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特許7505467運転支援装置、運転支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240618BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240618BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20240618BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W50/08
B60W40/107
B60W40/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021157698
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048405
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩太
(72)【発明者】
【氏名】池澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】栃木 康平
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022565(JP,A)
【文献】特開2019-168960(JP,A)
【文献】特開2014-041556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 50/08
B60W 40/107
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が交差点で右左折を行う場合に前記車両を減速させる減速制御を実行することにより前記車両の運転者の運転を支援する運転支援装置において、
前記運転支援装置は、
前記車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき、前記右左折条件が成立したときに比べて、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくするように構成され、
更に、前記運転支援装置は、
前記右左折条件が成立しない場合において、
前記走行車線を含む道路の左右の路肩のうち前記変更先の進行方向に対応する路肩までの距離を表す路肩距離が所定の閾値路肩距離以上であって、且つ、前記走行車線と隣接し且つ前記変更先の進行方向に対応する車線である隣接車線を走行する隣接車が停止している又は減速しているとの第1条件が成立している場合、第1必要度を必要度として取得し、
前記路肩距離が前記閾値路肩距離以上であって、且つ、前記隣接車の車速が閾値以上であるとの第2条件、及び、前記路肩距離が前記閾値距離以下であって、且つ、前記走行車線の前記車両の前方を走行する先行車が減速しないとの第3条件の何れか一方が成立している場合、前記第1必要度よりも低い第2必要度を前記必要度として取得し、
前記必要度が低いほど、前記減速度の大きさを小さくするように前記減速制御を実行する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記運転支援装置は、
前記第1条件乃至前記第3条件と、前記第1条件乃至前記第3条件の何れかが成立した場合に取得される必要度と、の関係が定義された必要度情報を予め記憶しており、
前記右左折条件が成立しない場合、前記必要度情報を参照して前記必要度を取得する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記運転支援装置は、前記第1条件乃至前記第3条件の何れも成立しない場合、前記第1必要度と前記第2必要度との間の必要度を取得するように構成された、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項2及び請求項3のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
ネットワークを介して管理サーバにデータ交換可能に接続され、
前記運転支援装置は、前記管理サーバによって生成された更新用必要度情報を受信した場合、前記更新用必要度情報に基いて前記必要度情報を更新するように構成された、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の運転支援装置であって、
前記車両の運転者が前記車両の進行方向を変更する場合に操作する操作子を備え、
前記運転支援装置は、前記操作子に対する前記運転者の操作に基いて、前記変更先の進行方向を特定するように構成された、
運転支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記車両に搭載されたカメラ装置が前記車両の前方領域を撮影することにより取得したカメラ画像に含まれる信号機の画像、及び前記走行車線の矢印路面標示の画像の少なくとも一つに基いて、前記走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているか否かを判定することにより前記右左折条件が成立しているか否かを判定するように構成された、
運転支援装置。
【請求項7】
車両に搭載されたコンピュータが、前記車両が交差点で右左折を行う場合に前記車両を減速させる減速制御を実行することにより前記車両の運転者の運転を支援する運転支援方法であって、
前記運転支援方法は、
前記車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき、前記右左折条件が成立したときに比べて、前記コンピュータが、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくするように決定する第1ステップと、
前記コンピュータが、前記決定された減速度の大きさで前記減速制御を実行する第2ステップと、
前記右左折条件が成立しない場合において、前記走行車線を含む道路の左右の路肩のうち前記変更先の進行方向に対応する路肩までの距離を表す路肩距離が所定の閾値路肩距離以上であって、且つ、前記走行車線と隣接し且つ前記変更先の進行方向に対応する車線である隣接車線を走行する隣接車が停止している又は減速しているとの第1条件が成立していれば、前記コンピュータが、第1必要度を必要度として取得する第3ステップと、
前記右左折条件が成立しない場合において、前記路肩距離が前記閾値路肩距離以上であって、且つ、前記隣接車の車速が閾値以上であるとの第2条件、及び、前記路肩距離が前記閾値距離以下であって、且つ、前記走行車線の前記車両の前方を走行する先行車が減速しないとの第3条件の何れか一方が成立している場合、前記コンピュータが、前記第1必要度よりも低い第2必要度を前記必要度として取得する第4ステップと、
前記コンピュータが、前記必要度が低いほど、前記減速度の大きさを小さくするように前記減速制御を実行する第5ステップと、
を含む、運転支援方法。
【請求項8】
車両に適用され、且つ、前記車両が交差点で右左折を行う場合に前記車両を減速させる減速制御を前記車両に実行させることにより前記車両の運転者の運転を支援するプログラムであって、前記車両に備わるコンピュータに、
前記車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき、前記右左折条件が成立したときに比べて、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくするように決定させる第1ステップと、
前記決定された減速度の大きさで前記減速制御を実行させる第2ステップと、
前記右左折条件が成立しない場合において、前記走行車線を含む道路の左右の路肩のうち前記変更先の進行方向に対応する路肩までの距離を表す路肩距離が所定の閾値路肩距離以上であって、且つ、前記走行車線と隣接し且つ前記変更先の進行方向に対応する車線である隣接車線を走行する隣接車が停止している又は減速しているとの第1条件が成立していれば、第1必要度を必要度として取得させる第3ステップと、
前記右左折条件が成立しない場合において、前記路肩距離が前記閾値路肩距離以上であって、且つ、前記隣接車の車速が閾値以上であるとの第2条件、及び、前記路肩距離が前記閾値距離以下であって、且つ、前記走行車線の前記車両の前方を走行する先行車が減速しないとの第3条件の何れか一方が成立している場合、前記第1必要度よりも低い第2必要度を前記必要度として取得させる第4ステップと、
前記必要度が低いほど、前記減速度の大きさを小さくするように前記減速制御を実行させる第5ステップと、
を含む処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が交差点で右左折を行う場合に車両を減速させる減速制御を実行することにより車両の運転者の運転を支援する運転支援装置、運転支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が交差点で右左折を行う場合に減速制御を実行する運転支援装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された運転支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、「方向指示器(ウィンカー)の作動状態」及び「車両が走行している走行車線における道路情報」に基いて車両が交差点で右左折を行うか否かを判定する。従来装置は、車両が交差点で右左折を行うと判定した場合、上記減速制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-4333号公報
【発明の概要】
【0004】
従来装置は、車両が交差点で右左折を行う可能性に応じて減速制御における減速度の大きさを変更しない。このため、車両が交差点で右左折を行わないにもかかわらず減速制御が誤って実行された場合、車両が交差点で右左折を行うときの減速度の大きさで車両が減速してしまう。減速制御が誤って実行された場合の減速度の大きさが大きいほど、車両の乗員が抱く違和感は大きくなる傾向がある。
【0005】
減速制御が誤って実行された場合に備えて減速制御における減速度の大きさが小さく設定されていると、減速制御が適切に実行された場合に車両を十分に減速できない可能性が大きくなる。
【0006】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、減速制御が誤って実行された場合に車両の乗員が抱く違和感を低減させる可能性を高めつつ、減速制御が適切に実行された場合に車両を十分に減速させる可能性を高める運転支援装置を提供することにある。
【0007】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、
車両(VA)が交差点で右左折を行う場合に前記車両を減速させる減速制御を実行することにより前記車両の運転者の運転を支援する運転支援装置(10)において、
前記車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において(ステップ620「Yes」)、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、前記右左折条件が成立したときに比べて(ステップ635「Yes」、ステップ640)、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくする(ステップ650、ステップ710、ステップ725)ように構成されている。
【0008】
右左折条件が成立しない場合、右左折条件が成立している場合に比べて、車両が交差点で右左折を行う可能性は低くなる(換言すれば、減速制御が誤って実行される可能性は高くなる。)。本減速装置によれば、右左折条件が成立しない場合(減速制御が誤って実行される可能性が高い場合)、右左折条件が成立した場合(減速制御が誤って実行される可能性が低い場合)に比べて小さな大きさの減速度で減速制御が実行される。これにより、減速制御が誤って実行された場合に車両の乗員が抱く違和感を低減できる可能性を高めつつ、減速制御が適切に実行された場合に車両を確実に減速できる可能性を高めることができる。
【0009】
本発明装置の一態様において、
前記右左折条件が成立しない場合(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、前記車両の周辺環境に基いて前記減速制御の実行の必要度を取得し(ステップ650、ステップ700乃至ステップ795)、
前記必要度が低いほど、前記減速度の大きさを小さくするように前記減速制御を実行する(ステップ815)、
ように構成されている。
【0010】
本態様によれば、右左折条件が成立しない場合、車両の周辺環境に基いて減速制御における減速度の大きさをより適切に決定できる。これにより、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0011】
上記態様において、
特定の状況に応じた前記必要度と、前記特定の状況を成立させる前記周辺環境を表す少なくとも一つの周辺パラメータと、の関係が定義された必要度情報(28a、図2)を予め記憶しており、
前記右左折条件が成立しない場合(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、現時点の周辺パラメータを取得し(ステップ705)、
前記現時点の周辺パラメータを前記必要度情報に適用することにより前記必要度を取得する(ステップ710)、
ように構成されている。
【0012】
本態様によれば、右左折条件が成立しない場合、現時点の周辺パラメータに基いて必要度が取得されるので、現時点の周辺環境に応じた適切な必要度が取得できる。これにより、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0013】
上記態様において、
前記必要度情報には、前記必要度が高い必要度高状況(状況2)と、前記必要度が低い必要度低状況(状況1、状況3)と、が登録されており、
前記現時点の周辺パラメータが前記必要度高状況及び前記必要度低状況の何れも成立させない場合(ステップ715「No」)、前記必要度高状況の必要度と前記必要度低状況の必要度との間の必要度を取得する(ステップ725)、
ように構成されている。
【0014】
必要度情報には必要度高状況と必要度低状況とが登録されている。現時点の周辺パラメータが必要度情報に適用されることにより、現時点の周辺パラメータが必要度高状況及び必要度低状況のいずれかを成立させる場合にはその状況に応じた必要度が取得される。これに対して、現時点の周辺パラメータが必要度高状況及び必要度低状況のいずれも成立させない場合には、必要度高状況の必要度と必要度状況の必要度との間の必要度が取得される。これにより、現時点の周辺環境に応じた適切な必要度が取得できる。よって、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0015】
上記態様において、
前記走行車線を含む道路の左右の路肩のうち前記変更先の進行方向に対応する路肩までの距離を表す路肩距離(Dr)が所定の閾値路肩距離(Drth)以上であって(Dr≧Drth)、且つ、前記走行車線と隣接し且つ前記変更先の進行方向に対応する車線である隣接車線(LB)を走行する隣接車(VB)が停止している(Vb=0)又は減速している(Gb<0)との条件が成立している場合、前記必要度高状況に応じた必要度を取得し、
前記路肩距離が前記閾値路肩距離以上であって(Dr≧Drth)、且つ、前記隣接車の車速が閾値以上である(Vb≧Vbth)との条件、及び、前記路肩距離が前記閾値距離よりも短く(Dr<Drth)、且つ、前記走行車線の前記車両の前方を走行する先行車が減速しない(Gc≧0)との条件の何れか一方が成立している場合、前記必要度低状況に応じた必要度を取得する、
ように構成されている。
【0016】
路肩距離が閾値路肩距離以上であって且つ隣接車が停止か減速しているとの条件(第1条件)が成立している場合、車両は右左折ではなく車線変更を行う可能性が高い。更に、車両が車線変更を終了して隣接車線を走行するようになると、車両は隣接車両のために減速が必要となる可能性が高い。このため、第1条件が成立している場合の必要度は高く設定されている。
一方、路肩距離が閾値路肩距離以上であって且つ隣接車の車速が閾値以上であるとの条件(第2条件)が成立している場合、車両は右左折ではなく車線変更を行う可能性が高いものの、車線変更の終了後に隣接車両のために減速が必要となる可能性は低い。このため、第2条件が成立している場合の必要度は低く設定されている。
更に、路肩距離が閾値路肩距離未満であって且つ先行車が減速しないとの条件(第3条件)が成立している場合、先行車が減速していないことから車両は減速の必要がない右左折を行う可能性が高い。このため、第3条件が成立している場合の必要度は低く設定されている。
以上により、現時点の周辺環境に応じた適切な必要度が取得できる。よって、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0017】
上記態様において、
前記周辺環境を表す複数の周辺パラメータのそれぞれに対する個別条件と、前記周辺パラメータが個別条件を成立させた場合の加減算値と、の関係を定義した個別必要度情報(図10)を予め記憶しており、
前記右左折条件が成立しない場合(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、現現時点の周辺パラメータを取得し(ステップ705)、
前記現時点の周辺パラメータを前記個別必要度情報に適用することにより前記加減算値を取得し、
前記加減算値に基いて前記必要度を取得する、
ように構成されている。
【0018】
本態様によれば、右左折条件が成立しない場合、車両の周辺環境に基いて減速制御における減速度の大きさをより適切に決定できる。これにより、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0019】
上記態様において、
ネットワークを介して管理サーバ(60)にデータ交換可能に接続され、
前記管理サーバによって生成された更新用必要度情報を受信した場合、前記更新用必要度情報に基いて前記必要度情報を更新する、
ように構成されている。
【0020】
これにより、本支援装置のユーザの要望等に基いて必要度情報が更新されるので、ユーザの要望にマッチした適切な必要度が取得できるようになる。よって、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0021】
本発明装置の一態様であって、
前記車両の運転者が前記車両の進行方向を変更する場合に操作する操作子(25、SW)を備え、
前記操作子に対する前記運転者の操作に基いて、前記変更先の進行方向を特定する、ように構成されている。
【0022】
例えば、操作子はウィンカーレバー又はステアリングホイールである。このような操作子の操作に基いて変更先の進行方向が特定されるので、変更先の進行方向を正確に特定できる。
【0023】
本発明装置の一態様において、
前記車両に搭載されたカメラ装置(22)が前記車両の前方領域を撮影することにより取得したカメラ画像に含まれる信号機(TL)の画像、及び前記走行車線の矢印路面標示(AM)の画像の少なくとも一つに基いて、前記走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているか否かを判定することにより前記右左折条件が成立しているか否かを判定するように構成されている。
【0024】
これにより、右左折条件が成立しているか否かを正確に判定できる。
【0025】
本発明の運転支援方法は、
車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において(ステップ620「Yes」)、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、前記右左折条件が成立したときに比べて(ステップ635「Yes」、ステップ640)、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくするように決定する第1ステップ(ステップ650、ステップ710、ステップ725)と、
前記決定された減速度の大きさで前記減速制御を実行させる第2ステップ(ステップ815、ステップ830)と、
を含む。
【0026】
本発明のプログラムは、
車両(VA)に備わるコンピュータ(20)に、
前記車両と前記交差点との間の距離が閾値距離以下であって且つ前記車両の進行方向を変更する場合において(ステップ620「Yes」)、前記車両が走行している走行車線において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しないとき(ステップ625「No」、ステップ630「No」、ステップ635「No」)、前記右左折条件が成立したときに比べて(ステップ635「Yes」、ステップ640)、前記減速制御における前記車両の減速度の大きさを小さくするように決定する第1ステップ(ステップ650、ステップ710、ステップ725)と、
前記決定された減速度の大きさで前記減速制御を実行させる第2ステップ(ステップ815、ステップ830)と、
を含む処理を実行させる。
【0027】
上記運転支援方法及び上記プログラムによれば、上記違和感を低減できる可能性を更に高めつつ、車両を確実に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0028】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略システム構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態の必要度情報を説明するための図である。
図3図3は、図2に示した状況1を説明するための交差点付近の俯瞰図である。
図4図4は、図2に示した状況2を説明するための交差点付近の俯瞰図である。
図5図5は、図2に示した状況3を説明するための交差点付近の俯瞰図である。
図6図6は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する開始条件判定ルーチンを示したフローチャートである。
図7図7は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する必要度設定サブルーチンを示したフローチャートである。
図8図8は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する減速制御ルーチンを示したフローチャートである。
図9図9は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する終了条件判定ルーチンを示したフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態の第1変形例の個別必要度情報を説明するための図である。
図11図11は、本発明の実施形態の第2変形例の開始条件判定ルーチンの一部を示したフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施形態の第3変形例の開始条件判定ルーチンの一部を示したフローチャートである。
図13図13は、本発明の実施形態の第4変形例の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<構成>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」と称呼される。)10は、車両(以下、「車両」と称呼する。)VAに搭載される。
【0031】
本支援装置10は、運転支援ECU20、エンジンECU30、ブレーキECU40及びステアリングECU50を備えている。以下、運転支援ECU20を「DSECU20」と称呼する。
【0032】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える制御ユニット(Electronic Control Unit)であり、「コントローラ」及び「コンピュータ」と称呼する場合がある。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、及びインターフェース(I/F)等を含む。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)を介して相互にデータ交換可能に接続されている。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。これらのECUは、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0033】
本支援装置10は、車輪速センサ21、カメラ装置22、ミリ波レーダ装置23、加速度センサ24、ウィンカーレバー25、右ウィンカー26、左ウィンカー27及び記憶装置28を備えている。これらは、DSECU20とデータ交換可能に接続されている。
【0034】
車輪速センサ21は、車両VAの車輪毎に設けられている。各車輪速センサ21は、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つの車輪パルス信号を発生させる。DSECU20は、各車輪速センサ21から受け取った車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数をカウントし、そのパルス数に基いて各車輪の回転速度を取得する。そして、DSECU20は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、DSECU20は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして取得する。
【0035】
カメラ装置22は、車両VAの車室内のフロントウィンドウの中央上部に配設され、車両VAの前方の所定領域を撮影した画像(以下、「カメラ画像」とも称呼される。)を取得する。カメラ装置22は、カメラ画像に基いて物体情報及び白線情報を取得し、これらの情報とカメラ画像とを含むカメラ物体情報をDSECU20に送信する。
【0036】
より具体的に述べると、カメラ装置22は、カメラ画像に基いて、信号機TR(図3乃至図5を参照。)及び他車両VB及びVC(図3乃至図5を参照。)等の物体を検出する。更に、カメラ装置22は、物体までの距離及びその物体の方向を特定する。物体情報は、物体の種類(信号機TR及び車両等)、上記距離及び上記方向を含む。
【0037】
カメラ装置22は、カメラ画像に基いて道路にある以下に例示する白線等を検出し、その白線の車両VAに対する位置を特定する。
・車両VAが現在走行している車線である走行車線LAを区画する右白線RWL(図3乃至図5を参照。)及び左白線LWL(図3乃至図5を参照。)
・走行車線LAがある道路上の矢印路面表示AM(図3及び図4を参照。)
・走行車線LAがある道路の右側の端である右路肩(右道路端)RSL(図3乃至図5を参照。)及び左側の端である左路肩(左道路端)LSL(図3乃至図5を参照。)
なお、白線情報は、白線の種類及び白線の位置を含む。
【0038】
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波を車両VAの前方に送信する。ミリ波レーダ装置23は、物体に反射されたミリ波(反射波)を受信することによって物体を検出する周知のセンサである。ミリ波レーダ装置23は、受信した反射波に基いて、物体までの距離(物体距離)、物体の車両VAに対する相対速度(物体相対速度)Vr及び物体の方向を算出する。そして、ミリ波レーダ装置23は、所定時間が経過する毎に、「物体距離、物体相対速度Vr、及び物体の方向を含むレーダ物体情報」をDSECU20に送信する。
【0039】
DSECU20は、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて車両VAの前方に存在する物体の車両VAに対する位置を特定する。
【0040】
加速度センサ24は、車両VAの前後方向の加速度Gを測定し、加速度Gを表す検出信号を発生させる。DSECU10は、加速度センサ24からの検出信号に基いて車両VAの加速度Gを特定する。
【0041】
ウィンカーレバー25は、ステアリングホイールSW付近に配設される。運転者がウィンカーレバー25を左作動方向(例えば上方向)に操作すると左ウィンカー27が作動(点滅)する。運転者がウィンカーレバー25を右作動方向(例えば下方向)に操作すると右ウィンカー26が作動(点滅)する。
【0042】
左ウィンカー27は、車両VAの前端の左側及び後端の左側に配設された照明装置である。右ウィンカー26は、車両VAの前端の右側及び後端の右側に配設された照明装置である。
【0043】
運転者は、車両VAの進行方向を左側に変更する場合には、ウィンカーレバー25を左作動方向に操作することにより左ウィンカー27を作動させる。運転者は、車両VAの進行方向を右側に変更する場合には、ウィンカーレバー25を右作動方向に操作することにより右ウィンカー26を作動させる。
【0044】
記憶装置28は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体を有する装置である。DSECU20は、情報を記憶装置28に記憶し(保存し)、記憶装置28に記憶された(保存された)情報を読み出すことができる。記憶装置28は、後述する必要度情報(図2を参照。)が記憶される必要度情報記憶部28aを含む
例えば、記憶装置28は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Disk)等であるが、情報の読み書きが可能な周知の記憶装置又は記憶媒体であればよい。
【0045】
エンジンECU30は、アクセルペダル操作量センサ32及びエンジンセンサ34と接続され、これらのセンサの検出信号を受け取る。
【0046】
アクセルペダル操作量センサ32は、車両VAのアクセルペダル32aの操作量(即ち、アクセルペダル操作量AP)を検出する。運転者がアクセルペダル32aを操作していない場合のアクセルペダル操作量APは「0」である。
【0047】
エンジンセンサ34は、図示しない「車両VAの駆動源である内燃機関」の運転状態量を検出するセンサである。エンジンセンサ34は、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ及び吸入空気量センサ等である。
【0048】
更に、エンジンECU30は、「スロットル弁アクチュエータ及び燃料噴射弁」等のエンジンアクチュエータ36と接続されている。エンジンECU30は、エンジンアクチュエータ36を駆動することによって内燃機関が発生するトルクを変更し、以て、車両VAの駆動力を調整する。
【0049】
エンジンECU30は、アクセルペダル操作量APが大きくなるほど目標スロットル弁開度TAtgtが大きくなるように目標スロットル弁開度TAtgtを決定する。エンジンECU30は、スロットル弁の開度が目標スロットル弁開度TAtgtに一致するようにスロットル弁アクチュエータを駆動する。
【0050】
ブレーキECU40は、車輪速センサ21及びブレーキペダル操作量センサ42と接続され、これらのセンサの検出信号を受け取る。
【0051】
ブレーキペダル操作量センサ42は、車両VAのブレーキペダル42aの操作量(即ち、ブレーキペダル操作量BP)を検出する。ブレーキペダル42aが操作されていない場合のブレーキペダル操作量BPは「0」である。
【0052】
ブレーキECU40は、車輪速センサ21からの車輪パルス信号に基いて車速VsをDSECU20と同様に取得する。なお、ブレーキECU40は車速VsをDSECU20から取得してもよい。
【0053】
更に、ブレーキECU40は、ブレーキアクチュエータ44と接続されている。ブレーキアクチュエータ44は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ44は、ブレーキペダル42aの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(何れも、図示略)に配設される。ブレーキアクチュエータ44はホイールシリンダに供給する油圧を調整することにより車両VAの制動力を調整する。
【0054】
ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量BPに基いて「負の値である操作目標加速度」を決定する。ブレーキECU40は、車両VAの実際の加速度が操作目標加速度に一致するようにブレーキアクチュエータ44を駆動する。
【0055】
ステアリングECU50は、操舵角センサ52及び操舵モータ54に接続されている。
【0056】
操舵角センサ52は、ステアリングホイールSWの中立位置からの回転角度を操舵角θsとして検出し、操舵角θsを表す信号を発生する。ステアリングECU50は、操舵角センサ52が発生する信号に基いて操舵角θsを取得する。
【0057】
操舵モータ54は、車両VAの「ステアリングホイールSW、ステアリングシャフトSS及び操舵用ギア機構等を含む操舵機構56」にトルクを伝達可能に組み込まれている。操舵モータ54は、ステアリングECU50によって向き及び大きさ等が制御される「図示しない車両バッテリから供給される電力」に応じたトルクを発生する。このトルクによって、操舵アシストトルクが発生され、或いは、左右の操舵輪が操舵(転舵)される。
【0058】
ステアリングECU50は、操舵モータ54に「運転者の操作によりステアリングシャフトに発生する操舵トルク」に応じて操舵アシストトルクを発生させる。
【0059】
(作動の概要)
本支援装置10は、車両VAから交差点までの距離Dtlが閾値距離Dth以下であり且つ車両VAが進行方向を変更するとの開始条件が成立した場合、減速制御を実行する。この減速制御は、車速Vsを所定の目標車速Vtgtと一致させるように車両VAを減速させる制御である。
【0060】
本支援装置10は、上記開始条件が成立した場合、車両VAが現在走行している走行車線LA(図3乃至図5を参照。)において変更先の進行方向への進行が許可されているとの右左折条件が成立しているか否かを判定する。
【0061】
右左折条件が成立している場合、右左折条件が成立していない場合に比べて、車両VAが交差点で右左折を行う可能性が高くなる。換言すれば、右左折条件が成立してない場合、右左折条件が成立している場合に比べて、車両VAが交差点で右左折を行う可能性は低いため、減速制御が誤って実行される可能性が高くなる(減速制御が実行される必要性は低くなる)。
【0062】
本支援装置10は、上記右左折条件が成立しない場合、右左折条件が成立した場合よりも小さな大きさの減速度で減速制御を実行することを特徴とする。
【0063】
これによって、減速制御が誤って実行された場合に車両の乗員が抱く違和感を低減できる可能性を高めつつ、減速制御が適切に実行された場合に車両を十分に減速できる可能性(即ち、車速Vsを上記目標車速Vtgtと一致させるように減速できる可能性)を高めることができる。
【0064】
(作動例)
まず、右左折条件が成立しているか否かの判定の例を説明する。
本支援装置10は、ウィンカーレバー25の操作に基いて、作動中のウィンカーの方向を上記「変更先の進行方向」として特定する。より具体的に述べると、本支援装置10は、ウィンカーレバー25が右ウィンカー26を作動させる方向に操作された場合には変更先の進行方向を「右」と特定し、ウィンカーレバー25が左ウィンカー27を作動させる方向で操作させた場合には変更先の進行方向を「左」と特定する。
【0065】
更に、本支援装置10は、カメラ装置22から送信されるカメラ画像に基いて走行車線LA上の矢印路面標示AM(図3及び図4を参照。)を認識し、その矢印路面標示AMの矢印の方向を特定する。この矢印の方向は、走行車線LAにおいて車両VAの進行が許可されている方向であり、「車線許可方向」と称呼する場合もある。
【0066】
更に、本支援装置10は、上記カメラ画像に基いて信号機TLの矢灯器ALの矢印信号(図3及び図4を参照。)を認識し、その矢印信号の方向を特定する。
【0067】
本支援装置10は、変更先の進行方向、矢印信号の方向及び車線許可方向が一致する場合、走行車線LAにおいて変更先の進行方向への進行が許可されていると判定し、上記右左折条件が成立すると判定する。
【0068】
本支援装置10は、右左折条件が成立している場合、必要度αを「1.0」に設定し、減速制御を実行する。必要度αは減速制御の実行の必要度合を表す。必要度αは「0」以上「1」未満の値によって表される。上記必要度合が高いほど必要度αの値は大きくなり、上記必要度合が低いほど必要度αの値は小さくなる。
【0069】
ここで、本支援装置10は、減速制御において、現時点の車速Vsを以下の(1)式に適用することにより目標加速度Gtgtを取得する。

Gtgt=α×Ga×(Vtgt-Vs) …(1)式

α:必要度
Ga:所定のゲイン(0<Ga<1)
【0070】
上記開始条件は、上記条件の他に車速Vsが目標車速Vtgtよりも大きい(速い)との条件を更に含んでいる。このため、減速制御においては、本支援装置10は、「負の目標加速度Gtgt(即ち、減速度)」を取得することになる。
【0071】
一方、本支援装置10は、右左折条件が成立していない場合、図2に示した必要度情報を参照し、車両VAの周辺環境に適合する状況(以下、「適合条件」と称呼する場合がある。)があれば、その適合条件に対応する必要度αを取得する。
【0072】
図2に示したように、必要度情報には、状況1乃至状況3、各状況1乃至3の成立条件、及び各状況1乃至状況3の必要度αがそれぞれ関連付けて登録されている。
【0073】
以下に各状況1乃至状況3について詳細に説明する。
<状況1>
図3を参照しながら、状況1の成立条件を説明する。
以下の条件1A及び条件1Bの何れもが成立した場合に状況1が成立する。
条件1A:路肩距離Drが所定の閾値路肩距離Drth以上であること。
条件1B:隣接車速度Vbが所定の閾値速度Vbth以上であること。
【0074】
路肩距離Drは、走行車線LAを含む道路の左路肩(左道路端)LSL及び右路肩(右道路端)RSLのうち変更先の進行方向側の路肩と車両VAとの間の距離である。図3に示した例では、車両VAの変更先の進行方向は「右」である。このため、路肩距離Drは、右路肩RSLと車両VAとの間の距離である。
なお、一例として、閾値路肩距離Drthは一車線の幅に設定されている。
【0075】
隣接車速度Vbは、「走行車線LAの車両VAの変更先の進行方向側で走行車線LAと隣接する隣接車線LB」を走行する車両VB(以下、「隣接車VB」と称呼する。)の車速である。更に、一例として、閾値速度Vbthは、現時点の車両VAの車速Vsに設定されている。
【0076】
路肩距離Drが閾値路肩距離Drth以上である路肩の方へと車両VAの進行方向を変更させる場合、車両VAは隣接車線LBへと車線変更を行う可能性が高い。隣接車線LBを走行する隣接車VBは閾値速度Vbth以上の車速で走行しているため、車両VAは隣接車線LBを走行するようになっても減速する必要がない。従って、状況1が成立した場合には、減速制御を実行する必要度は低い。
【0077】
図2に示した例においては、状況1の必要度αは「0.2」に設定されている。このため、状況1が成立した場合の減速制御における目標加速度Gtgtの大きさは、右左折条件が成立した場合に比べて小さくなる。
【0078】
以上により、状況1が成立している場合には減速制御の実行が必要となる可能性が低くなるため、減速制御における減速度の大きさを小さくすることができる。よって、状況1が成立した場合に減速制御によって運転者が抱く違和感の程度を低減する可能性を高めることができる。
【0079】
ここで、図3を参照しながら、信号機TLについて説明する。
信号機TLは、主灯器ML及び矢灯器ALを備える。
主灯器MLは青信号B、黄信号Y及び赤信号Rの何れかを表示する。主灯器MLが黄信号Y及び赤信号Rの何れかを表示していれば、信号機TLは車両VAの停止を指示している。黄信号Y及び赤信号Rを「停止信号」と称呼する場合がある。主灯器MLが青信号Bを表示していれば、信号機TLは車両VAの何れの方向への進行を許可している。青信号Bを「許可信号」と称呼する場合がある。
【0080】
更に、主灯器MLが停止信号を表示している場合、矢灯器ALは、左矢印信号LL、直進矢印信号SL及び右矢印信号RLの少なくとも一つを表示する場合がある。この場合には、信号機TLは、矢灯器ALに表示された矢印信号の方向への進行を許可している。
なお、矢灯器ALを備えない信号機TLも存在する。
【0081】
図3に示した例では、主灯器MLが赤信号Rを表示しているものの矢灯器ALが左矢印信号LL及び直進矢印信号SLを表示しているので、信号機TLは、直進及び左折を許可している。更に、車両VAは進行方向を右側へ変更しようとしており、走行車線LA上の矢印路面表示AMは左折及び直進を許可している。このため、右左折条件は成立しない。
【0082】
隣接車VBは交差点を直進しようとしている。このような状況で、車両VAの運転者は、右ウィンカー26を作動させた場合には、右左折を行う意図はなく隣接車線LBへ車線変更する意図で車両VAの進行方向を変更する可能性が高い。更に、車両VAが車線変更を終えて隣接車線LBを走行するようになったときに減速が必要となる可能性も低い。このような場合には、条件1A及び条件1Bの何れもが成立し、「0.2」に設定された必要度αを用いて減速制御が実行されるので、運転者に与える違和感を低減できる。
【0083】
<状況2>
図4を参照しながら、状況2の成立条件を説明する。
以下の条件2A及び条件2Bの何れもが成立した場合に状況2が成立する。
条件2A:路肩距離Drが閾値路肩距離Drth以上であること。
条件2B:隣接車VBの加速度である隣接車速度Vbが「0」であるとの条件、及び、隣接車加速度Gbが負であるとの条件の何れかが成立したこと。
なお、条件2Bを「隣接車条件」と称呼する場合もある。
【0084】
条件2Aが成立する場合、車両VAは隣接車線LBへと車線変更を行う可能性が高い。更に、条件2Bが成立する場合、隣接車VBは停車している(Vb=0)か減速している(Gb<0)ため、車両VAが車線変更を終えて隣接車線LBを走行するようになったときに減速が必要となる可能性が高い。従って、状況2が成立した場合には、減速制御を実行する必要度は高い。状況2の必要度αは状況1の必要度α(=0.2)よりも高い「0.8」に設定されている。
【0085】
以上により、状況2が成立した場合には、右左折条件が成立しなくても減速制御の実行が必要となる可能性が高いため、減速制御における減速度の大きさを、状況1が成立している場合に比べて大きくすることができる。これにより、状況2が成立した場合に車両VAが十分に減速できないとの事態が発生する可能性を低減できる。
【0086】
図4に示した例では、図3に示した例と異なり、矢灯器ALが直進矢印信号SLを表示せずに左矢印信号LLのみを表示しているので、信号機TLは、左折のみを許可している。この場合、隣接車VBは、信号機TLの手前で停車しているか、信号機TLの手前で停車するために減速している可能性が高いため、車両VAにおいては減速が必要となる可能性が高い。図4に示した例においては、条件2A及び条件2Bの何れもが成立し、「0.8」に設定された必要度αを用いて減速制御が実行されるので、車両VAは減速しながら車線変更を行うことができ、上記十分に減速できないとの事態が発生する可能性を低減できる。
【0087】
<状況3>
図5を参照しながら、状況3の成立条件を説明する。
以下の条件3A及び条件3Bの何れもが成立した場合に状況3が成立する。
条件3A:路肩距離Drが閾値路肩距離Drth未満であること。
条件3B:車両VAの前方の走行車線LAを走行している車両である先行車VCの加速度である先行車加速度Gcが「0」以上であること。換言すれば、先行車VCが加速しているか定速で走行していること(先行車VCが減速していないこと。)。
【0088】
路肩距離Drが閾値路肩距離Drth未満である路肩の方へと車両VAの進行方向を変更させる場合(即ち、条件3Aが成立した場合)、変更先の進行方向側には隣接車線LBが存在しない可能性が高いため車両VAが車線変更を行う可能性は低い。このため、条件3Aが成立した場合、車両VAが右左折を可能性が高い。ところが、先行車VCが減速していないため(条件3Bが成立しているため)、減速制御が実行される必要性は低い。例えば、図5に示したように、比較的な小さな舵角θsで右左折が可能な場合には、先行車VCは減速しない可能性が高い。このような右左折が行われる場合には、減速制御が実行される必要性は低い。
【0089】
状況3の必要度αは「0.2」に設定されている。このため、状況3が成立した場合の減速制御における目標加速度Gtgtの大きさは、右左折条件が成立した場合に比べて小さくなる。これによって、状況3が成立した場合に減速制御によって運転者が抱く違和感の程度を低減する可能性を高めることができる。
なお、状況1の必要度αと状況3の必要度αとが異なる値に設定されていてもよい。
【0090】
(具体的作動)
<開始条件判定ルーチン>
DSECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、DSECU20のCPUを指す。)は、所定時間が経過する毎に図6にフローチャートにより示した開始条件判定ルーチンを実行する。
【0091】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図6のステップ600から処理を開始し、ステップ605に進む。ステップ605にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0092】
実行フラグXexeの値は、開始条件が成立した場合に「1」に設定され、後述する所定の終了条件が成立した場合に「0」に設定される。なお、実行フラグXexeの値は、イニシャルルーチンにおいても「0」に設定される。実行フラグXexeの値が「1」に設定されている場合、減速制御が実行される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行されるルーチンである。
【0093】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定し、ステップ610乃至ステップ620を順に実行する。
ステップ610:CPUは、カメラ装置22からカメラ物体情報を取得する。
ステップ615:CPUは、ミリ波レーダ装置23からレーダ物体情報を取得する。
【0094】
ステップ615:CPUは、開始条件が成立したか否かを判定する。
CPUは、以下の条件SA乃至条件SDの何れもが成立した場合に開始条件が成立したと判定する。
条件SA:カメラ物体情報に含まれる物体情報に基いて車両VAに対面(対向)する信号機TRが検出されていること。
条件SB:カメラ物体情報に含まれる物体情報に基いて特定される距離Dtlが閾値距離Dth以下であること。
条件SC:右ウィンカー26及び左ウィンカー27の何れかが作動していること。
条件SD:車速Vsが所定の目標車速Vtgtよりも大きいこと。
【0095】
開始条件が成立しない場合(条件SA乃至条件SDの少なくとも一つが成立しない場合)、CPUは、ステップ620にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0096】
一方、開始条件が成立した場合(条件SA乃至条件SDの何れもが成立した場合)、CPUは、ステップ620にて「Yes」と判定し、ステップ625に進む。ステップ625にて、CPUは、カメラ物体情報に含まれる白線情報に基いて矢印路面表示AMを検出しているか否かを判定する。
【0097】
矢印路面表示AMが検出されている場合、CPUは、ステップ625にて「Yes」と判定し、ステップ630に進む。ステップ630にて、CPUは、信号機TLの矢灯器AL(図3を参照。)が少なくとも一つの矢印信号を表示しているか否かを判定する。
【0098】
矢灯器ALが少なくとも一つの矢印信号を表示している場合、CPUは、ステップ630にて「Yes」と判定し、ステップ635に進む。ステップ635にて、CPUは、変更先の進行方向、矢印信号の方向及び車線許可方向が一致するか否かを判定する。
【0099】
変更先の進行方向、矢印信号の方向及び車線許可方向が一致する場合、CPUは、右左折条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ635にて「Yes」と判定し、ステップ640及びステップ645を順に実行する。
【0100】
ステップ640:CPUは、必要度αを「1.0」に設定する。
ステップ645:CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。
その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
変更先の進行方向、矢印信号の方向及び車線許可方向が一致しない場合、CPUは、右左折条件が成立しないと判定し、ステップ650に進む。ステップ650にて、CPUは、図7にフローチャートにより示した必要度設定サブルーチンを実行する。必要度設定サブルーチンにおいては、CPUは、必要度情報を参照することにより必要度αを設定する。その後、CPUは、ステップ645に進んで実行フラグXexeの値を「1」に設定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0102】
一方、CPUがステップ625に進んだときに矢印路面表示AMが検出されていない場合、右左折条件は成立し得ない。この場合、CPUは、ステップ625にて「No」と判定し、ステップ645にて必要度αを設定し、ステップ650にて実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0103】
一方、CPUがステップ630に進んだときに矢灯器ALが何れの矢印信号を表示していない場合、又は、矢灯器ALが検出されていない場合、右左折条件は成立し得ない。この場合、CPUは、ステップ630にて「No」と判定し、ステップ645にて必要度αを設定し、ステップ645にて実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
一方、CPUがステップ605に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ605にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0105】
<必要度設定サブルーチン>
CPUは、図6に示したステップ650に進むと、図7に示したステップ700から処理を開始し、ステップ705乃至ステップ715を順に実行する。
【0106】
ステップ705:CPUは、各種周辺パラメータPs(路肩距離Dr、隣接車速度Vb、隣接車加速度Gb及び先行車加速度Gc)を取得する。
【0107】
・路肩距離Dr
CPUは、運転者によるウィンカーレバー25の操作に基いて変更先の進行方向を特定する。そして、CPUは、カメラ物体情報の白線情報に基いて特定される右路肩RSLまでの距離及び左路肩LSLまでの距離から上記変更先の進行方向に対応する路肩までの距離を、上記路肩距離Drとして選択する。
【0108】
・隣接車速度Vb及び隣接車加速度Gb
CPUは、カメラ物体情報の白線情報に基いて走行車線LAの変更先の進行方向側に隣接する隣接車線LBが存在するか否かを判定する。隣接車線LBが存在する場合、CPUは、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて当該隣接車線LBを走行する隣接車VBが存在するか否かを判定する。隣接車VBが存在する場合、CPUは、レーダ物体情報に基いて特定される隣接車VBの相対速度と車両VAの車速Vsに基いて、隣接車速度Vbを取得する。更に、CPUは、隣接車速度Vbを時間微分することにより隣接車加速度Gbを取得する。
なお、隣接車線LBが存在しない場合、及び、隣接車VBが存在しない場合、CPUは、「隣接車速度Vb及び隣接車加速度Gbが取得できない旨を表す取得不可情報」を取得する。
【0109】
・先行車加速度Gc
CPUは、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて走行車線LAを走行する先行車VCが存在するか否かを判定する。CPUは、レーダ物体情報に基いて特定される先行車VCの相対速度と車両VAの車速Vsに基いて、先行車速度Vcを取得する。更に、CPUは、先行車速度Vcを時間微分することにより先行車加速度Gcを取得する。
なお、先行車VCが存在しない場合、CPUは、「先行車速度Vcが取得できない旨を表す取得不可情報」を取得する。
【0110】
ステップ710:CPUは、周辺パラメータPsを必要度情報に適用することにより、必要度αを取得する。
周辺パラメータPsが必要度情報に登録された何れかの成立条件を満たす場合には、CPUは、その成立条件の状況に対応する必要度αを取得する。周辺パラメータPsが何れの成立条件も満たさない場合には、CPUは、必要度αを取得しない。
【0111】
ステップ715:CPUは、ステップ710にて必要度αが取得されたか否かを判定する。
ステップ710にて必要度αが取得されている場合、CPUは、ステップ715にて「Yes」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0112】
一方、ステップ710にて必要度αが取得されていない場合、CPUは、ステップ715にて「No」と判定し、ステップ720に進む。ステップ720にて、CPUは、必要度αを「0.5」に設定する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
なお、ステップ720における「0.5」は、必要度情報に登録されている必要度αの最大値及び最小値の間の任意の値であればよい。
【0113】
<減速制御ルーチン>
CPUは、所定時間が経過する毎に図8にフローチャートにより示した減速制御ルーチンを実行する。
【0114】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始し、ステップ805に進む。ステップ805にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0115】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ805にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定し、ステップ810及びステップ825を順に実行する。
【0117】
ステップ810:CPUは、現時点の車速Vsを特定する。
ステップ815:CPUは、必要度α及び車速Vsを上記(1)式に適用することにより、目標加速度Gtgtを取得する。
ステップ820:CPUは、加速度センサ24からの検出信号に基いて現時点の加速度Gを特定する。
ステップ825:CPUは、ジャーク(加加速度)Jの大きさ(絶対値)が閾値ジャークJth以下であるか否かを判定する。
ジャークJは加速度Gの時間微分値である。ここでは、ジャークJとしては、目標加速度Gtgtから加速度Gを減算した値を用いる。
【0118】
ジャークJの大きさが閾値ジャークJth以下である場合、CPUは、ステップ825にて「Yes」と判定し、ステップ830に進む。ステップ830にて、CPUは、目標加速度Gtgtを表す減速指令をエンジンECU30及びブレーキECU40に送信する。開始条件は車速Vsは目標車速Vtgtよりも大きいとの条件を含み、且つ、後述するように終了条件は車速Vsが目標車速Vtgt以下であるとの条件を含む。このため、ステップ815にて取得される目標加速度Gtgtは負の値となる(即ち、目標加速度Gtgtは減速するための値となる。)。
【0119】
エンジンECU30は、減速指令を受信した場合、加速度Gが「減速指令が表す目標加速度Gtgt」と一致するようにエンジンアクチュエータ36を制御する。ブレーキECU40は、減速指令を受信した場合、加速度Gが「減速指令が表す目標加速度Gtgt」と一致するようにブレーキアクチュエータ44を制御する。
【0120】
CPUは、ステップ830の実行後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0121】
一方、CPUがステップ825に進んだときにジャークJの大きさが閾値ジャークJthよりも大きい場合、CPUは、ステップ825にて「No」と判定し、ステップ835に進む。
【0122】
ステップ835にて、CPUは、目標加速度Gtgtを「ジャークJの大きさが閾値ジャークJthとなるような制限加速度Gtgt’」に設定する。
【0123】
ジャークJが「0」以上である場合(即ち、目標加速度Gtgtが加速度G以上である場合)、CPUは、以下の(2)式を用いて制限加速度Gtgt’を取得する。

Gtgt’=G+Jth …(2)式
【0124】
ジャークJが「0」よりも小さい場合(即ち、目標加速度Gtgtが加速度Gよりも小さい場合)、CPUは、以下の(3)式を用いて制限加速度Gtgt’を取得する。

Gtgt’=G-Jth …(3)式
【0125】
CPUは、ステップ835の実行後、ステップ830に進んで減速指令をエンジンECU30及びブレーキECU40に送信し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0126】
<終了条件判定ルーチン>
CPUは、所定時間が経過する毎に図9にフローチャートにより示した終了条件判定ルーチンを実行する。
【0127】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図9のステップ900から処理を開始し、ステップ905に進む。ステップ905にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0128】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ905にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0129】
実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定し、ステップ910に進む。ステップ910にて、CPUは、終了条件が成立したか否かを判定する。
【0130】
より詳細には、CPUは、以下の条件EA及び条件EDの少なくとも一つが成立した場合に終了条件が成立したと判定する。
条件EA:車速Vsが目標車速Vtgt以下となること。
条件EB:作動していたウィンカーがその作動を終了したこと。
【0131】
終了条件が成立しない場合(条件EA及び条件EBの何れもが成立しない場合)、CPUは、ステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0132】
一方、終了条件が成立した場合(条件EA及び条件EBの少なくとも一つが成立した場合)、CPUは、ステップ910にて「Yes」と判定し、ステップ915に進む。ステップ915にて、CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0133】
以上説明した通り、本支援装置10は、右左折条件が成立していない場合、右左折条件が成立している場合に比べて、小さな必要度αを設定することにより、大きさが小さな目標加速度Gtgtで減速制御を実行する。
これにより、減速制御が誤って実行された場合に車両の乗員が抱く違和感を低減できる可能性を高めつつ、減速制御が適切に実行された場合に車両を十分に減速できる可能性を高めることができる。
【0134】
更に、本支援装置10は、右左折条件が成立していない場合には、必要度情報を参照して車両VAの周辺環境に応じた必要度αを設定する。これにより、車両VAの周辺環境に応じた必要度αを設定できるので、上記違和感を低減できる更に高めつつ、十分に減速できる可能性を更に高めることができる。
【0135】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0136】
(第1変形例)
第1変形例に係る運転支援装置10に備わる記憶装置28の必要度情報記憶部28aには、必要度情報の代わりに個別必要度情報が記憶されている。図10に示したように、個別必要度情報には、周辺パラメータPs毎に複数の条件と各条件に対応する加減算値が登録されている。
【0137】
以下、個別必要度情報を周辺パラメータPsごとに説明する。
<路肩距離Dr>
・路肩距離Drが閾値路肩距離Drth以上である場合の加減算値は「+0.3」であるため、必要度αに「0.3」が加算される。
・距離Drが閾値路肩距離Drth未満である場合の加減算値は「+0.5」であるため、必要度αに「0.5」を加算する。
【0138】
<隣接車速度Vb>
・隣接車速度Vbが閾値速度Vbth以上である場合の加減算値は「-0.1」であるため、必要度αから「0.1」が減算される。
・隣接車速度Vbが「0」である場合の加減算値は「+0.5」であるため、必要度αに「0.5」が加算される。
・隣接車速度Vbが閾値速度Vbth未満である場合の加減算値は「+0.1」であるため、必要度αに「0.1」が加算される。
・隣接車VBが存在しない場合の加減算値は「0」であるため、必要度αは加算も減算もされない。
【0139】
<隣接車加速度Gb>
・隣接車加速度Gbが負の値である場合の加減算値は「+0.5」であるため、必要度αに「0.5」が加算される。
・隣接車加速度Gbが所定の閾値加速度Gbthよりも大きい場合の加減算値は「-0.2」であるため、必要度αから「0.2」が減算される。なお、閾値加速度Gbthは、所定の正の値に予め設定されている。
・隣接車加速度Gbが「0」以上であって且つ閾値加速度Gbth以下である場合の加減算値は「-0.1」であるため、必要度αから「0.1」が減算される。
・隣接車VBが存在しない場合の加減算値は「0」であるため、必要度αは加算も減算もされない。
【0140】
<先行車加速度Gc>
・先行車加速度Gcが0以上である場合の加減速度は「-0.3」であるため、必要度αから「0.3」が減算される
・先行車加速度Gcが負の値である場合の加減速度は「+0.2」であるため、必要度αに「0.2」が加算される。
・先行車VCが存在しない場合の加減算値は「0」であるため、必要度αは加算も減算もされない。
【0141】
本変形例のDSECU20のCPUは、図7に示したステップ710に進んだ場合、個別必要度情報に各周辺パラメータPsを適用することにより加減算値を取得し、加減算値に基いて必要度αを取得する。
【0142】
以上により、車両VAの周辺環境に応じた必要度αを取得できる。
【0143】
(第2変形例)
第2変形例の運転支援装置10は、矢灯器ALが矢印信号を表示していない場合又は矢灯器ALが検出されない場合であっても、主灯器MLが青信号Bを表示し、且つ、変更先の進行方向と車線許可方向とが一致していれば、右左折条件が成立したと判定する。
【0144】
第2変形例のDSECU20のCPUは、図6に示したステップ630に進んだときに矢灯器ALが矢印信号を表示していない場合又は矢灯器ALが検出されない場合、そのステップ630にて「No」と判定し、図11に示したステップ1105に進む。ステップ1105にて、CPUは、主灯器MLが青信号Bを表示しているか否かを判定する。
【0145】
主灯器MLが青信号Bを表示している場合、CPUは、ステップ1105にて「Yes」と判定し、ステップ1110に進む。ステップ1110にて、CPUは、変更先の進行方向と車線許可方向とが一致するか否かを判定する。
【0146】
変更先の進行方向と車線許可方向とが一致している場合、CPUは、右左折条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ1110にて「Yes」と判定し、図6に示したステップ640に進む。
【0147】
一方、変更先の進行方向と車線許可方向とが一致していない場合、CPUは、右左折条件が成立していないと判定する。この場合、CPUは、ステップ1110にて「No」と判定し、図6に示したステップ650に進む。
【0148】
主灯器MLが青信号Bを表示していない場合(即ち、主灯器MLが黄信号Y又は赤信号Rを表示している場合)、CPUは、ステップ1105にて「No」と判定し、図6に示したステップ650に進む。
【0149】
(第3変形例)
第3変形例の運転支援装置10は、矢印路面標示AMが検出されない場合であっても、矢灯器ALが矢印信号を表示し、且つ、変更先の進行方向と矢印信号の方向とが一致していれば、右左折条件が成立したと判定する。
【0150】
第3変形例のDSECU20のCPUは、図6に示したステップ625に進んだときに矢印路面標示AMが検出されない場合、そのステップ625にて「No」と判定し、図12に示したステップ1205に進む。ステップ1205にて、CPUは、矢灯器ALが矢印信号を表示しているか否かを判定する。
【0151】
矢灯器ALが矢印信号を表示している場合、CPUは、ステップ1205にて「Yes」と判定し、ステップ1210に進む。ステップ1210にて、CPUは、変更先の進行方向と矢印信号の方向とが一致しているか否かを判定する。
【0152】
変更先の進行方向と矢印信号の方向とが一致している場合、CPUは、右左折条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ1210にて「Yes」と判定し、図6に示したステップ640に進む。
【0153】
一方、変更先の進行方向と矢印信号の方向とが一致していない場合、CPUは、右左折条件が成立していないと判定する。この場合、CPUは、ステップ1210にて「No」と判定し、図6に示したステップ650に進む。
【0154】
矢灯器ALが矢印信号を表示していない場合、又は、矢灯器ALが検出されない場合、CPUは、ステップ1205にて「No」と判定し、図6に示したステップ650に進む。
【0155】
第2変形例及び第3変形例によれば、右左折条件は、変更先の進行方向と矢印信号の方向又は車線許可方向が一致したときに成立する。換言すれば、右左折条件は、走行車線LAにおいて変更先の進行方向への進行が許可されている場合に成立する条件であると表現できる。
【0156】
(第4変形例)
第4変形例では、車両VAはネットワークNWを介して管理サーバ60にデータ交換可能に接続されている。
【0157】
管理サーバ60は、運転支援装置10のユーザの要望等に応じて更新用必要度情報を生成する。例えば、更新必要度情報においては、新たな状況の追加、既存の状況の削除、新たな周辺パラメータPsの追加・削除、既存の成立条件の追加・削除・変更、及び/又は必要度αの変更等が行われる。
【0158】
管理サーバ60は、更新用必要度情報をネットワークNWを介して車両VAに送信する。車両VAが更新用必要度情報を受信した場合、運転支援装置10は、受信した更新用必要度情報に基いて、記憶装置28の必要度情報記憶部28aに記憶されている必要度情報を更新する。
【0159】
なお、第4変形例は第2変形例にも適用可能である。即ち、管理サーバ60が更新用個別必要度情報を生成し、その更新用個別必要度情報をネットワークNWを介して車両VAに送信する。運転支援装置10は、車両VAが受信した更新用個別必要度情報に基いて個別必要度情報を更新する。
【0160】
(第5変形例)
必要度αは「0」以上「1」未満の値に限定されない。例えば、必要度αは、「大」、「中」及び「小」によって表されてもよい。
【0161】
例えば、図2に示した必要度情報において、状況1及び状況3に対応する必要度αを「小」とし、状況2に対応する必要度αを「大」とし、何れの状況も成立しない場合の必要度αを「中」とする。
【0162】
第5変形例の運転支援装置10は、以下のように(1)式で用いる「α」を設定する。
・必要度αが「大」である場合、運転支援装置10は、(1)式で用いる「α」を「0.8」に設定する。
・必要度αが「中」である場合、運転支援装置10は、(1)式で用いる「α」を「0.5」に設定する。
・必要度αが「小」である場合、運転支援装置10は、(1)式で用いる「α」を「0.2」に設定する。
【0163】
(第6変形例)
上記実施形態では、DSECU20は、ウィンカーレバー25の操作に基いて変更先の進行方向を特定したが、第6変形例のDSECU20は、ステアリングホイールSWの操作に基いて変更先の進行方向を特定する。詳細には、DSECU20は、操舵角センサ52の検出信号に基いてステアリングホイールの操作方向を特定し、特定した操作方向に基いて変更先の進行方向を特定する。
なお、ウィンカーレバー25及びステアリングSWを「操作子」と称呼する場合がある。
【0164】
(第7変形例)
第7変形例に係る運転支援装置10に備わるDSECU20は、交差点の規模に応じて上記(1)式における目標車速Vtgtを設定してもよい。詳細には、DSECU20は、交差点の規模が大きいほど目標車速Vtgtを小さくする。一例として、DSECU20は、カメラ画像に基いて交差点で交差する車線の数を特定し、車線の数が多いほど交差点の規模が大きいと判定する。
【0165】
(第8変形例)
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波の代わりに無線媒体を送信し、反射された無線媒体を受信することによって物体を検出できるリモートセンシング装置であればよい。なお、カメラ装置22だけで物体の位置を正確に特定できるのであれば、運転支援装置10は、ミリ波レーダ装置23を必ずしも備えなくてもよい。
【0166】
(第9変形例)
本支援装置10は、上記エンジン自動車だけでなく、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に適用可能である。
【0167】
本発明は、上記運転支援装置10の機能を実現するためのプログラムが記憶され且つコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体として捉えることも可能である。
【符号の説明】
【0168】
10…運転支援装置、20…運転支援ECU、22…カメラ装置、25…ウィンカーレバー、28…記憶装置、28a…必要度情報記憶部、30…エンジンECU30、36…エンジンアクチュエータ、40…ブレーキECU、44…ブレーキアクチュエータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13