(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20240618BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20240618BHJP
H01S 5/02255 20210101ALI20240618BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20240618BHJP
H01S 5/02315 20210101ALI20240618BHJP
H01S 5/02325 20210101ALI20240618BHJP
H01S 5/0222 20210101ALI20240618BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/40
H01S5/02255
H01S5/02253
H01S5/02315
H01S5/02325
H01S5/0222
(21)【出願番号】P 2022171363
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2019538459の分割
【原出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018088876
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 陽平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕美
(72)【発明者】
【氏名】京野 孝史
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012063(JP,A)
【文献】特開2016-015415(JP,A)
【文献】特開2014-130256(JP,A)
【文献】特開2018-037531(JP,A)
【文献】特開平09-214038(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211943(WO,A1)
【文献】特開2018-014351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を形成する光形成部と、
前記光形成部を取り囲み、前記光形成部を封止する保護部材と、を備え、
前記光形成部は、
電子温度調整モジュール
と、前記電子温度調整モジュールと接触するように配置されるベース板と、前記電子温度調整モジュールと接触するように配置され、前記ベース板とは別体のMEMSベースと、を含むベース部材と、
前記
ベース板上に配置されるレーザダイオードと、
前記
ベース板上に配置され、前記レーザダイオードからの光をコリメート光に変換するレンズと、
前記
MEMSベース上に配置され、前記コリメート光を走査する走査ミラーを含むMEMSと、を含み、
前記保護部材は、
ベース体と、
前記ベース体に取り付けられた蓋部と、を含み、
前記電子温度調整モジュールによって、前記MEMSの温度が調整され、
前記光形成部は、前記保護部材によりハーメチックシールされており、前記保護部材により取り囲まれる空間には水分が除去された気体が封入されている、光モジュール。
【請求項2】
光を形成する光形成部と、
前記光形成部を取り囲み、前記光形成部を封止する保護部材と、を備え、
前記光形成部は、
電子温度調整モジュールと、前記電子温度調整モジュールと接触するように配置されるベース板と、前記電子温度調整モジュールと接触するように配置され、前記ベース板とは別体のMEMSベースと、を含むベース部材と、
前記ベース板上に配置される複数のレーザダイオードと、
前記ベース板上に配置され、前記複数のレーザダイオードからの光をコリメート光に変換するレンズと、
前記ベース板上に配置され、コリメート光に変換された前記複数のレーザダイオードからの光を合波するフィルタと、
前記MEMSベース上に配置され、合波された前記複数のレーザダイオードからの光を走査する走査ミラーを含むMEMSと、を含み、
前記保護部材は、
ベース体と、
前記ベース体に取り付けられた蓋部と、を含み、
前記電子温度調整モジュールによって、前記MEMSの温度が調整され、
前記光形成部は、前記保護部材によりハーメチックシールされており、前記保護部材により取り囲まれる空間には水分が除去された気体が封入されている、光モジュール。
【請求項3】
前記MEMSは圧電MEMSである、請求項1
または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記レーザダイオードはACC駆動により制御される、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記電子温度調整モジュールは、前記ベース体と前記ベース板との間に配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関するものである。
【0002】
本出願は、2018年5月2日出願の日本出願第2018-088876号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
複数の半導体発光素子からの光が合波される発光部と、発光部からの光を走査する走査部とを含む光モジュールが知られている(たとえば、特開2014-186068号公報(特許文献1)、特開2014-56199号公報(特許文献2)および国際公開第2007/120831号(特許文献3)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-186068号公報
【文献】特開2014-56199号公報
【文献】国際公開第2007/120831号
【発明の概要】
【0005】
本開示に従った光モジュールは、光を形成する光形成部と、光形成部を取り囲み、光形成部を封止する保護部材と、を備える。光形成部は、電子温度調整モジュールを含むベース部材と、ベース部材上に配置される複数のレーザダイオードと、ベース部材上に配置され、複数のレーザダイオードからの光を合波するフィルタと、ベース部材上に配置され、フィルタにより合波された光のビーム形状を整形するビーム整形部と、ベース部材上に配置され、ビーム整形部で整形された光を走査する走査ミラーを含むMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と、を含む。保護部材は、ベース体と、ベース体に対して溶接された蓋部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、キャップを取り外した状態における実施の形態1の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、キャップを取り外した状態における実施の形態1の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1における光モジュールを基板上に配置した状態を示す概略平面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1における光モジュールを基板上に配置した状態を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、光モジュールの動作時における信号の流れを示すブロック図である。
【
図10】
図10は、キャップを取り外した状態における実施の形態2の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図11】
図11は、キャップを取り外した状態における実施の形態2の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2における光モジュールの構造を示す概略図である。
【
図13】
図13は、キャップを取り外した状態における実施の形態3の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図14】
図14は、キャップを取り外した状態における実施の形態3の光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
【
図15】
図15は、実施の形態3における光モジュールの構造を示す概略図である。
【
図16】
図16は、実施の形態3における光モジュールの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
光モジュールにおいては、信頼性が重要である。また、光モジュールは、様々な環境温度のもとで使用される場合がある。そのため、光モジュールにおいては、温度変化に対する動作の安定性が求められている。
【0008】
そこで、信頼性および温度変化に対する動作の安定性に優れた光モジュールを提供することを目的の1つとする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示の光モジュールによれば、信頼性および温度変化に対する動作の安定性に優れた光モジュールを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示の光モジュールは、光を形成する光形成部と、光形成部を取り囲み、光形成部を封止する保護部材と、を備える。光形成部は、電子温度調整モジュールを含むベース部材と、ベース部材上に配置される複数のレーザダイオードと、ベース部材上に配置され、複数のレーザダイオードからの光を合波するフィルタと、ベース部材上に配置され、フィルタにより合波された光のビーム形状を整形するビーム整形部と、ベース部材上に配置され、ビーム整形部で整形された光を走査する走査ミラーを含むMEMSと、を含む。保護部材は、ベース体と、ベース体に対して溶接された蓋部と、を含む。
【0011】
本開示の光モジュールは、ベース体と、ベース体に対して溶接された蓋部と、を含み、光形成部を封止する保護部材を備えている。すなわち、光形成部は、保護部材によりハーメチックシールされている。これにより、光形成部に含まれるレーザダイオード、MEMSなどが外部環境から有効に保護され、高い信頼性が確保される。また、本開示の光モジュールのMEMSは、電子温度調整モジュールを含むベース部材上に配置されている。一般に、走査ミラーを含むMEMSにおいては、走査ミラーの光学的振れ角が温度によって変化する。本開示の光モジュールにおいては、ベース部材に含まれる電子温度調整モジュールによりMEMSの温度を適切な範囲に調整することができる。そのため、本開示の光モジュールによれば、温度変化に対する動作の安定性を向上させることができる。以上のように、本開示の光モジュールによれば、信頼性および温度変化に対する動作の安定性に優れた光モジュールを提供することができる。
【0012】
上記光モジュールにおいて、上記MEMSは圧電MEMSであってもよい。
【0013】
走査ミラーを含む圧電MEMSは、サイズが小さく、光学的触れ角が大きいという利点を有する。一方、走査ミラーを含む圧電MEMSは、走査ミラーの光学的振れ角の温度による変化が大きいという欠点を有する。この欠点は、本開示の光モジュールにおいては、ベース部材に含まれる電子温度調整モジュールによりMEMSの温度調整を実施することにより補うことができる。このように、圧電MEMSは、本開示の光モジュールに含まれるMEMSとして好適である。
【0014】
上記光モジュールにおいて、ビーム整形部はアパーチャ部材であってもよい。
【0015】
MEMSの走査ミラーに入射する光の進行方向に垂直な断面における形状を整形するビーム整形部としては、レンズ、プリズムなどを採用することもできる。しかし、これらの部品を採用した場合、光モジュールの製造コストが上昇するという問題がある。ビーム整形部としてアパーチャ部材を採用することにより、光モジュールの製造コストを抑制することができる。
【0016】
上記光モジュールにおいて、上記複数のレーザダイオードはACC(Auto Current Control)駆動により制御されてもよい。
【0017】
レーザダイオードは、たとえばAPC(Auto Power Control)駆動により制御することができる。APC駆動においては、レーザダイオードから出射された光の強度に基づいてレーザダイオードに流れる電流値を制御するため、レーザダイオードに流れる電流とレーザダイオードから出射される光の強度との関係が温度の変化によって変化した場合でも、光の強度をより確実に制御することができる。しかし、APC駆動を実施するためには、レーザダイオードからの光を受光素子により受光し、得られた光の強度をレーザダイオードに流す電流値の制御にフィードバックする必要がある。そのため、受光素子が必要となって、光モジュールの製造コストが上昇するという問題がある。一方、ACC駆動においては、所望の光の強度に基づいてレーザダイオードを流れる電流値が決定され、所望の光の強度が変化しない限り、電流値が一定となるように制御される。そのため、レーザダイオードからの光を受光する受光素子を省略することができ、光モジュールの製造コストを低減することができる。しかし、温度の変化によってレーザダイオードに流れる電流とレーザダイオードから出射される光の強度との関係が変化すると、光の強度を適切に制御することが難しくなるという欠点を有する。この欠点は、本開示の光モジュールにおいては、ベース部材に含まれる電子温度調整モジュールによりレーザダイオードの温度調整を行うことにより補うことができる。
【0018】
また、レーザダイオードからの光の一部を受光素子へと入射させる必要が無いため、光のロスを低減することができる。そのため、たとえばビーム整形部としてアパーチャ部材を採用した場合でも、光モジュールから出力する光の強度を十分に確保することが容易となる。このように、ACC制御が採用されることにより、本開示の光モジュールの製造コストを低減するとともに、光のロスを低減することができる。
【0019】
上記光モジュールにおいて、上記複数のレーザダイオードは、赤色の光を出射するレーザダイオード、緑色の光を出射するレーザダイオードおよび青色の光を出射するレーザダイオードを含んでいてもよい。このようにすることにより、これらの光を合波し、所望の色の光を形成することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示にかかる光モジュールの実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、
図1~
図6を参照して実施の形態1について説明する。
図1は、実施の形態1における光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
図2は、
図1とは異なる視点から見た光モジュールの構造を示す概略斜視図である。
図3は、
図1のキャップ40を取り外した状態に対応する斜視図である。
図4は、
図2のキャップ40を取り外した状態に対応する斜視図である。
図5は、キャップ40を断面にて、他の部品を平面視にて示したX-Y平面における概略図である。
図6は、キャップ40を断面にて、他の部品を平面視にて示したX-Z平面における概略図である。
【0022】
図1~
図4を参照して、本実施の形態における光モジュール1は、光を形成する光形成部20と、光形成部20を取り囲み、光形成部20を封止する保護部材2とを備える。保護部材2は、ベース体としての基部10と、基部10に対して溶接された蓋部であるキャップ40と、を含む。つまり、光形成部20は、保護部材2によりハーメチックシールされている。基部10は、平板状の形状を有する。光形成部20は、基部10の一方の主面10A上に配置される。キャップ40は、光形成部20を覆うように基部10の一方の主面10A上に接触して配置される。基部10の他方の主面10B側から一方の主面10A側まで貫通し、一方の主面10A側および他方の主面10B側の両側に突出するように、複数のリードピン51が基部10に設置されている。基部10とキャップ40とにより取り囲まれる空間には、たとえば乾燥空気などの水分が低減(除去)された気体が封入されている。キャップ40には、窓42が形成されている。窓42には、たとえば平行平板状のガラス部材が嵌め込まれている。本実施の形態において、保護部材2は、内部を気密状態とする気密部材である。
【0023】
図3~
図6を参照して、光形成部20は、ベース部材4と、レーザダイオード81,82,83と、フィルタ97,98,99と、ビーム整形部としてのアパーチャ部材55と、MEMS120とを含む。
【0024】
ベース部材4は、電子温度調整モジュール30と、ベース板60と、MEMSベース65とを含む。電子温度調整モジュール30は、平板状の形状を有する吸熱板31および放熱板32と、電極(図示しない)を挟んで吸熱板31と放熱板32との間に並べて配置される半導体柱33とを含む。吸熱板31および放熱板32は、たとえばアルミナからなっている。放熱板32が基部10の一方の主面10Aに接触するように、電子温度調整モジュール30は基部10の一方の主面10Aに配置される。
【0025】
吸熱板31に接触するように、吸熱板31上にベース板60と、MEMSベース65とが配置される。ベース板60は、板状の形状を有する。ベース板60は、平面的に見て長方形形状(正方形形状)を有する一方の主面60Aを有している。ベース板60の一方の主面60Aは、レンズ搭載領域61と、チップ搭載領域62と、フィルタ搭載領域63とを含んでいる。チップ搭載領域62は、一方の主面60Aの一の辺を含む領域に、当該一の辺に沿って形成されている。レンズ搭載領域61は、チップ搭載領域62に隣接し、かつチップ搭載領域62に沿って配置されている。フィルタ搭載領域63は、一方の主面60Aの上記一の辺と向かい合う他の辺を含む領域に、当該他の辺に沿って配置されている。チップ搭載領域62、レンズ搭載領域61およびフィルタ搭載領域63は、互いに平行である。
【0026】
レンズ搭載領域61におけるベース板60の厚みと、フィルタ搭載領域63におけるベース板60の厚みとは、等しい。レンズ搭載領域61とフィルタ搭載領域63とは同一平面に含まれる。チップ搭載領域62におけるベース板60の厚みは、レンズ搭載領域61およびフィルタ搭載領域63に比べて大きい。その結果、レンズ搭載領域61およびフィルタ搭載領域63に比べて、チップ搭載領域62の高さ(レンズ搭載領域61を基準とした高さ、すなわちレンズ搭載領域61に垂直な方向における高さ)が高くなっている。
【0027】
チップ搭載領域62上には、平板状の第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73が、一方の主面60Aの上記一の辺に沿って並べて配置されている。第1サブマウント71と第3サブマウント73とに挟まれるように、第2サブマウント72が配置されている。第1サブマウント71上に、第1レーザダイオードとしての赤色レーザダイオード81が配置されている。第2サブマウント72上に、第2レーザダイオードとしての緑色レーザダイオード82が配置されている。第3サブマウント73上に、第3レーザダイオードとしての青色レーザダイオード83が配置されている。赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸の高さ(一方の主面60Aのレンズ搭載領域61を基準面とした場合の基準面と光軸との距離;Z軸方向における基準面との距離)は、第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73により調整されて一致している。
【0028】
レンズ搭載領域61上には、第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93が配置されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ表面がレンズ面となっているレンズ部91A,92A,93Aを有している。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、レンズ部91A,92A,93Aとレンズ部91A,92A,93A以外の領域とが一体成型された構造を有する。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93のレンズ部91A,92A,93Aの中心軸、すなわちレンズ部91A,92A,93Aの光軸は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸に一致する。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズを変換する(ある投影面におけるビーム形状を所望の形状に整形する)。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93により、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズが一致するようにスポットサイズが変換される。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93により、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光がコリメート光に変換される。
【0029】
フィルタ搭載領域63上には、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99が配置される。赤色レーザダイオード81と第1レンズ91とを結ぶ直線上に、第1フィルタ97が配置される。緑色レーザダイオード82と第2レンズ92とを結ぶ直線上に、第2フィルタ98が配置される。青色レーザダイオード83と第3レンズ93とを結ぶ直線上に、第3フィルタ99が配置される。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、それぞれ互いに平行な主面を有する平板状の形状を有している。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、たとえば波長選択性フィルタである。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、たとえば誘電体多層膜フィルタである。
【0030】
より具体的には、第1フィルタ97は、赤色の光を反射する。第2フィルタ98は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する。第3フィルタ99は、赤色の光および緑色の光を透過し、青色の光を反射する。このように、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、特定の波長の光を選択的に透過および反射する。その結果、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99は、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射された光を合波する。
【0031】
アパーチャ部材55は、吸熱板31上に配置される。アパーチャ部材55は、第3フィルタ99から見て第2フィルタ98とは反対側に配置される。アパーチャ部材55は、平板状の形状を有する。アパーチャ部材55は、アパーチャ部材55を厚み方向に貫通する貫通孔55Aを有する。本実施の形態において、貫通孔55Aの延在方向に垂直な断面における形状は円形である。貫通孔55Aが、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99において合波された光の光路に対応する領域に位置するように、アパーチャ部材55は配置される。貫通孔55Aは、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99において合波された光の光路に沿って延在する。レーザダイオード81,82,83から出射された光の、光の進行方向に垂直な断面における形状は楕円形である。光の進行方向に垂直な断面において、フィルタ97,98,99にて合波された光の長径よりも貫通孔55Aの直径が小さく、かつ貫通孔55Aの中心軸と合波された光の光軸が一致するように、アパーチャ部材55は配置される。その結果、フィルタ97,98,99にて合波された光の進行方向に垂直な断面における形状は、アパーチャ部材55の貫通孔55Aの内径より小さな形状に整形される。
【0032】
MEMSベース65は、三角柱(直三角柱)形状を有する。三角柱の一の側面において吸熱板31に接触するように、MEMSベース65は吸熱板31上に配置される。MEMSベース65の他の側面上に、走査ミラー121を含むMEMS120が配置される。MEMSベース65およびMEMS120は、アパーチャ部材55から見て第3フィルタ99とは反対側に配置される。本実施の形態において、走査ミラー121は円盤状の形状を有する。走査ミラー121が、アパーチャ部材55において整形された光の光路に対応する領域に位置するように、MEMS120は配置される。走査ミラー121は、所望の方向および角度で揺動させることができる。その結果、走査ミラー121を含むMEMS120により、アパーチャ部材55において整形された光を走査することができる。
【0033】
図5を参照して、赤色レーザダイオード81、第1レンズ91のレンズ部91Aおよび第1フィルタ97は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。緑色レーザダイオード82、第2レンズ92のレンズ部92Aおよび第2フィルタ98は、緑色レーザダイオード82の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。青色レーザダイオード83、第3レンズ93のレンズ部93Aおよび第3フィルタ99は、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。
【0034】
赤色レーザダイオード81の出射方向、緑色レーザダイオード82の出射方向および青色レーザダイオード83の出射方向は、互いに平行である。第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99の主面は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向(Y軸方向)に対して45°傾斜している。
【0035】
基部10とベース板60およびMEMSベース65との間には、電子温度調整モジュール30が配置されている。吸熱板31がベース板60およびMEMSベース65に接触して配置される。放熱板32は、基部10の一方の主面10Aに接触して配置される。本実施の形態において、電子温度調整モジュール30は、電子冷却モジュールであるペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。本実施の形態では、電子温度調整モジュール30に電流を流すことにより、吸熱板31に接触するベース板60およびMEMSベース65の熱が基部10へと移動し、ベース板60およびMEMSベース65が冷却される。その結果、レーザダイオード81,82,83およびMEMS120の温度が適切な温度範囲に調整される。これにより、たとえば自動車に搭載される場合など、温度が高くなる環境下においても光モジュール1を使用することが可能となる。また、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の温度を適正な範囲に維持することで、所望の色の光を精度よく形成することが可能となる。さらに、MEMS120を適切な温度に調整することにより、温度変化に対する動作の安定性を向上させることができる。
【0036】
次に、本実施の形態における光モジュール1の動作について説明する。
図5を参照して、赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光は、光路L
1に沿って進行する。この赤色の光は、第1レンズ91のレンズ部91Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光がコリメート光に変換される。第1レンズ91においてスポットサイズが変換された赤色の光は、光路L
1に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。
【0037】
第1フィルタ97は赤色の光を反射するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、第2フィルタ98に入射する。第2フィルタ98は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、第3フィルタ99に入射する。第3フィルタ99は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、アパーチャ部材55に到達する。アパーチャ部材55に到達した光は、アパーチャ部材55により整形され、光路L4に沿ってさらに進行し、走査ミラー121に到達する。
【0038】
緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光は、光路L2に沿って進行する。この緑色の光は、第2レンズ92のレンズ部92Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光がコリメート光に変換される。第2レンズ92においてスポットサイズが変換された緑色の光は、光路L2に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。
【0039】
第2フィルタ98は緑色の光を反射するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、第3フィルタ99に入射する。第3フィルタ99は緑色の光を透過するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、アパーチャ部材55に到達する。アパーチャ部材55に到達した緑色の光は、アパーチャ部材55により整形され、光路L4に沿ってさらに進行し、走査ミラー121に到達する。
【0040】
青色レーザダイオード83から出射された青色の光は、光路L3に沿って進行する。この青色の光は、第3レンズ93のレンズ部93Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば青色レーザダイオード83から出射された青色の光がコリメート光に変換される。第3レンズ93においてスポットサイズが変換された青色の光は、光路L3に沿って進行し、第3フィルタ99に入射する。
【0041】
第3フィルタ99は青色の光を反射するため、青色レーザダイオード83から出射された光は光路L4に沿ってさらに進行し、アパーチャ部材55に到達する。アパーチャ部材55に到達した青色の光は、アパーチャ部材55により整形され、光路L4に沿ってさらに進行し、走査ミラー121に到達する。
【0042】
このようにして、赤色、緑色および青色の光が合波されて形成された光(合波光)が光路L
4に沿って走査ミラー121へと到達する。そして、
図6を参照して、走査ミラー121が駆動されることにより合波光が走査され、光路L
10に沿って窓42を通ってキャップ40の外部へと出射する合波光により文字、図形などが描画される。
【0043】
上述のように、光モジュール1は、基部10と、基部10に対して溶接されたキャップ40と、を含み、光形成部20を封止する保護部材2を備えている。つまり、光形成部20は、保護部材2によりハーメチックシールされている。これにより、光形成部20に含まれるレーザダイオード81,82,83、MEMS120などが外部環境から有効に保護され、高い信頼性が確保されている。MEMS120は、電子温度調整モジュール30を含むベース部材4上に配置されている。そのため、電子温度調整モジュール30によりMEMS120の温度を適切に調整することが可能となり、温度変化に対する動作の安定性が向上する。以上のように、光モジュール1は、信頼性および温度変化に対する動作の安定性に優れた光モジュールとなっている。ハーメチックシールの気密性はHe(ヘリウム)リークレートで1×10-10(Pa・m3/s)以下であることが好ましく、さらに1×10-13(Pa・m3/s)以下であることが好ましい。これにより、MEMS120、レーザダイオード81,82,83等への結露を抑制することが容易となる。また、熱伝導率の小さい電子温度調整モジュール30上にMEMS120、レーザダイオード81,82,83等が配置されることにより、外気温が低下し、保護部材2の温度が露点以下となった場合でも、保護部材2に結露が発生し、MEMS120、レーザダイオード81,82,83等に結露が発生することが抑制される。
【0044】
MEMS120は、圧電MEMSであることが好ましい。このようにすることにより、MEMS120のサイズを小さくするとともに、走査ミラー121の触れ角を大きくすることができる。
【0045】
光モジュール1のレーザダイオード81,82,83はACC駆動により制御される。これにより、レーザダイオード81,82,83からの光を受光する受光素子を省略することができるため、光モジュールの製造コストを低減することができる。
【0046】
また、光モジュール1においては、ビーム整形部としてアパーチャ部材55が採用されている。ビーム整形部としては、レンズ、プリズムなどを採用することもできるが、ビーム整形部としてアパーチャ部材55を採用することにより、光モジュールの製造コストを抑制することができる。さらに、レーザダイオード81,82,83はACC駆動により制御されるため、光の強度を検知する目的でレーザダイオード81,82,83からの光の一部を受光素子へと入射させる必要が無い。そのため、ビーム整形部としてのアパーチャ部材55へと到達する光の強度が高くなるため、アパーチャ部材55において光の強度が低下した場合でも、十分な強度の光を光モジュール1の外部へと出射させることができる。
【0047】
また、光モジュール1において、走査ミラー121の外径は、アパーチャ部材55により整形された光のビーム径(光の進行方向に垂直な断面における光の直径)以上である。これにより、MEMS120に到達したにもかかわらず走査ミラー121において走査されない光が、走査ミラー121以外の場所で反射し、迷光の原因となることを抑制することができる。
【0048】
次に、光モジュール1の基板への配置状態の一例について
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、光モジュールを基板上に配置した状態を示す概略平面図である。
図8は、光モジュールを基板上に配置した状態を示す概略断面図であって、
図7の線分VIII-VIIIに沿う断面図に対応する。
図7および
図8を参照して、光モジュール1は、たとえば所望の回路が形成されたプリント基板101に設置して動作させることができる。プリント基板101は、ヒートシンク107上に配置することができる。ヒートシンク107は、突出部107Aを有する。プリント基板101には、突出部107Aに対応する形状の切欠き部101Aが形成されている。そして、突出部107Aが切欠き部101Aにおいてプリント基板101を厚み方向に貫通するように、プリント基板101はヒートシンク107上に配置される。
【0049】
プリント基板101上には、LD(Laser Diode)を駆動するためのドライバIC(Integrated Circuit)であるLDドライバIC102と、MEMSを駆動するためのドライバICであるMEMSドライバIC104と、メインIC103とが配置される。メインIC103は、たとえばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などである。切欠き部101Aを取り囲むプリント基板101の外縁に沿って、LDドライバIC102、メインIC103およびMEMSドライバIC104が配置される。LDドライバIC102とMEMSドライバIC104とは、切欠き部101Aを挟むように配置される。
【0050】
プリント基板101のLDドライバIC102が配置される領域と切欠き部101Aとの間には、光モジュール1のレーザダイオード81,82,83の駆動に関係するリードピン51を受け入れ可能な第1モジュールインターフェイス106Aが配置されている。プリント基板101のMEMSドライバIC104が配置される領域と切欠き部101Aとの間には、光モジュール1のMEMS120の駆動に関係するリードピン51を受け入れ可能な第2モジュールインターフェイス106Cが配置されている。プリント基板101のメインIC103が配置される領域と切欠き部101Aとの間には、上記以外のリードピン51を受け入れ可能な第3モジュールインターフェイス106Bが配置されている。そして、モジュールインターフェイス106A,106B,106Cに光モジュール1のリードピン51が受け入れられるように、光モジュール1がプリント基板101上に設置される。リードピン51とモジュールインターフェイス106A,106B,106Cとは、たとえば半田により接合される。
【0051】
次に、プリント基板101上に配置された光モジュール1の制御方法の一例について、
図7~
図9を参照して説明する。
図9は、光モジュール1の動作時における信号の流れを示すブロック図である。
図9を参照して、映像信号S
1がメインIC103に入力されると、メインIC103は、LDドライバIC102に対してビデオ信号やACC信号などのLD制御信号S
2を出力するとともに、MEMSドライバIC104に対してMEMS制御信号S
4を出力する。LDドライバIC102は、LD制御信号S
2に基づいてLD駆動信号S
6を出力して光モジュール1のレーザダイオード81,82,83を駆動する。一方、MEMSドライバIC104は、MEMS制御信号S
4に基づいてMEMS駆動信号S
8を出力して光モジュール1のMEMS120を駆動する。このとき、MEMS120の走査ミラー121の光学的振れ角がモニタ素子(図示しない)により確認され、フィードバック信号S
9がMEMSドライバIC104へと出力される。MEMSドライバIC104は、フィードバック信号S
9に基づいてPLL(Phase locked Loop)信号S
5をメインIC103へと出力する。そして、PLL信号S
5に含まれる情報に基づいて補正されたMEMS制御信号S
4がメインIC103からMEMSドライバIC104へと出力される。破線110に囲まれる領域内の信号S
1、S
2、S
4およびS
5は、デジタル信号である。破線115に囲まれる領域内の信号S
6、S
8およびS
9は、アナログ信号である。
【0052】
ここで、本実施の形態における光モジュール1では、レーザダイオード81,82,83およびMEMS120を含む光形成部20が保護部材2内に配置されている。そのため、上述のようにプリント基板101上に直接実装することが容易となり、プリント基板の削減によるコスト低減に寄与することができる。また、上述のように、レーザダイオード81,82,83の駆動に関係するリードピン51を受け入れる第1モジュールインターフェイス106AとLDドライバIC102とを近接して配置することが容易となり、LDドライバIC102とレーザダイオード81,82,83の駆動に関係するリードピン51との間の線路長を短くすることができる。LDドライバIC102から光モジュール1へと出力されるLD駆動信号S6はアナログ信号であるため、LDドライバIC102と光モジュール1との間のインピーダンスが応答性に与える影響が特に大きい。本実施の形態のようにLDドライバIC102とレーザダイオード81,82,83の駆動に関係するリードピン51との間の線路長を短くすることで、インピーダンスを低減し、光出力の応答性を向上させることができる。その結果、本実施の形態の光モジュール1は、画素数の増加等にも対応が容易な光モジュールとなっている。
【0053】
(実施の形態2)
次に、
図10~
図12を参照して、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図10は、キャップを取り外した状態における実施の形態2の光モジュールの構造を示す概略斜視図であって、実施の形態1の
図3に対応する。
図11は、キャップを取り外した状態における実施の形態2の光モジュールの構造を示す概略斜視図であって、実施の形態1の
図4に対応する。
図12は、実施の形態2における光モジュールの構造を示す概略図であって、実施の形態1の
図5に対応する。
【0054】
図10~
図12および
図3~
図5を参照して、実施の形態2の光モジュールは、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の光モジュール1は、レーザダイオードの制御方式において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0055】
具体的には、実施の形態2の光モジュール1の光形成部20は、受光素子であるフォトダイオード94を含んでいる。フォトダイオード94は、ベース板60の一方の主面60A上に配置されている。ベース板60は、実施の形態1の場合に対して、フォトダイオード94を保持する領域が追加されている。フォトダイオード94は、受光部94Aを含む。青色レーザダイオード83、第3レンズ93のレンズ部93A、第3フィルタ99およびフォトダイオード94の受光部94Aは、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。本実施の形態において、第3フィルタ99は、赤色および緑色の光の大部分を透過するものの、一部を反射する。第3フィルタ99は、青色の光の大部分を反射するものの、一部を透過する。
【0056】
次に、実施の形態2の光モジュール1の動作について、実施の形態1と異なる部分について説明する。第3フィルタ99に到達した赤色および緑色の光の一部は、第3フィルタ99において反射され、光路L5およびL6に沿って進行してフォトダイオード94の受光部94Aへと入射する。また、第3フィルタ99に到達した青色の光の一部は、第3フィルタ99を透過し、光路L6に沿って進行してフォトダイオード94の受光部94Aへと入射する。そして、フォトダイオード94において受光された赤色、緑色および青色の光の強度の情報に基づいて赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83に流れる電流値が調整される。すなわち、実施の形態2においては、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83は、APC駆動により制御される。レーザダイオード81,82,83の厳密な制御が必要な場合、このようにACC駆動に代えてAPC駆動を採用してもよい。
【0057】
(実施の形態3)
次に、
図13~
図16を参照して、他の実施の形態である実施の形態3について説明する。
図13は、キャップを取り外した状態における実施の形態3の光モジュールの構造を示す概略斜視図であって、実施の形態1の
図3に対応する。
図14は、キャップを取り外した状態における実施の形態3の光モジュールの構造を示す概略斜視図であって、実施の形態1の
図4に対応する。
図15は、実施の形態3における光モジュールの構造を示す概略図であって、実施の形態1の
図5に対応する。
図16は、実施の形態3における光モジュールの構造を示す概略図であって、光モジュール1をX軸方向に沿った方向から見た図に対応する。
図16は、キャップ40を断面にて、他の部品を平面視にて示したY-Z平面における概略図である。
【0058】
図13~
図16を参照して、フィルタ搭載領域63に対応するベース板60の他方の主面60Bと基部10の一方の主面10Aとは、外部に開放された空隙Gを挟んで対向している。空隙Gの高さ、すなわち、Z軸方向における主面10Aと主面60Bとの間隔は、電子温度調整モジュール30のZ軸方向の高さに対応する。チップ搭載領域62およびレンズ搭載領域61に対応するベース板60の領域と、電子温度調整モジュール30とが接触している。
【0059】
このような構造を採用することにより、光モジュール1が配置される環境の温度が大きく変化したとしても、チップ搭載領域62およびレンズ搭載領域61の反り量に比べて、フィルタ搭載領域63の反り量を低減することができる。そのため、ベース板60上に搭載されたフィルタ97,98,99が、ベース板60の反りによって傾くことを抑制することができる。その結果、フィルタ97,98,99によって合波される赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83からの光の光軸のずれを抑制することができる。
【0060】
また、ベース板60のレンズ搭載領域61に対応する領域とフィルタ搭載領域63に対応する領域との間には、一対のベース板切欠き部69が形成されている。一方のベース板切欠き部69は、第1レンズ91と第1フィルタ97との間の領域に形成されている。他方のベース板切欠き部69は、第3レンズ93と第3フィルタ99との間の領域に形成されている。
【0061】
このような構造を採用することにより、レンズ搭載領域61における反りがフィルタ搭載領域63に影響することを抑制することができる。
【0062】
さらに、チップ搭載領域62に対応するベース板60の領域は、青色レーザダイオード83が搭載される領域と緑色レーザダイオード82が搭載される領域との間、および緑色レーザダイオード82が搭載される領域と赤色レーザダイオード81が搭載される領域との間に、チップ搭載領域62の他の領域よりも厚みの小さい薄肉部68を含む。薄肉部68は、チップ搭載領域62のY軸方向(レーザダイオード81,82,83の光の出射方向)の全域にわたって形成されている。
【0063】
このような構造を採用することにより、レンズ搭載領域61における反り量とチップ搭載領域62における反り量との差を低減することができる。その結果、レーザダイオード81,82,83とレンズ91,92,93との間の光軸のずれを抑制することができる。
【0064】
このように、本実施の形態の構造を採用することにより、光モジュール1は外部の温度が大きく変動した場合でも安定して動作することが可能となる。
【0065】
なお、上記実施の形態においては、3個のレーザダイオードからの光が合波される場合について説明したが、レーザダイオードは2個であってもよく、4個以上であってもよい。また、上記実施の形態においては、第1フィルタ97、第2フィルタ98および第3フィルタ99として波長選択性フィルタが採用される場合を例示したが、これらのフィルタは、たとえば偏波合成フィルタであってもよい。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 光モジュール、2 保護部材、4 ベース部材、10 基部、10A,10B 主面、20 光形成部、30 電子温度調整モジュール、31 吸熱板、32 放熱板、33 半導体柱、40 キャップ、42 窓、51 リードピン、55 アパーチャ部材、55A 貫通孔、60 ベース板、60A,60B 主面、61 レンズ搭載領域、62 チップ搭載領域、63 フィルタ搭載領域、65 MEMSベース、68 薄肉部、69 ベース板切欠き部、71 第1サブマウント、72 第2サブマウント、73 第3サブマウント、81 赤色レーザダイオード、82 緑色レーザダイオード、83 青色レーザダイオード、91 第1レンズ、91A,92A,93A レンズ部、92 第2レンズ、93 第3レンズ、94 フォトダイオード、94A 受光部、97 第1フィルタ、98 第2フィルタ、99 第3フィルタ、101 プリント基板、101A 切欠き部、102 LDドライバIC、103 メインIC、104 MEMSドライバIC、106A 第1モジュールインターフェイス、106B 第2モジュールインターフェイス、106C 第3モジュールインターフェイス、107 ヒートシンク、107A 突出部、120 MEMS、121 走査ミラー。