(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20240618BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240618BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240618BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240618BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/153 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M50/531
H01M10/058
H01M10/0587
H01M50/169
H01M50/586
H01M50/595
H01M50/109
H01M50/153
H01M50/463 Z
(21)【出願番号】P 2022522505
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046512
(87)【国際公開番号】W WO2021229846
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020085530
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛本 泰地
(72)【発明者】
【氏名】影山 雅之
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-100097(JP,A)
【文献】特開2019-145273(JP,A)
【文献】特開2019-153383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材と、
前記外装部材の内部に収納され、第1電極および第2電極を含む電池素子と、
前記外装部材に取り付けられ、前記外装部材から絶縁された外部端子と、
前記第1電極および前記外部端子のそれぞれに接続された接続配線と
を備え、
前記接続配線の一部は、前記外装部材および前記第2電極のそれぞれから絶縁されながら、前記外装部材および前記電池素子
の上面により挟まれ
、
前記電池素子は、さらに、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された絶縁性のセパレータを含み、
前記セパレータの上端部は、前記第1電極の上端部と前記第2電極の上端部よりも上方に突出し、前記電池素子の上面が前記セパレータの上端部により構成され、
前記接続配線の一部は、前記電池素子の上面に沿って延在し、
前記セパレータの上端部には、前記接続配線の一部が食い込む配線用窪み部が形成されている
二次電池。
【請求項2】
前記接続配線は、前記電池素子の中心よりも手前側において前記第1電極に接続されており、
前記接続配線の一部は、前記電池素子の中心よりも手前側において前記外装部材および前記電池素子により挟まれている、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記接続配線は、前記電池素子の中心よりも手前側から、前記電池素子の中心よりも奥側まで延在しており、
前記接続配線の一部は、さらに、前記電池素子の中心よりも奥側において前記外装部材および前記電池素子により挟まれている、
請求項2記載の二次電池。
【請求項4】
前記外装部材は、前記外装部材が内部に向かって部分的に突出するように折れ曲げられることにより形成された突出部を含み、
前記接続配線の一部は、前記突出部および前記電池素子により挟まれている、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記外装部材は、前記突出部により形成された窪み部を含み、
前記外部端子は、前記窪み部の内部に収納されている、
請求項4記載の二次電池。
【請求項6】
前記接続配線の一部は、前記セパレータを介して前記第2電極から絶縁されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極は、前記セパレータを介して互いに対向しながら巻回されており、
前記接続配線は、前記第1電極の最外周よりも内周側において前記第1電極に接続されている、
請求項6記載の二次電池。
【請求項8】
さらに、前記接続配線の周囲を被覆する第1絶縁部材を備え、
前記接続配線の一部は、前記第1絶縁部材を介して前記外装部材および前記第2電極のそれぞれから絶縁されている、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
さらに、前記外装部材と前記接続配線との間に配置された第2絶縁部材を備え、
前記接続配線の一部は、前記第2絶縁部材を介して前記外装部材から絶縁されている、
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
さらに、前記電池素子と前記接続配線との間に配置された第3絶縁部材を備え、
前記接続配線の一部は、前記第3絶縁部材を介して前記第2電極から絶縁されている、
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記外装部材は、
開口部を有し、前記電池素子を内部に収納する収納部材と、
前記外部端子が取り付けられ、前記開口部において前記収納部材に溶接された蓋部材と
を含み、
前記接続配線は、1回以上折り返されている、
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記接続配線の長さは、前記外装部材の外径の半分以上である、
請求項11記載の二次電池。
【請求項13】
扁平かつ柱状の二次電池である、
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として、二次電池の開発が進められている。この二次電池は、外装部材の内部に収納された正極、負極および電解質を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、円筒型の二次電池において優れた安全性を得るために、正極板および正極端子のそれぞれに正極集電体タブが接続されており、その正極集電タブがS字状に折り曲げられている(例えば、特許文献1参照。)。円筒型の二次電池において内部短絡の発生を防止するために、極板および封口板のそれぞれにリード片が接続されており、そのリード片が略V字状に折り曲げられている(例えば、特許文献2参照。)。ボタン型の二次電池において機械的な負荷に対する耐久性を向上させるために、2種類の電極およびセパレータを含む複合体(螺旋状のロール)がカップ部分および蓋部分の内部に収納されており、一方の電極および蓋部分のそれぞれに出力導体が接続されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-097903号公報
【文献】特開平10-154505号公報
【文献】特表2012-517658号公報
【発明の概要】
【0005】
二次電池の性能を改善するために様々な検討がなされているが、その二次電池の物理的耐久性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた物理的耐久性を得ることが可能である二次電池を提供することにある。
【0007】
本技術の一実施形態の二次電池は、外装部材と、その外装部材の内部に収納され、第1電極および第2電極を含む電池素子と、外装部材に取り付けられ、その外装部材から絶縁された外部端子と、第1電極および外部端子のそれぞれに接続された接続配線とを備え、その接続配線の一部が外装部材および第2電極のそれぞれから絶縁されながら外装部材および電池素子により挟まれているものである。
【0008】
本技術の一実施形態の二次電池によれば、第1電極および第2電極を含む電池素子が外装部材の内部に収納されており、その外装部材から絶縁されながら外装部材に外部端子が取り付けられており、その第1電極および外部端子のそれぞれに接続配線が接続されており、その接続配線の一部が外装部材および第2電極のそれぞれから絶縁されながら外装部材および電池素子により挟まれているので、優れた物理的耐久性を得ることができる。
【0009】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示した二次電池の構成を表す断面図である。
【
図3】
図2に示した電池素子の構成を表す断面図である。
【
図4】二次電池の製造工程に用いられる外装缶の構成を表す斜視図である。
【
図5】二次電池の製造工程を説明するために外装缶の構成を表す断面図である。
【
図6】変形例3の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図7】変形例4の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図8】変形例5の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図9】変形例6の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図10】変形例7の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図11】変形例8の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図12】変形例9の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図13】変形例10の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図14】変形例11の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図15】変形例12の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図16】変形例13の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図17】変形例14の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図18】変形例15の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図19】変形例16の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図20】変形例17の二次電池の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.変形例
【0012】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0013】
ここで説明する二次電池は、扁平かつ柱状の立体的形状を有しており、いわゆるコイン型およびボタン型などと呼称されている。この二次電池は、後述するように、互いに対向する一対の底部と、その一対の底部の間に位置する側壁部とを有しており、その二次電池では、外径よりも高さが小さくなっている。この「外径」とは、一対の底部のそれぞれの直径(最大直径)であると共に、「高さ」とは、一方の底部の表面から他方の底部の表面までの距離(最大距離)である。
【0014】
二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。この二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するために、その負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0015】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0016】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0017】
<1-1.構成>
図1は、二次電池の斜視構成を表している。
図2は、
図1に示した二次電池の断面構成を表している。
図3は、
図2に示した電池素子40の断面構成を表している。ただし、
図2では、正極リード51に網掛けを施していると共に、
図3では、電池素子40の断面構成のうちの一部だけを拡大している。
【0018】
以下では、便宜上、
図1および
図2のそれぞれにおける上側を二次電池の上側として説明すると共に、
図1および
図2のそれぞれにおける下側を二次電池の下側として説明する。
【0019】
ここで説明する二次電池は、
図1に示したように、外径Dよりも高さHが小さい立体的形状、すなわち扁平かつ柱状の立体的形状を有している。ここでは、二次電池の立体的形状は、扁平かつ円筒(円柱)状である。
【0020】
二次電池の寸法は、特に限定されないが、一例を挙げると、外径D=3mm~30mmであると共に、高さH=0.5mm~70mmである。ただし、高さHに対する外径Dの比(D/H)は、1よりも大きくなっている。この比(D/H)の上限は、特に限定されないが、25以下であることが好ましい。
【0021】
この二次電池は、
図1~
図3に示したように、外装缶10と、外部端子20と、電池素子40と、正極リード51とを備えている。ここでは、二次電池は、さらに、ガスケット30と、負極リード52と、シーラント61および絶縁フィルム62,63とを備えている。
【0022】
[外装缶]
外装缶10は、
図1および
図2に示したように、電池素子40などを収納する中空の外装部材である。
【0023】
ここでは、外装缶10は、扁平かつ円柱状である二次電池の立体的形状に応じて、扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。このため、外装缶10は、互いに対向する一対の底部M1,M2と、その底部M1,M2の間に位置する側壁部M3とを有している。この側壁部M3の上端部は、底部M1に連結されていると共に、その側壁部M3の下端部は、底部M2に連結されている。上記したように、外装缶10は円柱状であるため、底部M1,M2のそれぞれの平面形状は円形であると共に、側壁部M3の表面は凸型の湾曲面である。
【0024】
また、外装缶10は、互いに溶接された収納部11および蓋部12を含んでおり、その収納部11は、蓋部12により封止されている。すなわち、蓋部12は、収納部11に溶接されている。
【0025】
収納部11は、電池素子40などを内部に収納する扁平かつ円柱状の収納部材である。この収納部11は、上端部が開放されていると共に下端部が閉塞されている中空の構造を有しているため、その上端部に開口部11Kを有している。
【0026】
蓋部12は、収納部11の開口部11Kを閉塞する略円盤状の蓋部材であり、貫通孔12Kを有している。この蓋部12は、上記したように、開口部11Kにおいて収納部11に溶接されている。蓋部12には、外部端子20が取り付けられているため、その蓋部12は、外部端子20を支持している。
【0027】
ここでは、収納部11の内部に向かって蓋部12が部分的に突出するように折れ曲がっているため、その蓋部12が部分的に窪んでいる。この場合には、蓋部12の一部は、その蓋部12の中心に向かって段差を形成するように折れ曲がっている。これにより、蓋部12は、その蓋部12が収納部11の内部に向かって部分的に突出するように折り曲げられることにより形成された突出部12Pを含んでいると共に、その突出部12Pにより形成された窪み部12Hを含んでいる。なお、貫通孔12Kは、突出部12P(または窪み部12H)に設けられている。
【0028】
上記したように、外装缶10は、2個の部材(収納部11および蓋部12)が互いに溶接されている溶接缶である。これにより、溶接後の外装缶10は、全体として物理的に1個の部材であるため、事後的に2個の部材(収納部11および蓋部12)に分離できない状態になっている。
【0029】
この溶接缶である外装缶10は、互いに折り重なった部分を有していないと共に、2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない。
【0030】
この「互いに折り重なった部分を有していない」とは、外装缶10の一部が互いに折り重なるように加工されていないことを意味している。また、「2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない」とは、二次電池の完成後において外装缶10が物理的に1個の部材であるため、その外装缶10が事後的に2個以上の部材に分離できないことを意味している。すなわち、外装缶10は、事後的に分離できるように2個以上の部材が互いに重なりながら組み合わされている状態になっていない。
【0031】
特に、溶接缶である外装缶10は、加締め加工を用いて形成されたクリンプ缶とは異なる缶であり、いわゆるクリンプレス缶である。外装缶10の内部において素子空間体積が増加するため、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。この「素子空間体積」とは、充放電反応に関与する電池素子40を収納するために利用可能である外装缶10の内部空間の体積(有効体積)である。
【0032】
ここでは、外装缶10(収納部11および蓋部12)は、導電性を有している。これにより、外装缶10は、負極リード52を介して電池素子40(負極42)に接続されているため、その負極42の外部接続用端子として機能する。二次電池が外装缶10とは別個に負極42の外部接続用端子を備えていなくてもよいため、その負極42の外部接続用端子の存在に起因する素子空間体積の減少が防止されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0033】
具体的には、外装缶10(収納部11および蓋部12)は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。ステンレスの種類は、特に限定されないが、具体的には、SUS304およびSUS316などである。ただし、収納部11の形成材料と蓋部12の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0034】
なお、外装缶10(蓋部12)は、後述するように、正極41の外部接続用端子として機能する外部端子20からガスケット30を介して絶縁されている。外装缶10(負極42の外部接続用端子)と外部端子20(正極41の外部接続用端子)との接触(短絡)が防止されるからである。
【0035】
[外部端子]
外部端子20は、
図1および
図2に示したように、二次電池が電子機器に搭載される際に、その電子機器に接続される接続用の端子である。この外部端子20は、上記したように、外装缶10(蓋部12)に取り付けられているため、その蓋部12により支持されている。
【0036】
ここでは、外部端子20は、正極リード51を介して電池素子40(正極41)に接続されているため、その正極41の外部接続用端子として機能する。これにより、二次電池の使用時には、外部端子20(正極41の外部接続用端子)および外装缶10(負極42の外部接続用端子)を介して二次電池が電子機器に接続されるため、その電子機器が二次電池を電源として用いて動作可能になる。
【0037】
この外部端子20は、平坦な略板状の部材であり、ガスケット30を介して窪み部12Hの内部に配置されている。これにより、外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12から絶縁されている。ここでは、外部端子20は、蓋部12よりも上方に突出しないように窪み部12Hの内部に収納されている。外部端子20が蓋部12よりも上方に突出している場合と比較して、二次電池の高さHが小さくなるため、その二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。
【0038】
なお、外部端子20の外径は、窪み部12Hの内径よりも小さいため、その外部端子20は、周囲において蓋部12から離隔されている。これにより、ガスケット30は、外部端子20と蓋部12(窪み部12H)との間の領域のうちの一部だけに配置されており、より具体的には、ガスケット30が存在しなければ外部端子20と蓋部12とが互いに接触し得る場所だけに配置されている。
【0039】
また、外部端子20は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。ただし、外部端子20は、クラッド材料により形成されていてもよい。このクラッド材料は、ガスケット30に近い側から順にアルミニウム層およびニッケル層を含んでおり、そのクラッド材料では、アルミニウム層とニッケル層とが互いに圧延接合されている。
【0040】
[ガスケット]
ガスケット30は、
図2に示したように、外装缶10(蓋部12)と外部端子20との間に配置された絶縁部材であり、その外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12に固定されている。このガスケット30は、貫通孔12Kに対応する箇所に貫通孔を有するリング状の平面形状を有している。また、ガスケット30は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
【0041】
ガスケット30の設置範囲は、特に限定されないため、任意に設定可能である。ここでは、ガスケット30は、窪み部12Hの内部において蓋部12の上面と外部端子20の下面との間の隙間に配置されている。
【0042】
[電池素子]
電池素子40は、
図2および
図3に示したように、充放電反応を進行させる発電素子であり、外装缶10の内部に収納されている。この電池素子40は、正極41および負極42を含んでいる。ここでは、電池素子40は、さらに、セパレータ43と、液状の電解質である電解液(図示せず)とを含んでいる。
【0043】
図2に示した中心線PCは、二次電池(外装缶10)の外径Dに沿った方向における電池素子40の中心に対応する線分である。すなわち、中心線PCの位置は、電池素子40の中心の位置に対応している。
【0044】
この電池素子40は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子40では、正極41および負極42がセパレータ43を介して互いに積層されていると共に、その正極41、負極42およびセパレータ43が巻回されている。これにより、正極41および負極42は、セパレータ43を介して互いに対向しながら巻回されているため、電池素子40の中心には、巻回中心空間40Kが形成されている。
【0045】
ここでは、正極41、負極42およびセパレータ43は、そのセパレータ43が最外周および最内周のそれぞれに配置されるように巻回されている。正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれの巻回数は、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0046】
この電池素子40は、外装缶10の立体的形状と同様の立体的形状を有しているため、扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。電池素子40が外装缶10の立体的形状とは異なる立体的形状を有している場合と比較して、その外装缶10の内部に電池素子40が収納された際に、いわゆるデッドスペース(外装缶10と電池素子40との間の隙間)が発生しにくくなるため、その外装缶10の内部空間が有効に利用されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0047】
(正極)
正極41は、充放電反応を進行させるために用いられる第1電極であり、
図3に示したように、正極集電体41Aおよび正極活物質層41Bを含んでいる。
【0048】
正極集電体41Aは、正極活物質層41Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体41Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0049】
正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層41Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。正極活物質層41Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0050】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物の総称であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物である。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、リチウム化合物は、さらに、他の元素(リチウムおよび遷移金属元素を除く。)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 およびLiMn2 O4 などであると共に、リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiMnPO4 などである。
【0051】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0052】
(負極)
負極42は、充放電反応を進行させるために用いられる第2電極であり、
図3に示したように、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bを含んでいる。
【0053】
負極集電体42Aは、負極活物質層42Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体42Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、銅などである。
【0054】
負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層42Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。負極活物質層42Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0055】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方を含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2、または0.2<x<1.4)などである。
【0056】
ここでは、負極42の高さは、正極41の高さよりも大きくなっている。すなわち、負極42は、正極41よりも上方に突出していると共に、その正極41よりも下方に突出している。正極41から放出されたリチウムが析出することを防止するためである。この「高さ」とは、上記した二次電池の高さHに対応する寸法であり、すなわち
図1および
図2のそれぞれにおける上下方向の寸法である。ここで説明した高さの定義は、以降においても同様である。
【0057】
(セパレータ)
セパレータ43は、
図2および
図3に示したように、正極41と負極42との間に配置された絶縁性の多孔質膜であり、その正極41と負極42との短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ43は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0058】
ここでは、セパレータ43の高さは、負極42の高さよりも大きくなっている。すなわち、セパレータ43は、負極42よりも上方に突出していると共に、その負極42よりも下方に突出している。後述するように、セパレータ43を利用して正極リード51を負極42から絶縁させるためである。
【0059】
(電解液)
電解液は、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0060】
[正極リード]
正極リード51は、
図2に示したように、外装缶10の内部に収納されており、正極41および外部端子20のそれぞれに接続された接続配線である。ここでは、二次電池は、1本の正極リード51を備えている。ただし、具体的に図示しないが、二次電池は、2本以上の正極リード51を備えていてもよい。
【0061】
この正極リード51は、正極41の上端部に接続されており、より具体的には、正極集電体41Aの上端部に接続されている。また、正極リード51は、蓋部12に設けられている貫通孔12Kを経由して外部端子20の下面に接続されている。正極リード51の接続方法は、特に限定されないが、具体的には、抵抗溶接法およびレーザー溶接法などの溶接法のうちのいずれか1種類または2種類以上である。ここで説明した溶接法に関する詳細は、以降においても同様である。
【0062】
正極リード51の一部は、外装缶10(蓋部12)および電池素子40(負極42)のそれぞれから絶縁されながら、その蓋部12および電池素子40により挟まれている。すなわち、正極リード51のうち、外部端子20と正極41との間に位置する部分は、蓋部12および電池素子40のそれぞれに実質的(間接的)に隣接しているため、その蓋部12および電池素子40により上下から挟まれている。
【0063】
これにより、正極リード51の一部は、蓋部12の下面および電池素子40の上面のそれぞれに沿うように延在することにより、その蓋部12および電池素子40により保持されているため、外装缶10の内部において固定されている。二次電池が振動および衝撃などの外力を受けても正極リード51が動きにくくなるため、その正極リード51が破損しにくくなるからである。この正極リード51の破損とは、正極リード51に亀裂が発生すること、正極リード51が切断されること、正極41から正極リード51が脱落することなどである。
【0064】
すなわち、「正極リード51の一部が外装缶10および電池素子40により挟まれている」とは、正極リード51が外装缶10および電池素子40のそれぞれから絶縁されながら、その外装缶10および電池素子40により正極リード51が上下から保持されているため、二次電池が振動および衝撃などの外力を受けても、外装缶10の内部において正極リード51が動きにくい状態であることを意味している。
【0065】
なお、正極リード51は、電池素子40に押圧されることに起因して、その電池素子40に食い込んでいることが好ましい。より具体的には、セパレータ43の高さは、上記したように、正極41および負極42のそれぞれの高さよりも大きくなっているため、正極リード51は、セパレータ43の上端部に食い込んでいることが好ましい。この場合には、正極リード51の押圧に起因してセパレータ43の上端部に窪み部が形成されており、その窪み部の内部に正極リード51の一部または全部が収容されているため、そのセパレータ43により正極リード51が保持されている。外装缶10の内部において正極リード51がより動きにくくなるため、その正極リード51がより破損しにくくなるからである。
【0066】
ここでは、上記したように、蓋部12が突出部12Pを含んでいるため、正極リード51の一部は、その突出部12Pおよび電池素子40により挟まれている。すなわち、正極リード51の一部は、突出部12Pの下面および電池素子40の上面のそれぞれに沿うように延在することにより、その突出部12Pおよび電池素子40により保持されている。突出部12Pを利用して正極リード51がより保持されやすくなるため、その正極リード51がより破損しにくくなるからである。
【0067】
また、正極リード51の一部は、セパレータ43、シーラント61および絶縁フィルム62,63のそれぞれを介して蓋部12および負極42から絶縁されている。
【0068】
具体的には、上記したように、セパレータ43の高さは、負極42の高さよりも大きくなっている。これにより、正極リード51の一部は、セパレータ43を介して負極42から離隔されているため、そのセパレータ43を介して負極42から絶縁されている。正極リード51と負極42との短絡が防止されるからである。
【0069】
また、正極リード51は、絶縁性のシーラント61により周囲を被覆されている。これにより、正極リード51の一部は、シーラント61を介して蓋部12および負極42のそれぞれから絶縁されている。正極リード51と蓋部12との短絡が防止されると共に、その正極リード51と負極42との短絡が防止されるからである。
【0070】
また、蓋部12と正極リード51との間には、絶縁フィルム62が配置されている。これにより、正極リード51の一部は、絶縁フィルム62を介して蓋部12から絶縁されている。正極リード51と蓋部12との短絡が防止されるからである。
【0071】
さらに、電池素子40と正極リード51との間には、絶縁フィルム63が配置されている。これにより、正極リード51の一部は、絶縁フィルム63を介して負極42から絶縁されている。正極リード51と負極42との短絡が防止されるからである。
【0072】
正極リード51の形成材料に関する詳細は、正極集電体41Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、正極リード51の形成材料と正極集電体41Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0073】
ここでは、正極リード51は、中心線PCよりも手前側(
図2中の右側)において正極41に接続されている。これにより、正極リード51の一部は、中心線PCよりも手前側において、蓋部12および電池素子40により挟まれながら、外部端子20に向かって延在している。なお、正極リード51は、外部端子20に接続されるために、その外部端子20に向かう途中において上方に向かってクランク状に折れ曲がっている。
【0074】
ここで、「中心線PCよりも手前側」とは、
図2から明らかなように、外径Dに沿った方向において中心線PCを基準として電池素子40を2つの領域に区分した場合に、正極41に対する正極リード51の接続箇所が存在している一方の領域(
図2中において中心線PCよりも右側の領域)である。これに対して、後述する「中心線PCよりも奥側」とは、
図2から明らかなように、上記した2つの領域のうちの他方の領域(
図2中において中心線PCよりも左側の領域)である。すなわち、中心線PCよりも奥側とは、外径Dに沿った方向において中心線PCを基準として電池素子40を2つの領域に区分した場合に、正極41に対する正極リード51の接続箇所が存在していない他方の領域である。
【0075】
正極41に対する正極リード51の接続位置は、特に限定されないため、任意に設定可能である。中でも、正極リード51は、正極41の最外周よりも内周側において、その正極41に接続されていることが好ましい。正極リード51が正極41の最外周において正極41に接続されている場合とは異なり、電解液の這い上がりに起因する外装缶10の腐食が防止されるからである。この「電解液の這い上がり」とは、正極リード51が外装缶10の内壁面に近接配置されている場合において、電池素子40中の電解液が正極リード51を這い上がりながら外装缶10の内壁面まで到達するため、その電解液との接触に起因して外装缶10が溶解または変色する現象である。
【0076】
ここでは、正極リード51は、正極41と外部端子20との間において1回以上折り返されているため、1回以上折り重なっている。この正極リード51の折り返し回数は、1回以上であれば、特に限定されない。この「正極リード51が折り返されている」とは、その正極リード51が途中において90°よりも大きい角度となるように折り曲げられていることを意味している。
【0077】
具体的には、正極リード51は、外部端子20よりも手前において1回だけ折り返されている。正極リード51の折り返し部分が余剰部分となるため、その正極リード51の長さマージンが得られるからである。
【0078】
これにより、後述するように、二次電池の製造工程において収納部11および蓋部12を用いて外装缶10を形成する際に、その収納部11に対して蓋部12を立てることが可能になる(
図5参照)。また、二次電池が振動および衝撃などの外力を受けた際に、その外力が正極リード51の長さマージンを利用して緩和されるため、その正極リード51が破損しにくくなる。さらに、正極リード51の長さマージンを利用して、その正極リード51の長さを変更せずに、正極41に対する正極リード51の接続位置を任意に変更可能になる。
【0079】
この場合において、正極リード51の長さ(長さマージンを含む全体の長さ)は、特に限定されないため、任意に設定可能である。中でも、正極リード51の長さは、外装缶10の外径Dの半分以上であることが好ましい。正極リード51の長さに関して、収納部11に対して蓋部12を立てるための長さマージンが担保されるため、その収納部11に対して蓋部12を立てやすくなるからである。
【0080】
外部端子20に対する正極リード51の接続範囲は、特に限定されない。中でも、外部端子20に対する正極リード51の接続範囲は、その外部端子20から正極リード51が脱落しにくくなる程度に十分に広いと共に、その正極リード51の長さマージンが得られる程度に十分に狭いことが好ましい。外部端子20に対する正極リード51の接続範囲が十分に狭いことが好ましいのは、その正極リード51のうちの外部端子20に接続されていない部分が長さマージンとなるため、その長さマージンが十分に大きくなるからである。
【0081】
なお、正極リード51は、正極集電体41Aから物理的に分離されているため、その正極集電体41Aとは別体化されている。ただし、正極リード51は、正極集電体41Aと物理的に連続しているため、その正極集電体41Aと一体化されていてもよい。
【0082】
[負極リード]
負極リード52は、
図2に示したように、外装缶10の内部に収納されており、負極42および外装缶10(収納部11)のそれぞれに接続されている。ここでは、二次電池は、1本の負極リード52を備えている。ただし、具体的に図示しないが、二次電池は、2本以上の負極リード52を備えていてもよい。
【0083】
この負極リード52は、負極42の下端部に接続されており、より具体的には、負極集電体42Aの下端部に接続されている。また、負極リード52は、収納部11の底面に接続されている。負極リード52の接続方法に関する詳細は、正極リード51の接続方法に関する詳細と同様である。
【0084】
負極リード52の形成材料に関する詳細は、負極集電体42Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、負極リード52の形成材料と負極集電体42Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0085】
負極42に対する負極リード52の接続位置は、特に限定されないため、任意に設定可能である。ここでは、負極リード52は、負極42の最外周において、その負極42に接続されている。
【0086】
なお、負極リード52は、負極集電体42Aから物理的に分離されているため、その負極集電体42Aとは別体化されている。ただし、負極リード52は、負極集電体42Aと物理的に連続しているため、その負極集電体42Aと一体化されていてもよい。
【0087】
[シーラント]
シーラント61は、
図2に示したように、正極リード51の周囲を被覆している第1絶縁性部材であり、チューブ状の構造を有している。ここでは、シーラント61は、正極41および外部端子20のそれぞれに正極リード51を接続させるために、その正極リード51の途中部分の周囲を被覆している。
【0088】
このシーラント61は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリイミドなどである。
【0089】
[絶縁フィルム]
絶縁フィルム62は、
図2に示したように、蓋部12と正極リード51との間に配置されている第2絶縁性部材である。ここでは、絶縁フィルム62は、貫通孔12Kに対応する箇所に貫通孔を有するリング状の平面形状を有している。
【0090】
ここでは、絶縁フィルム62は、図示しない接着層を一面に有しているため、その接着層を介して蓋部12および正極リード51のうちのいずれか一方に接着されていてもよい。また、絶縁フィルム62は、図示しない接着層を両面に有しているため、それらの接着層を介して蓋部12および正極リード51の双方に接着されていてもよい。
【0091】
また、絶縁フィルム62は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリイミドなどである。
【0092】
絶縁フィルム63は、
図2に示したように、電池素子40と正極リード51との間に配置されている第3絶縁性部材である。ここでは、絶縁フィルム63は、平板状の平面形状を有している。この絶縁フィルム63は、巻回中心空間40Kを遮蔽すると共に、その巻回中心空間40Kの周辺の電池素子40を被覆するように配置されている。
【0093】
絶縁フィルム63の形成材料に関する詳細は、絶縁フィルム62の形成材料に関する詳細と同様である。ただし、絶縁フィルム63の形成材料と絶縁フィルム62の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0094】
[その他]
なお、二次電池は、さらに、図示しない他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を備えていてもよい。
【0095】
具体的には、二次電池は、安全弁機構を備えている。この安全弁機構は、外装缶10の内圧が一定以上に到達すると、その外装缶10と電池素子40(負極42)との電気的接続を切断する。外装缶10の内圧が一定以上に到達する原因は、二次電池の内部において短絡が発生すること、二次電池が外部から加熱されることなどである。安全弁機構の設置場所は、特に限定されないが、中でも、その安全弁機構は、底部M1,M2のうちのいずれかに設けられていることが好ましく、外部端子20が取り付けられていない底部M2に設けられていることがより好ましい。
【0096】
また、二次電池は、外装缶10と電池素子40との間に絶縁体を備えている。この絶縁体は、絶縁フィルムおよび絶縁シートなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、外装缶10と電池素子40(正極41)との短絡を防止する。絶縁体の設置範囲は、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0097】
なお、外装缶10には、開列弁が設けられている。この開列弁は、外装缶10の内圧が一定以上に到達した際に開裂するため、その内圧を開放する。開列弁の設置場所は、特に限定されないが、中でも、上記した安全弁機構の設置場所と同様に、底部M1,M2のうちのいずれかが好ましく、その底部M2がより好ましい。
【0098】
<1-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子40において、正極41からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子40において、負極42からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極41に吸蔵される。これらの充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0099】
<1-3.製造方法>
図4は、二次電池の製造工程に用いられる外装缶10の斜視構成を表しており、
図1に対応している。
図5は、二次電池の製造工程を説明するために外装缶10の断面構成を表しており、
図2に対応している。
【0100】
ただし、
図4では、収納部11に蓋部12が溶接される前であるため、その蓋部12が収納部11から分離されている状態を示している。
図5では、収納部11に蓋部12が溶接される前であるため、その収納部11に対して蓋部12が立てられている状態を示している。
【0101】
【0102】
ここでは、外装缶10を形成するために、
図4に示したように、互いに物理的に分離されている収納部11および蓋部12を用いる。収納部11は、底部M2と側壁部M3とが互いに一体化された略器状の部材であり、開口部11Kを有している。蓋部12は、底部M1に該当する略板状の部材であり、その蓋部12に設けられた窪み部12Hには、あらかじめ外部端子20がガスケット30を介して取り付けられている。
【0103】
ただし、底部M2と側壁部M3とが互いに分離されているため、その底部M2に側壁部M3を溶接することにより、収納部11を準備してもよい。
【0104】
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤などを混合することにより、正極合剤としたのち、有機溶剤などに正極合剤を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。続いて、正極集電体41Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層41Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層41Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層41Bを加熱してもよいと共に、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極41が作製される。
【0105】
[負極の作製]
正極41の作製手順と同様の手順により、負極42を作製する。具体的には、有機溶剤および負極合剤(負極活物質、負極結着剤および負極導電剤など)を含むペースト状の負極合剤スラリーを調製したのち、負極集電体42Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層42Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層42Bを圧縮成型する。これにより、負極42が作製される。
【0106】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0107】
[二次電池の組み立て]
最初に、抵抗溶接法などの溶接法を用いて、シーラント61により周囲を被覆されている正極リード51を正極41(正極集電体41A)に接続させると共に、負極リード52を負極42(負極集電体42A)に接続させる。
【0108】
続いて、セパレータ43を介して、正極リード51が接続された正極41と、負極リード52が接続された負極42とを互いに積層させたのち、その正極41、負極42およびセパレータ43を巻回させることにより、
図4に示したように、巻回体40Zを作製する。この巻回体40Zは、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子40の構成と同様の構成を有している。なお、
図4では、正極リード51および負極リード52のそれぞれの図示を省略している。
【0109】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に、正極リード51および負極リード52のそれぞれが接続されている巻回体40Zを収納する。この場合には、抵抗溶接法などの溶接法を用いて、負極リード52を収納部11に接続させる。続いて、巻回体40Zの上に絶縁フィルム63を載置する。
【0110】
続いて、あらかじめ外部端子20がガスケット30を介して取り付けられていると共にあらかじめ絶縁フィルム62が設けられている蓋部12を準備したのち、抵抗溶接法などの溶接法を用いて、貫通孔12Kを経由して正極リード51を外部端子20に接続させる。
【0111】
これにより、収納部11の内部に収納されている巻回体40Z(正極41)と、蓋部12に取り付けられている外部端子20とが正極リード51を介して互いに接続される。よって、
図5に示したように、巻回体40Zと外部端子20とが正極リード51を介して互いに接続されている状態において、収納部11に対して蓋部12を立てることが可能になる。
【0112】
この「収納部11に対して蓋部12を立てる」とは、
図5から明らかなように、蓋部12が開口部11Kの邪魔にならないようにするために、正極リード51を介して電池素子40と外部端子20とを互いに接続させたままで、収納部11の底面に対してほぼ直交するように蓋部12を配置することが可能になることを意味している。この場合には、正極リード51の長さを十分に大きくすることにより、収納部11に対して蓋部12を立てたとしても、その正極リード51が過剰に引っ張られると共に切断されることは防止される。
【0113】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入する。この場合には、上記したように、正極リード51を介して電池素子40および外部端子20が互いに接続されていても、蓋部12が開口部11Kを邪魔しないため、その開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入しやすくなる。これにより、巻回体40Z(正極41、負極42およびセパレータ43)に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子40が作製される。
【0114】
続いて、収納部11に接近するように蓋部12を傾斜させることにより、その蓋部12を用いて開口部11Kを遮蔽したのち、レーザー溶接法などの溶接法を用いて、その収納部11に蓋部12を溶接する。この場合には、
図2に示したように、蓋部12(絶縁フィルム62)および電池素子40(絶縁フィルム63)により正極リード51(シーラント61)の一部が挟まれると共に、外部端子20に対する接続場所よりも手前において正極リード51が折り返されるようにする。これにより、外装缶10が形成されると共に、その外装缶10の内部に電池素子40などが収納されるため、二次電池が組み立てられる。
【0115】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極42などの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
【0116】
<1-4.作用および効果>
この二次電池によれば、正極41および負極42を含む電池素子40が外装缶10の内部に収納されており、その外装缶10から絶縁されながら外装缶10に外部端子20が取り付けられており、その正極41および外部端子20のそれぞれに正極リード51が接続されており、その正極リード51の一部が外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されながら外装缶10および電池素子40により挟まれている。
【0117】
この場合には、上記したように、正極リード51の一部が外装缶10および電池素子40により絶縁されながら保持される。これにより、外装缶10の内部において正極リード51が固定されるため、二次電池が振動および衝撃などの外力を受けても正極リード51が動きにくくなる。よって、外力に応じて正極リード51が破損しにくくなるため、優れた物理的耐久性を得ることができる。
【0118】
特に、本実施形態の二次電池では、以下で説明する理由により、上記した利点(作用および効果)が得られる。
【0119】
コイン型およびボタン型などと呼称される本実施形態の二次電池、すなわち扁平かつ柱状の立体的形状を有している二次電池は、
図1および
図2から明らかなように、正極41の外部接続用端子として機能する小型の外部端子20を備えている。この場合には、外部端子20のサイズが小さいため、その外部端子20に対する正極リード51の接続面積が小さくなる。これにより、外部端子20と正極リード51との電気的な接続状態を維持するために、外装缶10の内部において正極リード51を十分に固定する必要がある。
【0120】
この観点において、本実施形態の二次電池では、小型の外部端子20に正極リード51が接続されているため、その外部端子20に対する正極リード51の接続面積が小さくても、外装缶10の内部において正極リード51が十分に固定されるため、その正極リード51が外力に応じて破損しにくくなる。よって、二次電池が外力を受けても、外部端子20と正極リード51との電気的な接続状態が維持されやすくなるため、物理的耐久性が向上するという利点を得ることができる。
【0121】
また、正極41の外部接続用端子である小型の外部端子20を備えている本実施形態の二次電池では、
図2から明らかなように、負極42の外部接続用端子として機能する外装缶10(蓋部12)が外部端子20のすぐ近くに存在している。この場合には、互いに異なる極性を有している2種類の外部接続用端子(蓋部12および外部端子20)が互いに接近している。これにより、蓋部12と外部端子20との短絡を防止するためには、正極リード51を蓋部12から十分に遠ざけるために、その外部端子20に対する正極リード51の接続面積を十分に小さくする必要がある。
【0122】
この観点において、本実施形態の二次電池では、外部端子20に対する正極リード51の接続面積が小さくても、外装缶10の内部において正極リード51が十分に固定されるため、その正極リード51が外力に応じて破損しにくくなる。よって、上記したように、二次電池が外力を受けても、外部端子20と正極リード51との電気的な接続状態が維持されやすくなるため、物理的耐久性が向上するという利点を得ることができる。
【0123】
特に、本実施形態の二次電池では、正極リード51が中心線PCよりも手前側において正極41に接続されており、その正極リード51の一部が中心線PCよりも手前側において外装缶10および電池素子40により挟まれていれば、その外装缶10の内部において正極リード51が十分に固定される。よって、正極リード51が十分に破損しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0124】
また、外装缶10が突出部12Pを含んでおり、正極リード51の一部が突出部12Pおよび電池素子40により挟まれていれば、その突出部12Pを利用して正極リード51がより保持されやすくなる。よって、正極リード51がより破損しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0125】
この場合には、外装缶10が突出部12Pにより形成された窪み部12Hを含んでおり、その窪み部12Hの内部に外部端子20が収納されていれば、二次電池の高さHが小さくなる。よって、二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が増加するため、より高い効果を得ることができる。
【0126】
また、絶縁性のセパレータ43の高さが負極42の高さよりも大きくなっており、正極リード51の一部がセパレータ43を介して負極42から絶縁されていれば、その正極リード51と負極42との短絡が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0127】
この場合には、正極41および負極42がセパレータ43を介して互いに対向しながら巻回されており、正極リード51が正極41の最外周よりも内周側において正極41に接続されていれば、電解液の這い上がりに起因する外装缶10の腐食が防止されるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0128】
また、シーラント61が正極リード51の周囲を被覆しており、その正極リード51の一部がシーラント61を介して外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されていれば、その正極リード51と外装缶10との短絡が防止されると共に、その正極リード51と負極42との短絡が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0129】
この場合には、特に、正極リード51の周囲がシーラント61により被覆されていると、その正極リード51がシーラント61を介して外装缶10および電池素子40により挟まれる際に、その外装缶10とシーラント61との間にグリップ力が発生すると共に、その電池素子40とシーラント61との間にグリップ力が発生する。これにより、シーラント61を介して正極リード51に供給されるグリップ力を利用して、その正極リード51が外装缶10および電池素子40により保持されやすくなる。よって、単に正極リード51がシーラント61を介して外装缶10および負極42から絶縁されるだけでなく、そのシーラント61を利用して外装缶10の内部において正極リード51がより固定されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0130】
また、絶縁フィルム62が外装缶10と正極リード51との間に配置されており、その正極リード51の一部が絶縁フィルム62を介して外装缶10から絶縁されていれば、その正極リード51と外装缶10との短絡が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0131】
また、絶縁フィルム63が電池素子40と正極リード51との間に配置されており、その正極リード51の一部が絶縁フィルム63を介して負極42から絶縁されていれば、その正極リード51と負極42との短絡が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0132】
また、外装缶10が互いに溶接された収納部11および蓋部12を含んでおり、正極リード51が1回以上折り返されていれば、その正極リード51の長さマージンが得られる。よって、二次電池の製造工程(外装缶10の形成工程)において収納部11に対して蓋部12を立てることが可能になり、二次電池が外力を受けても正極リード51がより破損しにくくなり、正極41に対する正極リード51の接続位置を任意に変更可能になるため、より高い効果を得ることができる。
【0133】
この場合には、正極リード51の長さが外装缶10の外径Dの半分以上であれば、二次電池の製造工程において収納部11に対して蓋部12を立てやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0134】
また、二次電池が扁平かつ柱状であり、すなわち二次電池がコイン型およびボタン型などと呼称される二次電池であれば、サイズの観点において制約が大きい小型の二次電池においても正極リード51が破損しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0135】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0136】
<2.変形例>
上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0137】
[変形例1]
図2では、二次電池がシーラント61および絶縁フィルム62,63の全てを備えている。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、正極リード51が外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されていれば、二次電池は、シーラント61および絶縁フィルム62,63の全てを備えていなくてもよい。
【0138】
具体的には、第1に、正極リード51がセパレータ43を介して負極42から絶縁されている場合には、二次電池は、絶縁フィルム63を備えていなくてもよい。第2に、正極リード51がシーラント61を介して外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されている場合には、二次電池は、絶縁フィルム62,63のうちの一方または双方を備えていなくてもよい。第3に、正極リード51がセパレータ43および絶縁フィルム62を介して外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されている場合には、二次電池は、シーラント61および絶縁フィルム63のうちの一方または双方を備えていなくてもよい。
【0139】
これらの場合においても、正極リード51が外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されるため、同様の効果を得ることができる。
【0140】
[変形例2]
図2では、セパレータ43の高さが負極42の高さよりも大きくなっているため、正極リード51がセパレータ43を介して負極42から絶縁されている。しかしながら、絶縁フィルム63の設置範囲を拡張することにより、正極リード51が絶縁フィルム63を介して負極42から絶縁されている場合には、セパレータ43の高さが負極42の高さよりも大きくなっていないため、正極リード51がセパレータ43を介して負極42から絶縁されていなくてもよい。
【0141】
この場合においても、正極リード51が絶縁フィルム63を介して負極42から絶縁されるため、同様の効果を得ることができる。ただし、正極41から放出されたリチウムが析出することを防止するためには、セパレータ43の高さは負極42の高さよりも大きくなっていることが好ましい。
【0142】
[変形例3]
図2では、絶縁フィルム62が蓋部12(突出部12P)の下面だけを被覆している。しかしながら、絶縁フィルム62の設置範囲は、正極リード51の一部が絶縁フィルム62を介して外装缶10から絶縁されていれば、特に限定されない。
【0143】
具体的には、
図2に対応する
図6に示したように、絶縁フィルム62は、蓋部12の下面だけでなく、その蓋部12の側面(貫通孔12Kにおける蓋部12の内壁面)まで被覆していてもよい。この場合には、正極リード51のうちのシーラント61により被覆されておらずに露出している部分と蓋部12とが互いに接触しにくくなる。よって、正極リード51と外装缶10との短絡がより防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0144】
[変形例4]
図2において、正極リード51の一部は、中心線PCよりも手前側において外装缶10および電池素子40により挟まれていると共に、その正極リード51は、外部端子20に接続される直前において折り返されている。しかしながら、外装缶10および電池素子40により正極リード51が挟まれている範囲は、特に限定されないと共に、正極リード51の折り返し位置は、特に限定されない。
【0145】
具体的には、
図2に対応する
図7に示したように、正極リード51は、中心線PCよりも手前側から中心線PCよりも奥側まで延在しているため、その中心線PCよりも奥側において折り返されていると共に、その正極リード51の一部は、さらに、中心線PCよりも奥側において外装缶10および電池素子40により挟まれていてもよい。この場合には、中心線PCよりも奥側に向かって絶縁フィルム63の設置範囲が拡張されていてもよい。ここでは、シーラント61は、正極リード51のうちの折り返されていない部分の周囲を被覆している。
【0146】
この場合には、正極リード51が中心線PCより奥側においても保持されると共に、その正極リード51の長さマージンが増加する。よって、正極リード51がより破損しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0147】
[変形例5]
なお、
図7において、正極リード51は、中心線PCよりも奥側において突出部12Pの下方まで延在しており、その突出部12Pの下方において折り返されている。しかしながら、
図7に対応する
図8に示したように、正極リード51は、中心線PCよりも奥側において突出部12Pを越えた場所まで延在しており、その突出部12Pを越えた場所において折り返されていてもよい。絶縁フィルム63の設置範囲は、さらに中心線PCよりも奥側に向かって拡張されていてもよい。この場合には、正極リード51の長さマージンがより増加するため、さらに高い効果を得ることができる。
【0148】
[変形例6]
シーラント61による正極リード51の被覆範囲は、特に限定されないため、任意に設定可能である。具体的には、
図7に対応する
図9に示したように、シーラント61は、正極リード51のうちの折り返されていない部分だけでなく、その正極リード51のうちの折り返されている部分まで被覆していてもよい。すなわち、正極リード51を折り返す際に、その正極リード51の周囲を被覆しているシーラント61も一緒に折り返してもよい。
【0149】
この場合には、シーラント61が折り返されることに起因して、外装缶10(蓋部12)が正極リード51から遠ざかるため、その外装缶10および電池素子40により正極リード51が挟まれる状態を維持するために、手当てを施してもよい。具体的には、外部端子20に接続されている箇所よりも先まで正極リード51を延長することにより、その正極リード51の延長部分を外装缶10と電池素子40との間に配置してもよい。また、絶縁フィルム62の厚さを部分的に増加させてもよい。
【0150】
この場合には、正極リード51がシーラント61を介して外装缶10および負極42から絶縁されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0151】
[変形例7]
もちろん、
図8および
図9に対応する
図10に示したように、正極リード51が突出部12Pを越えた場所において折り返されている場合において、シーラント61が正極リード51のうちの折り返されている部分まで被覆していてもよい。
【0152】
この場合には、長さマージンを増加させるために正極リード51の長さを増加させても、その正極リード51がシーラント61を介して外装缶10および負極42から絶縁されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0153】
[変形例8,9]
図2では、絶縁フィルム63が巻回中心空間40Kおよびその周辺の電池素子40を被覆するように配置されている。しかしながら、絶縁フィルム63の設置範囲は、正極リード51が絶縁フィルム63を介して負極42から絶縁されていれば、特に限定されない。
【0154】
具体的には、
図2に対応する
図11に示したように、絶縁フィルム63が絶縁フィルム62の構成と同様の構成を有していてもよい(変形例8)。すなわち、絶縁フィルム63は、貫通孔12Kに対応する箇所に貫通孔を有するリング状の平面形状を有していてもよい。
【0155】
また、
図7に対応する
図12に示したように、正極リード51が突出部12Pの下方において折り返されている場合において、正極リード51のうちのシーラント61により周囲を被覆されていない部分と電池素子40との間だけに絶縁フィルム63を配置してもよい(変形例9)。
【0156】
これらの場合においても、正極リード51のうちのシーラント61により被覆されておらずに露出している部分と負極42とが互いに接触しにくくなる。よって、正極リード51と負極42との短絡がより防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0157】
[変形例10~13]
なお、変形例3~9のうちの任意の2種類以上は、上記したように、互いに組み合わされてもよい。
【0158】
具体的には、
図7および
図11に対応する
図13に示したように、変形例4,8を互いに組み合わせることにより、正極リード51が突出部12Pの下方において折り返されていると共に、その正極リード51のうちの折り返されている部分がシーラント61により周囲を被覆されていない場合において、リング状の平面形状を有する絶縁フィルム63を採用してもよい(変形例10)。
【0159】
また、
図7および
図9に対応する
図14に示したように、変形例4,6を互いに組み合わせることにより、正極リード51が突出部12Pの下方において折り返されており、その正極リード51の先端部分が延長されており、その正極リード51のうちの折り返されている部分がシーラント61により周囲を被覆されている場合において、絶縁フィルム63を省略してもよい(変形例11)。
【0160】
また、
図6、
図7および
図9に対応する
図15に示したように、変形例2,4,6を互いに組み合わせることにより、正極リード51が突出部12Pの下方において折り返されており、その正極リード51の先端部分が延長されており、その正極リード51のうちの折り返されている部分がシーラント61により周囲を被覆されている場合において、ガスケット30の設置範囲を拡張してもよい(変形例12)。
【0161】
また、
図10および
図14に対応する
図16に示したように、変形例7,11を互いに組み合わせることにより、正極リード51が突出部12Pを越えた場所において折り返されており、その正極リード51の先端部分が延長されており、その正極リード51のうちの折り返されている部分がシーラント61により周囲を被覆されている場合において、絶縁フィルム63を省略してもよい(変形例13)。
【0162】
[変形例14~17]
図2では、突出部12P(または窪み部12H)を有する蓋部12の外側に、平坦な外部端子20が取り付けられた外装缶10を用いている。しかしながら、外装缶10の構成は、特に限定されないため、任意に変更されてもよい。なお、以下で説明する一連の二次電池の構成は、蓋部12および外部端子20のそれぞれの構成が異なっていることを除いて、
図2に示した二次電池の構成と同様の構成を有している。
【0163】
具体的には、
図2に対応する
図17に示したように、突出部12Pを有していない平坦な蓋部12の内側に、平坦な外部端子20が取り付けられた外装缶10を用いてもよい。この外装缶10では、貫通孔12Kを有する蓋部12の内側に、平坦な外部端子20がガスケット30を介して取り付けられており、その外部端子20は、貫通孔12Kにおいて部分的に露出している。この場合には、正極リード51のうちのシーラント61により周囲を被覆されていない部分と負極42との短絡を抑制するために、絶縁フィルム63の設置場所を調整してもよい(変形例14)。
【0164】
また、
図2に対応する
図18に示したように、突出部12Pを有していない平坦な蓋部12の外側に、平坦な外部端子20が取り付けられた外装缶10を用いてもよい。この外装缶10では、貫通孔12Kを有する蓋部12の外側に、外部端子20がガスケット30を介して取り付けられている(変形例15)。
【0165】
また、
図2に対応する
図19に示したように、突出部12Pを有していない平坦な蓋部12の内側に、中央部分が外側に向かって部分的に突出するように湾曲した外部端子20が取り付けられた外装缶10を用いてもよい。この外装缶10では、貫通孔12Kを有する蓋部12の内側に、外部端子20がガスケット30を介して取り付けられている。この場合には、正極リード51のうちのシーラント61により周囲を被覆されていない部分と負極42との短絡を抑制するために、絶縁フィルム63の設置場所を調整してもよい(変形例16)
【0166】
さらに、
図2に対応する
図20に示したように、蓋部12(窪み部12H)に設けられた貫通孔12Kに、その蓋部12の内側から貫通孔12Kを経由して外側まで延在する外部端子20が取り付けられた外装缶10を用いてもよい(変形例17)。
【0167】
この外装缶10では、貫通孔12Kに外部端子20が挿入されており、その外部端子20がガスケット30を介して蓋部12に取り付けられている。この外部端子20は、貫通孔12Kに挿入された小外径部分と、蓋部12の内側および外側のそれぞれに配置されると共にそれぞれが貫通孔12Kの内径よりも大きい外径を有する一対の大外径部分とを含んでいる。これにより、外部端子20は、小外径部分の外径と一対の大外径部分のそれぞれの外径との差違を利用して、蓋部12から脱落しないようになっている。
【0168】
外部端子20のうちの蓋部12の内側に位置する大外径部分は、巻回中心空間40Kの内部に配置されている。これにより、正極リード51は、その巻回中心空間40Kにおいて外部端子20(大外径部分)に接続されている。
【0169】
これらの場合においても、正極リード51と外装缶10との短絡が防止されるため、同様の効果を得ることができる。
【0170】
[変形例18]
図2では、正極41が正極リード51を介して外部端子20に接続されていると共に、負極42が負極リード52を介して外装缶10に接続されている。このため、外部端子20が正極41の外部接続用端子として機能していると共に、外装缶10が負極42の外部接続用端子として機能している。
【0171】
しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、正極41が正極リード51を介して外装缶10に接続されていると共に、負極42が負極リード52を介して外部端子20に接続されていてもよい。これにより、外装缶10が第2電極である正極41の外部接続用端子として機能していると共に、外部端子20が第1電極である負極42の外部接続用端子として機能していてもよい。
【0172】
この場合には、負極リード52の一部は、外装缶10(蓋部12)および電池素子40(正極41)のそれぞれから絶縁されながら、その外装缶10および電池素子40により挟まれている。外部端子20は、負極42の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。外装缶10は、正極41の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスなどである。
【0173】
この場合においても、二次電池が外部端子20(負極42の外部接続用端子)および外装缶10(正極41の外部接続用端子)を介して電子機器に接続可能であるため、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0174】
本技術の実施例に関して説明する。
【0175】
以下で説明するように、二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製したのち、その二次電池の性能を評価した。
【0176】
[二次電池の作製]
ここでは、
図1~
図3に示した実施例1の二次電池を作製した。この場合には、比較のために、比較例1,2の二次電池も作製した。
【0177】
(実施例1)
以下で説明する手順により、正極リード51が外装缶10および電池素子40により挟まれているコイン型の二次電池を作製した。
【0178】
(正極の作製)
最初に、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体41A(厚さ=12μmである帯状のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層41Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層41Bを圧縮成型した。これにより、正極41(幅=3.3mm)が作製された。
【0179】
(負極の作製)
最初に、負極活物質(黒鉛)95質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)5質量部とを混合することにより、負極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体42A(厚さ=15μmである帯状の銅箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層42Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層42Bを圧縮成型した。これにより、負極42(幅=3.8mm)が作製された。
【0180】
(電解液の調製)
溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸ジエチル)に電解質塩(LiPF6 )を添加したのち、その溶媒を攪拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸ジエチル=30:70としたと共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。これにより、溶媒中において電解質塩が溶解または分散されたため、電解液が調製された。
【0181】
(二次電池の組み立て)
最初に、抵抗溶接法を用いて、チューブ状のシーラント61(ポリプロピレンフィルム,外径=9.0mm,内径=3.0mm)により周囲を部分的に被覆されたアルミニウム製の正極リード51(厚さ=0.1mm,幅=2.0mm,正極41からの突出長さ=11.7mm)を正極41(正極集電体41A)に溶接した。また、抵抗溶接法を用いて、ニッケル製の負極リード52(厚さ=0.1mm,幅=2.0mm,負極42からの突出長さ=6.0mm)を負極42(負極集電体42A)に溶接した。この場合には、正極リード51の溶接位置が正極41の巻回途中となるように、その正極リード51の溶接位置を調整した。
【0182】
続いて、セパレータ43(厚さ=25μmおよび幅=4.0mmである微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して正極41および負極42を互いに積層させたのち、その正極41、負極42およびセパレータ43を巻回させることにより、巻回中心空間40K(内径=2.0mm)を有する円筒状の巻回体40Z(外径=11.6mm)を作製した。
【0183】
続いて、開口部11Kからステンレス(SUS316)製の円筒状の収納部11(肉厚=0.15mm,外径12.0mm,高さ=5.0mm)の内部に下敷き用のリング状の絶縁フィルム(ポリイミドフィルム,外径=11.6mm,内径=2.2mm,厚さ=0.05mm)を収納したのち、その収納部11の内部に巻回体40Zを収納した。この場合には、抵抗溶接法を用いて、負極リード52を収納部11に溶接した。続いて、抵抗溶接法を用いて、貫通孔12K(内径=3.0mm)が設けられた窪み部12H(内径=9.0mm,段差の高さ=0.3mm)を有していると共にアルミニウム製の円盤状の外部端子20(肉厚=0.3mm,外径=7.2mm)がガスケット30(ポリイミドフィルム,外径=9.2mm,内径=3.2mm)を介して取り付けられているステンレス(SUS316)製の円盤状の蓋部12(肉厚=0.15mm,外径11.7mm)のうちの外部端子20に正極リード51を溶接した。
【0184】
続いて、収納部11に対して蓋部12を立てた状態において、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入した。これにより、巻回体40Z(正極41、負極42およびセパレータ43)に電解液が含浸されたため、電池素子40が作製された。
【0185】
最後に、蓋部12を用いて開口部11Kを遮蔽したのち、レーザー溶接法を用いて、その収納部11に蓋部12を溶接した。この場合には、蓋部12と正極リード51との間にリング状の絶縁フィルム62(ポリイミドフィルム,外径=9.2mm,内径=3.2mm)を配置すると共に、電池素子40と正極リード51との間に円盤状の絶縁フィルム63(ポリイミドフィルム,外径=3.2mm)を配置した。これにより、収納部11および蓋部12により外装缶10が形成されたと共に、その外装缶10の内部に電池素子40が封入されたため、二次電池(外径=12.0mm,高さ=5.0mm)が組み立てられた。
【0186】
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=23℃)において、組み立て後の二次電池を1サイクル充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.2Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.05Cとは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
【0187】
これにより、負極42などの表面に被膜が形成されたため、二次電池の状態が電気化学的に安定化した。よって、二次電池が完成した。
【0188】
(比較例1)
以下で説明する手順により、正極リードが外装缶および電池素子により挟まれていない円筒型の二次電池を作製した。この二次電池は、上記した特許文献1(特開2013-097903号公報)に開示されている二次電池の構成と同様の構成を有している。
【0189】
この円筒型の二次電池(比較例1)の作製手順は、以下で説明することを除いて、コイン型の二次電池(実施例1)の作製手順と同様にした。この場合には、正極の幅=1.6mm、負極の幅=2.1mm、セパレータの幅=2.3mm、正極リードの突出長さ=15.0mmとすると共に、絶縁フィルム62,63を用いなかった。また、円筒状の収納部の内部に開口部から電池素子を収納したのち、その収納部の開口部に円盤状の蓋部を加締めることにより、その収納部に蓋部を固定した。
【0190】
この円筒型の二次電池(比較例1)では、正極リードの突出長さが長いと共に、その正極リードが蓋部および電池素子により挟まれていない。これにより、蓋部と電池素子との間の空間において正極リードの一部が固定されておらずにフリーな状態にあり、その正極リードの一部S字状に折り曲げられている。
【0191】
(比較例2)
以下で説明する手順により、正極リードが外装缶および電池素子により挟まれていないコイン型の二次電池を作製した。この二次電池は、上記した特許文献2(特開平10-154505号公報)に開示されている二次電池の構成と同様の構成を有している。
【0192】
このコイン型の二次電池(比較例2)の作製手順は、以下で説明することを除いて、コイン型の二次電池(実施例1)の作製手順と同様にした。この場合には、一端部が開放されていると共に他端部が閉塞されている2種類の中空の容器部材を互いに加締めることにより、その2種類の容器部材が電池素子を内部に収納するように互いに固定された外装缶を形成した。また、正極リードの溶接位置を正極の最外周とすることにより、電池素子の側方に設けられた余剰空間において正極リードを一方の容器部材(正極の外部接続用端子)に溶接した。さらに、負極リードの溶接位置を負極の最内周とすることにより、巻回中心空間において負極リードを他方の容器部材(負極の外部接続用端子)に溶接した。
【0193】
このコイン型の二次電池(比較例2)では、正極リードの一部が余剰空間に配置されていると共に、その正極リードが容器部材および電池素子により挟まれていない。これにより、容器と電池素子との間の空間において正極リードの一部が固定されておらずにフリーな状態にあり、その正極リードが略V字状に折り曲げられている。
【0194】
[性能の評価]
二次電池の性能(物理的耐久性)を評価したところ、表1に示した結果が得られた。なお、表1中における「正極リードの挟み込み」の欄には、正極リードが外装缶および電池素子により挟まれているか否かを示している。
【0195】
物理的耐久性を評価する場合には、UN試験に準拠した二次電池の振動試験を行うことにより、二次電池(正極リード)が破損したか否かを調べた。この場合には、試験数=30個とすることにより、正極リードが切断された二次電池の個数(切断不良数(個))と、その正極リードが正極から脱落した二次電池の個数(脱落不良数(個))とを調べた。
【0196】
【0197】
[考察]
表1に示したように、二次電池の物理的耐久性は、外装缶の内部における正極リードの状態(挟み込みの有無)に応じて変動した。
【0198】
具体的には、正極リードが外装缶および電池素子により挟まれていない場合(比較例1,2)には、振動試験時において正極リードが激しく動いた。これにより、正極リードが破損したため、切断不良数および脱落不良数の双方が発生した。これらの場合には、特に、切断不良数および脱落不良数のいずれかが試験数(=30個)の半数に達した。
【0199】
これに対して、正極リードが外装缶および電池素子により挟まれている場合(実施例1)には、振動試験時において正極リードがほとんど動かなかった。これにより、正極リードが破損しなかったため、切断不良数および脱落不良数の双方が発生しなかった。
【0200】
[まとめ]
表1に示した結果から、正極41および負極42を含む電池素子40が外装缶10の内部に収納されており、その外装缶10から絶縁されながら外装缶10に外部端子20が取り付けられており、その正極41および外部端子20のそれぞれに正極リード51が接続されており、その正極リード51の一部が外装缶10および負極42のそれぞれから絶縁されながら外装缶10および電池素子40により挟まれていると、二次電池(正極リード)が外力(振動)を受けても破損しなくなった。よって、二次電池において優れた物理的耐久性が得られた。
【0201】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0202】
具体的には、外装缶が溶接缶(クリンプレス缶)である場合に関して説明したが、その外装缶の構成は、特に限定されないため、加締め加工されたクリンプ缶でもよい。このクリンプ缶では、互いに分離された収納部および蓋部がガスケットを介して互いに加締められている。
【0203】
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明したが、その電池素子の素子構造は、特に限定されないため、電極(正極および負極)が積層された積層型および電極(正極および負極)がジグザグに折り畳まれた九十九折り型などの他の素子構造でもよい。
【0204】
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。このため、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0205】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。