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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240618BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/145 C
H03H9/145 Z
H03H9/25 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022517692
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016309
(87)【国際公開番号】W WO2021220936
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020078148
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宗久
(72)【発明者】
【氏名】大門 克也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 英樹
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059208(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/123810(WO,A1)
【文献】特開2018-182544(JP,A)
【文献】特開2016-119569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、複数の電極指を有するIDT電極と、
前記圧電性基板上における前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器である、第1の反射器及び第2の反射器と、
を備え、
前記複数の電極指が一方向に延びており、
前記IDT電極の隣り合う前記電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている部分が交叉領域であり、前記交叉領域が、前記複数の電極指が延びる方向における中央側に位置している中央領域と、前記中央領域の前記複数の電極指が延びる方向両側に配置されている一対のエッジ領域と、を有し、
前記一対のエッジ領域を含み、かつ前記一対のエッジ領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が一対の拡張エッジ領域であり、
前記一対の拡張エッジ領域において一対の音速調整部が設けられており、前記一対の音速調整部における音速が前記中央領域における音速よりも低く、
前記一対の音速調整部のうち一方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第1の端部と、前記第2の反射器側に位置する第2の端部と、を有し、前記一対の音速調整部のうち他方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第3の端部と、前記第2の反射器側に位置する第4の端部と、を有し、
前記第1の端部、前記第2の端部、前記第3の端部及び前記第4の端部が、弾性波伝搬方向において前記一対のエッジ領域の外側に位置し、
前記第1の端部及び前記第3の端部と、前記第2の端部及び前記第4の端部との2組の端部のうち少なくとも一方が、前記複数の電極指が延びる方向において重なっておらず、
前記一対の音速調整部が、前記第1の反射器及び前記第2の反射器の弾性波伝搬方向における外側に至っている、弾性波装置。
【請求項2】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、複数の電極指を有するIDT電極と、
前記圧電性基板上における前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器である、第1の反射器及び第2の反射器と、
を備え、
前記複数の電極指が一方向に延びており、
前記IDT電極の隣り合う前記電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている部分が交叉領域であり、前記交叉領域が、前記複数の電極指が延びる方向における中央側に位置している中央領域と、前記中央領域の前記複数の電極指が延びる方向両側に配置されている一対のエッジ領域と、を有し、
前記一対のエッジ領域を含み、かつ前記一対のエッジ領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が一対の拡張エッジ領域であり、
前記一対の拡張エッジ領域において一対の音速調整部が設けられており、前記一対の音速調整部における音速が前記中央領域における音速よりも低く、
前記一対の音速調整部のうち一方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第1の端部と、前記第2の反射器側に位置する第2の端部と、を有し、前記一対の音速調整部のうち他方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第3の端部と、前記第2の反射器側に位置する第4の端部と、を有し、
前記第1の端部、前記第2の端部、前記第3の端部及び前記第4の端部が、弾性波伝搬方向において前記一対のエッジ領域の外側に位置し、
前記第1の端部及び前記第3の端部と、前記第2の端部及び前記第4の端部との2組の端部のうち少なくとも一方が、前記複数の電極指が延びる方向において重なっておらず、
前記一対の音速調整部が延びる方向及び弾性波伝搬方向が交叉している、弾性波装置。
【請求項3】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、複数の電極指を有するIDT電極と、
前記圧電性基板上における前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器である、第1の反射器及び第2の反射器と、
を備え、
前記複数の電極指が一方向に延びており、
前記IDT電極の隣り合う前記電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている部分が交叉領域であり、前記交叉領域が、前記複数の電極指が延びる方向における中央側に位置している中央領域と、前記中央領域の前記複数の電極指が延びる方向両側に配置されている一対のエッジ領域と、を有し、
前記一対のエッジ領域を含み、かつ前記一対のエッジ領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が一対の拡張エッジ領域であり、
前記一対の拡張エッジ領域において一対の音速調整部が設けられており、前記一対の音速調整部における音速が前記中央領域における音速よりも低く、
前記一対の音速調整部のうち一方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第1の端部と、前記第2の反射器側に位置する第2の端部と、を有し、前記一対の音速調整部のうち他方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第3の端部と、前記第2の反射器側に位置する第4の端部と、を有し、
前記第1の端部、前記第2の端部、前記第3の端部及び前記第4の端部が、弾性波伝搬方向において前記一対のエッジ領域の外側に位置し、
前記第1の端部及び前記第3の端部と、前記第2の端部及び前記第4の端部との2組の端部のうち少なくとも一方が、前記複数の電極指が延びる方向において重なっておらず、
前記中央領域を含み、かつ前記中央領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が拡張中央領域であり、
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が、それぞれ複数の電極指を有し、
前記IDT電極の前記複数の電極指、前記第1の反射器の前記複数の電極指及び前記第2の反射器の前記複数の電極指において、前記拡張中央領域における幅よりも広い幅広部が設けられていることにより、前記一対の音速調整部が構成されている、弾性波装置。
【請求項4】
前記一対のエッジ領域の、前記複数の電極指が延びる方向における外側に、一対の高音速領域が配置されており、
前記一対の高音速領域における音速が、前記中央領域における音速よりも高い、請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1の端部及び前記第3の端部と、前記第2の端部及び前記第4の端部との双方が、前記複数の電極指が延びる方向において重なっていない、請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記一対の音速調整部が延びる方向及び弾性波伝搬方向が平行である、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記一対の音速調整部が、質量付加膜が設けられていることにより構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器が、それぞれ複数の電極指を有し、
前記IDT電極の前記複数の電極指が延びる方向と直交する方向において、前記第1の端部よりも外側に位置する前記第1の反射器の前記電極指の本数と、前記第3の端部よりも外側に位置している前記第1の反射器の前記電極指の本数とが互いに異なる構成、及び前記IDT電極の前記複数の電極指が延びる方向と直交する方向において、前記第2の端部の外側に位置する前記第2の反射器の前記電極指の本数と、前記第4の端部よりも外側に位置する前記第2の反射器の前記電極指の本数とが互いに異なる構成のうち、少なくとも一方の構成を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記圧電性基板が、高音速材料層と、前記高音速材料層上に直接的または間接的に設けられている圧電体層と、を有し、
前記高音速材料層を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記圧電性基板が、前記高音速材料層と前記圧電体層との間に設けられている、低音速膜を有し、
前記低音速膜を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬するバルク波の音速よりも低い、請求項に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記高音速材料層が高音速支持基板である、請求項または10に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記圧電性基板が支持基板を有し、
前記高音速材料層が、前記支持基板上に設けられている高音速膜である、請求項または10に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記圧電性基板が音響反射膜と、前記音響反射膜上に設けられている圧電体層と、を有し、
前記音響反射膜が、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層と、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層と、を有し、
前記高音響インピーダンス層と前記低音響インピーダンス層とが交互に積層されている、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、圧電基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極が設けられている。さらに、圧電基板上には、IDT電極を覆うように、酸化シリコン膜が設けられている。酸化シリコン膜上には、平面視において、IDT電極の複数の電極指の先端部と重なるように、質量付加膜が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-068309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ピストンモードを成立させ、横モードによるスプリアスを抑制し得る。しかしながら、高次モードまでをも抑制することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、横モード及び高次モードを抑制することができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、複数の電極指を有するIDT電極と、前記圧電性基板上における前記IDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器である、第1の反射器及び第2の反射器とを備え、前記IDT電極の隣り合う前記電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている部分が交叉領域であり、前記交叉領域が、前記複数の電極指が延びる方向における中央側に位置している中央領域と、前記中央領域の前記複数の電極指が延びる方向両側に配置されている一対のエッジ領域とを有し、前記一対のエッジ領域を含み、かつ前記一対のエッジ領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が一対の拡張エッジ領域であり、前記一対の拡張エッジ領域において一対の音速調整部が設けられており、前記一対の音速調整部における音速が前記中央領域における音速よりも低く、前記一対の音速調整部のうち一方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第1の端部と、前記第2の反射器側に位置する第2の端部とを有し、前記一対の音速調整部のうち他方の音速調整部が、前記第1の反射器側に位置する第3の端部と、前記第2の反射器側に位置する第4の端部とを有し、前記第1の端部、前記第2の端部、前記第3の端部及び前記第4の端部が、弾性波伝搬方向において前記一対のエッジ領域の外側に位置し、前記第1の端部及び前記第3の端部と、前記第2の端部及び前記第4の端部との2組の端部のうち少なくとも一方が、前記複数の電極指が延びる方向において重なっていない。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る弾性波装置によれば、横モード及び高次モードを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図3図3は、図1中のI-I線に沿う断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の、第2の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の、中央領域を通る断面を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態の第5の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図11図11は、本発明の第1の実施形態の第6の変形例に係る弾性波装置の平面図である。
図12図12は、本発明の第1の実施形態の第7の変形例に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図13図13は、本発明の第1の実施形態の第8の変形例に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図14図14は、本発明の第1の実施形態の第9の変形例に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図15図15は、本発明の第1の実施形態の第10の変形例に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図16図16は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
図17図17は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。
【0012】
弾性波装置1においては、ピストンモードを成立させることにより、横モードを抑制している。弾性波装置1は、圧電性基板2を有する。圧電性基板2上にはIDT電極7が設けられている。IDT電極7は複数の電極指を有する。IDT電極7においては、中央領域C、第1のエッジ領域E1及び第2のエッジ領域E2が配置されている。第1のエッジ領域E1及び第2のエッジ領域E2は、複数の電極指の先端を含む。さらに、弾性波装置1においては、第1のエッジ領域E1及び第2のエッジ領域E2が、IDT電極7の外側にまで拡張されている。これらの領域は、第1の拡張エッジ領域Ex1及び第2の拡張エッジ領域Ex2である。第1の拡張エッジ領域Ex1及び第2の拡張エッジ領域Ex2において、第1の音速調整部L及び第2の音速調整部Mが設けられている。これにより、ピストンモードを成立させる。
【0013】
第1の音速調整部Lは第1の端部La及び第2の端部Lbを有する。第2の音速調整部Mは第3の端部Ma及び第4の端部Mbを有する。ここで、本実施形態の特徴は、弾性波装置1が以下の構成を有することにある。1)第1の拡張エッジ領域Ex1において第1の音速調整部Lが設けられており、第2の拡張エッジ領域Ex2において第2の音速調整部Mが設けられていること。2)第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの2組の端部のうち少なくとも一方が、複数の電極指が延びる方向において重なっていないこと。それによって、横モードだけではなく、高次モードをも抑制することができる。上記効果の詳細を、本実施形態の構成の詳細と共に、以下において説明する。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
【0015】
図2に示すように、圧電性基板2は、支持基板3と、高音速材料層としての高音速膜4と、低音速膜5と、圧電体層6とを有する。より具体的には、支持基板3上に高音速膜4が設けられている。高音速膜4上に低音速膜5が設けられている。低音速膜5上に圧電体層6が設けられている。
【0016】
圧電性基板2の圧電体層6上に、上記IDT電極7が設けられている。IDT電極7に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。図2に示すように、圧電性基板2上における、IDT電極7の弾性波伝搬方向両側に、一対の反射器が設けられている。より具体的には、一対の反射器は第1の反射器8及び第2の反射器9である。このように、本実施形態の弾性波装置1は弾性表面波共振子である。もっとも、本発明に係る弾性波装置は弾性波共振子には限定されず、弾性波共振子を有するフィルタ装置やマルチプレクサであってもよい。
【0017】
図1に示すように、IDT電極7は、第1のバスバー14、第2のバスバー15、複数の第1の電極指16及び複数の第2の電極指17を有する。第1のバスバー14及び第2のバスバー15は対向し合っている。複数の第1の電極指16の一端は、それぞれ第1のバスバー14に接続されている。複数の第2の電極指17の一端は、それぞれ第2のバスバー15に接続されている。複数の第1の電極指16及び複数の第2の電極指17は互いに間挿し合っている。なお、本明細書においては、弾性波伝搬方向をx方向とする。第1の電極指16及び第2の電極指17が延びる方向をy方向とする。本実施形態においては、x方向とy方向とは直交する。
【0018】
第1の反射器8は複数の電極指18を有する。第2の反射器9は複数の電極指19を有する。本明細書においては、IDT電極7の第1の電極指16、第2の電極指17、第1の反射器8の電極指18及び第2の反射器9の電極指19を、まとめて電極指と記載することがある。IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9は適宜の金属からなる。IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9は、積層金属膜からなっていてもよく、単層の金属膜からなっていてもよい。
【0019】
図2に示す圧電体層6の材料としては、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、またはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることができる。
【0020】
低音速膜5は相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜5を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬するバルク波の音速よりも低い。低音速膜5の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、五酸化タンタル、または、酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物を主成分とする材料を用いることができる。
【0021】
本実施形態では、高音速材料層は高音速膜4である。高音速材料層は相対的に高音速な層である。より具体的には、高音速材料層を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬する弾性波の音速よりも高い。高音速膜4の材料としては、例えば、シリコン、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜またはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることができる。
【0022】
支持基板3の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどの各種セラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体または樹脂などを用いることもできる。
【0023】
本実施形態においては、圧電性基板2が、高音速材料層としての高音速膜4、低音速膜5及び圧電体層6がこの順序において積層された構成を有する。それによって、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0024】
なお、圧電性基板2上に、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9を覆うように、保護膜が設けられていてもよい。この場合には、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9が破損し難い。保護膜には、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などの誘電体を用いることができる。
【0025】
図3は、図1中のI-I線に沿う断面図である。図4は、第1の実施形態に係る弾性波装置の、第2の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。図5は、第1の実施形態に係る弾性波装置の、中央領域を通る断面を示す断面図である。
【0026】
図1及び図3に示すように、IDT電極7において、第1の電極指16と第2の電極指17とがx方向において重なり合っている部分は、交叉領域Aである。交叉領域Aは、中央領域C及び一対のエッジ領域を有する。より具体的には、一対のエッジ領域は、上記第1のエッジ領域E1及び上記第2のエッジ領域E2である。中央領域Cは、交叉領域Aにおいて、y方向における中央側に位置している。第1のエッジ領域E1及び第2のエッジ領域E2は、中央領域Cのy方向両側に配置されている。より具体的には、第1のエッジ領域E1は、中央領域Cの第1のバスバー14側に配置されている。第2のエッジ領域E2は、中央領域Cの第2のバスバー15側に配置されている。
【0027】
IDT電極7は、第1のギャップ領域G1及び第2のギャップ領域G2を有する。第1のギャップ領域G1は、第1のエッジ領域E1及び第1のバスバー14の間に位置する。第2のギャップ領域G2は、第2のエッジ領域E2及び第2のバスバー15の間に位置する。第1のギャップ領域G1においては、第1の電極指16及び第2の電極指17のうち第1の電極指16のみが設けられている。これにより、第1のギャップ領域G1における音速は中央領域Cにおける音速よりも高い。同様に、第2のギャップ領域G2においては、第1の電極指16及び第2の電極指17のうち第2の電極指17のみが設けられている。これにより、第2のギャップ領域G2における音速は中央領域Cにおける音速よりも高い。中央領域Cにおける音速をVcとし、第1のギャップ領域G1及び第2のギャップ領域G2における音速をVgとしたときに、Vc<Vgである。このように、第1のギャップ領域G1及び第2のギャップ領域G2において、高音速領域が構成されている。
【0028】
ここで、一対のエッジ領域を含み、かつ一対のエッジ領域と弾性波伝搬方向において重なる領域が一対の拡張エッジ領域である。より具体的には、図2に示すように、第1のエッジ領域E1を含み、かつ第1のエッジ領域E1とx方向において重なる領域は、上記第1の拡張エッジ領域Ex1である。図4に示すように、第2のエッジ領域E2を含み、かつ第2のエッジ領域E2とx方向において重なる領域は、上記第2の拡張エッジ領域Ex2である。他方、図5に示すように、中央領域Cを含み、かつ中央領域Cとx方向において重なる領域は拡張中央領域Cxである。
【0029】
図1に戻り、一対の拡張エッジ領域には、一対の音速調整部が設けられている。より具体的には、第1の拡張エッジ領域Ex1において上記第1の音速調整部Lが設けられている。第2の拡張エッジ領域Ex2において上記第2の音速調整部Mが設けられている。
【0030】
第1の音速調整部Lは、第1の反射器8及び第2の反射器9のx方向における外側に至っている。第1の音速調整部Lにおける音速は、中央領域Cにおける音速よりも低い。本実施形態においては、第1の音速調整部Lは、質量付加膜12が設けられることにより構成されている。質量付加膜12は帯状の形状を有する。1個の質量付加膜12が、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9の全ての電極指上に設けられている。さらに、質量付加膜12は、圧電性基板2上における、複数の電極指間の部分、IDT電極7と第1の反射器8との間の部分、及びIDT電極7と第2の反射器9との間の部分にも設けられている。第1の音速調整部Lが延びる方向及びx方向は平行である。
【0031】
第2の音速調整部Mは、第1の反射器8及び第2の反射器9のx方向における外側に至っている。第2の音速調整部Mにおける音速は、中央領域Cにおける音速よりも低い。本実施形態においては、第2の音速調整部Mは、質量付加膜13が設けられることにより構成されている。質量付加膜13は帯状の形状を有する。1個の質量付加膜13が、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9の全ての電極指上に設けられている。さらに、質量付加膜13は、圧電性基板2上における、複数の電極指間の部分、IDT電極7と第1の反射器8との間の部分、及びIDT電極7と第2の反射器9との間の部分にも設けられている。第2の音速調整部Mが延びる方向及びx方向は平行である。質量付加膜12及び質量付加膜13には、適宜の誘電体などを用いることができる。
【0032】
第1の音速調整部Lは第1の端部La及び第2の端部Lbを有する。第1の端部Laは第1の反射器8側に位置する。第2の端部Lbは第2の反射器9側に位置する。第2の音速調整部Mは、第3の端部Ma及び第4の端部Mbを有する。第3の端部Maは第1の反射器8側に位置する。第4の端部Mbは第2の反射器9側に位置する。本実施形態では、第1の端部La、第2の端部Lb、第3の端部Ma及び第4の端部Mbは、x方向において一対の反射器よりも外側に位置する。
【0033】
なお、第1の端部La、第2の端部Lb、第3の端部Ma及び第4の端部Mbは、x方向においてIDT電極7よりも外側に位置していればよい。これにより、一対のエッジ領域における音速を、中央領域Cにおける音速よりも低くすることができる。
【0034】
本実施形態では、y方向における各領域の配置が、中央領域C、一対の音速調整部及び一対の高音速領域の順序の配置とされている。それによって、ピストンモードが成立し、横モードを抑制することができる。
【0035】
ここで、音速調整部が延びる方向に沿う該音速調整部の寸法を、該音速調整部の長さとする。第2の音速調整部Mは第1の音速調整部Lよりも長い。より詳細には、第3の端部Maは第1の端部Laよりも、x方向における外側に位置する。第4の端部Mbは第3の端部Lbよりも、x方向における外側に位置する。このように、本実施形態においては、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの双方が、y方向において重なっていない。それによって、高次モードをも抑制することができる。これを以下において説明する。
【0036】
メインモードは、IDT電極7及び一対の反射器が設けられている領域において共振する。そのため、メインモードのエネルギーのほとんどは、IDT電極7及び一対の反射器が設けられている領域に集中している。他方、高次モードは、圧電体層6の厚み方向において共振する。そのため、IDT電極7及び一対の反射器が設けられている領域の外側においても、高次モードは共振する。高次モードは、第1の音速調整部Lの第1の端部Laと、第1の音速調整部Lの第2の端部Lbと、第2の音速調整部Mの第3の端部Maと、第2の音速調整部Mの第4の端部Mbとを結んだ線により囲まれた領域において共振する。この領域を高次モード共振領域とする。第1の音速調整部L及び第2の音速調整部Mが、一対の反射器のx方向における外側に至っている場合においても、高次モードは、上記高次モード共振領域において共振することとなる。ここで、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの双方が、y方向において重なっている場合には、高次モード共振領域において、高次モードが一様に共振する。この場合、高次モード共振領域において、高次モードの位相が揃うこととなる。そのため、高次モードに起因する大きなスプリアスが生じる。
【0037】
これに対して、本実施形態においては、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの双方が、y方向において重なっていない。これにより、高次モード共振領域における、高次モードの位相をずらすことができる。よって、高次モードの共振を抑制することができる。従って、弾性波装置1においては、横モードだけではなく、高次モードをも抑制することができる。
【0038】
なお、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの2組の端部のうち少なくとも一方が、y方向において重なっていなければよい。この場合においても、横モード及び高次モードを抑制することができる。
【0039】
ここで、図1に示すように、y方向から見たときの、第1の端部Laと第3の端部Maとの距離をB1とする。距離B1は、第1の端部Laと第3の端部Maとの距離のx方向の成分である。y方向から見たときの、第2の端部Lbと第4の端部Mbとの距離をB2とする。距離B2は、第2の端部Lbと第4の端部Mbとの距離のx方向の成分である。距離B1は、特に限定されないが、例えば、共振波長の1/100以上であることが好ましい。同様に、距離B2は、特に限定されないが、例えば、共振波長の1/100以上であることが好ましい。これらの場合には、高次モード共振領域において、高次モードの位相を効果的にずらすことができ、高次モードを効果的に抑制することができる。
【0040】
本実施形態のように、第1の端部Laが第1の反射器8よりもx方向において外側に位置する場合には、第1の端部Laと第1の反射器8との距離の上限は特に限定されないが、共振波長の1/100以上であることが好ましい。第3の端部Maが第1の反射器8よりもx方向において外側に位置する場合には、第3の端部Maと第1の反射器8との距離の上限は特に限定されないが、共振波長の1/100以上であることが好ましい。これらの場合において、第1の端部La及び第3の端部Maがy方向において重なっていない場合には、高次モードを十分に抑制することができ、かつ弾性波装置1を小型にすることができる。同様に、第2の端部Lbが第2の反射器9よりもx方向において外側に位置する場合には、第2の端部Lbと第2の反射器9との距離の上限は特に限定されないが、共振波長の1/100以上であることが好ましい。第4の端部Mbが第2の反射器9よりもx方向において外側に位置する場合には、第4の端部Mbと第2の反射器9との距離の上限は特に限定されないが、共振波長の1/100以上であることが好ましい。これらの場合において、第2の端部Lb及び第4の端部Mbがy方向において重なっていない場合には、高次モードを十分に抑制することができ、かつ弾性波装置1を小型にすることができる。
【0041】
以下において、第1の実施形態の第1~第4の変形例を示す。第1~第4の変形例においては、第1の音速調整部L及び第2の音速調整部Mの位置のみが、第1の実施形態と異なる。第1~第4の変形例においても、第1の実施形態と同様に、横モード及び高次モードを抑制することができる。
【0042】
図6に示す第1の変形例においては、第1の端部Laは第3の端部Maよりもx方向における内側に位置する。他方、第2の端部Lbは第4の端部Mbよりもx方向における外側に位置する。なお、本変形例においては、第1の端部La、第2の端部Lb、第3の端部Ma及び第4の端部Mbは、x方向において一対のエッジ領域の外側に位置する。
【0043】
本変形例では、第1の音速調整部Lの長さ及び第2の音速調整部Mの長さは同じである。もっとも、第1の音速調整部Lの長さ及び第2の音速調整部Mの長さは異なっていてもよい。
【0044】
図7に示す第2の変形例においては、第1の端部Laは、IDT電極7と、第1の反射器8との間に位置している。第2の端部Lbは、IDT電極7と、第2の反射器9との間に位置している。第3の端部Maは、第1の反射器8の、IDT電極7に最も近い電極指18上に位置する。第4の端部Mbは、第2の反射器9の、IDT電極7に最も近い電極指19上に位置する。
【0045】
図8に示す第3の変形例においては、第1の端部La及び第3の端部Maは、それぞれ、第1の反射器8の異なる電極指18上に位置している。より具体的には、上記異なる電極指18のうちIDT電極7に近い方の電極指18上に第1の端部Laが設けられている。上記異なる電極指のうちIDT電極7から遠い方の電極指18上に第3の端部Maが設けられている。
【0046】
第2の端部Lb及び第4の端部Mbは、それぞれ、第2の反射器9の異なる電極指19上に位置している。より具体的には、上記異なる電極指19のうちIDT電極7に近い方の電極指19上に第2の端部Lbが設けられている。上記異なる電極指のうちIDT電極7から遠い方の電極指19上に第4の端部Mbが設けられている。
【0047】
図9に示す第4の変形例においては、第1の音速調整部Lの長さ及び第2の音速調整部Mの長さは同じである。しかしながら、質量付加膜12及び質量付加膜13が、x方向に対して傾斜して延びている。そのため、第1の音速調整部Lが延びる方向及びx方向は交叉している。第2の音速調整部Mが延びる方向及びx方向は交叉している。それによって、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの双方が、y方向において重なっていない。なお、本変形例においては、第1の端部La、第2の端部Lb、第3の端部Ma及び第4の端部Mbは、x方向において一対のエッジ領域の外側に位置する。
【0048】
第1の音速調整部L及び第2の音速調整部Mが、x方向に対して傾斜して延びている場合においても、第1の音速調整部Lの長さ及び第2の音速調整部Mの長さは異なっていてもよい。
【0049】
ところで、第1の実施形態においては、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9の複数の電極指上に、質量付加膜12及び質量付加膜13が直接的に設けられている。それによって、一対の音速調整部が構成されている。もっとも、これに限定されるものではない。以下において、質量付加膜が設けられている位置が第1の実施形態と異なる、第1の実施形態の第5の変形例及び第6の変形例を示す。なお、平面視において、第5の変形例及び第6の変形例の質量付加膜が設けられている位置は、第1の実施形態の質量付加膜が設けられている位置と同じである。本明細書において平面視とは、図2における上方から見る方向をいう。第5の変形例及び第6の変形例においても、第1の実施形態と同様に、横モード及び高次モードを抑制することができる。
【0050】
図10に示す第5の変形例においては、質量付加膜12及び質量付加膜13は、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9の複数の電極指と、圧電性基板2との間に設けられている。なお、質量付加膜12及び質量付加膜13は、圧電性基板2上における、複数の電極指間の部分、IDT電極7と第1の反射器8との間の部分、及びIDT電極7と第2の反射器9との間の部分にも設けられている。
【0051】
図11に示す第6の変形例においては、IDT電極7、第1の反射器8及び第2の反射器9を覆うように、圧電性基板2上に保護膜23が設けられている。保護膜23上に質量付加膜12及び質量付加膜13が設けられている。
【0052】
図2に戻り、第1の実施形態の圧電性基板2においては、高音速膜4上に、低音速膜5を介して間接的に圧電体層6が設けられている。もっとも、圧電性基板2の構成は上記に限定されない。以下において、圧電性基板の構成のみが第1の実施形態と異なる、第1の実施形態の第7~第9の変形例を示す。第7~第9の変形例においても、第1の実施形態と同様に、横モード及び高次モードを抑制することができる。加えて、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0053】
図12に示す第7の変形例においては、圧電性基板22Aは、支持基板3と、高音速膜4と、圧電体層6とを有する。本変形例においては、高音速材料層としての高音速膜4上に、直接的に圧電体層6が設けられている。
【0054】
図13に示す第8の変形例においては、高音速材料層は高音速支持基板24である。圧電性基板22Bは、高音速支持基板24と、低音速膜5と、圧電体層6とを有する。高音速支持基板24上に低音速膜5が設けられている。低音速膜5上に圧電体層6が設けられている。
【0055】
高音速支持基板24の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコン、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC膜またはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることができる。
【0056】
図14に示す第9の変形例においては、圧電性基板22Cは、高音速支持基板24と、圧電体層6とを有する。本変形例においては、高音速材料層としての高音速支持基板24上に、直接的に圧電体層6が設けられている。
【0057】
一方で、図15に示す第1の実施形態の第10の変形例においては、圧電性基板22Dは、圧電体層のみからなる。圧電性基板22Dは圧電基板である。この場合においても、第1の実施形態と同様に、横モード及び高次モードを抑制することができる。
【0058】
図16は、第2の実施形態に係る弾性波装置の、第1の拡張エッジ領域を通る断面を示す断面図である。
【0059】
本実施形態は、圧電性基板32が、音響反射膜37を有する点において、第1の実施形態と異なる。より具体的には、圧電性基板32は、支持基板3と、音響反射膜37と、圧電体層6とを有する。支持基板3上に音響反射膜37が設けられている。音響反射膜37上に圧電体層6が設けられている。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置31は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0060】
音響反射膜37は複数の音響インピーダンス層の積層体である。より具体的には、音響反射膜37は、複数の低音響インピーダンス層と、複数の高音響インピーダンス層とを有する。低音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが低い層である。音響反射膜37の複数の低音響インピーダンス層は、低音響インピーダンス層35a及び低音響インピーダンス層35bである。一方で、高音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが高い層である。音響反射膜37の複数の高音響インピーダンス層は、高音響インピーダンス層34a及び高音響インピーダンス層34bである。低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層は交互に積層されている。なお、低音響インピーダンス層35aが、音響反射膜37において最も圧電体層6側に位置する層である。
【0061】
音響反射膜37は、低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層をそれぞれ2層ずつ有する。もっとも、音響反射膜37は、低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有していればよい。
【0062】
低音響インピーダンス層の材料としては、例えば、酸化ケイ素またはアルミニウムなどを用いることができる。高音響インピーダンス層の材料としては、例えば、白金またはタングステンなどの金属や、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの誘電体を用いることができる。
【0063】
弾性波装置31は、音響反射膜37を有するため、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0064】
本実施形態における圧電性基板32上の電極構造は、第1の実施形態と同様である。よって、ピストンモードが成立し、横モードを抑制することができる。加えて、第1の実施形態と同様に、高次モード共振領域における、高次モードの位相をずらすことができる。これにより、高次モードの共振を抑制することができる。従って、横モードだけではなく、高次モードをも抑制することができる。
【0065】
図17は、第3の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。なお、図17において符号を付していないが、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、弾性波装置41は、第1の拡張エッジ領域Ex1、第2の拡張エッジ領域Ex2及び拡張中央領域Cxなどを有する。
【0066】
本実施形態においては、一対の音速調整部の構成及び配置が、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置41は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0067】
IDT電極47、第1の反射器48及び第2の反射器49の複数の電極指は、幅広部を有する。それによって、一対の音速調整部が構成されている。より具体的には、幅広部における電極指の幅は、拡張中央領域Cxおける電極指の幅よりも広い。これにより、拡張中央領域Cxにおける音速よりも、一対の音速調整部における音速は低い。本実施形態の構成の詳細を以下において説明する。
【0068】
IDT電極47の複数の電極指は、第1のエッジ領域E1及び第2のエッジ領域E2において幅広部を有する。より具体的には、複数の第1の電極指56は、第1のエッジ領域E1において、幅広部56aを有する。さらに、複数の第1の電極指56は、第2のエッジ領域E2において、幅広部56bを有する。同様に、複数の第2の電極指57は、第1のエッジ領域E1において、幅広部57aを有する。さらに、複数の第2の電極指57は、第2のエッジ領域E2において、幅広部57bを有する。本実施形態においては、IDT電極47の全ての電極指が、幅広部を有する。もっとも、幅広部を有する電極指は、必ずしもIDT電極47の全ての電極指ではなくともよい。
【0069】
ここで、弾性波装置41においては、第1の音速調整部Lの第1の端部Laは、第2の音速調整部Mの第3の端部Maよりも、x方向において内側に位置している。第1の端部La及び第3の端部Maは、第1の反射器48に配置されている。より詳細には、第1の反射器48の複数の電極指58は、第1の拡張エッジ領域Ex1において幅広部58aを有する。第1の音速調整部Lの第1の端部Laは、幅広部58aのうちIDT電極47から最も遠い幅広部の、IDT電極47から遠い側の端部である。第1の反射器48の複数の電極指58は、第2の拡張エッジ領域Ex2において幅広部58bを有する。第2の音速調整部Mの第3の端部Maは、幅広部58bのうちIDT電極47から最も遠い幅広部の、IDT電極47から遠い側の端部である。第3の端部Maが位置する電極指58は、幅広部58aを有しない。
【0070】
弾性波装置41においては、第1の反射器48のIDT電極47に最も近い電極指58から、連続して複数の電極指58が、幅広部58a及び幅広部58bの双方を有する。該複数の電極指58よりも、IDT電極47から遠い電極指58が、幅広部58a及び幅広部58bのうち幅広部58bのみを有する。もっとも、幅広部58a及び幅広部58bの配置は上記に限定されない。第3の端部Maが第1の端部Laよりもx方向における外側に位置している場合には、第3の端部Maが位置する幅広部58bが、第1の端部Laが位置する幅広部58aよりも、x方向において外側に位置していればよい。第1の端部Laが第3の端部Maよりもx方向における外側に位置している場合には、第1の端部Laが位置する幅広部58aが、第3の端部Maが位置する幅広部58bよりも、x方向において外側に位置していればよい。少なくとも1本の電極指58が幅広部58aを有していればよく、少なくとも1本の電極指58が幅広部58bを有していればよい。
【0071】
図17に示すように、第1の音速調整部Lの第2の端部Lbは、第2の音速調整部Mの第4の端部Mbよりも、x方向において内側に位置している。第2の端部Lb及び第4の端部Mbは、第2の反射器49に配置されている。より詳細には、第2の反射器49の複数の電極指59は、第1の拡張エッジ領域Ex1において幅広部59aを有する。第1の音速調整部Lの第2の端部Lbは、幅広部59aのうちIDT電極47から最も遠い幅広部の、IDT電極47から遠い側の端部である。第2の反射器49の複数の電極指59は、第2の拡張エッジ領域Ex2において幅広部59bを有する。第2の音速調整部Mの第4の端部Mbは、幅広部59bのうちIDT電極47から最も遠い幅広部の、IDT電極47から遠い側の端部である。第4の端部Mbが位置する電極指59は、幅広部59aを有しない。
【0072】
弾性波装置41においては、第2の反射器49のIDT電極47に最も近い電極指59から、連続して複数の電極指59が、幅広部59a及び幅広部59bの双方を有する。該複数の電極指59よりも、IDT電極47から遠い電極指59が、幅広部59a及び幅広部59bのうち幅広部59bのみを有する。もっとも、幅広部59a及び幅広部59bの配置は上記に限定されない。第4の端部Mbが第2の端部Lbよりもx方向における外側に位置している場合には、第4の端部Mbが位置する幅広部59bが、第2の端部Lbが位置する幅広部59aよりも、x方向において外側に位置していればよい。第2の端部Lbが第4の端部Mbよりもx方向における外側に位置している場合には、第2の端部Lbが位置する幅広部59aが、第4の端部Mbが位置する幅広部59bよりも、x方向において外側に位置していればよい。少なくとも1本の電極指59が幅広部59aを有していればよく、少なくとも1本の電極指59が幅広部59bを有していればよい。
【0073】
本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、y方向における各領域の配置が、中央領域C、一対の音速調整部及び一対の高音速領域の順序の配置とされている。それによって、ピストンモードが成立し、横モードを抑制することができる。
【0074】
さらに、第1の端部La及び第3の端部Maと、第2の端部Lb及び第4の端部Mbとの双方が、y方向において重なっていない。これにより、高次モード共振領域における、高次モードの位相をずらすことができる。よって、高次モードの共振を抑制することができる。従って、横モードだけではなく、高次モードをも抑制することができる。
【0075】
なおIDT電極47、第1の反射器48及び第2の反射器49の複数の電極指が幅広部を有する場合にも、例えば、複数の電極指上に質量付加膜が設けられていてもよい。幅広部及び質量付加膜が設けられていることにより、一対の音速調整部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
3…支持基板
4…高音速膜
5…低音速膜
6…圧電体層
7…IDT電極
8,9…第1,第2の反射器
12,13…質量付加膜
14,15…第1,第2のバスバー
16,17…第1,第2の電極指
18,19…電極指
22A~22D…圧電性基板
23…保護膜
24…高音速支持基板
31…弾性波装置
32…圧電性基板
34a,34b…高音響インピーダンス層
35a,35b…低音響インピーダンス層
37…音響反射膜
41…弾性波装置
47…IDT電極
48,49…第1,第2の反射器
56,57…第1,第2の電極指
56a,56b,57a,57b…幅広部
58,59…電極指
58a,58b,59a,59b…幅広部
A…交叉領域
C…中央領域
Cx…拡張中央領域
E1,E2…第1,第2のエッジ領域
Ex1,Ex2…第1,第2の拡張エッジ領域
G1,G2…第1,第2のギャップ領域
L,M…第1,第2の音速調整部
La,Lb…第1,第2の端部
Ma,Mb…第3,第4の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17