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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240618BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240618BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240618BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
G08B21/02
G08B21/00 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021187702
(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公開番号】P2023074665
(43)【公開日】2023-05-30
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 清人
(72)【発明者】
【氏名】河原田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 慧
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 直哉
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533485(JP,A)
【文献】特開2017-054440(JP,A)
【文献】特開2011-253403(JP,A)
【文献】国際公開第2019/156106(WO,A1)
【文献】特開2012-063918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G08B 19/00 - 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者に取り付けられたウェアラブルデバイスから送信された歩行速度を特定する情報を含む各種情報を取得可能な車両を制御する車両制御装置であって、
前記ウェアラブルデバイスから送信された情報に基づいて、前記車両の前方にある横断地点を横断する前記歩行者を検出すると、前記横断地点まで前記車両が到達する到達時間を予測する第1予測部と、
前記ウェアラブルデバイスから取得した前記歩行速度を特定する情報に基づいて、前記歩行者が前記横断地点で横断完了するまでの横断時間を予測する第2予測部と、
前記予測された到達時間と、前記予測された横断時間にマージンを加えた時間とを比較して、前記歩行者が前記横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定する推定部と、
前記歩行者が安全に横断可能ではないと推定された場合、安全運転を支援する安全運転支援制御を前記車両に対して実行する実行制御部とを備え
前記推定部は、前記歩行者が前記ウェアラブルデバイスで利用している健康管理アプリから取得される健康管理データが、前記歩行者の健康状態が歩行困難な障害を示している場合、前記歩行者に対する前記マージンを他の場合よりも大きくして、前記歩行者が前記横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定する、車両制御装置。
【請求項2】
前記第1予測部は、前記ウェアラブルデバイスから送信された前記ウェアラブルデバイスの位置情報と、前記車両の位置情報とに基づいて、前記横断地点を横断する前記歩行者を検出する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記歩行者の前記健康状態に応じた警告方法で前記歩行者に対する警告を行う、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記車両から発生されるライトの配光制御により前記歩行者に対して警告を行う、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記車両内で運転手から見える画像上で、前記歩行者に係る画像部分が相対的に目立つように表示する画像制御により前記運転手に対して警告を行う、請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば減速、停止、又は運転手若しくは歩行者への警報等の車両における各種の安全運転支援の実行を制御する車両制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として例えば、歩行者の靴に取り付けられたICタグから出力される情報に基づいて生成された、歩行者の進行方向及び横断歩道番号等を含む横断情報を、交差点に設けられた歩行者横断情報出力装置から受信し、自車両の進行方向の横断歩道に歩行者が存在する場合、歩行者の進行方向等を運転手に警告するように構成されたものが、本願出願人らにより提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-072658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1によれば、歩行者が安全に横断可能である場合であっても、運転手に対して一々警告するので、運転手は煩わしさを感じてしまう。従って、本願出願人らの研究するところによれば、警告等の安全運転支援を実行するのに先んじて、歩行者が横断可能であるか否かを高精度で見極めるのが望ましいが、歩行速度には個人差があるため、高精度予測は難しいという技術的問題点がある
【0005】
本発明は、例えば上述した技術的問題に鑑みなされたものであり、車両前方の横断歩道のない道路或いは横断歩道を歩行者が横断するのに対して、安全運転支援を適宜に実行することを可能ならしめる車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両制御装置一の態様は上記課題を解決するために、歩行者に取り付けられたウェアラブルデバイスから送信された歩行速度を特定する情報を含む各種情報を取得可能な車両を制御する車両制御装置であって、前記ウェアラブルデバイスから送信された情報に基づいて、前記車両の前方にある横断地点を横断する前記歩行者を検出すると、前記横断地点まで前記車両が到達する到達時間又は時刻を予測する第1予測部と、前記ウェアラブルデバイスから取得した前記歩行速度を特定する情報に基づいて、前記歩行者が前記横断地点で横断完了するまでの横断時間又は時刻を予測する第2予測部と、前記予測された到達時間若しくは時刻及び前記予測された横断時間若しくは時刻に基づいて、前記歩行者が前記横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定する推定部と、前記歩行者が安全に横断可能ではないと推定された場合、安全運転を支援する安全運転支援制御を前記車両に対して実行する実行制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両制御装置の一態様によれば、車両が、警告等の安全運転支援に係る動作を行うのに先んじて、歩行速度に個人差がある歩行者が、安全に横断可能であるか否かを、歩行者の歩行速度等に応じて高精度に見極めることが可能となる。従って、安全運転支援が無駄に実行されることはなくなり、運転手が煩わしさを感じることを回避できる。逆に、特に交通弱者等が安全に横断可能でない場合には、安全運転支援が適宜に実行される。
【0008】
本発明によるこのような作用効果は、以下に説明する発明の実施形態により、より明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る車両制御装置を実現するための全体構成の一例を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係るウェアラブルデバイスのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るウェアラブルデバイスが保持するデータの一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る横断地点にいる歩行者と車両との関係の一例を示す模式図である。
図5】第1実施形態に係る車両制御装置によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る横断地点にいる歩行者と中継通信機と車両との関係の一例を示す模式図である。
図7】第2実施形態に係る中継通信機のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係るウェアラブルデバイスと中継通信機と車両との間で行われる通信の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
1.車両制御装置を実現する全体構成について
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る車両制御装置10を実現する全体構成の一例について説明する。
【0011】
車両制御装置10は、図1に示すように、車両VLに搭載され、歩行者PNに取り付けられたウェアラブルデバイス100との通信により、歩行者PNの歩行能力に応じた安全運転支援制御を実行するように構成されている。車両VLには、車両制御装置10の他、例えば、車両位置特定部20と、車両通信部30と、カメラ40と、安全運転支援動作部50と、車両操作部60と、状態表示部70とが設けられてよい。
【0012】
車両位置特定部20は、例えば、GNN(Global Navigation Satellite)用衛星(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星)から送信される電波を受信して自車(即ち、車両VL)の現在位置(緯度、経度)を検出するセンサを備えていてよい。車両位置特定部20は、当該電波に基づいて、車両VLの現在位置を車両位置(即ち、車両VLの位置情報)として特定してよい。車両位置特定部20は、GNN用衛星からの情報に、例えば、不図示の各種センサ(ジャイロセンサ等)からの情報を加えて、車両VLの車両位置を特定してよい。
【0013】
車両通信部30は、ウェアラブルデバイス100等、車両VLの外部の各構成と通信可能に構成されてよい。車両通信部30は、ウェアラブルデバイス100から発信される電波を受信してウェアラブルデバイス100と直接に通信を行ってよい。車両通信部30は、車両VLの前方にあるウェアラブルデバイス100と通信を行うために車両VLの進行方向に指向性を有するアンテナを有してよい。車両通信部30は、インターネット等の通信ネットワークを介して他の構成とも通信可能な構成を有してよい。
【0014】
カメラ40は、例えば、車両VLの少なくとも前方風景を動画で撮像可能なように設けられている車載カメラでよい。安全運転支援動作部50は、例えば、安全運転支援としての動作を担う各種構成が含まれてよい。安全運転支援動作部50には、例えば、車両VLを減速及び停止させることが可能な車両走行制御システム、警告音等を運転手に対して出力可能な車内スピーカ等を含む音声出力部、カメラ40によって撮像されたカメラ画像を表示可能なモニタやフロントガラス等を含む画像出力部、及び/又は、歩行者に対する注意喚起のために配光制御可能なヘッドライトやハザードランプ等各種ランプを含む照明部が含まれてよい。
【0015】
車両操作部60は、例えば空調や各種機能の設定を行うために運転手等の操作を受け付けてよい。車両操作部60には、例えば、ボタン、スイッチ、タッチパネル等が含まれてよい。状態表示部70は、車両VLの各種状態を表示してよい。車両VLの状態には、例えば、走行速度、走行距離、電池残量(及び/又は、ガソリン残量)、及びドアの開閉状況等が含まれてよい。
【0016】
車両制御装置10は、上記各部20~70と接続され、各部20~70の動作を制御可能に構成されてよい。車両制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、その動作に必要な記憶域であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等とで構成されるコンピュータユニットとして構成されてよい。車両制御装置10の記憶域には、例えば地図データ、コンピュータプログラム等が保持されてよい。なお、地図データには、例えば、道路、信号、横断歩道等の位置情報(緯度経度情報)、各道路の道幅情報等が設定されていてよい。
【0017】
車両制御装置10は、例えば、ROMに記憶されたコンピュータプログラムを読み込み、実行してよい。また、車両制御装置10は、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して、車両VLの外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを読み込み、実行してよい。その結果、車両制御装置10内には、車両VLの各部20~70に関する動作を制御する論理的な機能ブロックが実現されてよい。つまり、車両制御装置10は、車両VLが行う各種動作を実行するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。図1には、車両制御装置10内に実現される論理的な機能ブロックの一例が示されている。図1に示すように、車両制御装置10内には、例えば、第1予測部11、第2予測部12、推定部13,及び実行制御部14が実現されてよい。
【0018】
2.車両制御装置の各部の動作について
車両制御装置10内に実現される各部11~14の動作について説明する。第1予測部11は、ウェアラブルデバイス100から送信された情報に基づいて、車両VLの前方にある横断地点を横断する歩行者PNを検出すると、車両VLがその横断地点に到達する到達時間を予測してよい。第1予測部11は、歩行者PNの検出のために、ウェアラブルデバイス100から送信された情報を直接受信してもよい。横断地点を横断する歩行者の検出、及び到達時間の算出方法については後述する。
【0019】
第2予測部12は、ウェアラブルデバイス100から歩行者PNの歩行速度を特定する情報を取得して、歩行者PNが横断地点で横断完了するまでの横断時間を予測してよい。推定部13は、予測された到達時間及び予測された横断時間に基づいて、歩行者PNが横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定してよい。当該推定の具体的な方法、及び横断時間の算出方法については後述する。
【0020】
実行制御部14は、推定部13によって歩行者PNが安全に横断可能ではないと推定された場合、安全運転を支援する安全運転支援制御を車両VLに対して実行してよい。例えば、実行制御部14は、安全運転支援制御を、安全運転支援動作部50(上述したように、車両走行制御システム、音声出力部、画像出力部、及び照明部等を含む。)に対して実行してよい。安全運転支援制御の具体的な制御内容については後述する。
【0021】
3.ウェアラブルデバイスの構成について
ウェアラブルデバイス100のハードウェア構成の一例について、図2を参照して説明する。ウェアラブルデバイス100は、歩行者PNの体の一部(例えば、腕、指、脚、頭等)に取り付け可能な装置でよい。ウェアラブルデバイス100は、デバイス位置特定部110と、デバイス通信部120と、各種センサと130と、デバイス操作部140と、デバイス出力部150と、メモリ160と、デバイス制御部170とを備えてよい。ウェアラブルデバイス100の各部110~170は、例えば、データバス180によって互いに通信可能に接続されてよい。なお、ウェアラブルデバイス100には、更に、各部110~170に電気を供給する不図示のバッテリが備えられてよい。
【0022】
デバイス位置特定部110は、車両位置特定部20と同様に、GNN用衛星(例えば、GPS衛星)から送信される電波を受信してウェアラブルデバイス100の現在位置(緯度、経度)を検出するセンサを備え、当該電波に基づいてウェアラブルデバイス100(即ち、歩行者PN)の現在位置を、デバイス位置(即ち、ウェアラブルデバイス100の位置情報)として特定してよい。車両位置特定部20は、GNN用衛星からの情報に、例えば、各種センサ130(ジャイロセンサ等)からの情報を加えて、デバイス位置を特定してよい。デバイス位置は、例えば、ウェアラブルデバイス100が取り付けられた歩行者PNの現在位置としてみなされてよい。
【0023】
デバイス通信部120は、ウェアラブルデバイス100の外部の各構成(例えば、車両VL)等と通信可能に構成されてよい。デバイス通信部120は、車両VLの車両通信部30と特定の通信方式で直接に通信を行ってよい。デバイス通信部120は、例えば、当該特定の通信方式でデバイス位置を含むデバイス信号を発信し続けてよい。これにより、車両通信部30は、採用された通信方式の通信距離内に存在するウェアラブルデバイス100からデバイス信号を受信可能となる。採用される通信方式の通信距離は、例えば、車両VLが横断地点に到達するまでに安全運転支援制御が実行されるのに十分な距離でよい。デバイス信号には、後述するデバイスIDも含まれてよい。また、デバイス通信部120は、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して、後述する健康管理サーバと通信可能にも構成されてよい。
【0024】
各種センサ130には、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等、歩行者PNの歩行や走行等の運動に関する動作を検知可能な動作センサが含まれてよい。当該動作センサとして、例えば、加速度、角速度、地磁気、温度等、様々な運動パラメータのセンシングが1つの装置で可能な慣性センサが採用されてもよい。また、各種センサ130として、歩行者PNのリアルタイムの生体情報を取得するために、例えば、心拍センサ、血圧センサ等を含む生体情報センサが備えられてもよい。
【0025】
デバイス操作部140は、ウェアラブルデバイス100の機能に関する各種設定を行うために歩行者PNの操作を受け付けてよい。デバイス操作部140には、例えば、ボタン、スイッチ、タッチパネル等が含まれてよい。デバイス出力部150は、各種情報を歩行者PNに認識可能に出力する。デバイス出力部150には、例えば、音声出力のためのスピーカ、画像出力のためのモニタ等が含まれてよい。
【0026】
メモリ160は、デバイス制御部170による処理において必要な各種データを保持してよい。メモリ160に保持されるデバイスデータ161の一例を図3に示す。デバイスデータ161には、例えば、デバイスID、ユーザID、運動データ161a、及び健康管理データ161bが含まれてよい。デバイスIDは、各ウェアラブルデバイス100を識別する情報である。デバイスIDは、例えば、ウェアラブルデバイス100の製造時に設定されてよい。ユーザIDは、各歩行者PNを識別する情報である。ユーザIDは、例えば、ウェアラブルデバイス100の初期設定時にユーザ(即ち、歩行者PN)によって設定されてよい。例えば、1台のウェアラブルデバイス100が複数のユーザで使用されない場合、ユーザIDは設定されなくてもよい。
【0027】
運動データ161aは、各種センサ130の動作センサが検出した情報に基づいて取得される歩行者PNの日常の運動に関するデータでよい。運動データ161aには、例えば、所定期間(例えば、3日間)における歩行距離、歩行時間、走行距離、走行時間、及び消費カロリー等が含まれてよい。運動データ161aには、更に、歩行距離及び歩行時間から算出される平均歩行速度が含まれてもよい。例えば、歩行距離、歩行時間、及び平均歩行速度は、歩行速度を特定する情報として機能してよい。運動データ161aは、ウェアラブルデバイス100の動作センサの検出値に基づいて、例えば、時々刻々と更新されてよい。運動データ161aには、例えば、リアルタイムの血圧や脈拍等の生体情報が含まれてよい。当該生体情報は、例えば、各種センサ130の生体情報センサの検出値により適宜のタイミングで更新されてよい。健康管理データ161bは、例えば、歩行者PNの健康状態(特に、例えば、聴覚障害、視覚障害、運動障害、或いは知能障害等の運動能力機能に影響する状態)が示されているデータである。
【0028】
デバイスデータ161は、例えば、ウェアラブルデバイス100にインストールされ、歩行者PNによってウェアラブルデバイス100で利用されている健康管理アプリを制御する健康管理サーバ(不図示)により管理されてよい。健康管理サーバは、インターネット等の通信ネットワークを介してウェアラブルデバイス100等と通信可能であってよい。健康管理サーバは、例えば、病院のカルテ情報を管理する病院管理サーバ(不図示)とも通信可能であってよい。例えば、ウェアラブルデバイス100のメモリ160に蓄積された運動データ161aは、後述するデバイス制御部170によって、所定期間経過毎に、当該健康管理サーバへ送信されてよい。送信された運動データ161aは、例えば、健康管理アプリの履歴データとして管理されてよい。健康管理データ161bは、例えば、健康管理アプリに対する歩行者PN自身の入力により、或いは、病院管理サーバからの情報に基づいて健康管理サーバにより、設定され、健康管理アプリで管理されてよい。健康管理データ161bは、例えば、後述するデバイス制御部170によって、健康管理アプリから、必要に応じて取得されてメモリ160に保存(或いは、ダウンロード)されてよい。なお、健康管理アプリがオフライン仕様の場合、デバイスデータ161はウェアラブルデバイス100のメモリ160でのみ管理されてよい。
【0029】
図2に戻って、デバイス制御部170は、ウェアラブルデバイス100の各部110~160の動作を制御してよい。デバイス制御部170は、例えば、CPUと、その動作に必要な記憶域であるRAM及びROMとで構成されるコンピュータユニットとして構成されてよい。デバイス制御部170は、コンピュータプログラムを実行することにより、ウェアラブルデバイス100において行われる各種処理を制御するように構成されてよい。デバイス制御部170は、例えば、ROMに記憶されたコンピュータプログラムを読み込み、実行してよい。デバイス制御部170は、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して、ウェアラブルデバイス100の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを読み込み、実行してよい。
【0030】
4.車両制御装置が実行する安全運転支援処理について
第1実施形態に係る車両制御装置10によって実行される安全運転支援処理の一例について、図4及び図5を参照して説明する。安全運転支援処理が実行されることにより、図4に示すように、車両VLが進行方向Aに走行する道路RTにおいて、歩行者PNが車両VLの前方の横断地点CPを横断する場合に、運転手側に無駄な警告等が行われることを回避しつつ歩行者PNの安全を確保することができる。横断地点CPとは、道路RTにおいて歩行者PNが横断する地点でよい。図4に示されている横断地点CPは、道路RTに設けられた横断歩道の地点として示されているが、横断地点CPは横断歩道が設けられた地点に限らなくてよい。
【0031】
図5は、安全運転支援処理の一例を示す処理ルーチンの一例である。車両制御装置10は、例えば、ウェアラブルデバイス100から発信されるデバイス信号を受信し、受信した各デバイス信号に関して当該処理ルーチンを開始してよい。車両制御装置10は、安全運転支援処理において、各歩行者PNのウェアラブルデバイス100を、例えば、デバイス信号に含まれたデバイスIDにより識別してよい。車両制御装置10は、以下に説明する各処理において、距離や位置を取得するために地図データを適宜参照してよい。また、車両制御装置10の処理に伴うデータや信号の送受信は車両通信部30を介して行われ、ウェアラブルデバイス100におけるデータや信号の送受信はデバイス通信部120を介して行われてよい。
【0032】
処理ルーチンが開始されると、車両制御装置10は、受信したデバイス信号に基づいて自車の前方の横断地点CPを横断する歩行者PN(以下「横断者PN」という。)が検出されたか否かを判断してよい(ステップS101)。横断者PNが検出されない場合(ステップS101:No)、車両制御装置10は、今回の処理ルーチンを終了してよい。横断者PNが検出された場合は(ステップS101:Yes)、車両制御装置10は到達時間予測処理へ進んでよい(ステップS102)。
【0033】
ここで、横断者PNの検出について説明する。歩行者PNに取り付けられたウェアラブルデバイス100からはデバイス位置を含むデバイス信号が発信され続けている。即ち、歩行者PNの移動に伴ってデバイス信号が示すデバイス位置も移動する。車両VLにおいてウェアラブルデバイス100から発信されたデバイス信号を受信すると、車両制御装置10は、デバイス位置を歩行者PNの位置としてみなしてよい。車両制御装置10は、自車の車両位置を車両位置特定部20から取得してよい。車両制御装置10は、自車が保持する地図データにおける歩行者PNの位置の移動を確認し、歩行者PNの位置が自車の前方(即ち、進行方向Aの延長上)にあり、かつ、当該位置の移動が道路RTを横断していることを示していると判断した場合に、横断者PNが検出されたと判断してよい。車両制御装置10は、道路RTにおいて横断者PNが横断している地点を横断地点CPとして特定してよい。
【0034】
ステップS102の到達時間予測処理では、車両制御装置10の第1予測部11が、自車が横断地点CPに到達する到達時間を予測してよい。第1予測部11は、到達時間を、例えば、自車の走行速度と自車の車両位置から横断地点CPまでの距離とに基づいて予測してよい。車両制御装置10は、到達時間予測処理に続いて、横断時間予測処理を行ってよい(ステップS103)。横断時間予測処理においては、車両制御装置10の第2予測部12が、横断者PNが横断地点CPで横断を完了するまでの横断時間を予測してよい。第2予測部12は、横断時間を、例えば、横断者PNの歩行速度と横断地点CPにおける横断距離とに基づいて予測してよい。第2予測部12は、横断地点CPの横断距離を、例えば、地図データを参照して特定してよい。第2予測部12は、横断者PNの歩行速度を、例えば、横断者PNに取り付けられたウェアラブルデバイス100から横断者PNの運動データ161aにおける歩行速度を特定する情報を取得することにより特定してよい。歩行速度を特定する情報が、例えば歩行距離や歩行時間である場合は、第2予測部12は、例えば、取得した情報から歩行速度を算出し、算出した歩行速度を横断者PNの歩行速度として特定してよい。或いは、歩行速度を特定する情報が、例えば平均歩行速度である場合は、第2予測部12は例えば、取得した平均歩行速度をそのまま横断者PNの歩行速度として特定してよい。
【0035】
車両制御装置10は、横断時間予測処理に続いて、安全横断推定処理が行われてよい(ステップS104)。安全横断推定処理においては、車両制御装置10の推定部13が、例えば、ステップS102で予測された到達時間とステップS103で予測された横断時間とに基づいて、横断者PNが安全に横断可能か否かを推定してよい。推定部13は、例えば、予測された到達時間と予測された横断時間とを比較することにより、当該推定を行ってよい。推定部13は、横断者PNの安全を確実にするため、例えば、予測された横断時間に適当なマージンを加えた時間が、予測された到達時間より長いか否かにより推定してよい。
【0036】
ステップS104において、横断者PNが安全に横断可能であると推定された場合(ステップS104:Yes)、車両制御装置10は今回の処理ルーチンを終了してよい。一方、ステップS104において、横断者PNが安全に横断可能ではないと推定された場合(ステップS104:No)、車両制御装置10は安全運転支援制御処理へ進んでよい(ステップS105)。安全運転支援制御処理においては、車両制御装置10の実行制御部14が、安全運転支援制御が実行されるように安全運転支援動作部50を制御してよい。安全運転支援動作部50には、上述したように、車両走行制御システム、音声出力部、画像出力部、及び/又は照明部が含まれてよい。
【0037】
実行制御部14は、安全運転支援制御の一環として、例えば、車両VLの減速或いは停止が強制的に行われるように、車両走行制御システムを制御してよい。実行制御部14は、減速制御を行う場合、例えば、歩行者PNの横断時間から逆算して速度を落とすように車両走行制御システムを制御してよい。実行制御部14は、停止制御を行う場合、例えば、歩行者PNの横断時間から逆算して車両VLを横断地点CP前で停止させるように車両走行制御システムを制御してよい。
【0038】
実行制御部14は、安全運転支援制御の一環として、例えば、前方を横断する横断者PNの安全を確保するために、運転手に対して車両VLの減速或いは停止を促す警告音が、車内スピーカから出力されるように音声出力部を制御してよい。及び/或いは、実行制御部14は、安全運転支援制御の一環として、例えば、前方を横断する横断者PNの安全を確保すべく運転手に対する注意喚起のため、カメラ40によって前方風景が撮像されたカメラ画像において、横断者PNに係る画像をクローズアップ(即ち、相対的に目立つように)した画像をモニタ或いはフロントガラスに表示してよい。
【0039】
及び/或いは、実行制御部14は、安全運転支援制御の一環として、例えば、横断地点CPを横断する横断者PNの安全を確保すべく横断者PNに対する注意喚起になるように、車両VLのヘッドライトやハザードランプ等の配光制御を行ってよい。配光制御として、例えば、ヘッドライトのビームの明るさや照射範囲が制御されてよい。配光制御として、例えば、ハザードランプの明るさや点滅速度等が制御されてよい。車両制御装置10は、以上のような安全運転支援制御の実行後、今回の処理ルーチンを終了してよい。
【0040】
実行制御部14は、安全運転支援制御の一環として、更に、横断者PNに対する注意喚起の動作を、ウェアラブルデバイス100に要求してよい。例えば、実行制御部14は、横断者PNの注意喚起のための動作を要求する注意動作要求を、その横断者PNに対応するウェアラブルデバイス100へ送信してよい。ウェアラブルデバイス100のデバイス制御部170は、受信した注意動作援要求に応じて、ウェアラブルデバイス100の動作を制御してよい。この注意喚起のための動作には、例えば、ウェアラブルデバイス100の振動や発光、横断者PNに注意喚起を促すメッセージの音声出力等が含まれてよい。特に、ウェアラブルデバイス100の発光による注意喚起は、車両VLの運転手に対する注意喚起にもなり得る。
【0041】
推定部13は、横断者PNが横断地点CPを安全に横断可能か否かを推定する際に、ウェアラブルデバイス100から横断者PNの健康管理データ161bを取得し、健康管理データ161bが示す健康状態を考慮して当該推定を行ってよい。例えば、当該健康状態が、通常の歩行が困難な状態(聴覚障害、視覚障害、運動障害、知能障害)を示している場合は、横断時間に加えられる上記マージンを他の場合よりも大きくしてよい。なお、健康管理データ161bは、例えば、推定部13の要求に応じて、ウェアラブルデバイス100のデバイス制御部170がデバイスID(又はユーザID)に基づいて健康管理アプリ(即ち、健康管理サーバ)から取得し、取得された健康管理データ161bがウェアラブルデバイス100から車両VLに提供されてよい。
【0042】
運動データ161aに含まれる生体情報が、例えば、てんかんや心筋梗塞等の発作を起こす程度の危険な異常値を示している場合は、推定部13は、横断者PNは横断地点を安全に横断できないと推定してよい。そして、実行制御部14は、安全運転支援制御として、例えば、運転手に対して横断者PNが発作を起こす可能性がある旨のメッセージを音声出力部に出力させ、車両VLが横断地点CPの手前で停止するように車両走行制御システムを制御してよい。
【0043】
実行制御部14は、横断者PNに対して警告や注意喚起等を行う場合は、その横断者PNの健康管理データ161bが示す健康状態に応じた通知方法で警告等を行ってよい。例えば、健康管理データ161bに聴覚障害が示されている場合は、視覚的な通知方法(例えば、車両VLの配光制御、及び/又はウェアラブルデバイス100の発光等)が採用されてよい。また、例えば、健康管理データ161bに視覚障害が示されている場合は、聴覚的な通知方法(例えば、ウェアラブルデバイス100における危険メッセージの音声出力、及び/又はウェアラブルデバイス100の振動)が採用されてよい。実行制御部14は、健康管理データ161bを、例えば、上述したようにウェアラブルデバイス100の健康アプリから取得してよい。或いは、実行制御部14は、例えば、推定部13によって取得された健康管理データ161bを使用してよい。
【0044】
車両制御装置10による上記処理は、横断地点CPにおける信号の有無を問わず適用可能である。但し、例えば、カメラ40によって得られる前方風景のカメラ画像から横断地点CPに信号が設けられていると判断された場合、実行制御部14は、当該信号の色に応じて安全運転支援制御の制御内容を変えてよい。例えば、当該信号が赤の場合(即ち、車両VLが横断地点CP前で当然に停止することが予測されるような状況の場合)、実行制御部14は、車内スピーカから、警告音ではなく、前方に横断者PNがいる旨のメッセージ音声が出力されるように音声出力部を制御してよい。また、実行制御部14は、横断者PNに対する注意喚起は行わなくてよい。
【0045】
<横断者の検出方法の変形例>
車両制御装置10は、カメラ40によって得られる前方風景のカメラ画像を監視し、当該カメラ画像に基づいて横断者PNを検出してよい。この場合に車両制御装置10によって実行される安全運転支援処理について、図5の処理ルーチンに従って説明する。まず、ステップS101において、車両制御装置10は、例えば、カメラ画像における歩行者画像の動きを監視し、歩行者画像が自車が走行している道路RTを横断するようすを示していると判断した場合、横断者PNが検出されたと判断してよい。歩行者画像の動きの監視と信号の色とが関連付けられてよい。カメラ画像における(車両VLに対する)信号の信号画像が赤を示している場合、歩行者用信号は青のため、当該信号が設けられた地点を横断する横断者PNがいる可能性が高い。従って、車両制御装置10は、特に、カメラ画像における信号画像が赤を示している場合に、当該信号画像附近における歩行者画像の動きを監視して、横断者PNが検出されるか否かを判断してよい。
【0046】
車両制御装置10は、地図データにおける横断者PNの位置及び横断地点CPの位置は、カメラ画像における横断者PNに対応する歩行者画像の位置に基づいて特定してよい。従って、ステップS102における到達時間予測処理においては、第1予測部11は、例えば、カメラ画像に基づいて得られる横断地点CPまでの距離と現在の走行速度に基づいて、到達時間を予測してよい。また、ステップS103における横断時間予測処理においては、第2予測部12は、例えば、カメラ画像に基づいて得られる横断地点CPの道幅(即ち、横断距離)を地図データにより取得してよい。第2予測部12は、横断者PNの歩行速度を、前述と同様にウェアラブルデバイス100からの運動データ161aに基づいて取得してよい。第2予測部12は、取得された歩行速度及び横断距離に基づいて、横断時間を予測してよい。横断者PNのウェアラブルデバイス100は、例えば、デバイスIDによって識別されてよい。例えば、第2予測部12は、車両通信部30から車両VLの前方向に向けて運動データ要求を送信し、運動データ要求を受信したウェアラブルデバイス100がこれに応答して自己のデバイスIDと共に運動データを車両通信部30へ送信してよい。ステップS104及びステップS105における処理は、上述したステップS104及びステップS105における処理と同様でよい。
【0047】
以上のように、カメラ画像に基づいて、横断者PNの検出、並びに到達時間及び横断時間の予測がされる場合、ウェアラブルデバイス100はデバイス位置を含むデバイス信号を発信し続けなくてよい。また、この場合、ウェアラブルデバイス100は、デバイス位置特定部110を有していなくてよい。
【0048】
<第2実施形態>
図1図3、及び図6図8を用いて、本発明に係る第2実施形態について主に第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0049】
第2実施形態において、ウェアラブルデバイス100と車両VLとの通信は、直接ではなく、中継通信機200を介して行われてよい。中継通信機200は、図6に示すように、例えば、横断地点CP付近に設けられ、横断地点CPにあるウェアラブルデバイス100から発信されるデバイス信号を受信可能に構成されてよい。図6は、2つの中継通信機200a、200bが道路RTの両側にそれぞれ設けられている状態を示している。以下、中継通信機200a、200bを区別する必要のないとき「中継通信機200」という。なお、中継通信機200が設けられる横断地点CPは、横断歩道の有無に関係なく、例えば、歩行者PNの横断が多い地点、歩行者PNの横断により事故が発生した地点等であってもよい。
【0050】
中継通信機200は、例えば、図7に示すように、リーダ部210と、中継通信部220と、メモリ230と、中継制御部240とを有してよい。リーダ部210と中継通信部220とメモリ230と中継制御部240とは、例えば、データバス250を介して通信可能に接続されてよい。
【0051】
リーダ部210は、例えば、ウェアラブルデバイス100との通信によりデバイスデータ161のデータを読取り可能に構成されてよい。リーダ部210は、例えば、横断地点CPから発信される電波を受信可能なように、受信範囲に指向性を有するアンテナを備えてよい。これにより、横断地点CPを横断する歩行者PNのウェアラブルデバイス100(即ち、デバイス通信部120)から発信されたデバイス信号をリーダ部210は受信することができる。中継通信部220は、例えば、車両VLと通信接続を可能にする通信部である。リーダ部210に適用される通信方式の通信距離(例えば、2m程度)は中継通信部220に適用される通信方式の通信距離(例えば、200m程度)より短くてよい。従って、安価で消費電力が少ない近距離無線通信技術をリーダ部210とウェアラブルデバイス100のデバイス通信部120との通信に採用することができる。
【0052】
メモリ230には、中継通信機200が保持すべきデータが記憶されよい。メモリ230には、例えば、各中継通信機200を識別する情報である中継IDが記憶されてよい。中継制御部240は、中継通信機200の各部210~230の動作を制御してよい。中継制御部240は、例えば、CPUとその動作に必要な記憶域であるRAM及びROM等とで構成されるコンピュータユニットとして構成されてよい。
【0053】
図6に戻り、第2実施形態における、ウェアラブルデバイス100のデバイス通信部120(図2参照)及び車両VLの車両通信部30(図1参照)について説明する。第2実施形態では、中継通信機200が設けられた位置が横断地点CPとみなされてよい。従って、ウェアラブルデバイス100から発信されるデバイス信号には、例えば、デバイスIDが含まれ、デバイス位置は含まれなくてよい。ウェアラブルデバイス100はデバイス位置特定部110(図2参照)を有していなくてよい。ウェアラブルデバイス100のデバイス通信部120は、例えば、横断地点CPを横断する横断者PNの進行方向Bの延長上に存在する中継通信機200bのリーダ部210と通信可能なように、進行方向Bに指向性を有するアンテナを有してよい。従って、デバイス信号は、当該アンテナから進行方向Bに向けて発信され、進行方向Bの延長上に設けられた中継通信機200bによって受信されてよい。車両VLの車両通信部30は、車両VLの前方(即ち、進行方向Aの延長上)にある中継通信機200bの中継通信部220と通信可能なように、例えば、進行方向Aに指向性を有するアンテナを有してよい。
【0054】
車両VLにおいて図5の処理ルーチンが実行されるために、ウェアラブルデバイス100、中継通信機200、車両VLのそれぞれにおいて行われる処理の一例について、図8を用いて説明する。以下の説明において、ウェアラブルデバイス100の動作はデバイス制御部170によって制御され、中継通信機200の動作は中継制御部240によって制御され、車両VLの動作は車両制御装置10によって制御されてよい。図8における車両VLの処理であるステップS101~ステップS105の各処理は、図6における車両制御装置10の処理であるステップS101~ステップS105にそれぞれ対応する。ウェアラブルデバイス100のデバイス通信部120からは、デバイス信号が発信し続けられてよい。車両VLは、後述する中継受信情報の受信待ち状態でよい。車両VLが保持する地図データは、各中継IDに対応する中継通信機200の位置情報を有してよい。
【0055】
ウェアラブルデバイス100から、例えば、デバイスIDが含まれたデバイス信号が歩行者PNの進行方向Bに発信し続けられてよい(ステップS201)。中継通信機200は、上述したように、横断地点CPを横断する歩行者PNに取り付けられたウェアラブルデバイス100から発信されたデバイス信号を受信可能である。中継通信機200は、デバイス信号をすると、デバイス信号に含まれたデバイスIDと自己の中継IDとを含む中継受信情報を中継通信部220から発信してよい(ステップS202)。中継通信部220の無線方式の通信距離内を走行している各車両VLは、中継受信情報を受信してよい。車両VLは、受信した中継受信情報に基づいて、横断者PNの検出に関する処理を行ってよい(ステップS101)。例えば、車両VLは、まず、中継受信情報に含まれる中継IDから、送信元の中継通信機200の位置を地図データで確認してよい。車両VLは、確認した中継通信機200の位置を横断地点CPの位置とみなしてよい。そして、車両VLは、横断地点CPが自車の前方(即ち、進行方向Aの延長上)である場合、自車の前方にある横断地点CPを横断する歩行者PN(即ち、横断者PN)が検出されたと判断してよい。
【0056】
横断者PNが検出された場合、車両VLは、到達時間予測処理を行ってよい(ステップS102)。到達時間予測処理において、車両VL(即ち、第1予測部11)は、中継通信機200の位置を横断地点CPの位置とみなして到達時間を予測してよい。続いて、車両VLは、横断時間予測処理を行ってよい(ステップS103)。横断時間予測処理においては、車両VL(即ち、第2予測部12)は、例えば、横断者PNの歩行速度を特定する情報を、検出された横断者PNに対応する中継通信機200に対して要求してよい(ステップS203)。当該要求と共に、例えば、自己の車両ID及び要求先のウェアラブルデバイス100のデバイスIDが送信されてよい。中継通信機200は、当該要求を要求先のウェアラブルデバイス100へ送信してよい(ステップS204)。
【0057】
ウェアラブルデバイス100は、当該要求に応答して、例えば、歩行速度を特定する情報を自己のデバイスIDと共にリーダ部210から発信してよい(ステップS205)。「歩行速度を特定する情報」については第1実施形態について述べた通りである。歩行速度を特定する情報を取得した中継通信機200は、例えば、当該情報をデバイスIDと共に要求元の車両VLへ送信してよい(ステップS206)。第2実施形態において歩行速度を特定する情報に基づいて横断者PNの歩行速度を取得する方法は、第1実施形態における方法と同様でよい。また、ステップS104及びステップS105における各処理も第1実施形態におけるステップS104及びステップS105における各処理と同様でよい。以上で、中継通信機200を介してウェアラブルデバイス100と車両VLとの通信が行われる場合の一連の処理を終了する。
【0058】
上述した第1及び第2実施形態において算出される到達時間及び横断時間は、現在時刻を基準にした到達時刻及び横断時刻としてそれぞれ算出されてよい。また、第1及び第2実施形態において到達時間及び横断時間に係る処理は、到達時刻及び横断時刻に係る処理として適宜変更して行われてよい。
【0059】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、歩行者が交通弱者等であっても安全に横断可能である場合には、安全運転支援が無駄に実行されることはなくなり、運転手が煩わしさを感じることを回避できる。逆に、交通弱者等が安全に横断可能でない場合には、安全運転支援が適宜に実行され、その者に対する道路の横断に係る安全或いは安心が確保される。
【0060】
付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0061】
[付記1]
本発明に係る付記1に記載の車両制御装置は、歩行者に取り付けられたウェアラブルデバイスから送信された歩行速度を特定する情報を含む各種情報を取得可能な車両を制御する車両制御装置であって、前記ウェアラブルデバイスから送信された情報に基づいて、前記車両の前方にある横断地点を横断する前記歩行者を検出すると、前記横断地点まで前記車両が到達する到達時間又は時刻を予測する第1予測部と、前記ウェアラブルデバイスから取得した前記歩行速度を特定する情報に基づいて、前記歩行者が前記横断地点で横断完了するまでの横断時間又は時刻を予測する第2予測部と、前記予測された到達時間若しくは時刻及び前記予測された横断時間若しくは時刻に基づいて、前記歩行者が前記横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定する推定部と、前記歩行者が安全に横断可能ではないと推定された場合、安全運転を支援する安全運転支援制御を前記車両に対して実行する実行制御部とを備える車両制御装置である。
【0062】
付記1に記載の車両制御装置によれば、車両が、実際に警告、減速、停止等の運転手等に対する安全運転支援に係る動作を実行するのに先んじて、車両の前方で横断歩道のない道路や横断歩道を渡ろうとしており歩行速度に個人差がある歩行者が、安全に横断可能であるか否かを、歩行者の日常の歩行速度を特定する情報に応じて高精度に見極めることが可能となる。
【0063】
この際、車両の前方にある横断地点(即ち、横断歩道でない道路の一地点若しくは一個所、又は横断歩道のある地点若しくは個所)を横断する歩行者の検出としては、ウェアラブルデバイス側から横断する旨の情報を取得することによって検出してもよいし、或いは、歩行者の現在の移動状況を取得して当該車両制御装置の側で検出してもよい。歩行者が横断地点を安全に横断可能であるかの推定は、到達時間と横断時間との関係(又は、到達時刻と横断時刻との関係)に基づいて推定されてよい。なお、歩行者が渡ろうとする横断歩道に信号がある場合には、運転手或いは車両は信号に従えば足りるものとして安全運転支援制御を実行しないようにすることも可能である。或いは、このように信号がある場合にも、交通弱者等が青信号の内に横断歩道を渡り切れない事態を、安全に横断可能でない場合の一種であるものと推定し、安全運転支援制御を実行するとも可能である。例えば、信号がある場合に実行される安全運転支援制御の態様は、信号がない場合に実行される安全運転支援制御の態様と異なってよい。
【0064】
従って、車両制御装置による制御下で、歩行者が老人、幼児連れ、障害者等の交通弱者、或いは健常者のいずれであっても、該歩行者が安全に横断可能である場合には、運転手に対する警告、注意喚起、減速、停止等の安全運転支援制御が無駄に実行されることはなくなり、運転手が煩わしさを感じることを回避できる。特に、咄嗟の対応が困難な交通弱者等が安全に横断可能でない場合であっても、車両側で安全運転支援制御が実行されることにより、道路の横断に係る安全或いは安心が確保される。なお、ウェアラブルデバイスから送信或いは取得される情報は、車両制御装置において、ウェアラブルデバイスから直接受け取られる態様、或いは第三の装置を介して間接的に受け取られる態様のいずれでもよい。
【0065】
[付記2]
本発明に係る付記2に記載の車両制御装置は、前記第1予測部は、前記ウェアラブルデバイスから送信された前記ウェアラブルデバイスの位置情報と、前記車両の位置情報とに基づいて、前記横断地点を横断する前記歩行者を検出する、ことを特徴とする付記1記載の車両制御装置である。
【0066】
付記2に記載された車両制御装置によれば、ウェアラブルデバイスの位置情報及び車両の位置情報の特定に、例えば、GPSを利用すれば、リアルタイムの正確な位置情報に基づいて、車両前方の横断地点を横断する歩行者を検出すること可能になる。
【0067】
[付記3]
本発明に係る付記3に記載の車両制御装置は、前記推定部は、前記歩行者が前記ウェアラブルデバイスで利用している健康管理アプリから取得される、前記歩行者の健康状態が示された健康管理データに基づいて、前記歩行者が前記横断地点を安全に横断可能であるか否かを推定する、ことを特徴とする付記1記載の車両制御装置である。
【0068】
付記3に記載された車両制御装置によれば、例えばウェアラブルデバイスで利用している健康管理アプリで管理されている健康管理データを利用することで、歩行者の健康状態に留意して、歩行者が安全に横断可能か否かを推定することを可能にする。健康管理データが通常の歩行が困難な状態(例えば、聴覚障害、視覚障害、運動障害、知能障害等)を示す場合、推定部は、当該情報を考慮して(例えば、予測された横断時間又は時刻に重度に応じたマージンを加える等)、安全に横断可能か否かの推定を歩行の困難性に合わせて行ってよい。このように、各歩行者の運動能力機能に基づいた推定が可能になる。
【0069】
[付記4]
本発明に係る付記4に記載の車両制御装置は、前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記歩行者の前記健康状態に応じた警告方法で前記歩行者に対する警告を行う、ことを特徴とする付記3記載の車両制御装置である。
【0070】
付記4に記載された車両制御装置によれば、聴覚障害、視覚障害、運動障害、知能障害等、歩行者の健康状態に応じた警告方法で、当該歩行者に対する警告が適宜に実行されるので、交通弱者等の道路の横断に係る安全或いは安心がより確実に確保される。
【0071】
[付記5]
本発明に係る付記5に記載の車両制御装置は、前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記車両から発生されるライトの配光制御により前記歩行者に対して警告を行う、ことを特徴とする付記1記載の車両制御装置である。
【0072】
付記5に記載された車両制御装置によれば、例えばヘッドライトのビーム、ハザードランプの点滅などの配光制御により、歩行者に危険を認識させやすい形で、当該歩行者に対する警告が適宜に実行されるので、交通弱者等の道路の横断に係る安全或いは安心がより確実に確保される。
【0073】
[付記6]
本発明に係る付記6に記載の車両制御装置は、前記実行制御部は、前記安全運転支援制御の一環として、前記車両内で運転手から見える画像上で、前記歩行者に係る画像部分が相対的に目立つように表示する画像制御により前記運転手に対して警告を行う、ことを特徴とする付記1記載の車両制御装置である。
【0074】
付記6に記載された車両制御装置によれば、車載の前方カメラにより撮影される車両の前方風景の画像が、モニタやフロントガラスに映し出されている画面内で、歩行者に係る画像部分が相対的に目立つように表示されるので、それを見ている運転手が適切な判断、更には衝突回避行動を行えるようになる。よって、交通弱者等の道路の横断に係る安全或いは安心がより確実に確保される。
【0075】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
車両制御装置……10
第1予測部……11
第2予測部……12
推定部……13
実行制御部……14
車両……VL
歩行者、横断者……PN
ウェアラブルデバイス……100
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8