(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両構造及び車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 19/34 20060101AFI20240618BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20240618BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240618BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60R19/34
B60R19/24 Q
B62D25/20 C
B32B15/08 E
(21)【出願番号】P 2022004394
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】本部 雅之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 展代
(72)【発明者】
【氏名】川口 博史
(72)【発明者】
【氏名】都築 佳彦
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063191(JP,A)
【文献】特開2010-018061(JP,A)
【文献】特開2020-045059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00-19/56
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板製の車体と、
前記車体の前方又は後方に設けられた
鋼板製のバンパリインホースメントと、
一端が前記車体の前後方向の外端部に接合され、他端が前記バンパリインホースメントに接合された
鋼板製のクラッシュボックスと、を有し、
互いに接合された前記車体及び前記クラッシュボックスの
うち前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、
前記クラッシュボックスは、一端が前記バンパリインホースメントに接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記車体に接合されたプレートと、を備え、
前記クラッシュボックスにおいて、前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されていると共に、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層は、前記プレートにおける前記車体との当接面側の表面のみに形成されており、当該当接面と反対側の表面には形成されていない、
車両構造。
【請求項2】
鋼板製の車体と、
前記車体の前方又は後方に設けられた
鋼板製のバンパリインホースメントと、
一端が前記車体の前後方向の外端部に接合され、他端が前記バンパリインホースメントに接合された
鋼板製のクラッシュボックスと、を有し、
互いに接合された前記バンパリインホースメント及び前記クラッシュボックスの
うち前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、
前記クラッシュボックスは、一端が前記車体に接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記バンパリインホースメントに接合されたプレートと、を備え、
前記クラッシュボックスにおいて、前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されている共に、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層は、前記プレートにおける前記バンパリインホースメントとの当接面側の表面のみに形成されており、当該当接面と反対側の表面には形成されていない、
車両構造。
【請求項3】
一端が
鋼板製のバンパリインホースメントに接合されていると共に、他端が
鋼板製の車体に接合されている
鋼板製のクラッシュボックスを前記車体及び前記バンパリインホースメントと共に電着塗装するステップを備え、
前記電着塗装するステップよりも前に互いに接合された前記車体及び前記クラッシュボックスの
うち前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、
前記クラッシュボックスは、一端が前記バンパリインホースメントに接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記車体に接合されたプレートと、を備え、
前記クラッシュボックスにおいて、前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されていると共に、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層は、前記プレートにおける前記車体との当接面側の表面のみに形成されており、当該当接面と反対側の表面には形成されていない、
車両の製造方法。
【請求項4】
一端が
鋼板製のバンパリインホースメントに接合されていると共に、他端が
鋼板製の車体に接合されている
鋼板製のクラッシュボックスを前記車体及び前記バンパリインホースメントと共に電着塗装するステップを備え、
前記電着塗装するステップよりも前に互いに接合された前記バンパリインホースメント及び前記クラッシュボックスの
うち前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、
前記クラッシュボックスは、一端が前記車体に接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記バンパリインホースメントに接合されたプレートと、を備え、
前記クラッシュボックスにおいて、前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されている共に、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層は、前記プレートにおける前記バンパリインホースメントとの当接面側の表面のみに形成されており、当該当接面と反対側の表面には形成されていない、
車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両構造及び車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、樹脂層によって表面が被覆され防錆性能を有する
樹脂被覆鋼板が自動車に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂被覆鋼板は通常の鋼板よりも高額であるため、自動車において使用する部位を適切に選択する必要がある。
自動車用クラッシュボックスは、一端がバンパリインホースメントに接合され、他端が車体(ボディ)に接合されている。ここで、クラッシュボックス及びバンパリインホースメントを車体に組み付けて接合した後、車体と共に電着塗装する手法が生産性及び製造コストの観点から好ましいが、当接面(組付面)を電着塗装できないため、腐食が発生する虞がある。
【0005】
そのため、例えば、電着塗装された車体に、別途電着塗装されたクラッシュボックス及びバンパリインホースメントを組み付ける。あるいは、車体と共に電着塗装されたクラッシュボックスに、別途電着塗装されたバンパリインホースメントを組み付ける。そのため、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制可能な車両構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両構造は、
車体と、
前記車体の前方又は後方に設けられたバンパリインホースメントと、
一端が前記車体の前後方向の外端部に接合され、他端が前記バンパリインホースメントに接合されたクラッシュボックスと、を有し、
前記車体及び前記クラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面に形成されているものである。
【0008】
本発明の一態様に係る車両構造では、車体及びクラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面に形成されている。クラッシュボックスと車体との当接面に形成された樹脂層により腐食因子が鋼板に到達し難くなるため、腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0009】
前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面において、前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体との当接面に形成されていてもよい。
さらに、前記クラッシュボックスは、一端が前記バンパリインホースメントに接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記車体に接合されたプレートと、を備え、前記クラッシュボックスにおける前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されていてもよい。
このような構成により、製造コストをより低減できる。
【0010】
前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層は、前記車体との当接面と反対側の表面にも形成されており、前記当接面に形成された第1の樹脂層の厚さは、前記反対側の表面に形成された第2の樹脂層の厚さよりも大きくてもよい。
さらに、前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層は、前記車体との当接面と反対側の表面には形成されていなくてもよい。
このような構成により、製造コストをより低減できる。
【0011】
前記バンパリインホースメント及び前記クラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面に形成されていてもよい。バンパリインホースメントとクラッシュボックスとの当接面に形成された樹脂層により腐食因子が鋼板に到達し難くなるため、腐食を抑制できる。
【0012】
本発明の一態様に係る車両構造は、
車体と、
前記車体の前方又は後方に設けられたバンパリインホースメントと、
一端が前記車体の前後方向の外端部に接合され、他端が前記バンパリインホースメントに接合されたクラッシュボックスと、を有し、
前記バンパリインホースメント及び前記クラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面に形成されているものである。
【0013】
本発明の一態様に係る車両構造では、バンパリインホースメント及びクラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面に形成されている。バンパリインホースメントとクラッシュボックスとの当接面に形成された樹脂層により腐食因子が鋼板に到達し難くなるため、腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0014】
前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面において、前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントとの当接面に形成されてもよい。
さらに、前記クラッシュボックスは、一端が前記車体に接合された本体部と、前記本体部の他端に設けられ、前記バンパリインホースメントに接合されたプレートと、を備え、前記クラッシュボックスにおける前記プレートのみが樹脂被覆鋼板から構成されてもよい。
このような構成により、製造コストをより低減できる。
【0015】
前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層は、前記バンパリインホースメントとの当接面と反対側の表面にも形成されており、前記当接面に形成された第1の樹脂層の厚さは、前記反対側の表面に形成された第2の樹脂層の厚さよりも大きくてもよい。
さらに、前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層は、前記バンパリインホースメントとの当接面と反対側の表面には形成されていなくてもよい。
このような構成により、製造コストをより低減できる。
【0016】
本発明の一態様に係る車両の製造方法は、
一端がバンパリインホースメントに接合されていると共に、他端が車体に接合されているクラッシュボックスを前記車体及び前記バンパリインホースメントと共に電着塗装するステップを備え、
前記車体及び前記クラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面に形成されているものである。
【0017】
本発明の一態様に係る車両の製造方法では、車体及びクラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面に形成されている。クラッシュボックスと車体との当接面に形成された樹脂層により腐食因子が鋼板に到達し難くなるため、腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0018】
前記車体と前記クラッシュボックスとの当接面において、前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記車体との当接面に形成されていてもよい。このような構成により、製造コストをより低減できる。
【0019】
本発明の一態様に係る車両の製造方法は、
一端がバンパリインホースメントに接合されていると共に、他端が車体に接合されているクラッシュボックスを前記車体及び前記バンパリインホースメントと共に電着塗装するステップを備え、
前記バンパリインホースメント及び前記クラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面に形成されているものである。
【0020】
本発明の一態様に係る車両の製造方法では、バンパリインホースメント及びクラッシュボックスの少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面に形成されている。バンパリインホースメントとクラッシュボックスとの当接面に形成された樹脂層により腐食因子が鋼板に到達し難くなるため、腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0021】
前記バンパリインホースメントと前記クラッシュボックスとの当接面において、前記クラッシュボックスのみが樹脂被覆鋼板から構成されており、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層が前記バンパリインホースメントとの当接面に形成されていてもよい。このような構成により、製造コストをより低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制可能な車両構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る車両構造の模式斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
【
図3】
図2における領域IIIの模式部分断面図である。
【
図4】第1の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
【
図6】
図5における領域VIの模式部分断面図である。
【
図7】第2の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
【
図8】第3の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
【
図9】
図8における領域IXの模式部分断面図である。
【
図10】第3の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
【
図13】第5の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
【
図15】第5の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0025】
(第1の実施形態)
<車両構造の構成>
まず、
図1、
図2を参照して、第1の実施形態に係る車両構造の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る車両構造の模式斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両構造は、車両前方に、フロントサイドメンバ10、バンパリインホースメント20、及びクラッシュボックス30を備えている。
【0026】
なお、当然のことながら、
図1及びその他の図に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものであり、図面間で共通である。図示した例では、x軸正方向が車両前側方向、y軸方向が車幅方向、z軸正方向が鉛直上向き方向を示している。
【0027】
フロントサイドメンバ10は、車体を構成する例えば筒状の鋼板部材である。
図1に示すように、一対のフロントサイドメンバ10が、車体の前方両側において前後方向(y軸方向)に延設されている。フロントサイドメンバ10は、例えば矩形状のyz断面形状を有する。また、特に限定されないが、
図2に示すフロントサイドメンバ10は、筒状の本体部11及びプレート12を備えている。本体部11の前方の開口端には、フランジ部が設けられている。本体部11の前方の開口端を塞ぐように、本体部11のフランジ部とプレート12とが例えば溶接等によって接合されている。
【0028】
バンパリインホースメント20は、フロントバンパに組み込まれる補強部材であって、例えば筒状の鋼板部材である。
図1に示すように、車体の前方において、車幅方向(y軸方向)の全体に亘って延設されている。特に限定されないが、
図2に示すように、バンパリインホースメント20は、例えばB字状のxz断面形状を有する。
【0029】
クラッシュボックス30は、衝突時に自らが潰れることによって衝撃を吸収する例えば箱状もしくは筒状の鋼板部材である。
図1に示すように、一対のクラッシュボックス30が、バンパリインホースメント20の車幅方向(y軸方向)の両端部に接合されている。また、
図2に示すように、各クラッシュボックス30の後端部は、車体であるフロントサイドメンバ10の前端部に接合されている。クラッシュボックス30の前端部は、バンパリインホースメント20の後端部に接合されている。すなわち、クラッシュボックス30は、一端が車体の前後方向の外端部に接合され、他端がバンパリインホースメント20に接合されている。
【0030】
ここで、特に限定されないが、
図2に示すクラッシュボックス30は、筒状の本体部31及びプレート32、33を備えている。本体部31の後方の開口端を塞ぐように、本体部31の後方の開口端とプレート32とが例えば溶接等によって接合されている。他方、本体部31の前方の開口端には、フランジ部が設けられている。本体部31の前方の開口端を塞ぐように、本体部31のフランジ部とプレート33とが例えば溶接等によって接合されている。
【0031】
そして、
図2に示すように、クラッシュボックス30の前端部すなわちプレート33と、バンパリインホースメント20の後端部とが、溶接等によって接合されている。他方、クラッシュボックス30の後端部すなわちプレート32と、フロントサイドメンバ10の前端部すなわちプレート12とが、ボルト締結等によって接合されている。
【0032】
ここで、本実施形態に係る車両構造では、予めバンパリインホースメント20が接合されたクラッシュボックス30を、車体であるフロントサイドメンバ10に、ボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。当該車両構造は、電着塗装後、さらに例えば中塗塗装及び上塗塗装されてもよい。
【0033】
ここで、
図3は、
図2における領域IIIの模式部分断面図である。
図3に示すように、クラッシュボックス30のプレート32は、樹脂被覆鋼板から構成されている。プレート32では、鋼板SSの背面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層(第1の樹脂層)RL1によって被覆され、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層(第2の樹脂層)RL2によって被覆されている。すなわち、
図3に示すように、クラッシュボックス30のプレート32におけるフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0034】
上述の通り、クラッシュボックス及びバンパリインホースメントを車体に組み付けた後、車体と共に電着塗装すると、クラッシュボックスと車体との当接面は電着塗装できず、腐食が発生する虞がある。
これに対し、本実施形態に係る車両構造では、
図3に示すように、クラッシュボックス30のプレート32が樹脂被覆鋼板から構成され、当該プレート32におけるフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0035】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がプレート32の鋼板SS及び鋼板であるプレート12に到達し難くなり、クラッシュボックス30とフロントサイドメンバ10(すなわち車体)との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。後述するように、樹脂層RL1が防錆顔料を含有する場合、腐食をさらに抑制できる。
従って、フロントサイドメンバ10(すなわち車体)にクラッシュボックス30を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0036】
ここで、鋼板SSは、特に限定されないが、例えば普通鋼やクロム等の添加元素を含有する鋼から構成される。また、防錆性能を高めるために、鋼板SSの表面にめっき被膜を設けてもよい。すなわち、鋼板SSはめっき鋼板でもよい。めっき皮膜は、特に限定されないが、例えば、亜鉛、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケル等の金属元素のいずれか一つを含むめっき皮膜や、これらの金属元素を含む合金めっき皮膜等が挙げられる。
【0037】
また、樹脂層RL1、RL2は、特に限定されないが、例えば、水系塗装用組成物、有機溶剤系塗装用組成物等の有機樹脂からなる。当該有機樹脂は、例えばポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、それらの変性体、あるいは、それらの混合物等である。
【0038】
当該有機樹脂は、例えば防錆顔料を含有し、防錆性能を有する。防錆顔料は、特に限定されないが、例えば珪酸塩化合物、燐酸塩化合物、バナジン酸塩化合物、及び金属酸化物の微粒子のいずれか一つ以上を含む。防錆顔料は、例えば、体積平均径が1~50nm程度のナノ微粒子、体積平均径が0.5~10μm程度の微粒子、又は両者の混合物等である。樹脂層RL1、RL2における防錆顔料の添加量は、例えば1~40体積%であり、2~20体積%でもよい。
【0039】
さらに、当該有機樹脂が、例えば導電顔料を含有し、導電性を有してもよい。導電顔料は、特に限定されないが、例えば金属、合金、導電性炭素、燐化鉄、炭化物、及び半導体酸化物の微粒子いずれか一つ以上を含む。当該微粒子の体積平均径は、例えば0.5~10μm程度である。樹脂層RL1、RL2における導電顔料の添加量は、例えば1~40体積%であり、2~20体積%でもよい。
【0040】
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば0.5~10μmである。樹脂層RL1、RL2の厚さが0.5μm以上であるため、耐食性が得られると共に、樹脂層RL1、RL2の厚さが10μm以下であるため、プレス成形時等における樹脂層RL1、RL2の破壊もしくは剥離を抑制できる。樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば1~5μmでもよい。
【0041】
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば同程度である。しかしながら、クラッシュボックス30のプレート32におけるフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面に形成された樹脂層RL1の厚さは、その反対側の表面に形成された樹脂層RL2の厚さよりも大きくてもよい。
【0042】
さらに、クラッシュボックス30のプレート32におけるフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面のみに樹脂層RL1が形成され、その反対側の表面に樹脂層RL2が形成されていなくてもよい。このような構成によって、クラッシュボックス30のプレート32とフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面における腐食を抑制しつつ、製造コストをより低減できる。
【0043】
また、クラッシュボックス30のプレート32におけるフロントサイドメンバ10のプレート12との当接面に樹脂層RL1が形成されていれば、当接面側の表面全面に樹脂層RL1が形成されていなくてもよい。
【0044】
なお、樹脂層RL1、RL2の鋼板SSへの密着性や耐食性等を改善するため、樹脂層RL1、RL2と鋼板SSの表面との間に下地処理皮膜を設けてもよい。下地処理皮膜の層数、組成は、特に限定されない。
また、本実施形態に係る自動車用クラッシュボックスでは、鋼板SSの端面には、樹脂層は形成されていないが、鋼板SSの端面に樹脂層が形成されていてもよい。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス30のプレート32が、樹脂被覆鋼板から構成されており、フロントサイドメンバ10のプレート12との当接面に樹脂層RL1が形成されている。そのため、フロントサイドメンバ10(すなわち車体)にクラッシュボックス30を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0046】
<変形例>
ここで、
図4を参照して、本実施形態の変形例に係る車両構造について説明する。
図4は、第1の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
図4は、
図3に対応する断面図である。
図4に示すように、変形例に係る車両構造では、クラッシュボックス30のプレート32に代えて、フロントサイドメンバ10のプレート12が、樹脂被覆鋼板から構成されている。
【0047】
図4に示すように、フロントサイドメンバ10のプレート12では、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの背面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図4に示すように、フロントサイドメンバ10のプレート12におけるクラッシュボックス30のプレート32との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0048】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がプレート12の鋼板SS及び鋼板であるプレート32に到達し難くなり、クラッシュボックス30とフロントサイドメンバ10(すなわち車体)との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、変形例に係る車両構造でも、フロントサイドメンバ10(すなわち車体)にクラッシュボックス30を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0049】
なお、本実施形態に係る車両構造では、フロントサイドメンバ10及びクラッシュボックス30の少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成され、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層がフロントサイドメンバ10とクラッシュボックス30との当接面に形成されていればよい。すなわち、フロントサイドメンバ10及びクラッシュボックス30の両方を樹脂被覆鋼板から構成してもよい。
【0050】
しかしながら、フロントサイドメンバ10及びクラッシュボックス30の一方のみを樹脂被覆鋼板から構成し、他方を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストを低減できる。さらに、
図3に示すように、クラッシュボックス30におけるプレート32のみを樹脂被覆鋼板から構成し、本体部31及びプレート33を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストをより低減できる。あるいは、
図4に示すように、フロントサイドメンバ10におけるプレート12のみを樹脂被覆鋼板から構成し、本体部11を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストをより低減できる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、
図5を参照して、第2の実施形態に係る車両構造の構成について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
図5は、
図2に対応する断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る車両構造は、第1の実施形態に係る車両構造と同様に、フロントサイドメンバ10、バンパリインホースメント20、及びクラッシュボックス30を備えている。
【0052】
ここで、
図2に示すように、第1の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス30の前端部すなわちプレート33と、バンパリインホースメント20の後端部とが、溶接等によって接合されている。他方、クラッシュボックス30の後端部すなわちプレート32と、フロントサイドメンバ10の前端部すなわちプレート12とが、ボルト締結等によって接合されている。
【0053】
すなわち、第1の実施形態に係る車両構造では、予めバンパリインホースメント20が接合されたクラッシュボックス30を、車体であるフロントサイドメンバ10に、ボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。
【0054】
これに対し、
図5に示すように、第2の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス30の前端部すなわちプレート33と、バンパリインホースメント20の後端部とが、ボルト締結等によって接合されている。他方、クラッシュボックス30の後端部すなわちプレート32と、フロントサイドメンバ10の前端部すなわちプレート12とが、溶接等によって接合されている。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る車両構造では、予めフロントサイドメンバ10(すなわち車体)に接合されたクラッシュボックス30に対し、バンパリインホースメント20をボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。
【0056】
ここで、
図6は、
図5における領域VIの模式部分断面図である。
図6に示すように、クラッシュボックス30のプレート33は、樹脂被覆鋼板から構成されている。プレート33では、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの後面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図6に示すように、クラッシュボックス30のプレート33におけるバンパリインホースメント20との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0057】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がプレート33の鋼板SS及び鋼板であるバンパリインホースメント20に到達し難くなり、クラッシュボックス30とバンパリインホースメント20との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、クラッシュボックス30にバンパリインホースメント20を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0058】
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば同程度である。しかしながら、クラッシュボックス30のプレート33におけるバンパリインホースメント20との当接面に形成された樹脂層RL1の厚さは、その反対側の表面に形成された樹脂層RL2の厚さよりも大きくてもよい。
【0059】
さらに、クラッシュボックス30のプレート33におけるバンパリインホースメント20との当接面のみに樹脂層RL1が形成され、その反対側の表面に樹脂層RL2が形成されていなくてもよい。このような構成によって、クラッシュボックス30のプレート33とバンパリインホースメント20との当接面における腐食を抑制しつつ、製造コストをより低減できる。
【0060】
また、クラッシュボックス30のプレート33におけるバンパリインホースメント20との当接面に樹脂層RL1が形成されていれば、当接面側の表面全面に樹脂層RL1が形成されていなくてもよい。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス30のプレート33が、樹脂被覆鋼板から構成されており、バンパリインホースメント20との当接面に樹脂層RL1が形成されている。そのため、クラッシュボックス30にバンパリインホースメント20を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0062】
<変形例>
ここで、
図7を参照して、本実施形態の変形例に係る車両構造について説明する。
図7は、第2の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
図7は、
図6に対応する断面図である。
図7に示すように、変形例に係る車両構造では、クラッシュボックス30のプレート33に代えて、バンパリインホースメント20が、樹脂被覆鋼板から構成されている。
【0063】
図7に示すように、バンパリインホースメント20では、鋼板SSの背面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図7に示すように、バンパリインホースメント20におけるクラッシュボックス30のプレート33との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0064】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がバンパリインホースメント20の鋼板SS及び鋼板であるプレート33に到達し難くなり、クラッシュボックス30とバンパリインホースメント20との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、クラッシュボックス30にバンパリインホースメント20を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0065】
なお、本実施形態に係る車両構造では、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30の少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成され、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層がバンパリインホースメント20とクラッシュボックス30との当接面に形成されていればよい。すなわち、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30の両方を樹脂被覆鋼板から構成してもよい。
【0066】
しかしながら、バンパリインホースメント20又はクラッシュボックス30のみを樹脂被覆鋼板から構成し、他方を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストを低減できる。さらに、
図6に示すように、クラッシュボックス30におけるプレート33のみを樹脂被覆鋼板から構成し、本体部31及びプレート32を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストをより低減できる。ここで、本体部31及びプレート32を合わせて本体部と呼んでもよい。
【0067】
その他の構成は、第1の実施形態に係る車両構造と同様であるため、説明を省略する。
なお、第1の実施形態と第2の実施形態とは組み合わせられる。すなわち、フロントサイドメンバ10とクラッシュボックス30との当接面に樹脂被覆鋼板の樹脂層が形成されると共に、バンパリインホースメント20とクラッシュボックス30との当接面に樹脂被覆鋼板の樹脂層が形成されていてもよい。
【0068】
(第3の実施形態)
次に、
図8を参照して、第3の実施形態に係る車両構造の構成について説明する。
図8は、第3の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る車両構造は、車両後方に、ロアバックパネル40、バンパリインホースメント50、及びクラッシュボックス60を備えている。
【0069】
ロアバックパネル40は、車体の後端面を構成する鋼板部材であって、車幅方向(y軸方向)の全体に亘って延設されている。
バンパリインホースメント50は、リアバンパに組み込まれる補強部材であって、例えば筒状の鋼板部材である。特に限定されないが、
図8に示すように、バンパリインホースメント50は、
図2に示すバンパリインホースメント20と同様に、例えばB字状のxz断面形状を有する。
【0070】
クラッシュボックス60は、クラッシュボックス30と同様に、衝突時に自らが潰れることによって衝撃を吸収する例えば箱状もしくは筒状の鋼板部材である。図示しないが、一対のクラッシュボックス60が、バンパリインホースメント50の車幅方向(y軸方向)の両端部に接合されている。また、
図8に示すように、各クラッシュボックス60の前端部は、車体であるロアバックパネル40に接合されている。クラッシュボックス60の後端部は、バンパリインホースメント50の前端部に接合されている。すなわち、クラッシュボックス60は、一端が車体の前後方向の外端部に接合され、他端がバンパリインホースメント50に接合されている。
【0071】
ここで、特に限定されないが、
図8に示すクラッシュボックス60は、有底筒状の本体部61及びプレート62を備えている。本体部61の前方の開口端を塞ぐように、本体部61の開口端とプレート62とが例えば溶接等によって接合されている。プレート62の中央部には開口部62aが設けられている。なお、開口部62aは設けられていなくてもよい。また、プレート62において本体部61の開口端から外側に張り出した部位は、クラッシュボックス60のフランジ部を構成している。
【0072】
そして、
図8に示すように、クラッシュボックス60の前端部すなわちプレート62と、車体であるロアバックパネル40とが、ボルト締結等によって接合されている。他方、クラッシュボックス60の後端部すなわち本体部61の底部と、バンパリインホースメント50の前端部とが、溶接等によって接合されている。
【0073】
ここで、本実施形態に係る車両構造では、予めバンパリインホースメント50が接合されたクラッシュボックス60を、車体であるロアバックパネル40に、ボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。当該車両構造は、電着塗装後、さらに例えば中塗塗装及び上塗塗装されてもよい。
【0074】
ここで、
図9は、
図8における領域IXの模式部分断面図である。
図9に示すように、クラッシュボックス60のプレート62は、樹脂被覆鋼板から構成されている。プレート62では、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの後面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図9に示すように、クラッシュボックス60のプレート62におけるロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0075】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がプレート62の鋼板SS及び鋼板であるロアバックパネル40に到達し難くなり、クラッシュボックス60とロアバックパネル40(すなわち車体)との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。樹脂層RL1が防錆顔料を含有する場合、腐食をさらに抑制できる。
従って、ロアバックパネル40(すなわち車体)にクラッシュボックス60を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0076】
本実施形態における鋼板SS及び樹脂層RL1、RL2は、第1の実施形態における鋼板SS及び樹脂層RL1、RL2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば同程度である。しかしながら、クラッシュボックス60のプレート62におけるロアバックパネル40との当接面に形成された樹脂層RL1の厚さは、その反対側の表面に形成された樹脂層RL2の厚さよりも大きくてもよい。
【0077】
さらに、クラッシュボックス60のプレート62におけるロアバックパネル40との当接面のみに樹脂層RL1が形成され、その反対側の表面に樹脂層RL2が形成されていなくてもよい。このような構成によって、クラッシュボックス60のプレート62とロアバックパネル40との当接面における腐食を抑制しつつ、製造コストをより低減できる。
【0078】
また、クラッシュボックス60のプレート62におけるロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されていれば、当接面側の表面全面に樹脂層RL1が形成されていなくてもよい。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60のプレート62が、樹脂被覆鋼板から構成されており、ロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されている。そのため、クラッシュボックス60とロアバックパネル40(すなわち車体)とを組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0080】
<変形例>
ここで、
図10を参照して、本実施形態の変形例に係る車両構造について説明する。
図10は、第3の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
図10は、
図9に対応する断面図である。
図10に示すように、変形例に係る車両構造では、クラッシュボックス60のプレート62に代えて、ロアバックパネル40が、樹脂被覆鋼板から構成されている。
【0081】
図10に示すように、ロアバックパネル40では、鋼板SSの背面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図10に示すように、ロアバックパネル40におけるクラッシュボックス60のプレート62との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0082】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がロアバックパネル40の鋼板SS及び鋼板であるプレート62に到達し難くなり、クラッシュボックス60とロアバックパネル40(すなわち車体)との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、ロアバックパネル40(すなわち車体)にクラッシュボックス60を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0083】
なお、本実施形態に係る車両構造では、ロアバックパネル40及びクラッシュボックス60の少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成され、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層がロアバックパネル40とクラッシュボックス60との当接面に形成されていればよい。すなわち、ロアバックパネル40及びクラッシュボックス60の両方を樹脂被覆鋼板から構成してもよい。
【0084】
しかしながら、ロアバックパネル40及びクラッシュボックス60の一方のみを樹脂被覆鋼板から構成し、他方を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストを低減できる。さらに、
図9に示すように、クラッシュボックス60におけるプレート62のみを樹脂被覆鋼板から構成し、本体部61を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストをより低減できる。
なお、本実施形態は、第1及び第2の実施形態の一方もしくは両方と組み合わせられる。
【0085】
(第4の実施形態)
次に、
図11を参照して、第4の実施形態に係る車両構造の構成について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
図11は、
図8に対応する断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る車両構造は、第3の実施形態に係る車両構造と同様に、ロアバックパネル40、バンパリインホースメント50、及びクラッシュボックス60を備えている。
【0086】
ここで、
図8に示すように、第3の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60が、有底筒状の本体部61及びプレート62を備えている。
これに対し、
図11に示すように、第4の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60が、一枚の鋼板から構成されている。クラッシュボックス60は、有底筒状体であって、前方の開口端から外側に張り出したフランジ部を備えている。
【0087】
図11に示すように、クラッシュボックス60の前端部であるフランジ部と、車体であるロアバックパネル40とが、ボルト締結等によって接合されている。他方、クラッシュボックス60の後端部すなわち底部と、バンパリインホースメント50の前端部とが、溶接等によって接合されている。
【0088】
ここで、本実施形態に係る車両構造では、予めバンパリインホースメント50が接合されたクラッシュボックス60を、車体であるロアバックパネル40に、ボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。
【0089】
ここで、
図12は、
図11における領域XIIの模式部分断面図である。
図12に示すように、クラッシュボックス60は、樹脂被覆鋼板から構成されている。クラッシュボックス60では、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの後面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図12に示すように、クラッシュボックス60におけるロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0090】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がクラッシュボックス60の鋼板SS及び鋼板であるロアバックパネル40に到達し難くなり、クラッシュボックス60とロアバックパネル40との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、ロアバックパネル40(すなわち車体)にクラッシュボックス60を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0091】
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば同程度である。しかしながら、クラッシュボックス60におけるロアバックパネル40との当接面に形成された樹脂層RL1の厚さは、その反対側の表面に形成された樹脂層RL2の厚さよりも大きくてもよい。
【0092】
さらに、クラッシュボックス60におけるロアバックパネル40との当接面のみに樹脂層RL1が形成され、その反対側の表面に樹脂層RL2が形成されていなくてもよい。このような構成によって、クラッシュボックス60とロアバックパネル40(すなわち車体)との当接面における腐食を抑制しつつ、製造コストをより低減できる。
また、クラッシュボックス60におけるロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されていれば、当接面側の表面全面に樹脂層RL1が形成されていなくてもよい。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60が、樹脂被覆鋼板から構成されており、ロアバックパネル40との当接面に樹脂層RL1が形成されている。そのため、ロアバックパネル40(すなわち車体)にクラッシュボックス60を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0094】
なお、本実施形態に係る車両構造では、ロアバックパネル40及びクラッシュボックス60の少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成され、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層がロアバックパネル40とクラッシュボックス60との当接面に形成されていればよい。すなわち、バンパリインホースメント20及びクラッシュボックス30の両方を樹脂被覆鋼板から構成してもよい。
【0095】
しかしながら、ロアバックパネル40及びクラッシュボックス60の一方のみを樹脂被覆鋼板から構成し、他方を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストを低減できる。さらに、クラッシュボックス60におけるフランジ部のみを樹脂被覆鋼板から構成し、クラッシュボックス60におけるそれ以外の部位を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成してもよい。
その他の構成は、第3の実施形態に係る車両構造と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
(第5の実施形態)
次に、
図13を参照して、第5の実施形態に係る車両構造の構成について説明する。
図13は、第5の実施形態に係る車両構造の模式断面図である。
図13は、
図11に対応する断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係る車両構造は、第4の実施形態に係る車両構造と同様に、フロントサイドメンバ10、バンパリインホースメント20、及びクラッシュボックス30を備えている。
【0097】
ここで、
図11に示すように、第4の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60の前端部であるフランジ部と、車体であるロアバックパネル40とが、ボルト締結等によって接合されている。他方、クラッシュボックス60の後端部すなわち底部と、バンパリインホースメント50の前端部とが、溶接等によって接合されている。
【0098】
すなわち、第4の実施形態に係る車両構造では、予めバンパリインホースメント50が接合されたクラッシュボックス60を、車体であるロアバックパネル40に、ボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。
【0099】
これに対し、
図13に示すように、第5の実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60の前端部すなわちフランジ部と、車体であるロアバックパネル40とが、溶接等によって接合されている。他方、クラッシュボックス60の後端部すなわち底部と、バンパリインホースメント50の前端部とが、ボルト締結等によって接合されている。
【0100】
すなわち、本実施形態に係る車両構造では、予めロアバックパネル40(すなわち車体)に接合されたクラッシュボックス60に対し、バンパリインホースメント50をボルトBL及びナットNTを用いたボルト締結等によって組み付けて接合する。その後、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60が接合された車体すなわち本実施形態に係る車両構造を電着塗装する。
【0101】
ここで、
図14は、
図13における領域XIVの模式部分断面図である。
図14に示すように、クラッシュボックス60は、樹脂被覆鋼板から構成されている。クラッシュボックス60では、鋼板SSの後面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図14に示すように、クラッシュボックス60におけるバンパリインホースメント50との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0102】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がクラッシュボックス60の鋼板SS及び鋼板であるバンパリインホースメント50に到達し難くなり、クラッシュボックス60とバンパリインホースメント50との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、クラッシュボックス60にバンパリインホースメント50を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0103】
樹脂層RL1、RL2の厚さは、例えば同程度である。しかしながら、クラッシュボックス60におけるバンパリインホースメント50との当接面に形成された樹脂層RL1の厚さは、その反対側の表面に形成された樹脂層RL2の厚さよりも大きくてもよい。
【0104】
さらに、クラッシュボックス60におけるバンパリインホースメント50との当接面のみに樹脂層RL1が形成され、その反対側の表面に樹脂層RL2が形成されていなくてもよい。このような構成によって、クラッシュボックス60とバンパリインホースメント50との当接面における腐食を抑制しつつ、製造コストをより低減できる。
【0105】
また、クラッシュボックス60におけるバンパリインホースメント50との当接面に樹脂層RL1が形成されていれば、当接面側の表面全面に樹脂層RL1が形成されていなくてもよい。
【0106】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両構造では、クラッシュボックス60が、樹脂被覆鋼板から構成されており、バンパリインホースメント50との当接面に樹脂層RL1が形成されている。そのため、クラッシュボックス60にバンパリインホースメント50を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。すなわち、製造コストを抑制しつつ、腐食を抑制できる。
【0107】
<変形例>
ここで、
図15を参照して、本実施形態の変形例に係る車両構造について説明する。
図15は、第5の実施形態の変形例に係る車両構造の模式部分断面図である。
図15は、
図14に対応する断面図である。
図15に示すように、変形例に係る車両構造では、クラッシュボックス60に代えて、バンパリインホースメント50が、樹脂被覆鋼板から構成されている。
【0108】
図15に示すように、バンパリインホースメント50では、鋼板SSの前面(x軸正方向側の表面)全体が樹脂層RL1によって被覆され、鋼板SSの後面(x軸負方向側の表面)全体が樹脂層RL2によって被覆されている。すなわち、
図15に示すように、バンパリインホースメント50におけるクラッシュボックス60との当接面に樹脂層RL1が形成されている。
【0109】
そのため、樹脂層RL1により、水、酸素、塩素等の腐食因子がバンパリインホースメント50の鋼板SS及び鋼板であるクラッシュボックス60に到達し難くなり、クラッシュボックス60とバンパリインホースメント50との当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
従って、クラッシュボックス60にバンパリインホースメント50を組み付けた後に電着塗装することによって製造コストを抑制しつつ、両者の当接面(組付面)における腐食を抑制できる。
【0110】
なお、本実施形態に係る車両構造では、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60の少なくとも一方が樹脂被覆鋼板から構成され、当該樹脂被覆鋼板の樹脂層がバンパリインホースメント50とクラッシュボックス60との当接面に形成されていればよい。すなわち、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60の両方を樹脂被覆鋼板から構成してもよい。
【0111】
しかしながら、バンパリインホースメント50及びクラッシュボックス60の一方のみを樹脂被覆鋼板から構成し、他方を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成することによって、製造コストを低減できる。さらに、クラッシュボックス60における底部のみを樹脂被覆鋼板から構成し、クラッシュボックス60におけるそれ以外の部位を樹脂被覆されていない通常の鋼板から構成してもよい。
【0112】
その他の構成は、第4の実施形態に係る車両構造と同様であるため、説明を省略する。
なお、第4の実施形態と第5の実施形態とは組み合わせられる。すなわち、ロアバックパネル40とクラッシュボックス60との当接面に樹脂被覆鋼板の樹脂層が形成されると共に、バンパリインホースメント50とクラッシュボックス60との当接面に樹脂被覆鋼板の樹脂層が形成されていてもよい。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 フロントサイドメンバ
11 本体部
12 プレート
20 バンパリインホースメント
30 クラッシュボックス
31 本体部
32、33 プレート
40 ロアバックパネル
50 バンパリインホースメント
60 クラッシュボックス
61 本体部
62 プレート
62a 開口部
BL ボルト
NT ナット
RL1、RL2 樹脂層
SS 鋼板