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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240618BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240618BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20240618BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20240618BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K9/19 A
H02K9/19 B
H02K11/25
H02K11/215
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021514155
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016366
(87)【国際公開番号】W WO2020213585
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019080352
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019080350
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
(72)【発明者】
【氏名】宮田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 泰伸
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187105(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098646(WO,A1)
【文献】特開2005-151712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 9/19
H02K 11/25
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
オイルを前記モータに供給する電動ポンプと、
前記モータに接続されるインバータユニットと、
第1のワイヤハーネスおよび第2のワイヤハーネスと、を備え、
前記インバータユニットは、
高電圧の直流電流を交流電流に変換して前記モータに供給するインバータと、
前記インバータおよび前記電動ポンプを制御する制御部と、を有し、
前記第1のワイヤハーネスは、外部電源と前記インバータユニットとを電気的に接続し、低電圧電源ラインを含み、
前記低電圧電源ラインは、前記制御部に駆動電力を供給する制御部電源ラインと前記電動ポンプに駆動電力を供給するポンプ電源ラインとに分岐する分岐点を有し、
前記第2のワイヤハーネスは、
前記電動ポンプと前記インバータユニットとを電気的に接続し、
前記ポンプ電源ラインと、前記制御部と前記電動ポンプとの間で信号を伝送するポンプ信号ラインと、を含む、モータユニット。
【請求項2】
前記インバータユニットは、前記第1のワイヤハーネスが接続される第1のコネクタ部を有し、
前記低電圧電源ラインの前記分岐点は、前記第1のコネクタ部に対し前記インバータユニットの外側に位置する、請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記モータの状態を測定するセンサと、
前記センサと前記インバータユニットとを電気的に接続する第3のワイヤハーネスおよび第4のワイヤハーネスと、をさらに備え、
前記第3のワイヤハーネスおよび前記第4のワイヤハーネスは、前記制御部と前記センサとの間で信号を伝送するセンサ信号ラインを含み、
前記インバータユニットは、前記第2のワイヤハーネスおよび前記第3のワイヤハーネスが束ねられて接続される第2のコネクタ部を有する、請求項1又は2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記センサは、
前記モータの温度を測定する温度センサと、
前記モータの回転角を測定する回転センサと、を含む、請求項3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記インバータユニットは、外部のバッテリから延びる高電圧用ワイヤハーネスが接続される高電圧用コネクタ部を有し、
前記インバータには、前記高電圧用コネクタ部および前記高電圧用ワイヤハーネスを介して前記バッテリから電力が供給される、請求項1~4の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記モータおよび前記センサを収容するハウジングを備え、
前記ハウジングには、前記センサと前記インバータユニットとを電気的に接続するモータコネクタ部が設けられ、
前記モータコネクタ部は、
前記ハウジングの内外にそれぞれ位置する内側接続部および外側接続部を有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体の内部に固定される複数の導電端子と、
前記複数の導電端子を保持し、前記内側接続部と前記外側接続部との間を液密に封止する封止壁と、
を有する請求項3または4に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記封止壁は、
前記コネクタ本体の内部において前記内側接続部と前記外側接続部とを区画する区画壁と、
前記区画壁から露出する前記複数の導電端子の基端部を封止する封止樹脂と、
を有する請求項6に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記モータコネクタ部が挿入されるコネクタ挿入孔を有し、
前記モータコネクタ部と前記ハウジングとの間に、前記コネクタ挿入孔を封止するシール部材を有する請求項7に記載のモータユニット。
【請求項9】
前記内側接続部および前記外側接続部は、いずれもオス端子である請求項6~請求項8に記載の何れか一項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。本願は、2019年04月19日に出願された日本国特許出願第2019-080352号及び、2019年04月19日に出願された日本国特許出願第2019-080350号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車および電気自動車の車両の車軸を駆動するモータユニットが知られている。特許文献1に記載のモータユニットは、ユニット内にオイルを循環させる電動ポンプを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-47908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動ポンプには、電源装置から延びる電源ラインと、制御装置から延びる信号ラインと、が接続される。このため従来の電動ポンプには、電源ラインと信号ラインとをそれぞれ通す2本のワイヤハーネスが接続されていた。さらに、従来の電動ポンプにはそれぞれのワイヤハーネスを電気的に接続する2つのコネクタが必要であり、部品点数が増加して組み立て工程が煩雑化していた。
【0005】
本発明の一つの態様は、ワイヤハーネスを減らして組み立て工程を簡素化できるモータユニットの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータユニットの一つの態様は、モータと、オイルを前記モータに供給する電動ポンプと、前記モータに接続されるインバータユニットと、第1のワイヤハーネスおよび第2のワイヤハーネスと、を備え、前記インバータユニットは、高電圧の直流電流を交流電流に変換して前記モータに供給するインバータと、前記インバータおよび前記電動ポンプを制御する制御部と、を有し、前記第1のワイヤハーネスは、外部電源と前記インバータユニットとを電気的に接続し、低電圧電源ラインを含み、前記低電圧電源ラインは、前記制御部に駆動電力を供給する制御部電源ラインと前記電動ポンプに駆動電力を供給するポンプ電源ラインとに分岐する分岐点を有し、前記第2のワイヤハーネスは、前記電動ポンプと前記インバータユニットとを電気的に接続し、前記ポンプ電源ラインと、前記制御部と前記電動ポンプとの間で信号を伝送するポンプ信号ラインと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ワイヤハーネスを減らして組み立て工程を単純化できるモータユニット。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のモータユニットの概念図である。
図2図2は、モータユニットのモータ部分を拡大した概念図である。
図3図2は、モータコネクタ部の断面図である。
図4図4は、変形例におけるモータユニットの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータユニット10について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数などを異ならせる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態のモータユニット10の概念図である。なお、後述するモータ軸J1、カウンタ軸J3、出力軸J4は、実際には存在しない仮想軸である。
【0011】
モータユニット10は、車両に搭載され車輪を回転させることで車両を駆動させる。モータユニット10は、例えば、電気自動車(EV)に搭載される。なお、モータユニット10は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、等、モータを動力源とする車両に搭載されていればよい。
【0012】
図1に示すように、モータユニット10は、モータ30と、伝達機構(トランスアクスル)5と、ハウジング6と、電動ポンプ97と、オイルクーラ96と、オイルOと、インバータユニット8と、第1のワイヤハーネス61と、第2のワイヤハーネス62と、を備える。
【0013】
なお、本明細書において、ワイヤハーネスとは、機器配線を束にしたものを意味する。1つのワイヤハーネスは、束ねられたワイヤとコネクタ等を有する。ワイヤハーネスは、信号ライン又は電源ラインの一部を構成する。ここで信号ラインとは信号を伝送する配線経路を意味し、電源ラインとは駆動対象を駆動させるための配線経路を意味する。なお、ワイヤハーネスはワイヤに限られない、バスバーのような剛性を有するものでもよい。また、重畳制御を行い、1本のワイヤとすることもできる。
【0014】
モータ30は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機である。モータ30は、おもに電動機として機能して車両を駆動し、回生時には発電機として機能する。
【0015】
モータ30は、ロータ31と、ロータ31を囲むステータ32と、を有する。ロータ31は、モータ軸J1を中心に回転可能である。ロータ31は、後述するモータドライブシャフト11に固定される。ロータ31は、モータ軸J1周りを回転する。
【0016】
インバータユニット8は、インバータ8aと、制御部8cを有する。インバータ8aは、例えばコンデンサ(図示略)と、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と、を有する。 モータ30は、インバータ8aと電気的に接続される。インバータ8aは、図示略のバッテリから供給される直流電流を交流電流に変換しモータ30に供給する。モータ30が発生するトルクと、各回転速度は、インバータ8aにより制御される。
【0017】
モータ30には、温度センサ(センサ)38と回転センサ(センサ)39とが取り付けられる。すなわち、モータユニット10は、モータ30の状態を測定するセンサとして温度センサ38と回転センサ39とを備える。
【0018】
温度センサ38は、モータ30の温度を測定する。温度センサ38は、ステータ32のコイル32aに取り付けられる。したがって、温度センサ38は、モータ30の温度として、コイル32aの温度を出力する。
【0019】
回転センサ39は、モータ30の回転角を測定する。より具体的には、回転センサ39は、ステータ32に対するロータ31の相対的な回転角を検出する。図2に示すように、本実施形態の回転センサ39は、ロータ31に固定されるレゾルバロータ39aと、ハウジング6の内壁面に固定されるレゾルバステータ39bと、を有するレゾルバである。
【0020】
ハウジング6には、モータコネクタ部4が設けられる。モータコネクタ部4は、ハウジング6のコネクタ挿入孔6aにより、ハウジング6の内外を貫通する。図2に示すように、モータコネクタ部4は、ハウジング6の内部において、第4のワイヤハーネス64により温度センサ38および回転センサ39と電気的に接続される。また、モータコネクタ部4は、ハウジング6の外部において、第3のワイヤハーネス63の端部に設けられた第3のコネクタ端子63bに接続される。
【0021】
なお、本明細書において、コネクタ端子とはコネクタ部に挿入される集合端子である。コネクタ端子は、ワイヤハーネスの端部に設けられる。また、コネクタ端子は、ワイヤハーネスの各ワイヤに対応する複数の金属製のピンを有する。コネクタ端子の複数のピンは、コネクタ部に設けられた金属製のピンにそれぞれ接続される。
【0022】
伝達機構5は、モータ30の動力を伝達し出力シャフト55から出力する。伝達機構5は、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。
【0023】
伝達機構5は、モータドライブシャフト11と、モータドライブギヤ21と、カウンタシャフト13と、カウンタギヤ(大歯車部)23と、ドライブギヤ(小歯車部)24と、リングギヤ51と、出力シャフト(車軸)55と、差動装置(デファレンシャルギヤ)50と、を有する。
【0024】
モータドライブシャフト11は、モータ軸J1に沿って延びる。モータドライブシャフト11は、モータ30に回転させられる。モータドライブシャフト11には、モータドライブギヤ21が固定される。モータドライブギヤ21は、カウンタギヤ23と噛み合う。
【0025】
カウンタギヤ23は、カウンタ軸J3に沿って延びカウンタシャフト13に固定される。カウンタシャフト13には、カウンタギヤ23に加えドライブギヤ24が固定される。ドライブギヤ24は、リングギヤ51と噛み合う。


【0026】
リングギヤ51は、差動装置50に固定される。リングギヤ51は、出力軸J4周りを回転する。リングギヤ51は、ドライブギヤ24を介して伝達されるモータ30の動力を差動装置50に伝達する。
【0027】
差動装置50は、モータ30から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置50は、一対の出力シャフト55に接続される。一対の出力シャフト55には、それぞれ車輪が取り付けられる。差動装置50は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、一対の出力シャフト55に同トルクを伝える機能を有する。
【0028】
ハウジング6は、モータ30および伝達機構5を収容する。ハウジング6の内部は、モータ30を収容するモータ室6Aと、伝達機構5を収容するギヤ室6Bと、に区画される。
【0029】
オイルOは、ハウジング6の内部に溜る。また、オイルOは、ハウジング6に設けられた油路90を循環する。オイルOは、伝達機構5の潤滑用として使用されるとともに、モータ30の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤ室6Bの下部領域(すなわちオイル溜りP)に溜る。オイル溜りPのオイルOには、伝達機構5の一部が浸かる。オイル溜りPに溜るオイルOは、伝達機構5の動作によってかき上げられて、ギヤ室6B内に拡散される。ギヤ室6Bに拡散されたオイルOは、ギヤ室6B内の伝達機構5の各ギヤに供給されてギヤの歯面やベアリングにオイルOを行き渡らせる。
【0030】
油路90は、ハウジング6に設けられる。油路90は、モータ室6Aとギヤ室6Bとに跨って構成される。油路90には、電動ポンプ97およびオイルクーラ96が設けられる。油路90において、オイルOは、オイル溜りP、電動ポンプ97、オイルクーラ96、モータ30の順で循環し、オイル溜りPに戻る。
【0031】
電動ポンプ97は、油路90の経路中に設けられオイルOを圧送する。電動ポンプ97は、電気により駆動するポンプである。電動ポンプ97は、オイル溜りPからオイルOを吸い上げる。電動ポンプ97は、オイルクーラ96を介した吸い上げたオイルOを、モータ30に供給する。電動ポンプ97は、ポンプコネクタ部97aを有する。ポンプコネクタ部97aには、第2のワイヤハーネス62の端部に設けられた第2のコネクタ端子62bが接続される。
【0032】
オイルクーラ96は、油路90の経路中に設けられ油路90を通過するオイルOを冷却する。すなわち、オイルクーラ96は、モータ30に供給されるオイルOを冷却する。オイルクーラ96は、ハウジング6に固定される。
【0033】
オイルクーラ96を通過したオイルOは、ハウジング6に設けられた流路を介してモータ室6Aの上側でモータ30に供給される。モータ30に供給されたオイルOは、上側から下側に向かってモータ30の外周面およびステータ32のコイル表面を伝って流れてモータ30の熱を奪う。これにより、モータ30全体を冷却することができる。モータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ室6A内の下部領域に溜る。モータ室6A内の下部領域に溜ったオイルOは、図示略の開口を介してギヤ室6Bに移動する。
【0034】
オイルクーラ96には、冷媒が流れる循環流路7が接続される。オイルクーラ96の内部を通過するオイルOは、循環流路7を通過する冷媒との間で熱交換されて冷却される。
【0035】
インバータユニット8は、インバータ8aと、インバータ8aおよび電動ポンプ97を制御する制御部8cと、インバータ8aおよび制御部8cを収容するインバータケース8bと、高電圧用コネクタ部80と、第1のコネクタ部81と、第2のコネクタ部82と、を有する。インバータユニット8は、インバータケース8bにおいて、ハウジング6の外側面に固定される。インバータケース8bには、循環流路7が接続される。すなわち、インバータユニット8には、循環流路7が接続される。
【0036】
循環流路7には、冷媒が循環する。循環流路7は、分岐のない環状の流路である。循環流路7の経路中には、オイルクーラ96と、インバータユニット8と、図示略のラジエータと、図示略の冷媒ポンプと、が直列に配置される。オイルクーラ96およびインバータユニット8は、冷媒によって冷却される。ラジエータは、冷媒を冷却する。冷媒ポンプは、循環流路7において冷媒を圧送する。
【0037】
高電圧用コネクタ部80、第1のコネクタ部81および第2のコネクタ部82は、インバータケース8bに固定される。高電圧用コネクタ部80、第1のコネクタ部81および第2のコネクタ部82は、それぞれインバータケース8bの内外を貫通する。
【0038】
高電圧用コネクタ部80は、インバータユニット8の内部において、インバータ8aに接続される。高電圧用コネクタ部80には、図示しない車両のバッテリ(外部のバッテリ)から延びる高電圧ワイヤハーネス60が接続される。インバータ8aは、高電圧用コネクタ部80および高電圧ワイヤハーネス60を介して車両のバッテリ(外部のバッテリ)と接続される。すなわち、車両のバッテリに蓄電された電力は、高電圧ワイヤハーネス60と高電圧用コネクタ部80を介してインバータ8aに供給される。高電圧ワイヤハーネス60から供給される電力の電圧は、300V~800V程度である。
【0039】
第1のコネクタ部81は、インバータユニット8の内部において、制御部8cに接続される。また、第1のコネクタ部81は、インバータユニット8の外部において、第1のワイヤハーネス61に接続される。
【0040】
第2のコネクタ部82は、インバータユニット8の内部において、制御部8cに接続される。また、第2のコネクタ部82は、インバータユニット8の外部において、第2のワイヤハーネス62および第3のワイヤハーネス63の端部が接続される。
【0041】
インバータ8aは、高電圧ワイヤハーネス60から供給された高電圧の直流電流を交流電流に変換する。インバータ8aは、バスバーユニット8eを介してモータ30に接続される。インバータ8aは、バスバーユニット8eを介して変換した交流電流をモータ30に供給する。
【0042】
次に、図2を用いてバスバーユニット8eについて説明する。図2は、図1のモータユニット10における、モータ30およびインバータユニット8の部分を拡大した概念図である。なお、一部の部品については図示を省略する。バスバーユニット8eは、ステータ32とインバータ8aとを電気的に接続する。バスバーユニット8eは、3つのバスバー8e1と、バスバー8e1を保持するバスバーホルダ8e2と、を有する。バスバー8e1は、導体からなる。3つのバスバー8e1は、例えば、ステータ32のU相、V相およびW相のコイル32aに接続される。また、3つのバスバー8e1は、それぞれ、インバータユニット8から延びる3つの端子8e3に接続される。バスバー8e1は、インバータユニット8のインバータ8aから出力される交流電流をステータ32に供給する。
【0043】
本実施形態では、バスバー8e1は、バスバーホルダ8e2に固定される。バスバーホルダ8e2は、絶縁性の材料からなる。本実施形態において、バスバーホルダ8e2は、樹脂材料からなる。バスバーホルダ8e2は、ハウジング6およびステータ32の少なくとも一方に固定される。
【0044】
後述する温度センサ信号ライン73のコネクタがバスバーホルダ8e2に固定される構成としてもよい。また、回転センサ信号ライン74のコネクタがバスバーホルダ8e2に固定される構成としてもよい。バスバーホルダ8e2のコネクタ固定機構は、モータコネクタ部4の近傍に位置することが好ましい。 上記のコネクタ固定機構を備えることにより、ハウジング6内部でのケーブルの移動を抑制できる。これにより、ロータ31などの可動部品およびバスバー8e1などの高圧部品にケーブルが接触するのを抑制できる。また、コネクタと他の部品との衝突による騒音の発生も抑制できる。
【0045】
次に、図1に示す第1のワイヤハーネス61を説明する。第1のワイヤハーネス61は、図示略の外部電源とインバータユニット8とを電気的に接続する。外部電源は、低電圧(例えば12V)の電源である。第1のワイヤハーネス61の端部は、コネクタ端子61aによって束ねられる。第1のワイヤハーネス61は、コネクタ端子61aにおいてインバータユニット8の第1のコネクタ部81に接続される。
【0046】
第1のワイヤハーネス61は、低電圧電源ライン71を含む。低電圧電源ライン71は、低電圧の電力を外部電源から制御部8cおよび電動ポンプ97に伝送するラインである。低電圧電源ライン71は、分岐点71cにおいて、制御部電源ライン71aとポンプ電源ライン71bとに分岐する。
【0047】
低電圧電源ライン71の分岐点71cは、第1のコネクタ部81に対しインバータユニット8の外側に位置する。第1のワイヤハーネス61のコネクタ端子61aと、第1のコネクタ部81とは、オス、メスの関係にあるピンの接続によって互いに導通される。低電圧電源ライン71は、制御部電源ライン71aとポンプ電源ライン71bとに分岐した状態で第1のコネクタ部81を通るため、制御部電源ライン71aとポンプ電源ライン71bは、互いに異なるピンを通る。したがって、1つのピンに流れる電流値を抑制することができ、ピンの発熱を抑制できる。なお、分岐点71cは、インバータユニット8の内部に位置していてもよい。この場合、ピンの発熱を抑制するため、低電圧電源ライン71が通るピンとして断面積の大きな大電流用のものを用いることが好ましい。
【0048】
制御部電源ライン71aは、制御部8cに駆動電力を供給する。制御部電源ライン71aは、分岐点71cから第1のコネクタ部81を介してインバータユニット8の内部に達し、制御部8cに接続される。
【0049】
ポンプ電源ライン71bは、電動ポンプ97に駆動電力を供給する。ポンプ電源ライン71bは、分岐点71cから第1のコネクタ部81を介してインバータユニット8の内部に達し、第2のコネクタ部82から第2のワイヤハーネス62を介して電動ポンプ97に接続される。
【0050】
第2のワイヤハーネス62は、電動ポンプ97とインバータユニット8とを電気的に接続する。第2のワイヤハーネス62の一方の端部は、第1のコネクタ端子62aによって束ねられ、他方の端部は第2のコネクタ端子62bによって束ねられる。第1のコネクタ端子62aは、第2のワイヤハーネス62のみならず、第3のワイヤハーネス63の端部をも束ねる。すなわち、第2のワイヤハーネス62の端部および第3のワイヤハーネス63の端部は、第1のコネクタ端子62aによってまとめて束ねられる。第1のコネクタ端子62aは、インバータユニット8の第2のコネクタ部82に接続される。また、第2のコネクタ端子62bは、ポンプコネクタ部97aに接続される。
【0051】
第2のワイヤハーネス62は、ポンプ電源ライン71bとポンプ信号ライン72とを含む。ポンプ信号ライン72は、制御部8cと電動ポンプ97との間で信号を伝送する。ポンプ信号ライン72は、制御部8cが発する電動ポンプ97の駆動を命令する信号を電動ポンプ97に伝える。また、ポンプ信号ライン72は、電動ポンプ97の駆動状態を電動ポンプ97から制御部8cに伝える。
【0052】
本実施形態によれば、第2のワイヤハーネス62には、電動ポンプ97を駆動させるポンプ電源ライン71bと、電動ポンプ97の信号を伝送するポンプ信号ライン72と、を含む。このため、外部電源(図示略)とインバータユニット8とからそれぞれ電源ラインと信号ラインとを電動ポンプ97に引き回す場合を比較して、ワイヤハーネスの経路を簡素化することができ、組み立て工程が簡素化される。


【0053】
第3のワイヤハーネス63について図1および図2を用いて説明する。第3のワイヤハーネス63は、モータ30とインバータユニット8とを電気的に接続する。第3のワイヤハーネス63の一方の端部は、第2のワイヤハーネス62の端部とともに第1のコネクタ端子62aによって束ねられる。また、第3のワイヤハーネス63の他方の端部は、第3のコネクタ端子63bによって束ねられる。第3のコネクタ端子63bは、モータコネクタ部4に接続される。


【0054】



第3のワイヤハーネス63は、モータコネクタ部4を介して、温度センサ信号ライン(センサ信号ライン)73と、回転センサ信号ライン(センサ信号ライン)74と、を有する第4のワイヤハーネス64に接続される。すなわち、第3のワイヤハーネス63は信号ラインである。
【0055】
第4のワイヤハーネス64は、第4のコネクタ端子64aと、温度センサ信号ライン73と、回転センサ信号ライン74と、を有する。第4のワイヤハーネス64は、1つの第4のコネクタ端子64aに対して、温度センサ信号ライン73と、回転センサ信号ライン74と、が接続される二股のワイヤハーネスである。温度センサ信号ライン73は、制御部8cと温度センサ38との間で信号を伝送する。温度センサ信号ライン73で伝送される信号は、温度センサ38で測定されたモータ30の温度の情報を含む。同様に、回転センサ信号ライン74は、制御部8cと回転センサ39との間で信号を伝送する。回転センサ信号ライン74で伝送される信号は、回転センサ39で測定されたモータ30の回転角の情報を含む。なお、温度センサ信号ライン73は、本実施形態では2本のケーブルと1つのコネクタで構成されているが、1本のケーブルで構成してもよい。回転センサ信号ライン74は、本実施形態では2本のケーブルと1つのコネクタで構成されているが、1本のケーブルで構成してもよい。
【0056】
次にモータコネクタ部4について、図2および図3を用いて説明する。モータコネクタ部4は、温度センサ38および回転センサ39に接続される第4のワイヤハーネス64と、ハウジング6の外部に位置する第3のワイヤハーネス63と、を接続するコネクタである。モータコネクタ部4は、図3に示すように、コネクタ本体40と、区画壁41と、複数の導電端子42と、封止樹脂43と、を有する。図3には、4本の導電端子42が示されるが、導電端子42の本数は適宜変更可能である。
【0057】
コネクタ本体40は、一方向に延びる筒状の部材である。コネクタ本体40は、コネクタ本体40の一方側に開口する筒状の内側接続部40aと、コネクタ本体40の他方側に開口する筒状の外側接続部40bと、コネクタ本体40の外周面から外側に突出する2つのフランジ部40cとを有する。2つのフランジ部40cは、それぞれフランジ部40cを厚さ方向に貫通する貫通孔40dを有する。コネクタ本体40は、内側接続部40aの外周面の溝部内に配置されるシール部材46を有する。シール部材46は、例えばOリングである。
【0058】
区画壁41は、コネクタ本体40の内部に位置する。区画壁41は、コネクタ本体40の内部において、内側接続部40aと外側接続部40bとの間を仕切る仕切り壁である。本実施形態の場合、区画壁41とコネクタ本体40は、単一の樹脂成形部材の一部である。
【0059】
区画壁41は、複数の導電端子42を保持する。区画壁41は、区画壁41を厚さ方向に貫通する複数の端子挿入孔41aを有する。本実施形態の場合、導電端子42は、コネクタ本体40が延びる方向に沿って延びる金属ピンである。導電端子42は、端子挿入孔41aに挿入される。導電端子42は、区画壁41およびコネクタ本体40にインサート成型されていてもよい。導電端子42の一方側の端部は、内側接続部40aの内部に位置する。導電端子42の他方側の端部の端部は、外側接続部40bの内部に位置する。
【0060】
封止樹脂43は、区画壁41の外側接続部40b側の面に位置する。封止樹脂43は、外側接続部40bの最奥部に充填される。封止樹脂43は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる。封止樹脂43は、導電端子42の外周面と外側接続部40bの内周面にそれぞれ密着し、密着面を液密に封止する。本実施形態において、区画壁41と封止樹脂43は、内側接続部40aと外側接続部40bとの間を液密に封止する封止壁45を構成する。
【0061】
本実施形態のモータユニット10によれば、モータコネクタ部4が内側接続部40aと外側接続部40bとの間を液密に封止する構成を備えることで、モータ30内部の冷媒がモータコネクタ部4からハウジング6の外側に漏れ出るのを防止できる。本実施形態では、モータ30内部にステータ32を冷却するために噴射されるオイルО等の冷媒が、第4のワイヤハーネス64の内部を通って内側接続部40a内に入り込んだとしても、モータコネクタ部4の内部が液密に封止されているため、外側接続部40bへの冷媒の漏れは生じない。
【0062】
また、内側接続部40aと外側接続部40bはいずれもワイヤハーネスのコネクタが接続される端子であるため、ハウジング6の内外で自在にケーブルを引き回すことができる。これにより、モータユニット10の組み立てが行いやすくなり、製造効率が向上する。
【0063】
また、本実施形態では、内側接続部40aと外側接続部40bの両方がオス端子であることにより、導電端子42が単純な棒状の金属ピンとなる。したがって、区画壁41と導電端子42との境界部分を封止樹脂43によって容易に封止できる。なお、区画壁41および封止樹脂43によって十分な封止性が得られる場合には、内側接続部40aおよび外側接続部40bの一方または両方をメス端子としてもよい。
【0064】
本実施形態では、区画壁41と封止樹脂43との組合せによってモータコネクタ部4の封止する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、導電端子42をコネクタ本体40にインサート成型するのみで、内側接続部40aと外側接続部40bとを液密に封止できるのであれば、封止樹脂43を有さないモータコネクタ部4としてもよい。この場合には、区画壁41が液封性を有する封止壁となる。
【0065】
また、封止樹脂43は、外側接続部40b側の面を覆って配置されるが、封止樹脂43は、導電端子42の区画壁41側の基端部にのみ配置されていてもよい。この場合、封止樹脂43は、導電端子42の外周面と区画壁41の外側接続部40b側の面とに密着し、密着面を液密に封止する。
【0066】
また、封止樹脂43の一部は、端子挿入孔41aの内部に位置していてもよい。すなわち、封止樹脂43により、導電端子42の外周面と端子挿入孔41aの内面との隙間を液密に封止する構成であってもよい。
【0067】
モータコネクタ部4は、ハウジング6のコネクタ挿入孔6aに、内側接続部40a側から挿入される。コネクタ本体40の外周面とコネクタ挿入孔6aの内周面との間は、シール部材46によりシールされる。コネクタ本体40は、フランジ部40cの貫通孔40dに挿入されるボルト47により、ハウジング6の外側面に締結される。これにより、モータコネクタ部4は、ハウジング6の内外を電気的に接続可能に配置される。
【0068】
ハウジング6の内部において、モータコネクタ部4の内側接続部40aには第4のワイヤハーネス64の第4のコネクタ端子が接続される。第4のコネクタ端子には、温度センサ信号ライン73と、回転センサ信号ライン74と、が接続される。すなわち、本実施形態の場合、図2に示すように、内側接続部40aは、第4のワイヤハーネス64の回転センサ信号ライン74を介して回転センサ39と、第4のワイヤハーネス64の温度センサ信号ライン73を介して温度センサ38と接続される。
【0069】
第4のワイヤハーネス64の第4のコネクタ端子64aは、図3に示すように、複数の導電端子64a1を有するメス型コネクタである。導電端子64a1には、温度センサ信号ライン73、回転センサ信号ライン74に含まれる複数の導線が接続される。第4のコネクタ端子64aは、内側接続部40aに挿入される。第4のコネクタ端子64aの導電端子64a1は、モータコネクタ部4の導電端子42に接続される。
【0070】
すなわち、モータコネクタ部4は、図2および図3に示すように、温度センサ38および回転センサ39に接続される。第4のワイヤハーネス64の第4のコネクタ端子64aは、温度センサ38、回転センサ39と接続される。
【0071】
ハウジング6の外部において、モータコネクタ部4の外側接続部40bは、第3のワイヤハーネス63に接続される。
【0072】
第3のワイヤハーネス63の第3のコネクタ端子63bは、図3に示すように、複数の導電端子63b1を有するメス型コネクタである。導電端子63b1には、ケーブル63cに含まれる複数の導線が接続される。第3のコネクタ端子63bは、外側接続部40bに挿入される。第3のコネクタ端子63bの導電端子63b1は、モータコネクタ部4の導電端子42に接続される。
【0073】
第3のワイヤハーネス63の端部の第1のコネクタ端子62aは、インバータユニット8に接続される。上記の接続構造により、温度センサ38からの出力信号および回転センサ39からの出力信号は、第4のワイヤハーネス64およびモータコネクタ部4、第3のワイヤハーネス63を通じて制御部8cに送信される。
【0074】
これにより、本発明の1つの態様によれば、ワイヤハーネス内部に冷媒が侵入した場合についても封止可能なコネクタを備える駆動装置が提供される。
【0075】
本実施形態によれば、インバータユニット8には、1つの第2のコネクタ部82において、ポンプ電源ライン71b、ポンプ信号ライン72およびセンサ信号ライン73、74が接続される。したがって、インバータユニット8が、それぞれのライン毎にコネクタ部を有する場合と比較して、コネクタ部の数を少なくすることができる。よって、モータユニット10の組み立て工程を簡素化できる。
【0076】
図4に変形例を示す。本発明の1つの態様と同じ構成については説明を省略する。第1のワイヤハーネス610は、低電圧電源ライン71を含む。低電圧電源ライン71は、低電圧の電力を外部電源から制御部8cおよび電動ポンプ97に伝送するラインである。低電圧電源ライン71は、分岐点71cにおいて、制御部電源ライン71aとポンプ電源ライン71bとに分岐する。
【0077】
低電圧電源ライン71の分岐点71cは、第1のコネクタ部81に対しインバータユニット8の内側に位置する。すなわち、インバータユニット8の制御部8cで制御部電源ライン71aとポンプ電源ライン71bとに分岐する。本構造によれば、第1のワイヤハーネス610の構造を簡易化することができる。
【0078】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0079】
8…インバータユニット、8a…インバータ、8c…制御部、10…モータユニット、30…モータ、38…温度センサ(センサ)、39…回転センサ(センサ)、61…第1のワイヤハーネス、62…第2のワイヤハーネス、63…第3のワイヤハーネス、71…低電圧電源ライン、71a…制御部電源ライン、71b…ポンプ電源ライン、71c…分岐点、72…ポンプ信号ライン、73…センサ信号ライン、73…温度センサ信号ライン(センサ信号ライン)、74…回転センサ信号ライン(センサ信号ライン)、81…第1のコネクタ部、82…第2のコネクタ部、97…電動ポンプ、O…オイル
図1
図2
図3
図4