行われる。つまり、第2昇圧オン信号SBN2と第1昇圧オン信号SBN1との間において、第2ゲート信号SG2の電圧レベルの切り替えは行われない。
【0030】
ところで、制御部60または駆動部61の不具合により、第1スイッチQ1のゲートに第1駆動オン信号SDN1が入力されない場合が生じ得る。この点、本実施形態においては、第1駆動オン信号SDN1が入力されない場合においても、次の単位期間UPにて、第1昇圧オン信号SBN1が入力されることにより、オン状態となった第2スイッチQ2を通る電流経路により、コンデンサC1は放電される。よって、レーザダイオードLDへの過電圧の印加を避けることができる。
【0031】
以上説明した実施形態によれば、レーザ発光装置10は、第1直列接続体DC1と、第2直列接続体DC2と、コンデンサC1と、第2スイッチQ2とを備える。これにより、不具合により、第1スイッチQ1に第1駆動オン信号SDN1が入力されない場合であっても、第2直列接続体DC2に並列接続されている第2スイッチQ2に第1昇圧オン信号SBN1が入力されることで、コンデンサC1の電荷が第2スイッチQ2を介して放電されるため、レーザダイオードLDへの過電圧の印加を抑制することができる。
【0032】
駆動部61は、単位期間UP内に、第1ステップS1と、第2ステップS2とをそれぞれ1回実行する。第1ステップS1にて、駆動部61は、第1スイッチQ1に駆動オフ信号SDFが出力している期間に、第2スイッチQ2に第1昇圧オン信号SBN1を出力した後、第1昇圧オフ信号SBF1を出力する。第2ステップS2では、駆動部61は、第2スイッチQ2に第2昇圧オフ信号SBF2を出力している期間に、第1スイッチQ1に第1駆動オン信号SDN1を出力する。よって、第1ステップS1により、コンデンサ電圧VCを昇圧させることができる。そして、第2ステップS2では、第1駆動オン信号SDN1が正常に入力される場合には、第2スイッチQ2がオフ状態で、第1スイッチQ1がオン状態とされることにより、コンデンサC1の電荷はレーザダイオードLDに流れ、レーザダイオードLDは発光する。また、第2ステップS2において、第1駆動オン信号SDN1が入力されない場合であっても、次の単位期間UPにおける第1ステップS1において、第1昇圧オン信号SBN1が入力されると、コンデンサC1に蓄積された電荷は、オン状態の第2スイッチQ2を介して放電される。よって、レーザダイオードLDへの過電圧の印加を抑制することができる。
【0033】
駆動部61は、単位期間UPにおいて、第2ステップS2の後であって、次の単位期間UPにおける第1ステップS1の前に、第3ステップS3実行する。第3ステップS3において、駆動部61は、第2スイッチQ2に第2昇圧オン信号SBN2が出力すると共に、第1スイッチQ1に第2駆動オン信号SDN2を出力する。これにより、発光処理において、昇圧に寄与しないコンデンサC1の充電を削減することができる。
【0034】
光測距装置100は、レーザダイオードLDから発光されたレーザ光ILが対象物OBにより反射された反射光RLを受光する受光部30と、レーザ光ILが発光されてから反射光RLが受光されるまでの時間を用いて対象物OBまでの距離を算出する算出部62とを備える。レーザ発光装置10を用いることにより、信頼性の高い光測距装置100を提供することができる。
【0035】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、発光処理が開始されると、第1ステップS1~第3ステップS3が繰り返し実行される。他の実施形態として、
図5に示すように、発光処理が開始された後、初期ステップSIが行われた後に、第1ステップS1~第3ステップS3が繰り返し実行されてもよい。
図5に示す第1ステップS1~第3ステップS3のそれぞれは、上記実施形態に係る第1ステップS1~第3ステップS3のそれぞれと同じ処理ステップである。本実施形態に係る発光処理では、まず、初期ステップSIにて、第1スイッチQ1に初期駆動オン信号SDNIが出力されている期間に、第2スイッチQ2に初期昇圧オフ信号SBFIが出力された後、第2スイッチQ2に初期昇圧オン信号SBNIが出力される。具体的には、
図6に示すように、時刻t1から時刻t3まで、第1スイッチQ1に初期駆動オン信号SDNIとしてのハイレベルHの第1ゲート信号SG1が入力される。また、時刻t1から時刻t2まで、第2スイッチQ2に初期昇圧オフ信号SBFIとしてのロウレベルLの第2ゲート信号SG2が出力された後、第2スイッチQ2に初期昇圧オン信号SBNIとしてのハイレベルHの第2ゲート信号SG2が出力される。これにより、前回行われた発光処理により、コンデンサC1が充電されていた場合には、第1スイッチQ1およびレーザダイオードLDを介して、コンデンサC1は放電される。その後、第1実施形態と同様に、第1ステップS1~第3ステップS3が繰り返えされる。
【0036】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…レーザ発光装置、30…受光部、62…算出部、100…光測距装置、C1…コンデンサ、D1…ダイオード、DC1…第1直列接続体、DC2…第2直列接続体、IL…レーザ光、L1…コイル、LD…レーザダイオード、OB…対象物、Q1…第1スイッチ、Q2…第2スイッチ