(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】セラミック粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/12 20060101AFI20240618BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240618BHJP
C04B 35/628 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01G4/12 090
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201L
C04B35/628
H01G4/30 201K
(21)【出願番号】P 2021158160
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 至
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-206364(JP,A)
【文献】特開平10-158059(JP,A)
【文献】特開2018-137076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/30
C04B 35/628
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セラミックコンデンサに用いられるセラミック粉末であって、
粗大セラミック粉末と、前記粗大セラミック粉末よりも粒径の小さい微細セラミック粉末と、を含み、
前記粗大セラミック粉末の粒径は、前記微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、
前記粗大セラミック粉末および前記微細セラミック粉末の合計に対する前記微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下であり、
すべての前記粗大セラミック粉末の表面に前記微細セラミック粉末が担持されて
おり、
前記微細セラミック粉末は、前記粗大セラミック粉末との反応を伴わずに前記粗大セラミック粉末の表面に担持されている、セラミック粉末。
【請求項2】
前記粗大セラミック粉末の組成は、前記微細セラミック粉末の組成と同一である、請求項
1に記載のセラミック粉末。
【請求項3】
前記粗大セラミック粉末の組成は、前記微細セラミック粉末の組成と異なる、請求項
1に記載のセラミック粉末。
【請求項4】
積層セラミックコンデンサに用いられるセラミック粉末を製造する方法であって、
粗大セラミック粉末と、前記粗大セラミック粉末よりも粒径の小さい微細セラミック粉末と、分散剤と、をそれぞれ用意する工程と、
前記微細セラミック粉末および前記分散剤を含み、前記分散剤を吸着した前記微細セラミック粉末が分散した状態にあるスラリーを作製する工程と、
前記スラリーと前記粗大セラミック粉末とを混合する工程と、
前記粗大セラミック粉末と混合された前記スラリーを乾燥および加熱する工程と、を備え、
前記粗大セラミック粉末の粒径は、前記微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、
前記粗大セラミック粉末および前記微細セラミック粉末の合計に対する前記微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下である、セラミック粉末の製造方法。
【請求項5】
前記粗大セラミック粉末の組成は、前記微細セラミック粉末の組成と同一である、請求項
4に記載のセラミック粉末の製造方法。
【請求項6】
前記粗大セラミック粉末の組成は、前記微細セラミック粉末の組成と異なる、請求項
4に記載のセラミック粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粉末およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、積層セラミックコンデンサに用いられるセラミック粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の1つである積層セラミックコンデンサは、一般的に、直方体状のセラミック素体と外部電極とを備える。セラミック素体は、誘電体層と、誘電体層の間で互いに対向するように配置され、セラミック素体の両端部に引き出される内部電極層と、を含む。外部電極は、セラミック素体の両端部において、引き出された内部電極層に接続されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサに用いられるセラミック粉末として、特許文献1には、大径粉末と、該大径粉末に比較して粒径の小なる小径粉末とを撹拌容器内に投入した後、上記大径粉末および小径粉末の両粉末に、直流電場、または100Hz以下の交流電場を印加しながらメカノケミカル反応法を適用して得られ、上記大径粉末の表面に、該大径粉末に比較して粒径の小なる小径粉末が担持され、最大粒径を1000nm以下としたことを特徴とするセラミック粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、特許文献1には、大径粉末(以下、粗大セラミック粉末とも記載する)および小径粉末(以下、微細セラミック粉末とも記載する)を混合してセラミック粉末を製造する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、セラミック粉末の粒径が小さくなるほど、セラミック粉末同士が凝集しやすくなる。そのため、微細セラミック粉末の配合比率を増やした場合に、微細セラミック粉末同士が凝集して粗大セラミック粉末同士が接触しやすくなる。その結果、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性に優れたセラミック粉末を提供することを目的とする。さらに、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性に優れたセラミック粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセラミック粉末は、積層セラミックコンデンサに用いられる。本発明のセラミック粉末は、粗大セラミック粉末と、上記粗大セラミック粉末よりも粒径の小さい微細セラミック粉末と、を含む。上記粗大セラミック粉末の粒径は、上記微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、上記粗大セラミック粉末および上記微細セラミック粉末の合計に対する上記微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下である。すべての上記粗大セラミック粉末の表面に上記微細セラミック粉末が担持されている。
【0009】
本発明のセラミック粉末の製造方法は、積層セラミックコンデンサに用いられるセラミック粉末を製造する方法である。本発明のセラミック粉末の製造方法は、粗大セラミック粉末と、上記粗大セラミック粉末よりも粒径の小さい微細セラミック粉末と、分散剤と、をそれぞれ用意する工程と、上記微細セラミック粉末および上記分散剤を含み、上記分散剤を吸着した上記微細セラミック粉末が分散した状態にあるスラリーを作製する工程と、上記スラリーと上記粗大セラミック粉末とを混合する工程と、上記粗大セラミック粉末と混合された上記スラリーを乾燥および加熱する工程と、を備える。上記粗大セラミック粉末の粒径は、上記微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、上記粗大セラミック粉末および上記微細セラミック粉末の合計に対する上記微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性に優れたセラミック粉末を提供することができる。さらに、本発明によれば、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性に優れたセラミック粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のセラミック粉末の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のセラミック粉末の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、分散剤を介して微細セラミック粉末が担持された粗大セラミック粉末の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る誘電体磁器組成物の表面を示すSEM写真である。
【
図6】
図6は、比較例に係る誘電体磁器組成物の表面を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のセラミック粉末およびその製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
図1は、本発明のセラミック粉末の一例を示す模式図である。
【0014】
図1に示すセラミック粉末10は、粗大セラミック粉末11および微細セラミック粉末12を含む。微細セラミック粉末12の粒径は、粗大セラミック粉末11の粒径よりも小さい。
【0015】
セラミック粉末10では、すべての粗大セラミック粉末11の表面に微細セラミック粉末12が担持されている。
【0016】
本発明のセラミック粉末においては、粗大セラミック粉末の粒径は、微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下であることを特徴としている。
【0017】
微細セラミック粉末に対する粗大セラミック粉末の粒径比、および、微細セラミック粉末の配合比率を上記の範囲とすることにより、すべての粗大セラミック粉末の表面に微細セラミック粉末が担持されているセラミック粉末を得ることができる。
【0018】
このように、本発明のセラミック粉末は、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の均一混合性に優れる。これにより、粗大セラミック粉末同士の接触箇所を低減することができる。また、本発明のセラミック粉末を積層セラミックコンデンサの誘電体層に用いることにより、高温負荷寿命の低下を抑えることができる。
【0019】
本発明のセラミック粉末において、粗大セラミック粉末の粒径は、微細セラミック粉末の粒径の6倍より大きいことが好ましい。一方、粗大セラミック粉末の粒径は、例えば、微細セラミック粉末の粒径の10倍より小さくてもよい。
【0020】
粗大セラミック粉末の粒径は、例えば、100nm以上500nm以下である。
【0021】
微細セラミック粉末の粒径は、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0022】
本発明のセラミック粉末において、粗大セラミック粉末または微細セラミック粉末の粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られるセラミック粉末の体積累積50%相当径D50を意味する。
【0023】
本発明のセラミック粉末において、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、30重量%以上であることが好ましい。一方、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、40重量%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明のセラミック粉末は、例えば、BaまたはTiを含むペロブスカイト型化合物から構成される。本発明のセラミック粉末は、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3またはCaZrO3などを主成分とする誘電体セラミックスから構成されてもよい。また、これらの主成分に、副成分として、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物、Al化合物、V化合物または希土類化合物などが添加された材料から構成されてもよい。
【0025】
本発明のセラミック粉末において、粗大セラミック粉末の組成は、微細セラミック粉末の組成と同一であってもよく、微細セラミック粉末の組成と異なっていてもよい。
【0026】
本明細書において、「組成が同一」とは、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末に含有される元素の種類が同じであることを意味する。元素の種類が同じであれば、元素の含有量は異なっていてもよい。
【0027】
本発明のセラミック粉末は、好ましくは、以下の方法により製造される。以下に示すセラミック粉末の製造方法も本発明の1つである。
【0028】
図2は、本発明のセラミック粉末の製造方法の一例を示す模式図である。
【0029】
まず、粗大セラミック粉末11、微細セラミック粉末12および分散剤13をそれぞれ用意する。微細セラミック粉末12の粒径は、粗大セラミック粉末11の粒径よりも小さい。
【0030】
次に、微細セラミック粉末12および分散剤13を含むスラリー14を作製する。例えば、微細セラミック粉末12および分散剤13を水とともにボールミルなどを用いて湿式混合する。これにより、分散剤13を吸着した微細セラミック粉末12が分散した状態にあるスラリー14が得られる。スラリー14を作製した段階で、微細セラミック粉末12の表面に吸着した分散剤13は、架橋凝集力を発現させ得る状態となっている。
【0031】
続いて、スラリー14と粗大セラミック粉末11とを混合する。この際、粗大セラミック粉末11は、分散剤13を伴わない状態でスラリー14と混合される。例えば、スラリー14の中に粗大セラミック粉末11を投入した後、ボールミルなどを用いて混合する。
【0032】
図3は、分散剤を介して微細セラミック粉末が担持された粗大セラミック粉末の一例を示す模式図である。
【0033】
上述したように、スラリー14を作製した段階で、微細セラミック粉末12の表面に吸着した分散剤13は、架橋凝集力を発現させ得る状態となっている。そのため、スラリー14と粗大セラミック粉末11とを混合する工程において、分散剤13による架橋凝集力を利用して、粗大セラミック粉末11と微細セラミック粉末12とを結合させることができる。このように、分散剤13による架橋凝集力により、粗大セラミック粉末11の周囲に微細セラミック粉末12を均一に分散させることができる。
【0034】
粗大セラミック粉末11は、必要に応じて、スラリーの状態でスラリー14と混合されてもよい。しかし、その場合であっても、粗大セラミック粉末11を含むスラリーは、分散剤13を含まないことが重要である。言い換えると、混合前では、微細セラミック粉末12を含むスラリー14のみが分散剤13を含むことが重要である。
【0035】
分散剤13の架橋凝集力は、分散剤13同士では発現しにくい。そのため、粗大セラミック粉末11側と微細セラミック粉末12側の両方に分散剤13が入ると、スラリー14と粗大セラミック粉末11とを混合する工程において、粗大セラミック粉末11と微細セラミック粉末12との間で分散剤13の架橋凝集力が発現しにくくなる。
【0036】
なお、粗大セラミック粉末11と混合された後のスラリー14には、分散剤13が追加されてもよい。
【0037】
その後、粗大セラミック粉末11と混合されたスラリー14を乾燥および加熱する。これにより、分散剤13の脱脂が行われる。その結果、すべての粗大セラミック粉末11の表面に微細セラミック粉末12が担持されているセラミック粉末10(
図1参照)が得られる。
【0038】
本発明のセラミック粉末の製造方法においては、粗大セラミック粉末の粒径は、微細セラミック粉末の粒径の5倍より大きく、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、20重量%以上50重量%以下であることを特徴としている。
【0039】
微細セラミック粉末に対する粗大セラミック粉末の粒径比、および、微細セラミック粉末の配合比率を上記の範囲とすることにより、すべての粗大セラミック粉末の表面に微細セラミック粉末を担持させることができる。
【0040】
本発明のセラミック粉末の製造方法において、粗大セラミック粉末の粒径は、微細セラミック粉末の粒径の6倍より大きいことが好ましい。一方、粗大セラミック粉末の粒径は、例えば、微細セラミック粉末の粒径の10倍より小さくてもよい。
【0041】
粗大セラミック粉末の粒径は、例えば、100nm以上500nm以下である。
【0042】
微細セラミック粉末の粒径は、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0043】
本発明のセラミック粉末の製造方法において、粗大セラミック粉末または微細セラミック粉末の粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られるセラミック粉末の体積累積50%相当径D50を意味する。
【0044】
本発明のセラミック粉末の製造方法において、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、30重量%以上であることが好ましい。一方、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末の合計に対する微細セラミック粉末の重量比率は、40重量%以下であることが好ましい。
【0045】
本発明のセラミック粉末の製造方法において、粗大セラミック粉末の組成は、微細セラミック粉末の組成と同一であってもよく、微細セラミック粉末の組成と異なっていてもよい。
【0046】
本発明のセラミック粉末の製造方法において、分散剤としては、例えば、カルボン酸系などのアニオン系分散剤が好適に用いられる。
【0047】
本発明のセラミック粉末およびその製造方法では、乾式ではなく湿式により、粗大セラミック粉末の表面に微細セラミック粉末が担持される。また、微細セラミック粉末は、粗大セラミック粉末との反応を伴わずに粗大セラミック粉末の表面に担持される。
【0048】
本発明のセラミック粉末およびその製造方法において、微細セラミック粉末は、粗大セラミック粉末の表面の少なくとも一部に担持されていればよい。したがって、微細セラミック粉末は、粗大セラミック粉末の表面の全体に担持されてもよく、粗大セラミック粉末の表面の一部に担持されてもよい。
【0049】
本発明のセラミック粉末は、積層セラミックコンデンサに用いられる。具体的には、本発明のセラミック粉末は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層されているセラミック素体と、上記セラミック素体の外表面に設けられ、上記内部電極層と電気的に接続されている外部電極と、を備える積層セラミックコンデンサの上記誘電体層に用いられる。
【0050】
図4は、積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【0051】
図4に示す積層セラミックコンデンサ20は、例えば直方体状のセラミック素体22を備える。セラミック素体22は、複数の誘電体層24を含む。
【0052】
積層された誘電体層24の間には、例えばニッケルを主成分とする内部電極層26aおよび26bが交互に配置される。内部電極層26aは一端部がセラミック素体22の一端部まで延び、内部電極層26bは一端部がセラミック素体22の他端部まで延びている。内部電極層26aおよび26bは、中間部および他端部が誘電体層24を介して重なり合うように配置される。したがって、セラミック素体22は、内部に誘電体層24を介して複数の内部電極層26aおよび26bが設けられた積層構造を有する。
【0053】
セラミック素体22の一端面には、例えば銅を主成分とする外部電極28aが内部電極層26aに接続されるように配置される。同様に、セラミック素体22の他端面には、例えば銅を主成分とする外部電極28bが内部電極層26bに接続されるように配置される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明のセラミック粉末およびその製造方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
微細セラミック粉末と、所定量の純水および分散剤とをステンレス鋼(SUS)製タンク内で攪拌した後、ビーズミル(メディア:0.1mmφジルコニアボール)を用いて混合した。これにより、微細セラミック粉末が分散したスラリーを得た。
【0056】
微細セラミック粉末が分散したスラリーの中に、粗大セラミック粉末を加えた後、さらにビーズミル(メディア:0.1mmφジルコニアボール)を用いて混合した。これにより、粗大セラミック粉末と混合されたスラリーを得た。
【0057】
粗大セラミック粉末と混合されたスラリーをスプレー乾燥機により乾燥した後、加熱により分散剤の脱脂処理を行った。これにより、セラミック粉末を得た。
【0058】
本実施例において、粗大セラミック粉末および微細セラミック粉末としては、チタン酸バリウム粉末を用いた。分散剤としては、カルボン酸系分散剤を用いた。
【0059】
粗大セラミック粉末の粒径D50は200nm、配合比率は67重量%である。一方、微細セラミック粉末の粒径D50は30nm、配合比率は33重量%である。微細セラミック粉末100重量部に対する分散剤の量は10重量部である。
【0060】
上述の方法で作製したセラミック粉末を用いて、以下に説明する方法で積層セラミックコンデンサ用の誘電体磁器組成物を作製した。
【0061】
作製したセラミック粉末にポリビニルブチラール系のバインダーおよびエタノールなどの有機溶剤を加え、ボールミルによってスラリーを作製した。このスラリーを用いてドクターブレード法にてセラミックグリーンシートを作製した後、加熱により有機成分の脱脂処理を行った。これにより、誘電体磁器組成物を得た。作製した誘電体磁器組成物の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。
【0062】
図5は、実施例に係る誘電体磁器組成物の表面を示すSEM写真である。
【0063】
図5より、破線で囲まれた部分では、粗大セラミック粉末の表面に微細セラミック粉末が担持されている。このように、すべての粗大セラミック粉末の表面に微細セラミック粉末が担持されていることが確認できる。
【0064】
上記の実施例では、微細セラミック粉末が分散したスラリーの中に粗大セラミック粉末を投入することによりセラミック粉末を作製した。一方、比較例として、微細セラミック粉末が分散したスラリーの中に、分散剤を用いて粗大セラミック粉末が分散したスラリーを投入することによりセラミック粉末を得た。
【0065】
作製したセラミック粉末を用いて、実施例で説明した方法で積層セラミックコンデンサ用の誘電体磁器組成物を作製した。作製した誘電体磁器組成物の表面をSEMにて観察した。
【0066】
図6は、比較例に係る誘電体磁器組成物の表面を示すSEM写真である。
【0067】
図6より、破線で囲まれた部分では、微細セラミック粉末の凝集が見られる。その結果、微細セラミック粉末が担持されていない粗大セラミック粉末が存在することが確認できる。
【0068】
他の比較例として、分散剤を用いて粗大セラミック粉末が分散したスラリーの中に微細セラミック粉末を投入することによりセラミック粉末を得た場合においても、微細セラミック粉末が担持されていない粗大セラミック粉末が存在することが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
10 セラミック粉末
11 粗大セラミック粉末
12 微細セラミック粉末
13 分散剤
14 スラリー
20 積層セラミックコンデンサ
22 セラミック素体
24 誘電体層
26a、26b 内部電極層
28a、28b 外部電極