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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】パレットシステムおよび荷物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/26 20060101AFI20240618BHJP
   B65G 67/02 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
B65D19/26
B65G67/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022104893
(22)【出願日】2022-06-29
(65)【公開番号】P2024004967
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】神田 陽悦
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126642(JP,A)
【文献】実開平01-082135(JP,U)
【文献】実開平03-120432(JP,U)
【文献】特開2015-000730(JP,A)
【文献】実開昭54-051769(JP,U)
【文献】実開平07-022929(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0068436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/26
B65G 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、
前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、
前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、
前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に交差する前記厘木の端面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されたパレットシステムにおいて、
前記結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対して前記厘木の端面側から斜め方向に締結されるボルト・ナット部材を含んで構成される
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項3】
請求項2に記載されたパレットシステムにおいて、
前記厘木の各端面近傍には、前記ボルト・ナット部材が前記厘木の左右両側に向けて二組ずつ配置されており、
一本の厘木を挟んでその両側に二枚のパレット本体を結合し得るように構成された
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載されたパレットシステムにおいて、
前記二組のボルト・ナット部材が、互いの高さを上下方向にずらし、平面視において交差するように配置されている
ことを特徴とするパレットシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、
荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
複数枚の前記パレット本体を、それらの隣接側面間に前記厘木を一本ずつ挟んで連結し、最外側面にも前記厘木を結合して一体の連結体となし、
少なくとも最外側面の厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で前記連結体を搬送し、
荷物の保管場所に前記連結体を定置した後、前記複数枚のパレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、建築資材、各種物品その他の荷物を搬送する際に使用されるパレットシステムと、該パレットシステムを使用した荷物の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事に使用される資材等を施工現場まで搬送する場合、板状や棒状の資材を平面視矩形のパレット上に積み重ねて崩れないように束縛し、その資材をパレットごとトラックの荷台に積んで搬送し、目的地の施工現場にパレットごと荷降ろして、その資材を上から順に工事に使用する、ということが一般的に行われている。しかし、このような使用態様では、パレット上に積み重ねた資材を全て使用するなどしてパレット上から無くすまで、パレットを回収することができないので、パレットの運用効率が低下してしまう。そこで、例えば特許文献1~3には、資材等を搬送先に荷降ろしした後、早期にパレットを回収することを可能にするパレットの運用方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたパレットの運用方法は、吊り上げ可能に形成されたパレット本体の底面フレームの中間部分に複数本の支持部材を抜き挿し可能に設け、その支持部材の上に資材を積み重ねて搬送し、目的地には底面フレームの枠内に納まる複数本の台材をあらかじめ並置しておいて、その台材の上に資材を降ろしたら支持部材を抜き取って、資材を台材に載せ替えた後、パレットを回収する、というものである。
【0004】
特許文献2に開示されたパレットの運用方法は、大パレット上に小パレットが載置される2段パレットを用いるものである。資材の両端部が小パレットの両側縁部からはみ出すようにして資材を小パレット上に積み重ね、その小パレットを大パレット上に固定して搬送し、目的地で2段パレットを降ろしてから、さらに小パレットを資材とともに降ろし、小パレットの幅よりもやや広い間隔で並置した一対の敷材上に資材の両端部を載せ替えた後、小パレットを抜き取って、小パレットおよび大パレットを回収する、というものである。
【0005】
特許文献3に開示されたパレットの運用方法のうち、同文献に「第2の台板回収方法」)として記載された方法は、資材(同文献中では「被搬送体」)の両端部がパレット(同文献中では「台板」)の両側縁部からはみ出すようにして資材をパレット上に積み重ね、そのパレットを車両の荷台に並置した一対の台座部材上に載置固定して搬送し、目的地にはパレットの幅よりもやや広い間隔で一対の架台を並置しておいて、その間にパレットを降ろし、資材の両端部を棒状架台に載せ替えた後、パレットを抜き取って回収する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-185737号公報
【文献】特開2004-075266号公報
【文献】特開2011-126642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記各特許文献に開示された従来のパレット運用方法はいずれも、パレットを荷降ろしする場所に、あらかじめ2本以上の支持部材(特許文献1では「台材」、特許文献2では「敷材」、特許文献3では「架台」)を、パレットよりもやや広い間隔で、資材の両端部を支持し得るように並置しておく必要がある。したがって、それらの支持部材を保管場所から荷降ろし場所まで運んできたり、荷降ろし場所に適切な間隔で配置したりするのに手間がかかる。さらに、荷降ろしを補助する作業者等が上方(吊り上げ中の資材)に気を取られて、地面に置いた支持部材に躓く、といった危険もある。
【0008】
また、一般的に使用されているパレットは1.1m四方程度の正方形状のものが多いので、長寸の資材(例えば長さ3m前後の木材やパネル材等)を積載すると、資材の両端部がパレットの外側に大きくはみ出して不安定になる。しかし、前記各特許文献に開示された従来のパレット運用方法は、複数枚のパレットを連結して長寸の資材等を積載するような使用態様は想定していない。
【0009】
本願が開示する発明は前述のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、パレット上に積載した建築資材その他の荷物を搬送するに際し、その荷物の長短を問わずに搬送および目的地への荷降ろしを効率的かつ安全に実施することができて、荷降ろし後にはパレットだけを容易に回収できるパレットシステムと、そのパレットシステムを用いた荷物の搬送方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するため、本願が開示する発明のパレットシステムは、パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に交差する前記厘木の端面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである、との基本的構成を採用する。なお、この発明における厘木の「側面」とは、厘木の材軸に平行な細長い面のうち天面および接地面と交差する二面を指し、厘木の「端面」とは、厘木の材軸方向両端部に形成されて前記側面と交差する面(木口、小口)を指すものとする。
【0011】
前述の構成において、前記結合手段は、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対して前記厘木の端面側から斜め方向に締結されるボルト・ナット部材を含んで構成される、ものとすることができる。
【0012】
さらに、前記厘木の各端面近傍には、前記ボルト・ナット部材が前記厘木の左右両側に向けて二組ずつ配置されており、一本の厘木を挟んでその両側に二枚のパレット本体を結合し得るように構成された、ものとすることができる。
【0013】
さらに、前述の構成における二組のボルト・ナット部材が、互いの高さを上下方向にずらし、平面視において交差するように配置されているようにすると、より好ましい。
【0014】
また、本願が開示する発明に係る荷物の搬送方法は、前述のように構成されるパレットシステムを使用するものであって、前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する、ものとして特徴づけられる。
【0015】
さらにまた、本願が開示する発明に係る荷物の搬送方法は、前述のように構成されるパレットシステムを使用するものであって、複数枚の前記パレット本体を、それらの隣接側面間に前記厘木を一本ずつ挟んで連結し、最外側面にも前記厘木を結合して一体の連結体となし、少なくとも最外側面の厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で前記連結体を搬送し、荷物の保管場所に前記連結体を定置した後、前記複数枚のパレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する、ものとして特徴づけられる。
【発明の効果】
【0016】
前述のように構成されるパレットシステムと、それを使用した荷物の搬送方法によれば、パレット本体と厘木とを一体的に結合した状態で、その上に荷物を積載して搬送し、そのまま目的地に荷降ろしすることができる。つまり、先行技術において必要とされた台材、敷材、架台等の支持部材を、あらかじめ荷降ろしする場所に準備しておく必要がなくなる。したがって、それらの支持部材を保管場所から荷降ろし場所まで運んできたり、荷降ろし場所に適切な間隔で配置したりする手間は不要になり、また、荷降ろしを補助する作業者等が吊り荷に気を取られて支持部材に躓く、といった危険もなくなる。
【0017】
そして、荷降ろし後には、厘木の端面側からの操作によって厘木とパレット本体とを分離することにより、厘木の間からパレット本体を抜き出して回収することができる。
【0018】
さらに、複数枚のパレット本体と複数本の厘木とを一体に結合した連結体を使用すれば、長寸の建築資材等でも安定的に積載して搬送することができる。
【0019】
かくして、荷物の搬送に係る作業効率とパレット本体の運用効率を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係るパレットシステムの全体的構成を示す斜視図である。
図2図1のパレットシステムにおける、パレット本体と厘木との結合手段を模式的に示す平面図(a)および正面図(b)である。
図3図2に示した結合手段の拡大平面図(a)および拡大正面図(b)である。
図4】他の実施形態に係る結合手段の拡大平面図(a)および拡大正面図(b)である。
図5】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、荷物を積載する態様を示す説明図である。
図6】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、荷物をトラックに積み込む態様を示す説明図である。
図7】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、パレット本体と厘木とを分離する態様を示す説明図である。
図8】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、厘木から分離したパレット本体を下降させた態様を示す説明図である。
図9】前記パレットシステムを用いた荷物の搬送方法において、厘木から分離したパレット本体を回収した態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、パレットシステムの全体的構成を示す。このパレットシステム1は、少なくとも一枚のパレット本体2と、パレット本体2の枚数に「1」を加えた本数の厘木3と、を着脱可能に結合して構成される。パレット本体2が一枚の場合、厘木3はパレット本体2の対向二側面に着脱可能に結合され、パレット本体2が複数枚の場合、厘木3はパレット本体2同士が隣接する側面と、その側面に対向する最外側面とに結合される。
【0022】
パレット本体2は、荷物等の搬送や保管に使用される一般的なパレットと大略同様の形状を有して、少なくとも一方向の対向二側面に、フォークリフトの爪を挿し込めるフォーク挿入口21が設けられている。図面には合成樹脂製のパレット本体2を例示しているが、パレット本体2の材質はこれに限らず、木製でも金属製でも構わない。また、図示は省くが、例えば側縁部の適所に、揚重用のワイヤーロープやベルトスリングを掛止し得る掛金具等が取り付けられていてもよい。
【0023】
厘木とは、荷物や資材を横積みにして保管する際、地面に敷いて荷物等を地面から浮かせておくための枕木である。前述の特許文献1~3に記載された台材、敷材、架台等も、実質的にはこれと同様の部材である。一般的には十数cm程度の幅の角材を複数本、並置して、荷物等の下にフォークリフトの爪が入る隙間を作るようにすることが多い。この発明では図面に木製の角材を例示しているが、この発明に適用可能な厘木3の材質は木製に限らず、合成樹脂製でも金属製でも構わない。また、厘木3の断面形状については、例えば溝形やH形など、地面に安定して据え置ける適宜の形状を採用することもできる。
【0024】
このパレットシステム1は、厘木3をパレット本体2に結合して使用することを前提としており、厘木3の高さがパレット本体2の厚さを数十mm程度、上回るように設定されている。以下、その差分寸法をHとする。例示形態では、パレット本体2の厚さが120mm、厘木3の高さが150mmに設定されており、したがって差分寸法Hは30mmとなる。
【0025】
この厘木3が、パレット本体2のフォーク挿入口21を有する側面と交差する対向二側面(交差する二方向にフォーク挿入口21が設けられている場合は、いずれか一方向の対向二側面)に、パレット本体2と互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合される。厘木3の長さはパレット本体2の側面の長さと略同寸にして、厘木3の両端面と、パレット本体2のフォーク挿入口21を有する側面とが略面一になると望ましい。これにより、パレット本体2の外側から結合手段の操作を行うことができ、安全性に優れたパレットシステム1とすることができる。
【0026】
このパレットシステム1の要部は、パレット本体2と厘木3との結合手段にある。その結合手段は、厘木3が接地した状態で厘木3の端面側から操作し得るように構成される。以下、その具体的構成について詳述する。
【0027】
パレット本体2と厘木3との結合手段は基本的に、パレット本体2と厘木3との当接面に対して厘木3の端面から斜め方向に締結されるボルト・ナット部材を含んで構成される。図1図3に示した形態では、厘木3の端面の略中央部に浅いV字形の平面形状をなす欠込凹部34が形成されている。左右対称の入隅を形成する欠込凹部34の奥正面には、厘木3の左右の側面に向けて厘木3を水平に貫通する二か所のボルト挿通孔35が、高さを揃えて開口している。そのボルト挿通孔35にはパイプナット31がそれぞれ埋め込まれている。他方、パレット本体2の側面には、パイプナット31に連通するように天面からの高さを揃えて、インサートナット32が埋め込まれている。そして、厘木3の欠込凹部34側から長寸のボルト33がねじ込まれてインサートナット32に締結されることにより、厘木3とパレット本体2とが結合される。
【0028】
このような結合形態によれば、厘木3が接地した状態(地面、舗装面、床面その他、荷物の保管場所の略水平面に据え置かれた状態)でも、厘木3の端面側からのボルト操作によって厘木3とパレット本体2とを容易に結合・分離することができる。なお、例示形態では厘木3に全ねじのパイプナット31が埋め込まれているが、これを無ねじのパイプ材に替えて、ボルト33をパレット本体2側のインサートナット32だけに螺合させることもできる。さらに、欠込凹部34を設けることで、ボルト33が厘木3の端面側に露呈せず、安全性に優れたパレットシステム1とすることができる。
【0029】
図4は、パレット本体2と厘木3との結合手段に係る他の実施形態を示す。この形態では、厘木3の端面の両側部に面取り部36が形成されている。面取り部36は、厘木3とパレット本体2との高さの差分寸法Hに略相当する高さを下部に残して、それよりも上部側に成されている。左右対称の出隅を形成する面取り部36には、厘木3の左右の側面に向けて厘木3を水平に貫通する二本のボルト挿通孔35が、高さを違えて交差するように開口している。そして前述の形態と同様に、各ボルト挿通孔35にパイプナット31が埋め込まれるとともに、パレット本体2の側面にはインサートナット32が埋め込まれ、厘木3の面取り部36から長寸のボルト33がねじ込まれてインサートナット32に締結される。このような結合形態でも、厘木3が接地した状態で、厘木3の端面側からのボルト操作により厘木3とパレット本体2とを容易に結合・分離することができる。
【0030】
図4に示した形態では、厘木3の端面に開口する二本のボルト挿通孔35を上下にずらして削孔することで、左右のボルト33を互いに干渉させることなく脱着することが可能になる。また、二本のボルト挿通孔35を同じ高さで配置するよりも、パレット本体2との結合に必要なボルト33の長さを若干、短くすることができる。なお、ボルト33の長さを短くすることで、パレット本体2に対するボルト33の貫入長(r2)が図3に示した形態の貫入長(r1)より短くなったとしても、パレット本体2の側面に対する貫入角度(θ2)が図3に示した形態の貫入角度(θ1)よりも深くなるため、実質的な結合力(sinθ1、sinθ2)は同程度に発揮されることになる。
【0031】
このように、厘木3の端面から厘木3の材軸に対して斜めにボルト挿通孔35を削孔し、厘木3の端面側からボルト33を挿脱することにより、厘木3を間に挟んで複数枚のパレット本体2を連結することが可能になる。つまり、複数枚のパレット本体2を、それらの間に厘木3を一本ずつ挟み、最外側面にも厘木3を結合して一体の連結体となすことで、長寸の資材でも安定して積載することができる。連結するパレット本体2の枚数は、荷物の種類やサイズに応じて任意に設定可能である。
【0032】
このパレットシステム1では、厘木3の高さがパレット本体2の厚さよりも大きいので、厘木3とパレット本体2との結合・分離に際しては、その高さの差分寸法Hだけパレット本体2を一時的に持ち上げておけると都合が良い。そうすれば、結合時にはパイプナット31とインサートナット32の高さが合致し、分離時にはパレット本体2の重量がボルト33にかからなくなって、ボルト33の挿脱が容易になる。そのためには、地面とパレット本体2との間に、例えば楔状やブロック状の支物(飼い物:かいもの)等を挿し込む、といった方法を採ることができる。ただし、支物を挿し込む方法では、パレット本体2の四隅近傍を一様の高さで持ち上げるのに少々手間がかかり、その抜き取りも面倒である。そこで、図示は省くが、例えばパレット本体2の四隅近傍の底面側に、前記差分寸法Hだけ突出する収納式の支持脚を設けてもよい。また、厘木3から分離したパレット本体2を厘木3の間から引き出して回収しやすくするために、パレット本体2の底面側に収納式のキャスタを設けてもよい。なお、支持脚およびキャスタの構造や収納方式は、本願が開示する発明では特に限定しない。
【0033】
図5図9は、このパレットシステム1を用いた荷物の搬送方法の説明図である。図5に示すように、長寸の荷物Lを搬送する際には、あらかじめ複数枚(例示形態では二枚)のパレット本体2の隣接側面間に厘木3を一本ずつ挟み、最外側面にも厘木3を添えて、各結合箇所のボルト部・ナット部材を締結しておく。こうして複数枚のパレット本体2と複数本の厘木3とが一体に結合された連結体10の上に、搬送する荷物Lを、その両端部が少なくとも最外側面の厘木3の間に跨るように、好ましくは最外側面の厘木3の外側に若干はみ出すようにして載置する。必要に応じて、積み重ねられた荷物Lが崩れないように、ベルトスリング71等でパレット本体2と荷物Lとを一体的に束縛する。そして、図6に示すように、連結体10と荷物Lとを一緒にクレーン72で吊り上げるか、あるいはフォークリフトで持ち上げるなどしてトラック73に載せ、目的地まで搬送する。
【0034】
目的地では、図7に示すように、連結体10と荷物Lとを一緒に降ろして保管場所に定置し、ベルトスリング71等による束縛を解く。このパレットシステム1は、パレット本体2と厘木3とを結合した状態で荷物Lを搬送するので、荷降ろし場所にあらかじめ台材や敷材等の支持部材を運んできたり配置したりする必要がない。また、荷降ろしを補助する作業者等が吊り荷に気を取られて支持部材に躓く、といった危険もなくなる。
【0035】
続いて、パレット本体2の底面と地面との間に適当な支物37を挿し込むか、あるいは収納式の支持脚を立てるなどしてパレット本体2を支え、その状態で厘木3の端面からボルト33を緩めて、厘木3とパレット本体2との結合を解除する。緩めたボルト33は、厘木3から抜き取って保管しておいてもよいし、厘木3のパイプナット31に仮止めしておいてもよい。
【0036】
厘木3とパレット本体2との結合が解けたら、パレット本体2を支える支物37を除去するか、支持脚を収納する。すると。図8に示すように、パレット本体2だけが下降して接地する。その状態で、パレット本体2を厘木3の間から抜き出せば、図9に示すように、パレット本体2だけを速やかに回収することができる。このときに、パレット本体2の底面にキャスタが突出するように構成すれば、パレット本体2の抜き出しが容易になる。また、パレット本体2の正面に引手25が取り付けられていると、より好ましい。
【0037】
以上に説明したように、このパレットシステム1を用いることで、建築資材その他の荷物Lを効率的かつ安全に搬送し、保管場所に荷降ろしした後は、パレット本体2だけを厘木3から分離して容易に回収することができる。荷物Lの大きさが一枚のパレット本体2に載る程度であれば、一枚のパレット本体の対向二側面に二本の厘木3を結合して使用すればよいし、荷物が長寸になれば、その大きさに合わせて複数枚のパレットと複数本の厘木3とを結合することで、安定的に搬送・保管することが可能になる。
【0038】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に均等な動作原理を利用する範囲内で、あるいは例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
【0039】
また、本願が開示する実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
パレット本体と、前記パレット本体の対向二側面に着脱可能に結合される一対の厘木と、を組み合わせて構成され、
前記厘木は前記パレット本体の厚さを上回る高さを有し、
前記厘木と前記パレット本体とが互いの天面を面一に揃え、互いの側面同士を当接させて結合され、
前記パレット本体と前記厘木との結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に交差する前記厘木の端面側からの操作により、前記厘木が接地した状態で前記厘木と前記パレット本体とを分離し得るものである
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記2)
付記1に記載されたパレットシステムにおいて、
前記結合手段が、前記パレット本体と前記厘木との当接面に対して前記厘木の端面側から斜め方向に締結されるボルト・ナット部材を含んで構成される
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記3)
付記2に記載されたパレットシステムにおいて、
前記厘木の各端面近傍には、前記ボルト・ナット部材が、前記厘木の左右両側に向けて二組ずつ、配置されており、
一本の厘木を挟んでその両側に二枚のパレット本体を結合し得るように構成された
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記4)
付記3に記載されたパレットシステムにおいて、
前記二組のボルト・ナット部材が、互いの高さを上下方向にずらし、平面視において交差するように配置されている
ことを特徴とするパレットシステム。
(付記5)
付記1~4のいずれか一項に記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
前記パレット本体の対向二側面に厘木を結合し、少なくとも前記厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で、前記パレット本体と前記厘木とを一体に搬送し、
荷物の保管場所に前記パレット本体および厘木を定置した後、前記パレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
(付記6)
付記1~4のいずれか一項に記載されたパレットシステムを使用する荷物の搬送方法であって、
複数枚の前記パレット本体を、それらの隣接側面間に前記厘木を一本ずつ挟んで連結し、最外側面にも前記厘木を結合して一体の連結体となし、
少なくとも最外側面の厘木の間に跨るように荷物を載置した状態で前記連結体を搬送し、
荷物の保管場所に前記連結体を定置した後、前記複数枚のパレット本体と前記厘木との結合を解除して、前記パレット本体の天面を前記厘木の天面よりも下降させ、
前記パレット本体を前記厘木の間から抜き出して回収する
ことを特徴とする荷物の搬送方法。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願が開示する発明は、パレットまたはそれに類する略平板状のデッキ状部材を使用する様々な荷物の搬送手段として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 パレットシステム
10連結体
2 パレット本体
21 フォーク挿入口
25 引手
3 厘木
31 パイプナット
32 インサートナット
33 ボルト
34 欠込凹部
35 ボルト挿通孔
36 面取り部
37 支物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9